JP5695353B2 - コーティング剤および該コーティング剤を適用した梱包資材、並びに該梱包資材からなる通箱 - Google Patents

コーティング剤および該コーティング剤を適用した梱包資材、並びに該梱包資材からなる通箱 Download PDF

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この発明は、梱包資材の表面に適用することで、封緘用テープや送り状などの粘着性を有する貼付体に対して一定の粘着力を維持しながら、当該貼付体を引き剥がしたとき粘着剤が残留することがない剥離層を形成し得るコーティング剤と、このコーティング剤により剥離層を形成した梱包資材、並びにこの梱包資材からなる通箱に関するものである。
紙製の段ボール箱は、フラップを封緘する粘着テープや送り状などの粘着ラベルを引き剥がしたときに、表層のライナが破けやすく、このような紙むけ(表層剥離)が生じた段ボール箱は再使用することができない。そこで、従来は、予め粘着テープ等を貼付する箇所にニス(ワニス)を塗布・乾燥させた剥離領域を設けることにより、上記紙むけ等を防止する段ボール箱が提案されている(特許文献1)。
他方、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等を原料としたプラスチック段ボール(プラダンと略されることもある)も公知であり、紙製の段ボールよりも耐水性・耐油性・耐衝撃性・曲げ加工性に優れることから、当該プラスチック段ボールによる箱は通箱(かよいばこ)として繰り返し使用されている(特許文献2)。
実用新案登録第3024794号公報 特開2005−7634号公報
特許文献1に開示の段ボール箱は、ニスに含まれる揮発性の溶剤が表面ライナに染みこんで、表面ライナを変質させたり、劣化させたりするおそれがある。また、揮発成分による製造工程の環境悪化も懸念される。
他方、特許文献2のプラスチック段ボールは、紙製の段ボールよりも丈夫であるため、粘着テープ等の引き剥がしによって表層剥離が起こるおそれがほとんどないが、粘着剤やテープ破片が残留することが多々あった。そして従来は、残留したテープ破片や粘着剤の上から新たなテープやラベルを重ね張りして箱を再使用していたが、再使用の回数が増すにつれ粘着剤の残留量や残留面積も拡大して、粉塵などが付着しやすくなるため、箱を衛生的な状態で長期に使用することは困難であった。
そもそも粘着テープは剥離性よりも粘着性に重点をおいて開発されているが、同時に、テープの再利用を忌避するため、一度引き剥がせば粘着力が低減・喪失するように、被着体側に粘着剤が多少なりとも残るようにしてある。その対策として、箱の再利用を重視する利用者は、もともとの粘着力が低い弱粘着型のテープを選択することも可能であるが、実際の梱包現場において他のテープと使い分けることは梱包作業が繁雑となるばかりか、いくつもの種類のテープを用意すると梱包費の上昇にもつながる。
このように、現場では安価に入手できる汎用的な粘着テープを利用したいという要望が根強く、他の対策手段として、表面をエンボス加工した剥離シールを予め箱に貼付しておき、その上に封緘用テープや送り状を貼り付けるようにすることもあったが、剥離シール代やその加工費が嵩むばかりでなく、依然として糊残りが生じたり、逆に十分な粘着力が得られなかったりして、剥離性のコントロールが非常に困難であり、さらに、数回の利用で剥離シールそのものが剥がれるなど、耐久性にも問題があった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、梱包資材に適用することによって、その表面に適当な粘着強度を維持しながら、粘着剤や破片を残留させることなくテープ等を引き剥がすことができる剥離層を形成することである。
上述した目的を達成するために本発明では、梱包資材の表面に粘着性を有する貼付体の剥離層を形成するコーティング剤であって、ウレタン樹脂を基剤として剥離剤を添加するという手段を用いた。ウレタン樹脂は、剥離層の形成ベースとなるもので、前記剥離剤を添加しない単独の層を形成した場合でも、粘着性貼付体の粘着力が日本工業規格のZ−0237に基づく本来的な粘着力よりも低減し、引き剥がしやすくなる。しかし、ウレタン樹脂の単独層では、貼付体の粘着剤や破片が残留することがあるため、本発明では当該残留をより確実に回避するために、液状のシリコーンまたは粉末状のフッ素樹脂から選択される一の剥離剤を添加する。
剥離剤の添加の目的は、上述のように、粘着剤や破片を残留させずに貼付体をより確実に剥離可能とすること(以下、第一条件という)であり、そのためには貼付体の粘着強度を極力低減させる必要がある。しかし、剥離剤の添加量を際限なく増加させて、剥離層に対する貼付体の粘着強度を極端に低下させると、逆に貼付体が簡単に剥離してしまい、梱包資材の本来的機能を損なうおそれがある。そこで本発明では、不用意に貼付体が剥離しない粘着強度を維持することを加重条件(第二条件ともいう)として、これら相反する二つの条件を満足するために、剥離剤の添加率を実験の結果に基づいて創出した。また、シリコーンとフッ素樹脂とでは上記二条件を満足する添加率が異なることも知見した。
なお、粘着性の貼付体には、クラフト粘着テープ、OPPテープ、布テープなどのテープ類の他、荷札や送り状などのラベル類が含まれ、これらは粘着剤の成分、粘着強度、基材の強度(引張強度)等が異なる。また、同じ種類のテープ類・ラベル類であっても、温度や貼付時間といった使用環境で、貼付体の粘着強度は変わる。したがって、テープ類やラベル類の種類、使用環境に応じて、剥離剤の添加率を変更して、粘着強度をコントロールすることが好ましいが、いずれにせよ剥離層に対する貼付体の粘着力は、ウレタン樹脂のみの単独層に対する粘着力のおよそ30%以上とする。この程度の粘着力が上記加重条件を満足する最低ラインであり、梱包資材の使用中に貼付体が不用意に剥離することを防止することができる。
すなわち、発明者の実験・検討によれば、シリコーンの場合、1〜13重量%添加すれば、汎用的なテープ類・ラベル類のほぼ全てについて、上記二条件を満足する剥離層を形成することができる。言い換えると、シリコーンの添加率が1重量%未満であると、十分な剥離性が発現せず、剥離層に粘着剤や貼付体の破片が残留する一方、13重量%超であると、逆に貼付体の粘着力が十分に得られず、貼付体が簡単に剥離してしまう。
他方、フッ素樹脂の場合は、3〜13重量%の添加率とすることで、シリコーンの場合と同様、ほぼ全ての汎用テープ類・ラベル類について、梱包資材に上記二条件を満たす剥離層を形成することができる。この添加率の上下限それぞれの臨界意義は、やはりシリコーン場合と同様であり、フッ素樹脂の添加率が3重量%未満であると、貼付体の粘着性能が剥離性に勝って、粘着剤等が残留する一方、13重量%超であると、貼付体の粘着性能が十分に発揮されない。
一方、基剤としてのウレタン樹脂は、2液硬化型であることが好ましい。表面硬化によって長期に耐久性を得ることができるからである。このほか、基剤としてエポキシ樹脂やアクリル樹脂を選択することも可能であるが、前者は紫外線により黄変(変色)が起こり、後者は塗工後の表面硬化時間が長いことから、やはりウレタン樹脂が実用性に優れる。一方、剥離剤としてシリコーンを選択する場合は、付加反応型のシリコーンを採用する。縮合反応型の硬化剤のように、人体に有害なスズや亜鉛を含まないからである。
そして、本発明では、上述したコーティング剤により合成樹脂製の板紙の表面に剥離層を形成した梱包資材を得る。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートから選ばれる一を主原料とするプラスチック段ボールまたはポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンまたはアクリル等を原料とする樹脂製シートであることが耐久性の観点から好ましい。さらに、上記梱包資材から通箱を製函するという手段も用いる。
本発明によれば、通常の運送業務時での剥離事故を防止できる程度にテープやラベルなどの貼付体の粘着力を維持し、配送完了後に貼付体を粘着剤や破片が残留することなく剥離することができるため、梱包資材を傷めず、繰り返し使用することができる。また、剥離剤の添加量の調整により粘着強度のコントロールが容易で、比較的高価な弱粘着テープを用いることなく、比較的安価な汎用的テープを使用できるため、梱包費の上昇を抑制することができる。しかも、既存の塗工方法、印刷方法により剥離層を形成することができるから、エンボス加工した剥離シールを貼付するよりも、低コスト性および量産性に優れる。さらに、基剤のウレタン樹脂によって、耐候性、耐薬品性に優れた剥離層が形成され、その効果は長期間持続される。
本発明のコーティング剤で剥離層を形成した梱包資材から通箱を製函する工程を示したフロー図
図1は、本発明のコーティング剤を用いて梱包資材の表面に剥離層を形成し、この梱包資材から通箱を製函するまでの工程を示したものであって、まずコーティング剤の調剤工程(図1(a))では、ウレタン樹脂を基剤として剥離剤を添加し、混合する。剥離剤は、液状のシリコーンまたは粉末状のフッ素樹脂から一を選択する。このとき、梱包資材のもとの色と異なる色に着色可能な顔料を添加することも可能である。この顔料添加によって、剥離層は梱包資材の他の表面色と識別が可能となり、テープやラベルの貼付箇所が一目瞭然となる。
なお、剥離剤の添加率は、梱包資材の材質や貼付体の粘着層の成分、また、日本工業規格のZ−0237に従った引き剥がし試験に基づく元来の粘着力によっても異なるが、いずれにしても、(1)前記貼付体は粘着剤が前記剥離層に残留せず剥離可能であること、および(2)前記剥離剤を添加した剥離層に対する前記貼付体の粘着力は、おおよその目安として、前記ウレタン樹脂のみによって形成される層に対する粘着力の30%以上であること2つの条件を同時に満たす範囲で設定する。
次に、剥離層の形成工程(図1(b))では、上記コーティング剤を板状の梱包資材に塗布後、乾燥・硬化させる。コーティング剤の塗布方法は、スクリーン印刷を採用することが、均一な層形成や製造効率の面で有利であるが、スプレーを用いた吹きつけや、ローラやブラシを用いた塗りも排除しない。
なお、コーティングの対象である梱包資材は、原料や構造を特に限定しないが、コーティング剤の定着性や材自体の耐久性から、合成樹脂製の板材を選択することが好ましく、より具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートから選ばれる一を主原料とするプラスチック段ボールまたは樹脂製シートであることが好適である。この場合、樹脂製シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンまたはアクリルを原料とする。
最後に、通箱の製函工程(図1(c))では、上記梱包資材を適宜形状に裁断して、四周の壁の上下に開閉可能なフラップを形成する。
このように、本発明のコーティング剤は、上記(1)および(2)の条件を満足するように剥離剤を添加する他は、通常の混合調製により容易に製造できる。また、コーティング剤の塗布方法や乾燥方法、通箱の製函方法自体も、従来公知の方法によって実現される。
なお、剥離剤として液状のシリコーンを選択する場合は、調製工程や剥離層の形成工程における作業・周辺環境の保全に鑑みて、付加反応型のシリコーンオイルを採用することが好ましい。
発泡ポリプロピレン製板紙の表面に、ウレタン樹脂を基剤としてシリコーンオイルを0〜15重量%添加してなるコーティング剤を塗布・乾燥させて剥離層を形成した梱包資材について、テープ類、ラベル類の引き剥がし試験を行った。
用いた試料は、ゴム系粘着剤のクラフト粘着テープが2種類(クラフトテープ1:日東電工社製の品番714F、クラフトテープ2:ニチバン社製の品番313)、ラベルが1種類(佐川急便の宅配便用送り状)である。試験条件は、各試料を貼り付けた梱包資材を60℃で48時間加熱し、さらに20日以上放置した後に、任意の速度によって引き剥がした。そして、表1に示すように、引き剥がした後の粘着剤や破片の残留程度を目視で確認し、○(残留なし)、△(1cm角内に残留あり)、×(残留あり)の三段階で糊等残り評価を行った。なお、60℃で48時間加熱した後、20日以上放置したのは、より実使用に近い環境を作り出すためである。
Figure 0005695353
表1に示す結果から、シリコーンを3重量%以上添加したときに、全ての試料について、糊等残りが全く発現しない良好な剥離性能が得られた。ただし、シリコーンをそれ以下の1重量%添加したときでも、3つの試料のうち、2つについては糊等残り評価が○であった。このことから、シリコーンの添加率は少なくとも1重量%以上であることが必要であり、3重量%以上であることがより好ましいことを知見した。
次に、剥離剤として粉末状のフッ素樹脂を0〜15重量%添加したコーティング剤による剥離層について行った引き剥がし試験の結果を表2にしめす。梱包資材の材質、試料、試験条件および評価方法は実施例1と同じである。
Figure 0005695353
表2に示す結果から、剥離剤がフッ素の粉末樹脂である場合は、3重量%以上を添加することで、糊等残りを抑制できることを知見した。
続いて、添加量と粘着強度の変化を実験した結果を表3に示す。この実験では、剥離剤としてシリコーンを0〜15重量%添加してなる剥離層に対して、クラフト粘着テープ(ニチバン社製の品番313)と、アクリル系粘着剤であるOPPテープ(積水化学工業社製の品番882)をそれぞれ貼付し、60℃で48時間加熱した後、日本工業規格のZ−0237に準拠した180度引き剥がし試験を行った。なお、シリコーンの添加率0重量%のとき、クラフト粘着テープの粘着強度は8.04N/25mm、OPPテープは4.02N/25mmである。
Figure 0005695353
表3に示す結果から、シリコーンを微量(1重量%)でも添加することで、貼付体の粘着力を大きく低減でき、この結果と表1に示した糊等残り評価が○であることは一致するから、シリコーンの最低添加率は1重量%とすることができる。さらに、その後の添加量と粘着力との関係をみると、クラフト粘着テープでは、1〜13重量%の間で添加率が大きくなるほど粘着力が低下する傾向が確認された。また、OPPテープについても、1〜13重量%の間で、安定した粘着力が得られた。なお、何れのテープに対しても、シリコーンの添加率が15重量%のとき粘着力が増大に急転している。そして、シリコーンを添加しないアクリル樹脂の単独層では、クラフト粘着テープの粘着力が8.04N/25mm、OPPテープの粘着力が4.02N/25mmであるから、最低限必要な粘着力を示す30%ラインはそれぞれ、2.41N/25mm、1.2N/25mmとなるところ、13重量%添加時の粘着力はこの30%ラインを超えている。したがって、これらを総合的に評価すれば、シリコーンの最大添加率は13重量%であることが好ましい。
一方、添加剤としてフッ素樹脂粉末を添加してなる剥離層についての粘着強度変化の実験では、表4に示すように、フッ素添加率を高めるほど粘着力が低減することが確認された。また、フッ素樹脂の添加率が0重量%のとき、即ちフッ素樹脂を添加しないアクリル樹脂の単独層では、クラフト粘着テープの粘着強度は9.37N/25mmであり、この場合の粘着力の30%ラインは、クラフト粘着テープの場合、2.81N/25mmであるから、13重量%をフッ素添加率の上限と把握することができる。一方、OPPテープの場合、フッ素樹脂の添加率0重量%のとき、粘着強度は5.86N/25mmであり、30%ラインが1.75N/25mmであるから、9重量%が上限添加率といえるが、テープの種類やラベルの種類によって添加率を調整してもよいことはもちろんである。
Figure 0005695353
実施例1〜4の結果を総括すると、貼付体の種別によっても糊等残り評価が若干変化するが、シリコーンとフッ素樹脂の間でも、上記(1)・(2)の条件を満足する添加率が異なる。つまり、シリコーンを剥離剤として採用した場合、貼付体がテープ類・ラベル類の何れであっても、1〜13重量%の範囲で上記条件(1)および(2)を満足するのに対して、フッ素樹脂を添加したコーティング剤にあっては、おおむね3〜15重量%で(1)の条件を満足し、15重量%では(2)の条件を満足しない。よって、フッ素樹脂の添加率は3〜13重量%を適正値と考えることができる。

Claims (4)

  1. ウレタン樹脂を基剤として、液状のシリコーンを添加してなるコーティング剤を合成樹脂製の板紙の表面に塗布して、硬化させ、粘着性貼付体を剥離可能に貼付する剥離層を形成した梱包資材であって、
    前記コーティング剤における前記シリコーンの添加率を1〜13重量%として前記剥離層を形成し、
    当該剥離層に前記貼付体を貼り付けて60℃で48時間加熱し、さらに20日以上放置した後に前記貼付体を引き剥がしたときに、粘着剤や破片を残留させずに前記貼付体を剥離可能とし、
    且つ、前記剥離層に対する前記貼付体の粘着力は、前記ウレタン樹脂のみの単独層に対する粘着力の30%以上であることを特徴とする梱包資材。
  2. ウレタン樹脂を基剤として、粉末状のフッ素樹脂を添加してなるコーティング剤を合成樹脂製の板紙の表面に塗布して、硬化させ、粘着性貼付体を剥離可能に貼付する剥離層を形成した梱包資材であって、
    前記コーティング剤における前記フッ素樹脂の添加率を3〜13重量%として前記剥離層を形成し、
    当該剥離層に前記貼付体を貼り付けて60℃で48時間加熱し、さらに20日以上放置した後に前記貼付体を引き剥がしたときに、粘着剤や破片を残留させずに前記貼付体を剥離可能とし、
    且つ、前記剥離層に対する前記貼付体の粘着力は、前記ウレタン樹脂のみの単独層に対する粘着力の30%以上であることを特徴とする梱包資材。
  3. 合成樹脂製の板紙は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートから選ばれる一を主原料とするプラスチック段ボールまたは樹脂製シートである請求項1または2記載の梱包資材。
  4. 請求項1、2または3記載の梱包資材からなることを特徴とした通箱。
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