以下、本発明を適用した画像形成装置として、直接記録方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、このプリンタの基本的な構成について説明する。図5は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーを用いて画像を形成するY,M,C,K用の画像形成部90Y,M,C,K、中間記録装置100、給紙カセット120、レジストローラ対122、定着装置130などを備えている。
画像形成部90Y,M,C,Kは、水平方向に所定のピッチで並ぶように配設され、それぞれ、回路基板10Y,M,C,Kや、トナー保持体たるトナー保持スリーブ30Y,M,C,Kなどを有している。
中間記録装置100は、画像形成部90Y,M,C,Kの上方に配設されている。無端状の中間記録ベルト101、駆動ローラ102、従動ローラ103、対向電極板104Y,M,C,K、ベルトクリーニング装置110、転写ローラ115などを有している。中間記録ベルト101は、駆動ローラ102と従動ローラ103とによって水平方向に延在する姿勢で張架されながら、駆動ローラ102の図中反時計回りの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。中間記録ベルト101のおもて面(ループ外面)は、ベルト無端移動に伴って画像形成部90Y,M,C,Kとの対向位置を順次通過していく。この際、Y,M,C,Kトナー像が順次重ね合わせて記録されていく。これにより、中間記録ベルト101のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
中間記録装置100の4つの対向電極板104Y,M,C,Kは、中間記録ベルト101のループ内で、ベルトを介して、画像形成部90Y,M,C,Kの回路基板30Y,M,C,Kに対向するように配設されている。また、中間記録装置100の転写ローラ115は、中間記録ベルト101のループ外に配設され、ベルトにおける駆動ローラ102に対する掛け回し箇所に当接して転写ニップを形成している。この転写ニップにおいては、図示しない電源によってプラスの転写バイアスが印加される転写ローラ115と、駆動ローラ102との電位差によって転写電界が形成されている。
中間記録装置100のベルトクリーニング装置110は、中間記録ベルト101における周方向の全領域のうち、転写ニップを通過した後、Y用の画像形成部90Yとの対向位置に進入する前の領域に当接するように配設されている。
給紙カセット120は、複数枚の記録紙Pを重ね合わせて収容しており、一番上の記録紙Pの給紙ローラ120aを当接させている。そして、所定のタイミングで給紙ローラ120を回転駆動させて、一番上の記録紙Pを給紙路121に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、上述の転写ニップの直前に配設されたレジストローラ対122のローラ間に挟まれる。レジストローラ対122は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間記録ベルト101上の4色重ね合わせトナー像に密着させ得るタイミングを見計らって転写ニップに向けて送り出す。転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた4色重ね合わせトナー像は、転写電界やニップ圧の作用によって記録紙Pに転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像になる。このようにしてフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、転写ニップから定着装置130に送られてフルカラートナー像が定着せしめられた後、機外へと排出される。なお、定着装置130は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ121とこれに向けて押圧されている加圧ローラ122との当接によって定着ニップを形成している。そして、この定着ニップ内に記録紙Pを挟み込んだ際に、ニップ圧や加熱の作用によってフルカラートナー像を記録紙Pの表面に定着せしめる。
ベルトクリーニング装置110は、転写ニップを通過した後の中間記録ベルト101に付着している転写残トナーをクリーニングする。
図6は、Y用の画像形成部(90Y)のトナー保持スリーブ30Yを示す斜視図である。また、図7は、このトナー保持スリーブ30Yの横断面図である。また、図8は、トナー保持スリーブ30Yの円筒部31Yを平面的に展開した平面展開図である。図6に示すように、トナー保持スリーブ30Yは、円筒部31Y、これの軸線方向の両端面にそれぞれ接続されたフランジ36Y,38Y、それぞれのフランジの中心から突出する軸部材37Y,39Yなどを有している。円筒部31Yの周面には、ローラ軸線方向に延在する形状の複数の電極33Yが、周方向(回転方向)に所定のピッチで並ぶように形成されている。これら電極のうち、周方向において1個おきに並んでいるもの同士は、互いに同じ電位状態にされる電気的に同相の電極になっている。
円筒部31Yの周面には、図7に示すように、第1電極33aYと第2電極33bYとが周方向に交互に並ぶように配設されている。第1電極33aYは、円筒部31Yの軸線方向の一端まで延在しており、円筒部31Yの一端には金属製のフランジ36Yが接続されている(図6を参照)。このフランジ36Yにより、複数の第1電極33aYが互いに電気的に導通している。また、第2電極33bYは、円筒部31Yの軸線方向の他端まで延在しており、円筒部31Yの他端には金属製のフランジ38Yが接続されている。このフランジ38Yにより、複数の第2電極33bYが互いに電気的に導通している。
図6に示したトナー保持スリーブ30Yは、軸線方向の両端の軸部材37Y,39Yがそれぞれ回転自在に支持されながら回転駆動される。そして、図示のように、図中左側のフランジ36Yには、搬送制御部91Yによって第1電極用の電圧が印加される。この印加は、フランジ36Yに摺擦する図示しない摺擦電極を介して行われる。フランジ36Yに印加された第1電極用の電圧は、複数の第1電極33aYにそれぞれ導かれる。また、図中右側のフランジ38Yには、搬送制御部91Yによって第2電極用の電圧が印加される。この印加は、フランジ38Yに摺擦する図示しない摺擦電極を介して行われる。フランジ38Yに印加された第2繰り返しパルス電圧は、複数の第2電極33bYにそれぞれ導かれる。
このように、第1電極33aYに第1電極用の電圧が印加されるとともに、第2電極33bYに第2電極用の電圧が印加されることで、図7に示すように、トナー保持スリーブ30Yの表面上において、トナー粒子Tが第1電極33aYと第2電極33bYとの間を繰り返しホッピングする。以下、トナー粒子Tをこのようにして繰り返しホッピングさせている状態をフレア(Flare)という。
円筒部31Yの周面における第1電極33aY上と第2電極33bYとの間におけるホッピングの繰り返しで、円筒部31Yの周面上にフレアを形成しているYトナーは、トナー保持スリーブ30Yの回転駆動により、図5に示したY用の回路基板10Yに対向するY用の記録領域まで搬送される。そして、その記録領域にて、その放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で回路基板10Yの近傍に至ると、必要に応じて回路基板10Yの後述する図示しない貫通孔内に取り込まれて、トナー像の記録に寄与する。
なお、図7に示したように、円筒部31Yの表面には、絶縁材料からなる表面保護層34Yを設けている。この表面保護層34Yにより、Yトナーと第1電極33aYや第2電極33bYとの直接接触を回避することで、電極からYトナーへの電荷注入の発生を回避している。
円筒部31Yの円筒状の基材32Yとしては、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、ステンレス等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルム等の変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。第1実施形態では、基板32Yとして、膜厚0.1[mm]のポリイミドフィルムを使用し、このポリイミドフィルムをアルミ製のローラに巻きつけることで、筒状のフィルムを得た。
第1電極33aYや第2電極33bYについては、例えば次のようにして作成する。即ち、まず、基板32Y上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10[μm]、好ましくは0.5〜2.0[μm]の厚みで成膜してから、これをフォトリソグラフィー技術等によって所要の電極形状にパターン化して各電極を得る。これらの電極の幅W(ローラ表面移動方向の長さ)については、トナーの体積平均粒径の1倍以上20倍以下とすることが望ましい。実施形態では、電極の材料としてAlを使用し、これを2[μm]の厚みで成膜した。
表面保護層34Yとしては、例えばSiO2、TiO2、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜10[μm]、好ましくは厚さ0.5〜2[μm]で成膜して形成している。ポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を0.5〜10μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
図9は、Y用の画像形成部90Yの一部とその周囲とを示す拡大構成図である。トナー保持体としてのトナー保持スリーブ30Yは、表面上のトナーを第1電極と第2電極との間でホッピングさせてフレアを形成しながら、図中時計回り方向に回転駆動する。このトナー保持スリーブ30Yの上方にはY用の回路基板10Yが配設されており、スリーブとの間に距離dのギャップを介在させている。更に、回路基板10Yの上方では、中間記録ベルト101が図中矢印A方向に移動しており、更にその上方には対向電極板104Yがベルトと回路基板10Yとを介してトナー保持スリーブ30Yに対向している。
回路基板10Yは、絶縁性基板11Yを具備している。また、絶縁性基板11Yに形成された複数の貫通孔14Yと、それぞれの貫通孔14Yに個別に対応する複数の孔近傍電極12Y及び共通電極13Yとを具備している。
図10は、孔近傍電極12Yに印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの関係を示すグラフである。また、図11は、回路基板10Yを中間記録ベルト(101)側から示す平面図である。また、図12は、回路基板10Yをトナー保持スリーブ(30Y)側から示す平面図である。図9では、便宜上、貫通孔14Y、及び孔近傍電極12Yの組合せを1つしか示していなかったが、図12に示すように、回路基板10Yには、その組合せが複数形成されている。孔近傍電極12Yは、そのリング形状のループ内側に1つの貫通孔14Yを位置させるように形成されている。また、共通電極13Yは、そのリング状の形状の内側に孔近傍電極を位置させつつ、孔近傍電極と所定の間隙を維持するように形成されている。複数の孔近傍電極には、それぞれ金属からなるリード部15Yが繋がっており、これらリード部Yは互いに絶縁を維持する状態で、後述する記録制御部に接続されている。また、複数の共通電極13Yは、共通リード部16Yを介して互いに導通している。
平面方向において、リング状の孔近傍電極12Yの電極幅は10〜100[μm]であり、この孔近傍電極12Yから20〜50[μm]の距離をおいて、リング状の共通電極13Yが孔近傍電極12Yを囲んでいる。孔近傍電極12Yと共通電極13Yとの間には絶縁層が介在している。貫通孔14Yの径は、形成するドットの径に応じて決定されるが、直径φで30〜150[μm]程度である。
回路基板10Yは、例えば次のようにして製造されたものである。即ち、まず、厚さ30〜100[μm]の絶縁性フィルムからなる絶縁性基板11Yの表面に、厚さ0.2〜1[μm]程度の金属蒸着膜(例えばアルミ蒸着膜)を形成する。絶縁性フィルムの材質としては、ポリイミド、PET、PEN、PES等を例示することができる。次に、フォトリソグラフィー技術に用いるフォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク及びマスク露光を行う。そして、フォトレジストの加熱硬化を進めた後、金属エッチング液によって金属蒸着膜を個々の電極やリードの形状にパターンニングする。フィルムの裏面にも電極パターンが必要な場合には、同様のパターンニングを行う。複数の孔近傍電極12Yと、複数の共通電極13Yとを絶縁性基板11Yの同一面に配設することで、それらを1回のパターンニングで同時に形成して、製造コストを抑えつつ、両電極間の位置精度を良好に維持することができる。貫通孔14Yについては、電極パターン形成後にパンチ加工、レーザー加工、スパッタエッチング加工等のドライエッチング加工などによって形成する。
先に図9に示したように、搬送制御部91Yは、トナー保持スリーブ30Yの第1電極、第2電極に対し、第1電極用の電圧、第2電極用の電圧を印加して、スリーブ表面上のトナー粒子を両電極間でホッピングさせる。
一方、回路基板10Yの孔近傍電極12Yは記録制御部28Yに接続されている。この記録制御部28Yは、回路基板10Yの複数の孔近傍電極12Yに対する、記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−off(図10参照)の印加をそれぞれ個別に入切することができる。図10に示した記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの間の点線は、上述した第1電極用の電圧や第2電極用の電圧が印加されるトナー保持スリーブ30Yの平均電位を示している。この平均電位は、孔近傍電極12Yに印加される記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの間の値になっている。より詳しく説明すると、記録オン電圧Vc−onは、スリーブの平均電位よりも、トナーの帯電極性とは逆極性側に大きな値になっている。
中間記録ベルトにドットを記録するためのドット記録処理を実施する際には、複数の孔近傍電極12Yのうち、ドットに対応するものに記録オン電圧Vc−onを印加する。記録オン電圧Vc−onが印加された公金帽電極12Yは、その上方に位置しているスリーブ表面上のホッピングトナーを自らに向けて引き寄せるようになる。これに対し、記録オフ電圧Vc−offは、スリーブの平均電位よりも、トナーの帯電極性側に大きな値になっている。これにより、複数の孔近傍電極12Yのうち、記録オフ電圧Vc−offが印加されたものは、その上方に位置しているスリーブ表面上のホッピングトナーを自らと反発させるようになる。
貫通孔14Y及び孔近傍電極12Yを取り囲んでいる共通電極13Yには、共通電源29Yによって共通バイアスVgが印加されている。この共通バイアスVgの値は、上述した記録オフ電圧Vc−offと同じになっている。また、回路基板10Yと中間記録ベルト101とを介してトナー保持スリーブ30Yに対向している対向電極104Yには、対向電源116によって対向バイアスVpが印加されている。この対向バイアスは、トナーの帯電極性とは逆極性であり、且つ上述した記録オン電圧Vc−onよりも、トナーとは逆極性側に大きな値になっている。
トナー保持スリーブ30Yの表面上でホッピングしているトナー粒子は、記録オン電圧Vc−onが印加されている孔近傍電極12Yの中の貫通孔14Yである画像孔内に進入した後、画像孔を通過して図示しない対向電極板104Yに向けて飛翔する。そして、対向電極板104Y上の中間記録ベルト101に着地してドットを形成する。
なお、対向電極板104Yに印加する対向バイアスVpの値は、回路基板10Yと対向電極板との距離に応じて設定される。当然ながら、距離が大きくなるほど、対向バイアスVpは大きな値に設定される。マイナス帯電性のトナーであれば、+200〜+1500[V]程度に設定される。孔近傍電極12Yに印加する記録オフ電圧Vc−offについては、共通電極13Yに印加する共通バイアスVpと同じ値にする必要はなく、それよりもトナー帯電極性側に大きくしてもよい。
図13は、Y用の画像形成部(90Y)を示す拡大構成図である。図5では、便宜上、トナー保持スリーブ30Yの周囲構成を割愛して示していたが、図13に示すように、トナー保持スリーブ30Yは、ホッピングユニット40Yのケーシング41Y内に収容されている。ホッピングユニット40Yは、トナー保持スリーブ30Yの他に、第1剤収容部48Y、第2剤収容部46Y、磁気ブラシ部などを有している。
第1剤収容部48Yは、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュウ49Yを、図示しない磁性キャリアとトナーとを混合した混合剤とともに収容している。また、第2剤収容部46Yは、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュウ47Yを、混合剤とともに収容している。これら剤収容部は、互いに仕切壁によって仕切られているが、一部が互いに連通口を介して連通している。
第1搬送スクリュウ49Yは、その回転駆動によって第1収容部48Y内の混合剤を回転撹拌しながら、図紙面に直交する方向における手前側から奥側へと搬送する。このとき、搬送途中の混合剤は、第1収容部48Yの天板に固定されたトナー濃度センサ50Yによってトナー濃度が検知される。そして、図中奥側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁の連通口を経て、第2収容部46Y内に進入する。
第2収容部46Yは、後述するトナー供給ロール42Yを収容する磁気ブラシ形成部に連通しており、第2搬送スクリュウ47Yとトナー供給ロール42Yとは所定の間隙を介して互いに軸線方向を平行にする姿勢で対向している。第2収容部46Y内の第2搬送スクリュウ47Yは、その回転駆動によって第2収容部46Y内の混合剤を回転撹拌しながら、図中奥側から手前側へと搬送する。この過程において、第2搬送スクリュウ47Yによって搬送される混合剤の一部は、トナー供給ロール42Yの筒状のトナー供給スリーブ43Yによって汲み上げられる。そして、トナー供給スリーブ43Yの図中反時計回り方向の回転駆動に伴って、後述するトナー供給領域を通過した後、トナー供給スリーブ43Yの表面から離脱して再び第2収容部46Y内に戻される。その後、第2搬送スクリュウ47Yによって図中手前側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁の連通口を経て第1収容部48Y内に戻される。
上述したトナー濃度センサ50Yは、透磁率センサからなる。このトナー濃度センサ50Yによる混合剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しないメイン制御部に送られる。混合剤の透磁率は、混合剤のKトナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサ50Yはトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。
本プリンタの図示しないメイン制御部は、CPU、RAM、ROMなどを備えており、Y,M,C,K用の記録制御部(例えば図9に示した28Y)や、Y,M,C,K用の搬送制御部(例えば図9に示した91Y)に接続されている。そして、RAMの中にトナー濃度センサ50Yからの出力電圧の目標値であるY用のVtrefを格納している。トナー濃度センサ50Yからの出力電圧値と、RAM内のY用のVtrefとを比較して、比較結果に応じた時間だけ図示しないトナー供給装置を駆動させる。この駆動により、作像に伴うトナー消費によってトナー濃度を低下させた混合剤に対し、第1収容部48Y内に適量のトナーが供給される。このため、第2収容部46Y内の混合剤のトナー濃度が所定の範囲内に維持される。M,C,Kについても、同様のトナー濃度制御を行う。
トナー供給ロール42Yは、図中反時計回り方向に回転駆動される非磁性材料からなる筒状のトナー供給スリーブ43Yと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラ44Yとを有している。筒状のトナー供給スリーブ43Yは、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂などの非磁性体が円筒形に形成されたものである。また、マグネットローラ44Yは、図示のように、回転方向に並ぶ複数の磁極(図中12時の位置から反時計回り方向に順にN極、S極、N極、S極、N極、S極)を有している。これら磁極により、トナー供給スリーブ43Yの周面上に混合剤が吸着せしめられて、磁力線に沿って穂立ちした磁気ブラシとなる。
トナー供給スリーブ43Yの表面に汲み上げられた混合剤は、トナー供給スリーブ43Yの回転に伴って図中反時計回り方向に回転する。そして、自らの先端をトナー供給スリーブ43Yの表面に対して所定の間隙を介して対向させている規制部材45Yとの対向位置である担持量規制位置に進入する。このとき、規制部材45Yとスリーブ表面との間隙を通過することで、スリーブ表面上における担持量が規制される。
トナー供給スリーブ43Yの図中左側方では、トナー保持体たるトナー保持スリーブ30Yがトナー供給スリーブ43Y表面と所定の間隙を介して対向しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されている。トナー供給スリーブ43Yの回転に伴って上述の担持量規制位置を通過した混合剤は、トナー保持スリーブ30Yとの接触位置であるトナー供給領域に進入して、磁気ブラシ先端を摺擦せしめながら移動する。この摺擦や、トナー供給スリーブ43Yとトナー保持スリーブ30Yとの電位差などにより、磁気ブラシ中のトナーがトナー保持スリーブ30Yの表面上に供給される。なお、トナー供給スリーブ43Yには、バイアス制御部55Yにより、可変可能なバイアスが印加される。トナー供給スリーブ43Yからトナー保持スリーブ30Yへのトナー供給を行うときには、バイアス制御部55Yにより、トナー供給スリーブ43Yに対してトナー供給バイアスが印加される。これにより、トナー供給スリーブ43Yとトナー保持スリーブ30Yとの間に、トナーを前者から後者に移動させる電界が形成される。供給バイアスは、トナーの帯電極性と同極性の直流電圧でもよいし、かかる直流電圧に交流電圧を重畳したものでもよい。
トナー供給領域を通過したトナー供給スリーブ43Y上の磁気ブラシ(混合剤)は、スリーブの回転に伴って第2収容部46Yとの対向位置まで搬送される。この対向位置の付近には、マグネットローラ44Yに磁極が設けられておらず、混合剤をスリーブ表面に引き付ける磁力が作用していないため、混合剤はスリーブ表面から離脱して第2収容部46Y内に戻る。なお、マグネットローラ44Yとして、6つの磁極を有するものの代わりに、6つを超える磁極を有するものを用いてもよい。
トナー供給スリーブ43Yから供給されたトナーを担持するトナー保持スリーブ30Yは、ケーシング41Yに設けられた開口から周面の一部を露出させている。この露出箇所は、回路基板10Yに対向している。
トナー保持スリーブ30Yの表面上に供給されたトナーは、トナー保持スリーブ30Yの表面上でホッピングしながら、トナー保持スリーブ30Yの回転に伴って、トナー供給領域から回路基板10Yとの対向領域に向けて搬送される。そして、回路基板10Yとの対向領域において、必要に応じて回路基板10Yの貫通孔内に取り込まれて、ドットの記録に寄与する。Y用の画像形成部(90Y)について詳しく説明してきたが、他色の画像形成部(90M,C,K)もY用のものと同様の構成になっている。
以上の構成の本プリンタにおいては、トナー保持体の表面に付着させているトナー粒子を回路基板の画像孔内に取り込むものとは異なり、トナー保持スリーブの表面上でホッピングさせているトナー粒子を回路基板の画像孔内に取り込んでいる。これにより、回路基板の孔近傍電極に対する印加電圧を制御する記録制御部(例えば28Y)の低コスト化を図ることができる。具体的には、複数の孔近傍電極に対する記録オン電圧Vc−onや記録オフ電圧Vc−offの入切については、専用のICによって個別に行う必要がある。このICの数は、相当数に及ぶ。例えば、600[dpi]の解像度で画像を形成する仕様では、前述のICを4960個設ける必要がある。一般に、ICは、その耐電圧が高くなるほどチップ面積を必要とするため高価になる。直接記録方式では、いかに制御電圧を下げるかが、記録制御部の低コスト化を図る上で重要な要素となる。ところが、一般的な直接記録方式では、ICとして、少なくとも500[V]以上の耐電圧のものを用いる必要がある。これは次に説明する理由による。即ち、トナー粒子とトナー保持体とには、鏡像力、ファンデルワールス力、液架橋力などによって互いに引き付け合うような付着力が作用しており、これに打ち勝つだけの電界をつくり出すには、少なくとも絶対値が500[V]以上であるバイアスを孔近傍電極に印加しなければならないのである。これに対し、本プリンタにおいては、トナー保持スリーブ30Yの表面上でトナーをホッピングさせることで、スリーブ表面とトナーとの付着力をなくしているので、数十[V]程度のバイアスを孔近傍電極に印加すれば、記録のオンオフを制御することが可能である。つまり、上述のICとして、100[V]程度の耐電圧のものでよいのである。
図14は、実施形態に係るプリンタの第1変形例におけるY用の回路基板10Yをトナー保持スリーブ(30Y)側から示す平面図である。第1変形例に係るプリンタの回路基板10Yは、共通電極13Yを基板面のほぼ全域に渡ってベタ状に形成し、且つ、孔近傍電極12Yの形成エリアやその周囲だけ、共通電極13Yを設けない領域としている。共通電極13Yを基板面のほぼ全域に渡って形成することで、共通電極13Yに対するクリーニングバイアスの印加により、基板面のほぼ全域に対してクリーニング処理を施すことができる。
図15は、実施形態に係るプリンタの第2変形例におけるY用のホッピングユニット40Yを示す拡大構成図である。このホッピングユニット40Yは、トナーと磁性キャリアとを混合した混合剤を収容する代わりに、トナーそのものを収容している。トナー収容部内に収容しているトナーを、回転するトナー供給ローラ52Yの弾性材料からなるローラ部と、これに当接しながら回転する帯電ローラ53Yとの間にトナーを挟み込むことで、トナーの摩擦帯電を助長しながら、そのトナーをトナー供給ローラ52Y表面で汲み上げる。汲み上げられたトナーは、トナー供給ローラ52Yに当接している規制部材51Yによって層厚が規制された後、トナー供給ローラ52Yの回転に伴ってトナー保持スリーブ30Yとの対向領域まで搬送される。
プリントジョブ時には、トナー供給ローラ52Yに対して、バイアス制御部55Yによって供給バイアスが印加される。この供給バイアスは、トナー保持スリーブ30Yの第1電極や第2電極に印加されるパルス電圧の平均電位Vsよりも、トナーの帯電極性とは逆極性側に大きな値のバイアスである。よって、トナー供給ローラ52Yと、トナー保持スリーブ30Yとの間には、トナーをトナー供給ローラ52Y側からスリーブ側に移動させる電界が形成される。トナー供給ローラ52Yの表面上のトナーは、その電界の作用によってローラ表面からスリーブ表面に転移する。トナー保持スリーブ30Yの表面上では、既に説明したように、トナーのホッピングによるフレアが形成される。フレアを形成しているトナーの一部は、回路基板10Yの貫通孔内に取り込まれてドットの形成に寄与する。
回路基板10Yとの対向領域で回路基板10Yの貫通孔内に取り込まれなかったトナーは、トナー保持スリーブ30Yの回転に伴ってケーシング内に至った後、図示しない回収手段によってトナー保持スリーブ30Yの表面から回収される。回収されたトナーは再びトナー収容部される。
かかる構成においては、実施形態に比べて、ホッピングユニット40Yの構造を簡素化することができる。
次に、従来装置で発生していた不具合について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の機械的構造になっているプリンタ試験機を用意した。このプリンタ試験機における諸条件は次に列記する通りである。
・トナー保持スリーブにおける第1電極や第2電極の幅W:80[μm]。
・トナー保持スリーブの表面上における第1電極と第2電極との間の間隙:80[μm]。
・孔近傍電極のリングの幅:80[μm]。
・トナー保持スリーブの回転線速:100[mm/sec]。
・トナー保持スリーブと回路基板との間のギャップ:約200[μm]。
・回路基板と中間記録ベルト101との間のギャップ:約500[μm]。
・中間記録ベルト101の線速:42[mm/sec]。
・トナー保持スリーブの表面上における単位面積当たりのトナー担持量:約0.4[mg/cm2]。
・トナー保持スリーブの表面上におけるトナーの平均帯電量:−20〜−30[μC/g]。
・第1電極に印加する第1繰り返しパルス電圧のピークツウピーク電位:250[V]。
・第1繰り返しパルス電圧の周波数1[kHz]。
・第2電極に印加する第2繰り返しパルス電圧のピークツウピーク電位:250[V]。
・第2繰り返しパルス電圧の位相:第1繰り返しパルス電圧とは逆位相。
・第1、第2繰り返しパルス電圧の波形:矩形波。
・第1、第2繰り返しパルス電圧の最大値と最小値との中心の値(以下、パルス中心電圧という):0[V]
・孔近傍電極に印加する記録オン電圧Vc−on:120[V](=パルス中心電圧+120V)。
・記録オン電圧Vc−onの印加時間:連続(全面ベタ印字のため、全ての孔近傍電極に対してVc−onを連続して印加した)。
・対向電極板に印加する対向バイアスVp:750[V](パルス中心電圧+750V)。
[実験1]
このような条件のプリントテスト機を用いて、複数のA4サイズの用紙に対して黒ベタ画像を連続して出力する連続プリント試験を行った。図16は、この連続プリント試験における連続プリント枚数と画像ID(画像濃度)との関係を示すグラフである。図示のように、連続プリントを9枚行っただけで、画像IDが1枚目に比べて約0.3も低下している。
本発明者らは、このような画像IDの低下をきたす原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、ホッピングトナーによるフレアをトナー保持スリーブと回路基板との間に形成している状態で、画像孔に対応する孔近傍電極に対して記録オン電圧Vc−onを印加すると、回路基板表面における画像孔の周囲箇所にホッピング中のトナー粒子の一部を付着させる。ベタ画像などといった高画像面積率の画像を連続出力すると、前記周囲箇所とトナー粒子との付着力や、前記周囲箇所上におけるトナー粒子同士の付着力を過剰に高めてしまう。すると、それらトナー粒子の電荷により、画像孔に対するトナー粒子の進入を阻害する電界が画像孔周囲に形成されてしまう。この電界の形成により、画像孔に対するトナー通過量を低減してしまうことが、画像濃度不足を引き起こしている原因になっていることがわかった。
なお、画像孔周囲の付着トナー粒子が非常に多くなってくると、付着トナー粒子で画像孔を塞いでしまい、画像を正常に記録することができなくなるおそれもある。
この実験1では、記録オン電圧Vc−onを連続して印加したが、実際の装置では、ベタ画像を出力するにしても、次のような電圧制御を行う仕様を採用することもある。即ち、ある程度の時間だけ記録オン電圧Vc−onを印加して1ドットを形成した後、少しの時間だけ記録オン電圧Vc−onに代えて記録オフ電圧Vc−offを印加するという処理を繰り返し実施することで、副走査方向に並ぶ複数のドットを形成してベタ画像を得る仕様である。このような仕様において、記録オン電圧Vc−onの印加によって回路基板の孔周囲箇所にトナーを付着させた後、トナーと同極性の記録オフ電圧Vc−offに切り替えても、トナーを孔周囲箇所に付着させたままになることがある。電気的には、回路基板の孔近傍電極とトナーとを反発させていても、回路基板とトナーとに働く鏡像力やファンデルワールス力の方がその反発力よりも勝ってしまうからである。
[実験2]
本発明者らは、次のような実験(以下、実験2という)を行った。プリンタ試験機における第1電圧及び第2電圧の組合せを、実験1で採用したような互いに逆位相のものから、図17(a)及び(b)に示すものに変更した。図17(a)に示すように、実験2においては、第1電極に印加する第1電圧と、第2電極に印加する第2電圧とのうち、何れか一方として、所定の周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す繰り返しパルス電圧を印加した。また、図17(b)に示すように、他方として、一定電圧を印加した。この一定電圧は、前記繰り返しパルス電圧の最小値と最大値との中心値Voと同じ値になっている。このような電圧条件では、図17(a)に示した繰り返しパルス電圧の値を最大値(Vmax)にしたときと、最小値(Vmin)にしたときとでそれぞれ、第1電極と第2電極との電位差を最大にする。その最大電位差は、繰り返しパルス電圧のピークツウピーク値Vppのちょうど半分になる。すると、図3に示したような繰り返しパルス電圧の組合せを採用していた従来装置に比べて、ピークツウピーク値Vppを最大で2倍にまで増大させることが可能になる。例えば、プリント試験機では、第1電極と第2電極との間の放電を回避するためには、前述の最大電位差を250[V]以下に留める必要があり、図3に示したような繰り返しパルス電圧の組合せを採用した場合には、ピークツウピーク値Vppを250[V]以下に留める必要があった。これに対し、図17(a)及び(B)に示した電圧の組合せを採用した場合、図17(a)の繰り返しパルス電圧のピークツウピーク値Vppを図3の2倍の500[V]に設定しても、第1電極と第2電極との最大電位差を250[V]に留めることが可能なのである。そこで、実験2では、図17(a)に示した繰り返し電圧のピークツウピーク値Vppを、実験1の2倍である500[V]に設定した(周波数=1kV)。また、第2電圧として、図17(b)に示したような一定電圧を採用した。この一定電圧は、パルス中心電圧と同じ値であるため、0[V]である。それ以外の条件は、実験1と同じにして、複数のA4サイズの用紙に対して黒ベタ画像を連続して出力した。そして、拡大鏡を用いて、回路基板の貫通孔の周囲箇所に対するトナー付着の度合いを観察した。すると、実験1に比べて、貫通孔の周囲箇所に付着したトナーの量が少し減ったことを確認することができた。
実験1に比べて、実験2において孔周囲箇所に対するトナー付着量が減ったのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、上述したように、実験1では、A相電極とB相電極との間における放電の発生を回避するために、第1電圧や第2電圧のピークツウピーク値Vppを250[V]に留めていた。これに対し、実験2では、両電極間での放電の発生を回避しつつ、第1電圧のピークツウピーク値Vppを500[V]に引き上げている。これにより、トナー粒子のホッピング高さを、実験1のよりも大幅に大きくしている。すると、回路基板表面の孔近傍箇所(孔近傍電極の真上)に付着させてしまったトナー粒子に対して、ホッピング中のトナー粒子を衝突させ易くして、前者のトナー粒子の孔近傍箇所からの離脱を促す。これにより、実験1に比べて、回路基板表面の孔近傍箇所に付着させたままにしてしまうトナー粒子の数を減らすことで、孔近傍箇所にトナーを固着させることに起因する画像濃度不足の発生を抑えることができたと考えられる。但し、多量のベタ画像を出力し続けると、固着トナーを徐々に増加させてしまうことがわかった。
[実験3]
実験3では、まず、実験1と全く同じ条件で、複数のA4サイズの用紙に対して黒ベタ画像を連続して出力した。これにより、回路基板の孔周囲箇所に、トナーを意図的に付着させた。そして、拡大鏡を用いてその付着量を目視観察した。次に、実験2と同様に、トナー保持ローラの第1電極に対して、図17(a)に示した繰り返しパルス電圧を印加し、且つ、第2電極に対して図17(b)に示した一定電圧を印加して、トナー保持ローラの表面上のトナーをホッピングさせた。同時に、全ての孔近傍電極に対して、+120[V]の記録オン電圧Vc−onと、−180[V]の記録オフ電圧Vc−offとを交互に切り換えて印加した。このような電圧の印加を、10秒間行った。その後、拡大鏡を用いて、回路基板の貫通孔の周囲箇所に対するトナー付着の有無を観察して、トナー除去性を×(付着トナーが殆ど減っていない)、△(付着トナーが少し減った)、○(付着トナーが大きく減った)の三段階で評価した。このような工程を、記録オン電圧Vc−onのデューティ比=0、25、50、75、100[%]の5通りの条件について、それぞれ行った。かかる実験3の結果を次の表1に示す。なお、記録オン電圧Vc−onのデューティ比は、記録オン電圧Vc−onの1回あたりの持続時間と、記録オフ電圧Vc−offの1回あたりの持続時間との和に対する前者の割合である。よって、ディーティ比=0[%]は、図18に示すように、記録オン電圧Vc−onを全く印加しないで、記録オフ電圧Vc−offを印加し続けたことを意味している。また、ディーティ比=100[%]は、記録オフ電圧Vc−offを全く印加しないで、記録オン電圧Vc−onを印加し続けたことを意味している。
表1に示すように、記録オン電圧Vc−onのディーティ比を0[%]や100[%]に設定した条件では、回路基板の孔周囲箇所に付着しているトナーを除去することはできなかった。しかし、記録オン電圧Vc−onのディーティ比を0[%]よりも高く、且つ100[%]よりも低く設定した条件では、回路基板の孔周囲箇所に付着しているトナーを除去することができた。特に、ディーティ比を50[%]に設定した条件では、トナーを良好に除去することができた。
このように、デューティ比を[%]よりも高く、且つ100[%]よりも低く設定することで、孔周囲箇所に付着しているトナーを除去することができたのは、次に説明する理由によると考えられる。即ち、記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの切り替えによって急激に電界の向きが変化するときに、ホッピングによって孔周囲箇所の付近で浮遊していたトナーがその進行方向を急激に変化させるのに伴って、孔周囲箇所に付着しているトナーに衝突して、そのトナーの剥離を助長したと考えられる。
この実験3により、孔周囲箇所にトナーを付着させてしまっても、図17に示すような電圧条件でトナーをホッピングさせながら、孔近傍電極に対して、トナーを貫通孔に進入させ得る電圧と、進入を阻止し得る電圧とを交互に切り換えて印加することで、その付着トナーを除去し得ることがわかった。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。図19は、実施形態に係るプリンタのY用の回路基板における貫通孔14Y及び孔近傍電極を示す平面図である。なお、以下、貫通孔と孔近傍電極との組合せを孔電極組という。図19において、矢印B方向は、図示しない記録紙の搬送方向(=副走査方向)を示している。また、矢印A方向は、記録紙の搬送方向に直交する方向(=主走査方向)を示している。同図に示す孔電極組配列では、主走査方向に列A(1列目)〜列H(8列目)の8つの電極列を形成している。電極列に配設される孔近傍電極12Yの大きさは、直径300[μm]である。孔近傍電極12Yの中心には、直径150[μm]の貫通孔14Yが形成されている。それぞれの電極列においては、このような孔電極組が「4×β」のピッチで主走査方向(矢印A方向)に並んでいる。図示の例では、「β」として、150[dpi]の解像度を実現する場合のドットピッチである169.3[μm]を採用している。よって、各電極列では、「孔−電極組」を150/4=37.5[dip]のドットピッチと同じピッチで配設していることになる。列A(1列目)〜列D(4列目)までは、図示のように、主走査方向(矢印A方向)における孔電極組の位置が、「β」ずつずれている。よって、列A(1列目)〜列D(4列目)の4列では、主走査方向において、150[dpi]の解像度に相当するドットピッチが実現されている。また、列E(5列目)の「孔−電極組」は、図示のように、主走査方向において、列A(1列目)の孔電極組と、列B(2列目)の孔電極組との中間に位置している。同様にして、列F(6列目)の孔電極組は列B(2列目)の孔電極組と、列C(3列目)の孔電極組との中間、列G(7列目)の孔電極組は列C(3列目)の孔電極組と、列D(4列目)の孔電極組との中間、列H(8列目)の孔電極組は列D(4列目)の孔−電極組と、列E(5列目)の孔電極組との中間に、それぞれ位置している。これにより、列A〜列Hの8列で、300[dpi]の解像度に相当するα=84.6[μm]のドットピッチを実現している。副走査方向(矢印B方向)における各電極列の配設ピッチであるγは、αの4倍であるγ(=338.7μm)に設定されている。各列1個ずつの計8個の孔電極組は、主走査方向において84.6×8=676.8[μm]のライン画像を形成する。A4サイズの短手方向の寸法は、210[mm]=210000[μm]であるので、短手方向の全域に延在するライン画像の形成を可能にするために、「210000/676.8×8=2482」個の孔電極組を形成している。
本プリンタは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてきた画像情報を取得する画像情報取得手段として、図示しないシリアルポートやUSBポートなどを有している。先に示した図9において、Y用の記録制御部28Yは、Y用のトナー保持スリーブ30Yの第1電極33aYと第2電極33bYとのうち、少なくとも一方に対して周期的に変化する電圧を印加することで、トナー保持スリーブ30Yの表面上のトナー粒子を両電極間でホッピングさせる第1電圧印加手段として機能している。また、Y用の搬送制御部91Yは、第2電圧印加手段として機能している。第2電圧印加手段たる搬送制御部91Yは、画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づいて、回路基板10Yにおける複数の孔近傍電極12Yのうち、画像を構成するためのドットに対応する位置にある貫通孔である画像孔と組合せをなしている孔近傍電極12Yに対して記録オン電圧Vc−onを印加することで、トナー保持スリーブ30Yの表面上でホッピングしているトナー粒子を画像孔に進入させる。また、ドットに対応する位置にない貫通孔である非画像孔と組合せをなしている孔近傍電極12Yに対して記録オフ電圧Vc−offを印加することで、トナー保持スリーブ30Yの表面上でホッピングしているトナー粒子の非画像孔への進入を阻止する。同図では、便宜上、Y用の装置しか示していないが、本プリンタは、M,C,Kについても、同様の装置を具備している。Y,M,C,K用の記録制御部や搬送制御部は、それぞれメイン制御部に接続されている。メイン制御部は、自らが発する制御信号により、各色の記録制御部や搬送制御部を制御することが可能である。
メイン制御部は、画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づく画像を記録シートたる中間記録ベルト(図5の101)に形成していないときに、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、回路基板に対してトナー除去促進処理を実施するように構成されている。このトナー除去促進処理では、各色のトナー保持スリーブの第1電極(例えば33aY)に対して、先に図17(a)に示したような繰り返しパルス電圧を印加する。また、第2電極(33bY)に対して、先に図17(b)に示したような一定電圧(前記繰り返しパルス電圧の中心値)を印加する。また、各色の回路基板の孔近傍電極(例えば12Y)に対して、記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとを交互に印加する。このときの記録オン電圧Vc−onのデューティ比は50[%]である。このようなトナー除去促進処理をY,M,C,Kの各色についてそれぞれ実施することで、各色の回路基板についてそれぞれ、孔周囲箇所へのトナー固着を抑えて、トナー固着に起因する画像濃度不足の発生を抑えることができる。
なお、トナー除去促進処理において、孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとを交互に切り換えて印加する例について説明したが、記録オン電圧Vc−onとは異なる値の進入電圧と、記録オフ電圧Vc−offとは異なる値の阻止電圧とを交互に切り換えて印加してもよい。ここで言う進入電圧とは、トナー保持スリーブ表面上でホッピングしているトナーを貫通孔に進入させ得る値の電圧である。また、阻止電圧とは、トナー保持スリーブ表面上でホッピングしているトナーの貫通孔への進入を阻止し得る値の電圧である。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1実施例]
第1実施例に係るメイン制御部は、プリントジョブ終了時に、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれトナー除去促進処理を実施するようになっている。プリントジョブは、USBポートなどの画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づいて画像を形成する動作である。また、プリントジョブ終了時は、画像情報に基づく画像の全てを中間記録ベルト(101)に形成した後、中間記録ベルトの駆動を停止させるまでの期間である。このプリントジョブ終了時には、中間記録ベルトの表面の一部領域に残っているトナー像を記録シートに2次転写したり、2次転写後の一定期間、ベルトクリーニングのために中間記録ベルトを駆動したりする。その間に、各色の回路基板に対してそれぞれトナー除去促進処理を実施して、孔周囲箇所に付着したトナーを除去する。
図20は、第1実施例に係るプリンタにおける各処理のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。同図においては、画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づいて、2枚の記録シートに対して連続的に画像を形成する連続プリントモードのプリントジョブが実行されたときのタイミングチャートを示している。同図に示されているドット記録処理は、中間記録ベルトのシート対応領域に対してドットを記録して画像を形成する処理である。図示の例では、2枚目のドット記録処理を終了した時点で、画像情報に基づく画像の全てを中間記録ベルトに形成したことになる。その後、中間記録ベルトの駆動を停止するまでの期間が、プリントジョブ終了時である。このプリントジョブ終了時において、図示のように、トナー除去促進処理を行って(各色についてそれぞれ)、回路基板の孔周囲箇所に対する付着トナーを除去する。
かかる構成においては、プリントジョブ終了時の時間を利用してトナー除去促進処理を実施することで、装置のダウンタイムを発生させることなく、各色の回路基板における孔周囲箇所に付着したトナーを除去することができる。更には、各色の回路基板における孔周囲箇所の付着トナーを良好に除去した状態で、プリントジョブを開始することができる。
[第2実施例]
第1実施例に係るプリンタにおいては、各色の回路基板の孔周囲箇所における付着トナーを良好に除去した状態でプリントジョブを開始することができる。しかし、プリントジョブとして、連続プリントモードのジョブが行われる場合に、連続プリント枚数が比較的多いと、プリント枚数の増加に伴って孔周囲箇所における付着トナーを徐々に増加させていく。そして、連続プリント中に、画像濃度不足を発生させてしまうおそれがある。
そこで、第2実施例に係るプリンタのメイン制御部は、USBポート等の画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づく連続プリントモード(連続画像形成モード)の実行中に、各色の画像形成部(90Y,M,C,K)において、トナーを次のようにしてホッピングさせるようになっている。即ち、トナー保持スリーブの第1電極及び第2電極のうち、一方に対し、図17(a)に示した繰り返しパルス電圧を印加する。また、他方に対し、図17(b)に示した一定電圧を印加する。このような電圧条件によってトナーをホッピングさせると、上述したように、図3に示した従来の電圧条件を採用する場合に比べて、トナーのホッピング高さ(繰り返しパルス電圧のピークツウピーク値Vpp)を大きくすることが可能になる。そして、ホッピングさせたトナーを、回路基板の孔周囲箇所に対する付着トナーに衝突させて、付着トナーの除去を促すことで、付着トナーの増加を抑えることができる。
また、第2実施例に係るプリンタのメイン制御部は、各色の画像形成部(90Y,M,C,K)において、次のようなトナー除去促進処理を行うようになっている。即ち、複数の孔近傍電極(例えば12Y)のうち、無端移動体たる中間記録ベルト(101)の表面のシート間対応領域に対向しているものに対し、進入電圧たる記録オン電圧Vc−on、及び阻止電圧たる記録オフ電圧Vc−offを交互に切り換えて印加する。これにより、回路基板の全ての貫通孔(例えば14Y)のうち、中間記録ベルトのシート間対応領域に対向している貫通孔の周囲箇所に対してのみ、トナー除去促進処理を施す。中間記録ベルトのシート間対応領域は、中間記録ベルトの周方向における全域のうち、互いに隣り合う2つのシート対応領域の間の領域である。また、シート対応領域は、転写ニップで記録シートに密着せしめられる領域である。このシート対応領域には、回路基板との対向位置において、前記記録シートに転写すべきトナー像が記録される。このときは、画像情報に基づいて各孔近傍電極に対する記録オン電圧Vc−onのオンオフを制御する必要があるので、記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとを強制的に交互に切り換えて印加するトナー除去促進処理を行うことができない。しかし、中間記録ベルトのシート間対応領域には、画像情報に基づくトナー像を形成しないので、複数の貫通孔のうち、シート間対応領域に対向している貫通孔については、その孔周囲箇所に対するトナー除去促進処理を行うことが可能である。そこで、中間記録ベルトのシート間対応領域に対向している貫通孔の周囲箇所に対してのみ、トナー除去促進処理を施すのである。かかる構成では、連続プリントモードの実行中に、中間記録ベルトのシート間対応領域を回路基板との対向位置に進入させる毎に、回路基板における全ての孔周囲箇所に対してトナー除去促進処理を実行することで、孔周囲箇所に対する付着トナーの増加を回避することができる。
図21は、第2実施例に係るプリンタにおける各処理のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。同図においては、画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づいて、4枚以上の記録シートに対して連続的に画像を形成する連続プリントモードのプリントジョブが実行されたときのタイミングチャートを示している。図示のように、先行する記録シート(例えば1枚目)に対応するドット記録処理を終えた後、後続の記録シート(例えば2枚目)に対応するドット記録処理を開始するまでの間に、トナー除去処理が行われている。これは、回路基板との対向位置に対して中間記録ベルトのシート間対応領域を進入させているときに、トナー除去促進処理を実施していることを表している。
同図において、転写バイアスは、転写ローラ(図5の115)に対して印加されるトナーの帯電極性とは逆極性のバイアスである。かかる印加により、中間記録ベルト(図5の101)と転写ローラ(図5の115)との当接による転写ニップに、トナーをベルト側から転写ローラ側に静電移動させる転写電界を形成して、転写ニップ内に挟み込んだ記録シートに対してベルト上のトナー像を転写することができる。転写ニップに対しては、中間記録ベルトの表面におけるシート対応領域とシート間対応領域とが交互に進入する。それらのうち、シート対応領域は、転写ニップに挟み込まれた記録シートが密着せしめられるため、転写ローラに直接接触することがない。自らが担持しているトナー像を、自らに密着せしめられている記録シートに転移させる。一方、中間記録ベルトのシート間対応領域は、転写ニップ内で記録シートが密着せしめられないため、転写ローラに直接接触する。このとき、転写ローラに対して転写バイアスが印加されて転写ニップ内に転写電界が形成されていると、中間記録ベルトのシート間対応領域に付着しているトナー(トナー除去促進処理によって付着したもの)が転写ローラ表面に転移してしまう。すると、そのトナーをベルトクリーニング装置(110)によって除去することができなくなってしまう。更には、転写ローラへのトナー付着により、記録シートの裏面をトナーで汚してしまう裏汚れを引き起こしてしまう。そこで、第2実施例に係るプリンタにおいては、図示のように、転写ニップに対して中間記録ベルトのシート対応領域を進入させているとき(転写ニップに記録シートを送り込んでいるとき)だけ、転写ローラに対して転写バイアスを印加する。そして、転写ニップに対して中間記録ベルトのシート間対応領域を進入させているときには、転写ローラに対して転写阻止バイアスを印加する。この転写阻止バイアスは、トナーの帯電極性と同じ極性のバイアスである。かかる転写阻止バイアスが転写ローラに印加されると、トナーを転写ローラ側からベルト側に移動させる転写阻止電界が形成されるため、転写ローラ表面へのトナーの転移が阻止される。これにより、トナー除去促進処理の実行によって中間記録ベルトのシート間対応領域に付着させてしまったトナーの転写ローラへの転移を回避して、そのトナーをベルトクリーニング装置によって適切に除去することができる。
[第3実施例]
第3実施例に係るプリンタのメイン制御部は、所定の時間が経過する毎や、所定枚数のプリントを行う毎などの所定の定期的なタイミングで、ドット数決定処理を実行するようになっている。そのタイミングが到来したときに、プリントジョブ中である場合には、プリントジョブを一時中断してドット数決定処理を実施する。
ドット数決定処理は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、所望の中間調濃度が得られるように、画像の中間調部におけるドット面積比の設定を調整する処理である。以下、Yを例にして、ドット数決定処理を説明する。ドット数決定処理では、まず、互いに画像濃度の異なる複数の中間調テスト画像をYトナーによって中間記録ベルトの表面に形成する。それら中間調テスト画像は、中間記録ベルトの幅方向のほぼ全域に渡って延在する横長の画像であり、その長さは、先に示した図19にて、図中矢印A方向における、列Aの左端の貫通孔14Yから、列Hの右端(図示せず)の貫通孔までの距離に相当する。かかる中間調テスト画像の形成には、回路基板に形成されている全ての孔電極組が関与する。複数の中間調テスト画像は、単位面積あたりのドット数が互いに異なっており、それによって画像濃度が互いに異なっている。いわゆる面積階調と呼ばれる中間調表現法により、中間調が実現されているのである。
先に示した図5において、駆動ローラ102の下方には、反射型フォトセンサからなる画像濃度センサ150が配設されている。この画像濃度センサ150は、発光素子及び受光素子を具備している。そして、発光素子から発した光で、中間記録ベルト101の周方向における全域のうち、駆動ローラ102に対する掛け回し箇所を照射する。この照射によってベルト表面で反射した反射光は、画像濃度センサ150の受光素子によって受光される。中間記録ベルト101の表面上に形成された中間調テスト画像の画像濃度が高くなるほど、受光素子による受光量が少なくなる。つまり、画像濃度センサ150は、受光量に基づいて画像濃度を検知することができる。
メイン制御部は、中間記録ベルト101の表面に形成した複数の中間調テスト画像の画像濃度を、画像濃度センサ150からの出力に基づいてそれぞれ把握する。そして、複数の中間調テスト画像の中から、所望の画像濃度が得られているものを特定した後、その中間調テスト画像の単位面積あたりのドット数に基づいて、各階調における単位面積あたりのドット数を決定することで、各階調でそれぞれ所望の画像濃度が得られるようにする。
このようなドット数決定処理を実行する際に、メイン制御部は、複数の中間調テスト画像をトナー除去促進処理によって形成するようになっている。具体的には、トナー除去促進処理では、孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onと、記録オフ電圧Vc−offとを交互に切り換えて印加する。そして、記録オン電圧Vc−onの印加により、中間記録ベルト101にドットを記録してしまうが、この現象を逆に利用して、中間調テストトナー像を形成するのである。その際、全ての孔近傍電極に対する記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの交互切り替えを同期させる。記録オン電圧Vc−onのディーティ比を変化させることで、単位面積あたりのドット数を異ならせる。
かかる構成では、ドット数決定処理で複数の中間調テストトナー像を形成する際に、同時に全ての孔周囲箇所に対してトナー除去促進処理を施して、孔周囲箇所からトナーを除去することができる。
[第4実施例]
トナー除去促進処理では、上述したように、記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの交互切り換えによって中間記録ベルト(101)にトナーを付着させてしまう。Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、中間記録ベルトに対してトナーを不規則に付着させることから、中間記録ベルトの表面は、各色のトナーが入り交じって付着した状態になる。それらのトナーは、ベルトクリーニング装置(110)によって除去されるが、各色が入り交じった状態であるので、再生はできない。つまり、トナー除去促進処理の実行によって中間記録ベルトに付着させてしまったトナーは、画像形成に全く寄与しないまま無駄に消費されることになる。
一方、回路基板の孔周囲箇所に対するトナー付着は、ベタ画像を長時間に渡って出力し続けたとき、即ち、その孔周囲箇所に存在している孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onの印加を長時間に渡って継続したときに発生する。換言すれば、ベタ画像を長時間に渡って出力し続けないとき、即ち、その孔周囲箇所に存在している孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onの印加を長時間に渡って継続しないときには、孔周囲箇所に対するトナー付着は発生しない。このようなときに、トナー除去促進処理を実行するのは無意味である。
そこで、第4実施例に係るプリンタのメイン制御部は、出力1枚あたりの平均出力ドット数が所定の閾値を超えた場合にのみ、トナー除去促進処理を実施するようになっている。出力1枚あたりの平均出力ドット数については、所定枚数の記録シートに対して画像形成を行う毎に、新たに算出する。例えば、10枚プリント毎に、1枚目から10枚目までの総出力ドット数を10(10枚)で除算して、出力1枚あたりの平均出力ドット数を算出するのである。かかる平均出力ドット数が所定の閾値を超えた場合には、その10枚の出力を行っている間に、各孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onの印加を長時間に渡って継続した可能性が高い。そこで、このような場合にのみ、トナー除去促進処理を実施する。このような処理を、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、個別に実施する。つまり、Y,M,C,Kのうち、Yだけ、平均出力ドット数が所定の閾値を超えた場合いは、Yの回路基板に対してだけ、トナー除去促進処理を実施する。トナー除去促進処理の実施を決定したときに、出力すべきプリントがまだ残っている場合には、プリントジョブを一時中断してトナー除去促進処理を行う。
かかる構成では、各孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onの印加を長時間に渡って継続した可能性が高い場合にのみ、トナー除去促進処理を実施することで、トナー付着が起こっていないにもかかわらずトナー除去促進処理を実施してしまうという、無意味なトナー除去促進処理の実施の発生を抑えることができる。
[第5実施例]
第4実施例に係るプリンタにおいては、無意味なトナー除去促進処理の実施の発生を抑えることが可能であるが、複数の貫通孔の1つずつに着目すると、無意味なトナー除去促進処理の実施の発生を回避することはできない。具体的には、トナー付着は、個々の貫通孔の周囲でそれぞれ個別に発生するものであり、付着量は、個々の貫通孔にそれぞれ個別に対応する孔近傍電極に対する記録オン電圧Vc−onの印加持続時間の違いにより、個々の孔周囲箇所でそれぞれ異なってくる。たとえ、殆どの孔周囲箇所において多量のトナー付着が発生していても、いくつかの孔周囲箇所ではトナー付着が全く発生していないこともある。このような場合に、第4実施例に係るプリンタでは、全ての孔周囲箇所に対してトナー除去促進処理を行ってしまうので、前述したいくつかの孔周囲箇所に対しては、トナー除去促進処理を無意味に実施してしまうことになる。
そこで、第5実施例に係るプリンタのメイン制御部は、個々の貫通孔についてそれぞれ、累積出力ドット数、あるいは、累積出力ドット数の出力可能ドット数に対する割合、を個別に算出する。累積出力ドットについては、所定枚数の記録シートに対して画像形成を行う毎に、新たに算出する。例えば、10枚プリント毎に、個々の貫通孔についてそれぞれ、1枚目から10枚目までにおける累積出力ドット数を個別に算出するのである。なお、出力可能ドット数は、ドットを出力し続けたと仮定した場合における総出力ドット数である。例えば、1枚目から10枚目までにおける累積出力ドット数を算出する場合、それに対応する出力可能ドット数は、1枚目から10枚目でドットを出力し続けたと仮定した場合における総出力ドット数である。複数の貫通孔のうち、累積出力ドット数、あるいは、累積出力ドット数の出力可能ドット数に対する割合が、所定の閾値を超えていない貫通孔は、その周囲に対するトナー付着が殆ど発生していない。そのような貫通孔は、それに対応する孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onの印加が長時間に渡って継続して行われていないからである。これに対し、累積出力ドット数、あるいは、累積出力ドット数の出力可能ドット数に対する割合が、所定の閾値を超えた貫通孔は、その周囲に対するトナー付着が発生しているとみなして差し支えない。そのような貫通孔は、それに対応する孔近傍電極に対して、記録オン電圧Vc−onの印加が長時間に渡って継続して行われたからである。そこで、メイン制御部は、累積出力ドット数、あるいは、累積出力ドット数の出力可能ドット数に対する割合が、所定の閾値を超えた貫通孔についてのみ、それに対応する孔近傍電極に対して記録オン電圧Vc−onと記録オフ電圧Vc−offとの交互印加によるトナー除去促進処理を行う。このようなトナー除去促進処理の実施を、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に実施する。かかる構成においては、トナー除去促進処理の無意味な実施の発生を回避することができる。
これまで、中間記録ベルト101の表面に形成した画像を、記録シートに転写する構成のプリンタを例にして本発明を説明してきたが、無端状のシート搬送ベルトの表面に保持した記録シートに対して、各色の画像形成部(90Y,M,C,K)によって直接的に画像を記録する構成にも、本発明を適用することが可能である。
以上、第1実施例に係るプリンタにおいては、画像情報取得手段によって取得された画像情報に基づく画像形成を終えた後であるプリントジョブ終了時に、トナー除去促進処理を実施するように、制御手段たるメイン制御部を構成している。かかる構成では、既に説明したように、装置のダウンタイムを発生させることなく、各色の回路基板における孔周囲箇所に付着したトナーを除去することができる。更には、各色の回路基板における孔周囲箇所の付着トナーを良好に除去した状態で、プリントジョブを開始することもできる。
また、第2実施例に係るプリンタにおいては、連続画像形成モードたる連続プリントモードの実行中に、トナー保持スリーブの第1電極及び第2電極のうち、一方に対し、周期的に変化する電圧として、図17(a)に示した繰り返しパルス電圧を印加しつつ、他方に対し、図17(b)に示した一定電圧を印加して、トナー保持スリーブの表面上のトナーをホッピングさせる処理を実行するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、既に説明したように、第1電極及び第2電極に対する電圧の印加条件として、図3に示した従来の電圧条件を採用する場合に比べて、付着トナーの増加を抑えることができる。
また、第2実施例に係るプリンタにおいては、自らの無端移動する表面を回路基板(例えば、10Y)と、対向電極板(例えば104Y)との間に通す無端移動体としての中間記録ベルト101を設けている。そして、次のような処理を実施するように、メイン制御部を構成している。即ち、連続プリントモードの実行中に、回路基板における複数の孔近傍電極のうち、中間記録ベルト101の表面のシート間対応領域に対向しているものに対して、進入電圧たる記録オン電圧Vc−on、及び阻止電圧たる記録オフ電圧Vc−offを交互に切り換えて印加する。これにより、回路基板の全ての貫通孔のうち、中間記録ベルトのシート間対応領域に対向している貫通孔の周囲箇所に対してのみ、トナー除去促進処理を施す。かかる構成では、既に説明したように、中間記録ベルトのシート間対応領域を回路基板との対向位置に進入させる毎に、回路基板における全ての孔周囲箇所に対してトナー除去促進処理を実行することで、孔周囲箇所に対する付着トナーの増加を回避することができる。
また、第3実施例に係るプリンタにおいては、対向電極(例えば104Y)の表面上にある部材である中間記録ベルト101、に形成された画像の画像濃度を検知する画像濃度検知手段たる画像濃度センサ150を設けている。そして、次のような処理を実施するように、メイン制御部を構成している。即ち、所定のタイミングで、単位面積あたりのドット数の違いによって互いに画像濃度を異ならせた複数の中間調テスト画像を形成し、それぞれの中間調テスト画像についての画像濃度の検知結果に基づいて、中間調画像部におけるドット数を決定するトッド数決定処理を実施する。この際、複数の中間調テスト画像をトナー除去促進処理によって形成する。かかる構成では、既に説明したように、ドット数決定処理で複数の中間調テストトナー像を形成する際に、同時に全ての孔周囲箇所に対してトナー除去促進処理を施して、孔周囲箇所からトナーを除去することができる。
また、第4実施例に係るプリンタにおいては、所定枚数の記録シートに対して画像形成を行う毎に、その所定枚数における出力1枚あたりの平均出力ドット数を算出し、算出結果が所定の閾値を超えた場合にのみ、トナー除去促進処理を実施するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、既に説明したように、トナー付着が起こっていないにもかかわらずトナー除去促進処理を実施してしまうという、無意味なトナー除去促進処理の実施の発生を抑えることができる。
また、第5実施例に係るプリンタにおいては、次のような処理を実施するように、メイン制御部を構成している。即ち、所定枚数の記録シートに対して画像形成を行う毎に、回路基板における複数の貫通孔についてそれぞれ、その所定枚数における累積出力ドット数、あるいは累積出力ドット数の出力可能ドット数に対する割合を個別に算出する。そして、算出結果が所定の閾値を超えた貫通孔に対してのみ、その孔周囲箇所に対するトナー除去促進処理を実施する。かかる構成では、既に説明したように、トナー除去促進処理の無意味な実施の発生を回避することができる。