以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
図1及び図2は本発明に係る媒体搬送装置としての原稿搬送装置(ADF(Auto Document Feeder))1の側断面図、図3は各ローラー及びレリースカム64を駆動する駆動装置30の斜視図、図4は駆動装置30の部分拡大斜視図、図5〜図7は駆動装置30の正面図であり、図5はモーター31のCW方向回転状態を、図6は同CCW方向回転状態を、図7は同CW方向回転によるレリースカム先行回転状態を、それぞれ示している。
また、図8〜図15において(A)は原稿搬送装置1の側断面概略図であり、図8〜図15において(B)は第1給送モード時のレリースカム64の状態図を、図8〜図15において(C)は第2給送モード時のレリースカム64の状態図を、それぞれ示している。尚、図8〜図15において(A)は、図1及び図2に示された原稿搬送経路を模式的に示したものであり、図面の煩雑化を避けるため図1及び図2に示された一部の構成要素にのみ符号を付している。
また、図16は原稿読み取り時の制御内容を示すフローチャートである。
また、図17は原稿検出センサー20の斜視図、図18はレリースカム64の回転動作を規制する規制手段65の断面斜視図、図19は規制手段65を構成する規制カム66のカム面66aの斜視図、図20は規制手段65を規制カム66の回転軸線方向に平行な面で切断した断面図である。
以下では、下記の順で本実施形態に係る原稿搬送装置1を説明することとする。
1.原稿搬送装置1の原稿搬送経路上の構成(概略)
2.駆動装置30の構成
3.原稿読み取り時の原稿送り制御
4.レリースカム64の逆転を防止する逆転防止手段の構成、作用
■■■1.原稿搬送装置1の原稿搬送経路上の構成(概略)■■■■■■■■■■■■
以下、図1及び図2を参照しながら原稿搬送装置1の原稿搬送経路上の構成について概説する。原稿搬送装置1は、図1及び図2では全体の図示を省略するインクジェットプリンターの、最も上部に設けられる。
より詳しくは、図1及び図2において符号90は用紙に記録を行う記録部を、符号80は記録部90の上部に設けられる原稿読み取り部としてのスキャナユニットを示しており、原稿搬送装置1は当該スキャナユニット80の上部に設けられる。符号2は原稿支持トレイを示しており、この原稿支持トレイ2上に媒体としての原稿が支持される様になっている(原稿セット位置)。
図1及び図2において符号Pは、原稿搬送装置1内を搬送される原稿の通過軌跡(搬送経路)を示しており、図1は原稿Pの第1面読み取り時の原稿搬送経路を示し、図2は原稿Pの第2面(第1面とは反対側の面)読み取り時の原稿搬送経路を示している。大略的には、原稿支持トレイ2に支持された原稿Pの上面が第1面であり、原稿Pがこの第1面を外側に湾曲反転することで第1面が下側となり、スキャナユニット80により読み取られる。
第1面のみを読み取る場合には、原稿Pはそのまま排出手段12により装置外部へ排出される。第1面に加えて第2面を読み取る場合には、原稿Pは排出手段12によって原稿先端側が一端装置外部に排出されるが、排出手段12の逆転によって装置内部に引き込まれ、スイッチバック経路Rsを経由して再び搬送手段9の上流側(より詳しくは中間送りローラー6の上流側)に送られる。そして第2面が下側となり、スキャナユニット80により第2面が読み取られた後、排出手段12の正転によって装置外部へと排出される。
以下、原稿搬送経路上の構成について更に詳説する。原稿支持トレイ2の先端側には、モーター31(図3)によって駆動される、媒体給送手段を構成する給送ローラー3が、図示を省略する昇降機構によって原稿支持トレイ2に積載された複数枚の原稿に対し接離動作することができる様に設けられている。そして給送ローラー3が原稿支持トレイ2に積載された複数枚の原稿のうち最上位のものに接した状態で回転することにより、当該最上位の原稿が下流側に送り出される。
給送ローラー3の下流側には、モーター31(図3)によって正転方向に駆動される分離ローラー5と、この分離ローラー5との間で原稿をニップする分離パッド4とが対向配置されている。そして送り出される原稿が分離ローラー5と分離パッド4との間でニップされることにより、送り出される原稿と、次位以降の原稿とが分離される様になっている。
分離ローラー5より下流側に設けられた符号6で示すローラーは、モーター31(図3)によって正転駆動される中間送りローラーを示し、符号7で示すローラーは中間送りローラー6に接して従動回転する従動ローラーである。
これら中間送りローラー6と従動ローラー7から下流側は、原稿を湾曲反転して搬送する湾曲搬送経路(湾曲反転経路)が形成されている。符号16はこの湾曲反転経路の一部を形成して原稿を下流側へ案内する媒体案内部材としての可動フラップを示している。この可動フラップ16は、揺動中心16aを中心に揺動可能に設けられており、揺動することにより、湾曲搬送経路の空間の大きさを変化させることができる様になっている。
湾曲反転経路の内側にはガイドローラー8が自由回転可能に設けられ、その更に下流側には原稿を下流側へ搬送する搬送手段(搬送ローラー対)9が設けられている。搬送手段9は、モーター31(図3)によって正転/逆転駆動される、大径の搬送駆動ローラー10と、この搬送駆動ローラー10との間で原稿をニップして従動回転する、従動ローラー11とを備えて構成されている。そして原稿がこれら搬送駆動ローラー10と従動ローラー11とでニップされた状態で搬送駆動ローラー10が正転することにより、更に下流側へと搬送される。
搬送駆動ローラー10と従動ローラー11の下流側では、原稿はスキャナユニット80を構成する原稿台ガラス81の上面に到達する。符号Y1はスキャナユニット80による原稿読み取り位置を示しており、この読み取り位置Y1に、読み取り手段としての読み取りセンサーを備えたセンサーキャリッジ83が停止した状態に置かれる。
即ち、このセンサーキャリッジ83は、原稿搬送装置1を利用しない読み取り時には主走査方向(図1の左右方向)に移動することで原稿台ガラス81に載置された原稿をスキャニングするが、原稿搬送装置1を利用した読み取り時には、読み取り位置Y1に停止し、原稿側が動くことでスキャニングが行われる。
読み取り位置Y1の下流側には、モーター31(図3)によって正転/逆転駆動される「固定側ローラー」としての排出駆動ローラー13と、これに接して従動回転する「可動側ローラー」としての従動ローラー14と、を備えて成る「媒体送りローラー対」としての排出手段12が設けられている。この排出手段12により、上述した通り読み取りの終了した原稿は装置外部の図示を省略する排紙受けトレイに向けて排出される。また、この排出手段12の逆転動作により、第2面読み取りの為に原稿がスイッチバック経路Rsに引き込まれる様になっている。
■■■2.駆動装置30の構成■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以上が原稿搬送装置1の原稿搬送経路上の構成であり、以下、主として図3〜図7を参照しながら各ローラー及びレリースカム64を駆動する駆動装置(動力伝達手段)30の構成について説明する。尚、図3では、図の煩雑化を避ける為に図4〜図7においては符号を付している歯車等の一部構成要素に符号は付していない。また、図5〜図7では、歯車32から中間ローラー6、搬送駆動ローラー10、のそれぞれへ動力を伝達する歯車、また歯車36から給送ローラー3、分離ローラー5、のそれぞれへ動力を伝達する歯車は、図示を省略している。
駆動装置30は、給送ローラー3、分離ローラー5、中間送りローラー6、搬送駆動ローラー10、排出駆動ローラー13、レリースカム64(後述)、のこれらを駆動する装置であり、1つのモーター31から、上記全ての駆動対象へと動力を伝達する。尚、制御部25は、モーター31を制御する制御手段である。
図3においてモーター31から右側への動力伝達経路(図5〜図7においてはモーター31から左側への動力伝達経路)が、中間送りローラー6及び搬送駆動ローラー10への動力伝達経路である。より具体的には、モーター31から搬送駆動ローラー10の回転軸10aへの動力伝達経路には、回転方向を切り換えたり駆動の伝達/切断を切り換える機構は介在しておらず、搬送駆動ローラー10はモーター31が正転すれば逆転し、逆転すれば正転する様に構成されている。尚、以下ではモーター31の正転方向を「CW方向」と言い、モーター31の逆転方向を「CCW方向」と言うものとする。
搬送駆動ローラー10の回転軸10aの端部には、遊星歯車機構を含むクラッチ機構60が設けられており、このクラッチ機構60を介して、回転軸10aから、中間送りローラー6の回転軸6aへと動力が伝達される様に構成されている。尚、クラッチ機構60は、モーター31の正転/逆転の如何に拘わらず、中間送りローラー6が常に正転する様に(原稿を下流側へ送る様に)、回転軸10aから中間送りローラー6へ動力を伝達する。尚、本明細書ではクラッチ機構60の構成について詳細な説明は省略する。
次に、図3においてモーター31から左側への動力伝達経路(図5〜図7においてはモーター31から右側への動力伝達経路)が、給送ローラー3、分離ローラー5、排出駆動ローラー13、レリースカム64(後述)、のこれらへの動力伝達経路である。
より具体的には、モーター31の回転軸に設けられた歯車32から、歯車33→歯車34→歯車34→歯車35→歯車37へと動力が伝達される。そして歯車37の回転が、第1遊星機構50を介して給送ローラー3及び分離ローラー5へと伝達される。
第1遊星機構50は、歯車37の回転軸52を中心に揺動可能な揺動部材51と、歯車37と一体的に形成され、歯車37と一体に回転する太陽歯車38と、揺動部材51に軸支されるとともに太陽歯車38と噛合し、太陽歯車38の周囲を遊星運動する第1遊星歯車39及び第2遊星歯車40と、のこれらを備えて構成されている。
そして太陽歯車38(歯車37)の回転方向切り換えにより、揺動部材51が揺動し、第1遊星歯車39が歯車36に噛合する状態(図5)と、第2遊星歯車40が歯車36に噛合する状態(図6)と、いずれの遊星歯車も歯車36に噛合しない状態(図7)と、が切り換わる様になっている。尚、太陽歯車38と揺動部材51との間には摩擦部材が介在しており、太陽歯車38から揺動部材51へ摩擦力によって回転トルクが伝達される様になっている。従って揺動部材51と太陽歯車38は、揺動部材51の揺動範囲では同期して回転し、揺動部材51が揺動限度に達すると両者の間で空回りできる様になっている。
図5はモーター31がCW方向に回転している状態を示している。この状態では、給送ローラー3が下降し且つ正転し、また分離ローラー5が正転している。即ち図5の状態は、原稿支持トレイ2から原稿を送り出すときの給紙状態を示している。尚、給送ローラー3を昇降させる機構(不図示)も、モーター31の回転方向によって上昇/下降を切り換える様になっており、モーター31がCW方向に回転すれば給送ローラー3を下降させ、CCW方向に回転すれば給送ローラー3を上昇させる。
尚、歯車36から給送ローラー3及び分離ローラー5へは、図示を省略するワンウェイクラッチを介して動力が伝達される様になっており、これにより給送ローラー3及び分離ローラー5は、モーター31がCW方向に回転すれば正転駆動されるが、CCW方向に回転しても駆動力が伝達されない様になっている(図6)。但し、この状態でも分離ローラー5は、原稿に接して連れ回りすることは可能となっている。
ところで、揺動部材51には、規制ブロック51a、51bが設けられている。また、揺動部材51に向けてワイヤー状の規制棒57が延びており、その先端が揺動部材51の円盤面に向けてL字状に曲がって先端57aを構成し、この先端57aが規制ブロック51a、51bと係合できる様になっている。規制ブロック51a、51b及び規制棒57は、揺動部材51の姿勢を拘束する手段を構成するものであり、揺動部材51の揺動動作に伴い、先端57aが規制ブロック51aの周囲を図5の破線fで示す様に辿ることができる様になっている。
より詳しくは、図6に示すモーター31のCCW方向回転状態から、モーター31の回転方向をCW方向に切り換えると、揺動部材51は図6に示す状態から同図の反時計回り方向に回転する。このとき、第1遊星歯車39が歯車36に噛合する前に、規制棒57の先端57aが規制ブロック51bに当接し、そして先端57aは規制ブロック51aと51bとの間の拘束位置51c(図7)に嵌り込む。
この状態では、引き続きモーター31がCW方向に回転しても、それ以上揺動部材51が図7の反時計回り方向に揺動することができず、即ち第1遊星歯車39が歯車36に噛合することができない。また、この状態では第2遊星歯車40も歯車36に噛合しない。つまり、モーター31がCW方向に回転し続ける限り、第1遊星歯車39及び第2遊星歯車40の双方が歯車36に噛合しない状態(以下、この状態を説明の都合上「レリースカム先行回転状態」と言う)が維持されることとなる。
この状態から、揺動部材51を図7の反時計回り方向に揺動させて、第1遊星歯車39を歯車36に噛合させたい場合には、モーター31を一端CCW方向に僅かに回転させる。すると、図5の破線fで示す軌跡の様に、規制棒57の先端57aが拘束位置51cから、図7において僅かに左側に移動することができる。これにより規制棒57の先端57aは、拘束位置51cから外れてフリーな状態になるので、再度モーター31をCW方向に回転させれば、図5に示す様に第1遊星歯車39が歯車36に噛合した状態を形成することができる。
以上説明した様に、規制棒57、規制ブロック51a、51b、のこれらは、揺動部材51を中間位置(第1遊星歯車39及び第2遊星歯車40の双方を歯車36に噛合させない位置)に拘束する拘束手段を構成する。そして揺動部材51が中間位置(図7)にあるときは、モーター31がCW方向に回転しても、給送ローラー3及び分離ローラー5を停止させた状態を維持することができ、そしてその状態で後述するレリースカム64を回転させることができる。
続いて、図5〜図7において歯車37から右側の動力伝達経路について説明する。歯車37からは、歯車41、歯車42、の順に動力が伝達される。歯車42は排出駆動ローラー13の回転軸13aの軸端に取り付けられた歯車であり、即ちモーター31から排出駆動ローラー13への動力伝達経路には、回転方向を切り換えたり駆動の伝達/切断を切り換える機構は介在しておらず、この為排出駆動ローラー10はモーター31のCW方向回転により逆転し、CCW方向回転により正転する。これは、中間ローラー6、排出駆動ローラー10、のこれらと同様である。
歯車42かららは、歯車43、歯車44、の順に動力が伝達される。歯車44の回転が、第2遊星機構54を介してレリースカム64へと伝達される。
以下では先ず、第2遊星機構54の構成の説明に先立って、レリースカム54について詳説する。
レリースカム54は、回転することにより排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13から離間させるカムである。図3に示す様に、排出従動ローラー14は「ローラー支持部材」としてのフレーム15によって支持されている。尚、本実施形態では排出駆動ローラー13は回転軸13aの軸線方向に適宜の間隔を空けて複数設けられており、排出従動ローラー14は複数の排出駆動ローラー13に対して1対1で対応する様に、フレーム15において複数支持されている。
フレーム15は、下流側端部にカムフォロワ15aを有しており、カムフォロワ15aが図8(B)の上下に変位することにより、フレーム15は上流側端部を支点にして揺動する。これにより、フレーム15は排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13に接触させる姿勢(例えば、図8(B))と、排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13から離間させる姿勢(例えば、図11(B))と、をとり得る様になっている。尚、フレーム15は、付勢手段であるコイルばね17(図3)によって排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13に接する方向に付勢された状態に設けられている。
そしてレリースカム64はカムフォロワ15aの下部においてカムフォロワ15aと係合可能に設けられ、回転することにより、レリースカム64に形成されたカム部64aがカムフォロワ15aを押し上げ(図11(B))、排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13から離間させる。即ち、レリースカム64は、1回転動作中に排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13に接触させる接触期間と、排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13から離間させる離間期間とを形成する。
このレリースカム64は、カム軸63に設けられており、このカム軸63の軸端に取り付けられたカム駆動歯車としての歯車49に動力を伝達するのが、第2遊星機構54である。以下、この第2遊星機構54について詳説する。
図5〜図7において、第2遊星機構54は、歯車44の回転軸56を中心に揺動可能な揺動部材55と、歯車44と一体的に形成され、歯車44と一体に回転する太陽歯車45と、揺動部材55に軸支されるとともに太陽歯車45と噛合し、太陽歯車45の周囲を遊星運動する第1遊星歯車46及び第2遊星歯車47と、のこれらを備えて構成されている。そして太陽歯車45(歯車44)の回転方向切り換えにより、揺動部材55が揺動し、第1遊星歯車46が歯車49に噛合する状態(図5)と、第2遊星歯車47が歯車48に噛合する状態(図6)と、が切り換わる様になっている。
尚、太陽歯車45と揺動部材55との間には摩擦部材が介在しており、太陽歯車45から揺動部材55へ摩擦力によって回転トルクが伝達される様になっている。従って揺動部材55と太陽歯車45は、揺動部材55の揺動範囲では同期して回転し、揺動部材55が揺動限度に達すると両者の間で空回りできる様になっている。
ここで、レリースカム64のカム軸63の軸端に取り付けられた歯車49は、より具体的には図4に示す様に全周囲に歯が形成された全周歯車部49aと、一部に欠歯部49cが形成された一部歯車部49bと、で構成されている。そしてモーター31のCW方向回転時に機能する第1遊星歯車46は、歯車49のうち全周歯車部49aと噛合し、モーター31のCCW方向回転時に機能する第2遊星歯車47が噛合する歯車48が、一部歯車部49cと噛合している。
つまり、モーター31のCW方向回転時には、歯車49、即ちレリースカム64は常時回転する。しかしモーター31のCCW方向回転時には、歯車49、即ちレリースカム64は、歯車48が一部歯車部49bに臨む状態では回転するものの、歯車48が欠歯部49cに臨むことによって回転が停止する様になっている。尚、この様にモーター31がCCW方向回転を継続することでレリースカム64が停止した状態(図8(B)はこの状態を示している)を、レリースカム64の「基準姿勢」と言うこととする。
尚、図5〜図7に示した歯車の回転方向を示す矢印の通り、レリースカム64(歯車49)は、モーター31の回転方向の如何に拘わらず、一定方向に回転する様になっている。レリースカム64についてモーター31の回転方向による違いは、上述の通り継続して回転することができるか、途中で回転が停止するか、の違いとなる。
以上が、駆動装置30の構成と主な動作となる。
■■■3.原稿読み取り時の原稿送り制御■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以下、主として図8〜図16を参照しながら、原稿読み取り時における原稿送り制御について説明する。
本実施形態に係る原稿搬送装置1は、原稿の搬送方向長さに応じて、原稿送り制御が異なる様に構成されている。
以下では先ず、原稿の搬送方向長さを検出する手段について説明する。図1において、原稿支持トレイ2の上方には、原稿の送り出し開始前(給紙動作開始前)に、原稿支持トレイ2上の原稿の搬送方向長さの目安を検出する為の検出レバー20が設けられている。この検出レバー20は、より具体的には図17に示す様に、原稿の幅方向に渡って複数設けられており、本実施形態では検出レバー20a、20b、20c、20d、のこれら4つで構成されている。尚、各検出レバーは、図示を省略する検出部(発光部と受光部とからなる)によって姿勢が検出される様になっている。
検出レバー20a、20bは、本実施形態ではA4サイズ原稿の縦方向セット時に原稿と当接する位置に設けられている。従って検出レバー20a、20bが上方に押し上げられているとき、制御部25は、セットされている原稿の幅が少なくともA4サイズ原稿の縦方向セット時のものであると判断することができる。つまり、換言すればセットされている原稿の搬送方向の長さが、A4サイズ原稿の縦方向セット時のものであると判断できる。
また、検出レバー20cは、本実施形態ではB4サイズ原稿の縦方向セット時に原稿と当接する位置に設けられている。従って検出レバー20a、20b、20cが上方に押し上げられているとき、制御部25は、セットされている原稿の幅が少なくともB4サイズ原稿の縦方向セット時のものであると判断することができる。つまり、換言すればセットされている原稿の搬送方向の長さが、B4サイズ原稿の縦方向セット時のものであると判断できる。
更に、検出レバー20dは、本実施形態ではA4サイズ原稿の横方向セット時、或いはA3サイズ原稿の縦方向セット時に原稿と当接する位置に設けられている。従って検出レバー20a〜20dの全てが上方に押し上げられているとき、制御部25は、セットされている原稿の幅が少なくともA4サイズ原稿の横方向セット時、或いはA3サイズ原稿の縦方向セット時のものであると判断することができる。つまり、換言すればセットされている原稿の搬送方向の長さが、A4サイズ原稿の横方向セット時のもの、或いはA3サイズ原稿の縦方向セット時のものであると判断できる。
以上の通り、原稿の給紙前に、セットされている原稿の搬送方向長さのおおよその目安を検出することができる様になっている。そして本実施形態に係る原稿搬送装置1では、特に原稿の搬送方向長さが短い場合(一例として、A4サイズ横方向セットの場合)には、原稿給紙動作開始前にレリースカム64を基準姿勢から所定量回転させておく。図16のステップS101の分岐「A4サイズ横方向」の場合に実行されるステップS102「レリースカム先行回転動作」が、それに当たる。この「レリースカム先行回転動作」を行う原稿給送モードが第2給送モードであり、「レリースカム先行回転動作」を行わない原稿給送モードが第1給送モードとなる。
<<第1給送モード>>
以下では先ず、「レリースカム先行回転動作」を行う必要のない原稿(例えばA4サイズ縦方向の原稿)の両面を読み取る場合(第1給送モードの利用)について説明する。
図8(A)は、給送ローラー3による原稿送り出し動作前(給紙動作開始前)の状態を示している。この状態では、レリースカム64は図8(A)に対応する図8(B)に示す様な基準姿勢にある。尚この状態は、前回の原稿排出動作が終了した状態でもあり、駆動装置30は図6の状態にある。
この状態から原稿給送動作を開始する為には(図16においてステップS103)、モーター31をCW方向に回転させる。すると、上述した様に第1遊星機構50を構成する揺動部材51は揺動途中で動作が拘束されるので(図7)、一旦モーター31の駆動をCCW方向に切り換え、そして僅かに回転させ、その後再びCW方向に切り換える。これにより、駆動装置30は図6→図7→図5の順に切り換わり、給送ローラー3は下降し且つ正転する状態となり、分離ローラー5は正転する状態となる。
尚、レリースカム64はモーター31の回転方向に拘わらず回転するよう構成されているが、より具体的には第2遊星機構54の遊星切換(第2遊星歯車47と歯車48とが噛合した状態から、第1遊星歯車46が歯車49に噛合する状態への切り換え)が介在するので、この遊星切換が介在する間は、レリースカム64は回転せず、遊星切換が行われてから回転をはじめる。
図9(A)は、送り出された原稿Pの先端が中間送りローラー6に到達し、僅かに下流側に送り出された状態を示している。この状態においてレリースカム64のカム部64aは、図9(A)に対応する図9(B)に示す様に、フレーム15のカムフォロワ部15aに当接し、フレーム15を上方に押し上げはじめる。
その後、原稿Pの先端が図10(A)に示す様に搬送駆動ローラー10と従動ローラー11とのニップ点に達する。このときのレリースカム64の状態は、図10(A)に対応する図10(B)に示す通り、フレーム15を所定量押し上げ、これにより排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13から離間している。
尚、原稿Pの先端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11とのニップ点に達するとき、モーター31はCW方向に回転しており、搬送駆動ローラー10は逆転の状態となっているので、このままでは原稿Pを下流側へ送ることができない。よって、モーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換える(図5→図6への切り換え)。これにより、原稿Pは搬送駆動ローラー10と従動ローラー11とによってニップされ、下流側へと送られる。尚、上記の様に逆転している搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間のニップ点に原稿P先端が突き当たることで、原稿Pのスキューが除去される様になっている。
尚、モーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換える際には、第1遊星機構50を構成する揺動部材51は規制棒57からの拘束は受けないので、モーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換えれば、第2遊星歯車40が歯車36に噛合し(図6)、給送ローラー3は上昇し且つ駆動が停止し、分離ローラー5の駆動が停止する。
更に原稿Pの搬送が進むと、原稿Pは読み取り位置Y1を通過し、この通過時に第1面の原稿読み取りが行われる(図16においてステップS104)。そしてその後、原稿Pの先端が図11(A)に示す様に排出駆動ローラー13に到達する。このとき、レリースカム64は図11(A)に対応する図11(B)に示す様にフレーム15を押し上げているので、排出従動ローラー14は排出駆動ローラー13から離間しており、従って依然として搬送駆動ローラー10が原稿Pの搬送を担っている。
更に原稿Pの搬送が進むと、原稿Pの後端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間を抜けようとする(図12(A))。このとき、レリースカム64は図12(A)に対応する図12(B)に示す様に、カム部64aがカムフォロワ部15aから離れた位相にあるので、排出駆動ローラー13に排出従動ローラー14が接した状態に戻っており、即ち両ローラーによって原稿Pを搬送可能な状態となっている。従って原稿Pの後端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間を抜けても、原稿Pは停止することなく確実に搬送される。
尚、搬送従動ローラー10の上流側近傍には、原稿Pと接触/接触解除することにより揺動する検出レバー21が設けられている。検出レバー21は、図示を省略する検出部(発光部と受光部とからなる)によって姿勢が検出される様になっており、制御部25は検出レバー21の揺動によって、原稿P先端と後端の通過を検出し、これにより実際の原稿Pの搬送方向長さを検出できる様になっている。
次いで、更に原稿Pの搬送が進むと、原稿Pの後端が排出駆動ローラー13と排出従動ローラー13との間を抜けようとする(図13(A))。原稿Pの第1面とは反対側の第2面について読み取りを行わない場合には(ステップS105においてNo)、そのまま原稿Pは排出される。
第2面について読み取りを行う場合には(ステップS105においてYes)、原稿P後端が経路切換フラップ18を通過してから、モーター31をCCW方向回転からCW方向回転に切り換える(図6→図7→図5)。これにより、排出駆動ローラー13が逆転するので、原稿Pは装置外部には排出されず、装置内部へと引き込まれる。このとき、経路切換フラップ18は下降しているので、原稿P後端はスイッチバック経路Rsに引き込まれる(図16においてステップS106)。
ところで、モーター31をCCW方向回転からCW方向回転に切り換える前の段階では、レリースカム64は図13(A)に対応する図13(B)に示す様に、図12(B)に示した段階から回転しておらず、基準姿勢をとっている。これは、図4を参照しながら説明した様に、モーター31がCCW方向に回転するときは、歯車48が欠歯部49cに臨むことによって、レリースカム64が基準姿勢で停止する様になっているからである。従って原稿Pのスイッチバック経路Rsへの引き込みを開始するときは、レリースカム64は基準姿勢からスタートする。
原稿Pのスイッチバック経路Rsへの引き込みが進むと、原稿先端(第1面読み取り時は後端であった側)が、搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間に到達する(図14(A)。このときのレリースカム64の状態は、図14(A)に対応する図14(B)に示す通り、フレーム15を所定量押し上げ、これにより排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13から離間している。
このとき、モーター31はCW方向に回転しており、搬送駆動ローラー10は逆転の状態となっているので、搬送駆動ローラー10を正転に切り換えるべく、モーター31をこのままでは原稿Pを下流側へ送ることができない。よってモーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換える(図5→図6への切り換え)。この動作は、第1面読み取り時と同様であり、以降は搬送駆動ローラー10によって原稿Pが搬送されながら、第2面の読み取りが行われる(図16においてステップS107)。
ここで、本実施例での原稿(第1の媒体)の長さは、排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間から、スイッチバック経路Rsを経由して再び排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間に至るまでの搬送経路長よりも長い。従って原稿先端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー14との間に達したとき、原稿後端はまだ排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間に残っている。
この状態でモーター31の回転方向切り換え(CW→CCW)を行うと、排出駆動ローラー13が逆転から正転に切り換わり、原稿後端を装置外部に排出する様に作用してしまう。しかしながらこのとき、排出従動ローラー14は排出駆動ローラー13から離間しているので、排出駆動ローラー13が逆転から正転に切り換わっても、原稿Pは搬送駆動ローラー10の回転に従って下流側へ送られる。
そしてその後、原稿Pの先端が図15(A)に示す様に排出駆動ローラー13に到達する。このとき、原稿後端は未だ排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間に残っているが、レリースカム64は、図15(A)に対応する図15(B)に示す様に、フレーム15を上方に押し上げている。従ってこれにより、原稿後端と原稿先端との擦れ合いが防止される。
そして原稿後端が排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間から抜けた後、レリースカム64は基準姿勢に戻り、排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14とが接した状態に戻る。従って第2面読み取りの行われた原稿は、その後端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間から抜けても、排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14とによって下流側へ送られ、適切に装置外部に排出される(図16においてステップS108)。
以上説明したようにレリースカム64は、1回転動作中に排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13に接触させる接触期間と、排出従動ローラー14を排出駆動ローラー13から離間させる離間期間とを形成する。より具体的には、基準姿勢では接触期間を形成しており、その後所定角度回転した状態から離間期間を形成し、所定角度離間期間を維持し、そして最後に接触期間を形成する様に、カム部64aが形成されている。この様にカム部64aが離間期間を形成することで、上述した様に原稿の第2面読み取り時に、原稿先端と原稿後端との擦れ合い(排出手段12での原稿先端と後端の同時ニップ)を防止できる。
ここで、この様な接触期間と離間期間の設定は、特定の原稿サイズ(本実施形態では、A4縦方向)に対して設定されている。従ってこの様な特定の原稿サイズの両面読み取りに際しては、レリースカム64は適切に接触期間と離間期間を形成するが、これよりも短い原稿の場合には、以下の様な問題が発生する。つまり、短い原稿の場合、第1面読み取り時に原稿後端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間から抜けるとき、原稿先端が排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間に到達していても、排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13から離間しているので(図11(B))の状態、当該短い原稿はいずれのローラーにもニップされず、搬送されない事態が生じ、読み取り不良が生じてしまう。
<<第2給送モード>>
そこでこの様な事態の発生を防止する為に、原稿給送動作開始前に、セットされている原稿の幅がA4サイズ横方向(「短い原稿」の一例)であることを検出すると(ステップS101において「A4サイズ横方向」)、レリースカム64の先行回転動作を実行する。尚、本実施形態では原稿給送動作開始前は、原稿の幅が「A4サイズ横方向」と判断できる場合には、実際にセットされている原稿が「A3サイズ縦方向」である可能性がある。しかしながら、後述する様に第2給送モードは原稿の搬送方向長さが短い場合の不具合を解消するものであり、実際にセットされている原稿が「A3サイズ縦方向」であっても、当該原稿の搬送には何ら悪影響を与えない。
レリースカム64の先行回転動作は、以下の様にして行われる。先ず、レリースカム64は、原稿の幅を検出した時点(給送動作開始前)では図8(B)に示す様な基準姿勢をとっており、駆動装置30はCCW状態(図6)となっている。
この状態から、モーター31をCW方向に回転させる。すると、上述した様に第1遊星機構50を構成する揺動部材51は揺動途中で動作が拘束され(図7)、直ちに給送動作(給送ローラー3の下降&正転)は行われない。また、第2遊星機構54も遊星切換が介在するので、レリースカム64は直ちには回転しない。
しかしながら、第1遊星機構50を構成する揺動部材51は揺動途中で動作が拘束されるので、この状態でモーター31のCW方向回転を継続する限り、給送動作(給送ローラー3の下降&正転)は行われない。従ってこの性質を利用し、モーター31のCW回転によって、レリースカム64を所定角度回転させる。
その後、一旦モーター31の駆動をCCW方向に切り換え、そして僅かに回転させ、その後再びCW方向に切り換える。これにより、駆動装置30は図6→図7→図5の順に切り換わり、給送ローラー3は下降し且つ正転する状態となり、分離ローラー5は正転する状態となる。
図8(B)と図8(C)は、第1給送モードと第2給送モードとの間における、給送動作開始時のレリースカム64の姿勢の違いを示すものである。図8(C)に示す様に、第2給送モードでは給送動作開始時に既にレリースカム64が所定角度回転している(先行回転)。以降、図9〜図11において各図(B)に示すレリースカム64の状態と、各図(C)に示すレリースカム64の状態と、の対比から明かな様に、第2給送モードにおいてはレリースカム64は第1給送モードのときに比べて先行して回転している。
従ってこれにより、レリースカム64の制御上、原稿長さの短い分がいわば補填された様な状態となり、帳尻が合うこととなる。よって、短い原稿について第1面読み取り時に原稿後端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11との間から抜けるとき、原稿先端は排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14との間にニップされることとなり、読み取り不良を防止することが可能となる。
尚、レリースカム64は、上述したように特定の原稿サイズ(第1の媒体:本実施例では、A4縦方向)の第2面読み取り時に、原稿先端と原稿後端との擦れ合いを防止すべく形成されている。従ってそれより短いサイズの原稿の場合、第2面読み取りは行うことができない。原稿給送動作開始前と異なり、原稿が排出駆動ローラー13と排出従動ローラー14とによってニップされているため、レリースカム64の先行回転動作を行おうとしても、排出駆動ローラー13の回転によって原稿が送られてしまうからである。
■■■4.レリースカム64の逆転を防止する逆転防止手段の構成、作用■■■■■■
以下、レリースカム64の逆転を防止する逆転防止手段の構成、作用について主として図18〜図20を参照しながら説明する。
図18〜図20において符号65はレリースカム64の逆転を防止する逆転防止手段を示している。以下では先ず、この逆転防止手段65の作用(必要性)について説明する。
レリースカム64は、図5〜図7を参照しながら説明した様に駆動装置30を介してモーター31から動力を得るが、その動力伝達経路には第2遊星機構54が介在しており、この第2遊星機構54によってモーター31の回転方向に拘わらず、正転駆動される様になっている。しかしながら、モーター31の回転方向切り換え時、第1遊星歯車46が噛合相手の歯車49から離間し、且つ第2遊星歯車47が噛合相手の歯車48から離間する状態が、僅かな間形成される。即ち、レリースカム64にモーター31のトルクが掛からない時間が生じ、レリースカム64がフリーな状態となる。
このフリーな状態が形成されるときに、レリースカム64がフレーム15のカムフォロワ部15aを押し上げている(離間期間を形成している)と、レリースカム64はフレーム15を付勢するコイルばね17からの付勢力を受け、逆転してしまい、意に反して排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13に接する接触期間が形成されてしまう虞がある。
逆転防止手段65は、このようなレリースカム64の逆転を防止するものであり、この逆転防止手段65は「被規制部材」としての被規制カム66と、「規制部材」としてのカムフォロワ68a、68aと、を備えて構成されている。
被規制カム66は、図3に示す様にレリースカム64の回転軸であるカム軸63に取り付けられ、レリースカム64と一体に回転する様に設けられている。レリースカム64は、図18〜図20に示す様にその側面(円盤面)に「被規制面」としてのカム面66aを備えている。
一方、符号68は被規制カム66の上方に設けられるフレームを示しており、このフレーム68に、カム面66aと対向する位置まで伸びるアーム部68bが形成され、そして当該アーム部68bに、被規制カム66のカム面66aに向けて突出する様にカムフォロワ部68aが形成されている。尚、本実施形態では、カムフォロワ部68aはカム軸63に対して両側に、対称となる位置に設けられている。
他方、被規制カム66はレリースカム64と一体に回転できる様にカム軸63に設けられているが、カム軸63の軸線方向には僅かに変位可能な様に設けられている。そして当該被規制カム66が、カムフォロワ部68aに向けてコイルばね67によって付勢され、これによってカム面66aとカムフォロワ部68aとが常時接触できる様になっている。
尚、コイルばね67の付勢力は、カム面66aがカムフォロワ部68aに接触できる様に設定されていれば良く、必要以上にカム面66aがカムフォロワ部68aに圧設する様に設定する必要はない。カム面66aとカムフォロワ部68aとの間の摩擦力が大きくなると、カム軸63を駆動するモーター31に大きな負荷が掛かり、好ましくないからである。
図18、図19において矢印rは被規制カム66(カム軸63)の回転方向を示しており、図19において矢印Tは、被規制カム66の回転に伴ってカムフォロワ部68aがカム面66a上をトレースするルートを示している。ここでカム面66aには段差(カム軸63の回転軸線方向における高低差のこと)が形成されており、位置M1が最も高く、位置M3が位置M1より低く、位置M0が位置M3より更に低くなっている。符号M2は、位置M1から位置M3へ案内する案内斜面を示している。
レリースカム64が基準姿勢をとるとき(図8(B))、カムフォロワ部68aは最も低い位置(凹部)M0に入り込んでいる。これにより、レリースカム64が基準姿勢から容易に動くことがなく、基準姿勢が安定して維持される様になっている。
この状態から原稿給送動作が開始され、即ちレリースカム64が回転を始めると、カムフォロワ部68aはルートTに示す様にカム面66aをトレースする。ここで、原稿Pの先端が図10(A)に示す様に搬送駆動ローラー10と従動ローラー11とのニップ点に達するとき、上述した通りレリースカム64の状態は、図10(A)に対応する図10(B)に示す通り、フレーム15を所定量押し上げ、これにより排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13から離間している。
そして、原稿Pの先端が搬送駆動ローラー10と従動ローラー11とのニップ点に達するとき、モーター31はCW方向に回転しており、搬送駆動ローラー10は逆転の状態となっているので、このままでは原稿Pを下流側へ送ることができない。よって、既に説明した様にモーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換える(図5→図6への切り換え)。このとき、第2遊星機構54には上述した様に2つの遊星歯車のいずれもが噛合相手から離間する状態が形成されるので、上述した様にレリースカム64がフリーとなり、逆転してしまう虞がある。
しかしながらモーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換える前に、逆転防止手段65ではカムフォロワ部68aは既に案内斜面M2の領域に入り込むように、カム面66aが形成されている。カムフォロワ部68aが案内斜面M2の領域に入り込むと、カムフォロワ部68aが案内斜面M2を滑り落ちる作用が生じ、これによりカムフォロワ部68aが被規制カム66を図19の矢印r方向、即ち正転方向に回転させようとする。つまり、逆転防止機能が発揮される。
このように、モーター31の駆動をCW方向からCCW方向に切り換える時点では、逆転防止手段65が既にレリースカム64の逆転防止機能を発揮している。従ってこれにより、モーター31の回転方向切り換え時に、意に反して排出従動ローラー14が排出駆動ローラー13に接触してしまうことを防止することができ、一連の適切な原稿給送動作を実行することができる。
以上の様な逆転防止手段65によれば、カム面66aとカムフォロワ部68aとの間の摩擦力によって逆転防止効果を発揮するのではないことから、モーター31に大きな負荷を掛けることがない。
そして、レリースカム64及び被規制カム66の一回転動作中においてレリースカム64がコイルばね17の付勢力に抗してフレーム15を押し上げる動作を行う位相と、「規制部材」としてのカムフォロワ部68aが案内斜面M2を高位置M1から低位置M3に向けて滑り落ちる位相と、が少なくとも一部で重なっている。従ってカムフォロワ部68aが被規制カム66に与える正転方向rの回転力(トルク)が、レリースカム64がフレーム15を押し上げる動作(負荷)をアシストすることとなり、モーター31に要求されるトルクを小さく抑えることができる。
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。例えば、逆転防止手段65の構成として、ラチェット機構を採用し、これにより一回転動作中の全領域、或いは必要な領域で逆転防止機能が得られる様に構成しても良い。