以下、図面を参照しながら、本発明に係る静電気保護部品の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る静電気保護部品の斜視図である。図2は、本実施形態に係る静電気保護部品の素体の展開斜視図である。図3は、静電気保護部品の放電部分を積層方向から見た図である。図3は、放電電極4A,4Bの一枚上のセラミック基板2を省略して示している。図4は、図1に示すIV−IV線に沿った断面図であり、放電部分を拡大した図である。以下の説明において、素体3が延びる方向を長手方向D1とし、セラミック基板2の平面方向において長手方向D1と直交する方向を短手方向D2とし、セラミック基板2が積層される方向を積層方向D3とする。
本実施形態に係る静電気保護部品1は、電子機器の回路基板に実装され、ESD(Electro-Static Discharge;静電気放電)から電子機器を保護する電子部品である。図1〜4に示すように、静電気保護部品1は、複数のセラミック基板2が積層されることで構成される素体3と、素体3内に形成されて互いに対向する放電電極4A,4Bと、素体3の互いに対向する両端面3a,3bに形成される外部電極6A,6Bと、を備えて構成されている。放電電極4Aは外部電極6Aに電気的に接続され、放電電極4Bは外部電極6Bに電気的に接続される。放電電極4Aと放電電極4Bとは、素体3内の中央位置付近において、間隔を設けて対向している。また、放電電極4Aと放電電極4Bとの間のギャップ部GPには、素体3内の内部空間7が形成されている。また、素体3は、放電電極4A,4Bと積層方向D3に隣り合う位置に、放電電極4A及び放電電極4Bと接すると共に当該放電電極4A,4B同士を接続する放電誘発部8を有している。
放電電極4Aは、素体3の端面3aから反対側の端面3b側へ向かって長手方向D1に沿って延びる本体部11Aを有する(特に、図3参照)。本体部11Aは、長手方向D1における先端12A及び基端13Aと、長手方向D1に沿って延びる側縁14A及び側縁15Aとを有している。本体部11Aは、長尺な長方形をなしており、先端12A及び基端13Aが短辺を構成し、側縁14A,15Aが長辺を構成している。すなわち、側縁14A,15Aは、先端12A及び基端13Aよりも長い。本体部11Aは、短手方向D2における中央位置よりも、僅かに素体3の側面3c側に配置される。基端13Aは素体3の端面3aから露出して外部電極6Aと接続される。先端12Aは端面3bから離間した位置まで延びており、長手方向D1における中央位置よりも、端面3b側の位置に配置される。側縁14Aは素体3の側面3d側の縁部であり、短手方向D2における中央位置よりも、僅かに側面3c側に配置される。側縁15Aは素体3の側面3c側の縁部であり、側面3cから離間した位置に配置される。なお、本体部11Aの長さは図3に示すものより長くしても短くしてもよい。
放電電極4Bは、積層方向D3から見て、素体3の中心周りにおいて、放電電極4Aと点対称な関係をなしている。すなわち、放電電極4Bは、素体3の端面3bから反対側の端面3a側へ向かって長手方向D1に沿って延びる本体部11Bを有する(特に図3参照)。本体部11Bは、長手方向D1における先端12B及び基端13Bと、長手方向D1に沿って延びる側縁14B及び側縁15Bとを有している。本体部11Bは、長尺な長方形をなしており、先端12B及び13Bが短辺を構成し、側縁14B,15Bが長辺を構成している。すなわち、側縁14B,15Bは、先端12B及び基端13Bよりも長い。本体部11Bは、短手方向D2における中央位置よりも、僅かに素体3の側面3d側に配置される。基端13Bは素体3の端面3bから露出して外部電極6Bと接続される。先端12Bは端面3aから離間した位置まで延びており、長手方向D1における中央位置よりも、端面3a側の位置に配置される。側縁14Bは素体3の側面3c側の縁部であり、短手方向D2における中央位置よりも、僅かに側面3d側に配置される。側縁15Bは素体3の側面3d側の縁部であり、側面3dから離間した位置に配置される。なお、本体部11Bの長さは図3に示すものより長くしても短くしてもよい。
放電電極4Aの本体部11Aと放電電極4Bの本体部11Bとは、素体3の中心付近の領域において、短手方向D2に隣り合うような配置となる。また、放電電極4Aの側縁14Aの先端12A側の領域と、放電電極4Bの側縁14Bの先端12B側の領域とが、互いに離間して対向することにより、放電電極4Aと放電電極4Bとの間にギャップ部GPが形成される。ギャップ部GPのギャップ幅(側縁14Aと側縁14Bとの間の距離)は、10〜100μmである。なお、ギャップ部GPは、側縁14Aと側縁14Bが対向している領域のみに形成される(図3参照)。また、本実施形態においては、放電電極4Aは、長尺な長方形をなす本体部11Aのみによって構成され、放電電極4Bの先端12Bと長手方向D1において対向する部分を有していない。放電電極4Bは、長尺な長方形をなす本体部11Bのみによって構成され、放電電極4Aの先端12Aと長手方向D1において対向する部分を有していない。このような構成により、外部電極6A,6Bに所定以上の電圧が印加されると、放電電極4Aと放電電極4Bとの間では、ギャップ部GPにおいて、側縁14Aと側縁14Bとの間でのみ放電が起こる。
放電誘発部8は、放電電極4Aと放電電極4Bとの間の放電を発生し易くする機能を有している。放電誘発部8は、素体3の中心位置付近において、放電電極4A,4Bを内包するようにして当該放電電極4A,4Bの両方と接しており、放電電極4Aと放電電極4Bとを接続している。積層方向D1から見て、少なくともギャップ部GPを含むように、本体部11Aの先端12A側の領域及び本体部11Bの先端12B側の領域を取り囲むように放電誘発部8が形成される。放電誘発部8は、放電電極4Aの側縁14A(側縁15Aと接してもよい)、上面16A、及び下面17Aと接すると共に、放電電極4Bの側縁14B(側縁15Bと接してもよい)、上面16B、及び下面17Bと接するように形成されている。放電電極4Aの側縁15Aはセラミック基板2と接すると共に、放電電極4Bの側縁15Bはセラミック基板2と接する。放電電極4Aの先端12A及び放電電極4Bの先端12Bもセラミック基板2と接する。
内部空間7は、積層方向D3において、放電誘発部8と隣接する位置に形成される。内部空間7と放電電極4A,4Bとの間には、放電誘発部8の一部が配置されている。すなわち、放電電極4A及び放電電極4Bは、完全に素体3に埋まっており、いずれの部分も内部空間7に露出していない。内部空間7は、放電電極4Aと放電電極4Bとを連通させない構成となっている。内部空間7は、放電時における放電電極4A,4B、セラミック基板2、放電誘発部8の熱膨張を吸収する熱膨張吸収部としての機能を有する。内部空間7は、放電電極4A,4B及び放電誘発部8と積層方向D3に隣接するため、放電による熱膨張を吸収し易い。このような熱膨張吸収部として機能するために、積層方向D3における放電電極4A,4Bと内部空間7との距離、すなわち図においてtで示す部分の大きさは、1〜20μmに設定することが好ましい。また、内部空間7の積層方向D3における大きさは1〜20μmに設定することが好ましい。また、図においては内部空間7の幅方向(短手方向D2)の大きさは、放電誘発部8と同じ大きさとされているが、これに限定されず、更に大きくしても小さくしてもよい。内部空間7の幅方向の大きさは、10〜100μmとすることが好ましい。
以上のような構成により、放電電極4Aは、外部電極6Aとの接続のために端面3aから露出している部分を除き、全ての部分において、素体3(すなわち、セラミック基板2と放電誘発部8)内に埋設されており、外部や内部空間7と露出する部分を有さない。放電電極4Bは、外部電極6Bとの接続のために端面3bから露出している部分を除き、全ての部分において、素体3(すなわち、セラミック基板2と放電誘発部8)内に埋設されており、外部や内部空間7と露出する部分を有さない。
次に、各構成要素の材料について詳細に説明する。
放電電極4A,4Bは、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、Wを含有する導体材料によって構成される。例えば、放電電極4A,4Bは、合金として、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、Ag/Pt合金などを用いることができる。また、外部電極6A,6Bは、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、Wを含有する導体材料によって構成される。例えば、外部電極6A,6Bは、合金として、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、Ag/Pt合金などを用いることができる。
セラミック基板2は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、B2O3などの中の単独材料、又は二種類以上を混合させた材料によって構成される。また、ガラスが含有されていてもよい。セラミック基板2には、低温焼結を可能とするために酸化銅(CuO、Cu2O)が含有されていることが好ましい。
放電誘発部8は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、B2O3などの中の単独材料、又は二種類以上を混合させた材料によって構成される。放電誘発部8には、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、Ag/Pt合金などの金属粒子、またはRuO2などの半導体粒子が含有されていることが好ましい。また、ガラスが含有されていてもよい。放電誘発部8には酸化錫(SnO、SnO2)が含有されていることが好ましい。
図4を参照して、好ましい材料を用いた場合の構成について説明する。なお、図4は、説明のための概略構成図であり、各粒子の大きさや数はデフォルメした状態で記載している。
放電誘発部8では、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物などを主成分とし、ガラスを含有するセラミック絶縁体21の中に、酸化錫(SnO2)の粒子22とAg/Pd合金の金属粒子23が混在した状態で存在している。混在した状態とは、Ag/Pd合金の金属粒子23が一箇所で固まっているのではなく、各金属粒子23の間に酸化錫の粒子22が入り込んだ状態となっている状態である。酸化錫の粒子22は、未焼結の粒子状態で存在している(ただし、凝集粉となっているものもある)。酸化錫は半導体材料として機能し、金属粒子23の間に配置することで、金属粒子23が単独で存在する場合よりもギャップ部GPのギャップの大きさを大きくしても放電させることができる。金属粒子23のAg/Pd合金の合金比は、95/5〜30/70である。酸化錫の粒子22の含有量は、酸化錫/セラミック絶縁体比で5/95〜80/20wt%であることが好ましい。金属粒子23の含有量は、放電誘発部に対して10〜35vol%であることが好ましい。
セラミック基板2では、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物などを主成分とし、ガラスを含有するセラミックの中に酸化銅(CuO)の粒子24が含有されている。酸化銅の粒子24の含有量は、0.01〜5wt%であることが好ましい。
放電電極4A,4Bは、Ag/Pd合金を主成分とした導体材料によって構成されている。放電電極4A,4BのAg/Pd合金の合金比は、95/5〜30/70である。放電電極4A,4BのAg/Pd合金と、金属粒子23のAg/Pd合金の合金比は同じであることが好ましい。
次に、図5を参照して静電気保護部品1の製造方法の一例について説明する。ただし、製造方法は特に限定されず、各工程の順番を変更してもよく、工程内の具体的手法を変更してもよく、他の工程によって製造してもよい。
まず、セラミック基板2を構成する材料のスラリーを調整し、セラミック基板用シートを作成する(ステップS110)。具体的に、酸化銅(CuO)を含む所定量の誘電体粉末と、有機溶剤と有機バインダとを含む有機ビヒクルとを混合し、セラミック基板用のスラリーを調整する。誘電体粉末には、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物(他の誘電体材料でもよい)を主成分として含む誘電体材料を用いることができる。その後、ドクターブレード法などによって、PETフィルム上にスラリーを塗布し、厚さ20μm程度のグリーンシートを形成する。
次に、セラミック基板用シートの所定の位置に放電部分を印刷によって形成する。まず、放電電極の対向部分に内部空間を形成するための空隙材用ラッカーを塗布する。有機溶剤、有機バインダとを含む有機ラッカーを用いることができる。これによって、焼成後に内部空間となる部分を形成する(ステップS120)。次に放電誘発材料スラリーを調整し、空隙材用ラッカーの上から当該スラリーを塗布して、焼成前の放電誘発部を形成する(ステップS130)。具体的に、所定量に秤量した酸化錫、絶縁体、導体の各粉末と、有機溶剤と有機バインダとを含む有機ビヒクルとを混合し、放電誘発材料スラリーを調整する。例えば、酸化錫として、工業用原料のSnO2を使用できる。絶縁体として誘電体粉末を使用できる。誘電体粉末には、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物(他の誘電体材料でもよい)を主成分として含む誘電体材料を用いることができる。導体粉末として、AgPd粉を用いることができる(Ag、Pd、Au、Pt、及びその混合物、化合物などでもよい)。セラミック基板用シートに導体ペーストをスクリーン印刷などによって塗布することによって焼成前の放電電極の導体パターンを形成する(ステップS140)。なお、導体パターンの上から更に放放電誘発材料スラリーを塗布してもよい。このように、空隙材用ラッカーを先に塗布して、その上から放電誘発材料スラリーを塗布する順序とすることで、例えば、空隙材用ラッカーが垂れ落ちて放電電極用の導体ペーストに及び、焼成後に放電電極が内部空間に露出することを確実に防止できる。
放電部分が印刷されたセラミック基板用シート、及びその他の層のセラミック基板用シートを順次積層させ(ステップS150)、プレスし(ステップS160)、個々の静電気保護部品の大きさになるように積層体を切断する(ステップS170)。次に、各素体を所定条件(例えば、大気中で850〜950℃で2時間)焼成する(ステップS180)。このとき、空隙材用ラッカーが素体3の内部で消滅することによって、放電部分に内部空間7が形成される。その後、素体3に外部電極用の導体ペーストを塗布し所定条件(例えば、大気中で600〜800℃で2時間)にて熱処理を行い、外部電極を焼き付ける(S190)。その後、外部電極の表面にめっきを施す。めっきは、電解めっきが好ましく、例えば、Ni/Sn、Cu/Ni/Sn、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Ag、Ni/Agなどを用いることができる。以上によって、静電気保護部品1が完成する。
次に、本実施形態に係る静電気保護部品1の作用・効果について説明する。
酸化錫は、焼結温度が非常に高く(具体的には、1300℃程度)、他元素との反応性が低いという特徴を持つ。従って、酸化錫は素体3の焼成時における温度では粒子状で残存したままとなり、周囲に金属粒子23が存在していたとしても、それらの金属粒子23とは反応しない。放電誘発部8において、酸化錫の粒子22と金属粒子23が混在する状態とすることによって、以下の効果が奏される。すなわち、素体3の焼成時において、酸化錫の粒子22は周囲の金属粒子23と反応することなく粒子状のまま残存する。このように酸化錫の粒子22が反応することなく残存することによって、金属粒子23は、放電誘発部8での移動が制限される。移動を制限された金属粒子23同士は反応しないため、金属粒子23同士がつながることにより放電電極4A,4B間がショートしてしまうこと(または、絶縁抵抗が低下すること)を防止することができる。
また、放電誘発部8が、セラミック絶縁体21のような絶縁物を含有することによって、放電電極4A,4B間における絶縁性を確保することができる。
また、静電気保護部品1において、セラミック基板2に反応性が高い酸化銅の粒子24が含有されている一方で、放電誘発部8に焼結温度が高く反応性の低い酸化錫の粒子22が含有される構成とすることで、以下の効果が奏される。すなわち、セラミック基板2に酸化銅の粒子24が含有されていても、当該酸化銅の粒子24が放電誘発部8に拡散することが酸化錫の粒子22によって抑制される。このように、酸化銅の粒子24の拡散が抑制されるため、放電誘発部8においては、酸化錫以外の部分における構成材料を自由に選択することができる(すなわち、放電誘発部8は酸化錫とその他の材料とによって構成されるが、その他の材料を自由に選択できる)。以上によって、放電誘発部8の構成材料の選択の自由度を確保しつつ、素体3に酸化銅を含有させることができる。
また、放電誘発部8に金属粒子23が含有されることにより、放電開始電圧を下げることができる。
Ag/Pd合金は、融点が高く(具体的には、1000℃程度)、酸化銅との反応性が低いという特徴を持つ。セラミック基板2に反応性が高い酸化銅の粒子24が含有されている一方で、放電誘発部8に金属粒子23として酸化銅との反応性が低いAg/Pd合金が含有されている構成とすることで、以下の効果が奏される。すなわち、セラミック基板2に酸化銅の粒子24が含有されていても、放電誘発部8では酸化銅の粒子24の拡散の影響による金属粒子23同士の反応が抑制される。すなわち、金属粒子23同士がつながることにより放電電極4A,4B間がショートしてしまうこと(または、絶縁抵抗が低下すること)を防止することができる。以上によって、放電電極4A,4B間のショートを防止しつつ、素体3に酸化銅を含有させることができる。なお、Pd単独でも融点は高いが酸化銅との反応性はAg/Pd合金に比して高い。従って、Agと合金化されているものを用いることで、効果が一層顕著となる。
また、素体3に酸化銅が含有されている構成において、放電電極4A,4BにAg/Pd以外の金属を用いると、酸化銅と反応してしまい、次のような問題が生じる可能性がある。例えば、放電電極4A,4Bの素体3からの露出部分(外部電極6A,6Bとの接続箇所など)からAg/Pdが気化して消滅してしまう可能性がある。また、放電電極4A,4Bの対向部(側縁14A,14B付近)が消失してしまうとギャップ長がばらついて特性が安定しない可能性がある。従って、放電電極4A,4BがAg/Pd合金を含有することで、そのような問題の発生を防止することができる。なお、放電電極4A,4BにAg/Pd以外の金属を用いてもよい。
また、放電誘発部8にAg/Pd合金が含有され、放電電極4A,4BにAg/Pd合金が含有される場合に、それぞれのAg/Pd合金の合金比を同じとすることで、放電誘発部8と放電電極4A,4Bとの間でAg/Pd合金が反応することを防止できる。
ここで、図3、図6、図7を参照して、本実施形態に係る放電電極4A,4Bの構成の効果を説明する。図6の放電電極4Aは素体3の端面3aから長手方向D1に延び、放電電極4Bは素体3の端面3bから長手方向D1に延び、放電電極4Aの先端12Aと放電電極4Bの先端12B同士が対向してギャップ部GPを形成している。すなわち、放電部分の長さは、先端12A,12Bの短い範囲に限定される。
図7の放電電極4A,4Bは、先端12A,12B側においても対向部分が形成される構成となっている。具体的に、放電電極4Aは、端面3a側において、本体部11Aから側面3dに向かって短手方向D2へ延びる拡大部18Aを有している。拡大部18Aは、一方の側縁は素体3から露出して外部電極6Aに接続され、他方の側縁19Aは、放電電極4Bの先端12Bと長手方向D1に対向してギャップ部GP2を形成している。側縁14Aと側縁14Bが対向するギャップ部GP1のギャップの大きさをW1とした場合、ギャップ部GP2のギャップの大きさW2は、W1と等しくなるように設定されている。放電電極4Bは、端面3b側において、本体部11Bから側面3cに向かって短手方向D2へ延びる拡大部18Bを有している。拡大部18Bは、一方の側縁は素体3から露出して外部電極6Bに接続され、他方の側縁19Bは、放電電極4Aの先端12Aと長手方向D1に対向してギャップ部GP3を形成している。ギャップ部GP3のギャップの大きさW3は、W1と等しくなるように設定されている。放電誘発部8は、ギャップ部GP1のみならず、ギャップ部GP2,GP3にも形成されている。図7のような構成とすることで、放電部分の長さを長くしようとしている。しかしながら、電界は、側縁14A,14Bよりも長さが短い先端12A,12Bに集中するため、図7の構成では、先端12A,12Bばかりで優先的に放電が発生してしまう可能性がある。従って、各放電電極4A,4Bが対向する部分の長さを長くしても、実質的に放電部分が先端12A,12Bでのギャップ部GP2,GP3に限られてしまうことで、静電気保護部品の耐久性を高めることができない可能性があった。
図3に示す構成では、放電電極4Aは長手方向D1に沿って延びる側縁14Aを有しており、放電電極4Bは長手方向D1に沿って延びる側縁14Bを有している。放電電極4A,4Bは、側縁14A,14Bでのみ対向しており、先端12A,12B側において対向する部分を有していない。このように長手方向D1に沿って延びる側縁14Aと側縁14B同士が対向しており、放電電極4Aと放電電極4Bとの間では、側縁14Aと側縁14Bとの間でのみ放電する構成となっている。先端12A,12Bよりも長さが長い側縁14A,14Bで対向させることによって、図6の構成よりもギャップ部GPの長さを長くすることができる。また、各先端12A,12Bに放電が集中することを回避し、長く延ばされた側縁14A,14Bで放電可能な構成としている。すなわち、実質的な放電部分の長さを図7に示す構成より長くすることができる。これによって、放電電極4Aと放電電極4Bとの間のギャップ部GPを長くすることができ、静電気保護部品1としての耐久性を高めることができる。
また、先端12A,12B側には他方の放電電極と対向する部分を設けないことによって、側縁14Aと側縁14Bとの間のみ放電することを、より確実にすることができる。
ここで、図9に示すような静電気保護部品では、放電電極4A,4Bが対向する部分には、放電誘発部8、及び内部空間7が形成されている。放電電極4A,4Bの大部分は素体3(すなわちセラミック基板2や放電誘発部8)内に埋設されているが、対向する縁部14A,14Bは内部空間7に露出している。このような構成によれば、外部から素体3内に侵入した水分が内部空間7に至り、放電電極4A,4Bや放電誘発部8の金属がイオンマイグレーションを起こす可能性がある。一方、このような内部空間7を形成することなく、放電電極4A,4Bを素体3内に完全に埋設した場合は、放電時に発生した熱によって、素体3や放電誘発部8が膨張し、当該熱膨張による応力で、素体3にクラックが発生する可能性がある。
一方、本実施形態では、一対の放電電極4A,4Bは、ギャップ部GP側の領域がそれぞれ素体3内に埋設されている。すなわち、各放電電極4A,4Bは、外部電極6A,6Bとの接続部分を除き、外部や素体3内の内部空間7などに露出している部分を有さず、素体3内に埋まる構成となる。このような構成によれば、製造工程(例えばめっきなど)において素体3を水に浸漬させる場合でも、外部から素体3内に水分が侵入し難くなり、イオンマイグレーションを防止することができる。また、各放電電極4A,4Bを素体3内に埋める構成としても、素体3が放電による熱膨張を吸収する熱膨張吸収部として機能する内部空間7を有しているため、素体3のクラックを防止することができる。以上により、外部環境からの保護性能と素体3のクラック防止性能を両立することができる。
また、内部空間7は、一対の放電電極4A,4B同士を連通させないため、水分の侵入によるイオンマイグレーションを防止することができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る静電気保護部品の実施形態を説明したものであり、本発明に係る静電気保護部品は本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る静電気保護部品は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る静電気保護部品を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、放電電極4A,4Bの構成は、図3に示す構成に限定されず、長さや幅、ギャップの大きさを適宜変更してもよい。また、図6、図7に示す構成も、変形例として採用してよい。また、例えば、図8に示す構成を採用してもよい。
図8に示す変形例は、図7の構成と同じく拡大部18A、18B及びギャップ部GP2,GP3が設けられているが、ギャップ部GP1のギャップの大きさW1が、ギャップ部GP2,GP3のギャップの大きさW2,W3よりも小さい。また、放電誘発部8は、各ギャップ部のうち、ギャップ部GP1(すなわち側縁14Aと側縁14Bとの間)のみに形成され、ギャップ部GP2,3には形成されない。これによって、側縁14Aと側縁14Bとの間のみ放電することを、より確実にすることができる。先端12A,12Bに対向する拡大部18A,18Bが設けられているとしても、先端12Aと側縁19Aとの間の距離W2及び先端12Bと側縁19Bとの間の距離W3よりも、側縁14Aと側縁14Bとの間の距離W1を小さくすることによって、側縁14Aと側縁14Bとの間のみ放電することを、より確実にすることができる。W2,W3は、各構成要素の材料等を考慮して、放電が起きない程度の距離に設定することが好ましい。このとき、拡大部18A,18Bは、放電電極4A,4Bと外部電極6A,6Bとの間の接続性を高める機能を有する。
熱膨張吸収部の構成は、内部空間のみに限定されず、放電による熱膨張を吸収することができるものであれば、どのようなものを採用してもよい。例えば、図10に示すように、内部空間に代えて、ヤング率の低いセラミック47を配置してもよい。セラミック47は、周囲のセラミック基板2に比してヤング率が低く、具体的には、ヤング率は50〜200GPaである。このようなヤング率の低いセラミック47は、熱膨張により変形しても、素体3における他の部分へ力を及ぼさないため、放電による熱膨張を吸収することができる。
上述の実施形態では、静電気保護機能を有する放電部分のみを含む静電気保護部品を例示したが、コイル部やコンデンサ部など他の機能を追加した静電気保護部品に本発明を採用してもよい。このとき、セラミック基板2の材料は、放電部、コイル部、コンデンサ部のそれぞれに対して各層ごとに最適な材料に変更してもよい。
例えば、図11に示す静電気保護部品100は、一つの素体103の中に、コイル部120と放電部110とを有している。図12に示す静電気保護部品200は、一つの素体203の中に、コイル部220とコンデンサ部230と放電部210とを有している。更に、コイル、コンデンサ、放電電極はアレイ状に形成されている。このようなアレイ状の構成は、他の実施形態に係る静電気保護部品に適用してもよい。図14に示す静電気保護部品300は、一つの素体303の中に、放電部310とコモンモードチョークコイル部340とを有している。
コイル部やコンデンサ部などと組み合わされた静電気保護部品における放電部分の構成について、静電気保護部品200の電極構成を示す図13を参照して説明する。
放電電極204Aは、長手方向D1に沿って延びる本体部211Aと、本体部211Aから短手方向D2へ延びる引出部218Aと、を有する。本体部211Aは、長手方向D1における先端212A及び先端213Aと、長手方向D1に沿って延びる側縁214A及び側縁215Aとを有している。本体部211Aは、長尺な長方形をなしており、先端212A,213Aが短辺を構成し、側縁214A,215Aが長辺を構成している。すなわち、側縁214A,215Aは、先端212A,213Aよりも長い。本体部211Aは、短手方向D2における中央位置よりも、僅かに素体3の側面203cまたは側面203d側に配置される。側縁214Aは中央位置側の縁部である。引出部218Aは、本体部211Aの側縁215Aから短手方向D2に沿って延び、素体303の側面203cまたは側面203dに形成されている外部電極206Aと電気的に接続される。
放電電極204Bは、長手方向D1に沿って延びる本体部211Bを有している。本体部211Bは、長手方向D1における先端212B及び先端213Bと、長手方向D1に沿って延びる側縁214B及び側縁215Bとを有している。本体部211Bは、長尺な長方形をなしており、先端212B,213Bが短辺を構成し、側縁214B,215Bが長辺を構成している。すなわち、側縁214B,215Bは、先端212B,213Bよりも長い。本体部211Bは、素体303の短手方向D2における中央位置で、長手方向D1に沿って延びている。各先端212B,213Bは、端面203a,203bに形成された外部電極206Bにそれぞれ接続される。
放電電極204Aの本体部211Aと放電電極204Bの本体部211Bとは、短手方向D2に隣り合うような配置となる。また、放電電極204Aの側縁214Aと、放電電極204Bの側縁214Bまたは側縁215Bとが、互いに離間して対向することにより、放電電極204Aと放電電極204Bとの間にギャップ部がそれぞれ形成される。ギャップ部は、側縁214Aと側縁214Bが対向している領域、及び側縁214Aと側縁215Bが対向している領域のみに形成される。このような構成により、外部電極206A,206Bに所定以上の電圧が印加されると、放電電極204Aと放電電極204Bとの間では、ギャップ部において、側縁214Aと側縁214Bの間、及び側縁214Aと側縁215Bの間でのみ放電が起こる。放電誘発部208は、各ギャップ部のみに形成される。
以上のような構成によって、ギャップ部の長さを長くすることができる。また、各先端212A,213Aに放電が集中することを回避し、長く延ばされた側縁214A,214B,215Bで放電可能な構成としている。これによって、放電電極204Aと放電電極204Bとの間のギャップ部を長くすることができ、静電気保護部品200としての耐久性を高めることができる。静電気保護部品100,300も(各本体部や各側縁が短手方向D2へ延びる構成となっているが)静電気保護部品200と略同趣旨の構成を有しているため、同様の効果を得ることができる。