以下、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の製造方法について詳述するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
尚、本発明においては、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、「主成分」とは50質量%以上含有しているという意味として扱う。また、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタアクリロイルを意味し、範囲を示す「X〜Y」は、X以上Y以下であることを示す。
<重合工程>
本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の重合方法は、ポリアルキレンオキシド系樹脂が得られる重合方法であれば、どのようなものでもよい。好ましくは、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂は、アルキレンオキシドを主成分とするモノマー混合物を、溶媒を用いて重合させる重合工程により得られる。
本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂(アルキレンオキシド系ポリマー、アルキレンオキシド系コポリマー又はアルキレンオキシド系ターポリマー)は、その分子構造中にアルキレンオキシドモノマー由来の構成成分を主として含んでなり、主鎖にエーテル結合を有する樹脂であれば、特に限定されるわけではない。
例えば、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂として、1種又は2種以上の、置換基を有していてもよいオキシラン化合物を必須原料(原料モノマー)とする重合体が挙げられる。この重合体は、例えば、1種又は2種以上の、置換基を有していてもよいオキシラン化合物を必須原料とする単量体配合物を、溶媒(重合溶媒)の中で撹拌しながら重合触媒を用いて重合させることにより得られる。この重合溶媒として、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン類、ケトン誘導体類、エステル類、エーテル類、ニトリル化合物及び有機ハロゲン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物からなる溶媒が用いられうる。
置換基を有していてもよいオキシラン化合物とは、例えば、下記構造式(1)
(ただし、R1、R2、R3及びR4は、それぞれRa(Raは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアリール基、炭素数1〜20のアラルキル基、炭素数1〜20の(メタ)アクリロイル基、炭素数1〜20のアルケニル基又は炭素数1〜20のアルカリール基を表す。R1、R2、R3及びR4からなる群より選択される任意の2つの置換基は、それらが結合するエポキシ炭素原子と共に環を形成していてもよい。)又は−CH2−O−Re−Ra基(Reは、−(CH2−CH2−O)p−の構造を有する(pは0から10までの整数))である)
で示される化合物である。ただし、エポキシ炭素原子とは、オキシラン環を構成する炭素原子を意味する。また、R1、R2、R3及びR4は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
好ましくは、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂は、エチレンオキシド と、下記構造式(2)
(ただし、R5は、Ra(Raは、炭素数1〜16の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の中のいずれかの基である)又は−CH2−O−Re−Ra基(Reは、−(CH2−CH2−O)p−の構造を有する(pは0から10までの整数))である)
で示される置換オキシラン化合物とを含むコモノマー群を重合してなるものが好ましい。この重合は、各原料モノマーのオキシラン基の開環重合であることが好ましい。尚、上記構造式(2)におけるR5基は、上記置換オキシラン化合物における置換基である。
原料モノマーとして用いる置換オキシラン化合物は、構造式(1)又は構造式(2)で示される置換オキシラン化合物1種のみであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。上記構造式(1)又は(2)で示される置換オキシラン化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシオクタン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、エチレングリコールメチルグリシジルエーテル等を挙げることができ、さらに、置換基R5が架橋性の置換基である場合、つまり、置換基R5がアリール基、アルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を有する場合として、エポキシブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロへキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキサノエート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−アリルベンジルグリシジルエーテル等も挙げることができる。前述したように、これらは単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
本発明におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の原料モノマーとして、上記エチレンオキシド及び置換オキシラン化合物以外のモノマーも含まれ得る。本発明のポリアルキレンオキシド系樹脂としては、特に、得られる重合体の融点を後述する所望の範囲に容易に調整出来る点で、特定のモノマーの組み合わせが好ましい。具体的には、エチレンオキシドとブチレンオキシドからなる共重合体か、エチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなるモノマー混合物がより好ましい。
反応系におけるモノマー濃度(使用量)は、特に限定されないが、重合後の反応混合物における、該重合により得られるアルキレンオキシド系ポリマーの含有率が、10〜80質量%となるように設定することが好ましく、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%となるように設定する。上記含有率が10質量%未満である場合、生産性が低く、得られたポリマーが実用性に欠けるおそれがある。上記含有率が80質量%を超える場合、その粘度が上昇して重合反応液の攪拌が困難になったり、重合反応で生じる重合熱の除熱が困難になったりするため、容易に、かつ生産性及び再現性良くポリマーを得ることが出来なくなるおそれがある。
モノマー混合物中の、エチレンオキシドと上記他のモノマー(特に置換オキシラン化合物)との配合率は、特に限定されず、重合後の反応混合物の粘度が必要以上に上昇又は低下し、実用性に欠けることとならない程度で適宜設定すればよい。また、架橋性の置換基を有する置換オキシラン化合物を用いる場合、該置換オキシラン化合物は、置換オキシラン化合物の全使用量に対して任意の割合で使用され得る。
モノマー混合物が上記特定のモノマーの組み合わせである場合、得られる共重合体の融点は、容易に調整されうる。融点が後述する所望の範囲にあるという観点から、各モノマーの配合率は、エチレンオキシドが90〜99モル%、ブチレンオキシドが1〜10モル%、かつアリルグリシジルエーテルが0〜2モル%であることが好ましい。特に、モノマー混合物がエチレンオキシド及びブチレンオキシドからなる場合、これらの配合率はエチレンオキシドが92〜96モル%であり、かつ、ブチレンオキシドが4〜8モル%であることが好ましく、また、モノマー混合物がエチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなる場合、これらの配合率はエチレンオキシドが92〜97.8モル%、ブチレンオキシドが2〜6モル%、かつアリルグリシジルエーテルが0.2〜2モル%であることが好ましい。
重合工程における重合方法としては、例えば、溶液重合法、沈殿重合法、バルク重合法等が好ましく挙げられる。この中でも、溶液重合法が、生産性に優れているので、より好ましい。予め仕込んだ溶媒にモノマー成分を供給しながら重合を行う溶液重合法が、生産性に優れ、しかも反応熱を除熱しやすく、安全性に優れているので、特に好ましい。
溶媒(溶液重合に用いられる溶媒)としては特に限定されないが、活性水素を有しない溶媒が好ましい。活性水素は、重合開始剤及び重合成長末端と反応する。活性水素を有しない溶媒を使用するのは、副反応が少なく分子量及び融点が制御しやすい点や、溶媒中の水分量を所定量まで減じることが出来て、管理が容易である点から好ましい。この重合用の溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘプタン、オクタン、n−へキサン、n−ペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、シクロペンタン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメトキシエタン等のエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の有機ハロゲン系溶媒;ケトンとアルコールとから得られるアセタール、ケタール等のケトン誘導体系溶媒;等の有機溶媒が好ましく、中でも、重合を阻害する活性水素を有しない点から、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトン及びアセトニトリルが特に好ましい。重合用の溶媒として、上記有機溶媒であり、かつ水を全く含まないものが、さらに好ましい。
モノマー混合物を重合させる工程(重合工程)は、少なくとも2つの段階を有することが好ましい。具体的には、エチレンオキシドのみを供給して重合させる段階と、エチレンオキシドと他のモノマー(エチレンオキシド以外のモノマー)とを供給して重合させる段階とを、それぞれ少なくとも1段階ずつ有するようにすることが好ましい。これにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂は、当初の設計に沿う所望のモノマー組成比及び所望の分子量を有しつつ、しかも融点も所望の値に調整されうる。具体的には、得られるアルキレンオキシド系共重合体の分子構造において、その一部がエチレンオキシド由来の構造単位のみからなる構造部分を有するようにすることで、共重合体の2種類の融点のうちの高温の融点が制御される。全体としては所望のモノマー組成比及び所望の分子量となるように、適宜条件が設定される。共重合体の2種類の融点のうちの高温の融点は、上記構造部分の大きさに相当するポリエチレンオキシドの融点におよそ対応する。従って、共重合体の2種類の融点のうちの高温の融点は、重合反応の中でエチレンオキシドのみを重合させる段階をどの程度行うかによって調整され得る。
上記重合反応液には、アルキレンオキシド系樹脂成分や溶媒成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、重合反応において一般的に用いられる反応開始剤、酸化防止剤及び可溶化剤等が挙げられる。上記反応開始剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムアルコラート、ナトリウムアルコラート、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性触媒や、例えば、金属カリウム、金属ナトリウム等の金属、例えば、水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物(特開平8−268919号公報等参照)、金属イオン添加酸化マグネシウム(特公平6−15038号公報、特開平7−227540号公報等参照)、焼成ハイドロタルサイト(特開平2−718441号公報等参照)等のAl−Mg系複合酸化物触媒あるいはそれらを表面改質した触媒(特開平6−334782号公報等参照)、バリウム酸化物、バリウム水酸化物(特開昭54−75187号公報等参照)、層状化合物(特表平6−505986号公報等参照)、ストロンチウム酸化物、ストロンチウム水酸化物(特公昭63−32055号公報等参照)、カルシウム化合物(特開平2−134336号公報等参照)、セシウム化合物(特開平7−70308号公報等参照)、複合金属シアン化錯体(特開平5−339361号公報等参照)、ルイス酸やフリーデルクラフツ触媒のような酸触媒等が好ましく挙げられる。その中でも特に、金属アルコラートが好ましい。副反応の抑制の観点から、金属種としてはカリウムが好ましい。高反応性の観点から、アルコラートのアルキル基としては、tert−ブチル基を有するtert−ブトキサイドが好ましい。これら反応開始剤は、重合反応液に、1種のみ含まれていても2種以上含まれていてもよく、特に限定はされない。
重合工程において、反応開始剤は、例えば、モノマー混合物を供給し始める前に予め溶媒と共に反応開始剤の全使用量を仕込んでおき、溶媒と共に添加されしてもよい。モノマー混合物を供給し始めてから、反応開始剤が一括投入又は逐次投入(連続的投入及び/又は間欠的投入)されてもよく、特に限定されない。
重合工程において、反応器は、仕込んだ溶媒や供給したモノマー混合物等の内容物を攪拌できるものであればよく、攪拌翼を搭載し任意に所望の条件で内容物を攪拌できるようなものが好ましい。上記攪拌翼として、アンカー翼、ヘリカルリボン翼、ダブルヘリカルリボン翼、ドラフトチューブ付きヘリカルスクリュー翼、スーパーブレンド翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパーミックス翼、サンメーラ翼、ねじり格子翼、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、ブルマージン翼、プロペラ翼等を搭載した攪拌槽が例示される。
反応器は、仕込んだ内容物を所望の反応温度以下となるように加熱し維持出来る装備を有するものが好ましい。上記装備としては、具体的には、ジャケット、コイル、外部循環型熱交換器等を好ましく挙げることが出来るが、これらには限定されない。上記装備以外にも、例えばバッフル、温度計及び圧力計等の検出端、液中や気相中へ原料を均一分散させる供給装置、反応器・反応層内の洗浄用の装置等、重合反応を効率良く行うために、種々の装備が任意に搭載され得る。
重合工程において、モノマー混合物を重合させる前に、上記溶媒で洗浄されてから加熱乾燥された後、その内部の雰囲気が不活性ガスで十分置換されている反応器、又はその内部が真空状態にされている反応器が用いられることが好ましい。洗浄後、モノマー混合物を重合させる前に、先に反応器に溶媒等が仕込まれていることが好ましい。その後、再度、反応器内の雰囲気が不活性ガスで置換される、又は反応器内が減圧状態若しくは真空状態にされることが好ましい。
重合反応は、通常、溶媒等とともに、モノマー混合物を攪拌させて行う。攪拌は、反応器に搭載した攪拌翼を回転させること等により、モノマー混合物を溶媒に供給する前から実施されていることが好ましい。攪拌は、モノマー混合物の供給時、供給開始時又は重合開始時から始めてもよく、攪拌開始のタイミングは限定されない。攪拌は、重合が完結するまで続けることが好ましい。
重合の反応温度については、120℃未満であることが好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。反応温度が120℃を超えると、連鎖移動反応の頻度が大きくなるので、分子量の低下が容易に引き起こされる場合がある。この場合、反応開始剤の添加量調整ではコントロール出来ない程度に、分子量が低下することがある。
重合工程において、モノマー混合物の供給が終了した後、必要に応じて反応器内の反応混合物が熟成されることが好ましい。熟成の条件(温度、時間等)は、特に限定されない。熟成後の反応器の解圧時に、気相中に溶媒や未反応原料モノマーが存在する場合があるので、必要に応じて気相中の気体が廃ガス燃焼装置で完全燃焼される。
重合工程において重合されたアルキレンオキシド系共重合体の質量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、上記共重合体の粘度が必要以上に低くなる等の著しく実用性に欠ける事にならない範囲内で、用途等を考慮して設定されうる。アルキレンオキシド系共重合体の質量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、前述した重合条件等を適宜設定することで調整され得る。なお、Mnは、アルキレンオキシド系共重合体の数平均分子量である。
得られる共重合体の質量平均分子量(Mw)は、10,000以上500,000以下となるようにすることが好ましく、下限が、より好ましくは30,000、より好ましくは40,000、更に好ましくは50,000であり、上限が、より好ましくは300,000、より好ましくは200,000、更に好ましくは150,000である。Mwが10,000未満であると、共重合体の融点が所望の範囲内に調整不可能な程度に低くなるおそれがある。Mwが500,000を超えると、重合反応液の粘度が上昇するため、重合工程において反応液の攪拌が困難となるおそれがある。得られる共重合体のMw/Mnは、1.0以上5.0以下となるようにすることが好ましい。上限はより好ましくは3.0である。分子量分布が5.0を超える場合は、成形体にした時にタックが生じ、ハンドリングが悪くなるおそれがある。質量平均分子量(Mw)が50,000未満であると、電池用材料に用いる場合、ポリマー末端の活性水素の量が多くなり電池中のイオンとの反応が増加し、電池性能が低下するおそれがある。質量平均分子量(Mw)が150,000を超えると、コーティングや押出し成形時における成形性が悪くなる。
重合工程においては、得られる共重合体、即ちポリアルキレンオキシド系樹脂の高い方の融点mp(℃)が所望の値となるように、前述したエチレンオキシドのみを重合させる段階をどの程度行うかを制御する等して、調整される。融点mp(℃)は0℃以上60℃以下とすることが好ましく、下限が35℃、上限が55℃であることがより好ましい。mp(℃)が60(℃)を超えた場合、電池材料として用いると導電性が低下する。mp(℃)が0(℃)未満であると、例えば、ポリマーをフィルム状にして使用するときに、使用温度で強度が低いフィルムになる。
得られる共重合体、即ちポリアルキレンオキシド系樹脂の、測定温度が100℃以上110℃以下であり、剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときの伸張粘度は、100Pa・s以上1,000,000Pa・s以下であることが好ましい。下限は、より好ましくは500Pa・s、さらに好ましくは1,000Pa・s、上限は、より好ましくは500,000Pa・s、さらに好ましくは100,000Pa・sである。この上記伸長粘度が1,000,000Pa・s以下とされることにより、溶解工程において供給される際のポリアルキレンオキシド系樹脂の粘度も低くなる傾向となり、溶解速度が高まりやすい。また、伸張粘度が100Pa・s未満である場合は、例えば、ポリマーをフィルム状にして使用する用途等では、フィルムに成形する際、溶融時にわずかな張力でも切断してしまうおそれがあり、伸長粘度が1,000,000Pa・sを超える場合は、例えば、ポリマーをフィルム状にして使用する用途等では、フィルム状に押し出し成形する際、トルクが高くなり、押し出せなくなるおそれがある。
重合工程において得られたポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶媒を脱揮する工程(脱揮工程)によって脱揮されることが好ましい。脱揮後のポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶媒成分を全く含まないものに限定されるわけではなく、通常、以下の脱揮により所望の溶媒濃度となるまで減少させられて調整される。脱揮の方法、脱揮する際に用いる装置及び各種条件としては、通常の脱揮の際の方法、使用可能な装置及び設定される条件等が採用される。詳しくは以下に示される。脱揮の方法としては、通常、プレ脱揮と本脱揮との二段階で行うことが好ましいが、特に限定されるわけではなく、一段階の工程として行ってもよい。二段階に分けて脱揮を行うことが好ましいのは、脱揮の効率アップ(コストダウン、処理時間の短縮、樹脂の品質等)が可能となるからである。具体的には、脱揮前にある重合反応液に多く含まれる溶媒が、効率良く脱揮処理が行える程度の溶媒量にまで急速に減らされた後に、ゆっくりと脱揮処理が実施される。前段を常圧脱揮とし後段を真空(減圧)脱揮とすることによって、一段で脱揮処理する場合よりも機器サイズを小さくすることができる、脱揮時にはある濃度域で急激に粘度上昇することがあるので、一段で処理する場合より駆動系が小さくされうる、等の理由により、二段階に分けて脱揮を行うことは理論的にも好適である。脱揮処理する重合反応液の種類によって、上記一段階の処理であっても、二段階の処理と同様の効果が得られる場合があるので、脱揮の方法は適宜選択される。
脱揮装置としては、特に限定されるわけではないが、撹拌槽蒸発器、下流液柱蒸発器、薄膜蒸発器、表面更新型重合器、ニーダー、ロールミキサー、インテンシブミキサー(いわゆるバンバリーミキサー)、押出機等が好ましく挙げられ、これら装置のうち少なくとも1つの装置を用いて行うことが好ましい。また、用いる装置によって適宜使用条件を設定することができる。撹拌槽蒸発器は、広範囲な粘度、広範囲な残留溶媒濃度に対応できる点で優れており、例えば、ヘリカル翼を搭載した撹拌槽、ダブルヘリカルリボン翼を搭載した撹拌槽、スーパーブレンド翼(内翼:マックスブレンド翼、外翼:螺旋状変形バッフル)を搭載した竪型同心二軸撹拌槽(例えば、製品名:スーパーブレンド、住友重機械工業(株)製)、VCR逆円錐リボン翼式リアクター(三菱重工(株)製)等が好ましく挙げられる。これらは、バッチ式での処理に用いることが好ましい。また、装置の特性上、処理後の排出の際に多くの時間を必要とするので、撹拌槽蒸発器は大量の樹脂等を処理するというプロセスよりも、少量を正確に処理するプロセスに好ましく対応している。
下流液柱蒸発器としては、多管式熱交換器型(例えば、製品名:スルザーミキサー、住友重機械工業(株)製;製品名:スタテックミキサー、ノリタケ社製)、プレート熱交換器型(例えば、製品名:Hiviscous Evaporator、三井造船(株)製)等が好ましく挙げられる。薄膜蒸発器としては、例えば、横型薄膜蒸発器(例えば、製品名:エバリアクター、関西化学機械製作(株)製)、固定ブレード式の竪型薄膜蒸発器(例えば、製品名:EXEVA、神鋼パンテック(株)製)、可動ブレード式の竪型薄膜蒸発器(例えば、製品名:ワイプレン、神鋼パンテック(株)製)、槽型(鏡型)薄膜蒸発器(例えば、製品名:リカバリー、関西化学機械製作(株)製)等が好ましく挙げられる。表面更新型重合器(横型薄膜重合器)は、気液表面の更新によって高い脱揮性能を示す点で優れており、例えば、単軸型表面更新型重合器、二軸型表面更新型重合器(例えば、製品名:バイボラック、住友重機械工業(株)製;製品名:日立メガネ翼重合機、(株)日立製作所製;製品名:日立格子翼重合機、(株)日立製作所製;製品名:SCプロセッサ、栗本鉄工所社製)等が好ましく挙げられる。
押出機は、高粘度融体等の混合に適し、付加機能として加熱、溶融、混練とともに脱揮能力を備えるものであり、例えば、単軸型押出機、二軸型押出機(例えば、製品名:SUPERTEXαII、日本製鋼所製;製品名:BT−30−S2、プラスティック工学研究所製)、SCRセルフクリーニング式リアクター(三菱重工(株)製)等が好ましく挙げられる。
上述したように、好ましい脱揮方法としてプレ脱揮の後に本脱揮する方法を挙げることができるが、上記各種脱揮装置のうち、プレ脱揮に好ましく用いることのできるものとして、特に限定はされないが、ダブルヘリカルリボン翼を搭載した撹拌槽、スーパーブレンド翼を搭載した竪型同心二軸撹拌槽、プレート熱交換器型の下流液柱蒸発器及び固定ブレード式の竪型薄膜蒸発器等が挙げられる。また、本脱揮に好ましく用いることができるものとして、特に限定はされないが、固定ブレード式の竪型薄膜蒸発器、二軸型表面更新型重合器、ニーダー、二軸型押出機等が挙げられる。
重合反応液の脱揮を行うに当たっては、前述した溶媒を用いた重合の工程等に供したいわゆる前段装置に、上記列挙した各種脱揮装置を直結させて脱揮を行ってもよく、この前段装置から送液や移送を介した上で各種脱揮装置により脱揮を行ってもよい。後者については、例えば、上記前段装置から脱揮装置までの間が送液ラインで連結されているような形態や、上記前段装置から脱揮装置までの間にジャケットや撹拌機を備えた中間槽タンク(クッションタンク)を設けた形態等が挙げられる。
脱揮工程においては、脱揮により、脱揮後のポリアルキレンオキシド系樹脂中の残存溶媒濃度を30質量%以下となるようにすることが好ましく、上限が、より好ましくは20質量%、さらに好ましくは10質量%である。また、残存溶媒濃度が30質量%を超える場合、残存溶媒がポリアルキレンオキシド系樹脂の成形性に悪影響を与える恐れがある。また、残存溶媒濃度が30質量%を超える場合、輸送時において溶媒の揮発による危険性が発生する。
脱揮後のポリアルキレンオキシド系樹脂中の含有水分は、例えば、重合の際に用いた溶媒やモノマー等により持ち込まれる。上記含有水分量は、1,000ppm以下とされることが好ましく、200ppm以下とされることがより好ましく、100ppm以下とされることがより好ましく、10ppm以下とされることが特に好ましい。含有水分量が1,000ppmを超える場合は、樹脂が導電性となることにより、例えば、得られたポリアルキレンオキシド系樹脂をカラーフィルターの保護膜等に用いた場合は、上記保護膜としては致命的な機能低下を引き起こしてしまうおそれがある。また、水分が金属イオン分等と反応して水酸化物等を生成してしまうため、例えば、ポリアルキレンオキシド系樹脂を、金属を電極に用いている電池の電解質層等に用いた場合は、金属−電解質層界面に絶縁層を形成し、定電流下での電圧が上昇し続け、電池のサイクル特性が悪化するおそれがある。
含有水分量を調整する手段としては、重合時に原料、取扱いガス、洗浄溶媒等により持ち込まれる水分を減らすこと、重合装置(配管、バルブ等を含む)の表面付着水を減らすこと、及び、重合後の各工程で水分の混入を極力防ぐこと等が挙げられる。
前述した脱揮装置を用い、重合反応液から溶媒を加温下で脱揮する際は、その温度は、40℃以上300℃以下であることが好ましく、下限が、より好ましくは60℃、さらに好ましくは90℃、上限が、より好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃である。この温度範囲で脱揮を行うことによって、脱揮後に、上述した所望の残存溶媒濃度及び含有水分量のポリアルキレンオキシド系樹脂を得ることができる。上記温度が、40℃未満の場合は、溶媒の残存量が多くなるおそれがあり、300℃を超える場合は、ポリエーテル自体が熱分解するおそれがある。ここで、温度とは、脱揮装置内のポリアルキレンオキシド系樹脂の温度をいう。
同様に、上記脱揮装置を用いて溶媒を脱揮するにあたっては、圧力は、13Pa以上100,000Pa以下の範囲で行うことが好ましく、下限が、より好ましくは133Pa、さらに好ましくは1,333Pa、上限が、より好ましくは70,000Pa、さらに好ましくは40,000Paである。この圧力の範囲を満たすようにすることによって、脱揮後に、上述したような溶媒濃度のポリアルキレンオキシド系樹脂を得ることができる。圧力が13Pa未満の場合は、溶媒がフラッシュしてしまいフォーミングが起こるおそれがあり、100,000Paを超える場合は、温度を高くせねばならず、ポリエーテルが分解するおそれがある。ここで、上記圧力とは、脱揮装置の槽内圧力である。
<充填工程>
ポリアルキレンオキシド系樹脂は、吸湿性を有する。換言すれば、ポリアルキレンオキシド系樹脂は、水分を吸収しうる。吸収された水分は、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質を低下させうる。バルクの状態とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面積は小さくなり、ポリアルキレンオキシド系樹脂の雰囲気に接触する面積が最小となる。これにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂に吸収される水分量は抑制されるが、より一層含有水分量を低下させることができれば好ましい。
前述したように、ポリアルキレンオキシド系樹脂は、化学構造的に加熱に対して非常に弱いという特性を有する。このため、ポリアルキレンオキシド系樹脂をドラム缶等の容器に充填してバルクの状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂を得るために、ポリアルキレンオキシド系樹脂が加熱されて溶融されると、ポリアルキレンオキシド系樹脂に分解、架橋等のような変質が生じる場合がある。溶融状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の変質を、抑えることができれば好ましい。
溶融状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が、ドラム缶等の容器に入れられて、この容器が密閉された状態で冷却されると、この容器の内圧が低下してこの容器が変形してしまうという問題もある。
本発明に係る充填工程では、以下に説明するように、ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量を抑制しつつ、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解、架橋等の変質を抑制することができる。
(a)投入工程
上記脱揮工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂は、オープンヘッドドラム(オープンドラムとも称される)に投入される。ポリアルキレンオキシド系樹脂をオープンヘッドドラムに投入する工程が、投入工程である。本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の充填工程は、この投入工程を含んでいる。
充填工程に用いられるオープンヘッドドラムは、気密性の高いものが好ましい。気密性の高いオープンヘッドドラムが用いられることにより、オープンヘッドドラムの内部が標準大気圧よりも高い内圧で維持されやすくなる。気密性を高める観点から、オープンヘッドドラムの胴体の開口部と天ぶたとの間にはガスケットを設けることが好ましい。また、天ぶたに注入口や排気口等の開口部が設けられている場合、これらの開口部を、パッキンを介してネジ式の蓋(プラグ)で塞ぐことが好ましい。オープンヘッドドラムには、周知のバンド(リング)を装着することが好ましい。このバンドは、天ぶたの外周及び胴体開口部の縁部を覆うように設けられた環状の部材である。このバンドを締め付けることにより、天ぶたと胴体との密着性が高まる。周知のようにバンドとして、ボルト式バンド、内レバー式バンド、外レバー式バンド等が例示される。
図1は、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の充填方法に用いられるオープンヘッドドラム2の概略構成を示す斜視図である。オープンヘッドドラム2は、胴体4と、地板(底板)6と、天ぶた8とを有する。胴体4は、円筒状である。胴体4の下側の開口部は、地板6により塞がれている。胴体4と地板6とは、周知の巻締め構造と、この巻締め構造の内部に配置された充填剤とにより密閉されている。図1では、胴体4の上側の開口部は、天ぶた8により塞がれている。胴体4の開口部の縁部と天ぶた8との間には、ガスケット(図示されない)が設けられている。また、胴体4と天ぶた8とは、バンド10により締め付けられる。バンド10は、ボルト式バンド10である。なお、この充填方法では、例えば、その容量が20リットルから200リットルの範囲にあるオープンヘッドドラム2が適宜用いられる。以下、「リットル」は、便宜上、単に「L」と記される。
天ぶた8は、導入口12と、排出口14とを有している。図示されていないが、この導入口12及び排出口14の内周面には雌ネジが設けられている。導入口12は、後述する冷却工程において用いられる導入バルブが接続されうるように構成されている。排出口14は、後述する冷却工程において用いられる排出バルブが接続されうるように構成されている。なお、図1においては、導入口12と排出口14とは、その形状がボルト状であるパッキン付のプラグ16で塞がれている。
図示されていないが、オープンヘッドドラム2の内面には、塗膜が形成されている。この塗膜は、このオープンヘッドドラム2に焼き付けられている。この塗膜は、オープンヘッドドラム2の変質を防ぐ。この塗膜の材質としては、エポキシフェノール系、エポキシ系及びフェノール系が例示される。耐熱性、耐久性及びこの塗膜とポリアルキレンオキシド系樹脂との反応性の観点から、この塗膜の材質としては、エポキシフェノール系が好ましい。
図2は、図1のオープンヘッドドラム2が本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の充填方法に含まれる投入工程の投入装置18に用いられている様子が示されている一部切り欠き正面図である。図2の横方向は、投入装置18の左右方向を表している。紙面の左側は、投入装置18の右側である。紙面に対して垂直方向は、投入装置18の前後方向を表している。紙面の表側は、投入装置18の前側である。図3は、図2の投入装置18の一部切り欠き右側面図である。図3において、横方向は投入装置18の前後方向である。紙面の右側が、投入装置18の前側である。紙面に対して垂直方向は、投入装置18の左右方向を表している。紙面の表側が、投入装置18の左側である。図2及び図3には、投入装置18と、オープンヘッドドラム2とが示されている。投入装置18は、供給部20と、隔離部22と、搬送部24と、操作部26とを備えている。本実施の形態に係る充填方法では、投入工程において、投入装置18を用いることにより、加熱されて溶融状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂はオープンヘッドドラム2に投入される。なお、図2及び図3中、Pはポリアルキレンオキシド系樹脂である。
供給部20は、ポリアルキレンオキシド系樹脂をオープンヘッドドラム2に投入する。供給部20は、ノズル28と、昇降装置30とを備えている。ノズル28は、投入パイプ32と、投入パイプ32の上側に位置する連結部34とを備えている。昇降装置30は、油圧装置36と、支持バー38とを備えている。昇降装置30は、油圧装置36が用いられることにより、支持バー38が昇降するように構成されている。連結部34の上面に、支持バー38が固定されている。従って、供給部20は、ノズル28が昇降装置30によって昇降しうるように構成されている。
隔離部22は、オープンヘッドドラム2に投入されているポリアルキレンオキシド系樹脂が接触する空間を周囲から隔離する。隔離部22は、第一隔離室40と第二隔離室42と導入ライン44と排出ライン46と移送装置48とを備えている。第一隔離室40は、オープンヘッドドラム2の上側の空間を覆う。第二隔離室42は、第一隔離室40の左側に位置している。第一隔離室40と第二隔離室42との間には仕切りはない。第一隔離室40が隔離する空間と第二隔離室42が隔離する空間とは繋がっている。
第一隔離室40は、供給部20のノズル28が挿通される挿通口50と、第一隔離室40の下側に設けられるカバー52とを備えている。カバー52は、オープンヘッドドラム2の外側に位置するように配置されている。図示されていないが、このカバー52は、蛇腹状とされているので、上下方向に折り畳むことができる。これにより、カバー52の下端は上下方向に動きうる。本実施の形態に係る充填方法では、カバー52とオープンヘッドドラム2との間にリング部材54が設けられる。リング部材54は、オープンヘッドドラム2の外面に固定されている。リング部材54の外面は、カバー52の内面と接触するように構成されている。投入装置18では、隔離部22がリング部材54を備えているので、オープンヘッドドラム2に投入されているポリアルキレンオキシド系樹脂が接触する空間の気密性が高められている。
第二隔離室42は、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入時においてオープンヘッドドラム2の天ぶた8を収容する。第二隔離室42の上面には、開口部56が設けられている。開口部56から、天ぶた8が第二隔離室42に投入される。天ぶた8が第二隔離室42に収容されると、開口部56は蓋58で閉じられる。
移送装置48は、第二隔離室42の左側に位置している。この移送装置48は、油圧装置60と、移送バー62とを備えている。この移送バー62は、この油圧装置60によって左右方向に動く。この移送バー62の先端には、掴みジグ64が設けられている。この掴みジグ64は、天ぶた8を掴みうるように構成されている。この掴みジグ64は空圧で作動するチャック機構を備えている。図3に示されているように、天ぶた8の導入口12には連結部材66が用いられることにより導入バルブ68が取り付けられている。この導入バルブ68は、後述する冷却工程において用いられる。天ぶた8の排出口14には連結部材66が用いられることにより排出バルブ70が取り付けられている。排出バルブ70は、後述する冷却工程において用いられる。ポリアルキレンオキシド系樹脂がオープンヘッドドラム2に投入されているとき、この掴みジグ64はこれらの連結部材66を掴むことにより天ぶた8を保持する。
導入ライン44は、パイプである。導入ライン44は、隔離部22の上面に周知の方法で固定されている。導入ライン44を通じて、隔離部22の内側に気体が流入される。導入ライン44には、導入バルブ72が設けられている。導入バルブ72の開閉により、投入気体の流入量等が調節される。本発明では、投入工程において、導入ライン44を通じて隔離部22の内に流入される気体は投入気体と称される。
排出ライン46は、パイプである。この排出ライン46は、導入ライン44と共に隔離部22の上面に周知の方法で固定されている。隔離部22の内側に流入された投入気体は、この内側を循環しつつ、排出ライン46を通じて、隔離部22の外側に排出される。排出ライン46には、排出バルブ74が設けられている。排出バルブ74の開閉により、投入気体の排出量等が調節される。
搬送部24は、オープンヘッドドラム2を運ぶ固定台座76と、オープンヘッドドラム2を昇降する昇降台座78とを備えている。固定台座76及び昇降台座78には、移送手段としての複数本のバー80が設けられている。バー80は、前後方向に延びている。複数本のバー80は、左右方向に一列に並んでいる。バー80の上面の位置は、高さ方向において略同じである。バー80は、左右方向に回動するように構成されている。オープンヘッドドラム2は、バー80の上面に載せられる。オープンヘッドドラム2に対して左右方向の力が付与されると、バー80が回転するので、オープンヘッドドラム2は容易に左右方向に移動しうる。昇降台座78の下側には、油圧装置82が設けられている。これにより、昇降台座78は昇降する。図示されていないが、昇降台座78は、オープンヘッドドラム2の質量が計測されうるように構成されている。
操作部26は、投入装置18を動かすための制御手段を備えている。制御手段により、前述した搬送部24、供給部20及び隔離部22の動作が制御される。
投入工程では、まず、空のオープンヘッドドラム2が固定台座76を通じて昇降台座78に乗せられる。次に、オープンヘッドドラム2の上側にリング部材54が取り付けられる。次に、オープンヘッドドラム2の上側がカバー52で覆われる位置まで、昇降台座78が油圧装置82によって上方に上げられる。なお、カバー52の下端がリング部材54の下面よりも上方にある場合は、この下端がこの下面よりも下方に位置するように、油圧装置82によって昇降台座78の高さ位置が調整される。次に、第二隔離室42の開口部56からオープンヘッドドラム2の天ぶた8が投入されて、天ぶた8が第二隔離室42に収容される。天ぶた8に取り付けられている導入バルブ68及び排出バルブ70は、閉じられている。次に、開口部56に蓋58がされる。これにより、隔離部22及びオープンヘッドドラム2で囲まれる空間が、形成される。この空間は、周囲から隔離される。この明細書では、この空間は第一の空間部84と称される。
供給部20のノズル28は、第一隔離室40の挿通口50を通じて第一の空間部84に導入される。このとき、ノズル28の投入パイプ32の先端は、オープンヘッドドラム2の地板6の近傍に配置される。次に、導入バルブ72が開けられて、投入気体が第一の空間部84に流入される。これにより、第一の空間部84が投入気体で満たされる。このとき、排出バルブ74も開けられる。これにより、第一の空間部84に存在していた気体が、投入気体に置換される。このようにして、第一の空間部84は、投入気体で満たされる。
前述した脱揮工程を経た溶融状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂は、供給部20のノズル28を通じてオープンヘッドドラム2に投入される。第一の空間部84は投入気体で満たされているので、ポリアルキレンオキシド系樹脂は投入気体の雰囲気下でオープンヘッドドラム2に投入される。図2には、この時の状況が示されている。オープンヘッドドラム2内のポリアルキレンオキシド系樹脂の量が増えると、このポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の位置は上昇する。この充填方法では、この表面86の位置が上昇すると、ノズル28の下端の位置は供給部20の油圧装置36によって上げられる。オープンヘッドドラム2内のポリアルキレンオキシド系樹脂が所定の質量に達した時点で、供給部20からのポリアルキレンオキシド系樹脂の投入が止められる。例えば、その容量が200Lとされたオープンヘッドドラム2が用いられた場合、ポリアルキレンオキシド系樹脂の質量が180kgから190kgに達した時点で、このポリアルキレンオキシド系樹脂の投入が止められる。なお、この投入工程では、導入バルブ72及び排出バルブ74が開けられて第一の空間部84における投入気体が循環されつつ、ポリアルキレンオキシド系樹脂がオープンヘッドドラム2に投入されている。前述したように、リング部材54がカバー52の内面と接触するように構成されているので、オープンヘッドドラム2に投入されているポリアルキレンオキシド系樹脂が接触する空間の気密性は高い。このため、第一の空間部84が投入気体で満たされた後、導入バルブ72及び排出バルブ74が閉じられることにより投入気体の循環が止められた雰囲気で、ポリアルキレンオキシド系樹脂がオープンヘッドドラム2に投入されてもよい。
オープンヘッドドラム2へのポリアルキレンオキシド系樹脂の投入が完了すると、ノズル28が油圧装置36によって上げられる。次に、第二隔離室42に収容されている天ぶた8が移送装置48でオープンヘッドドラム2の開口部88の直上に運ばれる。天ぶた8が開口部88の直上に到達すると、掴みジクから天ぶた8が外されて開口部88が天ぶた8で塞がれる。次に、導入バルブ72が閉じられて、投入気体の流入が止められる。図3には、この時の状況が示されている。次に、ポリアルキレンオキシド系樹脂で満たされたオープンヘッドドラム2は、搬送部24を通じて、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入前にある別のオープンヘッドドラム2と交換される。これにより、投入工程は完了する。
本実施の形態に係る投入工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、投入される時点において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、(mp+10)(℃)以上300℃以下である。この温度が(mp+10)(℃)以上に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂がオープンヘッドドラム2に投入される時間が短縮される。投入時間の短縮は、生産コストの低下を招来する。この観点から、この温度は、(mp+30)(℃)以上がより好ましく、(mp+50)(℃)以上が特に好ましい。この温度が300℃以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解が抑制される。この観点から、この温度は、(mp+150)℃以下がより好ましく、(mp+130)℃以下が特に好ましい。
本実施の形態に係る投入工程では、投入気体の露点は−30℃以下である。この露点が、−30℃以下に設定されることにより、この充填方法でオープンヘッドドラム2に投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂に吸収される水分の量が抑えられる。この観点から、この露点は、−35℃以下であることがより好ましく、−40℃以下であることが特に好ましい。
本実施の形態に係る投入工程では、投入気体の酸素濃度は21体積%未満である。この酸素濃度が21体積%未満に設定されることにより、この充填方法でオープンヘッドドラム2に投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂の、分解、架橋等のような変質が抑えられる。本実施の形態に係る充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質が、安定に保持されうる。この観点から、上記酸素濃度は、10体積%以下が好ましく、1体積%以下が特に好ましい。
上記投入工程では、不活性な投入気体の雰囲気下でポリアルキレンオキシド系樹脂がオープンヘッドドラム2に投入される。この充填方法でオープンヘッドドラム2に投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂の、分解、架橋等のような変質が抑えられる。この充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質が、安定に保持されうる。不活性な投入気体としては、窒素、ヘリウム及びアルゴンが例示される。汎用性の観点から、投入気体としては窒素が好ましい。
本実施の形態に係る投入工程では、第一の空間部84に投入気体が流入されると、この空間部84の酸素濃度及び露点が計測される。この空間部84の酸素濃度及び露点がポリアルキレンオキシド系樹脂の品質に影響を与えない値に到達すると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入が開始される。投入気体の上記空間部84への流入速度は、オープンヘッドドラムの容量とオープンヘッドドラムに投入されるポリアルキレンオキシド系樹脂の質量とが考慮されて、適宜決められる。例えば、容量が200Lとされたオープンヘッドドラム2に、質量が180kgから190kgの範囲にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が投入される場合、流入速度は3L/分〜30L/分の範囲で調整される。なお、上記空間部の酸素濃度は、酸素濃度計(株式会社ガステック製の商品名「model G0A−6H」)を用いて計測される。上記空間部の露点は、露点計(永野電機産業株式会社製の商品名「DIGIPONT-II」)を用いて計測される。ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質保持の観点から、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入が開始されるときの上記空間部84の酸素濃度としては、21体積%未満が好ましく、10体積%以下が好ましく、1体積%以下が特に好ましい。上記空間部84の露点としては、−30℃以下が好ましく、−35℃以下がより好ましく、−40℃以下が特に好ましい。なお、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入が開始されるまでの時間は、調整時間と称される。
本実施の形態に係る投入工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂のオープンヘッドドラム2への投入が開始されてから完了するまでの時間は、投入時間と称される。脱揮工程を経た溶融状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂は、中間タンク等に溜められた後、ギアポンプが用いられて供給部に送液される。この投入時間は、ギアポンプの送液能力、ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度、投入工程完了時におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の品質等が考慮されて適宜決められる。なお、投入時間が長くなると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶融状態が維持されている時間も長くなる。ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶融状態が維持されている時間はポリアルキレンオキシド系樹脂の品質に影響する。この投入時間は、生産コストにも影響する。ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質及び生産性の観点から、上記投入時間は、短い方が好ましい。上記投入工程では、上記酸素濃度及び露点が管理されている投入気体で、第一の空間部84が満たされる。このため、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の充填方法では、上記投入時間がポリアルキレンオキシド系樹脂の品質等に与える影響は小さい。
本実施の形態に係る投入工程では、第一の空間部84は投入気体で満たされている。上記第一の空間部84の内圧は、投入気体の導入バルブ72と排出バルブ74とで調節される。上記内圧は、標準大気圧以上で且つ投入装置18の耐圧圧力以下とされる。標準大気圧は、1気圧、即ち、絶対圧基準で101.33kPaを意味する。上記内圧が、標準大気圧以上とされることにより、周囲から第一の空間部84への空気の浸入が効果的に抑制される。
本実施の形態に係る投入工程では、投入される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量は、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、50ppm以下が特に好ましい。投入される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が抑えられることにより、後述の輸送又は貯蔵工程における含有水分量が抑制されやすくなる。投入される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒濃度は、30質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。投入される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒濃度が抑えられることにより、後述の輸送又は貯蔵工程における危険性が低下し、各工程のコストが下がる。
なお、ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量は、前述した方法と同様にして測定されうる。
(b)冷却工程
上記投入工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂は、冷却される。ポリアルキレンオキシド系樹脂を冷却する工程が、冷却工程である。本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂の充填方法は、この冷却工程を含んでいる。
図4は、図1のオープンヘッドドラム2が本発明に係る冷却工程で用いられている状況が示された一部切り欠き側面図である。図4において、オープンヘッドドラム2の天ぶた8と胴体4とはバンド10により締め付けられている。換言すれば、このオープンヘッドドラム2の開口部は、導入口12と排出口14とを備えた天ぶた8で閉じられている。上記オープンヘッドドラム2は、前述した投入工程で投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂(図4中、Pで示されている。)で満たされている。このポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶融状態にある。前述したように、投入工程において、導入口12には、導入バルブ68が取り付けられている。排出口14には、排出バルブ70が取り付けられている。図4に示されているように、天ぶた8には、オープンヘッドドラム2の内圧を計測するために圧力計90が設けられている。本実施の形態に係る充填方法では、投入工程で開口部88を塞いだ天ぶた8は、冷却工程で引き続き使用されうるように構成されている。
導入バルブ68は、気体の導入ライン92と周知の方法で接続されている。導入ライン92は、パイプである。排出バルブ70は、気体の排出ライン94と周知の方法で接続されている。排出ライン94は、パイプである。天ぶた8には、排出口14の近傍に温度計測用の補助口96が設けられている。補助口96から温度計98がオープンヘッドドラム2の内部に入れられている。温度計98の先端は、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86に接触している。オープンヘッドドラム2の内部において、天ぶた8からポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86までの間に空間が形成されている。本明細書では、この空間は第二の空間部100と称される。ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86は、第二の空間部100に接触する。
冷却工程では、第二の空間部100に気体を流しつつ、ポリアルキレンオキシド系樹脂が冷却される。本明細書では、冷却工程で用いられる気体は冷却気体と称される。冷却気体は、導入ライン92を通じて供給される。冷却気体は、導入バルブ68が開けられることにより、導入口12から第二の空間部100に流入する。上記冷却気体は、排出バルブ70が開けられることにより、排出口14から第二の空間部100の外側に排出される。本実施の形態に係る冷却工程は、冷却気体を導入口12から第二の空間部100に流入して、冷却気体を第二の空間部100の排出口14から排出しつつ、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86を冷却する。ポリアルキレンオキシド系樹脂が冷却されて固化すると、導入バルブ68が閉じられて冷却気体の供給が止められる。これにより、冷却工程は完了する。
本実施の形態に係る充填方法では、投入工程に引き続いて冷却工程がなされる。冷却される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、融点以上である。本実施の形態に係る冷却工程では、冷却気体は導入口12から第二の空間部100に流入し続ける。上記冷却気体は、第二の空間部100を循環しつつ、排出口14から排出され続ける。このため、ポリアルキレンオキシド系樹脂が冷却して体積収縮しても、オープンヘッドドラム2の内圧は概ね一定に保持されうるように調節されうる。この冷却工程では、オープンヘッドドラム2は変形しない。
本実施の形態に係る冷却工程では、オープンヘッドドラム2の内圧は、導入バルブ68と排出バルブ70とで調節される。オープンヘッドドラム2の内圧は、標準大気圧以上で且つオープンヘッドドラム2の耐圧圧力以下とされる。標準大気圧は、1気圧、即ち、絶対圧基準で101.33kPaを意味する。上記内圧が、標準大気圧以上とされることにより、周囲から第二の空間部100への空気の浸入が効果的に抑制される。なお、冷却気体の第二の空間部100への流入速度は、3L/分〜30L/分の範囲で適宜調整される。
本実施の形態に係る冷却工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の温度はmp(℃)以下に冷却される。この表面86は、オープンヘッドドラム2に投入されているポリアルキレンオキシド系樹脂の上面であり、第二の空間部100と接する面である。ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の温度がmp(℃)以下に冷却されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の固化が促される。ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の温度が下がると、この表面86にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の分子運動が弱められるので、気体の通過が促される自由体積が減少する。このため、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86からバルク内への空気及び水分の滲入が抑えられる。ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質が安定に保持される。上記表面86の温度が充分に下げられると、ポリアルキレンオキシド系樹脂のバルク全体の温度が充分に下げられる。冷却工程の後の封入工程において、第二の空間部100に封入された気体(後述の封入気体)の温度がポリアルキレンオキシド系樹脂の余熱で上昇することはない。上記封入工程においても、オープンヘッドドラム2の内圧は変化しないので、オープンヘッドドラム2は変形しない。上記内圧が大気圧よりも下がり、オープンヘッドドラム2内に外部から空気が流入することもない。また、空気の流入よる水分の流入もない。ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が上昇することもない。これにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質は安定に保持される。
上記冷却工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質保持の観点から、冷却完了の時点において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は100℃以下であることが好ましい。この温度は、80℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましい。
上記冷却工程では、冷却気体の露点は−30℃以下であることが好ましい。冷却気体の露点が、−30℃以下に設定されることにより、本実施の形態に係る充填方法で冷却中にあるポリアルキレンオキシド系樹脂に吸収される水分の量が抑えられる。この観点から、冷却気体の露点は、−35℃以下であることがより好ましく、−40℃以下であることが特に好ましい。
上記冷却工程では、冷却気体の酸素濃度は21体積%未満である。上記酸素濃度が21体積%未満に設定されることにより、充填方法で冷却中にあるポリアルキレンオキシド系樹脂に分解、架橋等の変質が生じることがはない。上記充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質が、安定に保持されうる。この観点から、上記酸素濃度は、10体積%以下が好ましく、1体積%以下が特に好ましい。
上記冷却工程では、不活性な投入気体が流通されつつポリアルキレンオキシド系樹脂が冷却される。本実施の形態に係る充填方法で冷却中にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の、分解、架橋等のような変質が抑えられる。上記充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質が、安定に保持されうる。不活性な投入気体としては、窒素、ヘリウム及びアルゴンが例示される。汎用性の観点から、投入気体としては窒素が好ましい。
上記冷却工程では、投入工程が完了してから冷却工程が開始されるまでの期間は冷却準備期間と称される。この冷却準備期間において、次のような作業が実施される。まず、天ぶた8がバンド10で締め付けられる。次に、天ぶた8に取り付けられている導入バルブ68及び排出バルブ70の開閉状況が確認される。導入バルブ68及び排出バルブ70が閉じられていることが確認された後、隔離部22からオープンヘッドドラム2が外される。従って、この冷却準備期間には、これらの作業を完了するのに必要な時間(冷却準備時間)がかかる。この冷却準備期間においては、ポリアルキレンオキシド系樹脂は溶融状態で維持される。ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質保持の観点から、この冷却準備時間は短い方が好ましい。冷却準備時間の短縮の観点から、これらの作業は効率よく進められる。
上記冷却工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の冷却が開始されてから完了するまでの時間は、冷却時間と称される。冷却時間が長くなると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶融状態が維持されている時間も長くなる。前述したように、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶融状態が維持されている時間はポリアルキレンオキシド系樹脂の品質に影響する。上記冷却時間は、生産コストにも影響する。ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質及び生産性の観点から、上記冷却時間は、短い方が好ましい。上記冷却時間は、150時間以下であることが好ましく、100時間以下がより好ましく、75時間以下が特に好ましい。
上記冷却工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の冷却を促させるために、オープンヘッドドラム自体も冷却されうることが好ましい。具体的には、冷却工程においてオープンヘッドドラムは、室温等を調節する空調設備が設けられている部屋(例えば、倉庫)に静置されることが好ましい。これにより、このオープンヘッドドラムは、雰囲気温度の低い環境で冷却されうる。熱の滞留が防止されるために、このオープンヘッドドラムに送風機による風があてられることが好ましい。これにより、オープンヘッドドラムは効率よく冷却されうる。その下側から冷却されうるように、オープンヘッドドラムは空間を備えたパレット等に載せられてもよい。この部屋に静置されるオープンヘッドドラムは、隣接する別のオープンヘッドドラムとの間の距離が開けられて配置されることが好ましい。冷却効率を高めるために、放熱板がオープンヘッドドラムの表面に取り付けられてもよい。
上記冷却工程では、冷却される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量は、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、50ppm以下が特に好ましい。冷却される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が抑えられることにより、後述の輸送又は貯蔵工程における含有水分量が抑制されやすくなる。冷却される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒濃度は、30質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。冷却される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒濃度が抑えられることにより、後述の輸送又は貯蔵工程における危険性が低下し、各工程のコストが下がる。
上記充填方法では、上記投入工程から冷却工程に至る間において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の含有水分量は、1,000ppm以下であることが好ましい。ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が抑えられることにより、後述の輸送又は貯蔵工程における含有水分量が抑制されやすくなる。この観点から、ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面86の含有水分量は、200ppm以下がより好ましく、50ppm以下が特に好ましい。
(c)封入工程
上記冷却工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂は、オープンヘッドドラム2に封入される。ポリアルキレンオキシド系樹脂をオープンヘッドドラム2に封入する工程が、封入工程である。上記封入工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂が入れられているオープンヘッドドラム2の内の第二の空間部100に、気体が導入される。上記封入工程で用いられる気体は、封入気体と称される。上記封入工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂で満たされたオープンヘッドドラム2は、導入バルブ68及び排出バルブ70が閉じられて、ドライルームに搬入される。上記ドライルームにおいて、導入バルブ68及び排出バルブ70が調節されて、封入気体がオープンヘッドドラム2内の第二の空間部100に導入される。封入気体の導入が完了すると、導入バルブ68及び排出バルブ70は閉じられて、導入ライン92及び排出ライン94が取り外される。オープンヘッドドラム2の天ぶた8と胴体4とがバンド10で充分に締め付けられて、天ぶた8が確実に閉じられる。このようにして、オープンヘッドドラム2が加圧状態で密閉される。上記封入工程の後、ポリアルキレンオキシド系樹脂で満たされたオープンヘッドドラムは、加圧状態で輸送又は貯蔵される。
封入工程では、上記封入気体を、標準大気圧以上で且つ上記オープンヘッドドラム2の耐圧圧力以下の圧力で封入することが好ましい。標準大気圧は、1気圧、即ち、絶対圧基準で101.33kPaを意味する。オープンヘッドドラム2の内部が、標準大気圧以上の内圧とされることにより、輸送中や貯蔵中におけるオープンヘッドドラム2内部への空気の浸入が効果的に抑制される。この観点から、より好ましくは、封入工程において、封入気体は、標準大気圧を超え且つ上記オープンヘッドドラム2の耐圧圧力以下の圧力で封入されることが好ましい。標準大気圧を超える内圧で気体を封入するためには、周知のバルブや逆止弁等が用いられうる。
上記封入工程では、封入気体の露点は−30℃以下である。封入気体の露点が、−30℃以下に設定されることにより、上記充填方法でオープンヘッドドラム2に投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂に吸収される水分の量が抑えられる。この観点から、封入気体の露点は、−35℃以下であることがより好ましく、−40℃以下であることが特に好ましい。
上記封入工程では、封入気体は不活性な気体であることが好ましい。この充填方法でオープンヘッドドラム2に投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂の、分解、架橋等のような変質が抑えられる。この充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質が、安定に保持されうる。上記封入気体としては、窒素、ヘリウム及びアルゴンが例示される。汎用性の観点から、封入気体としては窒素が好ましい。
上記封入工程では、天ぶた8が、導入口12、排出口14等がない天ぶたに変えられてもよい。この場合、ドライルームにおいて天ぶた8が取り外されて、導入口12、排出口14等がない天ぶたに変えられる。従って、オープンヘッドドラム2内の第二の空間部100にはドライルーム内の乾燥空気が封入される。オープンヘッドドラムの内圧は、標準大気圧となる。上記乾燥空気は、21体積%の酸素を含んでいる。オープンヘッドドラムにあるポリアルキレンオキシド系樹脂は融点以下に冷却されているので、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂が、乾燥空気に含まれている酸素によって変質することはない。天ぶた8が導入口12、排出口14等がない天ぶたに変えられるので、上記天ぶた8は上述の投入工程及び冷却工程において再利用できる。上記封入工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂で満たされたオープンヘッドドラムは、導入口12、排出口14等がない天ぶたで密閉された状態で、輸送又は貯蔵されうる。
本実施の形態に係る充填方法では、気密性の高いオープンヘッドドラム2が用いられているので、上記第二の空間部100に封入された気体の露点を、−30℃以下に維持したまま、上記オープンヘッドドラム2の輸送又は貯蔵がなされうる。より好ましくは、上記第二の空間部100に封入された気体の露点を、−60℃以下に維持したまま、上記オープンヘッドドラム2の輸送又は貯蔵がなされることがよい。前述した封入工程の直後において、オープンヘッドドラム2内の空間部100に存在する気体の露点は、導入気体のそれと同一である。時間の経過とともに、オープンヘッドドラム2の内部のポリアルキレンオキシド系樹脂と、空間部100に存在する気体との間で、水分が移動し、やがて、水分の移動は平衡に達する。この平衡状態において、空間部100に存在する気体の露点が−30℃以下とされる。
上記重合工程の後に続く工程において、酸化による分解、架橋等のような変質を防止するために、上記重合工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂に、微量の酸化防止剤が添加される場合がある。上記酸化防止剤は、ポリアルキレンオキシド系樹脂が酸化される前に自らが酸化されることによりポリアルキレンオキシド系樹脂の酸化を防ぐ。前述したように、この充填方法では、投入工程が不活性な投入気体の雰囲気下で実施される。冷却工程においても不活性な冷却気体の雰囲気下で実施される。このため、上記充填方法では、上記酸化防止剤の酸化も抑えられている。これにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質は安定に保持される上に、添加される酸化防止剤の量も低減されうる。ポリアルキレンオキシド系樹脂の生産コストの低減が図れる。
ポリアルキレンオキシド系樹脂に添加される酸化防止剤としては、フェノール系の酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びリン酸系酸化防止剤が例示される。フェノール系の酸化防止剤としては、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−ジ第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’、5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及びトリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]が例示される。アミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン類、ジナフチルアミン類、ジフェニルフェニレンジアミン類及びフェノチアジン類が例示される。リン酸系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイトが例示される。これらの酸化防止剤のうち、一種のみが用いられてもよい。2種以上が、組み合わされて用いられてもよい。
<輸送工程又は貯蔵工程>
封入工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂は、輸送工程又は貯蔵工程に供される。輸送又は貯蔵工程において、ポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる溶媒濃度は30質量%以下とされることが好ましい。更に、輸送又は貯蔵工程において、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が1,000ppm以下とされることが好ましい。更には、輸送又は貯蔵工程において、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が600ppm以下とされることがより好ましく、400ppm以下とされることがさらに好ましく、200ppm以下とされることが特に好ましい。
本発明の充填方法に含まれる投入工程によれば、オープンヘッドドラム2に投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分量が抑えられつつ、このポリアルキレンオキシド系樹脂の変質も抑制されうる。この充填方法に含まれる冷却工程によれば、オープンヘッドドラム2に変形が生じることなくポリアルキレンオキシド系樹脂が冷却されうる。冷却されたポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分量が抑えられつつ、ポリアルキレンオキシド系樹脂の変質も抑制されうる。気密性の高いオープンヘッドドラム2が用いられているので、封入工程で露点の低い導入気体が封入されることにより、輸送又は貯蔵工程におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量も抑えうる。
<抜出工程>
本発明の製造方法においては、脱揮後のポリアルキレンオキシド系樹脂は、例えば、200Lのオープンドラムに充填され、室温まで十分に冷却される。完全に固化した状態で充填されたポリアルキレンオキシド系樹脂は、メルターを用いて溶解タンクへ送液され、成形工程へ付されるか、又は、調整工程へ付される。使用されるメルターとして、例えば、バルクメルターBMシリーズ(製品名:BM200、ノードソン(株)製)、ドラムメルターFSシリーズ(製品名:FS、(株)ファスト製)、ドラムメルター(松下工業(株)製)、メルターPUシリーズ((株)サンツール製)等が挙げられ、いずれもヒーター内蔵プラテン、ポンプ及び昇降機を組み合わせたものである。
図5は、メルターにより、オープンドラムからポリアルキレンオキシド系樹脂が抜き出される状態を示す一部切欠斜視図である。メルターは、円柱状のプラテン101を備える。プラテン101は、ポンプ102及びヒーター(図示せず)を内蔵する。プラテン101の中央部にはプラテン連結部103が連結されている。ポンプ102の表面側端部には、逆L字型の液吐出部104が設けられており、液吐出部104の端部には、送液管105が接続されている。
プラテン101としては、裏面に、放射状に軸が並設されたアクシアルプラテン、滑らかな面を有するスムースプラテン、及び径方向に縦板が並設されたフィンプラテン等が挙げられる。
ポンプ102のタイプとして、ジローターポンプ、ピストンポンプ及びスパーギヤポンプが挙げられるが、剪断、剪断熱が材料にかかりにくく、また、高粘度材料の吐出に適しているという観点から、ジローターポンプ及びピストンポンプが好ましい。
オープンドラム108には、固体状のポリアルキレンオキシド系樹脂107が入っている。メルターの油圧部(図示せず)によりプラテン101が駆動されて、プラテン101がポリアルキレンオキシド系樹脂107に当接され、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が押圧されつつ、プラテン101に内蔵されたヒーターにより加熱される。この加熱によりポリアルキレンオキシド系樹脂107の上面が溶融して、溶融層106が生じる。加熱温度は、ポリアルキレンオキシド系樹脂107の溶融温度以上300℃以下とされる。加熱温度がポリアルキレンオキシド系樹脂107の溶融温度未満である場合、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が液吐出部104から吐出出来ない。加熱温度が300℃を超える場合、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が分解したり劣化する。生じた溶融層106は、ポンプ102内へ送り込まれ、液吐出部104から送液管105を介して溶解タンクへ送液される。
本発明に係る上記工程によれば、ポリアルキレンオキシド系樹脂107を表面から必要量だけ溶かして抜き出すことが出来るので、熱に晒される時間が少なくてすみ、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が劣化することが抑制される。また、上記脱揮工程の後、粉末状又はペレット状ではなく、バルクの状態で、次工程が実施される場所へ輸送された上で抜き出しされるので、輸送中に、熱により樹脂が融着することがない。そして、樹脂を溶媒に溶解させることなく、輸送することが出来るので、作業性及び安全性が良好になり、コストダウンも図られる。
また、抜き出す際の作業性をさらに高める目的で、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が充填されたオープンドラム108を、事前に、昇温された倉庫内や水浴中で保持してポリアルキレンオキシド系樹脂107を加温したり、抜き出し時に、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が充填されたオープンドラム108の側面側からもヒーターやジャケット等により直接的又は間接的に加熱することにしてもよい。加温の方法は特に限定されるものではなく、上記加温方法の1種又は2種以上の組み合わせが選択され得る。
そして、抜き出す際のポリアルキレンオキシド系樹脂107の吸湿及び分解を抑制する効果をさらに高める目的で、ポリアルキレンオキシド系樹脂107が充填されたオープンドラム108を、事前に、気密性のある包囲物で覆い、その雰囲気を、大気から、乾燥空気及び/又は乾燥窒素に十分に置換した後に、抜き出し作業を行うことにしてもよい。
<溶解工程>
ポリアルキレンオキシド系樹脂がコーティング材料として用いられる場合、抜出工程により抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶解工程により溶媒に溶解される。
図6は、抜出工程に続く溶解工程を行う装置の概略構成図である。バルクメルターにより抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂の入った中間タンク容器210が、加熱体212により加熱される。加熱体212は、例えばオイル等が導通される金属管である。加熱され溶融されたポリアルキレンオキシド系樹脂が、送液管214を経由して溶解槽216に送液される。ギアポンプ218により、ポリアルキレンオキシド系樹脂の供給速度が調整されうる。なお、装置の各所には、送液や内圧を制御する等の目的で、バルブ220が設けられている。
なお、上記抜出工程は、図5の実施形態に限定されない。ただし、特にオープンドラムからポリアルキレンオキシド系樹脂を抜き出す場合は、図5により説明された上記抜出工程が好ましい。
送液管214は、溶解槽216内にまで配管されている。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、送液管214を経由して、溶解槽216内に供給される。溶解槽216には、溶媒222が貯留されている。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶媒222に供給される。
溶解槽216内に供給されるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、(mp+10)℃以上とされている。このポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、溶媒222内に浸入する瞬間の温度である。一方、溶解槽216の系内温度は、mp(℃)以上とされている。系内温度とは、溶解工程中における溶解槽216内の溶液224の温度である。ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度が(mp+10)℃以上とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒に対する溶解速度が向上しうる。系内温度がmp(℃)以上とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒に対する溶解速度が向上しうる。溶解工程が開始される直前における溶解槽216内の溶媒222の温度は、系内温度と同様に設定される。
好ましくは、溶解槽216内に供給されるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、(mp+10)℃以上で且つ300℃以下とされる。この温度が300℃以下とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解が抑制される。溶解速度を向上させる観点から、溶解槽216内に供給されるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、(mp+58)℃以上とされることがより好ましい。また、好ましくは、溶解槽216の系内温度は、(mp)℃以上とされる。系内温度が(mp)℃以上とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶解速度が更に向上しうる。溶解速度を向上させる観点から、系内温度が(mp+9)℃以上とされることがより好ましい。また、好ましくは、系内温度は、300℃以下とされる。系内温度が300℃以下とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解が抑制される。
溶解速度を向上させるため、溶解槽216内の溶液224は、撹拌されることが好ましい。撹拌は、ポリアルキレンオキシド系樹脂の供給と同時になされてもよく、ポリアルキレンオキシド系樹脂の供給後になされてもよい。図6に示す実施形態では、溶解槽216内に、撹拌翼226が設置されている。撹拌翼226は、モータ228により回転する。撹拌翼226の種類は特に限定されず、アンカー翼、ヘリカルリボン翼、ダブルヘリカルリボン翼、ドラフトチューブ付きヘリカルスクリュー翼、スーパーブレンド翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパーミックス翼、サンメーラ翼、ねじり格子翼、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、ブルマージン翼、プロペラ翼等が例示される。
溶解槽216内には、撹拌翼226に加え、邪魔板230が設けられている。邪魔板230により、撹拌される流体(即ち溶液224)に乱れが生じ、撹拌効率が高められうる。
上記溶解工程では、上記溶解槽内の溶液が0.1(kW/m3)以上の撹拌動力(PV)で撹拌されることが好ましい。撹拌動力(PV)が0.1(kW/m3)以上とされることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶解速度が高まる。
撹拌動力(PV)とは、撹拌されるものの単位液量当たりの所要動力である。より詳細には、撹拌動力(PV)は、内容物の容量及び粘度、反応器形状、撹拌翼の形状及び回転数などから算出される、内容物の単位液量あたりの所要動力のことである。また、撹拌動力(PV)の値は、攪拌機の回転数が同じ場合、樹脂の濃度により異なる為、ここでは、便宜上、樹脂濃度0質量%の場合での値で示す。
撹拌動力(PV)は、通常の化学工学で用いる式により求められる。この求め方は、例えば、化学工学便覧(改訂三版;化学工学会編、丸善株式会社発行)の第1078頁〜第1082頁に記載されている。
溶解工程において、溶解槽216は、加熱手段により加熱されている。加熱手段は特に限定されない。図6で示される実施形態では、溶解槽216は液体浴232により加熱されている。液体浴232として、湯浴(ホットウォーターバス)や油浴(オイルバス)が例示される。この加熱により、系内温度が上述された温度に維持されうる。
図6で示される実施形態では、溶解工程において、溶媒222が還流されている。溶媒222は、コンデンサー(冷却器又は凝縮器)234により還流されている。液体浴232の設定温度は、溶媒222の沸点よりも高くされている。還流により、系内温度は、溶媒222の沸点近傍の温度で維持されている。
溶解工程において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入位置は特に限定されない。ただし、投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂が撹拌翼に巻き付くことを防止して溶解速度を向上させる観点から、ポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶解槽の内壁に這わせつつ投入(供給)されることが好ましい。
ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入方法は、一括投入でもよく、逐次投入(連続的投入及び/又は間欠的投入)でもよい。また、ポリマー溶液に、他の成分を溶解又は添加することもできる。この他の成分の投入時期は、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入の前でもよく、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入の後でもよく、ポリアルキレンオキシド系樹脂の投入と同時でもよい。
本実施形態の製造方法により、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶解速度が高まる。よって、バルク状態のポリアルキレンオキシド系樹脂が効率よく溶解されうる。
なお、溶解工程により得られた溶液の利用形態の一例について以下に説明する。例えばコーティング材料に用いられる場合、得られた溶液は、被着材上に、塗布機、例えばフローコーター、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアロール、ホットメルトアプリケーター等によって塗布される。フローコーターは、コーティング材料を一定幅のスリット(ダイ)から一定量流下させ、その下を被着材を移動させて塗布するように構成されており、ロールコーターは、パンに入れられているコーティング材料をロールにより巻き上げ、被着材に転写するように構成されている。ナイフコーターは、ロール、浸漬等により、被着材に塗布されたコーティング材料をドクターナイフ、エアーナイフ等により削ぎ落として一定の厚みに調製できるように構成されており、グラビアロールは、凹版を用い、被着材にコーティング材料を転写するように構成されており、ホットメルトアプリケーターは、溶融させられたコーティング材料を吐出するように構成されている。塗布されたポリアルキレンオキシド系樹脂の溶液の薄膜は、溶媒の沸点以上に加熱された加熱帯を通過させられ、溶媒が除去されて固化される。以上のようにして、基材上に十数μmから数百μmまでの厚みを有するポリアルキレンオキシド系樹脂の薄膜が得られる。本発明のこの工程によれば、上記抜出工程により抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂が、作業性良好に、コーティング材料とされ、被着材に塗布される。
<成型工程>
ポリアルキレンオキシド系樹脂が成形される場合、抜出工程により、送液管105を介して溶解タンクへ送液されたポリアルキレンオキシド系樹脂は、まず、このポリアルキレンオキシド系樹脂の融点以上で、かつポリアルキレンオキシド系樹脂の分解温度以下である温度に加温され、溶融流動状態とされる。そして、後述する送液工程により押出し機へ一定速度で送液される。
ポリアルキレンオキシド系樹脂以外の添加物や添加剤がサイドフィルターから供給され、混練されて均質化され、ギアポンプを介して、又は介さずに、ダイから連続的に押し出されて、所定の断面形状を有する長尺成形品が得られる。この押出し成形により、パイプ状、棒状、異型押出し品状、フィルム状、シート状等の製品が得られる。押出し機としては、非スクリュー押出し機、単軸スクリュー押出し機、二軸スクリュー押出し機等が挙げられる。本実施の形態に係る成型工程によれば、押出し機において、樹脂の溶融ゾーンが不要となるため、押出し機のL/Dを小さくすることが出来、不要になったゾーンを他の添加剤等の均質化に用いることが出来る等、効率良く押出しをすることが可能になり、また、樹脂を溶融状態で押出し機へ供給することが出来るので、ペレット状で供給する場合のように脈流が生じず、安定した押出しが可能になり、上記抜出工程により抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂が、作業性良好に、成形され得る。
<送液工程>
上述したように、ポリアルキレンオキシド系樹脂に所定の添加剤が添加されて、ポリアルキレンオキシド系樹脂が所定の断面形状を有する長尺成形品に加工される場合がある。このようなポリアルキレンオキシド系樹脂の成形には、単軸型押出機及び二軸型押出機のような混合機が用いられる。この混合機への樹脂の供給には、ホッパー、フィーダー等で構成される供給設備が用いられる。前述したように、ポリアルキレンオキシド系樹脂は、化学構造的に加熱に対して非常に弱いという特性を有する。特に、その融点が0℃から60℃の範囲にあるポリアルキレンオキシド系樹脂は、人の体温付近の温度領域において粘着を示す。この供給設備を用いて、粉末状又はペレット状のポリアルキレンオキシド系樹脂を混合機に供給すると、このポリアルキレンオキシド系樹脂がホッパーの内壁に付着して、この供給設備が樹脂の供給量を一定に保持することが困難になる場合がある。この場合、樹脂の供給量が不安定であるので、成形品における添加剤の組成が不均一となり、成形品の品質が低下する。フィーダーを構成するスクリューとの摩擦で溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂がフィーダーを構成する外套とスクリューとの間に融着して、目詰まりが発生する場合がある。この場合、樹脂の供給ができなくなるので、成形品の生産が止まってしまう。
本発明に係る送液工程では、以下に説明するように、ポリアルキレンオキシド系樹脂を混合機に安定に供給することができる。
図7は、本発明に係る送液工程で用いられる送液手段316が示された概略構成図である。送液手段316は、ポリアルキレンオキシド系樹脂を混合機318に供給する。送液手段316は、溶融槽320と、ポンプ322と、溶融槽320とポンプ322とを繋ぐ第一の送液ライン324と、ポンプ322と混合機318とを繋ぐ第二の送液ライン326とを備えている。図7に示されているように、この混合機318は、ポリアルキレンオキシド系樹脂に添加剤が添加されうるための添加剤供給手段328を備えている。
溶融槽320は、溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂を収容する。溶融槽320は、本体330と、第一導入口332と、第一排出口334と、第二導入口336と、第二排出口338と、第一温度調整手段としての加熱体340とを備えている。本体330は、いわゆるタンクである。本体330の内部は、周囲から隔離されている。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、本体330の内部に収容される。第一導入口332には、第一導入バルブ342が設けられている。第一導入バルブ342には、第一導入ライン344が接続される。第一導入ライン344がメルターの液吐出部104に接続される。溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂は第一導入ライン344を流れて、第一導入口332から本体330に投入される。第一排出口334は、本体330の底に設けられている。第一排出口334には、第一排出バルブ346が設けられている。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、第一排出バルブ346が開けられることにより、第一排出口334を通じて本体330から排出される。
溶融槽320は、本体30の内部に気体が流入しうるように構成されている。換言すれば、溶融槽320は、気体が充填されることにより圧力が高められるように構成されている。本体330の内部において、上記気体はポリアルキレンオキシド系樹脂の表面と本体330の内面との間に形成される空間を満たす。第二導入口336には、第二導入バルブ348が設けられている。第二導入バルブ348には、第二導入ライン350が接続される。上記気体は、第二導入ライン350を流れる。第二導入バルブ348が開けられることにより、上記気体は第二導入口336から本体330の内部に流入される。第二排出口338には、圧力計352及び第二排出バルブ354が設けられている。第二排出バルブ354が開けられることにより、本体330の内部にある気体が第二排出口338から排出される。圧力計352は、本体330の内部に気体が充填されたときの溶融槽320内の圧力を表示する。加熱体340は、金属管からなる。この金属管には、温度が調整されたオイル等の熱媒が導通される。加熱体340は、本体330の内部にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整する。これにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶融状態が維持されうる。
ポンプ322は、溶融槽320に収容されているポリアルキレンオキシド系樹脂を混合機318に送液する。ポンプ322は、回転ポンプ322である。図示されていないが、ポンプ322は、本体(ケーシング)と2個の歯車からなる回転子(ギア)とを備えている。ポンプ322は、これらの回転子(ギア)と本体(ケーシング)との間の空間部にあるポリアルキレンオキシド系樹脂を押し出すことによってこのポリアルキレンオキシド系樹脂を送液する。ポンプ322では、脈動を生じることなくポリアルキレンオキシド系樹脂が送液されうる。ポンプ322では、回転子のシャフトの回転速度に応じて単位時間当たりの吐出質量が変えられる。このようなポンプ322は、ギアポンプと称される。このポンプ322に、その回転子がスクリューからなるスクリューポンプが用いられてもよい。このポンプ322の構成及び仕様は、混合機の仕様が考慮されて適宜決められる。
ポンプ322は、ポンプ322内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整するために第二温度調整手段としての第一のバンドヒーター356を備えている。この第二温度調節手段が、プレート型ヒーターとされてもよい。ポンプ322は、第一のバンドヒーター356で巻かれている。図示されていないが、第一のバンドヒーター356は、サーモスタットと連動している。これにより、ポンプ322は所定の温度で一定に保持されうる。なお、ポンプ322の温度を一定に保持するために、第一のバンドヒーター356で巻かれることなく、ポンプ322が、恒温槽の内部のように温度が調整された環境に静置されてもよい。ポンプ322が、ジャケットタイプの第二温度調整手段を備えてもよい。
第一の送液ライン324は、パイプである。第一の送液ライン324は、第一排出バルブ346に繋げられている。第一排出バルブ346が開けられると、ポリアルキレンオキシド系樹脂は第一の送液ライン324を溶融タンクからポンプ322に向かって流れる。第一の送液ライン324は、第一の送液ライン324を流れるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整する第二のバンドヒーター358を備えている。図示されていないが、第二のバンドヒーター358は、第一の送液ライン324を一定の温度で保持するために、サーモスタットと連動している。第一の送液ライン324が、オイル等のような熱媒が流れる金属管で螺旋状に巻かれてもよい。第一の送液ライン324が、二重管とされて、外側に位置する配管内を熱媒が流れるように構成されてもよい。この場合、熱媒の温度が調整されることにより、この送液ラインの温度が調整されうる。なお、予め、溶融槽320の内の圧力は、標準大気圧以上に高められている。これにより、第一排出バルブ346が開けられると、溶融槽320からポンプ322に向かうポリアルキレンオキシド系樹脂の流れが加速される。この送液手段では、溶融槽320内の圧力によりポリアルキレンオキシド系樹脂の流れが加速されることが重要である。一旦、ポリアルキレンオキシド系樹脂がポンプ322に入ると、ポンプ322のポリアルキレンオキシド系樹脂を押し出す能力により、溶融槽320内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が順次ポンプ322に送液される。
第二の送液ライン326は、パイプである。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、この第二の送液ライン326をポンプ322から混合機318に向かって流れる。この第二の送液ライン326の混合機318側の端360は、混合機318の供給口362に配置される。この端360から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂が、混合機318に投入される。第二の送液ライン326は、第二の送液ライン326を流れるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整する第三のバンドヒーター364を備えている。図示されていないが、第三のバンドヒーター364は、第二の送液ライン326を一定の温度で保持するために、サーモスタットと連動している。第二の送液ライン326が、オイル等のような熱媒が流れる金属管で螺旋状に巻かれてもよい。第二の送液ライン326が、二重管とされて、外側に位置する配管内を熱媒が流れるように構成されてもよい。この場合、熱媒の温度が調整されることにより、この送液ラインの温度が調整されうる。なお、本明細書では、第三のバンドヒーター364及び前述した第二のバンドヒーター358が、第一の送液ライン324及び第二の送液ライン326からなる送液ラインにあるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調節する第三の温度調整手段である。
混合機318は、ポリアルキレンオキシド系樹脂に添加剤を混合する際に用いる装置である。混合機318としては、特に限定されるわけではないが、撹拌槽蒸発器、下流液柱蒸発器、薄膜蒸発器、表面更新型重合器、ニーダー、ロールミキサー、インテンシブミキサー(いわゆるバンバリーミキサー)、押出機等が好ましく挙げられ、これら装置のうち少なくとも1つの装置を用いて行うことが好ましい。また、用いる装置によって適宜使用条件を設定することができる。下流液柱蒸発器としては、多管式熱交換器型(例えば、製品名:スルザーミキサー、住友重機械工業(株)製;製品名:スタテックミキサー、ノリタケ社製)、プレート熱交換器型(例えば、製品名:Hiviscous Evaporator、三井造船(株)製)等が好ましく挙げられる。表面更新型重合器(横型薄膜重合器)は、気液表面の更新によって高い脱揮性能を示す点で優れており、例えば、単軸型表面更新型重合器、二軸型表面更新型重合器(例えば、製品名:バイボラック、住友重機械工業(株)製;製品名:日立メガネ翼重合機、(株)日立製作所製;製品名:日立格子翼重合機、(株)日立製作所製;製品名:SCプロセッサ、栗本鉄工所社製)等が好ましく挙げられる。
押出機は、高粘度融体等の混合に適し、付加機能として加熱、溶融、混練とともに脱揮能力を備えるものであり、例えば、単軸型押出機、二軸型押出機(例えば、製品名:SUPERTEXαII、日本製鋼所製;製品名:BT−30−S2、プラスティック工学研究所製)、SCRセルフクリーニング式リアクター(三菱重工(株)製)等が好ましく挙げられる。ニーダー、ロールミキサー及びインテンシブミキサー(所謂、バンバリーミキサー)は、押出機と同様、高粘度融体等の混合に適し、付加機能として脱揮能力を備えるものである。これらは、バッチ式での処理及び連続式での処理が可能である。好ましい混合機318としては、特に限定はされないが、二軸型表面更新型重合機、ニーダー及び二軸型押出機が挙げられる。
本実施の形態に係る送液工程では、溶融槽320の温度は加熱体340で調節される。これにより、溶融槽320内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の温度が調整される。第二導入バルブ348及び第二排出バルブ354が開けられて、溶融槽320の本体330の内部が、気体で置換される。第二導入バルブ348及び第二排出バルブ354の開閉状態が調節されて、溶融槽320の内の圧力が調整される。溶融槽320の温度及び溶融槽320の内の圧力が所定の値で保持されていることが確認された時点で、第一排出バルブ346が開けられるとともに、ポンプ322が稼働されて溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂の混合機318への供給が開始される。所定量の成形品が得られると、ポンプ322が止められて送液工程は完了する。
本実施の形態に係る送液工程では、溶融槽320の内の圧力(以下、圧力P)は、標準大気圧以上で且つ溶融槽320の耐圧圧力以下とされることが好ましい。なお、標準大気圧は、1気圧、即ち、絶対圧基準で101.33kPaを意味する。圧力Pが標準大気圧以上とされることにより、溶融槽320の内への空気の浸入が効果的に抑制される。
上記送液工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、溶融槽320の温度(以下、温度T1)は、(mp+10)℃以上300℃以下とされることが好ましい。この温度T1が(mp+10)℃以上とされることにより、溶融槽320の内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が溶融状態を保持しうる。温度T1が高められると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の粘度は下がる。これにより、単位時間当たりにポンプ322から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の吐出質量を上げることができる。低粘度なポリアルキレンオキシド系樹脂は、生産コストの低下を招来する。この観点から、温度T1は(mp+30)(℃)以上がより好ましく、(mp+50)(℃)以上が特に好ましい。温度T1が300℃以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解、架橋等のような変質が抑制される。この観点から、この温度は、(mp+150)℃以下がより好ましく、(mp+130)℃以下が特に好ましい。なお、図示されていないが、温度T1は、溶融槽320の本体330の、ポリアルキレンオキシド系樹脂に接する内面に近い位置で計測される。
上記送液工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、第一の送液ライン324の温度(以下、温度T2)は、(mp+10)℃以上300℃以下とされることが好ましい。温度T2が(mp+10)℃以上とされることにより、第一の送液ライン324の内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が溶融状態を保持しうる。温度T2が高められると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の粘度は下がる。これにより、単位時間当たりにポンプ322から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の吐出質量を上げることができる。低粘度なポリアルキレンオキシド系樹脂は、生産コストの低下を招来する。この観点から、温度T2は(mp+30)(℃)以上がより好ましく、(mp+50)(℃)以上が特に好ましい。温度T2が300℃以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解、架橋等のような変質が抑制される。この観点から、温度T2は、(mp+150)℃以下がより好ましく、(mp+130)℃以下が特に好ましい。なお、図示されていないが、温度T2は、第一の送液ライン324の、ポリアルキレンオキシド系樹脂に接する内面に近い位置で計測される。
上記送液工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、ポンプ322の温度(以下、温度T3)は、(mp+10)℃以上300℃以下とされることが好ましい。温度T3が(mp+10)℃以上とされることにより、ポンプ322内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が溶融状態を保持しうる。温度T3が高められると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の粘度は下がる。これにより、単位時間当たりにポンプ22から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の吐出質量を上げることができる。低粘度なポリアルキレンオキシド系樹脂は、生産コストの低下を招来する。この観点から、温度T3は(mp+30)(℃)以上がより好ましく、(mp+50)(℃)以上が特に好ましい。温度T3が300℃以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解、架橋等のような変質が抑制される。この観点から、温度T3は、(mp+150)℃以下がより好ましく、(mp+130)℃以下が特に好ましい。なお、図示されていないが、温度T3は、ポンプ322の、ポリアルキレンオキシド系樹脂に接する内面に近い位置で計測される。
上記送液工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、第二の送液ライン326の温度(以下、温度T4)は、(mp+10)℃以上300℃以下とされることが好ましい。温度T4が(mp+10)℃以上とされることにより、第二の送液ライン326内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が溶融状態を保持しうる。温度T4が高められると、ポリアルキレンオキシド系樹脂の粘度は下がる。これにより、単位時間当たりにポンプ322から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の吐出質量を上げることができる。低粘度なポリアルキレンオキシド系樹脂は、生産コストの低下を招来する。この観点から、温度T4は(mp+30)(℃)以上がより好ましく、(mp+50)(℃)以上が特に好ましい。温度T4が300℃以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解、架橋等のような変質が抑制される。この観点から、温度T4は、(mp+150)℃以下がより好ましく、(mp+130)℃以下が特に好ましい。なお、図示されていないが、温度T4は、第二の送液ライン326の、ポリアルキレンオキシド系樹脂に接する内面に近い位置で計測される。
上記送液工程では、送液工程の開始から完了までの間において、圧力P、温度T1、温度T2、温度T3及び温度T4は、略一定に保持される。このため、上記送液手段316の内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の粘度プロファイルは、安定に保持される。従って、ポンプ322のシャフトの回転数(回転数R)が調節されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の吐出質量が効果的に調整されうる。これにより、単位時間当たりの、溶融槽320からポンプ322に供給されるポリアルキレンオキシド系樹脂の質量と、単位時間当たりの、ポンプ322から混合機318に供給されるポリアルキレンオキシド系樹脂の質量との均衡が適切に維持されうる。このような送液手段316が用いられることにより、溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂は安定に混合機318に供給されうる。このため、ポリアルキレンオキシド系樹脂が所定の断面形状を有する長尺成形品に加工される場合において、寸法安定性に優れる成形品が得られうる。特に、ポリアルキレンオキシド系樹脂に所定の添加剤が添加されて、ポリアルキレンオキシド系樹脂が成形される場合において、上記添加剤が均一な組成で分散している成形品が得られうる。
上記送液工程では、ポンプ322から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の単位時間当たりの吐出質量の振れ精度Fは、この吐出質量の平均値A及びこの吐出質量の標準偏差σを用い、下記数式(I)
F=3×σ/A×100 …(I)
で示される。なお、平均値Aは、A1、A2、・・・、Anからなるn個の吐出質量のデータを用い、下記数式(II)
で示される。標準偏差σは、下記数式(III)
で示される。振れ精度Fの信頼性向上の観点から、このデータの個数nは多い方が好ましい。この個数nは5以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。本明細書では、後述するように、この個数nは10である。
上記送液工程では、振れ精度Fは6%以下である。振れ精度が6%以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂は混合機318に安定に供給される。このため、ポリアルキレンオキシド系樹脂が所定の断面形状を有する長尺成形品に加工される場合において、寸法安定性に優れる成形品が得られうる。特に、ポリアルキレンオキシド系樹脂に所定の添加剤が添加されて、ポリアルキレンオキシド系樹脂が成形される場合において、該添加剤が均一に分散している成形品が得られうる。送液手段316が用いられることにより、高品質な成形品が得られる。この観点から、振れ精度Fは5%以下がより好ましく、4%以下が好ましい。
吐出質量の平均値A及び吐出質量の標準偏差σは、以下の方法で得られる。まず、第二の送液ライン326から30秒の間に吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の質量が計10回計測される。この吐出質量の計測値に基づいて、ポンプ322から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の単位時間当たりの吐出質量が求められる。この10個の計測データから、吐出質量の平均値A及び吐出質量の標準偏差σが求められる。
上記送液工程では、振れ精度Fは、圧力P、回転数R、温度T1、温度T2、温度T3及び温度T4で管理されうる。具体的には、送液工程の開始から完了までの間において、圧力P、回転数R、温度T1、温度T2、温度T3及び温度T4の変動幅が小さくなるように調節される。
上記送液工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、(mp+10)℃以上300℃以下とされることが好ましい。このポリアルキレンオキシド系樹脂の温度は、第二の送液ライン326から混合機318に投入される瞬間の温度である。ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度が(mp+10)℃以上とされることにより、この送液工程に続いて実施される成形工程において、混合機318の負荷が効果的に低減される。この観点から、上記温度は(mp+30)(℃)以上がより好ましく、(mp+50)(℃)以上が特に好ましい。上記温度が300℃以下に設定されることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の分解、架橋等のような変質が抑制される。この観点から、上記温度は、(mp+150)℃以下がより好ましく、(mp+130)℃以下が特に好ましい。
上記送液工程では、温度T1、温度T2、温度T3及び温度T4により構成される送液手段316の温度プロファイルにおいて、温度T1及び温度T2は同じ温度であることが好ましい。温度T1及び温度T2は、ポリアルキレンオキシド系樹脂が分解等の変質を起こすことなくこのポリアルキレンオキシド系樹脂が送液されうる温度範囲で、極力低い温度に設定されることが好ましい。この観点から、上記温度T1及び温度T2は、70℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上記温度T1及び温度T2は、130℃以下がより好ましく、110℃以下が特に好ましい。上記温度T3及び温度T4は、同じ温度であることが好ましい。上記温度T3及び温度T4は、混合機318の混合温度と同じでありかつポリアルキレンオキシド系樹脂が分解等の変質を起こさない温度範囲で極力高い温度に設定されることが好ましい。この観点から、温度T3及び温度T4は、110℃以上がより好ましく、130℃以上が特に好ましい。温度T3及び温度T4は、170℃以下がより好ましく、150℃以下が特に好ましい。送液工程では、温度T3及び温度T4は、温度T1及び温度T2よりも高い温度であることが好ましい。この観点から、温度T1及び温度T2と、温度T3及び温度T4との間の差は、混合機318で設定される混合条件に応じて適宜決められる。
上記送液工程では、溶融槽320にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量は、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、50ppm以下が特に好ましい。投入される時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が抑えられることにより、混合機318で成形された成形品の含有水分量が抑制されやすくなる。
上記送液工程では、気体の酸素濃度は、21体積%未満であることが好ましい。この酸素濃度が21体積%未満に設定されることにより、オープンヘッドドラムの内で冷却されるポリアルキレンオキシド系樹脂の、分解、架橋等のような変質が防止されうる。ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質は、安定に保持されうる。この観点から、上記酸素濃度は、10体積%以下がより好ましく、1体積%以下が特に好ましい。
上記送液工程では、気体の露点は−30℃以下であることが好ましい。より好ましくは、気体の露点は、−50℃以下とされる。更に好ましくは、気体の露点は、−60℃以下とされる。気体の露点を低くすることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂に吸収される水分量を抑えることができる。
上記送液工程に用いられる不活性な気体としては、窒素、ヘリウム及びアルゴンが例示される。汎用性の観点から、上記気体としては窒素が好ましい。このような気体が用いられることにより、溶融槽320の内にあるポリアルキレンオキシド系樹脂の、分解、架橋等のような変質が防止されうる。上記送液工程では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の品質は安定に保持されうる。
なお、本実施の形態における物性等の測定方法は、以下の通りである。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点(mp)の測定]
示差熱分析装置により、以下の温度パターンでポリアルキレンオキシド系樹脂の融点が測定される。重合反応後に得られた反応混合物(ポリアルキレンオキシド系樹脂を含む)を減圧乾燥機により80℃で2時間乾燥し、反応混合物中の揮発分を除いた後、乾燥窒素流通下で10時間以上調湿して、サンプルとするポリアルキレンオキシド系樹脂を得る。温度パターンは、次の通りである。分析装置(セイコー電子工業社製の製品名「熱分析装置:DSC220」)内で、ポリアルキレンオキシド系樹脂は80℃まで急熱(急加熱)して一旦融解される。次に、80℃から−5℃/分で−100℃まで冷却する。この冷却時に現れる結晶化に伴う発熱ピークから結晶化温度を求める。さらに、結晶化したポリアルキレンオキシド系樹脂は、−100℃から5℃/分で80℃まで昇温される。この昇温時に、結晶が完全に融解した温度がポリアルキレンオキシド系樹脂の融点(mp)として求められる。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂中の酸化防止剤量の測定]
高速液体クロマトグラフィー(測定装置:D−7000形HPLCシステム(日立ハイテクノロジーズ社製)、カラム:ODS−3(GLサイエンス社製)、カラム温度:40℃、流量:1.0mL/分、注入量:5μL、UV検出器:210nm、溶離液:「アセトニトリル/水/1質量%リン酸水溶液=1972g/405g/45g」の混合液)により、ポリアルキレンオキシド系樹脂中の酸化防止剤量を測定する。測定用サンプルは、ポリアルキレンオキシド系樹脂濃度が1質量%になるように、酸化防止剤を含んだポリアルキレンオキシド系樹脂を溶離液に溶解させた後、この溶解液をフィルターでろ過することにより調整する。
以上のように、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法は、容器に収容されているポリアルキレンオキシド系樹脂の上面を加温して溶融させ、溶融した状態で、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂を抜き出す、抜出工程を有する。
本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程により抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂を成形する工程を有することが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程により抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂を溶媒に溶解させ、調整する工程を有することが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程が、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の上面を、該ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶融温度以上300℃以下に加温して溶融させる工程であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点が0℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程において、測定温度が100℃以上110℃以下であり、剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときのポリアルキレンオキシド系樹脂の伸張粘度が、100Pa・s以上1,000,000Pa・s以下であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、アルキレンオキシドを主成分とするモノマー混合物を、溶媒を用いて重合させ、ポリアルキレンオキシド系樹脂を得る重合工程と、該ポリアルキレンオキシド系樹脂から溶媒を脱揮する工程とを有し、脱揮されたポリアルキレンオキシド系樹脂を、上記抜出工程において抜き出すことが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶媒濃度が0.01質量%以上30質量%以下であり、含有水分量が200ppm以下であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記重合工程において、上記モノマー混合物が、エチレンオキシド及びブチレンオキシドからなるか、又は、エチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなり、これらの配合率が、上記エチレンオキシドが90〜99モル%、上記ブチレンオキシドが1〜10モル%、上記アリルグリシジルエーテルが0〜2モル%であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法では、上記抜出工程が、メルターを用いて、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の上面を加温して溶融させ、該ポリアルキレンオキシド系樹脂を抜き出す工程であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法は、言い換えれば、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、加熱されてその温度が(mp+10)(℃)以上300℃以下とされたポリアルキレンオキシド系樹脂を、不活性な投入気体の雰囲気下でオープンヘッドドラムに投入する投入工程を含む、ポリアルキレンオキシド系樹脂の充填方法である。
本発明に係る上記充填方法では、上記投入工程において、上記投入気体の露点が−30℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂をオープンヘッドドラムの開口部からこのオープンヘッドドラムに投入する投入工程と、導入口と排出口とを備えた天ぶたで、このオープンヘッドドラムの開口部が閉じられて、この導入口からこのオープンヘッドドラムの空間部に不活性な冷却気体を流入し、この排出口からこの冷却気体を排出しつつ、この空間部に接触するポリアルキレンオキシド系樹脂の表面の温度をmp(℃)以下に冷却する冷却工程とを含むことが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、上記冷却工程において、上記冷却気体の露点が−30℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、ポリアルキレンオキシド系樹脂を不活性な投入気体の雰囲気下でオープンヘッドドラムに投入する投入工程と、このオープンヘッドドラムに投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂を不活性な冷却気体の雰囲気下で冷却する冷却工程とを含んでおり、この投入気体の露点が−30℃以下であり、 この投入気体の酸素濃度が、21体積%未満であり、この冷却気体の露点が−30℃以下であり、この冷却気体の酸素濃度が、21体積%未満であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、上記投入工程から上記冷却工程に至る間において、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の表面の含有水分量が1,000ppm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点が0℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、測定温度が100℃以上110℃以下であり、剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときの上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の伸張粘度が、100Pa・s以上1,000,000Pa・s以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂が、アルキレンオキシドを主成分とするモノマー混合物を、溶媒を用いて重合させ、ポリアルキレンオキシド系樹脂を得る重合工程と、このポリアルキレンオキシド系樹脂から溶媒を脱揮する脱揮工程とを経て得られることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、上記重合工程において、上記モノマー混合物が、エチレンオキシド及びブチレンオキシドからなるか、又は、エチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなり、これらの配合率が、上記エチレンオキシドが90〜99モル%、上記ブチレンオキシドが1〜10モル%、上記アリルグリシジルエーテルが0〜2モル%であることが好ましい。
また、本発明に係る上記充填方法では、上記重合工程により重合された上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量が5万以上15万以下であることが好ましい。
本発明に係る充填方法に含まれる投入工程によれば、オープンヘッドドラムに投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分量が抑えられつつ、このポリアルキレンオキシド系樹脂の変質も抑制されうる。上記充填方法に含まれる冷却工程によれば、オープンヘッドドラムに変形が生じることなくポリアルキレンオキシド系樹脂が冷却されうる。冷却されたポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分量が抑えられつつ、このポリアルキレンオキシド系樹脂の変質も抑制されうる。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法は、言い換えれば、溶解されるポリアルキレンオキシド系樹脂の融点がmp(℃)であるとき、(mp+10)℃以上とされたポリアルキレンオキシド系樹脂が、(mp)℃以上の系内温度とされた溶解槽内に供給されつつこの溶解槽内の溶媒に溶解される溶解工程を含むポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の製造方法である。
本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、上記溶解槽内の溶液が0.1(kW/m3)以上の撹拌動力(PV)で撹拌される工程を含むことが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、上記溶解工程において、(mp+10)℃以上で且つ300℃以下とされたポリアルキレンオキシド系樹脂が、(mp)℃以上で且つ300℃以下の系内温度とされた溶解槽内に供給されつつこの溶解槽内の溶媒に溶解されることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点mp(℃)が0℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、測定温度が100℃以上110℃以下であり、剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときの上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の伸張粘度が、100Pa・s以上1,000,000Pa・s以下であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、アルキレンオキシドを主成分とするモノマー混合物を、溶媒を用いて重合させ、ポリアルキレンオキシド系樹脂を得る重合工程と、このポリアルキレンオキシド系樹脂から溶媒を脱揮する工程と、脱揮されたポリアルキレンオキシド系樹脂を容器に充填する工程と、充填されたポリアルキレンオキシド系樹脂を容器から抜き出す抜出工程とを有し、抜き出されたポリアルキレンオキシド系樹脂を、上記溶解工程により溶解させることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、上記抜出工程において、ポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる溶媒濃度が30質量%以下であり、ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が200ppm以下であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、上記重合工程において、上記モノマー混合物が、エチレンオキシド及びブチレンオキシドからなるか、又は、エチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなり、これらの配合率が、上記エチレンオキシドが90〜99モル%、上記ブチレンオキシドが1〜10モル%、上記アリルグリシジルエーテルが0〜2モル%であることが好ましい。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法では、上記重合工程により重合された上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量が5万以上15万以下であることが好ましい。
本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂溶液の上記製造方法によれば、ポリアルキレンオキシド系樹脂を効率的に溶解させることができる。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法は、言い換えれば、溶融した液体のポリアルキレンオキシド系樹脂をオープンヘッドドラムに流し込む工程と、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂が流し込まれた上記オープンヘッドドラム内の空間部に、露点が−30℃以下の気体を、標準大気圧以上で且つ上記オープンヘッドドラムの耐圧圧力以下の圧力で封入する封入工程と、上記空間部に封入された気体の露点を、−30℃以下に維持したまま、上記オープンヘッドドラムの輸送又は貯蔵がなされる輸送又は貯蔵工程とを含むポリアルキレンオキシド系樹脂の取り扱い方法である。
本発明に係る上記取り扱い方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点が0℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記取り扱い方法では、測定温度が100℃以上110℃以下であり、剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときの上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の伸張粘度が、100Pa・s以上1,000,000Pa・s以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記取り扱い方法では、上記輸送又は貯蔵工程において、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる溶媒濃度が30質量%以下とされ、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が1,000ppm以下とされることが好ましい。
また、本発明に係る上記取り扱い方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の製造工程は、アルキレンオキシドを主成分とするモノマー混合物を、溶媒を用いて重合させ、ポリアルキレンオキシド系樹脂を得る重合工程と、このポリアルキレンオキシド系樹脂から溶媒を脱揮する脱揮工程とを含むことが好ましい。
また、本発明に係る上記取り扱い方法では、上記重合工程において、上記モノマー混合物が、エチレンオキシド及びブチレンオキシドからなるか、又は、エチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなり、これらの配合率が、上記エチレンオキシドが90〜99モル%、上記ブチレンオキシドが1〜10モル%、上記アリルグリシジルエーテルが0〜2モル%であることが好ましい。
また、本発明に係る上記取り扱い方法では、上記重合工程により重合された上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量が5万以上15万以下であることが好ましい。
本発明に係る上記取り扱い方法によれば、ポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分量を抑えた状態で輸送又は貯蔵することが可能となる。
また、本発明に係るポリアルキレンオキシド系樹脂材料の製造方法は、言い換えれば、溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂を、送液手段を用いることにより、混合機に供給する送液工程を含んでおり、この送液工程において、この送液手段が、このポリアルキレンオキシド系樹脂を収容する溶融槽と、この溶融槽に収容されているポリアルキレンオキシド系樹脂をこの混合機に送液するポンプと、このポリアルキレンオキシド系樹脂が流れる送液ラインとを備えており、このポンプから吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の単位時間当たりの吐出質量の振れ精度Fが、この吐出質量の平均値A及びこの吐出質量の標準偏差σが用いられることにより、下記数式(I)
F=3×σ/A×100 …(I)
で示されており、この振れ精度Fが、6%以下であるポリアルキレンオキシド系樹脂の供給方法である。
本発明に係る上記供給方法では、上記送液工程において、上記溶融槽が、不活性な気体が充填されることにより圧力が高められるように構成されておりかつ、この溶融槽にある上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整する第一温度調整手段を備えており、上記ポンプが、シャフトの回転速度に応じてこのポリアルキレンオキシド系樹脂の単位時間当たりの吐出質量が変えられるように構成されておりかつ、このポンプにあるこのポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整する第二温度調整手段を備えており、上記送液ラインが、この送液ラインにあるこのポリアルキレンオキシド系樹脂の温度を調整する第三温度調整手段を備えており、上記吐出質量の振れ精度Fが、この溶融槽内の圧力と、このポンプのシャフトの回転数と、この第一温度調整手段で調整されたこの溶融槽の温度と、この第二温度調整手段で調整されたこのポンプの温度と、この第三温度調整手段で調整されたこの送液ラインの温度とで管理されうることが好ましい。
また、本発明に係る上記供給方法では、上記送液工程において、上記溶融槽にある上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が1,000ppm以下であり、この溶融槽の空間部にある上記気体の酸素濃度が21体積%未満であることが好ましい。
また、本発明に係る上記供給方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の融点が0℃以上60℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記供給方法では、測定温度が100℃以上110℃以下であり、剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときの上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の伸張粘度が、100Pa・s以上1,000,000Pa・s以下であることが好ましい。
また、本発明に係る上記供給方法では、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂が、アルキレンオキシドを主成分とするモノマー混合物を、溶媒を用いて重合させ、ポリアルキレンオキシド系樹脂を得る重合工程と、このポリアルキレンオキシド系樹脂から溶媒を脱揮する脱揮工程とを経て得られることが好ましい。
また、本発明に係る上記供給方法では、上記重合工程において、上記モノマー混合物が、エチレンオキシド及びブチレンオキシドからなるか、又は、エチレンオキシド、ブチレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルからなり、これらの配合率が、上記エチレンオキシドが90〜99モル%、上記ブチレンオキシドが1〜10モル%、上記アリルグリシジルエーテルが0〜2モル%であることが好ましい。
また、本発明に係る上記供給方法では、上記重合工程により重合された上記ポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量が5万以上15万以下であることが好ましい。
本発明に係る上記供給方法によれば、ポンプから吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の単位時間当たりの吐出質量は、略一定である。このため、溶融したポリアルキレンオキシド系樹脂が混合機に安定に供給されうる。ポリアルキレンオキシド系樹脂が所定の断面形状を有する長尺成形品に加工される場合において、寸法安定性に優れる成形品が得られうる。特に、ポリアルキレンオキシド系樹脂に所定の添加剤が添加されて、このポリアルキレンオキシド系樹脂が成形される場合において、この添加剤が均一な組成で分散している成形品が得られうる。この供給方法が用いられることにより、高品質な成形品が得られうる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「時間」を単に「h」と、「リットル」を単に「L」と記す。
(A)抜出工程に関する実施例
[実施例1A]
マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)及び添加口を備えた1Lの反応器を溶媒(トルエン)で洗浄した後、加熱乾燥及び窒素置換した。この反応器に、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したトルエン286.5質量部と、反応開始剤としてのt−ブトキシカリウム(20質量%テトラヒドロフラン溶液)0.55質量部とを順次、投入した。投入後、反応器内の窒素置換を行い、反応器内の圧力が0.3MPaになるまで窒素で加圧し、マックスブレンド翼を130rpmで回転させて攪拌しながら、オイルバスで昇温した。
反応器の温度が90℃になったことを確認した後、エチレンオキシドと、ブチレンオキシドとのモノマー混合物(エチレンオキシド/ブチレンオキシド=94モル%/6モル%)、計286.5質量部の供給を行った。供給中、重合熱による内温上昇及び内圧上昇を監視・制御しながら100℃±5℃で反応を行った。供給終了後、さらに90℃以上で5時間保持して熟成させ、ポリアルキレンオキシド系樹脂(1)50質量%とトルエン50質量%とを含む重合反応液(2)を得た。
上記溶液重合により得られた重合反応液(2)を、薄膜蒸発器(製品名:EXEVA、神鋼パンテック社製)(ジャケット温度180℃、減圧度50Torr(6666Pa))に供給した。この重合反応液(2)を脱揮により濃縮し、薄膜蒸発器の排出口に備え付けてあるギヤポンプから温度145℃、排出速度15kg/hrで排出し、200Lのオープンドラム(製品名:鋼製オープンドラム缶(M級)、善友金属(株)製)に、そのまま投入充填し、ポリアルキレンオキシド系樹脂(1)を得た。下記方法により求められた、上記ポリアルキレンオキシド系樹脂(1)の質量平均分子量Mwは122,000であり、分散度は1.45であった。下記のようにして求められた、トルエン含有率は0.16質量%であり、含有水分量は60ppmであった。また、下記の条件で測定された伸長粘度は6,420Pa・sであった。
十分に室温まで冷却され、完全に固化した状態であるポリアルキレンオキシド系樹脂(1)が充填された、200Lのオープンドラムに、バルクメルター(製品名:バルクメルターBMシリーズBM200、ノードソン(株)製)のプラテンを投入し、ポリアルキレンオキシド系樹脂(1)に当接させた。プラテンはフィンプラテンであり、内蔵されているポンプは、ジローターギアポンプである。プラテンをポリアルキレンオキシド系樹脂ポリマー(1)に押圧させつつ、プラテン内蔵のヒーターにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂(1)の表面を140℃に加温し、プラテン投入の5分後にポンプのスピードの目盛を5目盛(最大10目盛)に合わせた。これにより、プラテン上部の吐出部から、溶融した状態のポリアルキレンオキシド系樹脂(1)が、11kg/hrの吐出速度で排出された。このポリアルキレンオキシド系樹脂(1)の吐出品の温度は131℃であり、下記のようにして求めた質量平均分子量は122,000であり、分散度は1.45であった。
[脱揮後の樹脂中の残存溶媒量の測定]
脱揮後に得られたポリアルキレンオキシド系樹脂の一部を、予め質量が秤量されたアルミカップに入れて秤量した。これを、予め110℃に加温した減圧乾燥機に入れ、パージバルブを閉じ、真空ラインバルブを開いて乾燥機内を減圧(−0.1MPa)にし、30分間、この状態を保持して溶媒を除去した。その後、真空ラインバルブを閉じ、パージバルブを開いて乾燥機内を常圧に戻し、樹脂が入ったアルミカップを取り出して、窒素気流下、10分間、放冷した。放冷後、質量を測定し、乾燥前後の質量の減少量から、残存溶媒量を求めた。
[脱揮後の樹脂中の含有水分量の測定]
グローブボックス中に、得られたポリアルキレンオキシド系樹脂を、乾燥雰囲気下、脱揮温度に近い樹脂温度を保持した流動性ある状態でサンプリングし、自然冷却しておいたもの、溶媒としてのトルエン(予めモレキュラーシーブス(ユニオン昭和社製、製品名:モレキュラーシーブ3A1.6あるいはモレキュラーシーブ4A1.6)にて含有水分量を極力減らしておいたもの)、ガラス容器及び注射器を入れて、2時間以上乾燥した。
乾燥後、ガラス容器に、ポリアルキレンオキシド系樹脂2gとトルエン18gとを投入し、マグネチックスターラーで十分に溶解させ樹脂溶液とした後、注射器で該樹脂溶液をすべて採取した。同時に、別の注射器でトルエンのみを18g採取した。採取後のそれぞれの注射器をグローブボックスから外部へ持ち出し、AQUACOUNTERQ−7(HIRANUMA社製の含有水分量測定装置)を用いて、樹脂溶液及びトルエンのみにおける含有水分量をそれぞれ測定した。この測定により求められる含有水分量(ppm)の値から、樹脂溶液及びトルエンのみに含まれる水分の質量(mg)をそれぞれ算出し、その差からポリアルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分の質量(mg)を求めた。そこで、この差である水分の質量(mg)を、初めに溶解させたポリアルキレンオキシド系樹脂の質量(2g)で割ることにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量(ppm)を算出した。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定]
高速液体クロマトグラフィー(カラム:ODS−3(GLサイエンス社製)、カラム温度:40℃、流量:1.0mL/分、注入量:5μL、UV検出器:210nm、溶離液:「アセトニトリル/0.1質量%リン酸水溶液」の混合液(体積比:アセトニトリル/0.1質量%リン酸水溶液=85/15))により、ポリエチレンオキシドの標準分子量サンプルを用いて検量線を作成した。そして、反応後に得られた重合反応液(ポリマーを含む)を所定の溶媒に溶解させて測定し、Mw、Mw/Mnを求めた。
[伸長粘度の測定]
上記重合反応液(2)を減圧乾燥機により100℃で8時間乾燥させて重合反応液(2)中の揮発分を除いた後、ペレット状に裁断し、さらにグローブボックス内(窒素雰囲気)において24時間放置して最終的に揮発分200ppm以下にし、これをサンプルポリマーとした。又は、重合反応液(2)を上記のように脱揮した後、ペレット状に裁断し、グローブボックス内(窒素雰囲気)において24時間放置して最終的に揮発分200ppm以下にし、これをサンプルポリマーとした。以下の条件で、サンプルポリマーの伸長粘度(Pa・s)を測定した。
測定装置:製品名 ツイン・キャピラリー・レオメーター「RH7−2型」
ROSAND(ロザンド)社製
測定温度:100〜110℃
ダイ:直径2mmのロングダイ(長さ32mm)及びショートダイ(長さ0.25mm)
ダイアングル:180°
測定雰囲気:乾燥空気雰囲気
保持時間:10分
ダイへの投入時の注意:ポリマーの投入は素早く行う(5分以内)。泡抜き作業を行う(ポリマー投入後、ピストンや押し込み棒で十分にバレル内の泡抜きを行う)。
[吐出量の測定]
プラテンの吐出部から吐出されたポリアルキレンオキシド系樹脂(1)を36秒間、サンプリングして秤量し、1時間当たりの質量に換算して、吐出量(kg/h)を求めた。各実施例で求めた吐出量の結果を表1に示す。
[吐出品の品質]
サンプリングした吐出品につき、前述したようにして質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、Mwの変化が1%以内、Mnの変化が4%以内である場合を「良」とし、Mwの変化が1%を超え、Mnの変化が4%を超える場合を「不良」とした。各実施例で求めた吐出品の品質の結果を表1に示す。
[実施例2A〜12A]
実施例1Aと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂(1)を得て、脱揮した。次に、プラテンの加熱温度及びポンプスピード(最大10目盛に対する相対目盛量)を表1に示す値に変えた他は、実施例1Aと同様にして、抜出工程を実施し、実施例2A〜12Aの吐出品を得た。
表1より、本発明の実施例によれば、質量平均分子量及び数平均分子量が変化することなく、すなわちポリアルキレンオキシド系樹脂が劣化することなく、ポリアルキレンオキシド系樹脂が抜き出されることが分かった。また、ポンプスピードが同一である場合、プラテンの加熱温度を上げるのに従い、吐出量が増加することが分かった。得られたポリアルキレンオキシド系樹脂がポリアルキレンオキシド系樹脂材料に用いられる。
(B)輸送工程又は貯蔵工程に関する実施例
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Aの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが99モル%且つブチレンオキシドが1モル%とし、実施例1Aと同様の操作により重合工程、脱揮工程を行い、ポリアルキレンオキシド系樹脂Aを得た。この樹脂Aに含まれる溶媒濃度は、1質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Aの質量平均分子量(Mw)は、50,000であった。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Bの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが96モル%、ブチレンオキシドが2モル%、アリルグリシジルエーテルが2モル%とした点以外は、ポリアルキレンオキシド系樹脂Aと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂Bを得た。この樹脂Bに含まれる溶媒濃度は、0.4質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Bの質量平均分子量(Mw)は、80,000であった。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Cの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが95モル%、ブチレンオキシドが4モル%、アリルグリシジルエーテルが1モル%とした点以外は、ポリアルキレンオキシド系樹脂Aと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂Cを得た。この樹脂Cに含まれる溶媒濃度は、0.5質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Cの質量平均分子量(Mw)は、100,000であった。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Dの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが92モル%、ブチレンオキシドが6モル%、アリルグリシジルエーテルが2モル%とした点以外は、ポリアルキレンオキシド系樹脂Aと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂Dを得た。この樹脂Dに含まれる溶媒濃度は、0.4質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Dの質量平均分子量(Mw)は、110,000であった。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Eの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが94モル%で且つブチレンオキシドが6モル%とした点以外は、ポリアルキレンオキシド系樹脂Aと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂Eを得た。この樹脂Eに含まれる溶媒濃度は、0.4質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Eの質量平均分子量(Mw)は、120,000であった。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Fの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが90モル%で且つブチレンオキシドが10モル%とした点以外は、ポリアルキレンオキシド系樹脂Aと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂Fを得た。この樹脂Fに含まれる溶媒濃度は、1質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Fの質量平均分子量(Mw)は、150,000であった。
[実施例1B]
図8で示されるオープンヘッドドラム等を用いて、実施例1B〜12B及び比較例1B、2Bに係る方法(以下、単に実施例1B〜12B及び比較例1B、2Bともいう)を行った。
図8は、「(B)輸送工程又は貯蔵工程に関する実施例」における全ての実施例及び比較例において用いられたオープンヘッドドラム402の概略構成を示す斜視図である。オープンヘッドドラム402は、胴体404と、地板(底板)406と、天ぶた408とを有する。胴体404は、円筒状である。胴体404の下側の開口部は、地板406により塞がれている。胴体404と地板406とは、周知の巻締め構造と、この巻締め構造の内部に配置された充填剤とにより密閉されている。胴体404の上側の開口部は、天ぶた408により塞がれている。胴体404の開口部の縁部と天ぶた408との間には、ガスケット(図示されない)が設けられている。また、胴体404と天ぶた408とは、バンド410により締め付けられている。バンド410は、ボルト式バンドである。
天ぶた408は、第一の開口部412と、第二の開口部414とを有している。図示しないが、第一の開口部412及び第二の開口部414の内周面には、雌ネジ部が設けられており、前述したパッキン付きのプラグが締結できる構造とされている。このプラグは、ボルト状である。本実施例では、プラグを締結する代わりに、パイプが接続される。図9は、パイプが接続された状態のオープンヘッドドラム402の概略構成を示す側面図である。第一の開口部412に第一のパイプ416が接続され、第二の開口部414に第二のパイプ418が接続される。各パイプ416、418は、ネジ部を有しており、開口部412、414と気密性の高い状態で接続される。なお、図9では、第一のパイプ416や第二のパイプ418などのパイプが、一本の線で簡易的に示されている。
第一のパイプ416には、圧力計420と、バルブ422とが設けられている。圧力計420は、バルブ422よりもオープンヘッドドラム402に近い側に設けられている。一方、第二のパイプ418には、バルブ424が設けられている。このようなオープンヘッドドラム402を用いて、各例に係る実験がなされた。
上記のように調製されたポリアルキレンオキシド系樹脂Aを用意した。180kgのポリアルキレンオキシド系樹脂Aを、120℃に加熱して溶融させた状態でオープンヘッドドラムに流し込んだ。流し込みは、天ぶた408を取り付けない状態で行われた。オープンヘッドドラムの容量は200Lである。流し込みは、露点−60℃の窒素雰囲気中で行われた。流し込みは、空気や水がオープンヘッドドラム内に混入しないように注意しながら行われた。流し込まれたポリアルキレンオキシド系樹脂Aの含有水分量は、45PPMであった。
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aの流し込みが終了した後、前述した第一のパイプ416及び第二のパイプ418等を有する天ぶた408が取り付けられ、オープンヘッドドラム402の上側開口部が塞がれた。次に、バンド410が取り付けられ、バンド410のボルトが締め付けられた。次に、冷却工程がなされた。具体的には、両方のバルブ422、424が共に空いた状態で、第二のパイプ418から、オープンヘッドドラム402の空間部に、窒素が供給された。この窒素の供給速度は10L/分であり、この窒素の露点は−60℃であった。ポリアルキレンオキシド系樹脂Aの上面における表面温度が50℃以下になるまで、10L/分の供給速度で窒素が供給され続けた。なお、上面における表面温度が50℃以下となるまでの冷却時間は、約3日間を要した。
次に、両方のバルブ422、424を閉じた。次に、第二のパイプ418に供給される気体が、上記の窒素から、空気へと変更された。この空気の露点は、−30℃である。次に、バルブ422、424を開け、露点−30℃の空気を、第二のパイプ418からオープンヘッドドラム402の空間部に供給した。この空気が、前述した導入気体である。この空気の供給は、10L/分の供給速度で1時間続けられた。次に、この空気の供給圧力を調整し、空間部の圧力が0.2(kg/cm2G)となるように調製して、両方のバルブ422・424を閉めた。次に、石鹸水を第一の開口部412や第二の開口部414等の接続部分に付ける等して、オープンヘッドドラム402の空間部の気体の漏れが発生していないことを確認した。漏れが確認された場合は、漏れが無くなるまで増し締めを行った。次に、バルブ422、424を操作して、オープンヘッドドラム402の内圧(即ち空間部の圧力)が0.15(kg/cm2G)となるように調製された。この0.15(kg/cm2G)が、実験開始時における空間部の圧力である。
実験開始時において、オープンヘッドドラム402内に流し込まれた樹脂の表面は、空間部と接している。樹脂の表面部分は、空間部と接しているため、樹脂表面と空間部との水分の相互移動は、実験開始時において既にほぼ平衡状態となっている。導入気体の露点と、樹脂の流し込まれた時点での含有水分量(45ppm)とから、実験開始時の樹脂表面の含有水分量は、120ppmであると考えられる。この値は、実測値と一致している。この値は、実験開始時の含有水分量として、下記の表2に示されている。
以上のオープンヘッドドラム402を4本作製し、20℃、相対湿度35RH%の雰囲気で保管した。そして、実験開始時、1ヶ月後、3ヶ月後及び6ヶ月後のそれぞれにおいて、オープンヘッドドラム402を1本ずつ用いて、空間部の圧力と、樹脂の表面における含有水分量とが測定された。圧力の測定は、圧力計420を確認することによりなされた。樹脂表面の含有水分量の測定は、天ぶた408を開け手早く表面の樹脂をサンプリングすることによりなされた。測定された結果は下記の表2に示される。
なお、[kg/cm2G]とは、ゲージ圧力を意味し、絶対圧力(kg/cm2)から大気圧(kg/cm2)を引いた値である。
[実施例2B]
実験開始時における空間部の圧力を0(kg/cm2G)とした以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例3B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Bに変更した以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例4B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Bに変更した以外は実施例2Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例5B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Cに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例6B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Cに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例2Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例7B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Dに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例8B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Dに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例2Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例9B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Eに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例10B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Eに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例2Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例11B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Fに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[実施例12B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aをポリアルキレンオキシド系樹脂Fに変更し、導入気体としての空気の露点が−60℃とされた以外は実施例2Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表2で示される。
[比較例1B]
ポリアルキレンオキシド系樹脂Aがポリアルキレンオキシド系樹脂Bとされ、供給される窒素の露点が−11℃とされ、導入気体である空気の露点が−11℃とされた以外は実施例1Bと同様にして、実験を行った。測定された結果が下記の表3で示される。
[比較例2B]
上記のように調製されたポリアルキレンオキシド系樹脂Fを用意した。180kgのポリアルキレンオキシド系樹脂Fを、120℃に加熱して溶融させた状態でオープンヘッドドラムに流し込んだ。流し込みは、天ぶた408を取り付けない状態で行われた。オープンヘッドドラムの容量は200Lである。流し込みは、露点−60℃の窒素雰囲気中で行われた。流し込みは、空気や水がオープンヘッドドラム内に混入しないように注意しながら行われた。流し込まれたポリアルキレンオキシド系樹脂Fの含有水分量は、45ppmであった。
ポリアルキレンオキシド系樹脂Fの流し込みが終了した後、前述した第一のパイプ416及び第二のパイプ418等を有する天ぶた408が取り付けられ、オープンヘッドドラム402の上側開口部が塞がれた。次に、バンド410が取り付けられ、バンド410のボルトが締め付けられた。次に、冷却工程がなされた。具体的には、両方のバルブ422、424が共に空いた状態で、第二のパイプ418から、オープンヘッドドラム402の空間部に、窒素が供給された。この窒素の供給速度は10L/分であり、この窒素の露点は−60℃であった。ポリアルキレンオキシド系樹脂Fの上面における表面温度が50℃以下になるまで、10L/分の供給速度で窒素が供給された。なお、上面における表面温度が50℃以下となるまでの冷却時間は、約3日間を要した。
次に、天ぶた408を取り外した。このようなオープンヘッドドラム402を4本作製し、20℃、相対湿度35RH%の雰囲気で保管した。つまり、比較例2Bでは、天ぶた8が取り外された状態で保管がなされた。そして、実験開始時、1ヶ月後、3ヶ月後及び6ヶ月後のそれぞれにおいて、オープンヘッドドラム402を一本ずつ用いて、空間部の圧力と、樹脂の表面における含有水分量とが測定された。樹脂表面の含有水分量の測定は、手早く表面の樹脂をサンプリングすることによりなされた。測定された結果が下記の表3で示される。
表2及び表3より、実施例は、比較例と比べて、ポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が極めて少ない状態で保存や輸送等が可能となることが確認された。この結果から、本発明の優位性は明らかである。
(C)充填工程に関する実施例
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Gの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが94モル%且つブチレンオキシドが6モル%とし、実施例1Aと同様の方法により、重合工程及び脱揮工程を行なうことにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂Gを得た。この樹脂Gに含まれる溶媒濃度は、0.45質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Gの質量平均分子量(Mw)は、123,000であった。分子量分布(Mw/Mn)は、1.40であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Gの融点mpは47.2℃であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Gの含有水分量は、90ppmであった。なお、このポリアルキレンオキシド系樹脂Gには、微量の酸化防止剤(吉富化学社製の商品名「ヨシノックスBB」)が添加されている。このポリアルキレンオキシド系樹脂Gの酸化防止剤量は、4,830ppmである。
[ポリアルキレンオキシド系樹脂Hの調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが95モル%、ブチレンオキシドが4モル%、アリルグリシジルエーテルが1モル%とした点以外は、ポリアルキレンオキシド系樹脂Gと同様にして、ポリアルキレンオキシド系樹脂Hを得た。この樹脂Hに含まれる溶媒濃度は、0.18質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Hの質量平均分子量(Mw)は、105,000であった。分子量分布(Mw/Mn)は、1.65であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Hの融点mpは47.5℃であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂Hの含有水分量は、85ppmであった。なお、このポリアルキレンオキシド系樹脂Hには、微量の酸化防止剤(吉富化学社製の商品名「ヨシノックスBB」)が添加されている。この酸化防止剤の濃度は、5,110ppmである。
(C−1)投入工程に関する実施例
[実施例1C]
図1で示されたオープンヘッドドラム(以下、ドラム)が準備されて、図2の投入装置に設置された。なお、図示されていないが、この投入装置に備えられる投入パイプは、予備タンクに繋げられている。この予備タンクには、重合工程を経たポリアルキレンオキシド系樹脂が入れられる。この予備タンクは、加熱装置が設けられており、この予備タンク内のポリアルキレンオキシド系樹脂を加熱して溶融させることができる。この投入パイプと予備タンクの間にはギアポンプが設けられており、溶融状態にあるポリアルキレンオキシド系樹脂が投入装置に供給されうる。次に、上記のように調整されたポリアルキレンオキシド系樹脂G(以下、ポリマーG)を用意した。このポリマーGを予備タンクに投入して、180℃に加熱して溶融させた。このときの温度は、投入される時点における樹脂の温度である。次に、導入バルブを開けて、投入気体が投入装置の隔離部に導入された。投入気体は、窒素である。この投入気体に、酸素は含まれていない。従って、この投入気体の酸素濃度は、0体積%である。この投入気体の露点は、−30℃である。排出バルブが開けられて、気体の導入速度が10L/分となるように調節された。第一の空間部の酸素濃度及び露点の確認後、ギアポンプが稼働されて、ドラムへのポリマーGの投入が開始された。ポリマーGがドラムに180.2kg投入された時点で、ギアポンプが停止された。この実施例1Cの実験では、ポリマーGの投入時間(180kg投入されるまでの時間)が2.6時間となるように、ギアポンプが調整された。従って、このときのポリマーGの投入速度は、70kg/時間である。この後、投入装置からドラムが取り出された時点で、ポリマーGの空間部に接触する表面から評価用の試料が採取された。この試料について、上記の方法で、含有水分量、質量平均分子量、分子量分布及び酸化防止剤量が計測された。アセトニトリルに試料を入れて、この試料の溶解可否についても評価された。この結果が下記表4に示されている。
[実施例2C及び3C]
投入時間(投入速度)を下記表4の通りとした他は、実施例1Cと同様にして実験を行った。実施例2Cでは、投入時間は5.7時間である。従って、投入速度は35kg/時間である。実施例3Cでは、投入時間は11.1時間である。従って、投入速度は18kg/時間である。評価結果は、下記表4に示されている。
[実施例4C]
樹脂の温度及び投入時間(投入速度)を下記表4の通りとした他は、実施例1Cと同様にして実験を行った。この実施例4Cでは、投入時間は3.1時間である。従って、投入速度は65kg/時間である。評価結果は、下記表4に示されている。
[実施例5C]
樹脂にポリアルキレンオキシド系樹脂H(以下、ポリマーH)を用いて、投入時間(投入速度)を下記表4の通りとした他は、実施例1Cと同様にして実験を行った。この実施例5Cでは、投入時間は2.6時間である。従って、投入速度は70kg/時間である。評価結果は、下記表4に示されている。
[比較例1C]
投入気体を乾燥空気とした他は、実施例1Cと同様にして実験を行った。この比較例1Cでは、投入気体の露点は、−30℃である。投入気体の酸素濃度は、21体積%である。評価結果は、下記表4に示されている。
[参考例1C]
樹脂の温度を下記表4の通りとした他は、実施例1Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表4に示されている。
[比較例2C]
樹脂にポリマーHを用いて、投入気体を下記表4の通りとした他は、実施例1Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表4に示されている。
表4に示されるように、実施例の投入条件でドラムに投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及びアセトニトリルへの溶解性に、投入前のそれらとの違いは認められなかった。実施例の投入条件で投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂に、分解、架橋等の変質は認められない。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。酸化防止剤量は、投入速度を下げる(投入時間は長くなる。)と低下する傾向を示した。これにより、酸化防止剤は自ら酸化されてポリアルキレンオキシド系樹脂の変質を抑えていることが示唆される。実施例の酸化防止剤量は比較例1Cの酸化防止剤量よりも多いことが確認された。これにより、本発明に係る充填方法は酸化防止剤量の低減を抑えると考えられる。実施例2Cと実施例3Cとの比較において、投入速度が35kg/時間から18kg/時間に下げられることにより(投入時間は5.7時間から11.1時間へ長くなる。)、酸化防止剤量は約3/5に低下している。このことから、投入速度としては20kg/時間以上が好ましく、35kg/時間以上がより好ましい。投入時間としては、6時間以内が好ましく、5時間以内がより好ましい。なお、参考例1Cでは、ポリマーGが充分に溶融しなかったので、実験ができなかった。比較例2Cでは、投入工程完了時点におけるポリマーHが溶媒に溶けなかったので、質量平均分子量、分子量分布及び酸化防止剤量の計測ができなかった。
(C−2)冷却工程に関する実施例
[実施例6C]
上記の実施例1Cと同じ投入条件で投入工程が実施された後、ドラムに冷却気体の導入ライン及び排出ラインが接続されて、このドラムが図4で示された状態に準備された。導入バルブが開けられて、導入ラインから冷却気体が空間部に流入されて冷却が開始された。この冷却開始の時点におけるポリアルキレンオキシド系樹脂のこの空間部に接触する表面の温度が、この冷却工程開始時の樹脂の表面温度(工程開始時)である。この実施例6Cでは、この樹脂の表面温度(工程開始時)は、180℃とされた。この空間部において冷却気体が循環しうるように排気バルブが開けられて、冷却気体の導入速度が10L/分となるように調節された。冷却気体は、窒素である。この冷却気体に、酸素は含まれていない。従って、この冷却気体の酸素濃度は、0体積%である。この冷却気体の露点は、−30℃である。樹脂の表面温度が47℃に到達した時点で、導入バルブが閉じられて冷却気体の導入が止められた。この実施例6Cでは、この時点が、冷却工程完了の時点とされた。この実施例6Cでは、樹脂の表面温度(工程完了時)が47℃に到達するのに、59時間かかった。この後、ポリアルキレンオキシド系樹脂の、空間部に接触する表面から評価用の試料が採取された。この試料について、上記の方法で、含有水分量、質量平均分子量、分子量分布及び酸化防止剤量が計測された。アセトニトリルに試料を入れて、この試料の溶解可否についても評価された。この結果が下記表5に示されている。
[参考例2C]
樹脂の表面温度(工程完了時)が85℃とされた他は、実施例6Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表5に示されている。
[参考例3C]
冷却気体が循環されなかった他は、実施例6Cと同様にして実験を行った。ドラムの天ぶたと胴体とがバンドで締め付けられることにより、このドラムは密閉された。この実験の開始の時点において、このドラム内の内圧は、15kPaに調整された。内圧が調整された後、導入バルブと排出バルブとは閉じられた。評価結果は、下記表5に示されている。
[参考例4C]
冷却気体を乾燥空気とした他は、実施例6Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表5に示されている。
[実施例7C]
投入工程の投入条件が、実施例2Cと同一とされた他は、実施例6Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表5に示されている。
[実施例8C]
投入工程の投入条件が、実施例3Cと同一とされた他は、実施例6Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表5に示されている。
[比較例3C]
樹脂にポリアルキレンオキシド系樹脂H(ポリマーH)を用いて、投入工程の投入条件が実施例5Cと同一とされて、冷却気体を乾燥空気とした他は、実施例6Cと同様にして実験を行った。評価結果は、下記表5に示されている。
表5に示されるように、実施例の冷却条件で冷却されたポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及びアセトニトリルへの溶解性に、投入前のそれらとの違いは認められなかった。実施例の冷却条件で冷却されたポリアルキレンオキシド系樹脂に、分解、架橋等の変質は認められない。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。酸化防止剤量は、投入速度を下げる(投入時間は長くなる)と低下する傾向を示した。これにより、酸化防止剤は自ら酸化されてポリアルキレンオキシド系樹脂の変質を抑えていることが示唆される。実施例の酸化防止剤量は参考例4Cの酸化防止剤量よりも多いことが確認された。これにより、本発明に係る充填方法は酸化防止剤量の低減を抑えると考えられる。
(C−3)投入気体及び冷却気体に関する実施例
[実施例9C]
上記の「(C−1)投入工程に関する実施例」と同様にして投入工程に関する実験を行い、上記の「(C−2)冷却工程に関する実施例」と同様にして冷却工程に関する実験を行った。本実施例では、上記のように調整されたポリアルキレンオキシド系樹脂Gが用いられた。投入気体は、窒素である。この投入気体に、酸素は含まれていない。従って、この投入気体の酸素濃度は、0体積%である。この投入気体の露点は、−30℃である。冷却気体は、窒素である。この冷却気体に、酸素は含まれていない。従って、この冷却気体の酸素濃度は、0体積%である。この冷却気体の露点は、−30℃である。投入工程の後及び冷却工程の後において、ポリアルキレンオキシド系樹脂の空間部に接触する表面から、評価用の試料が採取された。この試料について、上記の方法で、含有水分量、質量平均分子量、分子量分布及び酸化防止剤量が計測された。アセトニトリルに試料を入れて、この試料の溶解可否についても評価された。この結果が表6に示されている。なお、この実施例9Cは、上記の実施例6Cでもある。
[実施例10C]
投入気体の露点及び冷却気体の露点を表6の通りとした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。評価結果は、表6に示されている。
[実施例11C]
投入気体及び冷却気体を、酸素と窒素との混合気体とした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。この混合気体の酸素濃度は、1体積%である。この混合気体の露点は、−30℃である。評価結果は、表6に示されている。
[参考例5C]
投入気体の露点を表6の通りとした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。評価結果は、表6に示されている。
[参考例6C]
冷却気体の露点を表6の通りとした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。評価結果は、表6に示されている。
[比較例4C]
投入気体を乾燥空気とした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。この乾燥空気の露点は、−30℃である。評価結果は、表6に示されている。
[参考例7C]
冷却気体を乾燥空気とした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。この乾燥空気の露点は、−30℃である。評価結果は、表6に示されている。
[比較例5C]
樹脂にポリアルキレンオキシド系樹脂H(以下、ポリマーH)を用いて、投入気体を乾燥空気とした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。この乾燥空気の露点は、−30℃である。評価結果は、表6に示されている。
[参考例8C]
樹脂にポリマーHを用いて、冷却気体を乾燥空気とした他は、実施例9Cと同様にして実験を行った。この乾燥空気の露点は、−30℃である。評価結果は、表6に示されている。
表6に示されるように、実施例の実験が実施されたポリアルキレンオキシド系樹脂では、投入工程から冷却工程に至る間において、含有水分量は1,000ppm以下であった。このポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及びアセトニトリルへの溶解性に、投入前のそれらとの違いは認められなかった。実施例のポリアルキレンオキシド系樹脂に、分解、架橋等の変質は認められない。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。投入工程から冷却工程までの間に、酸化防止剤量は低下する傾向が認められた。これにより、酸化防止剤は自ら酸化されてポリアルキレンオキシド系樹脂の変質を抑えていることが示唆される。投入工程における実施例9C、実施例11C及び比較例4Cの酸化防止剤量の測定値と、冷却工程における実施例9C、実施例11C及び参考例7Cの酸化防止剤量の測定値とから、本発明に係る充填方法は酸化防止剤量の低減を抑えると考えられる。なお、比較例4C及び比較例5Cは、投入工程が完了した時点でポリアルキレンオキシド系樹脂の変質が確認されたので、冷却工程に関する実験は実施しなかった。
(D)溶解工程に関する実施例
[実施例1D]
図6で示される装置により溶解工程を実施し、溶解速度を確認した。5kgのポリアルキレンオキシド系樹脂が入った容積10Lの中間タンク容器210を用意した。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、エチレンオキシド/ブチレンオキシド=94モル%/6モル%のモル比を有し且つ質量平均分子量(Mw)が122,000であるポリマーとされた。このポリマーは、融点mp(℃)が47℃であり、前述した伸張粘度が6,400Pa・sである。4kgの溶媒222が貯留された溶解槽216に、ポリアルキレンオキシド系樹脂が供給された。溶媒222は、アセトンとした。溶媒(アセトン)を常時還流させながらポリアルキレンオキシド系樹脂を供給(投入)した。湯浴232の温度は、63〜64℃とされた。図6とは異なるが、湯浴232の液面は、アセトンの液面と同じ高さとした。溶解槽216内は、常圧とされた。系内温度は、アセトンの沸点と同じ56.5℃で維持された。ポリアルキレンオキシド系樹脂の供給時の温度は、140℃とされた。このポリマー(ポリアルキレンオキシド系樹脂)の融点mp(℃)は、47℃である。よって、系内温度は、融点mp(℃)よりも9.5℃高い。また、ポリアルキレンオキシド系樹脂の供給温度は、融点mp(℃)よりも93℃高い。溶媒222(溶液224)を0.2(kW/m3)の撹拌動力(PV)で撹拌しながら、ポリアルキレンオキシド系樹脂が供給された。撹拌翼226はマックスブレンド翼とされ、邪魔板230は2枚とされた。撹拌翼226の回転数は200rpmであった。溶液を撹拌しながら、4.85g/minの供給速度で4時間18分に亘りポリアルキレンオキシド系樹脂が連続して供給され、結果として累計で約1250gのポリアルキレンオキシド系樹脂が供給された。ポリアルキレンオキシド系樹脂は、溶解槽216の内壁面に這わせつつ供給された。その後、ポリアルキレンオキシド系樹脂を供給することなく、更に42分間撹拌を続けたところ、樹脂は完全に溶解した。4000gの溶媒に1250gの樹脂が溶けたので、最終溶液濃度が24(wt%)となった。この樹脂供給後の撹拌(以下において熟成ともいう)において、樹脂の供給を止めた点以外は全ての条件が維持された。この実施例1Dの仕様及び結果が、後述される表7で示される。
[実施例2D]
熟成時間、溶解時間、供給時の樹脂温度、撹拌動力(PV)及び撹拌翼の回転数が表7の通りとされた他は実施例1Dと同様にして、実施例2Dの製造方法とした。実施例2Dにおいても、樹脂は完全に溶解した。この実施例2Dの仕様及び結果が、後述の表7で示される。
[比較例1D]
アセトンの還流はなされず、熟成時間、溶解時間、供給時の供給温度、系内温度及び湯浴温度が表7の通りとされた以外は実施例1Dと同様にして、比較例1Dの溶解工程を行った。その結果、投入されたポリアルキレンオキシド系樹脂が撹拌翼に巻き付き、溶解速度が著しく遅く、溶解時間が480分となった時点で溶解できなかったので実験を中止した。この比較例1Dの仕様及び結果が、後述の表7で示される。
[比較例2D]
ペレット状とされたポリアルキレンオキシド系樹脂1250gを55℃とし、この樹脂を一括投入した。供給時間、熟成時間、溶解時間、供給時の樹脂温度、撹拌動力(PV)及び撹拌翼の回転数が表7の通りとされた他は実施例1Dと同様にして、比較例2Dの溶解工程を行った。その結果、溶解時間が480分となった時点で溶解できなかったので実験を中止した。この比較例2Dの仕様及び結果が、後述の表7で示される。
表7より、実施例は、比較例よりも、ポリアルキレンオキシド系樹脂の溶解性が高まることが確認された。この結果から、本発明の優位性は明らかである。
(E)送液工程に関する実施例
[ポリアルキレンオキシド系樹脂の調製]
モノマー混合物の配合率を、エチレンオキシドが94モル%且つブチレンオキシドが6モル%とし、実施例1Aと同様の操作を行なうことにより、重合工程および脱揮工程を行うことにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂を得た。この樹脂に含まれる溶媒濃度は、0.45質量%であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、123,000であった。分子量分布(Mw/Mn)は、1.40であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂の融点mpは47.2℃であった。上記方法により測定されたポリアルキレンオキシド系樹脂の含有水分量は、90ppmであった。
[実施例1E]
図7に示された基本構成を備える送液手段が、表8の仕様で稼働された。オープンヘッドドラムに充填されており固体状であるポリアルキレンオキシド系樹脂は、メルターを用いてこのオープンヘッドドラムから抜き出されで、第一導入口を通じて溶融槽に投入された。この溶融槽は、加熱体で加温されて、この溶融層の温度(温度T1)が100℃(目標値)になるように調整された。この温度T1は、送液工程の開始から完了までの間、監視された。この溶融槽へのポリアルキレンオキシド系樹脂の投入に先立ち、この溶融槽の内部には、第二導入バルブ及び第二排出バルブが開けられて、不活性な気体としての窒素が流通された。この気体の酸素濃度は、0体積%である。この気体の露点は、−30℃である。この溶融槽へのポリアルキレンオキシド系樹脂の投入後、この第二導入バルブ及び第二排出バルブの開閉状態が調節されて、溶融槽内の圧力(圧力P)が20.6MPa(目標値)になるように調整された。この圧力Pは、送液工程の開始から完了までの間、監視された。次に、第一排出口が開けられるとともに、ポンプが稼働された。ポリアルキレンオキシド系樹脂が混合機としての二軸型押出機へ供給された。このポンプのシャフトの回転数(回転数R)は、4.9rpm(目標値)とされた。この回転数Rは、送液工程の開始から完了までの間、監視された。第一の送液ラインの温度(温度T2)は、第一のバンドヒーターで100℃(目標値)になるように調整された。このポンプの温度(温度T3)は、第二のバンドヒーターで150℃(目標値)になるように調整された。第二の送液ラインの温度(温度T4)は、第三のバンドヒーターで150℃(目標値)になるように調整された。この温度T2、温度T3及び温度T4についても、送液工程の開始から完了までの間、監視がなされた。なお、この実施例1Eのポンプには、ギアポンプ(Leistritz社製)[タイプA]が用いられた。表8において、このポンプは、タイプAとして記されている。圧力P、温度T1、回転数R、温度T2、温度T3及び温度T4の調整が完了すると、まず、第二の送液ラインの押出機側の端から吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の吐出質量(ポンプから吐出されるポリアルキレンオキシド系樹脂の単位時間当たりの吐出質量)について、上記の方法で確認がなされた。この実施例1Eでは、この吐出質量の平均値Aは25.58g/30secであり、その振れは5.63%であった。この吐出質量の確認後、この送液手段から二軸型押出機にポリアルキレンオキシド系樹脂が供給された。この二軸型押出機で、ポリアルキレンオキシド系樹脂に添加剤が混合されつつ、シート(厚さ=0.02mm、幅=160mm)が成形された。シートの成形速度は、15.3m/minである。なお、添加剤には、充填剤としてのシリカ(日本アエロジル社製の商品名「R972」)が用いられた。このシリカの配合量は、ポリアルキレンオキシド系樹脂100質量部に対して、1.96質量部とされた。送液手段を稼働してこの二軸押出機によるシート成形が開始されてから、10分毎に、成形品のサンプリングが10回実施された。サンプリングされた計10個の成形品について、厚さ、幅及び成形品中の充填剤量(シリカの含有量)が計測された。厚さ及び幅については最大値及び最小値を確認して、充填剤量については10個のデータについて平均値を求めて、成形品の品質安定性が確認された(評価1)。なお、充填剤量は次の方法で計測された。まず、サンプルから約5gから15g程の小片が採取され、この小片の質量が正確に秤量された。この小片が、分析試料として用いられた。次に、この分析試料が粉体測定用のホルダーに入れられた。ヘリウム雰囲気下で蛍光X線分析装置(フィリップス社製のPW−2404型)による珪素の定量分析が行われた。得られた珪素の定量分析結果から、充填剤に用いられたシリカが、二酸化珪素で構成されると仮定して、サンプルに含まれる充填剤量が求められた。なお、この吐出質量が計測されたサンプルが用いられて、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及び含有水分量が、上記の方法で計測された(評価2)。これらの結果が、表8に示されている。
[比較例1E並びに実施例2E及び3E]
圧力P、回転数R、温度T3、温度T4を変えて、吐出質量の振れ精度Fを表8の通りとした他は、実施例1Eと同様にして実験を行った。これらの実験の結果は、表8に示されている。比較例1Eの振れ精度Fは9.70%であり、実施例2Eの振れ精度Fは5.91%であり、実施例3Eの振れ精度Fは2.83%であった。なお、比較例1Eのシートの成形速度は15.3m/minであり、実施例2Eのシートの成形速度は49.4m/minであり、実施例3Eのシートの成形速度は43.3m/minとされた。
[実施例4E、5E及び6E]
ポンプ並びに圧力P、回転数R、温度T3及び温度T4を変えて、吐出質量の振れ精度Fを表8及び表9の通りとした他は、実施例1Eと同様にして実験を行った。このポンプには、ギアポンプ(テクノベル社製の商品名「GPU−156、CDS−18−3」)[タイプB]が用いられた。表8及び表9において、このポンプは、タイプBとして記されている。これらの実験の結果は、表8及び表9に示されている。実施例4Eの振れ精度Fは5.51%であり、実施例5Eの振れ精度Fは5.84%であり、実施例6Eの振れ精度Fは5.67%であった。
[比較例2E]
送液手段に変えて、ホッパー及びフィーダーからなる供給設備を用いて、ペレット状のポリアルキレンオキシド系樹脂が二軸型押出機に供給された。このフィーダーは、重量式のシングルスクリューフィーダー(K−TRON社製のK2GL型、スクリュータイプ=スクリュー9ACタイプ)であり、デジタル式の質量検知器を備えている。このフィーダーは、この質量検知器で供給量を検知し、この検知された質量に基づいてスクリューの回転数が制御されるように構成されている。なお、このフィーダーでは、供給量は9.0kg/hに設定された。
[比較例3E]
二軸型押出機に供給するポリアルキレンオキシド系樹脂を粉状とした他は、比較例2Eと同様にして実験を行った。
表8及び表9に示されるように、実施例の仕様で二軸型押出機に供給して成型された成形品は一定の品質が維持されており、成形品に添加されている充填剤は均一な組成で分散していることが確認された。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例2Eでは、供給開始後1時間で、フィーダーのスクリューと外套との間に詰まったペレット状のポリアルキレンオキシド系樹脂がスクリューとの接触で溶融して、供給設備に目詰まりが発生した。これにより、ポリアルキレンオキシド系樹脂の供給ができなくなり、実験が中止された。比較例3Eにおいては、供給開始後3時間で、ホッパーの内壁に粉状のポリアルキレンオキシド系樹脂が付着し、吐出質量の変動が激しくなったので、実験が中止された。