JP5693859B2 - 電動車両用のバッテリ冷却装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動車両用のバッテリ冷却装置に関し、特に、バッテリを形成する複数のバッテリセル間に送風手段で冷却風を送風し、バッテリセル間に温度差が生じるのを防止して正確なバッテリ残量の管理を行うのに好適な電動車両用のバッテリ冷却装置に関する。
電動車両用の電源装置として、バッテリケース内に複数のバッテリセルからなる複数のバッテリモジュールを収容したバッテリが知られる。そして、複数のバッテリセル間の温度差を無くすための工夫もされている。例えば、特許文献1には、送風手段でバッテリケースに供給される冷却風の流れ方向をバルブで切り替えることによってバッテリセルの温度を均等化するようにしたバッテリの冷却構造が提案されている。具体的には、特許文献1は、バッテリセル間に延びる通気孔を含む冷却風の通路に流れる冷却風の流れ方向を所定のタイミングで反転させることで、バッテリセル全体の温度均等化を図る蓄電装置(バッテリ)の冷却構造を開示している。
特許文献1に記載されている従来のバッテリ冷却構造によれば、冷却風の吸入部および排出部自体で冷却風の吸入・排出方向を変えることなく、バッテリ内部を流れる冷却風の向きを反転させることができる。したがって、吸入部の上流部にだけ水やほこりを排除するフィルタ等を設ければ、吸入部より下流のバッテリ内部で冷却風の向きを変えたとしても、冷却風に水やほこりが混入することはない。
特開2007−179944号公報
上述のように、特許文献1に記載されている従来のバッテリ冷却構造によれば、水やほこりが冷却風に混入することがないという利点がある。しかし、この利点を得るためには、冷却風の吸入および排出の両方の通路を兼ねる通路部分を形成し、この通路部分の、吸入路および排出路としての機能を同時に入れ替えるバルブ機構が必要となる。このために、通路形成に対する制約が大きいだけでなく、バルブを使用することによって部品点数が増加し、それに伴って組み立て工数が増大するため、コストの高いシステムになってしまう。特に、このような従来の冷却構造を、自動二輪車に搭載されるバッテリの冷却に採用する場合は、冷却風通路のレイアウトの自由度や低コスト化が四輪車の場合よりもさらに強く要求される。
本発明の目的は、上記従来技術の課題に対応し、冷却風への水やほこりの混入を防止でき、かつ、部品点数の増加や組み立て工数の増大、さらには冷却風通路のレイアウトの自由度や低コスト化を図るのに好適な電動車両用のバッテリ冷却装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明は、電動車両に搭載されるバッテリに、該バッテリを冷却する冷却風を導入するための冷却風通路と、前記バッテリの温度が所定上限温度以上である間、前記冷却風通路に冷却風を流通させる送風手段とを有する電動車両のバッテリ冷却装置において、前記冷却風通路が、車両の走行時に前記送風手段の第1方向の駆動によりフィルタ手段を介して導入された外気を冷却風として前記バッテリに導入する第1の冷却風通路と、車両の停止時に前記送風手段の前記第1方向と反対方向である第2方向の駆動により外気を直接導入して冷却風として前記バッテリに導入する第2の冷却風通路とからなり、前記第2の冷却通路が、前記第1の冷却通路から前記バッテリに冷却風が導入される場合には、該バッテリを冷却した後の冷却風の排出通路として機能し、前記第1の冷却通路が、該第2の冷却風通路から前記バッテリに冷却風が導入される場合には、該バッテリを冷却した後の冷却風の排出通路として機能する点に第1の特徴がある。
また、本発明は、前記フィルタ手段が、前記電動車両のステアリング軸を枢支するヘッドパイプと略同一高さに設けられ、かつ、前記ヘッドパイプより下方に配置する前記バッテリの下部まで延びる前部連結管に接続されており、前記送風手段が前記バッテリより上方に設けられていて、後部連結管によって前記バッテリに連結されているとともに、前記第1の冷却風通路を通過した冷却風が、前記フィルタ手段、前記前部連結管、前記バッテリ、前記後部連結管、および前記送風手段を、これらの順番で流通し、前記第2の冷却風通路を通過した冷却風が、前記送風手段、前記後部連結管、前記バッテリ、前記前部連結管および前記フィルタ手段を、これらの順番で流通するように構成されている点に第2の特徴がある。
また、本発明は、前記バッテリは、バッテリケース内で上下2段にそれぞれ複数配置されたバッテリセルからなるバッテリモジュールが、水平に複数配列されてなり、第1の冷却風通路および前記第2の冷却風通路から該バッテリ(36)内に導入された冷却風が、バッテリセル間を上下に冷却風が流通する経路を含んでいる点に第3の特徴がある。
また、本発明は、前記送風手段の、外部へ通ずる開口が、車体の側面カバーによって覆われている点に第4の特徴がある。
さらに、本発明は、前記バッテリの上部温度を検出する上部温度センサと、前記バッテリの下部温度を検出する下部温度センサとを備え、電動車両が停止時であって、かつ前記上部温度と前記下部温度との差が所定温度差以上ある場合に、前記第1の冷却風通路または第2の冷却風通路を選択して前記上部温度と下部温度との差を解消するために前記送風手段の駆動方向を切り替えるように構成されている点に第5の特徴がある。
第1の特徴を有する本発明によれば、通常の車両走行時に、水やほこりが入り込みやすい状態で、かつ電動モータの駆動によりバッテリが高温となりやすい状態では、フィルタ手段を介した第1の冷却通路からバッテリの冷却風を導入し、車両が停止していて水やほこりの影響が少ない状態でバッテリの温度も高くなりにくい状態の場合は、バッテリの冷却風の流通方向を変えて第2の冷却風通路から冷却風を導入するので、バッテリの均等な冷却が可能となる。さらに、送風手段の駆動方向を切り替えて第1及び第2の冷却風通路をそれぞれ吸入・排出通路として切り替え、それぞれを兼用して用いることにより、第1及び第2の冷却風通路をそれぞれ独立して個別に設計できる自由度が高まるとともに冷却システムとして特別な部品を用いることなくバッテリへの冷却方向を切り替えることができる。
第2の特徴を有する本発明によれば、地面から離れた比較的高い位置にフィルタ手段および送風手段が設けられるので、第1の冷却風通路および第2の冷却風通路のいずれから空気を導入する場合も、水やほこりに影響されにくい。また、第1の特徴と合わせて、第2の冷却風通路は電動車両が停止中にしか機能しないので、フィルタ手段を設けない送風手段側から空気を導入しても水やほこりに影響されにくい。
第3の特徴を有する本発明によれば、上側のバッテリセルと下側のバッテリセルとの間で熱交換が可能である。
第4の特徴を有する本発明によれば、送風手段の開口(第1の冷却風通路の排気口)を外部から覆い隠すことができるとともに、外部から水や泥が直接浸入するのを防止する効果を期待できる。
第5の特徴を有する本発明によれば、水やほこりの影響を受けにくい電動車両の停止中に、第1の冷却風通路と第2の冷却風通路とを切り替えるように送風手段を駆動することにより、バッテリモジュールの上下位置間で均等な冷却が可能になる。これにより、バッテリ温度の検出精度が向上し、これに伴い、バッテリ充電状態の検出精度の向上が図られる。
本発明の一実施形態に係るバッテリ冷却装置を搭載した電動車両の側面図である。 本発明の一実施形態に係るバッテリ冷却装置を搭載した電動車両の斜視図である。 図2に示した電動車両の要部斜視図である。 電動車両の電気系統図である。 メインバッテリの斜視図である。 メインバッテリの分解斜視図である。 メインバッテリの側面断面図である。 本発明の一実施形態に係るバッテリ冷却装置の冷却風通路を示すブロック図である。 メインバッテリの側面断面図である。 冷却ファン制御装置の要部機能を示すブロック図である。 冷却ファンの駆動制御のための要部フローチャートである。 温度差解消ルーチンの詳細を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリ冷却装置を搭載した電動車両の左側面図、図2は同左前方斜視図である。電動車両1は低床フロアを有するスクータ型二輪車であり、車体フレームFに各構成部分が直接または他の部材を介して間接的に取り付けられている。
図1、図2において、車体フレームFは、前部分であるヘッドパイプ26と、ヘッドパイプ26に先端が接合されて後端が下方に延びているダウンフレーム27と、ダウンフレーム27の下部に連結されて車体幅方向左右にそれぞれ分岐して車体後方寄りに延びている一対のアンダフレーム28と、アンダフレーム28から車体上後方に延びているリヤフレーム29とからなる。
ヘッドパイプ26は、ステアリング軸20を回動自在に支持する。ステアリング軸20の上部にはステアリングハンドル25が連結され、下部には前輪WFを支持するフロントフォーク24が連結される。
ヘッドパイプ26の前部にはパイプからなるフロントステー50が結合され、このフロントステー50の前端部には、ヘッドライト51が取り付けられ、ヘッドライト51の上方にはブラケット57で支持されるフロントキャリア19が設けられる。
車体フレームFの、アンダフレーム28とリヤフレーム29との中間領域に、車体後方に向けて延在するピボットプレート30が接合されており、このピボットプレート30には、車体幅方向に延在しているピボット軸32が設けられ、このピボット軸32によってスイングアーム22が上下揺動自在に支持される。スイングアーム22には、車両駆動源としての電動モータ23が設けられ、モータ23の出力は後輪車軸21に伝達され、後輪車軸21に支持された後輪WRが駆動される。なお、後輪車軸21を含むハウジングとリヤフレーム29とは、リヤサスペンション33によって連結される。ピボットプレート30の、下方延長部分には、停車中に車体を支持するサイドスタンド31およびメインスタンド34が回動可能に取り付けられる。
複数のバッテリセルをバッテリケース37に内蔵した高電圧(例えば72ボルト定格)のメインバッテリ36がアンダフレーム28に搭載される。メインバッテリ36の前部には、バッテリ冷却風としての空気をバッテリケース37内に導入するダクト64が接続管65を介して連結され、ダクト64の上方には、接続管66を介してエアクリーナ(フィルタ手段)68が設けられる。エアクリーナ68はヘッドパイプ26とほぼ同じ高さに設けられる。ダクト64並びに接続管65、66を統合的に前部連結管110と呼ぶ。
バッテリケース37の後部にはダクト(以下、「後部連結管」と呼ぶ)69が連結され、この後部連結管69の後部は、送風手段である冷却ファン70に連結される。冷却ファン70は、アンダフレーム28から斜め上後方に延在しているリヤフレーム29に沿って配置される。冷却ファン70は、好ましくはシロッコファンであり、前部連結管110や後部連結管69を通じてバッテリケース37内に送風される空気の流れ方向を反転させることができるように回転方向を反転可能に構成される。
リヤフレーム29の上にはメインバッテリ36を充電する外部の充電器から延びる充電ケーブルに接続される給電側コネクタ(後述)を結合することができる受電側コネクタ78が設けられる。リヤフレーム29には、さらにリヤキャリヤ59やテールライト52が設けられる。
左右一対のリヤフレーム29の間には荷室38が設けられ、この荷室38から下部に突出している荷室底部38aには、メインバッテリ36で充電される低電圧(例えば、12ボルト定格)のサブバッテリ40が収容される。荷室38の上には、荷室38の蓋を兼用する運転者シート39が設けられる。
車体フレームFは、合成樹脂製の車体カバーで覆われる。車体カバーは、ハンドルカバー56、フロントカバー42、レッグシールド43、低床フロア44、フロアサイドカバー45、アンダカバー46、シート下前部カバー47、サイドカバー48、およびリヤカバー49とを備える。
フロントカバー42は、ヘッドパイプ26やブラケット50等を前方から覆う。レッグシールド43はフロントカバー42に連なり、運転者シート39に座った運転者の脚部の前方に位置するように配置され、ヘッドパイプ26、前部連結管110のうち、ダクト64および接続管66を運転者シート39側から覆う。低床フロア44はレッグシールド43の下部に連なり、フロアサイドカバー45は低床フロア44に連なる。低床フロア44はバッテリケース37を上方から覆い、フロアサイドカバー45はアンダフレーム28およびバッテリケース37を車体左右側から覆う。
アンダカバー46は左右のフロアサイドカバー45の下縁間に渡される。シート下前部カバー47は荷室38を前方から覆うようにして低床フロア44の後端から立ち上がる。左右一対のサイドカバー48は荷室38を左右から覆うようにして前記シート下前部カバー47の両側に連なる。リヤカバー49は後輪WRを上方から覆ってサイドカバー48に連なる。
図3は、電動車両1の要部を示す要部斜視図である。図3において、図2に示したシート下前部カバー47は取り外されている。シート前部カバー47を取り外した電動車両1の内部には、冷却ファン70や荷室38が見られる。荷室38は、リヤフレーム29、29間に架け渡されたサブフレーム35に接合されたステー35a、35bによって支持されている。冷却ファン70は、車体の右側に偏倚して位置しており、ファン排気口41を車体の左側に向けている。なお、ファン排気口41は、後述するように冷却ファン70の逆回転によりファン吸気口としても機能する。冷却ファン70は、モータ23を駆動するためのパワー・ドライブ・ユニット(PDU)のケース71aに3本のボルト53で固定される。
図4は、電動車両の電気系統図である。図4において、PDU71は制御ユニット(ECU)を含む。PDU71はヒューズ72および第1リレースイッチ73を介してメインバッテリ36のプラス側端子に接続される。第1リレースイッチ73には第2リレースイッチ74および抵抗76からなる直列回路が並列に接続される。メインバッテリ36およびサブバッテリ40は、充電器75によって外部電源PSから供給される電力で充電することができる。充電器75は給電側コネクタ77を備え、車両に設けられる受電側コネクタ78と接続可能である。受電側コネクタ78はDC−DCコンバータ79に接続される。
DC−DCコンバータ79は、受電側コネクタ78に接続される一対のラインL1、L2の一方L1に介挿される電界効果型トランジスタ(FET)80と、充電器76からの電圧を低電圧(例えば12ボルト)に降下させるためラインL1、L2に接続される電圧降下回路81とを備える。ラインL1、L2は、高電圧の充電電流でメインバッテリ36を充電するため、第2リレースイッチ74および抵抗76からなる直列回路と、第1リレースイッチ73との並列回路を介してメインバッテリ36に接続される。電圧降下回路81の出力側はサブバッテリ40に接続される。
PDU71に内蔵されたECUにはサブバッテリ40がメインスイッチ82を介して接続され、制御用電力がサブバッテリ40から供給される。サブバッテリ40はメインスイッチ82を介してバッテリ管理ユニット(BMU)83にも接続され、BMU83は第1リレースイッチ73および第2リレースイッチ74のオン・オフを指示する機能を有する。
動作時、メインスイッチ82をオンにすると、BMU83は第2リレースイッチ74をオンにしてメインバッテリ36から第2リレースイッチ74、抵抗76およびヒューズ72を介してPDU71に電流を流し、その後、第1リレースイッチ73をオンにする。このように、第2リレースイッチ74をオンにした後に第1リレースイッチ73をオンにするのは、PDU71に設けられているコンデンサへの突入電流が第1リレースイッチ73に流れるのを防止するためである。
なお、第1リレースイッチ73、第2リレースイッチ74およびBMU83は、メインバッテリ36とともにバッテリケース37に収納することができる。
図5はメインバッテリの構成を示す車体左前方からの斜視図、図6はメインバッテリを構成するモジュールの分解斜視図である。図5、図6において、符号FRは、車体前方方向を示し、符号Lは車体左方向を示す。メインバッテリ36は、車体前後方向に並べて配置される3つのバッテリバッテリモジュール2を備える。但し、図6には、3つのモジュールのうち1つを示す。各バッテリバッテリモジュール2は、上下2段に配置されて車体幅方向に所定の隙間を設けて並べられた複数の(ここでは15組の)バッテリセル(図5、図6には現れていない)からなるセルユニット3と、セルユニット3に対して車体前後方向にそれぞれ配置される前壁4および後壁5と、前壁4の前方に配置されるカバー6とからなる。前壁4および後壁5には、それぞれ高さ方向中央部にあって車幅方向に延びるリブ4a、5aがそれぞれ設けられる。
セルユニット3の上面には、車体幅方向に所定間隔で配置され、車体前後方向に延びる補強リブ7aを有する上壁7が設けられる。上壁7の各補強リブ7a間には車体前後方向に長いスロット7bが形成される。セルユニット3の下面には、上壁7と同様の形状を有する下壁(補強リブ7aのみが図示されている)が設けられる。さらに、セルユニット3は、車体幅方向両側に配置される側壁8を有する。
各バッテリセルは、車体前方に向けて配列された電極Dを備え、各バッテリセルの2つの電極D間には内圧開放弁9が設けられる。前壁4の、内圧開放弁9に対向する位置には上下2段に渡って車体幅方向水平に延びる電解液案内路10が設けられ、この電解液案内路10は上下方向に延びる電解液ドレイン11に連通接続される。この電解液ドレイン11は車体幅方向の一方側(この例では左側)に集約して配置し、メンテナンスをしやすくしている。
カバー6の車幅方向両端下部にはそれぞれ凸部6a、6aが形成される。この両端の凸部6a、6a間の空間領域12はメインバッテリ36がバッテリケース37に収容されたときにバッテリケース37の底部との間に接触しない部分である。したがって、バッテリケース37に収容された状態では、この空間領域12はメインバッテリ36の下面とバッテリケース37との間に、車体前後方向に貫通する隙間を形成する。
隣接するバッテリバッテリモジュール2の間には、間隙13が形成されるが、この間隙13は前記リブ4a、5aによって上下に2分割される。したがって、リブ4a、5aによって上下2つの部分に分割された間隙13の各部分間での空気の流通が阻止される。したがって、メインバッテリ36の下部と上部との間では、空気は間隙13を流れることなく、前記スロット7bを通って流通する。
各バッテリモジュール2の側壁8のうち、車体左側の側壁8には陽極接続端子14、陰極接続端子15、陽極ケーブル16、陰極ケーブル17、電圧・温度監視基板18、および通信コネクタ67が設けられる。陽極ケーブル16および陰極ケーブル17は、側壁8に固定されるケーブルガイド84、85で保持される。
バッテリセルは、並列接続される3個を1組として、各組を直列接続して所定のバッテリ電圧(例えば72ボルト)を得るように構成される。矢印86によってバッテリセルの接続ラインを模式的に示した。この接続ライン86の一端は陽極接続端子14に接続され、他端は陰極接続端子15に接続される。
図5に示すように、陽極ケーブル16の端部は、3つのバッテリモジュール2のうち、車体前方側のものの陽極接続端子14に接続され、陰極ケーブル17の先端は、3つのバッテリモジュール2のうち、車体後方側のものの陰極接続端子15に接続される。そして、車体前方側のバッテリモジュール2の陰極接続端子15は、隣接する中央バッテリモジュール2の陽極接続端子14に接続され、中央バッテリモジュール2の陰極接続端子15は、車体後方側のバッテリモジュール2の陽極接続端子14に接続される。つまり、各バッテリモジュール2は直列に接続される。
3つのバッテリモジュール2の電圧・温度監視基板18は湾曲させて配線されたハーネス87によって互いに接続される。車体後方側バッテリモジュール2の、上壁7の車体右側には充放電管理を行う均等化ユニット88が設けられ、均等化ユニット88から延びたハーネス89は、電圧・温度監視基板18に接続される。均等化ユニット88には、電流測定基準を設定するシャント基板とヒューズが一体化された充放電電流測定ユニット90が併設される。
樹脂モールドされる電圧・温度監視基板18は、バッテリモジュール毎に、電圧および温度を監視する。具体的な温度検知は、各バッテリモジュール2の上下にそれぞれ配置される温度センサ91U、91Lによって行われる。なお、温度センサ91Lは、図6には記載されていないが、図8に関して記載している。温度センサ91U、91Lは、上壁7および下壁(図示せず)の車幅方向中央に、前記スロット7bから離して設置するのがよい。空気流に直接影響を受けないようにするためである。温度センサ91U、91Lは各バッテリモジュール2に設けられ、該バッテリモジュール2の上部領域および下部領域の温度を代表する。そして、上部領域および下部領域それぞれに設けられる3つの温度センサ91U、91Lによる検出値の平均でメインバッテリ36の上部および下部の温度を代表させるのがよい。但し、温度センサ91U、91Lの配置はこれに限らず、要は、バッテリケース37内での上部領域と下部領域とにおけるそれぞれの温度が個別に測定できればよい。したがって、温度センサ91U、91Lは、必ずしも3つのバッテリモジュール2すべてに設けるのに限らない。
図7はバッテリケース37に収容された状態のメインバッテリ36を示す側面断面図である。図7において、バッテリケース37は、ケース前板37f、ケース後板37r、ケース上板37u、ケース底板37b、およびケース側板37sからなり、バッテリモジュール2を収容する空間を形成する。車体前方側のバッテリモジュール2には点線でバッテリセル92の外形を示す。残りの2つのバッテリモジュール2にも、同様にバッテリセル92が上下2段に配置される。
バッテリケース37の車体前方側の壁(ケース前板)37fには、接続管65を接続して、接続管65とバッテリケース37内とで空気の流通を可能にするための開口(便宜上「吸気口」という)93が形成される。一方、バッテリケース37の車体後方側の壁(ケース後板)37rには、後部連結管69とバッテリケース37内とで空気の流通を可能にするための開口(便宜上「排気口」という)94が形成される。
ケース前板37fの内面には、吸気口93より上方に、車幅方向に延在するリブ37aが設けられ、ケース前板37fと車体前方側バッテリモジュール2のカバー6との間にできる間隙をこのリブ37aで上下に2分している。一方、ケース後板37rにも同様に、排気口94より下方に、車幅方向に延在するリブ37cが設けられ、ケース後板37rと車体後方側バッテリモジュール2の後壁5との間にできる間隙をこのリブ37cで上下に2分している。
冷却ファン70の回転による冷却風の通路は、エアクリーナ68、前部連結管110、バッテリケース37、および後部連結管69からなる。
冷却ファン70は、後述する温度条件および電動車両1の走行状態(例えば、走行速度)によって駆動開始、駆動停止するとともに、正回転または逆回転するように切り替えられる。そして、冷却ファン70が正回転する(バッテリケース37内から排気口94を通じて空気を排気する方向の回転する)と、エアクリーナ68から空気が吸入され、その空気は、前部連結管110を通って吸気口93からバッテリケース37内に導入される。バッテリケース37内に導入された空気はリブ37aによって上方に流れるのを阻止されるので、矢印A1に沿って下方に案内され、前記凸部6aによって形成された領域(間隙)12を通ってバッテリモジュール2の下部12aに回る。そして、矢印A2〜A4で示すように、バッテリセル92の間を通り、スロット7bを抜けてバッテリケース37の上部空間37dに至る。上部空間37dに流れ込んだ空気はリブ37cによって、下方に流れるのを阻止されるので、排気口94から後部連結管69に流れ込み、冷却ファン70で排気される。
一方、冷却ファン70が逆回転された場合の空気の流れは図8に示すようになる。図8において、図7と同符号は同一部分を示す。図8において、冷却ファン70が逆回転される(バッテリケース37内から吸気口93を通じて空気を排気する方向に回転する)と、ファン排気口41から空気が取り込まれ、その空気は後部連結管9を通って排気口94からバッテリケース37内に導入される。バッテリケース37内に導入された空気はリブ37cによって下方に流れるのを阻止されるので、バッテリケース37の上部空間37dから矢印A5〜A7(前記矢印A2〜A4の逆方向)に沿ってバッテリモジュール2の上部から、スロット7bを抜けてバッテリセル92の間を通り、バッテリモジュール2の下部12aに流れる。そして、バッテリモジュール2の下部に流れ込んだ空気はリブ37a、37cによって、上下方に流れるのを阻止されるので、矢印A8(前記矢印A1の逆方向)に示すように吸気口93から前部連結管110を経由してエアクリーナ68を通り、外部に排気される。
図9は、バッテリ冷却装置における空気(冷却風)の流れ経路を簡略化して示す図である。なお、図9では、温度センサ91U、91Lは、それぞれ1つで代表して示す。図9に示すように、冷却ファン70が正回転時には、エアクリーナ68、前部連結管110、吸気口93、バッテリケースの下部空間12a、バッテリセル92間、バッテリケースの上部空間37d、排気口94、および後部連結管(第2の冷却風通路)69を、これら構成要素の列挙順に矢印100で示すように冷却風が流れ、冷却ファン70から排気される。
これに対して、冷却ファンが逆回転時には、冷却ファン70によって取り込まれた冷却風は、後部連結管69、排気口94、バッテリケース37の上部空間37d、バッテリセル92間、バッテリケースの下部空間12a、吸気口93、前部連結管(第1の冷却風通路)110、エアクリーナ68を、これら構成要素の列挙順に矢印101で示すように流れる。
次に、前記冷却ファン70の回転方向の駆動制御について説明する。図10は、冷却ファン制御装置の要部機能を示すブロック図である。図10において、車速判断部102は、車速センサ(モータ23の回転数センサ)103で検出される車速Vが、基準車速Vref以下か否かを判断し、車速Vが基準車速Vref以下であれば、車両停止中であることを示す信号を出力する。基準車速Vrefは、電動車両1が路面の水やほこりを飛び散らせないような、実質的に停止している状態の車速(例えば0〜5km/h)に設定する。
温度超過判断部104は、温度センサ(上部温度センサ)91Uおよび温度センサ(下部温度センサ)91Lで検出される温度Tu、Tlのうち高い方(以下、「バッテリ温度Tb」という)が所定の上限温度Tmax以上か否かを判断し、バッテリ温度Tbが上限温度Tmax以上ならば、ファン作動指示を出力する。上限温度Tmaxは、例えば40°〜60°Cの範囲内で予め設定する。
温度差判断部105は、上部温度センサ91Uで検出された温度Tuと、下部温度センサ91Lで検出された温度Tlとの差ΔTが所定値ΔTrefを以上か否の判断と、温度TuおよびTlのいずれが高いかの判断とを行う。所定値ΔTrefは、例えば、0°C〜5°Cの範囲で設定する。温度差判断部105は、車速Vが基準車速Vref以下である場合、つまり実質的に停車している場合であって、温度Tu、Tlの少なくとも一方が所定の上限温度Tmax以上温度である場合に駆動され、冷却ファン70の回転方向を切り替える信号を出力する。
この構成により、冷却ファン70は、温度Tu、Tlの少なくとも一方が所定の上限温度Tmax以上である場合に駆動される。メインスイッチ82がオンになって最初に冷却ファン70を駆動するときは、前記第1の冷却風通路100を冷却風が流れる方向(正回転方向)に冷却ファン70を駆動するように設定する。そして、温度TuとTltとの差や両者の大小関係により冷却ファン70の回転方向が選択切り替えられる。
図10に示した機能はPDU71に含まれるECU内のマイクロコンピュータによって実現できる。
図11は、冷却ファン70の駆動制御のための要部フローチャートである。ステップS1では、メインスイッチ82がオン操作されたか否かが判断され、この判断が肯定ならばステップS2に進む。ステップS2では、バッテリ温度Tbが上限温度Tmax以上か否かが判断され、判断が肯定ならばステップS3に進む。
「ステップS3では、冷却ファン70を駆動する。上述のように、このときの回転方向は正回転方向である。ステップS4では、車速Vが基準車速Vref(例えば0〜5km/h)以下か否かを判断する。この判断が肯定ならば、ステップS5に進んで温度差解消ルーチンを実行する。」
「車速Vが基準車速Vref以下でなければ、ステップS6に進んでメインスイッチ82がオン操作されているか否かが判断される。メインスイッチ82がオフになっていれば、ステップS7でバッテリ温度Tbが上限温度Tmax以上か否かが判断され、判断が肯定ならばステップS5の温度差解消ルーチンへ進む。ステップS7の判断が否定の場合、つまりバッテリ温度Tbが上限温度Tmax未満であれば、ステップS8に進んで冷却ファン70を停止させる。ステップS6でメインスイッチ82がオンのままであると判断された場合は、ステップS2に進む。」
「ステップS5の温度解消ルーチンの後には、ステップS9で、車速Vが基準車速Vref以下か否かを判断する。車速Vが基準車速Vref以下でなければ(実質的に停車していなければ)ステップS6に進む。車速Vが基準車速Vref以下であれば、ステップS9からステップS10に進む。ステップS10では、上部温度Tuと下部温度Tlとの差ΔTが所定値ΔTref以下か否か、つまりバッテリモジュール2の上下における温度差が解消されたか否かが判断される。この判断が肯定ならば、前記ステップS8に戻って、冷却ファン70の駆動を停止させる。ステップS10が否定ならば、ステップS5に戻る。」
図12は、前記ステップS5の温度差解消ルーチンの詳細を示すフローチャートである。ステップS51では、上部温度センサ91Uで検出された上部温度Tuが下部温度センサ91Lで検出された下部温度Tlより高いか否かが判断される。この判断が肯定ならば、ステップS52に進んで冷却ファン70の回転方向を切り替え、逆回転させる。
ステップS53では、上部温度センサ91uで検出された上部温度Tuが下部温度センサ91lで検出された下部温度Tlより低いか否かが判断される。この判断が肯定ならば、ステップS54に進んで冷却ファン70の回転方向を切り替え、正回転させる。
上述のように、本実施形態によれば、電動車両1が走行中はバッテリ温度Tbが上限温度Tmaxより高ければ、冷却ファン70を正回転させて、冷却風を第1の冷却風通路101を介して冷却風を導入してメインバッテリ36を冷却する。一方、電動車両1が実質的に停車している場合は、バッテリ温度Tbが上限温度Tmaxより高く、かつ上部温度Tuと下部温度Tlとの温度差ΔTが所定値ΔTrefより高い場合に冷却ファン70を駆動し、その回転方向は上部温度Tuおよび下部温度Tlのいずれが高いかによって決定する。
本発明を、実施形態に沿って説明したが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、3つの上部温度センサ91Uや下部温度センサ91Lの出力を平均して上部温度Tuや下部温度Tlとしたが、これらは3つの温度センサ91U、91Lの平均値に限らず、3つの温度センサ91U、91Lの出力のうち、最大値を上部温度Tuや下部温度Tlとしてもよい。
1…電動車両、 2…バッテリモジュール、 3…セルユニット、 4…前壁、 5…後壁、 6…カバー、 7…上壁、 7b…スロット、 8…側壁、 12…間隙、 20…ステアリング軸、 26…ヘッドパイプ、 13…間隙、 36…メインバッテリ、 37c…リブ、 37…バッテリケース、 37d…上部空間、 48…サイドカバー、 64…ダクト、 65、66…接続管、 68…エアクリーナ(フィルタ手段)、 69…後部連結管(第2の冷却風通路)、 70…冷却ファン(送風手段)、 71…PDU、 91U…上部温度センサ、91L…下部温度センサ、 93…吸気口、 94…排気口、 100…第1の冷却風流通方向、 101…第2の冷却風流通方向、 110…前部連結管(第1の冷却風通路)

Claims (4)

  1. 電動車両(1)に搭載されるバッテリ(36)に、該バッテリ(36)を冷却する冷却風を導入するための冷却風通路と、前記バッテリ(36)の温度(Tb)が所定上限温度(Tmax)以上である間、前記冷却風通路に冷却風を流通させる送風手段(70)とを有する電動車両用のバッテリ冷却装置において、
    前記冷却風通路が、前記送風手段(70)の第1方向の駆動によりフィルタ手段(68)を介して導入された外気を冷却風として前記バッテリ(36)に導入する第1の冷却風通路(110)と、前記電動車両(1)が停止状態にあると判断され、かつ前記バッテリ(36)の下部温度(Tl)より上部温度(Tu)の方が高いと判定されると、前記送風手段(70)の前記第1方向と反対方向である第2方向の駆動により外気を直接導入して冷却風として前記バッテリ(36)に導入する第2の冷却風通路(69)とからなり、
    前記第2の冷却通路(69)が、前記第1の冷却通路(110)から前記バッテリ(36)に冷却風が導入される場合には、該バッテリ(36)を冷却した後の冷却風の排出通路として機能し、
    前記第1の冷却通路(110)が、該第2の冷却風通路(69)から前記バッテリ(36)に冷却風が導入される場合には、該バッテリ(36)を冷却した後の冷却風の排出通路として機能し、
    前記フィルタ手段(68)が、前記電動車両(1)のステアリング軸(20)を枢支するヘッドパイプ(26)と略同一高さに設けられ、かつ、前記ヘッドパイプ(26)より下方に配置する前記バッテリ(36)の下部まで延びる前部連結管(110)に接続されており、
    前記送風手段(70)が前記バッテリ(36)より上方に設けられていて、後部連結管(69)によって前記バッテリ(36)に連結されているとともに、
    前記第1の冷却風通路(110)が吸入側となる際には、冷却風が、前記フィルタ手段(68)、前記前部連結管(110)、前記バッテリ(36)、前記後部連結管(69)、および前記送風手段(70)を、これらの順番で流通し、
    前記第2の冷却風通路(69)が吸入側となる際には、冷却風が、前記送風手段(70)、前記後部連結管(69)、前記バッテリ(36)、前記前部連結管(110)および前記フィルタ手段(68)を、これらの順番で流通するように構成されており、
    前記第1の冷却風通路(110)が前記バッテリ(36)を収納するケース(37)の車両前方側下部に取り付けられると共に、前記第2の冷却風通路(69)が前記ケース(37)の車両後方側上部に取り付けられており、
    前記第1の冷却風通路(110)は、前記バッテリ(36)とケース(37)との間の空間を上下に仕切るリブ(37a,37c)より低い位置で前記ケース(37)に接続され、
    前記第2の冷却風通路(69)は、前記リブ(37a,37c)より高い位置で前記ケース(37)に接続されており、
    前記第1の冷却風通路(110)が吸入側となる際には、冷却風が前記バッテリ(36)の下方から上方に向けて流れると共に、前記第2の冷却風通路(69)が吸入側となる際には、冷却風が前記バッテリ(36)の上方から下方に向けて流れるように構成されていることを特徴とする電動車両用のバッテリ冷却装置。
  2. 前記バッテリ(36)は、バッテリケース(37)内で上下2段にそれぞれ複数配置されたバッテリセルからなるバッテリモジュール(2)が、水平に複数配列されてなり、
    前記第1の冷却風通路および前記第2の冷却風通路から該バッテリ(36)内に導入された冷却風が、バッテリセル間を上下に流通する経路を含んでいることを特徴とする請求項1記載の電動車両用のバッテリ冷却装置。
  3. 前記送風手段(70)の、外部へ通ずる開口(41)が、車体の側面カバー(48)によって覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の電動車両用のバッテリ冷却装置。
  4. 前記バッテリ(36)の上部温度(Tu)を検出する上部温度センサ(91U)と、前記バッテリ(36)の下部温度(Tl)を検出する下部温度センサ(91L)とを備え、電動車両(1)が停止時であって、かつ前記上部温度(Tu)と前記下部温度(Tl)との差(ΔT)が所定温度差(ΔTref)以上ある場合に、前記第1の冷却風通路(100)または第2の冷却風通路(102)を選択して前記上部温度(Tu)と下部温度(Tl)との差(ΔT)を解消するために前記送風手段(70)の駆動方向を切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動車両用のバッテリ冷却装置。
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