JP5695398B2 - 燃料電池スタック締結方法 - Google Patents

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Description

本発明は燃料電池スタック締結方法に係り、より詳しくはスタックの運転中にガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、締結圧力の低下及び微細隙間の発生、接触抵抗の増加などの問題がなく、安定で最適化したスタック締結状態を維持することができる燃料電池スタック締結方法に関する。
燃料電池は、燃料が持っている化学エネルギーを燃焼によって熱に変えるのではなく、電気化学的に反応させて電気エネルギーに変換させるエネルギー変換装置であって、産業用、家庭用及び車両駆動用電力を供給するだけでなく、小型の電気、電子製品、携帯機器の電力を供給することにも利用可能である。
現在、車両用燃料電池としては、高い電力密度を持つ高分子電解質膜燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)が最も多く研究されている。
高分子電解質膜燃料電池は、作動温度が50〜100℃程度と比較的低温であり、早い始動時間と電力変換反応時間、高いエネルギー密度を持つ利点がある。
燃料電池スタックの構成は次の通りである。即ち、最も内側に主要構成部品である膜電極一体構造(MEA:Membrane−Electrode Assembly)が位置し、この膜電極一体構造は、水素イオンを移動させることができる固体高分子電解質膜と、電解質膜の両面に水素と酸素が反応するように触媒が塗布された電極層であるカソード(Cathode)及びアノード(Anode)とからなっている。
また、膜電極一体構造の外側部分、つまりカソード及びアノードが位置する外側部分にガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)、ガスケットなどが積層され、ガス拡散層の外側には反応ガス(燃料である水素と酸化剤である酸素または空気)を供給し冷却水が通過する流路(Flow Field)が形成された分離板(Bipolar Plate)が位置する。
このような構成を単位セル(Cell)として複数の単位セルを積層した後、最外側には単位セルを支持するためのエンドプレート(End Plate)を結合し、エンドプレートの間に単位セルを配列して締結することで、燃料電池スタックを構成する。
次に、高分子電解質膜燃料電池の作動原理を説明する。燃料である水素と酸化剤である酸素(空気)が分離板の流路を通じて膜電極一体構造のアノードとカソードにそれぞれ供給されれば、酸化極であるアノードに供給された水素は電極層の触媒によって水素イオン(proton、H)と電子(electron、e)に分解される。
このうち、水素イオンのみが選択的に陽イオン交換膜である電解質膜を通過してカソードに伝達され、同時に電子は導体であるガス拡散層、分離板、外部導線を介してカソードに伝達される。このときに起こる外部導線を通じての電子の流れによって電流が生成される。
還元極であるカソードでは、電解質膜を通じて供給された水素イオンと分離板を通じて伝達された電子がカソードに供給された酸素と合って熱と水を生成する反応を引き起こす。
このような各単位セルは運転時に低電圧を維持するので、電圧を高めるために、数十〜数百個のセルを直列で積層してスタック状に製作した後、発電装置として使う。その最も一般的な形態を図1に示す。
燃料電池スタックを組み立てるか締結する従来の方法としては、ボルト締結方式、バンド締結方式、ワイヤ締結方式が主に用いられている。ボルト締結方式は、セル110とエンドプレート120、121を積層した後、加圧装備で加圧し、この状態で、図1に示すように、スタックの長さ以上の長ボルト(締結棒)130を両側エンドプレート120、121に貫通させた後、両端にナット140を締結することで、エンドプレート120、121が遊動しないように締める方式である。
また、バンド締結方式は、セル積層及びエンドプレート結合の後、両端のエンドプレートをプレスで押した状態で、バンドをかけ、バンドをエンドプレートにボルトで締結して固定する方式である。
締結状態で、スタックの両端部に位置するエンドプレートは分離板を支持しながら圧縮する部分で、分離板の全面積に対して一定面圧が維持された状態でボルト及びナット、バンド、ワイヤのような器具でエンドプレートを締めることでスタック締結を完了する。
スタック締結の後、両側エンドプレートは面圧を維持するために互いに引き寄せる状態となり、バンドやワイヤの長さは一定に維持される。この際、セルとセルの間の面圧は燃料電池スタックの全出力に大きな影響を及ぼすことになり、スタック内の面圧は接触抵抗の上昇による抵抗損(Ohmic Loss)、ガス拡散層内の物質伝達抵抗に直接関連するので、締結力を適切に維持することがよいスタック性能を得るための必須な条件である。
面圧が非常に低い場合、分離板、ガス拡散層、膜電極一体構造の間の接触抵抗が増加して電流−電圧降下が起こり、面圧が非常に高い場合には、ガス拡散層が過度に圧縮されてガス拡散が難しくなるので、スタックの出力が減少する。
したがって、燃料電池車両においてスタック性能を高めてスタックの軽量化及び体積最小化のためには、スタック締結方法を効率的にすることが重要であり、スタック構成品の主要物性を正確に理解することが必須である。
このために、従来、多くのスタック締結方法及び構成部品評価技法が提案された。その例としては、主に燃料電池スタック締結装置(特許文献1)、燃料電池スタック締結具(特許文献2)、燃料電池スタック締結構造(特許文献3)などのスタック締結方法に関するものと、燃料電池スタック自動組立て装置(特許文献4)、スタック気密検査装置及び方法(特許文献5、特許文献6)、燃料電池活性化方法(特許文献7)などのスタック組立て/活性化に関するものと、電解ピンホール(Pin Hole)位置確認装置(特許文献8)、MEA/ガス拡散層一体化設備(特許文献9)、燃料電池分離板気密検査装置(特許文献10)、ガス拡散層圧力別厚さ/抵抗/差圧/透過度測定装置(特許文献11)、ガス拡散層分離感知装置(特許文献12)などの各構成部品特性評価に関するものがある。
近年、自動車用高分子電解質膜燃料電池(PEMFC)の研究開発及び量産化が進むにつれて、燃料電池スタックの部品の中で安定的性能の発現に大きな役目をするガス拡散層の特性評価方法及び微細構造/性能発現メカニズムに対する研究開発が活発に進んでいる。
ガス拡散層は一般的にガス拡散支持層(Gas Diffusion Backing)とその上に塗布される微孔性薄層(Micro Porous Layer)で構成される。ガス拡散支持層は炭素材質の炭素紙(Carbon Paper)、炭素布地(Carbon Cloth)、炭素フェルト(Carbon Felt)で製作されるか(非特許文献1)、金属材質の多孔性薄板、多孔性金属メッシュなどを混用して使用される。
微孔性薄層の場合、炭素粉末、炭素ナノ棒、炭素ナノ線、炭素ナノチューブなどの炭素物質または伝導性金属、無機物、セラミック粉末などを単独であるいは二種以上で混合して製作し、水をなだらかに除去するために、疎水性物質(Hydrophobic Agent)であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP:Fluorinated Ethylene Propylene)などを含むか(非特許文献2)、イオン伝導性向上に役立てるために、ナフィオンイオノマーのような親水性物質を一緒に混合して使い、所定の微細気孔構造を持つようにする。
単位セル内のガス拡散層は反応ガスと生成物である水の移動通路でありながらも熱伝導、電気伝導がなされる媒体であって、反応生成水を排出させてセル内の水氾濫現象を最小化するなどの多様な機能を有する。
実際運転の際、ガス拡散層は締結圧力を受けて厚さ及び微細構造が変わるため、締結状態で起こる物性変化が分かる必要がある。図2の(a)から分かるように、ガス拡散層の場合、締結圧力の変化によって厚さ変形が起こり、高い締結圧力によって厚さ減少が進んだ場合、締結圧力がまた減少しても厚さが元の状態に戻らない非弾性変形をする。
このような現象はスタック締結に使用されたガス拡散層の除去跡の断面形態からも確認することができる。図3から分かるように、締結圧力が加わる分離板のランド部と接触したガス拡散層領域は、スタックから分離して圧力が加わらない状態でも厚さが収縮して外形が変形した状態を維持することが分かる。図2の(b)は締結圧力の変化によるガス拡散層の電気伝導度の変化を示し、締結圧力の減少の際、ガス拡散層内の電気抵抗値が増加することを示す。
従来の燃料電池スタックの締結構造において、長ボルトやバンドを使った場合、スタック締結後の長さが固定されるので、スタック構成要素の一つであるガス拡散層の厚さ減少がスタック運転中に発生すれば、単位セル内の面圧分布が変わるためスタックの全面積に均一な圧力を維持することができつな、燃料電池スタックの出力が減少する問題点を内包している。
したがって、図4の(c)に示すように、スタック運転中に振動またはガス流量(ガス供給流量及び透過流量)の増減による締結圧力の変化が発生してガス拡散層の厚さが変わる場合、図4の(b)に示すスタック締結直後の状態に比べ、セルの構成要素の間に微細隙間が生じて接触抵抗が増加することになるので、これを制御することができる最適のスタック締結条件を捜し出すことが非常に重要である。
大韓民国登録特許第0514375号明細書 大韓民国公開特許第2010−20715号明細書 大韓民国登録特許第501206号明細書 大韓民国公開特許第2009−106217号明細書 大韓民国公開特許第2009−0113429号明細書 大韓民国公開特許第2009−108478号明細書 大韓民国公開特許第2007−60760号明細書 大韓民国公開特許第2009−107610号明細書 大韓民国公開特許第2009−111898号明細書 大韓民国公開特許第2009−113432号明細書 大韓民国登録特許第902316号明細書 大韓民国公開特許第2009−108767号明細書 特開2008−004505号公報 Escribano, J.Blachot, J.Etheve, A.Morin, R.Mosdale, J.Power Sources, 156,8(2006);M.F.Mathias, J.Roth, J.Fleming, and W.Lehnert, Hand book of Fuel Cells−Fundamentals, Technology and Applications, Vol.3, Ch.42, John Wiley & Sons(2003) C.Lim and C.Y.Wang, Electrochim.Acta,49, 4149(2004)
本発明は前記のような問題点を解決するためになされたものであって、スタック運転中にガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、締結圧力の低下及び微細隙間の発生、接触抵抗の増加などの問題がない安定で最適化したスタック締結状態が維持できる燃料電池スタック締結方法を提供することにその目的がある。
前記のような目的を達成するために、本発明は、単位セルを積層してエンドプレートを結合した後、加圧装備で締結圧力を加えた状態で、締結圧力が維持されるように締結器具をセット、固定するスタック仮締結段階と、仮締結されたスタックに対し、アノードとカソードに供給されるガス流量を繰り返し変化させるガス流量変化サイクル繰り返す締結圧力変動サイクルを進めるスタック前処理段階と、スタック前処理段階の後、ガス拡散層の厚さ変化による締結圧力の変化量を補正してスタックの本締結を行うスタック本締結段階と、を含む燃料電池スタック締結方法において、前記ガス流量変化サイクルは、仮締結されたスタックのアノードとカソードに供給されるガスの流量を増減させて流量変化を繰り返し、前記ガス流量変化サイクルにおいて、ガス流量増加時の流量またはガス供給時の流量を前もって設定されたスタック運転時の反応ガス最大流量に設定して実施し、ガス流量減少時の流量は前もって設定されたスタック運転時の反応ガス最小流量に設定して実施することを特徴とする。
本発明の燃料電池スタック締結方法によれば、スタック締結の過程でスタックの仮締結及び前処理を行った後、締結圧力の変化を補正する過程を進めることで、スタック運転中にガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、締結圧力の低下及び微細隙間の発生、接触抵抗の増加などの問題がなく安定で最適化したスタック締結状態を維持することができる。
従来技術による燃料電池スタックの締結構造を示す斜視図である。 締結圧力の変化によるガス拡散層の基本物性を示すもので、上側の図はガス拡散層厚さの変化を、下側の図はガス拡散層電気抵抗の変化を示すグラフである。 スタック締結の際に挿入されたガス拡散層の除去後の断面写真である。 スタックの内部ガス拡散層の形態変形を示すもので、(a)は燃料電池スタック締結前の状態を、(b)は燃料電池スタック締結直後の状態を、(c)はスタック内の締結圧力変化の反復後の状態を示す断面図である。 本発明の第1実施例及び第2実施例によるスタック締結方法を示すフローチャートである。 本発明の第3実施例によるスタック締結方法を示すフローチャートである。 ガス拡散層を透過するガス量変化によるスタック締結圧力の変化を測定する方法を示す断面図である。 締結後、変位固定状態(即ち、GDLの厚みを固定するまま)でガス透過量の変化によるスタック締結圧力の変化の測定結果を示すグラフである。 ガス拡散層締結圧力変動サイクルとガス拡散層厚さの相関関係を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
前述したように、燃料電池スタックの組立ての際、数十〜数百単位のセルとエンドプレートを積層した後、これらを加圧装備で加圧し、ついでこれらを長ボルト(締結棒)やバンド、ワイヤなどを用いて締結する。この際、それぞれのセルの膜電極一体構造の全面積にわたって均一な圧力が加わるようにする。
分離板及びガスケット、膜電極一体構造の場合、高い弾性力を有するので、締結圧力の変化によって厚さが可逆的に変化するが、ガス拡散層の場合は、反応ガスの円滑な拡散及び水除去のために、主に多孔質の炭素支持体からなっているので、締結圧力の変化によって非可逆的な厚さ変化が発生する特徴がある。
したがって、従来の燃料電池スタック締結方式を用いてスタック締結を実施する場合、締結完了後、長ボルト、バンド、ワイヤなどによってスタックの大きさが固定された状態で、スタック運転中に振動またはその他の原因による締結圧力の変化が発生してガス拡散層の厚さがさらに減ることになれば、非可逆的厚さ変化の特性によって、圧縮の後にガス拡散層の厚さが元に戻らないため、図4の(c)のように、分離板との間に微細な隙間が発生し、セル構成要素間の接触抵抗が増加するとともに面圧分布が均一でなくなってスタック性能が減少する問題点が発生する。
このような問題点を解決するために、本発明は高分子電解質膜燃料電池用スタックを仮締結した状態で、ガス拡散層に対する厚さ変化を誘導する前処理過程を実施し、前処理過程で発生したガス拡散層の厚さ変化による締結圧力の変化量を補正して本締結を実施することに主な特徴があるスタック締結方法を提供する。
本発明によれば、スタック締結過程でスタックを仮締結及び前処理した後、締結圧力の変化を補正する過程を進めることで、スタック運転中にガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、締結圧力の低下及び微細隙間の発生、接触抵抗の増加などの問題なしに安定で最適化したスタック締結状態を維持することができる。
以下、本発明についてより詳しく説明する。図5は本発明の第1実施例及び第2実施例によるスタック締結方法を示すフローチャート、図6は本発明の第3実施例によるスタック締結方法を示すフローチャートである。
図5において、S13の段階を含むスタック締結方法(S11〜S13、S15、S16)が第1実施例であり、S13の段階の代わりにS14の段階を進めるスタック締結方法(S11、S12、S14〜S16)が第2実施例である。
図7はガス拡散層を透過するガス量変化によるスタック締結圧力の変化を測定する方法を示す断面図、図8は 締結の後、変位固定状態(即ち、GDLの厚みを固定するまま)で 気体量変化によるスタック締結圧力の変化の測定結果を示すグラフ、図9はガス拡散層締結圧力の変化サイクルとガス拡散層厚さの相関関係を示す図である。
まず、図8及び図9の実験結果から分かるように、スタック内の反応ガス供給流量増加/減少は単位セル別に締結圧力を微細に変化させる。このような締結圧力の変化はスタックの内部に存在するガス拡散層の厚さを変化させる。締結圧力の増加の際、ガス拡散層の厚さが減少する形態である。
また、締結圧力の変化によるガス拡散層の厚さ変化は初期に数サイクル(ガス流量変化サイクル)で現れた以後には厚さ変化なしに安定化することが分かる(図8及び図9参照)。
本発明はこのような点を用いるもので、スタック締結過程で締結圧力の変化及びそれによる厚さ変化を数サイクルにわたって誘導する前処理過程を実施した後、それ以上の厚さ変化がない状態でスタック締結圧力の変化量及び厚さ変化量を補正してスタックを締結することで、実際にスタックの運転中には振動やガス流量増減などによるガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、それによる締結圧力の低下及び微細隙間の発生、接触抵抗の増加を防止する。
本発明において、前処理過程はスタックの仮締結後、ガス流量変化サイクル(第1実施例−ガス流量増減またはガス供給/遮断)を進めるか締結圧力変動サイクル(第2実施例−スタック締結用加圧装備による締結圧力増減)を進めることで実施可能である。ここで、スタックの仮締結後の前記ガス流量変化サイクルはスタック締結後に進む通常のスタック活性化過程で実施可能である(第3実施例−スタック活性化過程のガス流量変化利用)。
以下、本発明の各実施例毎に詳細に説明する。
第1実施例は、図5に示すように、単位セルを積層した後、スタック両端部の位置にエンドプレートを結合し(S11)、スタック締結用加圧装備を用いてエンドプレートを介して所定の締結圧力を加えた後、締結圧力が維持されるように締結器具をセットして固定することで、スタックを仮締結する(S12)。
この際、カソード、アノード流路及び冷却水流路の気密が維持される締結圧力でスタックを仮締結し、締結器具をセットしてスタックのサイズを固定させる。 本発明の仮締結、前処理、本締結がスタック生産過程の一部となるので、スタック締結用加圧装備は加圧力を制御することができる既存のプレスなどの装備をそのまま利用することができ、締結器具としてもボルト締結方式、バンド締結方式、ワイヤ締結方式などの通常の公知締結器具がそのまま使用可能である。
また、仮締結時の締結圧力は、スタック内の流路の気密状態が維持されなければならないので、既存のスタック組立て過程の通常的な締結圧力をそのまま適用することができる。
前記のように、仮締結が完了すれば、ガス拡散層に対する前処理過程として、スタック内部にガスを供給するにあたり、ガス流量を増減させるかガス供給を断続(供給と遮断を繰り返す)する流量変化を所定サイクルで繰り返すガス流量変化サイクル過程を実施する(S13)。
この過程で、スタックのカソードとアノード流路内に同時にガスを供給する。この際、ガス供給中の反復的な流量変化によってガス拡散層の厚さが徐々に変わり、決まったサイクルを繰り返してからは、流量に変化を与えてもそれ以上の厚さ変形が発生しない安定化状態となる。
ただ、前記のようにガス流量変化を所定サイクルで繰り返す前処理過程を経てからは、ガス拡散層の厚さがどのくらい減少した状態となり、締結圧力は前処理過程前の仮締結直後に比べて低くなった状態となり、ガス拡散層と分離板の間には微細な隙間が存在することになる。
前記のように、ガス拡散層の厚さが安定化すれば、締結圧力が低下した状態の微細な隙間が除去できるように、スタック全体の締結圧力の変化量を補正して本締結を実施し(S15)、ついで通常のスタック活性化工程を進めることで(S16)スタック締結及び組立て過程を完了する。
すなわち、スタック締結圧力を変化量だけ再調整するにあたり、所定サイクルのうち流量を繰り返し変化(増減または供給、遮断)させてガスを供給する前処理後、スタックを再び加圧装備に装着し、仮締結時と同等な締結圧力状態となるように圧力を加えることで締結圧力の減少量を補正する。このように圧力を加えた状態でスタック全体の締結圧力及びスタックのサイズ(両側エンドプレート間のスタック長さ)が固定できるように締結器具を再セット及び固定して本締結を行う。
前記締結圧力の変化量補正及び本締結過程において、図1に示すボルト締結方式の例を挙げれば、加圧装備で仮締結時と同等な締結圧力を加えた状態で、スタックサイズがまったく固定できるように、ナットを微細に締める方式で実施することができる。
一方、バンドやワイヤを用いた締結方式の場合、加圧装備による仮締結時と同等な締結圧力を加えた状態で、スタックのサイズがまったく固定できるように、バンドやワイヤの張力を微細に調節してから固定させる方式で実施することができる。
締結圧力の変化量補正の際、高い圧力で加圧する場合、ガス拡散層の強制的な厚さ減少が加圧によってさらに発生するので、仮締結時の締結圧力をスタック運転時に締結圧力となる本締結時の締結圧力に設定し、前処理後の補正及び本締結の際、加圧装備による加圧状態(締結圧力状態)を仮締結時の加圧状態と同一になるようにすることが好ましい。
ガス流量変化サイクルの実施に使われるガスとしては空気あるいは非活性ガスがあり、非活性ガスとしては窒素が使用可能である。また、供給されるガスの相対湿度は20〜100%、温度は0〜95℃にして実施することができる。ここで、相対湿度を20%未満にする場合、膜電極一体構造(MEA)の過乾燥による破損及び変形が発生するため好ましくない。100%超過の場合には、流量変化サイクル実施中に湿度維持のために必要以上の多量のエネルギーが必要となる問題、及びスタック内の氾濫による水管理の困難さが発生するため好ましくない。
また、温度を0℃未満にする場合は、加湿によるスタック内の結氷のおそれがあって好ましくない。95℃超過の場合は、温度増加による膜電極一体構造の損傷可能性の増加、及び高温維持のための装備のエネルギー消耗が無駄に増加する問題などが発生することができて好ましくない。
ガス流量変化サイクル実施中に供給されるガスの流量は制限がないが、ガス流量の増減変化において流量増加時の流量、または供給、遮断変化において供給流量としては、締結しようとするスタックの正常運転時に要求される反応ガスの前もって設定された最大流量で実施することが好ましい。
また、ガス流量増減の変化において流量減少の際に流量はスタックの正常運転時に要求される反応ガスの前もって設定された最小流量で実施することが好ましい。
サイクルの回数には特に制限がないが、製造工程上の効率性を考慮して、ガス拡散層の厚さが安定化するまでサイクルの回数としては2回または3回を実施し、好ましくはガス拡散層の物性が互いに異なること(製造社などによって)を考慮して少なくとも10回以上実施する。また、増減または供給、遮断の各ステップを維持する時間は5秒〜60分に設定する。
前記サイクルの回数として2回または3回を実施する理由は、図9の実験結果においてガス圧力の増減を3回実施した場合にガス拡散層の厚さが安定化することを考慮したからである。
ただ、その回数を過多に繰り返せばスタック製作工程が長くなりガス所要量が多くなるので、生産性及び経済的な面で好ましくない。
また、商業用ガス拡散層の場合、製造社、材質の違いによって物性が異なることを考慮して、ガス拡散層の厚さ安定化まで少なくとも10回以上サイクルを実施することが好ましい。少なくとも10回以上を実施すればガス拡散層の厚さ安定化を充分に達成できるからであり、その回数をふやすほど確かな厚さ安定化が保障できる。
また、増減または供給、遮断の各ステップを維持する時間を5秒未満に短く実施する場合、圧力増減によるガス拡散層の厚さ変化が充分でない可能性があり、60分を超えて進める場合は前処理過程にかかる時間及び運転費用が増加する問題があるので好ましくない。
このように、本発明においては、スタックを仮締結した状態でガス拡散層に対する前処理過程を実施し、前処理過程で発生したガス拡散層の厚さの変動による締結圧力の変化量を補正して本締結を実施することで、スタック運転中にガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、締結圧力の低下及び微細隙間の発生を最小化することができ、分離板/ガス拡散層及び膜電極一体構造/ガス拡散層の間の界面の接触抵抗を最小にできる。また、スタック内の面圧分布を均一に維持することで、従来の締結方式に比べてスタックの出力が改善される効果がある。
一方、スタック内の流量変化サイクルを実施する理由は前処理過程で流量変化によるスタック構成要素間の締結圧力の変化とガス拡散層の厚さ変形を誘導するためであり、このような締結圧力の変化とガス拡散層の厚さ変化を得るために、流量変化サイクルの代わりに締結圧力を直接増減させるサイクルを施行することもできる。
すなわち、第2実施例は、スタック積層(S11)の後、仮締結は第1実施例と同様に実施するが(S12)、前処理過程でガス流量変化サイクルの代わりに流量変化によって発生する締結圧力の変化を与えてから解除する方式の締結圧力変動サイクルを実施することである(S14)。
このような締結圧力変動サイクル過程では、仮締結されたスタックを加圧装備に装着した後、分離板を介してガス拡散層に微細圧力がさらに加わるように、加圧装備を用いてスタックを所定圧力で加圧し、ついで圧力を解除する過程を所定サイクル回数で繰り返すことになる。
この際、最初サイクルの加圧時に所定圧力を加えてスタックの締結圧力に変化を与えてから圧力を解除し、ついでサイクル加圧時ごとに同一圧力が加わるように加圧装備を作動させた後、圧力を解除する過程を繰り返す。
前記過程で加圧装備が両側エンドプレートを加圧して締結圧力を変化させる。この際、エンドプレートに圧力を加えてから解除するうち、それぞれの分離板を介してガス拡散層に圧力が加わってから解除されることによりガス拡散層の厚さ変化が引き起こされる。
このように同一圧力を与えてから解除することを繰り返せば、ガス拡散層の厚さが分離板のランド部と接触した部分を中心に徐々に減少して変わり、所定のサイクルを繰り返した後には、一定サイクル回数の流量変化を与えたように、それ以上の厚さ変形が発生しない安定化状態になる。
締結圧力変動サイクルを実施するにあたり、サイクルの回数としては、第1実施例と同様に、2回または3回を実施し、好ましくはガス拡散層の物性が互いに異なること(製造社などによって)を考慮して少なくとも10回以上を実施する。また、増減または供給、遮断の各ステップを維持する時間は5秒〜60分に設定する。
前記のように追加の圧力を加えてから解除する方式で締結圧力の増減変化を所定サイクルにわたって繰り返す前処理過程を経てからは、ガス拡散層の厚さが減少した状態になり、圧力が解除された状態の締結圧力が前処理過程以前の仮締結直後に比べて低くなった状態になり、ガス拡散層と分離板の間には微細な隙間が存在することになる。
したがって、ガス拡散層の厚さが安定化すれば、締結圧力が低くなった状態の微細な隙間が除去されるようにスタック全体の締結圧力の変化量を補正して本締結を実施した後(S15)、スタック活性化工程(S16)を進めてスタックの締結及び組立てを完了する。
ここで、締結圧力の変化量補正は前述した第1実施例と同様な方式で進めることになる。
このように、ガス流量変化サイクルまたは締結圧力変動サイクルによってガス拡散層の更なる変形を誘導して厚さを安定化させた後、スタックの本締結を実施する方法によれば、図8及び図9のように、スタック運転の初期に現れるガス拡散層の厚さ変形を最小にできるので、スタック運転中に発生したガス拡散層の厚さ変形による従来の多くの問題点が解消できる。
ついで、本発明の第3実施例によるスタック仮締結の後、スタック活性化過程を実施した後、スタック本締結を実施することで、従来の問題点を解消することができる。
一般に、スタック本締結が完了すれば、空気(酸素)、水素をスタック内に注入してスタック性能を活性化する過程を経る。通常のスタック活性化過程は反応ガスの供給によって電力を生産する過程を含む。
したがって、スタック活性化の際、スタック運転中に要求される最大、最小流量運転を含めて進める場合、前記のようなガス流量変化サイクルの前処理過程を省略することが可能になる。
すなわち、図6の工程概略図に示すように、セル及びエンドプレートの積層(S21)の後、スタックを仮締結すれば(S22)、スタック活性化を先に実施し(S23)、これによりガス拡散層の厚さが安定化すれば、スタック全体の締結圧力の変化量を補正してスタック本締結を実施する(S24)方法を実施することができる。
この第3実施例においては、スタック活性化のためにスタックに通常に供給する反応ガス、つまり水素及び酸素(空気)の供給流量を前述した第1実施例のガス流量変化サイクルに準じて増減させる過程を実施する。
この際、反応ガスをスタック運転中に要求される最大流量、最小流量に変化させて供給する過程を所定サイクルにわたって繰り返し進めて運転することが可能である。
このように活性化過程で反応ガスの供給流量を増減させる過程を繰り返せば、第1実施例と同様に、ガス拡散層の厚さが減少した状態でそれ以上の厚さ変形が発生しない安定化状態となる。
この状態では、ガス拡散層と分離板の間に微細な隙間が発生するとともにスタックの締結圧力がスタック仮締結直後の締結圧力に比べて低くなった状態となる。
よって、締結圧力が低くなった状態の微細な隙間が除去されるように、スタック全体の締結圧力の変化量を補正して本締結を実施し、締結圧力の変化量補正及び本締結は前述した第1実施例と同様に進めることになる。
一方、ガス拡散層を透過する反応ガスの流量変化とこれによる締結圧力の変化の相関関係を確立し、これを実際スタック締結の際に適用するために、図7のような方式で既存の商業化したガス拡散層を評価した。
燃料電池スタックの場合、カソード、アノード及び冷却水流路の気密性がそれぞれ維持されなければならないので、スタック製作の際、気密が保障される特定の圧力以上で締結を実施することになる。一般に、スタック締結は締結バンドあるいは締結棒(長ボルト)形態の締結器具を用いて行い、この場合、スタック締結が完了した後に厚さ変位(スタックのサイズ)が固定される。
スタック構成要素の一つであるガス拡散層は主に多孔質の炭素支持体でなり、締結圧力によって厚さが変化し、スタック締結が完了した直後の締結圧力によってガス拡散層の厚さが決定される。
また、燃料電池スタックは要求電力量によって可変して空気(酸素)及び水素を供給する。この際、スタック内の反応ガスの供給量が増加、減少することによってスタック締結圧力が微細に変化する。
しかし、これをスタックの内部で直接測定することは難しいので、流量変化による微細圧力変化を測定するために、図7のような装置を用いてスタックの内部条件を模写した。
まず、加圧装備3で圧力を加えた状態でガス拡散層2の厚さが一定になるように締結器具(ロードセル:1)の位置変位を固定させた。
その後、ガス拡散層を通過する気体の流量を変化させながら締結圧力を測定し、その実施例を図8に示した。
この実験において、厚さ変位が一定したガス拡散層の内部に通過させる気体流量を増加させれば、ロードセルに加わる締結圧力も増加することが分かり、これは実際にスタックの内部でも同様に適用されることを予想することができる。
実際に、スタックの内部に流入される反応ガスの場合、化学量論比(Stoichiometric Ratio)を基準として1.5〜3.0程度の範囲に主に供給されるので、カソード、アノード側に供給される流量がそれぞれ異なり、スタック運転中に気体流量変化による締結圧力の変化はカソード、アノード別に違うことになる。
前記のように、スタック内の反応ガス流量変化によるスタック締結圧力の変化はガス拡散層の更なる厚さ変形を引き起こす。図9のように特定の圧力で仮締結されたガス拡散層に気体流量変化によって生じえる締結圧力大きさだけの圧力を増加、減少するサイクルを繰り返す場合、更なるガス拡散層の厚さ変形が起こることになる。
このような現象は初期の3回〜5回のサイクルで著しく現れ、以後にガス拡散層の厚さは安定化する。
したがって、本実験から分かるように、スタック締結完了後の更なるガス拡散層の厚さ変形は分離板、ガス拡散層及び膜電極一体構造、ガス拡散層間の界面の接触抵抗の増加をもたらしてスタック性能減少の主要因となるので、これを解決するためには、燃料電池スタックを仮締結した状態でシステムが要求する反応ガスの前もって設定された最大、最小流量サイクルを数回繰り返してガス拡散層の厚さを先に安定化させ、ついでスタック全体の厚さ変化量を補正してスタック締結を完了する方式を使わなければならない。
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
本発明は、スタックの運転中にガス拡散層の非可逆的な厚さの変動、締結圧力の低下及び微細隙間の発生、接触抵抗の増加などの問題がなく、安定して最適化したスタック締結状態を維持する燃料電池スタック締結方法に適用可能である。
1 ロードセル
2 ガス拡散層
3 加圧装備

Claims (1)

  1. 単位セルを積層してエンドプレートを結合した後、加圧装備で締結圧力を加えた状態で、締結圧力が維持されるように締結器具をセット、固定するスタック仮締結段階と、
    仮締結されたスタックに対し、アノードとカソードに供給されるガス流量を繰り返し変化させるガス流量変化サイクル繰り返す締結圧力変動サイクルを進めるスタック前処理段階と、
    スタック前処理段階の後、ガス拡散層の厚さ変化による締結圧力の変化量を補正してスタックの本締結を行うスタック本締結段階と、を含む燃料電池スタック締結方法において、
    前記ガス流量変化サイクルは、仮締結されたスタックのアノードとカソードに供給されるガスの流量を増減させて流量変化を繰り返し、
    前記ガス流量変化サイクルにおいて、ガス流量増加時の流量またはガス供給時の流量を前もって設定されたスタック運転時の反応ガス最大流量に設定して実施し、ガス流量減少時の流量は前もって設定されたスタック運転時の反応ガス最小流量に設定して実施することを特徴とする燃料電池スタック締結方法。
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