JP5704757B2 - 通電加熱線、通電加熱線の製造方法および真空処理装置 - Google Patents

通電加熱線、通電加熱線の製造方法および真空処理装置 Download PDF

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本発明は、例えば触媒線化学気相成長装置における触媒線として用いられる通電加熱線と、この通電加熱線の製造方法及びこの通電加熱線を用いた真空処理装置に関する。
触媒化学気相成長法(Cat−CVD:Catalytic-Chemical Vapor Deposition)は、例えば1500〜2000℃に加熱した触媒線に反応ガスを供給し、反応ガスの接触反応もしくは熱分解反応を利用して生成した分解種(堆積種)を被成膜基板上に堆積させる成膜法である。
触媒化学気相成長法は、反応ガスの分解種を基板上に堆積させて膜を形成する点でプラズマCVD法と類似する。しかし、触媒化学気相成長法は、高温の触媒線上において反応ガスの分解種を生成するので、プラズマを形成して反応ガスの分解種を生成するプラズマCVD法に比べて、プラズマによる表面損傷がなく、原料ガスの利用効率も高いという利点がある。
この触媒化学気相成長法は、例えば、シリコン系の膜を成膜する際に使用されている。従来、触媒化学気相成長法に使用される触媒線の材料としてタンタル、タングステン等の高融点金属が広く用いられている。しかし、タングステンはシリコンとの合金化反応(シリサイド化)が起こり易く、それによって機械的強度が低下し、触媒線の寿命が短くなるという問題がある。一方タンタルは、タングステンと比較してシリサイド化は遅いものの、加熱時に熱伸びが起き、やはり触媒線の寿命が短くなるという問題がある。
そこで、触媒線の耐久性を向上させるために、タンタルよりも硬質な触媒線の材料として、タンタルの表面にホウ化物層が形成されたホウ化タンタルを用いた例が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2008−300793号公報(段落[0029])
しかし、触媒化学気相成長法においてホウ化タンタルを触媒線として通電加熱した際、タンタル線の熱伸びによってホウ化物層にひずみが生じ、ホウ化物層にクラックが入ることがある。その結果、触媒線の強度が低下し、耐久性が低くなるという問題がある。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、熱伸びせず、耐久性に優れた通電加熱線、通電加熱線の製造方法及びこの通電加熱線を用いた真空処理装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る通電加熱線は、第1の層と、第2の層とを具備する。
上記第1の層は、窒化タンタルからなり、芯状である。
上記第2の層は、ホウ化物、炭化物及びケイ化物のいずれかからなり、上記第1の層を被覆する。
本発明の一形態に係る通電加熱線の製造方法は、窒化タンタル線が設置された真空チャンバに、ホウ素、炭素及びケイ素の少なくとも一つを含有するガスを導入する工程を含む。
上記窒化タンタル線を通電加熱することで、上記窒化タンタル線の表面を被覆するホウ化物層、炭化物層及びケイ化物層のいずれかが形成される。
本発明の一実施形態に係る真空処理装置は、真空チャンバと、通電加熱線と、ガス導入系とを具備する。
上記通電加熱線は、窒化タンタルからなる芯状の第1の層と、ホウ化物、炭化物及びケイ化物のいずれかからなり前記第1の層を被覆する第2の層とを有する。上記通電加熱線は、上記真空チャンバに設置される。
上記ガス導入系は、上記真空チャンバにガスを供給する。
本発明の一実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略構成図である。 上記触媒化学気相成長装置に用いられる通電加熱線の構造を示す図である。 上記触媒化学気相成長装置に用いられる通電加熱線の製造工程を示すフローチャートである。 上記製造工程において使用及び製造される通電加熱線を示す図である。 処理温度を異ならせて作製したタンタル線各々の含有窒素濃度を示す実験結果であり、(A)は1700℃で処理したサンプルを、(B)は1800℃で処理したサンプルを、そして(C)は1900℃で処理したサンプルをそれぞれ示す。 処理温度を異ならせて作製したタンタル線各々の含有窒素濃度を示す実験結果であり、(A)は2000℃で処理したサンプルを、(B)は2100℃で処理したサンプルを、そして(C)は2200℃で処理したサンプルをそれぞれ示す。 上記触媒化学気相成長装置で上記通電加熱線の製造とp型シリコン膜の成膜とを連続して行った際に、上気通電加熱線の線抵抗を経時的に測定した結果である。 2種の通電加熱線サンプルの含有窒素濃度を示す実験結果であり、(A)は製造後無処理のTaBN線サンプルを、(B)は製造後、真空通電加熱処理したTaBN線サンプルをそれぞれ示す。
本発明の一実施形態に係る通電加熱線は、第1の層と、第2の層とを具備する。
上記第1の層は、窒化タンタルからなり、芯状である。
上記第2の層は、ホウ化物、炭化物及びケイ化物のいずれかからなり、上記第1の層を被覆する。
上記通電加熱線は、上記第2の層がホウ化物であってもよい。
本発明の一実施実施形態に係る通電加熱線の製造方法は、窒化タンタル線が設置された真空チャンバに、ホウ素、炭素及びケイ素の少なくとも一つを含有するガスを導入する工程を含む。
上記窒化タンタル線を通電加熱することで、上記窒化タンタル線の表面を被覆するホウ化物層、炭化物層及びケイ化物層のいずれかが形成される。
一般に、タンタル窒化物は、金属タンタルと比較して、強度および硬度が非常に高い。このため、窒化タンタルからなる通電加熱線は、高温環境化での耐久性が非常に高く、熱伸び等の変形が少ない。
一方、タンタル窒化物は、タンタルと窒素との蒸気圧の差が大きいため、高温に加熱されることで含有する窒素成分を放出し易い。よって、窒素が脱離することで、窒化タンタルからなる通電加熱線の硬度・強度が低下するおそれがある。さらに、放出された窒素成分が基板への成膜時に混入する可能性がある。
そこで、タンタル窒化物である窒化タンタルを、例えばホウ化処理することによって、窒化タンタル表面にホウ化物層を形成し、窒化タンタルから窒素成分の放出を抑制することができる。上記通電加熱線を用いることによって、窒素の脱離と、それに伴う第1の層の硬度・強度の低下を抑制することができる。
以上のように、上記通電加熱線によれば、熱伸び等の変形を抑制しつつ強度の低下を防止できるので、耐久性を向上させることができる。また、成膜中の基板への窒素成分の混入を抑制することができる。
また、窒化タンタル表面に形成される層を構成する化合物については、第1の層の表面に上記機能を有する第2の層を形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、ホウ化物、炭化物及びケイ化物が用いられる。これらの材料は、上記通電加熱線の使用温度域では物理的・化学的に安定であるので、第2の層の構成材料として用いることができる。
本発明の一実施形態に係る通電加熱線の製造方法において、タンタル線の窒化処理とホウ化処理とは、共通の真空チャンバ内で実施されてもよい。これにより、タンタル線から上記通電加熱線を製造する際、共通の真空チャンバで連続的に行うことができる。
本発明の一実施形態に係る真空処理装置は、真空チャンバと、通電加熱線と、ガス導入系とを具備する。
上記通電加熱線は、窒化タンタルからなる芯状の第1の層と、ホウ化物、炭化物及びケイ化物のいずれかからなり前記第1の層を被覆する第2の層とを有する。上記通電加熱線は、上記真空チャンバに設置される。
上記ガス導入系は、上記真空チャンバにガスを供給する。
上記真空処理装置は、触媒化学気相成長装置として使用でき、上記通電加熱線を触媒線として用いることができる。高温環境下での耐久性が高い上記通電加熱線を用いることによって、触媒線の使用コストの低減及び生産性の向上が図れるようになる。さらに、上記通電加熱線が変形しにくいことから、成膜中の基板と触媒線との距離の変化も抑えられ、膜質の向上が図れるようになる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[触媒化学気相成長装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る触媒化学気相成長装置を示す概略構成図である。本実施形態の触媒化学気相成長装置1は、反応室2が内部に形成された真空チャンバ3を備えている。真空チャンバ3には真空ポンプ4が接続されており、反応室2を所定の真空度に真空排気可能とされている。反応室2は、真空チャンバ3の内部に設置された防着板5の内方に形成されている。
防着板5で区画された反応室2の内部には、複数本の触媒線6が設置されている。触媒線6は、窒化タンタルを内層(第1の層)とし、ホウ化物を外層(第2の層)とする2層構造の通電加熱線で構成されている。本実施形態では、複数本の触媒線6が反応室2の内部を上下方向に横切るように平行に設置されている。なお、触媒線6の設置形態は上述の縦方向だけに限らず、反応室2を横方向に横切る形態で設置されてもよいし、両端を反応室の上部に固定した状態で自重により垂れ下げられてもよい。
各々の触媒線6は、防着板5の天面および底面に形成された通し穴5a,5bを貫通して設置され、両端部が真空チャンバ3の外部に設置されている制御部8に接続されている。制御部8は、触媒線6を通電加熱するためのコントローラであり、電流供給源と供給電流を調整するコンピュータ等によって構成されている。供給される電流は、直流でもよいし交流でもよい。
反応室2の内部には、被成膜基材としての基板Sが設置されている。基板Sには、例えば矩形状のガラス基板が用いられている。本実施形態においては、2枚の基板Sが触媒線6を挟むように互いに対向配置されている。ここでは、基板Sの長辺方向が触媒線6の延在方向と直交するように、基板Sが反応室2の内部に設置されている。なお、基板Sは、図示せずとも、キャリア等のような基板支持手段によって支持されている。この基板支持手段は、基板Sを所定温度に加熱する加熱源を内蔵していてもよい。
防着板5はほぼ直方形状を有しており、その4辺部にそれぞれガス導入配管7が設置されている。ガス導入配管7は、反応室2へ成膜ガス、不活性ガス等のプロセスガスを導入するためのもので、ガス供給ラインを介して真空チャンバ3の外部に設置されたガス供給部9に接続されている。ガス導入配管7から噴出したガスは、主として、2枚の基板Sの間に導入される。
成膜ガスは、基板Sの表面に成膜される材料の種類に応じて選択される。例えば、成膜すべき薄膜がp型シリコン膜の場合、シラン(SiH)及びジボラン(B)の混合ガス等が用いられる。また、成膜すべき薄膜がアモルファスシリコン膜の場合、成膜ガスには、シランおよび水素(H)の混合ガスが用いられる。
[触媒化学気相成長装置の動作]
次に、以上のように構成される触媒化学気相成長装置1の典型的な動作について説明する。
まず、真空ポンプ4を作動させて真空チャンバ3の内部を真空排気し、反応室2を所定の真空度(例えば1Pa)に減圧する。このとき、真空チャンバ3の内部は、ガス導入配管7から供給される不活性ガスによって置換されてもよい。
次いで、制御部8は、各々の触媒線6に電流を供給することで、各々の触媒線6を例えば1700℃以上の温度に通電加熱する。このとき、基板支持手段によって基板Sを所定温度(例えば300℃程度)に加熱してもよい。
成膜ガス(例えばシランおよびジボランの混合ガス)は、ガス導入配管7から、互いに対向配置された2枚の基板Sの間に導入される。反応室2へ供給された成膜ガスは、高温に加熱された触媒線6に接触し、触媒反応もしくは熱分解反応により生成された成膜ガスの分解種が基板S上に堆積することで、例えばp型シリコン膜が形成される。
本実施形態の触媒化学気相成長装置1においては、触媒線6が、窒化タンタルを内層(第1の層)とし、ホウ化物を外層(第2の層)とする2層構造を有する。以下、このような構造を持つ触媒線をTaBN線20とし、図面を参照しながら、TaBN線20の構造について説明する。
[TaBN線の構造]
図2は、TaBN線20の構造を示す図である。
図2は、窒化タンタル線をホウ化処理することで生成されたTaBN線20を表している。触媒線の内層(第1の層)21は窒化タンタル線、外層(第2の層)22はホウ化物層からなり、第1の層の表面を第2の層が被覆する2層構造となっている。
第1の層21は、例えば直径1mmの芯状の窒化タンタル線からなる。第1の層21中は一様な濃度で窒化されている。タンタルと窒素の含有割合は特に制限されないが、タンタル:窒素=1:0.04〜1の窒化タンタル線が用いられる。このような窒化タンタル線は、硬度が加工に適するので容易に製造でき、さらに高温環境下での耐久性が非常に高く、熱伸び等の変形が少ない。
第2の層22は、第1の層21の表面を被覆している。厚みは特に制限されないが、例えば5〜50μmである。これにより、窒素の脱離と、それに伴う第1の層21の硬度・強度の低下を抑制することができる。
第2の層22を構成する化合物については、TaBN線20と同様の構造・機能を有する材料であれば特に限定されず、例えば、炭化物、ケイ化物が用いられる。これらの材料は、触媒線としての使用温度域において物理的・化学的に安定であるので、第2の層22の構成材料として用いることができる。
以上のように、TaBN線20によれば、熱伸び等の変形を抑制しつつ強度の低下を防止できるので、耐久性を向上させることができる。また、成膜中の基板への窒素成分の混入を抑制することができる。
次に、図面を参照しながら、TaBN線20の製造方法について説明する。
[TaBN線の製造方法]
図3は、TaBN線20の製造工程を示すフローチャートである。TaBN線20の製造工程の説明は、以下の(1)〜(3)の順序で行うものとする。
(1)タンタル線の設置(S301)
(2)窒化処理(S302)
(3)ホウ化処理(S303)
一方図4は、図3の各製造工程で使用及び製造される触媒線を示している。すなわち、図4(A)はS301で用いられるタンタル線、図4(B)はS302で製造される窒化タンタル線、図4(C)はS303で製造されるTaBN線20を示している。以下、図3と図4を参照しながら製造工程及び各工程に対応する触媒線について説明する。
[(1)タンタル線の設置]
まず、タンタル線(図4(A))を真空チャンバ内に設置する。このタンタル線は、例えば直径1mmとする(S301)。
[(2)窒化処理]
続いて、真空チャンバ内を所定の真空雰囲気(例えば1Pa)に減圧し、タンタル線を例えば1700℃に通電加熱する。そして、窒素を含むガスを真空チャンバ内に導入する。反応ガスは、例えば流量が179sccmのアンモニア(NH)ガスが用いられる。この処理によって、タンタル線が一様な濃度で窒化された、窒化タンタル線(図4(B))が製造される(S302)。
タンタル線の窒化の度合いは、加熱温度、処理時間等によって調整可能である。図5および図6は、処理温度を異ならせて作製した複数のタンタル線(直径1mm)の断面をそれぞれEPMA(Electron Probe Micro-Analysis)で測定したときの実験結果であり、横軸は断面の直径方向における位置、縦軸は窒素強度を示している。実験では、窒素を含むガスにアンモニア(NH)が用いられ、処理圧力は1Pa、処理時間は30分とした。なお、図中「ref」は、窒素強度のバックグラウンドに相当し、いわば含有窒素のゼロレベルを示している。
図5(A)〜(C)に示すように、処理温度が高温であるほど窒化強度が減少する。これは、タンタルの窒化よりも脱窒素が優先的に進行するからであると推認される。図6(A)〜(C)に示すように、処理温度が2000℃〜2200℃に達すると、脱窒素が支配的となり、タンタルの窒化は困難になる。
以上の実験結果より、タンタルの窒化処理は、要求される窒化の度合いにもよるが、1700℃〜2000℃の範囲が効果的であることがわかる。一方、2000℃以上の加熱温度では脱窒素が支配的となり、タンタルの窒化は困難になる。つまり、タンタル窒化物は、タンタルと窒素との蒸気圧の差が大きいため、高温に加熱されることで含有する窒素成分を放出し易い。
また、図5〜図6の結果から明らかなように、通電加熱による窒化法は、触媒線の断面全域にわたってほぼ一様な濃度で触媒線を窒化させることができる。すなわち、触媒線の表面近傍のみならず内部深くにまで窒化を進行させることができる。
[(3)ホウ化処理]
次に、真空チャンバ内を所定の真空雰囲気(例えば1Pa)に減圧し、タンタル線を1700℃に通電加熱する。そして、ホウ素を含むガスを真空チャンバ内に導入する。反応ガスは、例えば流量が179sccmのジボラン(B)ガスが用いられる。この処理によって、窒化タンタル層の表面を被覆するホウ化物層が形成され、TaBN線20(図4(C))が製造される(S303)。
なお、TaBN線20の製造においては、既に製造された窒化タンタル線を真空チャンバ内に設置し、上記ホウ化物処理(S303)を行い、TaBN線20を製造してもよい。
また、触媒化学気相成長装置1を用いて、TaBN線20の製造を行ってもよい。すなわち、触媒線6の位置にタンタル線を設置し、真空チャンバ3内を真空雰囲気に減圧した後、タンタル線を通電加熱し、図3(S301)〜(S303)で示した工程を実施する。これにより、タンタル線からTaBN線20を製造する各工程を、共通の真空チャンバ3で連続的に行うことができる。さらに続けて、触媒化学気相成長装置1を用いてp型シリコン膜等の成膜を行う際、製造されたTaBN線20を触媒線6として用いることができるので、共通の真空チャンバ3で基板の成膜も可能となる。以下、共通の真空チャンバでタンタル線からTaBN膜の製造、p型シリコン膜等の成膜まで連続して行った例を示す。
図7は、真空チャンバ内でTaBN線の製造とp型シリコン膜の成膜とを連続して行った際の、通電加熱線(触媒線)の線抵抗を測定したときの実験結果であり、横軸は時間を、縦軸は電力を示している。測定中を通して通電加熱線の電流値は30Aに固定しているので、縦軸は実質的に抵抗値を示している。また図7は、経時的に以下の3相、すなわち、(1)0〜T1、(2)T1〜T2、(3)T2〜T3に分けることができる。以下、(1)〜(3)についてそれぞれ説明する。
[(1)0〜T1]
まず、タンタル線を真空チャンバ内に設置し、窒化処理を行った。タンタル線は、直径1mm、長さが1320mmであり、1700℃に通電加熱された。窒化ガスとしてアンモニア(NH)が用いられ、処理圧力は1Pa、処理時間は30分とした。(1)ではタンタル線の窒化が進行し、窒化タンタル線が形成された。図7の結果から、タンタル線の窒化が進むにつれて、初期抵抗値(P0)から抵抗値が上昇し、ほぼ最高値(P1)に達していることがわかる。これは、タンタル線が熱伸びしたと同時に、窒化によって比抵抗が増加したためと考えられる。
[(2)T1〜T2]
続いて、窒化タンタル線のホウ化処理を行った。ホウ化ガスとしてジボラン(B)が用いられ、処理圧力は1Pa、処理時間は3分間×2回+10分間とした。(2)では窒化タンタル線のホウ化が進行し、TaBN線が形成された。図7の結果から、窒化タンタル線のホウ化が進むにつれてP1から抵抗値が低下していることがわかる。これは、窒化ガス源がなく窒化が全く進まないので、結果として窒化タンタル線からの脱窒素のみが起きたためと考えられる。しかし、タンタル線の初期抵抗値(P0)よりは高い値(P2)で下げ止まっている。これは、ホウ化処理が進むにつれて窒化タンタル線の表面を被覆するホウ化物層が徐々に形成され、このホウ化物層によって脱窒素が抑制されたためであると考えられる。
[(3)T2〜T3]
次に、形成されたTaBN線を用いて、p型シリコン膜の成膜を行った。真空チャンバ内は引き続き1Paに調圧され、反応ガス(流量がそれぞれ25/90sccmのシラン(SiH)/ジボラン(B)ガス)が導入された。この処理は70秒間、間欠的に行われた。図7の結果から、(3)の間の抵抗値はほぼ安定な値(P2)で推移していることが示される。よって、TaBN線はp型シリコン膜等の成膜に用いられた場合でも、脱窒素及び熱伸び等の体積膨張がなく、安定した性質を保つことがわかる。さらにTaBN線を触媒線として用いる場合、本実験のように、共通の真空チャンバ内で触媒線の製造及び基板の成膜を連続的に行うことができるため、生産性の向上も図ることができる。
一方、図8は、異なるTaBN線(直径1mm)の断面について、それぞれEPMAで窒素強度を測定したときの実験結果であり、横軸は断面の直径方向における位置、縦軸は窒素強度を示している。(A)は製造後無処理のTaBN線サンプル、(B)は製造後、1700℃で30分間、1Pa下で真空通電したTaBN線サンプルの結果を示している。なお、図中「ref」は、窒素強度のバックグラウンドに相当し、いわば含有窒素のゼロレベルを示している。
図8の結果から、(A)と(B)の窒素強度に変化がなく、また(A)(B)ともに、表面近傍のみならず内部深くにまでほぼ一様な濃度で窒化されていた。さらに、両サンプルのタンタルと窒素の含有比を測定したところ、いずれもタンタル:窒素=1:0.05と同じ結果を示した。つまり、1700℃で30分間真空通電したTaBN線からの脱窒素はないと推認される。
さらに、図8(B)の加熱処理条件はp型シリコン膜等の成膜に用いられることから、TaBN線を触媒線として基板成膜をした際も脱窒素がなく、TaBN線が硬度・強度を維持できると考えられる。さらに、放出された窒素成分が基板成膜時に混入する可能性も否定できる。
以上のように、本実施形態によれば、触媒化学気相成長装置において、TaBN線は熱伸びせず、耐久性に優れた触媒線として利用でき、それによってコストの低減・生産性の向上が図れる。さらに、熱伸び等の変形がなく基板と触媒線との位置関係が維持できること、及び脱窒素もないことから、基板成膜時の膜質安定化も期待できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
例えば以上の実施形態では、通電加熱線として、触媒化学気相成長装置用の触媒線に適用した例を説明したが、これに限られず、ヒータ等を構成する抵抗加熱線にも本発明は適用可能である。
1…触媒化学気相成長装置
3…真空チャンバ
6…触媒線
S…基板
20…TaBN線

Claims (4)

  1. 一様な濃度で窒化された窒化タンタルからなる芯状の第1の層と、
    窒化タンタルのホウ化物からなり、前記第1の層を被覆する第2の層と
    を具備する通電加熱線。
  2. 一様な濃度で窒化された窒化タンタル線が設置された真空チャンバに、ホウ素を含有するガスを導入し、
    前記窒化タンタル線を通電加熱することで、前記窒化タンタル線の表面を被覆する窒化タンタルのホウ化物層を形成する
    通電加熱線の製造方法。
  3. タンタル線が設置された真空チャンバに、窒素を含むガスを導入し、
    前記タンタル線を通電加熱することで、前記タンタル線が一様な濃度で窒化された窒化タンタル線を形成し、
    前記窒化タンタル線が設置された前記真空チャンバに、ホウ素を含有するガスを導入し、
    前記窒化タンタル線を通電加熱することで、前記窒化タンタル線の表面を被覆する窒化タンタルのホウ化物層を形成する
    通電加熱線の製造方法。
  4. 真空チャンバと、
    一様な濃度で窒化された窒化タンタルからなる芯状の第1の層と、窒化タンタルのホウ化物からなり前記第1の層を被覆する第2の層とを有し、前記真空チャンバに設置された通電加熱線と、
    前記真空チャンバにガスを供給するガス導入系と
    を具備する真空処理装置。
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