JP5703133B2 - ウェハの研磨方法及びナノバブル循環型研磨装置 - Google Patents
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Description
かかる研磨装置は、研磨方式として、研磨剤による研磨方式を採用する。この研磨剤による研磨方式では、回転する下定盤上に載置された水晶片の表面及び裏面付近に、研磨剤及び水を含む混合液であるスラリーを供給しながら、回転する上定盤を下定盤方向に移動させることにより、ウェハの表面及び裏面を研磨する(例えば、特許文献1参照)。
所定の厚さまで研磨されたウェハは、例えば、そのウェハが水晶である場合、水晶発振器や水晶振動子に用いられる水晶片の製造に用いられる。
研磨剤に用いられる砥粒は、例えば、ダイヤモンド、アルミナ、ジルコニウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、酸化マンガン、シリカ系(コロイダルシリカ、フュ−ムドシリカ)材料が用いられている。
分散剤は、例えば、各種アミン、グリコール、が用いられている。
化学反応を伴う加工方法には、例えば、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、酸(フッ酸、塩酸、硝酸等)、各種金属の塩(硫酸銅、フェリシアン化カリウム等)、キレート剤(グリシン、EDAT等)、酸化還元剤(過酸化水素、クロム酸、シュウ酸等)が用いられる。
なお、研磨剤とともにナノバブルを用いた研磨方式も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
このような研磨剤を用いた研磨方式を用いると、研磨された水晶ウェハの洗浄に手間取るといった課題もある。研磨された後の水晶ウェハは、研磨剤を含む水溶液が表面に付着しており、これを除去する洗浄が繰り返し行う必要があった。そのため、製造コストが増大するという課題があった。
また、砥粒を用いた研磨では、砥粒の粒径によってウェハに変質層が形成されてしまう。この変質層がウェハに存在することによって、ウェハが欠けたり、割れたりすることがあった。また、研磨剤に用いられる砥粒は、資源の枯渇により入手が困難になる恐れがある。そのため、ウェハを研磨することができなくなり、ウェハより生産される部品を製造できなくなる恐れもある。
また、本発明の一つの態様によるウェハの研磨方法において、フッ化物の塩、強塩基性試薬、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウム等を使用することで、気泡が細かく砕き、容易にマイクロバブルの大きさに生成することができる。
また、フッ化物の塩、強塩基性試薬、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウム等を使用することで、発生させたナノバブルを溶液中に安定して長期間、存続させることができる。したがって、溶液中のナノバブルの濃度が薄まるのを防ぐことができる。
また、本発明の一つの態様によるウェハの研磨方法は、ナノバブルの生成が容易であるため、ナノバブルの再利用および補充を容易に行うことができる。
ウェハについて説明する。
ウェハWは、例えば、水晶が用いられ図示しないが円盤形に形成されている。このウェハWは、X軸、Y軸、Z軸からなる水晶の結晶軸のうちの所定の1方向と直交する方向に切り欠きが設けられた状態となっている。
なお、ウェハWの形状は、四角い板状に形成されていても良い。
また、ウェハWは、Si,SiO2,C(ダイヤモンド),GaN,AlN,SiC,Cu,W,セラミックスのいずれか1つを用いることができる。
まず、研磨装置10の主な構成について説明する。
図1(a)に示すように、研磨装置10は、センターギア11と、このセンターギア11を回転軸とする下定盤12と、この下定盤12の縁側に配置されるインターナルギア13と、このセンターギア11を回転軸としつつ前記下定盤12と向かい合うように配置される上定盤14とから構成される。
なお、この研磨装置10では、ウェハWを下定盤12に配置するためのキャリアKが用いられる。
すなわち、下定盤12は、センターギア11の先端付近の周囲に回転可能に設けられ、センターギア11の外径より大きい内径を有するようにして、中央部分に形成されたセンターギア挿通用貫通孔に、センターギア11の先端部分が挿通されている。
なお、下定盤12の盤面は、研磨面となる。
すなわち、インターナルギア13は、下定盤12の周囲付近に回転可能に設けられ、下定盤12の外径より大きい内径で形成された内周面に、歯が形成された構成となっている。
このキャリアKには、研磨対象のウェハWを挿通することができる程度の内径、すなわち、ウェハWより大きい面積を有する研磨対象物収容用貫通孔KHが、外周に沿うようにして複数形成されている。なお、キャリアKは、ウェハWの厚さより薄い厚さを有するように形成されている。
このキャリアKは、当該キャリアKとセンターギア11とを歯合させると共に、当該キャリアKとインターナルギア13とを歯合させるようにして、下定盤12の盤面上に載置される。
また、上定盤14の上方には、溶液を供給するためのパイプ14aが設けられると共に、上定盤14の中央部分には、パイプ14aと連通するようにして研磨液供給用貫通孔14Hが形成されている。これにより、溶液は、上方からパイプ14aに流し込まれると、パイプ14a及び研磨液供給用貫通孔14Hを通じて、ウェハWの表面及び裏面付近に供給される。
次に、循環系設備20について説明する。
なお、フッ化物の塩としてはフッ化カリウム水溶液を用いることができ、強塩基性試薬としては水酸化カリウム溶液を用いることができる。
また、ここでは、気体を空気として説明するが、気体は空気以外に、O2,O3,N2,CO2,又はこれらの混合物のいずれかを用いることができる。
ここで、ナノバブルの生成について説明する。
ナノバブルの生成には主に3種類の方法がある。まず、1つ目の方法は、マイクロバブル発生装置により最初からナノバブルとして生成する方法である。このひとつめの方法は、マイクロバブル生成装置でマイクロバブルを生成したときと同時にナノバブルが生成される。しかし、生成されるマイクロバブルは、研磨で用いられるほど多くない。
これは、ナノバブルも同様であるが、マイクロバブルは中心の気体の体積に対して表面積が大きく、周囲から大きな圧力、つまりマイクロバブル界面に生じる周囲の液相の表面張力を受けている。そのため、マイクロバブル内の気体は圧力をかけられるほど液体に対しての溶解度を増す(ヘンリーの法則)。これによりマイクロバブルは、内部の気体が周囲の液相に溶解してその径を小さくしていき、さらに、気泡の径が小さくなることにより、気泡にかかる圧力はさらに大きなものとなるため、さらに気泡の径は小さくなる。このように、気泡径の縮小により、気泡内の圧力の上昇と気泡内の気体の溶解度の上昇、気泡内の気体のモル数の低下と気泡径の縮小の連鎖が起こる。したがって、気泡が小さくなればなるほど、気泡径の縮小速度は増加し、最終的には気泡は完全に溶液中に溶解し消滅してしまうことになる。
したがって、本発明は、この3つ目の方法を用いてナノバブルNBを発生させている。
なお、ブラウン運動とは、溶媒中の微粒子が不規則な運動をすることをいう。
ナノバブル発生装置21は、第一配管部21を用いて攪拌部へナノバブルNBを含む溶液Yを供給し、第二配管部26を用いて攪拌部22に溜まっている溶液Yを供給されるようになっている。
研磨装置10は、例えば、いわゆる4ウェイ駆動方式を採用している。この研磨装置10は、研磨を実行する際に、ウェハWを下定盤12と上定盤14とで挟んで所定の圧力をかけた状態にし、図示しない駆動手段によって、同一の回転軸を中心として、センターギア11、インターナルギア13及び下定盤12を異なる角速度で同一の方向に回転させると共に、上定盤14を当該方向と逆方向に回転させながら研磨を行う。
このとき、図2に示すように、ウェハWと上定盤14との間、およびウェハWと下定盤12との間にはナノバブルNBを含む溶液Yが介在している。
これにより、キャリアKは、自転しながら、センターギア11の周囲を公転する。
研磨装置10による研磨は、研磨対象のウェハWの厚さが、キャリアKの厚さに達する前まで行われる。
ウェハWは、溶液Yに含まれるナノバブルNBの界面に密集したイオンにより表面が変性(水和層)されるとともに、定盤より圧力を受けたナノバブルから圧力を加えられることで表面に微小のクラックWCを生じさせられる。または、ナノバブルから圧力を受けたウェハ表面に生じる微小のクラックWCに対してナノバブルNBが選択的に作用し、クラックWC部よりナノバブルNBの界面に密集したイオンにより溶解させられる。
そのため、ナノバブルNBは、上定盤14、下定盤12が回転運動することによりウェハWの表面を動き、クラックWCが入ったウェハWの変質部分を容易に除去することができる。つまり、ナノバブルNBの周囲のイオンとウェハWとが化学反応し、その後、ナノバブルNBがウェハWを破砕することで研磨が進行する。
実施例1において、ナノバブルNBは、フッ化カリウム水溶液に生成される。このとき、図3に示すように、ナノバブルNBのフッ化カリウム水溶液の界面は、水酸化物イオン(OH−)に覆われた状態となる。また、その水酸化物イオン(OH−)の周囲をカリウムイオン(K+)や水素イオン(H+)が覆う状態となる。さらに、フッ化物イオン(F−)がカリウムイオン(K+)や水素イオン(H+)のプラスの電荷に引き寄せられて周りに集まった状態となる。
このナノバブルNBが水晶ウェハWの表面に研磨装置10の上定盤14と下定盤12とで圧力をかけられた場合(図4参照)、水晶はフッ化物イオン(F−)と後述の反応を起こす。
SiO2+6H++6F− → H2SiF6+2H2O
つまり、このような研磨方法は、水晶ウェハWに生じたクラックの亀裂部分の周囲にさらに多くのクラックが生じやすくなり、多く発生したクラックがナノバブルNBからの圧力により砕けて水晶ウェハWより剥がれる(図6参照)。これが水晶ウェハWの両主面で繰り返し行われて研磨が進行する。
実施例2において、ナノバブルNBは、溶液Yが水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合溶液に生成される。
このナノバブルNBが水晶ウェハWの表面に研磨装置10の上定盤14と下定盤12とで圧力をかけられた場合、以下の反応を起こす。
SiO2+2Na++CO3 2− → Na2SiO3+CO2
水晶ウェハWは、図5に示すように、水酸化カリウム溶液の強塩基により水和層が形成される。この水和層は、他の水晶の部分よりも柔らかいため、剛体とみなせるナノバブルNBにより削り取られることとなる。これにより水晶ウェハWの研磨を行うことができる。
10 研磨装置
11 センターギア
12 下定盤
13 インターナルギア
14 上定盤
14a パイプ
20 循環系設備
21 ナノバブル発生装置
22 攪拌部
23 第一のポンプ
24 第二のポンプ
25 第一配管部
26 第二配管部
27 第三配管部
28 第四配管部
30 溶液漕
W ウェハ(水晶ウェハ)
NB ナノバブル
Y 溶液
K キャリア
KH 研磨対象物収容用貫通孔
Claims (4)
- センターギアと、このセンターギアを回転軸とする上定盤と、このセンターギアを回転軸としつつ前記上定盤と向かい合うように配置される下定盤と、この下定盤の縁側に配置されるインターナルギアとから構成される研磨装置が用いられ、前記下定盤と前記上定盤との間に、Si,SiO2,C(ダイヤモンド),GaN,AlN,SiC,Cu,W,セラミックスのいずれか1つからなるウェハを配置して前記ウェハを研磨するウェハの研磨方法であって、
前記ウェハと前記上定盤および前記ウェハと下定盤との間に、所定の気体を気泡化したナノバブルのみを含ませた、フッ化カリウム水溶液,強塩基性試薬,水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合溶液の何れか1つの溶液を介在させて前記ウェハを前記溶液のみで研磨することを特徴とするウェハの研磨方法。 - 前記ナノバブルは、0.1μm以下の直径で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウェハの研磨方法。
- 前記強塩基性試薬が水酸化カリウム溶液であることを特徴とする請求項1に記載のウェハの研磨方法。
- センターギアと、このセンターギアを回転軸とする下定盤と、この下定盤の縁側に配置されるインターナルギアと、前記センターギアを回転軸としつつ前記下定盤と向かい合うように配置される上定盤とから構成される研磨装置と、
前記研磨装置を内部に配置し研磨で使用した、研磨剤を含んでおらず気体を気泡化したナノバブルのみを含んだフッ化カリウム水溶液,強塩基性試薬,水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合溶液の何れか1つの溶液を溜める溶液漕と、
前記溶液内にナノバブルを生成するナノバブル発生装置と、前記ナノバブルを含む前記溶液を攪拌する攪拌部と、この攪拌部から前記研磨装置の上定盤に前記ナノバブルを含む前記溶液のみを供給する第一のポンプと、前記溶液漕に溜まった前記溶液を前記攪拌部へ供給する第二のポンプと、から構成される循環系設備と、
を備えて構成されることを特徴とするナノバブル循環型研磨装置。
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