JP5688340B2 - 粘着剤組成物及び半導体加工用粘着テープ - Google Patents
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Description
これらの粘着剤組成物に求められる性能はその用途により様々であるが、用途によっては、必要な間だけ粘着性を示すがその後は容易に剥がせることが要求されることがある。
このようなTSVの製造では、研削して得た薄膜ウエハをバンピングしたり、裏面にバンプ形成したり、3次元積層時にリフローを行ったりする等の200℃以上の高温処理プロセスを行うことが必要となる。従って、TSVの製造工程に用いる粘着剤組成物には、高接着易剥離性に加えて、200℃以上の高温環境下でも粘着性を維持できる耐熱性が求められる。
以下に本発明を詳述する。
本発明の粘着剤組成物に、光を照射したり、一定以上の温度に加熱する等の上記酸発生剤から酸を発生させる刺激を付与することにより、上記酸発生剤から酸が発生する。次いで、発生した酸により、アルカリ土類金属炭酸塩等の塩が分解して二酸化炭素が発生し、その働きにより粘着剤組成物の剥離力が発生する。
上記アルカリ金属炭酸塩等の塩は、酸の不存在下ではそれ自身の分解温度が高いため、200℃以上の高温プロセスを経ても分解しにくく、粘着剤の粘着力に悪影響を及ぼさない。また、酸発生剤も、分解温度は高いため、通常の半導体チップ等の電子部品に施す高温プロセスを経ても酸を発生することがなく、粘着剤の粘着力に悪影響を及ぼさない。
上記粘着剤成分は、光や熱等の刺激を与えても硬化しない非硬化型の粘着剤、光や熱等の刺激を与えることにより硬化する硬化型の粘着剤のいずれを含有するものであってもよい。
上記粘着剤成分が非硬化型の粘着剤を含有する場合には、本発明の粘着剤組成物に上記酸発生剤から酸を発生させる刺激を与えることにより特許文献2に記載された態様の剥離機構で剥離が生じる。即ち、上記酸発生剤から酸を発生させる刺激を与えることにより上記酸発生剤から酸が発生し、該酸によって上記アルカリ金属炭酸塩等の塩が分解して二酸化炭素が発生し、発生した二酸化炭素により柔らかい粘着剤成分の全体が発泡して表面に凹凸が形成されることにより剥離応力が発生し、また被着体との接着面積が減少して剥離する。
なかでも、糊残りを生ずることなく確実な剥離を行うことができることから、刺激により弾性率が上昇する硬化型の粘着剤を含有することが好ましい。
なお、上記非硬化型の粘着剤を含有する場合であっても、粘着剤の凝集力を高める目的で、各種多官能性化合物によって架橋されている非硬化型の粘着剤を含有する場合には、上記硬化型の粘着剤を用いた場合と同様に、発生した二酸化炭素が被着体との界面に放出され、その応力によって被着体の少なくとも一部が剥離する。
このような光硬化型粘着剤や熱硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、弾性率の上昇した硬い硬化物中で二酸化炭素を発生させると、発生した二酸化炭素の大半は外部に放出され、放出された二酸化炭素は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし粘着力を低下させる。
ただし、本発明の粘着剤組成物が高い耐熱性を発揮するためには、上記熱重合開始剤は、熱分解温度が200℃以上である熱重合開始剤を用いることが好ましい。このような熱分解温度が高い熱重合開始剤は、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーペンタH(以上いずれも日油社製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。
本明細書において酸発生剤とは、光を照射したり、一定以上の温度に加熱する等の刺激を与えることにより酸を発生する材料を意味する。
上記酸発生剤は、例えば、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、等の従来公知の酸発生剤を用いることができる。
なかでも、光を照射することにより酸を発生し、かつ、200〜250℃程度に加熱しても分解して酸を発生しない、耐熱性に優れる光酸発生剤が好適である。
より具体的には、示差熱−熱重量同時測定装置(以下、TG−DTA測定装置)を用いて、窒素ガス雰囲気下に昇温速度5℃/分の条件で23℃から300℃まで昇温させたときの熱重量減少率が10%以下である光酸発生剤が好適である。
上記アルカリ土類金属炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
これは、平均粒子径が100nm以下であるアルカリ金属炭酸塩等を用いることにより、光の散乱や遮蔽が抑制され、照射された光が有効に反応に利用されて、二酸化炭素の発生効率が高まるためと考えられる。
なお、上記アルカリ金属炭酸塩等の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以下、SEM)を用いて倍率10万倍の観察像から任意の20個の粒子を選択して長径を測定したときの平均値を意味する。
上記炭酸カルシウムは、石灰石(CaCO3)を石炭及びコークスで高温にし、生石灰(CaO)と炭酸ガス(CO2)とに分解させた後、生成した生石灰を水と反応させて石灰乳(CaOH2)を得、得られた石灰乳を前工程で発生した炭酸ガスと反応させる方法により製造する方法が知られている(いわゆる炭酸ガス法)。炭酸ガス法によれば、反応条件を調整することにより、平均粒子径が100nm以下である炭酸カルシウムを比較的容易に製造することができる。
上記光増感剤は、上記酸発生剤から酸を発生させる刺激が光である場合に、光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により酸を発生させ、二酸化炭素を発生させることができる。また、より広い波長領域の光により酸を発生させ、二酸化炭素を発生させることができる。
耐熱性に優れた光増感剤は、例えば、アルコキシ基を1つ以上有する多環芳香族化合物が挙げられる。なかでも、一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物が好適である。これらの光増感剤は、耐昇華性が高く、高温下で使用することができる。また、アルコキシ基の一部がグリシジル基や水酸基で置換されることにより、上記粘着剤成分への溶解性が高まり、ブリードアウトを防止することができる。
本発明の粘着剤組成物は、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
上記接着性製品としては、例えば、本発明の粘着剤組成物をバインダー樹脂として用いた接着剤、粘着剤、塗料、コーティング剤、シーリング剤等、又は、本発明の粘着剤組成物を粘着剤として用いた片面粘着テープ、両面粘着テープ、ノンサポートテープ(自立テープ)等の粘着テープ等が挙げられる。
なかでも、半導体チップの製造工程において、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研磨して薄膜ウエハとする工程等において、効率よく作業を進める目的で厚膜ウエハを支持板に接着して補強したり、所定の厚さに研削された薄膜ウエハを個々の半導体チップにダイシングする際に薄膜ウエハに接着して補強したりする半導体加工用粘着テープとして好適である。
基材の少なくとも一方の面に、本発明の粘着剤組成物からなる粘着層を有する半導体加工用粘着テープもまた、本発明の1つである。
(1)粘着剤成分の調製
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、アクリル酸2.5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.5重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部、酢酸エチル82重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt−ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万のアクリル共重合体を得た。
粘着剤成分の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、酸発生剤としてジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート(WPAG−336、和光純薬工業社製、上記一般式(1)においてR13がメチル基であり、それ以外のR1〜R12、R14、R15は水素原子である化合物、TG−DTA測定装置を用いて、窒素ガス雰囲気下に昇温速度5℃/分の条件で23℃から300℃まで昇温させたときの熱重量減少率が0%)8重量部、二酸化炭素を発生する塩として炭酸カルシウム(平均粒子径が45μm)1重量部を混合して、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、粘着テープを得た。
酸発生剤としてトリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート(WPAG−281、和光純薬工業社製、上記一般式(1)においてR1〜R15が全て水素原子である化合物、TG−DTA測定装置を用いて、窒素ガス雰囲気下に昇温速度5℃/分の条件で23℃から300℃まで昇温させたときの熱重量減少率が0%)8重量部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
酸発生剤としてジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルフォニウムp−トルエンスルフォネート(WPAG−367、和光純薬工業社製、上記一般式(1)においてR11、R13、R15がメチル基、それ以外のR1〜R10、R12、R14が全て水素原子である化合物、TG−DTA測定装置を用いて、窒素ガス雰囲気下に昇温速度5℃/分の条件で23℃から300℃まで昇温させたときの熱重量減少率が0%)9重量部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
酸発生剤としてジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート(WPAG−336、和光純薬工業社製)4重量部、二酸化炭素を発生する塩として炭酸水素ナトリウム(ファイン重曹EB100、旭硝子社製、平均粒子径が100μm)0.8重量部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
酸発生剤としてジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート(WPAG−336、和光純薬工業社製)8重量部、二酸化炭素を発生する塩として炭酸ナトリウム(平均粒子径が50μm)1.1重量部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
粘着剤成分の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、酸発生剤としてジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート(WPAG−336、和光純薬工業社製)16重量部、二酸化炭素を発生する塩として炭酸カルシウム(平均粒子径が45μm)2重量部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
炭酸ガス法により製造された、平均粒子径が100nmの炭酸カルシウムを用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
酸発生剤としてジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート(WPAG−336、和光純薬工業社製)8重量部と二酸化炭素を発生する塩として炭酸カルシウム1重量部との代わりに、光の照射により窒素ガスを発生する2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部とジエチルチオキサントン(光増感剤)3.5重量部とを配合した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
実施例及び比較例で得た粘着剤成分、粘着剤組成物及び粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
直径20cmの円形に切断した接着テープを、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。
粘着性評価として、この状態で接着テープの端部をめくり、全く剥離できなかった場合を「○」と、比較的軽く剥離できた場合を「△」と、ほとんど抵抗なく剥離できた場合を「×」と評価した。
紫外線照射後の二酸化炭素発生性評価として、フィルム側から目視にて観察して、接着界面の90%以上の面積でフィルムからシリコンウエハが剥離していた場合を「◎」と、70%以上の面積でフィルムからシリコンウエハが剥離していた場合を「○」と、50%以上の面積でフィルムからシリコンウエハが剥離していた場合を「△」と、50%未満の面積でフィルムからシリコンウエハが剥離していた場合を「×」と評価した。
紫外線照射後の剥離性評価として、自然に剥がれてしまっていた場合を「◎」と、接着テープを引張り、全く抵抗なく剥離できた場合を「○」と、抵抗はあったものの剥離できた場合を「△」と、全く剥離できなかった場合を「×」と評価した。
直径20cmの円形に切断した接着テープを、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。この積層体を、200℃、1時間加熱した後、室温に戻した。
加熱後の積層体について、上記の粘着性評価、二酸化炭素発生性評価、及び、剥離性評価を行った。
ただし、比較例1で得られた接着テープでは、200℃、1時間の加熱中にガスを発生して剥がれてしまったことから、粘着性の評価を「×」とし、剥離性評価は中止した。
Claims (5)
- 粘着剤成分と、酸発生剤と、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カドミウム、及び、炭酸コバルトから選択される少なくとも1種の塩とを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
- 酸発生剤は、光を照射することにより酸を発生し、かつ、200〜250℃程度に加熱しても酸を発生しない、耐熱性に優れる光酸発生剤であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
- 酸発生剤は、示差熱−熱重量同時測定装置を用いて、窒素ガス雰囲気下に昇温速度5℃/分の条件で23℃から300℃まで昇温させたときの熱重量減少率が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
- 粘着剤成分は、刺激により弾性率が上昇する硬化型の粘着剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着剤組成物。
- 基材の少なくとも一方の面に、請求項1、2、3又は4記載の粘着剤組成物からなる粘着層を有することを特徴とする半導体加工用粘着テープ。
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