以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
図1に、本発明に係る車両遠隔操作装置の構成を示す。この遠隔操作装置は、制御部である遠隔操作ECU(Electric Control Unit)1を中心に構成される。遠隔操作ECU1は、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。その内部には、障害物検出部11、車両市検出部12、軌道生成部13、軌道記憶部14、自動操縦部15を備える。遠隔操作ECU1内の各部は、ハードウェア的に区分されていてもよい。この場合は、ハードウェアの一部を共有していてもよい。ハードウェア的に区分されていないか、一部を共有している場合は、ソフトウェア的に区分されていてもよく、ソフトウェアの一部を共有していてもよい。さらに、同一のソフトウェア内で複数の機能を実現してもよい。
遠隔操作ECU1には、周辺の障害物位置を検出する周辺物センサ21、車輪の回転を検出する車輪速センサ22、操舵量を検出する舵角センサ23の出力が入力され、各車両状態量を読み込む。遠隔操作ECU1には、また、受信機24の出力信号が入力されるが、この受信機24は、運転者等の乗員が車外へと持ち出すことが可能な送信機50と相互通信して、遠隔操作の指示信号を受信する機能を有している。この送信機50は、例えば、車両のイグニッションキーと一体化されているとよい。周辺物センサ21としては、超音波センサ、レーザレーダ、赤外線センサ等を用いることができる。周辺物センサ21は少なくとも運転者側のドア近傍を含む車両の複数の箇所に配置される。例えば、外開き式の運転席ドアの場合には、ドアの前と後ろにセンサを配置するとよい。
遠隔操作ECU1は、また、操舵を行う操舵アクチュエータ31、車両を駆動するエンジン32、変速機33、制動を行うブレーキ34をそれぞれ制御する。操舵アクチュエータ31としては、例えば、電動パワーステアリング装置のアクチュエータを用いるとよい。
以下、運転者側のドアを用いた乗降が容易になるように入出庫を行う場合を例に説明する。最初に、この車両遠隔操作装置による入出庫時の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。この処理は、図示していないスイッチ等により駐車状態に設定されたとき、あるいは、遠隔操作をオンにしたときに処理を開始するとよい。あるいは、運転者が車両を停止させてから変速機の状態を後退状態に設定した時点で作動させるとよい。
最初のステップS1では、車両位置検出部12で検出した入庫開始時の車両位置と、障害物検出部11で検出したそのときのドア余裕を記憶する。入庫開始時の位置は、図示していないGPS(Global Positioning System)等の航法装置で判定した自車両位置をもとにしてもよい。あるいは、入庫開始位置を始点としてその後の走行距離に伴う舵角変化を記憶するようにしてもよい。障害物検出部11は、周辺物センサ21で検出した車両周辺の障害物との距離、位置関係、その変化に基づいて車両周辺の障害物状況を把握し、これに基づいてドア余裕を判定するものである。
ドア余裕のパラメータとしては、例えば、運転者側のドアと、そのドアに対向する障害物(言い換えると、ドア開閉動作に干渉するエリアに存在する障害物)との距離、または、運転者側のドアを利用する際の乗降スペースとしてドア周辺の乗降に用いられるエリアの面積のほか、ドアを含む車体長さ方向の所定の範囲における障害物と車体との最短距離、可能なドアの開度等を用いることができる。そのほか、ドアの開閉可否を判定する場合も含まれる。例えば、ドア開閉可能距離あるいは開閉可能開度を、基準しきい値と比較し、しきい値より大きく開閉できる場合に、開閉が容易であり、それ未満の場合には開閉が困難と判定するとよい。
その後、走行中の移動軌跡とドア余裕変動を検出し、記憶する(ステップS2)。移動軌跡の検出は、車両位置検出部12により、ドア余裕変動の検出は、障害物検出部11により、いずれもステップS1と同様の手法により行われる。この軌跡は、軌道記憶部14内にドア余裕変動と対応づけて記憶される。これを駐車位置に達するまで行い、車両位置検出部12により検出した駐車位置を記憶する(ステップS3)。
ここまでの駐車操作は、専ら運転者の操作により行ってもよいが、適切な入庫経路を算出し、その経路に沿った移動が行えるよう、誘導あるいは自動操縦により駐車を行ってもよい。
駐車位置に達したらその時点でのドア余裕をもとにしてドア開閉距離が十分か、言い換えると、運転者の乗降スペースが十分に確保されているか否かを判定する(ステップS4)。ドア余裕が十分な場合には、そのドアを利用した乗員の乗降が容易であり、不十分な場合には、乗員の乗降は困難であるから、ドア余裕は乗員の乗降の難易度を表す指標として機能する。乗降スペースが十分に確保されている場合には、駐車位置での運転者の乗降が可能であるため、駐車完了としてその後の処理をスキップして終了する。一方、乗降スペースが十分に確保されておらず、駐車位置での運転者の乗降に支障をきたすと判断した場合には、ステップS5へと移行する。
ステップS5では、乗降可能位置への移動処理を行う。ここでは、軌道生成部13が、軌道記憶部14内に記憶されている入庫時の軌跡とドア余裕変動に基づいて、入庫開始位置から現在位置までの間で、運転者の乗降スペースが確保されており、かつ、駐車位置に最も近接した地点を探索し、その地点を目的地として駐車位置からの軌跡を生成する。ここで、入庫開始位置まで戻っても運転者の乗降スペースが予め設定された所定の余裕度以上に十分でないと判定した場合には、入庫開始位置−駐車位置間で最も乗降スペースを確保できる(例えば、運転席ドアを最も大きく開くことの可能な位置)を目的地として駐車位置からの軌跡を生成する。この軌跡は、例えば、走行距離に対する舵角変化として設定される。
自動操縦部15は、操舵アクチュエータ31により舵角を制御するとともに、エンジン32、変速機33、ブレーキ34を操作して車速を制御することで、生成した軌跡に応じた走行を行い、車両を設定した目的地へと移動させる。
目的地到達後は、乗員の乗降が終了するまで待機する(ステップS6)。乗降終了の判定は、運転者が送信機50を用いて乗降を終了した旨を車両の受信機24に送信し、自動操縦部15へと通知することにより行えばよい。この通知は乗降終了のほか、移行の処理継続を促す通知等でもよい。ドアの開閉状態やシートベルト、着席の状態、車室内の人の有無などを検出し、乗降中であると判定した場合には、停車を継続すべきであるとして停車状態を維持するとよい。
運転者の乗降が終了したと判断したらステップS7へと移行し、先に設定した駐車位置から現在位置までの経路を逆にたどる経路を生成し、この経路に沿った自動操縦を行うことで、駐車位置へと自動的に移動する。
ここでは、入庫開始位置までの間で乗降容易な目的地を設定したが、入庫開始位置まで遡っても乗降が所定の余裕度以上容易であるという条件を満たす目的地が存在しない場合は、入庫開始位置までの経路をさらに延長する経路を設定し、乗降が所定の余裕度以上に達した地点で停車するようにしてもよい。
図3は、直進して移動する場合の入庫時の軌跡例を説明したものであり、運転者の操作によって入庫開始位置から駐車位置まで一旦後退し、遠隔操作ECU1によりドア開閉可能位置まで前進し、そこで運転者が下りた後、再度後退して駐車位置まで移動することにより、入庫を完了する。
次に、出庫時の操作について、図4〜図6を参照して説明する。ここでは、図4に示されるように運転者200が乗車したい車両100が駐車位置300に駐車しており、隣接する駐車位置301に別の車両101が駐車している場合を考える。ここで、車両100は右側が運転席であるとする。
車両100と車両101との横方向車間距離Cが狭く、車両100の運転席側ドアを十分に開くことができないため、現在の車両の位置関係では、運転者200が車両100に乗車するのに困難をきたすと予想されるとする。この場合、図5に示されるように車両100を距離Aだけ前進させれば、車両100の運転席側ドアを十分に開くことができ、運転者200が容易に乗降できるとする。
図6は、この出庫操作の処理フローである。最初に運転者が送信機50を用いて送信した出庫指令を受信機24により受信する(ステップS11)。次に、障害物検出部11により、車両周辺の障害物位置を把握し、それに基づいてドアの開閉余裕度を判定する(ステップS12)。現在位置で十分なドア開閉余裕があり、運転者が容易に乗降できると判断したときは、ステップS14へと移行し、ドアロックを解除し、運転者に乗車可能である旨報知する。
一方、現在位置では、十分なドア開閉余裕がないと判断した場合には、ステップS13へと移行し、自動操縦部15の指示により、操舵アクチュエータ31、エンジン32、変速機33、ブレーキ34を制御することで、乗降可能位置への移動を行う。
乗降可能位置へ到達したか否かの判断は、ステップS12と同様の処理によりドアの開閉余裕度を判定し、十分なドア開閉余裕があり、運転者が容易に乗降できると判断されるまで走行を続けることで行うとよい。このときに軌道生成部13で形成される走行軌跡は、軌道記憶部14に記憶した入庫時の軌跡、予め設定された参照軌跡、直進軌跡等を用いることができ、障害物検出部11の検出結果に基づいて障害物との距離を十分に維持できる軌跡を採用する。乗降可能位置へと到達した後は、ステップS14へと移行し、ドアロックを解除し、運転者に乗車可能である旨報知する。乗降可能位置にかえて、初期の目的地を送信機50から取得した運転者の現在位置付近とし、運転者の現在位置に近い乗降が最も容易な地点へと移動するようにしてもよい。
以上の説明では、運転席側のドアの乗降を判定する場合を例に説明したが、貨物ドアを含むその他のドアであってもよい。また、外側へと開くドアに限らず、上に開くドアやスライドドアであっても本発明は好適に適用できる。操作者が送信機50から受信機24へと指令を送ることで、対象となるドアを指定することが可能となる。