JP5688184B2 - 無線機、昇降機制御システムおよび変電設備制御システム - Google Patents

無線機、昇降機制御システムおよび変電設備制御システム Download PDF

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Description

本発明は、信号が重畳された搬送波を受信し、当該搬送波をより低い周波数にダウンコンバートして復調を行う無線機、当該無線機を用いた昇降機制御システム、および、当該無線機を用いた変電設備制御システムに関する。特に、この機能を長寿命化、無調整化することが容易な信頼性の高いハードウェア構成を有する無線機に関するものである。
無線技術は、通信、放送の分野で長足の進歩を遂げ、より高い信頼性を要求される監視分野、制御分野での適用が期待されるようになった。
無線通信の伝送路は、自由空間である。そのため無線通信は、有線通信に比べ、外部の雑音に対して脆弱であるという問題と、この雑音により伝送路が切断されてしまうという問題とを有している。これらの問題により、無線通信は、常時接続を原則とする監視分野および制御分野での適用が見送られてきた。
近年の半導体技術の著しい進歩により、信号処理可能な最少時間単位が劇的に小さくなり、監視や制御に必要とされる信号系列の時間間隔より、遥かに短い時間で信号処理が可能となった。そのため、無線通信に於いて、信号系列の時間間隔内に同一の信号系列を再送して、信号の伝送路を等価的に多重化することにより、信頼性を向上することができるようになった。これにより、無線技術は、監視分野および制御分野での適用が期待されるようになった。
さらに、信号の符号化および複合化の技術により、無線通信に於ける信号対雑音比は、目を見張る向上を成し遂げた。この、信号対雑音比の向上は、監視および制御の分野に於ける無線技術の適用を後押ししている。
無線伝送に於ける媒体は、電磁波である。無線伝送に於ける伝送路は、自由空間である。自由空間内を伝搬可能な電磁波の周波数は、実質的に300MHzから3GHzの間である。電磁波は、周波数が3GHzより高いと、回折による損失が大きくなり、見通し外通信が期待できない。更に電磁波は、周波数が300MHzより低いと、アンテナの効率が極めて低下し、実現性に問題が生じる。
監視分野または制御分野に必要とされる信号の周波数帯域は、数100KHzから数MHzである。監視分野または制御分野に無線技術を適用するには、数100KHzから数MHzの周波数帯域を有する信号を、空間伝送に適する周波数の搬送波に重畳して空間を伝送させ、当該搬送波を受信して低い周波数にダウンコンバートし、原信号を復調する必要がある。
搬送波の周波数をダウンコンバートするには、正弦波の非線形現象を応用し、周波数ミキサによって、搬送波と同一あるいは異なる周波数の局部信号を掛け合わせ、当該搬送波と当該局部信号の差の周波数の信号を得る方法がある。周波数ミキサは、非線形アナログ回路である。この方法は、半導体素子の入出力関係の非線形領域を用いている。半導体素子の温度変化または経年変化により、当該入出力関係は変化するので、この方法を用いるダウンコンバート装置は、温度補償が必要であり、かつ短寿命であるという欠点がある。一般的な通信分野および放送分野の無線機は、この理由により、2〜5年毎に調整を要する。
監視分野、制御分野の機器とは、すなわち社会インフラ機器である。この社会インフラ機器に求められる寿命は、10〜20年が一般的である。したがって、監視分野、制御分野の機器は、周波数ミキサなどの非線形アナログ回路を用いることのない無線機のハードウェアを搭載することが望まれている。
この要望は、デルタ・シグマ変調器を用いた周波数変換技術で応えることができる。デルタ・シグマ変調器を用いた周波数変換技術は、フィードバックループにデジタルループを含み、アナログ回路とデジタル回路とを組み込むことによって、周波数変換機能を実現している。デルタ・シグマ変調回路の基本構成は、合成器と、アナログフィルタと、アナログ・デジタル変換器と、デジタル・アナログ変換器と、クロック発生回路とである。デルタ・シグマ変調回路は、アナログ非線形回路を含まないため、温度補償が不要で、かつ、長寿命である。そのため、デルタ・シグマ変調回路は、社会インフラ機器に搭載する無線機に適している。
特許文献1の要約には、入力信号から帰還信号を減算する減算器と、減算器の出力を入力とするループフィルタと、ループフィルタの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器と、A/D変換器の出力をアナログ信号に変換するD/A変換器と、D/A変換器の出力を帰還信号として帰還する帰還回路とでノイズシェーピング型A/D変換器を構成し、さらにフィルタの出力を入力信号の周波数より低い所定の周波数に変換する第1の周波数変換器と、D/A変換器の出力を入力信号の周波数と同一周波数に変換する第2の周波数変換器を設けることにより周波数変換機能を持たせたA/D変換装置の発明が記載されている。
特許文献2の請求項2には、複数の係数器の出力が入力される複数の加算器と、この複数の加算器の間を接続し、ぞれぞれ(T/n)(Tはサンプリング周期)の遅延時間を有する遅延素子が、直列にn個接続されたトランスバーサルフィルタの発明が記載されている。
特開平8−088577号公報 特開平4−266210号公報
特許文献1に記載の発明では、デルタ・シグマ回路の基本構成にミキサを加えて、周波数変換範囲を広げている。しかし、特許文献1に記載の発明は、デルタ・シグマ回路の性能向上の為にアナログ非線形回路を用いているので、社会インフラ機器に好適な長寿命化、無調性化が実現できない虞がある。
デルタ・シグマ変調器では、アナログ・デジタル変換器のアナログ信号の離散化の精度が、周波数変換機能の性能に大きく影響する。アナログ信号を精度よく離散化するには、多段の固定式閾値と入力信号とを比較するアナログ・デジタル変換回路が必要である。このとき、各閾値の相対間隔がアナログ・デジタル変換器のアナログ信号離散化の精度を決定する。これら閾値は半導体素子の物理常数値(例えばビルトインポテンシャル)を用いて決定されるので、温度変化、経年変化の影響を強く受ける。したがって、装置の長寿命化、無調整化の観点から問題がある。
特許文献2に記載の発明によれば、デルタ・シグマ変調器のデジタルパスにおいて、サンプリング周波数を局所的に整数倍化し、デジタル演算の精度を向上させることができる。しかし、特許文献2に記載のデルタ・シグマ変調器は、離散化による精度の劣化が発生してしまう虞がある。
そこで、本発明は、無線機が受信した搬送波の周波数をダウンコンバートする回路を、温度変化と経年変化とを受けにくい構成とすることを課題とする。
前記した課題を解決するため、本発明の無線機は、以下のように構成した。
すなわち、請求項1に記載の発明は、当該デルタ・シグマ回路は、第1の周波数成分を持つ入力信号を第2の周波数でサンプリングして1ビットの第1のデジタル信号に離散化するコンパレータと、前記第2の周波数を所定の自然数で乗算した第3の周波数で、当該第1のデジタル信号をアップサンプリングし、第2のデジタル信号を出力するアップサンプラと、前記第2のデジタル信号をデジタル処理し、第3のデジタル信号を出力するデジタルフィルタと、前記デジタルフィルタの前記第3のデジタル信号を、アナログ信号に変換するサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路の前記アナログ信号を、当該入力信号にフィードバックする合成器と、を備え、前記入力信号をデジタル信号に変換するデルタ・シグマ回路を備えた、ことを特徴とする無線機とした。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
本発明によれば、無線機が受信した搬送波の周波数をダウンコンバートする回路を、温度変化と経年変化とを受けにくい構成とすることができる。
第1の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。 第1の実施形態に於ける無線機を示すフローチャートである。 第2の実施形態に於ける無線機のFIRフィルタを示す概略の構成図である。 第3の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。 第4の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。 第5の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。 第6の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。 第7の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。 第7の実施形態に於ける無線機の実装を示す図である。 第8の実施形態に於ける昇降機システムを示す概略の構成図である。 第9の実施形態に於ける変電設備監視システムを示す概略の構成図である。
以降、本発明を実施するための形態を、図を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態の構成)
図1(a),(b)は、第1の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。
図1(a)は、無線機1の構成を示す図である。
無線機1は、デルタ・シグマ回路10と、信号処理装置40とを備えている。
デルタ・シグマ回路10は、合成器12と、バンドパスフィルタ13と、コンパレータ14と、アップサンプリング回路22と、FIR(Finite impulse response)フィルタ30と、サンプルホールド回路17と、線形増幅器19と、クロック発生回路15と、クロック整数倍回路16と、制御回路18とを備えている。
無線機1は、入力端子11に接続された図示しないアンテナから搬送波電力を取り込み、この搬送波をダウンコンバート回路であるデルタ・シグマ回路10でダウンコンバートして、原信号を出力端子21から出力し、信号処理装置40で信号を処理するものである。
入力端子11は、合成器12の加算入力端子に接続されている。合成器12の出力端子は、バンドパスフィルタ13に接続されている。バンドパスフィルタ13の出力端子は、コンパレータ14に接続されている。コンパレータ14には更に、クロック発生回路15の出力端子が接続されている。コンパレータ14の出力端子は、出力端子21とアップサンプリング回路22とに接続されている。出力端子21は、信号処理装置40に接続されている。
アップサンプリング回路22の出力端子は、FIRフィルタ30に接続されている。FIRフィルタ30は、制御回路18とバス接続されている。FIRフィルタ30の出力端子は、サンプルホールド回路17に接続されている。サンプルホールド回路17は更に、クロック整数倍回路16の出力端子が接続されている。クロック整数倍回路16には更に、クロック発生回路15の出力端子が接続されている。サンプルホールド回路17の出力端子は、線形増幅器19に接続されている。線形増幅器19の出力端子は、合成器12の減算入力端子に接続されている。
合成器12は、加算入力端子に入力された信号から、減算入力端子に入力された信号を減算した合成信号を出力するものである。
バンドパスフィルタ13は、入力信号の所定周波数成分を選択的に出力するものである。
コンパレータ14は、入力されたクロック信号CLK(周期Ts)ごとに、入力アナログ信号を閾値と比較し、比較結果である1ビットのデジタル信号を出力するものである。すなわち、コンパレータ14は、周波数fs(=1/Ts)で、入力アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号を出力する。
信号処理装置40は、内部に急峻なデジタルフィルタを備え、基本周波数のエイリアス成分を抽出するものである。
アップサンプリング回路22は、クロック信号CLKでサンプリングされた入力デジタル信号を、N倍のクロック信号(CLK×N)でサンプリングされたデジタル信号にアップサンプリングして出力するものである。
FIRフィルタ30は、デジタルフィルタであり、入力されたデジタル信号に、例えば有限インパルス応答フィルタ処理であるデジタル信号処理を掛けるものである。
制御回路18は、FIRフィルタ30を制御するものであり、FIRフィルタ30のタップ係数を、予め定められた値に設定する。
サンプルホールド回路17は、入力されたクロック信号CLKごとに、入力されたデジタル信号をサンプルホールドして出力するものである。
線形増幅器19は、例えば、演算増幅器を用いた非反転増幅回路であり、入力された信号を、第1のゲインで線形に増幅するものである。
クロック発生回路15は、所定周波数のクロック信号CLKを出力するものである。このクロック信号CLKは、周期Tsの発振信号である。
クロック整数倍回路16は、入力されたクロック信号CLKを、N倍のクロック信号(CLK×N)に変換するものである。Nは、自然数である。
図1(b)は、FIRフィルタ30の構成を示す図である。
FIRフィルタ30は、RAM(Random Access Memory)31と、直列に結合したN個の遅延器33と、N−1個のスイッチ回路32とを備えている。
RAM31は、バスを介して制御回路18に接続されている。
FIRフィルタ30の入力端子と出力端子との間には、直列に結合したN個の遅延器33が接続されている。
FIRフィルタ30の入力端子は更に、N−1個のスイッチ回路32の入力端子に接続されている。N−1個のスイッチ回路32の制御端子は、それぞれRAM31に接続されている。N−1個のスイッチ回路32の出力端子は、それぞれN個の遅延器33の接続ノードに接続されている。
FIRフィルタ30は、直列に結合したN個の遅延器33によるトランスバーサル構成を有している。
(第1の実施形態の動作)
図1(a)に基き、無線機1の動作を説明する。
入力端子11に入力された搬送波は、合成器12を介して、バンドパスフィルタ13に入力される。バンドパスフィルタ13に入力されたアナログ信号は、所定周波数成分が選択的にコンパレータ14に入力される。コンパレータ14に入力されたアナログ信号は、クロック発生回路15が出力するクロック信号CLKごとに閾値と比較される。比較結果である1ビットのデジタル信号は、アップサンプリング回路22に入力される。当該1ビットのデジタル信号は更に、出力端子21にも出力される。
アップサンプリング回路22に入力されたデジタル信号は、N倍のクロック信号(CLK×N)でアップサンプリングされて、FIRフィルタ30に入力される。
FIRフィルタ30に入力されたデジタル信号は、有限インパルス応答フィルタ処理が掛けられたのち、サンプルホールド回路17に入力される。
サンプルホールド回路17に入力されたデジタル信号は、入力されたクロック信号ごとにサンプルホールドされて、アナログ信号に変換され、線形増幅器19に入力される。
線形増幅器19に入力されたアナログ信号は、第1のゲインで線形に増幅され、合成器12の減算入力端子にフィードバックされる。
図1(b)に基き、FIRフィルタ30の動作を説明する。
FIRフィルタ30の入力信号は、N−1個のスイッチ回路32により、0または1の1ビットの重み付けがされ、N個の遅延器33により、サンプリング周期Tsの1/Nだけ順次遅延されて加算されて、FIRフィルタ30の出力信号となる。
FIRフィルタ30の重み付け係数(0または1の組み合わせ)は、予め決められている。予め決められた重み付け係数は、制御回路18からRAM31に転送されて、N−1個のスイッチ回路32の制御端子に出力され、N−1個のスイッチ回路32の開閉パターンを決定する。
重み付け係数は、例えば、総当り的探索法によって、デジタル信号のうち不要なエイリアス成分を削減する値が求められる。無線機1の図示しないアンテナで受信された搬送波は、デルタ・シグマ回路10の入力端子11に入力され、バンドパスフィルタ13により搬送波周波数fc以下の信号を選択的に除去し、コンパレータ14により離散化され、搬送波周波数fcとコンパレータ14のサンプリング周波数fs(=1/Ts)との整数倍との差の周波数を基本周波数として、その基本周波数の整数倍の信号が、エイリアス信号として生成される。本実施形態では、サンプリング周波数fsの1/2の奇数倍が搬送波周波数fcと一致するように設定されている。
この基本周波数の整数倍であるエイリアス信号のうち、基本周波数のエイリアス信号は、出力端子21より信号処理装置40に転送される。基本周波数の2倍以上のエイリアス信号の大半は、FIRフィルタ30により削減され、サンプルホールド回路17および線形増幅器19を介した合成器12への差入力となる。これにより、当該搬送波周波数fcおよび当該基本周波数を持つ信号は、フィードバックループで強め合う。コンパレータ14で発生する量子化雑音は、フィードバックループで弱め合う。これにより、搬送波信号を、高い信号対雑音比で基本周波数の原信号に変換(ダウンコンバート)することができる。
図2(a)〜(d)は、第1の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路の周波数特性図である。
図2(a)は、デルタ・シグマ回路10の入力端子11から入力される信号Saの周波数特性を示す図である。図2(a)の縦軸は、信号Saの周波数スペクトラムを示している。
図2(b)は、フィードバックされていない状態に於けるコンパレータ14が出力する信号Sbの周波数特性を示す図である。図2(b)の縦軸は、信号Sbの周波数スペクトラムを示している。
図2(c)は、FIRフィルタ30が出力する信号Scの周波数特性を示す図である。図2(c)の縦軸は、信号Scの周波数スペクトラムを示している。
図2(d)は、デルタ・シグマ回路10の出力端子21から出力される信号Sdの周波数特性を示す図である。図2(d)の縦軸は、信号Sdの周波数スペクトラムを示している。図2(a)〜(d)の横軸は、共通する周波数fを示している。
図2(a)に示すように、信号Saには、搬送波の周波数スペクトラムが観測される。この周波数スペクトラムは、搬送波周波数fcを通過域とするバンドパスフィルタ13を経ても同様である。
図2(b)に示すように、コンパレータ14によって離散化された信号Sbは、搬送波周波数fcとサンプリング周波数fs(=1/Ts)の整数倍との差の周波数を基本周波数とする同形のエイリアス信号が、周波数軸上に等間隔で無限に存在している。ここでは、エイリアス信号は、例えば、周波数fs/2、周波数fs×3/2、周波数fs×5/2、周波数fs×7/2、…である。
図2(c)に示すように、FIRフィルタ30によって処理された信号Scは、高域エイリアス信号の多くの部分が減衰する。この周波数スペクトラムは、サンプルホールド回路17と線形増幅器19とを介しても同様に維持され、合成器12の減算入力端子にフィードバックされる。信号処理装置40に供給されたデジタル信号は、急峻なデジタルフィルタにより、基本周波数のエイリアス成分のみが高品質で抽出され、図2(d)に示すように周波数スペクトラムを備えた信号Sdが得られる。
本実施形態のデルタ・シグマ回路10は、図2(a)〜(d)に示す周波数スペクトラムにより特徴づけられる。これにより、無線機1は、空中を高い周波数で伝搬してきた電磁波信号を、デジタルサンプリングにより発生する雑音成分の信号対雑音比に対する効果を低減しつつ、デジタル信号処理可能なより低い周波数へと変換することができる。
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A),(B)のような効果がある。
(A) 無線機1は、温度変化や経年変化の影響を受けにくい合成器12、コンパレータ14、サンプルホールド回路17、線形増幅器19、アップサンプリング回路22、およびFIRフィルタ30を用いてデルタ・シグマ回路10を構成し、周波数をダウンコンバートしている。これにより、無線機1は、温度変化や経年変化の影響を受けにくくなり、長寿命化と無調整化とに寄与することができる。
(B) 無線機1は、空中を高い周波数で伝搬してきた電磁波信号を、デジタルサンプリングにより発生する雑音成分の信号対雑音比に対する効果を低減しつつ、デジタル信号処理可能なより低い周波数へと変換することができる。これにより、電波に重畳された信号を小型で安価なデジタル信号処理デバイスで処理可能となり、無線機の低コスト化に寄与することができる。
(第2の実施形態の構成)
第2の実施形態の無線機は、第1の実施形態の無線機1とは異なるデルタ・シグマ回路10を備えている他は、第1の実施形態の無線機1と同様に構成されている。
第2の実施形態のデルタ・シグマ回路10は、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10とは異なるFIRフィルタ30A(図3参照)を備えている他は、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10と同様に構成されている。
図3は、第2の実施形態に於ける無線機のFIRフィルタを示す概略の構成図である。
第2の実施形態に於ける無線機1AのFIRフィルタ30Aは、第1の実施形態のFIRフィルタ30(図1)とは異なり、N−1個のスイッチ回路32が、N−1個の1ビット信号送出回路34によって置き換えられ、トランスバーサル回路の重み付けが行われる。
N−1個の1ビット信号送出回路34の入力端子は、それぞれRAM31Aに接続されている。N−1個の1ビット信号送出回路34の出力端子は、それぞれN個の遅延器33間の接続ノードに接続されている。
(第2の実施形態の動作)
1ビット信号送出回路34の出力パターンは、あらかじめ決められている。デルタ・シグマ回路10Aが備える制御回路18は、RAM31に出力パターンを転送する。1ビット信号送出回路34は、RAM31内のパターン通りの1ビット信号を、搬送波をサンプリングした周期の隙間に埋め込むことにより、不要なエイリアス信号を除去する。
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(C)のような効果がある。
(C) 第2の実施形態のFIRフィルタ30Aは、搬送波信号がない場合にも不要エイリアスを削減するための信号を、搬送波をサンプリングした周期の隙間に直ちに埋め込むことができる。これにより、第1の実施形態のFIRフィルタ30と比べ、不要なエイリアス信号を削減する効果を、より早いタイミングで得ることができる。
(第3の実施形態の構成)
図4は、第3の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。
第3の実施形態に於ける無線機1Bは、第1の実施形態の無線機1(図1)とは異なるデルタ・シグマ回路10Bを備えている。無線機1Bは、前記以外は、第1の実施形態の無線機1(図1)と同様に構成されている。
第3の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Bは、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10(図1)とは異なり、バンドパスフィルタ13が、LCRフィルタ13Bで実現されている。
LCRフィルタ13Bは、例えば、入力端子と出力端子との間にコイル(L)と抵抗(R)とが直列接続され、出力端子とグランドとの間にコンデンサ(C)が接続されている。デルタ・シグマ回路10Bは、前記以外は、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10(図1)と同様に構成されている。
(第3の実施形態の効果)
以上説明した第3の実施形態では、次の(D)のような効果がある。
(D) LCRフィルタ13Bは、小型のチップ部品により実現可能である。よって、無線機1Bは、小型化することができる。
(第4の実施形態の構成)
図5(a)〜(c)は、第4の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。
図5(a)は、無線機1Cを示す構成図である。
第4の実施形態の無線機1Cは、第1の実施形態の無線機1(図1)のデルタ・シグマ回路10とは異なるデルタ・シグマ回路10Cと、第1の実施形態の信号処理装置40とは異なる信号処理装置40Cと、を備えている。無線機1Cは、前記以外は、第1の実施形態の無線機1(図1)と同様に構成されている。
また、第4の実施形態のデルタ・シグマ回路10Cは、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10のFIRフィルタ30(図1)とは異なるFIRフィルタ30Cとを備えている。更に、第4の実施形態のデルタ・シグマ回路10Cは、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10(図1)が備える制御回路18を備えていない。デルタ・シグマ回路10Cは、前記以外は、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10(図1)と同様に構成されている。
信号処理装置40Cは更に、復調回路41を備えている。復調回路41の出力信号は、FIRフィルタ30Cの制御端子に接続されている。
復調回路41は、出力端子21から信号処理装置40に入力された信号から、搬送波周波数fcに関する情報を抽出するものである。
FIRフィルタ30Cは、制御端子に入力された信号に基いて、入力信号をデジタルフィルタ処理するものである。
図5(b)は、デルタ・シグマ回路10Cが備えるFIRフィルタ30Cの構成図である。
FIRフィルタ30Cは、第1の実施形態のFIRフィルタ30と同様の構成に加えて、更にROM(Read Only Memory)35Cを備えている。ROM35Cの制御端子は、復調回路41の出力端子と接続されている。ROM35Cは更に、RAM31とバスを介して接続されている。
ROM35Cは、制御端子から入力された信号に応じたデータパターンをRAM31に出力するものである。
図5(c)は、FIRフィルタ30Cが備えるROM35Cに格納されたデータ構造を示す図である。
ROM35Cには、搬送波周波数fcとサンプリング周波数fsとの関係に対する最適なスイッチ回路32の重み付け係数が、1または0の1ビットのパターンとしてテーブル形式で格納されている。このテーブルの横軸は、N−1個のスイッチ回路32のいずれに対応しているかを示している。テーブルの縦軸は、基本周波数のM倍の周波数を抑圧することを示している。この最適なスイッチ回路32の重み付けの情報は、例えば、総当り法により、予め求めることができる。
(第4の実施形態の動作)
図5に基き、第4の実施形態の無線機の動作を説明する。
本実施形態のデルタ・シグマ回路10Cは、入力される搬送波周波数fcがサンプリング周波数fsの1/2の奇数倍である。つまり、この搬送波は、サンプリング周波数fsの1/2の奇数倍の周波数成分を、変調信号として含んでいる。デルタ・シグマ回路10Cは、入力された搬送波をダウンコンバートし、出力端子21から信号処理装置40に送出する。信号処理装置40は、この送出信号から、搬送波周波数fcとサンプリング周波数fsとの関係に関する情報Mを、復調回路41によって抽出し、FIRフィルタ30Cに伝達する。FIRフィルタ30Cは、ROM35C(図5(c))から、情報Mに基づいて所定のフィルタ係数を抽出し、FIRフィルタ処理を行う。情報Mは、奇数であり、かつ、後記する式1の関係を有している。
fc=M×fs/2 ・・・ (式1)
図5(c)に示すように、ROM35Cには、搬送波周波数fcとサンプリング周波数fsとの関係に対するスイッチ回路32の重み付けの情報が、予め格納されている。図5(b)に示すように、FIRフィルタ30Cは、伝達された信号とROM35Cと照らし合わせ、FIRフィルタ30Cの具備する複数のスイッチ回路32の開閉パターンをROM35CからRAM31に転送し、RAM31の開閉パターンによって、複数のスイッチ回路32の開閉を行う。これにより、周波数fs/2の信号を取り出すことができる。
例えば、復調回路41が、搬送波周波数fc=(fs×3/2)を検出すると、基本周波数の1/2の3倍の周波数を検出した旨を、FIRフィルタ30Cに出力する。
FIRフィルタ30Cは、M=3のときの開閉パターンである0,1,1,0,…,1をROM35CからRAM31に転送する。RAM31は、この開閉パターンによって、複数のスイッチ回路32の開閉を行う。これにより、搬送波周波数fc=(fs×3/2)を抑圧し、周波数fs/2のエイリアス信号を取り出すことができる。この周波数fs/2のエイリアス信号は、搬送波をダウンコンバートした信号である。
(第4の実施形態の効果)
以上説明した第4の実施形態では、次の(E)のような効果がある。
(E) 無線機1Cは、入力する搬送波周波数fcが変化しても、この変化に追随して搬送波をダウンコンバートできる。これにより、無線機1Cが扱う搬送波の周波数を可変できるという効果を奏する。
(第5の実施形態の構成)
図6(a),(b)は、第5の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。
図6(a)は、無線機1Dの構成図である。
第5の実施形態に於ける無線機1Dは、第4の実施形態の無線機1C(図5)とは異なる信号処理装置40Dと、デルタ・シグマ回路10Dとを備えている。無線機1Dは、前記以外は、第4の実施形態の無線機1C(図5)と同様に構成されている。
第5の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Dは、第4の実施形態のデルタ・シグマ回路10C(図5)とは異なる信号処理装置40Dと、FIRフィルタ30Dと、クロック整数倍回路16Dと、アップサンプリング回路22Dとを備えている。デルタ・シグマ回路10Dは、前記以外は、第4の実施形態のデルタ・シグマ回路10C(図5)と同様に構成されている。
復調回路41Dの第2の出力端子は、FIRフィルタ30Dの第2の制御端子と、クロック整数倍回路16Dの制御端子と、アップサンプリング回路22Dの制御端子とに接続されている。
FIRフィルタ30Dは、第4の実施形態のFIRフィルタ30Cとは異なり、第2の制御端子に入力された信号によって、トランスバーサルフィルタの段数を可変できる機能を有している。
クロック整数倍回路16Dは、第4の実施形態のクロック整数倍回路16とは異なり、制御端子に入力された信号によって、入力されたクロック信号CLKの逓倍数Nを可変できる機能を有している。
アップサンプリング回路22Dは、第4の実施形態のアップサンプリング回路22とは異なり、制御端子に入力された信号によって、入力信号のアップサンプリング数Nを可変できる機能を有している。
図6(b)は、FIRフィルタ30Dの構成図である。
FIRフィルタ30Dは、第4の実施形態のFIRフィルタ30C(図5)と同様の構成に加えて、更にN−1個の第2スイッチ回路36と、デコーダ37とを備えている。デコーダ37の入力側は、このFIRフィルタ30Dの第2の制御端子に接続されている。デコーダ37の出力側は、N−1個の第2スイッチ回路36に、それぞれ接続されている。N−1個の第2スイッチ回路36は、各遅延器33と各スイッチ回路32との間に設けられ、この出力信号を、このFIRフィルタ30Dの出力端子にバイパスするか否かを切り替えている。すなわち、FIRフィルタ30Dは、所望のエイリアス信号の周波数に応じた精度のデジタル処理を行っている。
(第5の実施形態の動作)
図6に基き、第5の実施形態のデルタ・シグマ回路10Dの動作を説明する。
デルタ・シグマ回路10Dは、入力される搬送波周波数fcがサンプリング周波数fsの1/2の奇数倍である。この搬送波は、サンプリング周波数fsの1/2の奇数倍の周波数成分を、変調信号として含んでいる。デルタ・シグマ回路10Dは、入力された搬送波をダウンコンバートし、出力端子21から信号処理装置40Dに送出する。信号処理装置40Dは、この送出信号から、搬送波周波数fcとサンプリング周波数fsとの関係に関する情報Mを、復調回路41Dによって抽出し、FIRフィルタ30Dに伝達する。更に、信号処理装置40Dは、情報Mに最も適したアップサンプリングに関する情報Nを算出して、FIRフィルタ30D、クロック整数倍回路16D、および、アップサンプリング回路22Dに伝達する。
FIRフィルタ30Dは、伝達された信号とROM35Cと照らし合わせ、FIRフィルタ30の具備する複数のスイッチ回路32の開閉パターンをROM35CからRAM31に転送し、RAM31の開閉パターンによって、複数のスイッチ回路32の開閉を行う。これにより、周波数fs/2の信号を取り出すことができる。
クロック整数倍回路16D、アップサンプリング回路22D、および、FIRフィルタ30Dには、情報Nが入力される。デルタ・シグマ回路10Dのフィードバック信号は、アップサンプリング回路22DによってN倍にアップサンプリングされ、FIRフィルタ30Dによって、N段のトランスバーサルフィルタ処理が行われ、クロック整数倍回路16Dとサンプルホールド回路17とによって、サンプルホールドされてアナログ信号に戻る。これにより、所望のエイリアス信号の周波数に応じた精度のデジタル処理を行うことができる。
(第5の実施形態の効果)
以上説明した第5の実施形態では、次の(F)のような効果がある。
(F) デルタ・シグマ回路10Dのフィードバック信号は、アップサンプリング回路22DによってN倍にアップサンプリングされ、FIRフィルタ30Dによって、N段のトランスバーサルフィルタ処理が行われ、クロック整数倍回路16Dとサンプルホールド回路17とによって、サンプルホールドされてアナログ信号に戻る。これにより、所望のエイリアス信号の周波数に応じた時間精度のデジタル処理を行うことができる。
(第6の実施形態の構成)
図7は、第6の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。
第6の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Eは、第1の実施形態のデルタ・シグマ回路10の合成器12とLCRフィルタ13Bとが、合成器12−1とLCRフィルタ13B−1と合成器12−2とLCRフィルタ13B−2に置き換わっており、線形増幅器19が、線形増幅器19−1,19−2に置き換わっている。
LCRフィルタ13B−2,13B−1は、LCRフィルタ13Bと同様の機能を有している。すなわち、LCRフィルタ13B−2,13B−1は、信号の通過域が同一である。合成器12−1,12−2は、第1の実施形態の合成器12と同様の信号合成機能を有している。
入力端子11は、合成器12−1の加算入力端子に接続されている。合成器12−1の出力端子は、LCRフィルタ13B−1に接続されている。LCRフィルタ13B−1の出力端子は、合成器12−2の加算入力端子に接続されている。合成器12−2の出力端子は、LCRフィルタ13B−2に接続されている。LCRフィルタ13B−2の出力端子は、コンパレータ14に接続されている。
サンプルホールド回路17の出力端子は、線形増幅器19−1,19−2に接続されている。線形増幅器19−1の出力端子は、合成器12−1の減算入力端子に接続されている。線形増幅器19−2の出力端子は、合成器12−2の減算入力端子に接続されている。
(第6の実施形態の動作)
第6の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Eは、線形増幅器19−1と線形増幅器19−2との増幅率が独立に調節可能である。
(第6の実施形態の効果)
以上説明した第6の実施形態では、次の(G)のような効果がある。
(G) デルタ・シグマ回路10Eは、パラメータ設計の自由度が向上している。これにより、デルタ・シグマ回路10Eは、コンパレータ14で発生する量子化雑音を更に低減することができ、ダウンコンバート機能の高品質化を実現することができる。
(第7の実施形態の構成)
図8は、第7の実施形態に於ける無線機を示す概略の構成図である。
第7の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Fは、第6の実施形態のデルタ・シグマ回路10Eに加えて、更に、線形増幅器23−1〜23−3と、合成器12−3とを備えている。
第7の実施形態に於ける無線機1Fに於いて、LCRフィルタ13B−2の出力端子は、合成器12−3の加算入力端子に接続されている。合成器12−3の出力端子は、コンパレータ14に接続されている。
入力端子11は、線形増幅器23−1〜23−3に接続されている。線形増幅器23−1の出力端子は、合成器12−1の加算入力端子に接続されている。線形増幅器23−2の出力端子は、合成器12−2の加算入力端子に接続されている。線形増幅器23−3の出力端子は、合成器12−3の加算入力端子に接続されている。本実施形態のデルタ・シグマ回路10Fは、前記以外は、第6の実施形態のデルタ・シグマ回路10Eと同様に構成されている。
本実施形態のデルタ・シグマ回路10Fに於いて、入力端子11から入力される搬送波は、線形増幅器23−1〜23−3によって重み付けされ、デルタ・シグマ変調回路のメインループにそれぞれ入力される。線形増幅器23−1〜23−3は、フィードフォワード制御を行っている。線形増幅器23−1〜23−3の増幅率は、それぞれ独立に調整可能である。
デルタ・シグマ回路10Fは、フィードフォワード制御のパラメータ設計の自由度が向上している。これにより、デルタ・シグマ回路10Fは、コンパレータ14で発生する量子化雑音を更に低減することができ、ダウンコンバート機能の高品質化を実現することができる。
(第7の実施形態の実装例)
図9は、第7の実施形態に於ける無線機の実装を示す図である。
無線機基板50は、多層プリント基板53上に、電源回路54と、高周波コネクタ51と、デジタル信号コネクタ52と、線形増幅器23−1〜23−3と、合成器12−1〜12−3と、LCRフィルタ13B−1,13B−2と、線形増幅器19−1,19−2と、コンパレータ14と、アップサンプリング回路22と、FIRフィルタ30Bと、制御回路18と、サンプルホールド回路17と、クロック発生回路15と、クロック整数倍回路16とを備えている。
電源回路54と、高周波コネクタ51と、デジタル信号コネクタ52と、フ線形増幅器23−1〜23−3と、合成器12−1〜12−3と、LCRフィルタ13B−1,13B−2と、線形増幅器19−1,19−2と、コンパレータ14と、アップサンプリング回路22と、FIRフィルタ30Bと、制御回路18と、サンプルホールド回路17と、クロック発生回路15と、クロック整数倍回路16とは、それぞれアナログ信号線55とデジタル信号線56とで電気的に結合されている。
高周波コネクタ51は、線形増幅器23−1〜23−3に接続されている。線形増幅器23−1〜23−3は、それぞれ合成器12−1〜12−3の一方の加算入力端子に接続されている。合成器12−1の出力端子は、LCRフィルタ13B−1に接続されている。LCRフィルタ13B−1の出力端子は、合成器12−2の他方の加算入力端子に接続されている。合成器12−1の出力端子は、LCRフィルタ13B−2に接続されている。LCRフィルタ13B−2の出力端子は、合成器12−3の他方の加算入力端子に接続されている。合成器12−3の出力端子は、コンパレータ14に接続されている。
コンパレータ14のデジタル出力端子は、デジタル信号コネクタ52に接続されていると共に、アップサンプリング回路22に接続されている。アップサンプリング回路22のデジタル出力端子は、FIRフィルタ30Bに接続されている。FIRフィルタ30Bは、バスを介して制御回路18に接続されている。FIRフィルタ30Bのデジタル出力端子は、サンプルホールド回路17に接続されている。コンパレータ14のクロック入力端子には、クロック発生回路15が接続されている。サンプルホールド回路17のクロック入力端子には、クロック整数倍回路16を介してクロック発生回路15が接続されている。
サンプルホールド回路17の出力端子には、線形増幅器19−1,19−2が接続されている。線形増幅器19−1,19−2の出力端子は、それぞれ合成器12−1,12−2の減算入力端子に接続され、二重のフィードバックループを構成している。
電源回路54で発生した直流電流は、多層プリント基板53の内層に設けられた電源線により、スルーホールなどを介して能動素子や集積回路などに供給される。多層プリント基板53の内層には、アナログ信号線55およびデジタル信号線56に対するグランド面が形成されている。多層プリント基板53の内層には、当該グランド面と、アナログ信号線55と、デジタル信号線56とにより、信号の伝達路であるストリップ線路が形成される。無線機基板50には、受信波の入力端としての高周波コネクタ51と、デジタル信号の出力端としてのデジタル信号コネクタ52とが実装されて、本実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Fを実現している。
第7の実施形態に於けるデルタ・シグマ回路10Fの実装によれば、プリント基板プロセス、および、部品の自動面実装プロセスを用いて、無線機基板50の量産が可能である。したがって、デルタ・シグマ回路10Fと無線機1Fの生産コストを低減することができる。
(第7の実施形態の効果)
以上説明した第7の実施形態では、次の(H)のような効果がある。
(H) プリント基板プロセス、および、部品の自動面実装プロセスを用いて、無線機基板50の量産が可能である。したがって、デルタ・シグマ回路10Fと無線機1Fの生産コストを低減することができる。
(第8の実施形態の構成)
図10は、第8の実施形態に於ける昇降機システムを示す概略の構成図である。
この昇降機システム100は、縦長の直方体である建物101と、昇降カゴ111とを有している。建物101の内部に、昇降カゴ111の昇降空間が設けられている。昇降カゴ111は、図示しないロープと駆動機構によって、建物101の内部空間を昇降する。
建物101の内部空間の天井部には、基地局無線機102−1とアンテナ103−1とが設置されている。建物101の内部空間の床部には、基地局無線機102−2とアンテナ103−2とが設置されている。基地局無線機102−1,102−2は、図1(a)に示す無線機1と同一の構成を有している。
昇降カゴ111の上面にはアンテナ113−1が設けられている。昇降カゴ111の下面にはアンテナ113−2が設けられている。アンテナ113−1,113−2は、高周波ケーブル114によって、それぞれ端末局無線機112に接続されている。端末局無線機112は、図1(a)に示す無線機1と同様である。
(第8の実施形態の動作)
端末局無線機112から送信された電波は、アンテナ113−1,113−2を介して送信される。送信された電波は、建物101の内部空間を無線伝送媒体とするので、建物101の内壁および昇降カゴ111の外壁によって多重反射を受ける。すなわち、建物101の内部空間は、多重波干渉環境を形成する。多重反射を受けた電波は、それぞれアンテナ103−1,103−2に到達する。
本実施形態では、多重波干渉環境下でも高品質の無線伝送が実現可能となる。建物101から無線接続手段によって昇降カゴ111の制御/監視が可能となる。これにより、ケーブルなどの有線接続手段によって昇降カゴ111が昇降する空間を無駄にすることがなくなる。よって、建物101を小体積とすることが可能である。または、同一の建物101の体積で昇降カゴ111の寸法を増大させて輸送能力を向上させることが可能である。
あわせて、本実施形態の昇降機システム100は、昇降カゴ111の軽量化も可能となる。昇降カゴ111に接続されるケーブルなどの有線接続手段の重さは、高層ビルに於いて、無視し得ない重さとなるためである。
(第8の実施形態の効果)
以上説明した第8の実施形態では、次の(I)のような効果がある。
(I) 建物101から無線接続手段によって昇降カゴ111の制御/監視が可能となる。これにより、昇降機システム100は、ケーブルなどの有線接続手段によって昇降カゴ111が昇降する空間を無駄にすることがなくなり、小さい建物101の体積とすることが可能である。または、同一の建物101の体積で昇降カゴ111の寸法を増大させて輸送能力を向上させることが可能である。あわせて、昇降機システム100は、昇降カゴ111の軽量化も可能となる。
(第9の実施形態の構成)
図11は、第9の実施形態に於ける変電設備監視システムを示す概略の構成図である。
本実施形態の変電設備監視システム200は、複数の変電機201−1〜201−12と、これらの近傍に設定されている複数の無線基地局211−1〜211−4とを備えている。この無線基地局211−1〜211−4は、それぞれ第1の実施形態の無線機1を備えている。
本実施形態では、変電機201−1〜201−12の数は、無線基地局211−1〜211−4の数よりも多い。
それぞれの変電機201−1〜201−12は、端末局無線機203と端末局2直交偏波一体アンテナ202とを備えている。変電機201−1〜201−12の寸法は、数mのオーダである。
無線基地局211−1〜211−4は、それぞれ基地局無線機213と基地局2直交偏波一体アンテナ212とを備えている。無線機1が使用する数百MHzから数GHzの周波数の電磁波の波長に比べて、変電機201−1〜201−12の寸法は圧倒的に大きい。
(第9の実施形態の動作)
本実施形態の変電設備監視システム200に於いて、電磁波は、複数の変電機201−1〜201−12によって多重反射を受ける。変電設備監視システム200には、多重波干渉環境が形成される。
本実施形態の端末局無線機203と、基地局無線機213とは、多重波干渉環境下でも高品質の無線伝送をすることができる。したがって、複数の無線基地局211−1〜211−4によって、変電機201−1〜201−12の遠隔制御と遠隔監視が可能である。これにより、変電設備監視システム200は、ケーブルなどを用いる場合に問題となる高圧誘導電力の問題を解決でき、ケーブルの敷設コストが不要となる。したがって、変電機201−1〜201−12の制御/監視システムの安全性の向上、および、コストの削減が可能となる。
(第9の実施形態の効果)
以上説明した第9の実施形態では、次の(J)のような効果がある。
(J) 本実施形態の無線機1によれば、多重波干渉環境下でも高品質の無線伝送が実現可能となる。変電機201−1〜201−12は、複数の無線基地局211−1〜211−4によって遠隔からの制御と監視とを行うことができる。これにより、ケーブルなどの有線接続手段を用いる場合に問題となる高圧誘導電力の問題を解決できると共に、ケーブルの敷設コストを削除でき、変電機201−1〜201−12の制御/監視システムの安全性向上、および、コスト削減が可能となる。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a),(b)のようなものがある。
(a) 第8の実施形態に於ける昇降機システム100は、第1の実施形態の無線機1を用いている。しかし、これに限られず、昇降機システム100は、第2〜第7の実施形態の無線機1A〜1Fを用いてもよい。
(b) 第9の実施形態の変電設備監視システム200は、第1の実施形態の無線機1を用いている。しかし、これに限られず、変電設備監視システム200は、第2〜第7の実施形態の無線機1A〜1Fを用いてもよい。
1〜1F 無線機
10〜10F デルタ・シグマ回路
11 入力端子
12 合成器
12−1 合成器(第1の合成器)
12−2 合成器(第2の合成器)
12−3 合成器(第3の合成器)
13 バンドパスフィルタ
13B LCRフィルタ(バンドパスフィルタ)
13B−2 LCRフィルタ(第2のバンドパスフィルタ)
14 コンパレータ
15 クロック発生回路
16,16D クロック整数倍回路
17,17D サンプルホールド回路
18 制御回路
19 線形増幅器
19−1 線形増幅器(第1のフィードバック増幅器)
19−2 線形増幅器(第2のフィードバック増幅器)
21 出力端子
22 アップサンプリング回路(アップサンプラ)
23−1 線形増幅器(第1のフィードフォワード増幅器)
23−2 線形増幅器(第2のフィードフォワード増幅器)
23−3 線形増幅器(第3のフィードフォワード増幅器)
30〜30D FIRフィルタ(デジタルフィルタ、トランスバーサル回路)
31,31A RAM(記憶部)
32 スイッチ回路
33 遅延器
34 1ビット信号送出回路
35C ROM
40,40C 信号処理装置
41 復調回路
50 無線機基板
100 昇降機システム
101 建物
102−1,102−2 基地局無線機
111 昇降カゴ
112 端末局無線機
200 変電設備監視システム
203 端末局無線機
211−1〜211−4 無線基地局
213 基地局無線機

Claims (15)

  1. 第1の周波数成分を持つ入力信号を第2の周波数でサンプリングして1ビットの第1のデジタル信号に離散化するコンパレータと、
    前記第2の周波数を所定の自然数で乗算した第3の周波数で、当該第1のデジタル信号をアップサンプリングし、第2のデジタル信号を出力するアップサンプラと、
    前記第2のデジタル信号をデジタル処理し、第3のデジタル信号を出力するデジタルフィルタと、
    前記デジタルフィルタの前記第3のデジタル信号を、アナログ信号に変換するサンプルホールド回路と、
    前記サンプルホールド回路の前記アナログ信号を、前記入力信号にフィードバックする合成器と、
    を備え、前記入力信号をデジタル信号に変換するデルタ・シグマ回路を備えた、
    ことを特徴とする無線機。
  2. 前記第1の周波数は、前記第2の周波数の1/2を奇数倍した値である、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の無線機。
  3. 前記デルタ・シグマ回路は更に、前記合成器の出力信号のうち前記第1の周波数成分を選択的に通過させるバンドパスフィルタを備えた、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の無線機。
  4. 前記デルタ・シグマ回路の前記デジタルフィルタは、前記第1の周波数および前記第3の周波数の信号成分を除く前記第3の周波数のいずれかの整数倍の信号成分が減衰するように、前記第3のデジタル信号を、前記第3の周波数の1周期分である基本遅延時間で信号を遅延させる複数の遅延素子で順次入力するか、または、当該遅延素子に現在の当該第3のデジタル信号を入力するかを所定パターンで切り替えてFIRフィルタ処理を行うトランスバーサル回路である、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の無線機。
  5. 前記デジタルフィルタは、記憶手段に格納された前記所定パターンに基いて、FIRフィルタ処理を行う、
    ことを特徴とする請求の範囲第4項に記載の無線機。
  6. 前記入力信号には、当該入力信号の搬送波の周波数の情報が含まれており、
    当該無線機は、前記デルタ・シグマ回路の出力信号を復調して、当該搬送波の周波数を特定し、当該搬送波の周波数に応じた最適な前記所定パターンを選択し、
    前記デルタ・シグマ回路は、選択した当該所定パターンに基いて、FIRフィルタ処理を行う、
    ことを特徴とする請求の範囲第5項に記載の無線機。
  7. 前記デルタ・シグマ回路の前記デジタルフィルタは、前記第1の周波数および前記第3の周波数の信号成分以外の、前記第3の周波数のいずれかの整数倍の信号成分が減衰するように、所定のデジタル信号を前記第3のデジタル信号に挿入する、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の無線機。
  8. 前記デジタルフィルタは、前記第2の周波数に対する周期内で、当該基本遅延時間ごとに所定のデジタル信号を挿入する、
    ことを特徴とする請求の範囲第4項に記載の無線機。
  9. 前記デジタルフィルタは、記憶部を参照して、前記所定のデジタル信号を決定する、
    ことを特徴とする請求の範囲第8項に記載の無線機。
  10. 前記デルタ・シグマ回路は更に、
    前記バンドパスフィルタの出力信号に、前記サンプルホールド回路の前記アナログ信号を合成する第2の合成器と、
    前記第2の合成器の出力信号を更に、出力信号のうち前記第1の周波数成分を選択的に通過させる第2のバンドパスフィルタと、
    を備えたことを特徴とする請求の範囲第3項に記載の無線機。
  11. 前記デルタ・シグマ回路は更に、
    前記入力信号を増幅する第1のフィードフォワード増幅器と、
    前記入力信号を増幅する第2のフィードフォワード増幅器と、
    前記入力信号を増幅する第3のフィードフォワード増幅器と、
    前記サンプルホールド回路の前記アナログ信号を増幅する第1のフィードバック増幅器と、
    前記サンプルホールド回路の前記アナログ信号を増幅する第2のフィードバック増幅器と、
    前記第2のバンドパスフィルタの信号および前記第3のフィードフォワード増幅器の出力信号を加算して合成する第3の合成器とを備え、
    前記合成器は、前記第1のフィードフォワード増幅器の出力信号から前記第1のフィードバック増幅器の出力信号を減算して合成し、
    前記第2の合成器は、前記第2のフィードフォワード増幅器の出力信号と前記バンドパスフィルタの出力信号とを加算し、前記第1のフィードバック増幅器の出力信号を減算して合成する、
    ことを特徴とする請求の範囲第10項に記載の無線機。
  12. 前記バンドパスフィルタおよび前記第2のバンドパスフィルタは、LCR回路で構成されている、
    ことを特徴とする請求の範囲第10項または請求の範囲第11項に記載の無線機。
  13. デジタル信号処理チップを搭載した多層プリント基板を備える、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項ないし請求の範囲第11項のいずれか1項に記載の無線機。
  14. 請求の範囲第1項ないし請求の範囲第11項のいずれか1項に記載の無線機を備えている、
    ことを特徴とする昇降機制御システム。
  15. 請求の範囲第1項ないし請求の範囲第14項のいずれか1項に記載の無線機を備えている、
    ことを特徴とする変電設備制御システム。
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