JP2013168225A - 静電気保護部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】放電電極が素体から剥がれにくい静電気保護部品を提供する。
【解決手段】静電気保護部品1は、複数のセラミック層2が積層された素体3と、素体3内においてギャップGPを介して対向するように素体3の同じセラミック層2に配置された第1及び第2の放電電極4A,4Bと、素体3内において、第1及び第2の放電電極4A,4Bに接すると共に第1及び第2の放電電極4A,4Bを互いに接続する第1及び第2の放電誘発部8A,8Bとを備えている。この静電気保護部品1では、ギャップGPにおいて放電誘発部8A,8Bに隣り合って接する空洞部7を素体3が有しており、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部8A,8Bとで第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込む。
【選択図】図4
【解決手段】静電気保護部品1は、複数のセラミック層2が積層された素体3と、素体3内においてギャップGPを介して対向するように素体3の同じセラミック層2に配置された第1及び第2の放電電極4A,4Bと、素体3内において、第1及び第2の放電電極4A,4Bに接すると共に第1及び第2の放電電極4A,4Bを互いに接続する第1及び第2の放電誘発部8A,8Bとを備えている。この静電気保護部品1では、ギャップGPにおいて放電誘発部8A,8Bに隣り合って接する空洞部7を素体3が有しており、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部8A,8Bとで第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込む。
【選択図】図4
Description
本発明は、ESD(Electro-Static Discharge;静電気放電)から電子機器を保護する静電気保護部品に関する。
複数のセラミック層が積層された素体と、素体内において互いに離間して同じ層に配置された一対の放電電極とを備えた静電気保護部品が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の静電気保護部品では、放電電極間の放電を誘発させる放電誘発部が形成されている。
ところで、特許文献1に記載の静電気保護部品では、放電電極の対向部に空洞部が形成されており、放電電極の対向部の上面すべてが空洞部に露出するようになっている。このため、特許文献1に記載の静電気保護部品では、焼成時に空洞部形成用のラッカーが消失して空洞部が形成される際に、空洞部内で放電電極の先端がフリーとなってしまうため、放電電極と素体との収縮差に起因して放電電極が素体を構成するセラミック層から剥がれてしまう虞があった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、放電電極が素体から剥がれにくい静電気保護部品を提供することを目的とする。
本発明に係る静電気保護部品は、複数のセラミック層が積層された素体と、素体内において所定のギャップを介して対向するように素体の同じセラミック層に配置された第1及び第2の放電電極と、素体内において、第1及び第2の放電電極に接すると共に第1及び第2の放電電極を互いに接続する放電誘発部とを備えている。この静電気保護部品では、ギャップにおいて放電誘発部に隣り合って接する空洞部を素体が有しており、放電電極が配置されたセラミック層と放電誘発部とで第1及び第2の放電電極を積層方向に挟み込むことを特徴としている。
本発明に係る静電気保護部品では、放電電極が配置されたセラミック層と放電誘発部とで第1及び第2の放電電極を積層方向に挟み込んでいる。この場合、両放電電極を実体のあるセラミック層と放電誘発部とで積層方向に固定することになり、空洞部形成用のラッカーが消失して空洞部が形成される際に放電電極がフリーな状態になってしまうことが抑制される。このように放電電極が積層方向に固定されることから、放電電極が素体から剥がれることを抑制することができる。
また、本発明に係る静電気保護部品では、ギャップにおいて空洞部が放電誘発部に隣り合って接している。この場合、放電による破壊を水平方向に誘導することができ、放電による放電誘発部の厚み方向(セラミック層の積層方向)への破壊を抑制することができる。このように放電誘発部の厚み方向への破壊が抑制されることから、本発明に係る静電気保護部品によれば、放電回数が制限されたり放電開始電圧が変化したりするといったことも抑制され、これにより、静電気保護部品の耐久性を高めることが可能となる。
上記静電気保護部品において、第1及び第2の放電電極が対向する領域において、放電電極が配置されたセラミック層と放電誘発部とで第1及び第2の放電電極を積層方向に挟み込むことが好ましい。この場合、放電が起こった際に剥離する力が及びやすい放電電極の対向部分を積層方向に固定できるため、放電に起因する放電電極の剥離を抑制することが可能となる。
上記静電気保護部品において、第1の放電電極は、積層方向に交差する第1の方向に延びると共に、第1の方向に沿って延びる第1の側縁を有し、第2の放電電極は、第1の方向に延びると共に、第1の方向に沿って延びる第2の側縁とを有し、第1及び第2の放電電極は、第1及び第2の側縁が第1の方向及び積層方向に交差する第2の方向に互いに対向するように配置されていてもよい。この場合、放電による水平方向への破壊が進行する長さを長くすることができ、静電気保護部品の耐久性を更に高めることができる。
上記静電気保護部品において、放電誘発部は、第1及び第2の放電誘発部から形成されており、空洞部が第1及び第2の放電誘発部の両方の上に重なるようにしてもよい。この場合、空洞部が内側に形成されることになるため、外部からのめっき液や水分の浸入を抑制できる。これにより、静電気保護部品の耐久性や信頼性を高めることができる。
上記静電気保護部品において、空洞部が第1及び第2の放電誘発部の全体を覆うようにしてもよい。この場合、空隙部を大きく形成することができるので、放電による破壊を更に抑制することが可能となる。
上記静電気保護部品において、空洞部は、ギャップにおいて、放電誘発部の第1の方向における両縁を覆うようにしてもよい。この場合、ギャップの中央部に放電誘発部と重ならない空洞部を設けなくてよいため、空洞部をコンパクトにすることができる。また、この構成によれば、放電電極の対向長さを短くすることもできるため、放電電極間で発生する静電容量を小さくすることが可能となる。
上記静電気保護部品において、放電誘発部は、第1及び第2の放電電極の少なくとも一方の先端部を覆うようにしてもよい。この場合、素体から剥離する起点となりやすい放電電極の先端を積層方向に抑えることができるため、放電電極の素体からの剥離をより確実に抑制することが可能となる。
本発明によれば、放電電極が素体から剥がれにくい静電気保護部品を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る静電気保護部品の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る静電気保護部品の素体の展開斜視図である。図3は、静電気保護部品の放電部分を積層方向から見た平面図である。図3は、第1及び第2の放電電極4A,4B上のセラミック層2等を省略して示している。図4の(a)は、図3に示すIVa−IVa線に沿った断面構成を説明するための図であり、図4の(b)は、図3に示すIVb−IVb線に沿った断面構成を説明するための図である。図5は、図1に示すV−V線に沿った断面構成を説明するための図である。以下の説明において、素体3が延びる方向を長手方向D1とし、セラミック層2の平面方向において長手方向D1と直交する方向を短手方向D2とし、セラミック層2が積層される方向を積層方向D3とする。
図1は、第1実施形態に係る静電気保護部品の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る静電気保護部品の素体の展開斜視図である。図3は、静電気保護部品の放電部分を積層方向から見た平面図である。図3は、第1及び第2の放電電極4A,4B上のセラミック層2等を省略して示している。図4の(a)は、図3に示すIVa−IVa線に沿った断面構成を説明するための図であり、図4の(b)は、図3に示すIVb−IVb線に沿った断面構成を説明するための図である。図5は、図1に示すV−V線に沿った断面構成を説明するための図である。以下の説明において、素体3が延びる方向を長手方向D1とし、セラミック層2の平面方向において長手方向D1と直交する方向を短手方向D2とし、セラミック層2が積層される方向を積層方向D3とする。
まず、本実施形態に係る静電気保護部品1の構成について、図1〜図5を参照して説明する。静電気保護部品1は、電子機器の回路基板に実装され、ESDから電子機器を保護する電子部品である。静電気保護部品1は、複数のセラミック層2が積層されて略直方体形状を呈する素体3と、素体3内において互いに離間して同じセラミック層2上に配置される第1及び第2の放電電極4A,4Bと、素体3の互いに対向する両端面3a,3bそれぞれに配置される第1及び第2の外部電極6A,6Bと、第1及び第2の放電電極4A,4Bを互いに接続する第1及び第2の放電誘発部8A,8Bとを備えている。
第1の放電電極4Aは、第1の外部電極6Aに電気的に接続され、第2の放電電極4Bは、第2の外部電極6Bに電気的に接続される。また、素体3は、第1及び第2の放電誘発部8A,8Bの上に重なるように形成される空洞部7を有している(図5参照)。空洞部7は、セラミック層2及び放電誘発部8A,8Bの熱膨張を吸収する機能を有する。空洞部7と放電誘発部8A,8Bとの配置関係については後述する。なお、実際の静電気保護部品1では、素体3は、視認できない程度に一体化されている。
第1及び第2の放電電極4A,4Bは、図2及び図3に示されるように、素体3内において互いに離間して同じセラミック層2上に配置される。第1の放電電極4Aは、素体3の端面3aから反対側の端面3b側へ向かって長手方向D1(第1の方向)に沿って延びる本体部11Aを有する。本体部11Aは、長手方向D1における先端12A及び基端13Aと、長手方向D1に沿って延びる側縁14A及び側縁15Aとを有している。本体部11Aは、長尺な長方形をなしており、先端12A及び基端13Aが短辺を構成し、側縁14A,15Aが長辺を構成している。すなわち、側縁14A,15Aは、先端12A及び基端13Aよりも長い。
本体部11Aは、短手方向D2における中央位置よりも、僅かに素体3の側面3c側に配置される。基端13Aは、素体3の端面3aから露出して第1の外部電極6Aと接続される。先端12Aは、端面3bから離間した位置まで延びており、長手方向D1における中央位置よりも端面3b側の位置に配置される。側縁14Aは、素体3の側面3d側の縁部であり、短手方向D2における中央位置よりも僅かに側面3c側に配置される。側縁15Aは、素体3の側面3c側の縁部であり、側面3cから離間した位置に配置される。なお、本体部11Aの長さは図3に示すものより長くしても短くしてもよい。
第2の放電電極4Bは、積層方向D3から見て、素体3の中心周りにおいて、第1の放電電極4Aと点対称な関係をなしている。すなわち、第2の放電電極4Bは、素体3の端面3bから反対側の端面3a側へ向かって長手方向D1に沿って延びる本体部11Bを有する。本体部11Bは、長手方向D1における先端12B及び基端13Bと、長手方向D1に沿って延びる側縁14B及び側縁15Bとを有している。本体部11Bは、長尺な長方形をなしており、先端12B及び基端13Bが短辺を構成し、側縁14B,15Bが長辺を構成している。すなわち、側縁14B,15Bは、先端12B及び基端13Bよりも長い。
本体部11Bは、短手方向D2における中央位置よりも僅かに素体3の側面3d側に配置される。基端13Bは、素体3の端面3bから露出して第2の外部電極6Bと接続される。先端12Bは、端面3aから離間した位置まで延びており、長手方向D1における中央位置よりも端面3a側の位置に配置される。側縁14Bは、素体3の側面3c側の縁部であり、短手方向D2における中央位置よりも僅かに側面3d側に配置される。側縁15Bは、素体3の側面3d側の縁部であり、側面3dから離間した位置に配置される。なお、本体部11Bの長さは図3に示すものより長くしても短くしてもよい。
第1及び第2の放電電極4A,4Bは、図3に示すように、第1の放電電極4Aの先端12A側の対向領域16Aの側縁14Aと、第2の放電電極4Bの先端12B側の対向領域16Bの側縁14Bとが対向するように、配置されている。第1の放電電極4Aの対向領域16Aの側縁14Aと第2の放電電極4Bの対向領域16Bの側縁14Bとが互いに離間して対向することにより、第1の放電電極4Aと第2の放電電極4Bとの間にギャップ部GP(図4等参照)が形成される。ギャップ部GPのギャップ幅(側縁14Aと側縁14Bとの間の距離)は、例えば10〜100μmである。ギャップ部GPは、側縁14Aと側縁14Bが対向している対向領域にのみ形成される(図3参照)。
また、本実施形態においては、第1の放電電極4Aは、長尺な長方形をなす本体部11Aのみによって構成され、第2の放電電極4Bの先端12Bと長手方向D1において対向する部分を有していない。第2の放電電極4Bは、長尺な長方形をなす本体部11Bのみによって構成され、第1の放電電極4Aの先端12Aと長手方向D1において対向する部分を有していない。このような構成により、第1及び第2の外部電極6A,6Bに所定以上の電圧が印加されると、第1及び第2の放電電極4A,4B間では、ギャップ部GPにおいて、側縁14A,14B間でのみ放電が起こる。
第1及び第2の放電誘発部8A,8Bは、図3及び図4に示されるように、第1及び第2の放電電極4A,4Bを互いに接続して第1及び第2の放電電極4A,4B間の放電を発生し易くする機能を有している。第1及び第2の放電誘発部は、積層方向D3から見て、略矩形形状を呈している。
第1の放電誘発部8Aは、第1の放電電極4Aの対向領域16Aのうち基端13A側の部分と第2の放電電極4Bの対向領域16Bのうち先端12B側の部分に接するように形成されている。具体的には、図4の(b)に示されるように、第1の放電誘発部8Aは、両放電電極4A,4Bの表面に接するように配置されて両放電電極4A,4Bを接続する部分と、両放電電極4A,4Bの対向領域であるギャップGPに配置されている部分とを有している。このような部分を有する第1の放電誘発部8Aは、第1及び第2の放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と共に、第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込むようになっている。
第2の放電誘発部8Bは、第1の放電電極4Aの対向領域16Aのうち先端12A側の部分と第2の放電電極4Bの対向領域16Bのうち基端13B側の部分に接するように形成されている。具体的には、第2の放電誘発部8Bは、第1の放電誘発部8Aと同様に、両放電電極4A,4Bの表面に接するように配置されて両放電電極4A,4Bを接続する部分と、両放電電極4A,4Bの対向領域であるギャップGPに配置されている部分とを有している。このような部分を有する第2の放電誘発部8Bは、第1の放電誘発部8Aと同様に、第1及び第2の放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と共に、第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込むようになっている。
つまり、第1及び第2の放電電極4A,4Bは、対向領域16A,16Bにおいて、両放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と第1及び第2の放電誘発部8A,8Bとによって積層方向D3に挟み込まれている。
一方、第1及び第2の放電誘発部8A,8Bの間には、図3及び図5に示されるように、ギャップGPにおいて放電誘発部8A,8Bに隣り合って接するように、素体3の空洞部7が形成されている。つまり、空洞部7は、ギャップGPの長手方向D1における略中央に配置されており、ギャップGPの略中央において、図4の(a)に示されるように、第1及び第2の放電電極4A,4B間に空隙を設けるようになっている。空洞部7は、図5に示されるように、短手方向D2から見た際に、略ドーム形状を呈しており、長手方向D1における両縁が第1及び第2の放電誘発部8A,8Bの上に重なるように形成されている。
このような放電誘発部8A,8B及び空洞部7の配置構成により、空洞部7と各放電誘発部8A,8Bとの境界部分18A,18Bに沿って放電が生じるように誘導される。この放電が生じる境界部分18A,18Bの面は、セラミック層2が広がる面方向(長手方向D1及び短手方向D2)に対して略直交する方向に形成されており、放電電極4A,4Bが配置されるセラミック層2の面方向と空洞部7及び放電誘発部8A,8Bの境界部分18A,18Bの面方向とが異なるようになっている。なお、境界部分18A,18Bの面方向は、セラミック層2が広がる面方向に交差していればよく、必ずしも直交している必要はない。
次に、各構成要素の材料について詳細に説明する。
放電電極4A,4Bは、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、Wの少なくとも何れか一種類を含有する導体材料によって構成される。例えば、放電電極4A,4Bは、合金として、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、Ag/Pt合金などを用いることができる。また、外部電極6A,6Bは、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、Wを含有する導体材料によって構成される。例えば、外部電極6A,6Bは、合金として、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、Ag/Pt合金などを用いることができる。
セラミック層2は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、B2O3などの中の単独材料、又は二種類以上を混合させた材料によって構成される。セラミック層2には、ガラスが含有されていてもよい。セラミック層2には、低温焼結を可能とするために酸化銅(CuO、Cu2O)が含有されていることが好ましい。
放電誘発部8A,8Bは、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、B2O3などの中の単独材料、又は二種類以上を混合させた材料によって構成される。放電誘発部8A,8Bには、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、Ag/Pt合金などの金属粒子、またはRuO2などの半導体粒子が含有されていることが好ましい。また、放電誘発部8A,8Bには、ガラスが含有されていてもよい。放電誘発部8A,8Bには、酸化錫(SnO、SnO2)が含有されていることが好ましい。
図6は、放電誘発部8Aの材料構成を説明するための模式図である。図6を参照して、好ましい材料を用いた場合の構成について説明する。なお、図6は、説明のための概略構成図であり、各粒子の大きさや数はデフォルメした状態で記載している。また、放電誘発部8Bも同様である。
放電誘発部8Aでは、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物などを主成分とし、ガラスを含有するセラミック絶縁体21の中に、酸化錫(SnO2)の粒子22とAg/Pd合金の金属粒子23が混在した状態で存在している。混在した状態とは、Ag/Pd合金の金属粒子23が一箇所で固まっているのではなく、各金属粒子23の間に酸化錫の粒子22が入り込んだ状態である。酸化錫の粒子22は、未焼結の粒子状態で存在している(ただし、凝集粉となっているものもある)。酸化錫は半導体材料として機能し、金属粒子23の間に配置することで、金属粒子23が単独で存在する場合よりもギャップ部GPのギャップの大きさを大きくしても放電させることができる。金属粒子23のAg/Pd合金の合金比は、95/5〜30/70である。酸化錫の粒子22の含有量は、酸化錫/セラミック絶縁体比で5/95〜80/20wt%であることが好ましい。金属粒子23の含有量は、放電誘発部8Aに対して10〜35vol%であることが好ましい。
セラミック層2では、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物などを主成分とし、ガラスを含有するセラミックの中に酸化銅(CuO)の粒子24が含有されている。酸化銅の粒子24の含有量は、0.01〜5wt%であることが好ましい。
第1及び第2の放電電極4A,4Bは、Ag/Pd合金を主成分とした導体材料によって構成されている。第1及び第2の放電電極4A,4BのAg/Pd合金の合金比は、95/5〜30/70である。第1及び第2の放電電極4A,4BのAg/Pd合金と、金属粒子23のAg/Pd合金の合金比は同じであることが好ましい。
酸化錫は、焼結温度が非常に高く(具体的には、1300℃程度)、他元素との反応性が低いという特徴を持つ。従って、酸化錫は素体3の焼成時における温度では粒子状で残存したままとなり、周囲に金属粒子23が存在していたとしても、それらの金属粒子23とは反応しない。放電誘発部8Aにおいて、酸化錫の粒子22と金属粒子23が混在する状態とすることによって、以下の効果が奏される。すなわち、素体3の焼成時において、酸化錫の粒子22は周囲の金属粒子23と反応することなく粒子状のまま残存する。このように酸化錫の粒子22が反応することなく残存することによって、金属粒子23は、放電誘発部8Aでの移動が制限される。移動を制限された金属粒子23同士は反応しないため、金属粒子23同士が繋がることにより放電電極4A,4B間がショートしてしまうこと(または、絶縁抵抗が低下すること)を防止することができる。
また、放電誘発部8Aが、セラミック絶縁体21のような絶縁物を含有することによって、第1及び第2の放電電極4A,4B間における絶縁性を確保することができる。
また、静電気保護部品1において、セラミック層2に反応性が高い酸化銅の粒子24が含有されている一方で、放電誘発部8A,8Bに焼結温度が高く反応性の低い酸化錫の粒子22が含有される構成とすることで、以下の効果が奏される。すなわち、セラミック層2に酸化銅の粒子24が含有されていても、当該酸化銅の粒子24が放電誘発部8A,8Bに拡散することが酸化錫の粒子22によって抑制される。このように、酸化銅の粒子24の拡散が抑制されるため、放電誘発部8Aにおいては、酸化錫以外の部分における構成材料を自由に選択することができる(すなわち、放電誘発部8Aは、酸化錫とその他の材料とによって構成されるが、その他の材料を自由に選択できる)。以上によって、放電誘発部8Aの構成材料の選択の自由度を確保しつつ、素体3に酸化銅を含有させることができる。
また、放電誘発部8Aに金属粒子23が含有されることにより、放電開始電圧を下げることができる。
Ag/Pd合金は、融点が高く(具体的には、1000℃程度)、酸化銅との反応性が低いという特徴を持つ。セラミック層2に反応性が高い酸化銅の粒子24が含有されている一方で、放電誘発部8A,8Bに金属粒子23として酸化銅との反応性が低いAg/Pd合金が含有されている構成とすることで、以下の効果が奏される。すなわち、セラミック層2に酸化銅の粒子24が含有されていても、放電誘発部8Aでは酸化銅の粒子24の拡散の影響による金属粒子23同士の反応が抑制される。すなわち、金属粒子23同士がつながることにより放電電極4A,4B間がショートしてしまうこと(または、絶縁抵抗が低下すること)を防止することができる。以上によって、第1及び第2の放電電極4A,4B間のショートを防止しつつ、素体3に酸化銅を含有させることができる。なお、Pd単独でも融点は高いが酸化銅との反応性はAg/Pd合金に比して高い。従って、Agと合金化されているものを用いることで、効果が一層顕著となる。
また、素体3に酸化銅が含有されている構成において、第1及び第2の放電電極4A,4BにAg/Pd以外の金属を用いると、酸化銅と反応してしまい、次のような問題が生じる可能性がある。例えば、第1及び第2の放電電極4A,4Bの素体3からの露出部分(外部電極6A,6Bとの接続箇所など)からAg/Pdが気化して消滅してしまう可能性がある。また、第1及び第2の放電電極4A,4Bの対向部(側縁14A,14B付近)が消失してしまうとギャップ長がばらついて特性が安定しない可能性がある。従って、第1及び第2の放電電極4A,4BがAg/Pd合金を含有することで、そのような問題の発生を防止することができる。なお、第1及び第2の放電電極4A,4BにAg/Pd以外の金属を用いてもよい。
また、放電誘発部8AにAg/Pd合金が含有され、放電電極4A,4BにAg/Pd合金が含有される場合に、それぞれのAg/Pd合金の合金比を同じとすることで、放電誘発部8Aと第1及び第2の放電電極4A,4Bとの間でAg/Pd合金が反応することを防止できる。
次に、図7及び図8を参照して静電気保護部品1の製造方法の一例について説明する。ただし、製造方法は特に限定されず、各工程の順番を変更してもよく、工程内の具体的手法を変更してもよく、他の工程によって製造してもよい。
まず、セラミック層2を構成する材料のスラリーを調整し、セラミック層用シートを作成する(S10)。具体的に、酸化銅(CuO)を含む所定量の誘電体粉末と、有機溶剤と有機バインダとを含む有機ビヒクルとを混合し、セラミック層用のスラリーを調整する。誘電体粉末には、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物(他の誘電体材料でもよい)を主成分として含む誘電体材料を用いることができる。その後、ドクターブレード法などによって、PETフィルム上にスラリーを塗布し、厚さ20μm程度のグリーンシートを形成する。
次に、セラミック層用シートの所定の位置に放電部分を印刷によって形成する。まず、図8の(a)に示されるように、セラミック層2用のシートに導体ペーストをスクリーン印刷などによって塗布することによって焼成前の放電電極4A,4Bの導体パターンを形成する(S20)。なお、図8に示す放電電極4A,4Bでは、基端13A,13B側の部分が短手方向D2の略中央部に寄る変形例を開示しているが、図3に示す放電電極4A,4Bと略同様の機能を奏する。すなわち、第1及び第2の放電電極4A,4B間では、ギャップ部GPにおいて、側縁間でのみ放電が起こる。
続いて、放電誘発材料スラリーを調整し、図8の(b)に示されるように、放電電極4A,4Bの対向領域16A,16Bを2箇所で接続するように、放電電極4A,4Bの上から当該スラリーを塗布して、焼成前の放電誘発部8A,8Bに対応する部分を形成する(S30)。具体的に、所定量に秤量した酸化錫、絶縁体、導体の各粉末と、有機溶剤と有機バインダとを含む有機ビヒクルとを混合し、放電誘発材料スラリーを調整する。例えば、酸化錫として、工業用原料のSnO2を使用できる。絶縁体として誘電体粉末を使用できる。誘電体粉末には、Mg、Cu、Zn、Si、Srの酸化物(他の誘電体材料でもよい)を主成分として含む誘電体材料を用いることができる。導体粉末として、Ag/Pd粉を用いることができる(Ag、Pd、Au、Pt、及びその混合物、化合物などでもよい)。酸化錫の粒子とAg/Pd合金の金属粒子が混在する状態となるように、各粉末を十分に混合する。
続いて、図8の(c)に示されるように、放電誘発部8A,8Bの上にその両端が重なるように、空洞部7を形成するための空隙材用ラッカーを塗布する。空隙材用ラッカーとしては、有機溶剤及び有機バインダを含む有機ラッカーを用いることができる。これによって、焼成後に空洞部7となる部分が形成される(S40)。
続いて、放電部分が印刷されたセラミック層用シート、及びその他の層のセラミック層用シートを順次積層させ(S50)、プレスし(S60)、個々の静電気保護部品の大きさになるように積層体を切断する(S70)。このような積層およびプレス等により、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部8A,8Bとで放電電極4A,4Bが挟み込まれる構成が形成される。
次に、各素体を所定条件(例えば、大気中で850〜950℃で2時間)焼成する(S80)。このとき、空隙材用ラッカーが素体3の内部で消滅することによって、放電部分に空洞部7が形成される。その後、素体3に外部電極用の導体ペーストを塗布し所定条件(例えば、大気中で600〜800℃で2時間)にて熱処理を行い、外部電極を焼き付ける(S90)。その後、外部電極の表面にめっきを施す。めっきは、電解めっきが好ましく、例えば、Ni/Sn、Cu/Ni/Sn、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Ag、Ni/Agなどを用いることができる。以上によって、静電気保護部品1が完成する。
以上のように、静電気保護部品1では、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部8A,8Bとで第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込んでいる。このように、両放電電極4A,4Bを実体のあるセラミック層2と放電誘発部8A,8Bとで積層方向D3に固定することにより、空洞部形成用のラッカーが消失して空洞部が形成される際に放電電極がフリーな状態になってしまうことが抑制される。その結果、静電気保護部品1によれば、放電電極4A,4Bが素体3(セラミック層2)から剥がれることを抑制できる。
しかも、静電気保護部品1では、第1及び第2の放電電極4A,4Bが対向する対向領域16A,16Bにおいて、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部8A,8Bとで放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込んでいる。このため、放電が起こった際に剥離する力が及びやすい放電電極4A,4Bの対向部分の多くを積層方向に固定でき、これにより、放電に起因する放電電極4A,4Bの剥離を抑制することが可能となる。
更に、静電気保護部品1では、放電誘発部8A,8Bが、第1及び第2の放電電極4A,4Bの先端部それぞれを覆うようになっている。このため、素体3から剥離する際の起点となりやすい放電電極4A,4Bの先端12A,12Bを積層方向に抑えることができるため、放電電極4A,4Bの素体3からの剥離をより確実に抑制することが可能となる。
また、静電気保護部品1では、ギャップGPにおいて空洞部7が放電誘発部8A,8Bに隣り合って接している。このため、放電による破壊を長手方向D1(水平方向)に誘導することができ、放電による放電誘発部8A,8Bの厚み方向(セラミック層2の積層方向D3)への破壊を抑制することができる。このように放電誘発部8A,8Bの厚み方向への破壊が抑制されることから、静電気保護部品1によれば、放電回数が制限されたり放電開始電圧が変化したりするといったことも抑制され、これにより、静電気保護部品1の耐久性を高めることが可能となる。
また、静電気保護部品1では、第1の放電電極4Aは、長手方向D1に延びると共に、長手方向D1に沿って延びる第1の側縁14Aを有し、第2の放電電極4Bは、長手方向D1に延びると共に、長手方向D1に沿って延びる第2の側縁14Bとを有し、第1及び第2の放電電極4A,4Bは、第1及び第2の側縁14A,14Bが短手方向D2に互いに対向するように配置されている。このため、放電による水平方向への破壊が進行する長さを長くすることができ、静電気保護部品1の耐久性を更に高めることができる。
また、静電気保護部品1では、空洞部7が放電誘発部8A,8Bの上に重なるようになっている(図5参照)。この場合、放電誘発部8A,8Bで放電が発生しやすい放電箇所18A,18B付近の空間領域(積層方向における厚み)を大きくすることができ、これにより、静電気保護部品1のクランプ電圧を低減することができる。
また、静電気保護部品1では、空洞部7が第1及び第2の放電誘発部8A,8Bの両方の上に重なるようにギャップGPの略中央に配置されている。このように空洞部7がより内側に形成されることにより、外部からのめっき液や水分の浸入を抑制できる。その結果、静電気保護部品1の耐久性や信頼性を高めることができる。
なお、上述した実施形態では、空洞部7を形成するラッカーが放電誘発部8A,8Bの一部にかかるように形成していたが、図9に示されるように、空洞部7Aが放電誘発部8A,8Bの全体を覆うようにラッカーを塗布して、静電気保護部品1を形成するようにしてもよい。この場合、空隙部を大きく形成することができるので、放電による破壊を更に抑制することが可能となる。
[第2実施形態]
次に、図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る静電気保護部品1aについて説明する。本実施形態に係る静電気保護部品1aは、第1実施形態と同様に、素体3と、放電電極4A,4Bと、外部電極6A,6Bとを備えているが、1つの放電誘発部38と、その放電誘発部38の上に重なるように形成された空洞部37とを備えている点で、第1実施形態と異なっている。
次に、図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る静電気保護部品1aについて説明する。本実施形態に係る静電気保護部品1aは、第1実施形態と同様に、素体3と、放電電極4A,4Bと、外部電極6A,6Bとを備えているが、1つの放電誘発部38と、その放電誘発部38の上に重なるように形成された空洞部37とを備えている点で、第1実施形態と異なっている。
放電誘発部38は、積層方向D3から見て、略矩形形状を呈しており、第1及び第2の放電電極4A,4Bを互いに接続して第1及び第2の放電電極4A,4B間の放電を発生し易くする機能を有している。放電誘発部38は、第1の放電電極4Aの対向領域16Aのうち略中央部と、第2の放電電極4Bの対向領域16Bのうち略中央部とに接するように形成されている。具体的には、放電誘発部38は、両放電電極4A,4Bの表面に接するように配置されて両放電電極4A,4Bを接続する部分と、両放電電極4A,4Bの対向領域であるギャップGPに配置されている部分とを有している。
このような部分を有する放電誘発部38は、図11に示されるように、第1及び第2の放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と共に、第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込むようになっている。つまり、第1及び第2の放電電極4A,4Bは、対向領域16A,16Bにおいて、両放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部38とによって積層方向D3に挟み込まれている。
また、放電誘発部38の短手方向D2の略中央部には、図10に示されるように、ギャップGPにおいて放電誘発部38に隣り合って接するように、素体3の空洞部37が形成されている。つまり、空洞部37は、ギャップGPの長手方向D1における略中央に配置される。また、空洞部7は、短手方向D2から見た際に、略ドーム形状を呈しており、放電誘発部38全体の上に重なるように形成される。このような放電誘発部38及び空洞部37の配置構成により、空洞部37と放電誘発部38との境界部分38A,38Bに沿って放電が生じるように誘導される。
以上のように、第2実施形態に係る静電気保護部品1aでは、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部38とで第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込んでいる。このように、両放電電極4A,4Bを実体のあるセラミック層2と放電誘発部38とで積層方向D3に固定することにより、空洞部形成用のラッカーが消失して空洞部が形成される際に放電電極がフリーな状態になってしまうことが抑制される。その結果、静電気保護部品1aによれば、放電電極4A,4Bが素体3(セラミック層2)から剥がれることを抑制できる。
また、静電気保護部品1aでは、ギャップGPにおいて空洞部37が放電誘発部38に隣り合って接している。このため、放電による破壊を長手方向D1(水平方向)に誘導することができ、放電による放電誘発部38の厚み方向(セラミック層2の積層方向D3)への破壊を抑制することができる。このように放電誘発部38の厚み方向への破壊が抑制されることから、静電気保護部品1aによれば、放電回数が制限されたり放電開始電圧が変化したりするといったことも抑制され、これにより、静電気保護部品1aの耐久性を高めることが可能となる。
また、静電気保護部品1aでは、空洞部37が放電誘発部38の長手方向D1における両縁を覆うように、放電誘発部38の短手方向D2の略中央部上に重なるようになっている。この場合、放電誘発部38で放電が発生しやすい放電箇所38A,38B付近の空間領域(積層方向における厚み)を大きくすることができる。このため、本実施形態に係る静電気保護部品1aによれば、静電気保護部品1aのクランプ電圧を低減することが可能となる。
また、静電気保護部品1aでは、空洞部37は、ギャップGPにおいて、放電誘発部38の長手方向D1における両縁を覆うように配置されている。このため、ギャップGPの中央部に放電誘発部38と重ならない空洞部を設けなくてよいため、空洞部37をコンパクトにすることができる。また、この構成によれば、放電電極4A,4Bの対向長さを短くできるため、放電電極4A,4B間で発生する静電容量を小さくすることが可能となる。
[第3実施形態]
次に、図12〜図15を参照して、第3実施形態に係る静電気保護部品1bについて説明する。本実施形態に係る静電気保護部品1bは、第1実施形態と同様に、素体3と、放電電極4A,4Bと、外部電極6A,6Bとを備えているが、放電誘発部48と空洞部47とを備えている点、及び、空洞部47が放電誘発部48の内部に形成されている点(図15参照)で、第1実施形態と異なっている。
次に、図12〜図15を参照して、第3実施形態に係る静電気保護部品1bについて説明する。本実施形態に係る静電気保護部品1bは、第1実施形態と同様に、素体3と、放電電極4A,4Bと、外部電極6A,6Bとを備えているが、放電誘発部48と空洞部47とを備えている点、及び、空洞部47が放電誘発部48の内部に形成されている点(図15参照)で、第1実施形態と異なっている。
放電誘発部48は、積層方向D3から見て、略矩形形状を呈しており、第1及び第2の放電電極4A,4Bを互いに接続して第1及び第2の放電電極4A,4B間の放電を発生し易くする機能を有している。放電誘発部48は、第1の放電電極4Aの対向領域16Aと、第2の放電電極4Bの対向領域16Bとに接するように形成されている。具体的には、放電誘発部48は、両放電電極4A,4Bの表面に接するように配置されて両放電電極4A,4Bを接続する部分48aと、両放電電極4A,4Bの対向領域であるギャップGPに配置されている2つの部分とを有している。
このような部分を有する放電誘発部48は、図14に示されるように、第1及び第2の放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と共に、第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込むようになっている。つまり、第1及び第2の放電電極4A,4Bは、対向領域16A,16Bにおいて、両放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部48とによって積層方向D3に挟み込まれている。
放電誘発部48の略中央部の内側には、図14及び図15に示されるように、ギャップGPにおいて放電誘発部48に隣り合って接するように、素体3の空洞部47が形成されている。つまり、空洞部47は、ギャップGPの長手方向D1における略中央に配置されている。このような放電誘発部48及び空洞部47の配置構成により、空洞部47と放電誘発部48との境界部分48A,48Bに沿って放電が生じるように誘導される。なお、上記の静電気保護部品1bを製造するにあたっては、第1実施形態における製造方法(図7参照)での放電誘発部形成ステップS30と、内部空間形成ステップS40との順序を逆にすることにより、例えば製造することが可能である。
以上のように、第3実施形態に係る静電気保護部品1bでは、放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部48とで第1及び第2の放電電極4A,4Bを積層方向D3に挟み込んでいる。このように、両放電電極4A,4Bを実体のあるセラミック層2と放電誘発部48とで積層方向D3に固定することにより、空洞部形成用のラッカーが消失して空洞部が形成される際に放電電極がフリーな状態になってしまうことが抑制される。その結果、静電気保護部品1bによれば、放電電極4A,4Bが素体3(セラミック層2)から剥がれることを抑制できる。
また、静電気保護部品1bでは、ギャップGPにおいて空洞部47が放電誘発部48に隣り合って接している。このため、放電による破壊を長手方向D1(水平方向)に誘導することができ、放電による放電誘発部48の厚み方向(セラミック層2の積層方向D3)への破壊を抑制することができる。このように放電誘発部48の厚み方向への破壊が抑制されることから、静電気保護部品1bによれば、放電回数が制限されたり放電開始電圧が変化したりするといったことも抑制され、これにより、静電気保護部品1bの耐久性を高めることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、上述した実施形態は本発明に係る静電気保護部品の実施形態を説明したものであり、本発明に係る静電気保護部品は本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る静電気保護部品は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る静電気保護部品を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、第1及び第2の放電電極4A,4Bの構成は、図3等に示す構成に限定されず、長さや幅、ギャップの大きさを適宜変更してもよい。また、例えば、図16に示す構成を採用してもよい。
図16に示す構成では、第1の放電電極4Aは、素体3の端面3aから長手方向D1に延び、第2の放電電極4Bは、素体3の端面3bから長手方向D1に延び、放電電極4Aの先端12Aと放電電極4Bの先端12B同士が対向してギャップ部GPを形成している。また、第1及び第2の放電電極4A,4Bは、その短手方向D2の略中央部を放電誘発部58によって互いに接続されており、その放電誘発部58を覆うように空洞部57が形成されている。この場合であっても、第1及び第2の放電電極4A,4Bは、両放電電極4A,4Bが配置されたセラミック層2と放電誘発部58によって積層方向D3に挟み込まれており、積層方向に固定されている。
また、上述の実施形態では、静電気保護機能を有する放電部分のみを含む静電気保護部品を例示したが、コイル部やコンデンサ部など他の機能を追加して一体化した静電気保護部品に本発明を採用してもよい。このとき、セラミック層2の材料は、放電部、コイル部、コンデンサ部のそれぞれに対して各層ごとに最適な材料に変更してもよい。
1…静電気保護部品、2…セラミック層、3…素体、4A…第1の放電電極、4B…第2の放電電極、7,37,47,57…空洞部、8A…第1の放電誘発部、8B…第2の放電誘発部、14A,14B,15A,15B…側縁、16A,16B…対向領域、38,48,58…放電誘発部。
Claims (7)
- 複数のセラミック層が積層された素体と、
前記素体内において所定のギャップを介して対向するように前記素体の同じセラミック層に配置された第1及び第2の放電電極と、
前記素体内において、前記第1及び第2の放電電極に接すると共に前記第1及び第2の放電電極を互いに接続する放電誘発部と、を備え、
前記ギャップにおいて前記放電誘発部に隣り合って接する空洞部を前記素体が有しており、前記放電電極が配置されたセラミック層と前記放電誘発部とで前記第1及び第2の放電電極を積層方向に挟み込むことを特徴とする静電気保護部品。 - 前記第1及び第2の放電電極が対向する領域において、前記放電電極が配置されたセラミック層と前記放電誘発部とで前記第1及び第2の放電電極を前記積層方向に挟み込むことを特徴とする請求項1に記載の静電気保護部品。
- 前記第1の放電電極は、前記積層方向に交差する第1の方向に延びると共に、前記第1の方向に沿って延びる第1の側縁を有し、
前記第2の放電電極は、前記第1の方向に延びると共に、前記第1の方向に沿って延びる第2の側縁とを有し、
前記第1及び第2の放電電極は、前記第1及び第2の側縁が前記第1の方向及び前記積層方向に交差する第2の方向に互いに対向するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電気保護部品。 - 前記放電誘発部は、第1及び第2の放電誘発部から形成されており、前記空洞部が前記第1及び第2の放電誘発部の両方の上に重なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の静電気保護部品。
- 前記空洞部が前記第1及び第2の放電誘発部の全体を覆うことを特徴とする請求項4に記載の静電気保護部品。
- 前記空洞部は、前記ギャップにおいて、前記放電誘発部の前記第1の方向における両縁を覆うことを特徴とする請求項3に記載の静電気保護部品。
- 前記放電誘発部は、前記第1及び第2の放電電極の少なくとも一方の先端部を覆うことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の静電気保護部品。
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