JP5686600B2 - 新規モノクローナル抗体とその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、ブチロフィリン(BTN)3抗原を特異的に認識する新規モノクローナル抗体に関する。更には、当該モノクローナル抗体の用途に関する。
近年、細胞の解析技術の進歩により、一つ一つの細胞から非常に多くの情報を得る事が可能となった。例えばフローサイトメトリーでは、細胞が1個ずつ通る細い流路を作り、そこを流れる細胞にレーザー光が当たって起こる散乱光と蛍光を検出器によって検出し、得られた情報を分析する事で細胞の状況を知ることができる。特に細胞表面抗原の解析においては蛍光物質で標識された抗体で細胞を染色してフローサイトメトリー解析を行う方法が一般的に知られている。
上記のように細胞の解析を行うには、細胞表面抗原特異的な抗体を用いることが必要不可欠である。これまで数々の細胞表面抗原とそれぞれに特異的に対応する抗体が同定され、細胞機能解析に大きな成果を挙げている。そして現在も多くの研究者が新規抗原の発見とそれに対応する抗体の作製に取り組んでいるが、未だ存在が確認されながらも機能が明らかでない分子は多く、発見されていない分子も数多く存在すると考えられている。
細胞表面抗原分子について、ヒト白血球分化抗原に関する国際ワークショップではWHO(世界保健機構)の監修のもとで、造血系細胞に対するモノクローナル抗体を反応特異性に基づくクラスターに分類し、それぞれにCD(Cluster of Differentiation)番号を付している。各々の抗体のCD番号は特定の細胞表面抗原分子に対応している。
細胞表面抗原のひとつとしてブチロフィリン(以下、BTN)抗原が知られている。BTN抗原はイムノグロブリンスーパーファミリーに属し、サブファミリーによりBTN1、BTN2、BTN3に分類される膜貫通分子である。更に細かくは、メンバー分類が存在し、例えばBTN3についてはBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3と分類される。
BTN3A1(ブチロフィリン、サブファミリー3、メンバーA1)は、分子量56kDのCD277として同定されており、この抗原はT細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、単球、樹状細胞といった、リンパ球全般に発現が確認されている。これに対するモノクローナル抗体は、既にフランスのグループが取得しており、eBioscience社より試薬として製品化されている(Affinity purified anti−human CD277(B7 Family,Butyrophilin)、商品名;eBioBT3.1)。しかしながら、その特徴はBTN3を特異的に認識するのみであり、BTN3の機能及び特性については明らかにされていない(非特許文献1及び2)。
BTN3A3に対するマウスポリクローナル抗体としては、例えばイタリアのグループが取得した(BTN3A3 antibody;abcam)(非特許文献3)が、前記BT3.1同様に試薬として製品化されている。
また近年、モノクローナル抗体を用いた分子標的医薬又は抗体医薬の開発が盛んに行われているが、BTN3A3に対するモノクローナル抗体医薬に関する報告はなく、BTN3の機能や性質についても報告はされていない。
これまで明らかにされていなかったBTN3の機能や性質を理解する事が重要であり、BTN3の性質を利用する事で、自己免疫疾患の治療や、免疫細胞療法、臓器移植といった医療分野において更なる発展が期待できる。
細胞増殖を抑制する方法としては、例えば、免疫抑制剤としての抗CD3抗体から成るオルソクローンOKT3注(ムロモナブ−CD3注射液;ヤンセンファーマ)等があるが、これはCD3を発現したT細胞のみを抑制する物である。リンパ球全般の増殖抑制に関与する分子の報告はされていない。
活性化細胞と非活性の細胞を識別する方法としては、活性化マーカーとして知られているCD25、CD69等リンパ球活性化によって発現する分子が挙げられる。しかし、逆に非活性のリンパ球に発現し、活性化リンパ球には発現が低下する分子の例は殆ど知られていない。
Eur.J.Immunol.2004.Vol.34,P2089−2099 Immunogenitics,1997.Vol.47,P55−63 Proteomics,2002.Vol.2−7,P850−856
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、細胞表面上に存在するBTN3を特異的に認識する新規モノクローナル抗体及びその利用方法を提供する事を課題とする。更には、該抗体を用いて作製される試薬及び医薬等を提供する事を課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行ったところ、BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体(以下、本発明抗体と記載)を得たことにより本発明を完成させた。また、本発明抗体を用いて更に研究を進めることによりこれまで明らかとなっていなかったBTN3が細胞増殖の抑制に関与していること、リンパ球の活性化とBTN3の発現は逆相関していることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は下記手段を提供するものである。
(1)膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体;(2)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(1)に記載のモノクローナル抗体;(3)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3のN末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体;(4)前記モノクローナル抗体が、リンパ球に対して増殖抑制に働くことを特徴とする(1)から(3)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体;(5)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする、(1)から(4)のいずれか1に記載のモノクローナル抗体。
(6)リンパ球の集団における活性化リンパ球又は非活性のリンパ球の割合の測定方法であって、リンパ球の集団に膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を結合させる工程と、リンパ球に結合したモノクローナル抗体を検出する工程と、モノクローナル抗体が結合したリンパ球を非活性のリンパ球として、リンパ球の集団における活性化リンパ球又は非活性のリンパ球の割合を算出する工程、とからなる測定方法。;(7)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(6)に記載の測定方法;(8)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3のN末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(6)又は(7)に記載の測定方法;(9)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(6)から(8)のいずれか1に記載の測定方法。
(10)膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた、活性化リンパ球と非活性のリンパ球の割合の測定装置;(11)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(10)に記載の測定装置;(12)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3のN末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(10)又は(11)に記載の測定装置;(13)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(10)から(12)に記載の測定装置。
(14)膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた、活性化リンパ球と非活性のリンパ球の分離方法;(15)前記分離方法が、リンパ球の集団にBTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を添加する工程と、リンパ球の集団に含まれる非活性のリンパ球とモノクローナル抗体とを結合させる工程と、モノクローナル抗体の結合したリンパ球と結合していないリンパ球とを分離する工程と、からなる(14)に記載の分離方法。
(16)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(14)又は(15)に記載の分離方法;(17)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3の、N末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(14)から(16)に記載の分離方法;(18)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(14)から(17)のいずれか1に記載の分離方法。
(19)膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた、活性化リンパ球と非活性のリンパ球の分離装置;(20)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(19)に記載の分離装置;(21)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3の、N末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(19)又は(20)に記載の分離装置;(22)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(19)から(21)のいずれか1に記載の分離装置。
(23)膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた、リンパ球の増殖の抑制方法;(24)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(23)に記載の抑制方法;(25)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3の、N末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(23)又は(24)に記載の抑制方法;(26)前記モノクローナル抗体が、リンパ球に対して増殖抑制に働くことを特徴とする(23)から(25)のいずれか1に記載の抑制方法;(27)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(23)から(26)のいずれか1に記載の抑制方法。
(28)膜貫通分子BTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体を含む、リンパ球の増殖抑制剤;(29)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(28)に記載のリンパ球の増殖抑制剤;(30)前記モノクローナル抗体が、前記膜貫通分子BTN3の、N末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする(28)又は(29)に記載のリンパ球の増殖抑制剤;(31)前記モノクローナル抗体が、リンパ球に対して増殖抑制に働くことを特徴とする(28)から(30)のいずれか1に記載のリンパ球の増殖抑制剤;(32)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(28)から(31)のいずれか1に記載のリンパ球の増殖抑制剤。
(33)膜貫通分子BTN3からなる活性化リンパ球の逆相関マーカー;(34)前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする(33)に記載のマーカー;(35)(33)または(34)に記載のマーカーと、前記マーカーに特異的に結合するモノクローナル抗体とを結合させ、マーカーの発現量を調べることを特徴とする非活性のリンパ球の検出方法;(36)前記モノクローナル抗体が、微生物寄託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有することを特徴とする(35)に記載の非活性のリンパ球の検出方法。
本発明抗体は、現在市販されている抗CD277抗体(eBioBT3.1、以下BT3.1と記す)の8倍〜9倍の親和性を持つため、BTN3の発現をより明確に検出する事が可能である。
また、本発明抗体はリンパ球に対して増殖抑制の作用を示すことを発見した。従って、例えばモノクローナル抗体医薬として開発した場合には、自己免疫疾患や臓器移植後の免疫抑制剤として利用できる可能性がある。
更に、本発明者らは、本発明抗体を用いた研究により、活性化シグナルを享受したリンパ球においてBTN3の発現が減少する事を見出した。この現象は、前記BT3.1を用いてもある程度観察できるが、より高い親和性をもつ本発明抗体を用いる事でより明確に識別でき、更には生体外においてどの程度の細胞が活性化刺激を受けたかを即座に判断する事が可能となる。例えば、患者血液から採取したリンパ球を生体外で大量に増殖、活性化させて患者体内へ投与する免疫細胞療法を行う場合に、活性化しているリンパ球の割合を知る測定方法・装置として用いることが可能である。
BTN3分子が活性化状態のリンパ球での発現が低下する性質から、例えば、本発明抗体による吸着ネガティブセレクション用カラムに応用することで、活性化状態の抗腫瘍免疫に有効な細胞集団を選択的に回収することが可能となる。
mock geneを発現しているCHO−K1細胞と、BTN3A3を発現しているCHO−K1細胞それぞれにコントロールIgG2a、232−5由来モノクローナル抗体した場合の反応を比較した結果である。これらの結果から、本発明抗体(図中、232−5)はBTN3A3に対して特異的なモノクローナル抗体を産生していることを確認した。 図1と同様の実験を、IgG2a、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を示す図である。 予めBT3.1処理していたPBMCsにおいて、BT3.1の濃度依存的に本発明抗体による蛍光強度は減少した。BT3.1と本発明抗体は共にBTN3抗原近傍のエピトープを認識していることを示した図である。 BT3.1及び、本発明抗体(232−5抗体)の認識領域がVset又はCsetの何れかを検討するため、BTN3のCsetのみ(下段:Cos−7 pDisplay BTN3 Cset)又はVsetとCset両者を発現する(上段:Cos−7 pDisplay BTN3 EC)ベクターにそれぞれの抗体を反応させた。その結果、共に抗原認識部位はN末端側のVset領域に存在することが明らかになった図である。 図4と同様の実験を、BT3.1、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を示す図である。 BTN3抗原のVset領域内での抗原認識部位を推定するためのプラスミドを作製し、ウエスタンブロッティングを行った。これによりBT3.1はBTN3抗原の40−50間のアミノ酸配列を、本発明抗体(232−5抗体)はBTN3抗原の35−40間のアミノ酸配列を認識していることが推定された図である。 図6と同様の実験を、BT3.1、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を示す図である。 BTN3抗原に対する抗原親和性を比較した。本発明抗体はBT3.1に比べ最大で8〜9倍の親和性を持つことが示された図である。 各種リンパ球集団におけるBTN3抗原の発現をフローサイトメーターで検証した図である。本発明抗体は各リンパ球集団の細胞表面の殆ど(>95%)を認識した。 PBMCs、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞に対する、それぞれの抗体の増殖抑制効果を比較した図である。これにより、本発明抗体にのみ増殖抑制効果を確認できた。 図10と同様の実験を、IgG2a、BT3.1、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を示す図である。 (a)T細胞のみを選択的に活性化させ、活性化したT細胞にのみBTN3の発現減少が起こることを確認した図である。(b)B細胞のみを選択的に活性化させ、活性化したB細胞にのみBTN3の発現減少が起こることを確認した図である。 PBMCsをOKT3/rIL−2で72時間刺激し、mRNAを調製し、そこから得られたcDNAを用いてBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3の発現を検証した図である。未処理、又は培地のみで培養したPBMCsでは3種類のBTN3分子の発現は維持されていたが、OKT3/rIL−2で培養することで、その発現は減少した。 CD4陽性T細胞に比べCD8陽性T細胞のほうが、活性化マーカーCD25の発現上昇とBTN3の発現減少がより顕著であることが示された図である。 CD4+CD25−CD45RO−ナイーブT細胞を分離し、6日間培養を行った時のBTN3発現減少と活性化マーカーとの逆相関を示す図である。 ナイーブT細胞をOKT3/αCD28/rIL−2で6日間刺激し、その後各種活性化・メモリーマーカーと本発明抗体、BT3.1を用いてフローサイトメーター解析を実施した図である。BTN3抗原の発現は活性化・メモリーマーカーの発現と逆相関を示した。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
BTN3に対するモノクローナル抗体
まず、BTN3分子に対する本発明抗体について説明する。
本発明抗体は、膜貫通分子であるBTN3を特異的に認識するモノクローナル抗体である。
ここで、膜貫通分子BTN3とはイムノグロブリンスーパーファミリーに属し、サブファミリーによって1〜3に分類された、ブチロフィリン、サブファミリー3を意味している。更にメンバー分類したものが、BTN3A1(メンバーA1)であり、分子量56kDのCD277として同定されている。この抗原は、T細胞、B細胞、NK細胞、単球、樹状細胞といった、リンパ球全般に発現が確認されている。配列表中の配列番号1及び2はBTN3A1の遺伝子配列及びアミノ酸配列を、配列番号3及び4はBTN3A2の遺伝子配列及びアミノ酸配列を、配列番号5及び6はBTN3A3の遺伝子配列及びアミノ酸配列をそれぞれ示している。細胞膜外領域は3分子とも同様で、配列表に示したアミノ酸配列(それぞれ配列番号2、4又は6)の1〜248である。
本発明抗体が認識するBTN3は、リンパ球において非活性の状態で発現が多く認められるが、活性化シグナルを受けると共にその発現は減少することが明らかとなった。上記の通り、本発明の抗体は、とりわけ非活性のリンパ球に特異的に結合する特性を有する。
本発明抗体は、クローン化されたイムノグロブリン抗体であれば何であってもよく、抗体の由来する動物種、イムノグロブリンのタイプやサブタイプ、抗体の産生方法は問わない。また、抗体を断片化して免疫反応部位を残したもの、それら断片の修復物、抗体そのものの修飾物、二種類の抗体を結合させたキメラ抗体等も包含する。
本発明抗体は、従来公知の方法を適宜用いることで作製する事が可能である。具体的には、例えば目的抗原をコードする遺伝子配列を組み込んだプラスミドDNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)を作製し、動物へ免疫する。その免疫動物から得たB細胞と株化ミエローマ細胞を融合させ、目的の抗原に反応するハイブリドーマを純粋にクローニングし、樹立する。そのハイブリドーマから産生された抗体を抽出、精製する事で必要なときに必要な量を得られる。免疫動物の動物種は特に問わないが、一般的にマウス、ラット、ハムスター、ウサギ等が用いられる。
マウス、ラット等の動物を免疫する免疫原は様々なものを用いることができる。例えば、BTN3タンパク質又はそのペプチド断片、BTN3をコードする遺伝子又はその断片を導入したベクター、BTN3を発現するトランスフェクタント等が挙げられる。本発明の機能を有する抗体を作製する場合には、前記した免疫原いずれのものを用いることもできるが、特に膜外領域を免疫原として用いたり、特にVset領域(配列番号2、4又は6に記載のアミノ酸配列の26〜139の領域)を用いたりすることが考えられる。
本発明抗体は、BTN3のN末端から35−40アミノ酸を抗原として認識する事を特徴とする抗体であるから、BTN3のN末端から35−40アミノ酸を含むペプチドを免疫原として用いることも可能である。BTN3のN末端から35−40アミノ酸とは、配列番号2、4又は6に記載されたアミノ酸配列の35番目から40番目までのアミノ酸配列を指す。この35番目から40番目までのアミノ酸配列はBTN3A1、BTN3A2及びBTN3A3で共通しているため、この部分を含むペプチドを免疫原として用いることで、3つのBTN3分子を認識する抗体となる。
免疫動物(例えば、マウス)にBTN3の免疫を行う。BTN3をコードする遺伝子配列を挿入したベクターと金コロイド等の免疫賦活剤の混合物を、Balb/cマウス、雌8〜10週齢に遺伝子銃で導入し、約2〜3ヶ月飼育する。
BTN3に対する抗体価の上昇は以下の手順により確認できる。
1)適当な細胞(例えば、CHO細胞)に当該遺伝子挿入ベクターを導入し、BTN3を一過的に発現させた細胞を作製する。
2)免疫動物から採取した血清(BTN3に対するポリクローナル抗体を含んでいる)と混合する。
3)蛍光標識した抗マウスポリクローナル抗体(二次抗体)を用いてフローサイトメーター解析を行う。
上記のように、BTN3を一過性発現させた細胞を用いて、抗体価を確認することにより、BTN3の細胞膜外に出ている立体構造を認識する抗体が得られているかを確認することができる。
抗体価の強い上昇が確認された後、免疫動物はBTN3を一過的に発現させた細胞(例えばCHO細胞)を腹腔内に注射し、最終免疫を行う。最終免疫の3〜5日後、免疫動物の脾臓細胞を取り出して、ミエローマ細胞(例えば、SP2/0マウスミエローマ細胞)とポリエチレングリコール(PEG1500など)を用いて融合し、ハイブリドーマを作製する。作製したハイブリドーマ細胞株群の中から目的のBTN3に対する抗体を産生しているハイブリドーマは、BTN3を一過的に発現させた細胞とハイブリドーマ培養上清を混合した後、蛍光標識した抗ポリクローナルマウス抗体(二次抗体)を用いてFCM解析を行うことで選択することができる。
このようにして得られたハイブリドーマ2株を独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託した。1株はAnti−human BTN3 Mouse hybridoma 232−5(以下、232−5と記す)と命名し、2008年10月21日に前記センターに国内寄託を行い(受託番号FERM P−21706)、2009年9月8日にブタペスト条約に基づく国際寄託へ移管した(受託番号FERM BP−11177)。もう1株はAnti−human BTN3 Mouse hybridoma 34−7(以下、34−7と記す)と命名し、2009年9月17日に国際寄託を行った(受領番号FERM
BP−11178)。これらのハイブリドーマを用いることにより、本発明抗体を容易に得ることができる。
得られた抗体の精製方法として、例えば硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等を用いる塩析法、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過、アフィニティカラム等が挙げられるが、いかなる方法であっても構わない。
リンパ球増殖の抑制方法
本発明抗体を用いることでリンパ球増殖を抑制することができる。例えば生体外にてリンパ球の増殖を抑制するには、本発明抗体をリンパ球が懸濁された溶液中に添加し培養することにより、リンパ球の増殖を抑制することができる。本発明抗体を用いてリンパ球の増殖を抑制する場合、添加濃度1〜10μg/mlにて3日間以上共培養することにより増殖抑制効果が現れる。
リンパ球増殖の抑制機能を利用して、本発明抗体を医薬として用いることができる。例えば自己免疫疾患の患者に投与し、リンパ球の活性化を抑制することにより、自己免疫疾患の症状を抑制することが可能となる。また、臓器移植を行った患者に投与し、患者体内のリンパ球の増殖を抑制することにより、臓器移植後の拒絶反応を抑制することが可能となる。
活性化リンパ球と非活性のリンパ球との分離装置
非活性のリンパ球とは、PBMC(末梢血単核球、Peripheral Blood
Mononuclear Cell)から回収直後の活性因子による刺激を受けていない状態のリンパ球を指す。形状としては、小さく球状のものである。それに対し活性化リンパ球とは、何らかの活性化因子により刺激を受けた状態のものを指す。形状は大きく、サイトカイン産生能を有し、必ずしも球状とは限らず歪な形をしたものを多く含む。
本発明抗体は活性化リンパ球と非活性のリンパ球との分離装置・方法として用いることができる。本発明の分離装置・方法はリンパ球が活性化シグナルを享受するとBTN3の発現量が低下することを利用した方法・装置である。
本発明の活性化リンパ球と非活性のリンパ球との分離装置・方法は、例えば本発明抗体とビーズなどの高分子化合物とを結合させ、それをカラム等に充填することにより、PBMC等のリンパ球の集団から効率的に活性化リンパ球又は非活性リンパ球を選択的に分離することができる。
ここでいう高分子化合物としては、体液と接触しても溶解することなく、血球成分と接触しても害を及ぼさない毒性の低いポリマーから選ばれ、例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、セルロース系樹脂、キチン、キトサン、アガロース、デキストラン等が挙げられる。また、これらの高分子材料を単独で用いてもよいし、共重合体、複合体、あるいは混合物から構成されていても良い。
具体的な構成例としては、例えば、本発明抗体を結合させた上記高分子化合物をカラムに充填することで、そこに培養後リンパ球を通すことにより非活性のリンパ球を吸着除去し、活性化リンパ球のみを抽出する装置・方法等が挙げられる。
このような分離には抗原との親和性が低い抗体では十分に吸着できないため分離には適さず、親和性が高い抗体が求められる。本発明抗体は従来の市販品に比べ8倍〜9倍の親和性を有するため、効率よく非活性のリンパ球と活性化リンパ球の分離することができる。
本発明抗体とこれら高分子化合物の結合は化学結合により固定されるが、化学結合としては、共有結合、イオン結合、疎水結合などがあり、中でも固定が十分に可能であることから、共有結合が好ましい。この共有結合で固定するためには、これら高分子化合物は適当な官能基を持っていることが好ましく、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、チオール基、グリシジル基、イソシアナート基、ハロゲン基などを有していることが好ましい。中でも例えばトシル基やエポキシル基が好適に用いられる。
これら本発明の抗体と高分子化合物をカラムに充填するときの充填剤の形状は特に限定されるものではなく、例えば、ビーズのほか、フィルム、繊維、中空糸、ゲル等があげられる。
本発明抗体の上記高分子化合物への固定化量としては、本発明抗体が少なすぎると除去効果が不十分となる恐れがあり、多すぎると抗体同士が重なり合って互いに立体障害となる恐れがあるため、高分子化合物1gあたり1pmol〜10pmolの範囲で固定化することが好ましい。
また、以下の手順により分離することも可能である。リンパ球の集団を含む懸濁液に本発明の抗体を添加し、リンパ球と本発明抗体を結合させる。リンパ球をPBS等で洗浄した後、抗マウスIgG又はプロテインG等を固定化した磁気ビーズを添加する。磁石を用いて磁気ビーズを回収する。これにより、磁気ビーズには非活性のリンパ球が回収され、溶液中に残るリンパ球は活性化リンパ球となる。また、本発明抗体と抗マウスIgG又はプロテインG等を固定化した磁気ビーズは予め結合させておいた状態で、リンパ球集団を含む懸濁液へ添加しても構わない。
このように構成された、本発明の非活性化リンパ球の分離装置・方法は、カラムに吸着しなかったリンパ球を活性化リンパ球として、吸着した細胞を非活性のリンパ球として、効率よく分離することができる。
活性化リンパ球と非活性のリンパ球の割合を測定する装置・方法
本発明抗体は活性化リンパ球と非活性のリンパ球の割合を測定する装置・方法として用いることができる。
例えば、リンパ球の集団(PBMC等)の懸濁液に、蛍光標識した本発明抗体を添加し、非活性のリンパ球に発現しているBTN3分子と本発明抗体を結合させる。結合していない抗体を除去(遠心分離等)した後、フローサイトメーター等で蛍光標識された細胞を測定することで、当該リンパ球の集団中に含まれる非活性のリンパ球の割合を測定することができる。
本発明抗体を用いた活性化リンパ球と非活性のリンパ球の割合を測定する装置・方法は、例えば免疫細胞療法等に用いることができる。免疫細胞療法とは、患者リンパ球をサイトカイン等と共に培養する事でリンパ球を非特異的に活性化させ、患者へ投与する治療法である。その際、投与前に培養後のリンパ球の一部を本発明抗体と混合し、フローサイトメーター等で測定する事により活性化リンパ球の割合を知ることができ、免疫細胞の質を測り得るものである。
膜貫通分子BTN3からなる活性化リンパ球の逆相関マーカー
本発明の活性化リンパ球の逆相関マーカーについて説明する。
本発明の活性化リンパ球の逆相関マーカーは膜貫通分子BTN3からなるものである。膜貫通分子BTN3は、活性化していないリンパ球や単球細胞の細胞表面に発現し、リンパ球が活性化シグナルを享受するとBTN3の発現量が低下し、リンパ球の活性化と逆相関している。そのため、活性化していないリンパ球と活性化リンパ球を識別する活性化リンパ球の逆相関マーカーとして用いることができる。
膜貫通分子BTN3を利用した非活性化リンパ球の検出方法
上記した活性化リンパ球の逆相関マーカー(膜貫通分子BTN3)は、マーカーに特異的に結合するモノクローナル抗体を結合させ、膜貫通分子BTN3(マーカー)の発現量を調べることによって非活性のリンパ球の検出方法として用いることが可能である。例えば、免疫細胞療法を行う患者に対し、治療前後の採血で得られた血液の一部を活性化リンパ球の逆相関マーカー特異的モノクローナル抗体と混合し、フローサイトメーター等で活性化リンパ球の逆相関マーカーを発現する細胞の割合を測定することで、治療前後の患者体内にて、活性化リンパ球の増加減少が数値として確認でき、免疫細胞療法の効果を示す新たな指標になり得るものである。また、例えば免疫細胞療法で用いるべく患者から得られた末梢血を体外で培養した際、そのリンパ球群の一部を活性化リンパ球の逆相関マーカー特異的モノクローナル抗体と混合して活性化リンパ球の逆相関マーカーの発現細胞量を調べることで、患者に投与する前に活性化リンパ球群の質を測る指標となり得るものである。これにより、投与する細胞の活性化状態を数値で示すことが可能となる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
<抗BTN3モノクローナル抗体の調製>
まず、本発明のモノクローナル抗体作製にかかるハイブリドーマ細胞を作製するため、プラスミドDNAの調製を行った。
ヒト全長BTN3A3分子は、ヒト末梢血単核球(以下PBMCs)由来のcDNA(相補性DNA)ライブラリから、以下2つのプライマーを用いて、クローニングを行った。
5’−ATT AAG CTT CAA TGA AAA TGG CAA GTT CCC TG−3’(配列番号7)
5’−AGT TCT AGA TCA GTA AAG TGC TTC AGT GCG TGC CT−3’(配列番号8)
DNA増幅には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(GeneAmp PCR System9700;Applied Biosystem社)を行い、95℃30秒、55℃30秒、72℃30秒を30サイクル実行した。
次に、上記PCRにて得られたBTN3A3分子全長cDNA(配列番号5、アミノ酸配列は配列番号6に記載)をサイトメガロウイルス由来プラスミドベクター(pRC−CMV)(INVITROGEN)のHindIII/XbaI領域に挿入しプラスミドDNAを完成させた。
BTN3A3を発現したBALB/3T3細胞はpRC−CMV−BTN3A3を用いてBTN3A3を強制発現させることにより作製した。その際の遺伝子導入には、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン)を使用した。まず該当プラスミドベクター30mgに対し75mlリポフェクトアミン2000を添加し、室温で20分反応させた。その後、75cmフラスコ(Sumilon)に播種しておいた4×10個BALB/3T3細胞に添加し、48時間後に回収したものを免疫原細胞とした。
次に、上記調製プラスミドDNAをマウスへ免疫しポリクローナル抗体を得る。具体的には、8〜10週齢メスBalb/cマウスの皮下に対し、30μgの上記プラスミドDNAを移入した。この操作を2週間おきに4回行った。
その後、免疫後のマウスより採取した血清に含まれるポリクローナル抗体の力価をフローサイトメーターにて測定した。具体的にはチャイニーズハムスター由来CHO−K1細胞にpTracer−BTN3A3−GFP(BTN3A3分子とGFP(緑色蛍光タンパク質)分子を両方発現するベクター;INVITROGEN)を一過性に発現させた。前記プラスミドベクター30mgに対し75mlリポフェクトアミン2000を添加し、室温で20分反応させた。その後、75cmフラスコ(Sumilon)に播種しておいた4×10個BALB/3T3細胞に添加し、48時間後に回収したものをトランスフェクタントとして用いた。
上記1×10個トランスフェクタントを懸濁した懸濁液に対し、採取血清を1/100、1/1000の割合となるように添加し、4℃で30分反応させた。PBS(−)で洗浄後、0.5mlのPEラベル抗マウスIgG+IgMポリクローナル抗体を添加し、4℃で30分反応させた。PBS(−)で洗浄後、フローサイトメーターで解析を行った。フローサイトメーター解析で1/1000でも反応することが確認され、十分にBTN3A3分子に対するポリクローナル抗体が作製されている事を確認した。
対象マウスの脾臓細胞1×10個とSP2/0ミエローマ細胞(ATCCより購入し、培養したもの)2×10個とを、ポリエチレングリコール(PEG1500;SIGMA)を用いて融合した。
この融合細胞を15%FCS(ウシ胎児血清)、HAT(ヒポキサンチン100μM、アミノプテリン0.4μM、チミジン16μM:Sigma−Aldrich)、さらに10%メチルセルロース(Stem Cell Technologies)を添加したDMEM培地に播種し、37℃、5% COインキュベーター内で培養した。
培養から10〜12日後、形成されたハイブリドーマのコロニーをピックアップし、ポリクローナル抗体測定時と同様にフローサイトメーターによるスクリーニングを行った。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの選択は、フローサイトメーターの検出結果をGFPと抗マウスIgG+IgMポリクローナル抗体の結合量で展開し、GFPの発現と抗体の結合量が正比例の関係にあるものを選択した。スクリーニングを行う中で、ハイブリドーマ232−5及び34−7を得た。約1Lの232−5又は34−7それぞれの細胞上清をPROTEIN Gカラム(GE Healthcare Science)で精製し、232−5又は34−7由来のモノクローナル抗体(以下、それぞれの抗体を232−5抗体、34−7抗体と記す。)を得た。
得られた本発明抗体のサブクラスは、Isostrip kit(Roche)により、免疫グロブリンG2a(IgG2a)であることを確認した。
次に、CHO−K1にpTracer−BTN3A3−GFP又はpTracer mock geneを一過性に発現させ、本発明抗体(232−5抗体)又はコントロールIgG2aを反応させた。
図1は、細胞を洗浄後フローサイトメーターで測定した結果である。mock gene(偽遺伝子)を発現しているCHO−K1細胞ではコントロールIgG2a、本発明抗体(232−5抗体)ともに反応しなかった。一方、BTN3A3を発現しているCHO−K1細胞では本発明抗体(232−5抗体)のみ反応した。これらの結果から本発明抗体(232−5抗体)はBTN3A3に対して特異的なモノクローナル抗体であることが示された。
また、同様の実験をIgG2a、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を図2に示す。図1では、232−5抗体がBTN3A3特異的なモノクローナル抗体であることが明らかとなったが、図2から、34−7抗体もBTN3A3特異的なモノクローナル抗体であることが明らかとなった。
<抗原認識部位の推定1>
PBMCsに0、0.1、1、10、100、1000ng/mlのBT3.1抗体を反応させ、洗浄後FITC標識した232−5抗体を1000ng/mlの濃度で反応させた後、フローサイトメーターでFITCの蛍光強度を測定した。
図3はフローサイトメーター解析の結果を示す図である。予めBT3.1処理していたPBMCsにおいて、BT3.1の濃度依存的に本発明抗体(232−5抗体)による蛍光強度は減少した。このことから、BT3.1と232−5抗体はBTN3抗原の非常に近傍のエピトープを認識していることが示された。
<抗原認識部位の推定2>
BTN3抗原は細胞外領域にイムノグロブリンスーパーファミリーに属するVset領域とCset領域を保有する。BT3.1及び、本発明抗体(232−5)の認識領域がVset又はCsetの何れかを検討するため、BTN3A3のCsetのみ又はVsetとCset両者を発現するベクター(pDisplay−Cset又はpDisplay−ALL)を作製した。
上記pDisplayベクター(INVITROGEN)はHA Tagを挿入している。COS−7細胞にpDisplay−Cset又はpDisplay−ALLプラスミドを一過性にトランスフェクションし、BT3.1又は本発明抗体(232−5抗体)を反応させた。更に、pDisplayベクターの発現確認のため、抗HA(A型肝炎ウイルス)抗体でも染色をおこなった。
図4はフローサイトメーターの結果である。BT3.1、232−5両者でpDisplay−Csetでは蛍光は検出できなかった。一方、pDisplay−ALLトランスフェクタントでは両者の抗体で蛍光が検出された。これらの結果から、BT3.1、本発明抗体(232−5抗体)による抗原認識部位はBTN3抗原のN末端側のVset領域に存在することが明らかになった。
また、同様の実験をBT3.1、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を図5に示す。34−7抗体も他の2つの抗体同様にBTN3抗原のN末端側のVset領域を認識することが明らかとなった。
<抗原認識部位の推定3>
次に、BTN3抗原のVset内での抗原認識部位を推定するため以下のプラスミドを作製した。それらはV−all、V−35、V−40、V−50、V−60の5種類で、それぞれBTN3抗原(BTN3A3)の細胞外ドメインの26−139、35−139、40−139、50−139、60−139のアミノ酸をコードする。
上記プラスミドを作製する際に用いたプライマーは、
V−all:5’−GTT GGG GCA ACG CCG CCC TCT TTT
GGA GGG TT−3’(配列番号9)、
V−35: 5’−TCA ATG GCC CAG CCG GCC GGA CCC
TCT GGG CCC AT−3’(配列番号10)、
V−40: 5’−TCA ATG GCC CAG CCG GCC ATC CTG GCC ATG GTG GG−3’(配列番号11)、
V−50: 5’− TCA ATG GCC CAG CCG GCC CTG CCC TGT CAC CTG TT−3’(配列番号12)、
V−60: 5’− TCA ATG GCC CAG CCG GCC GCA GAG ACC ATG GAG CT−3’(配列番号13)
であり、共通のリバースプライマーは、
5’− TCA ATG TCG ACA AGA TCA GAA CCC AAT GCT G−3’(配列番号14)
である。
PBMCs由来cDNAライブラリDNAをテンプレートとし、PCR法により各種PCR産物(Vset領域のDNA断片)を得た。PCRは95℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒で25サイクル行った。
上記プラスミドをpDisplayベクターのSfi/Salサイトに挿入し、COS−7に一過性に強制発現させた。24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロッティングにて発現の確認を行った。詳しくは、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)サンプルバッファに溶解し熱処理を行い(100℃ 5分間)、12.5%SDS−PAGEにて電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルをPVDF(ポリフッ化ビニリデン)メンブレン(BIO−RAD社)に転写し、3%BSA(ウシ血清アルブミン)でメンブレンをブロッキングした。その後、BT3.1又は本発明抗体を1μg/mlでメンブレンに添加し室温で一時間反応させた。PBS−tween(リン酸緩衝食塩水−界面活性剤)で洗浄後、ヒツジ抗マウスIgG−HRPを2000倍希釈で室温、30分間反応させた。PBS−tweenで洗浄後、HRPの基質であるECL(GE Healthcare Science社)を添加し、X線フィルムに感光させた。
図6は上記ウエスタンブロットの結果である。BT3.1はV−all、V−35、V−40でバンドが検出されたが、V−50、V60では検出されなかった。よってBT3.1はBTN3抗原の40−50間のアミノ酸配列を認識していることが示唆された。
一方、本発明抗体(232−5抗体)に特異的なバンドはV−all、V−35で検出され、V−40ではその濃さは薄いものであった。また、V−50、V60ではバンドは検出されなかった。このことから、本発明抗体はBTN3抗原の35−40間のアミノ酸配列を認識していることが推定された。
また、同様の実験をBT3.1、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を図7に示す。232−5抗体と同様に、34−7抗体もBTN3抗原の35−40間のアミノ酸配列を認識していることが推定された。35−40間のアミノ酸配列はBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3で一致しており、本発明抗体がBTN3のいずれの分子も認識するモノクローナル抗体であることが推定された。
<BT3.1及び本発明抗体のPBMCsにおけるBTN3抗原の発現割合及び抗原親和性>
PBMCsをBT3.1又は232−5抗体(10μg/ml)により染色後、FITC−goat anti−mouse IgG(BD Bioscience)を反応させ、フローサイトメーターで解析した。また、BT3.1、232−5抗体の最終濃度が0.01、0.1、1、10、100、100ng/mlになるよう調製した。これらの溶液をPBMCsに反応させ、反応後フローサイトメーターで蛍光強度を測定した。
結果を図8に示す。
フローサイトメーター解析の結果、BT3.1はPBMCsの約80%を染色するのに対し、232−5抗体は約95%染色することが示された。また本発明抗体はBT3.1に比べBTN3抗原に対する抗原親和性が最大で8〜9倍(10ng/ml時)あることが示された。
<各種リンパ球サブセット細胞表面におけるBTN3抗原の発現>
実施例5において、本発明抗体はPBMCsの約95%を染色することを示したが、リンパ球の各サブセットにおけるBTN3抗原の発現を検証した。
1×10個PBMCsに対し、FITCラベルを施した232−5抗体と各種リンパ球マーカーであるPE−CD3、CD4、CD8、CD19、CD56、γδTCR抗体(以上、ベックマンコールター社製)を用いてフローサイトメーター解析を行った。また、FITC−232−5のネガティブコントロールとして、FITC−IgG2a(ベックマンコールター製)を用いた。
結果を図9に示す。
フローサイトメーター解析の結果、各種リンパ球マーカー陽性画分の殆ど全てがBTN3陽性であった。
<本発明抗体の細胞増殖に対する作用>
PBMCsにCFSE(カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル;DOJINDO社)を最終濃度2μMになるように0.1%BSAを含むPBS中に添加し37℃で10分反応させた後、10%FCSを含むRPMI1640培地を添加することでその反応を停止させた。CFSEラベルされたPBMCsをOKT3(5μg/ml)がプレコーティングされている24穴(well)プレートに1×10/mlで播種した。その際、コントロールマウス抗体、BT3.1、本発明抗体(232−5抗体)をそれぞれ1μg/mlで添加した。培地は10%FCSを含むRPMI1640に対し、rhIL−2(組替えヒトインターロイキン−2)を50U/ml添加したものである。37℃、5%COインキュベーターで3日間培養後、フローサイトメーターで解析した。この際、フィコエリスリン(PE)−抗ヒトCD4(13B.2;ベックマンコールター)、或いはPE−抗ヒトCD8a(B9.11;ベックマンコールター)を用いた。
本試験の結果を図10に示す。
CFSEは細胞が分裂する割合に伴い、その蛍光強度が減弱する性質を持つ。それぞれのサンプルをフローサイトメーター解析すると、本発明抗体(232−5)を添加したPBMCsでのみ細胞分裂の抑制が観察された。これは全PBMCsを対象にした場合だけでなく、CD4又はCD8に限定した場合でも同様の傾向が観察された。BT3.1添加群にはそのような傾向は観察されなかった。
また、同様の実験をBT3.1、232−5抗体、34−7抗体を用いて行った結果を図11に示す。232−5抗体と同様に34−7抗体でも、細胞分裂の抑制が観察された。これらの結果から本発明抗体(232−5抗体及び34−7抗体)が細胞増殖の抑制効果を有することが明らかとなった。
<PBMCsを刺激した際のBTN3の発現減少>
T細胞及びNK(ナチュラルキラー)細胞を刺激することを目的とし、1×10個PBMCsをOKT3(5μg/ml)プレコーティング24wellプレートに播種し、10%FCS、50U/ml rhIL−2を含むRPMI1640培地で37℃、5%COインキュベーターで培養を行った。
またB細胞を刺激する目的で、別の培養系として1×10個PBMCsにlipopolysaccharide(リポ多糖:LPS)を最終濃度100ng/mlで添加した。3日後細胞を回収し、FITC−232−5/PE−ヒトCD3(UCHT1;ベックマンコールター)、FITC−232−5/PE−ヒトCD4、FITC−232−5/PE−ヒトCD8a、FITC−232−5/PE−ヒトCD19(J4.119;ベックマンコールター)、FITC−232−5/PE−ヒトCD56(N901;ベックマンコールター)、FITC−232−5/PE− ヒトγδTCR(IMMU510;ベックマンコールター)で染色し、フローサイトメーター解析した。
本試験の結果を図12に示す。
OKT3/rhIL−2で刺激したPBMCsを回収してフローサイトメーター解析すると、T細胞の表面マーカーであるCD3、CD4、CD8、γδTCRや、NK細胞の表面マーカーであるCD56陽性細胞においてBTN3の発現が減少していた。B細胞の表面マーカーであるCD19陽性細胞ではその現象は観察されなかった。
一方、LPSで刺激したPBMCsをフローサイトメーター解析すると、CD19陽性細胞のみにBTN3の発現減少が見られ、その他の画分ではBTN3発現減少は見られなかった。このことから、刺激されたリンパ球ではBTN3の発現減少が起こることが明らかとなった。
<PBMCsを刺激した際のBTN3の発現減少(mRNAの解析)>
実施例8において、リンパ球が活性化されるとBTN3分子の発現が減少していることを示したが、BTN3分子を構成するBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3のいずれの分子が影響を受けているかは、抗体を用いての解析では検証することができない。そこで、リンパ球を活性化させた際にmRNAを抽出し、cDNA合成後にBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3それぞれに対する特異的プライマーを用いてPCRを行った。
(1)健常人採血直後の1×10個PBMCs群、(2)健常人1×10個PBMCsを培地のみで培養した群、(3)健常人1×10個PBMCsを固相化OKT3、(5μg/ml)とrIL−2(50U/ml)で3日間刺激する群の3群を用意し、1mlのISOGEN(Wako)に溶解した。トータルRNA、cDNA合成後にBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3それぞれに対する特異的プライマーを用いてPCRを行った。
各プライマーの配列は以下の通りである。インターナルコントロールとして、G3PDHを用いた。
BTN3A1:5’− GCA TCT CGG GGA GAG AGA CA−3’(配列番号15)、5’− GAA TAT GCG ATC CAT CCA CA−3’(配列番号16)、
BTN3A2:5’− GAT−GGA−GTG−GGC−CTA−TAT−GA−3’(配列番号17)、5’−TCA−GGC−TGA CTT ATT G− 3’(配列番号18),
BTN3A3:5’− ATG GCT CGT GGA GAG AAG TC−3’(配列番号19)、5’− AGA TAT GAG ATC CAT CTG TG−3’(配列番号20)、
G3PDH:5’− ACC ACA GTC CAT CTC ATC AC−3’(配列番号21)、5’− TCC ACC ACC CTG TTG CTG TA−3’(配列番号22)
PCRの条件は94℃(30秒)、50℃(30秒)、72℃(1分)のサイクルを35回行った。
その結果を図13に示す。採血直後のPBMCsではBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3いずれのmRNAも発現していた。それらの発現はPBMCsを培地のみで培養した際も維持されていた。一方、OKT3/rIL−2で刺激したPBMCsではBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3全てのmRNAの発現が減少していた。これらのことからリンパ球を活性化すると、BTN3分子を構成するBTN3A1、BTN3A2、BTN3A3の3分子全てのmRNAが減少することが判明した。
<BTN3発現減少と活性化マーカーとの逆相関1>
実施例8において、リンパ球を活性化するとBTN3分子の発現が減少することが判明した。そこで、リンパ球が活性化した際に強発現するIL−2レセプターα鎖(CD25)との相関を検証した。
1×10個PBMCsをOKT3(5μg/ml)プレコーティング24wellプレートに播種した。10%FCS、50U/ml rhIL−2を含むRPMI1640で3日間培養し、FITC−232−5/PE−ヒトCD25/PC5−ヒトCD8a(B9.11;ベックマンコールター)又はFITC−232−5/PE−ヒトCD25/PC5−ヒトCD4(13B.8.2;ベックマンコールター)で染色し、フローサイトメーター解析を行った。
本試験の結果を図14に示す。
フローサイトメーター解析の結果、CD4陽性T細胞に比べCD8陽性T細胞のほうが、活性化マーカーCD25の発現上昇とBTN3の発現減少の逆相関がより顕著であることが示された。また、PBMCsをFSC(細胞の大きさ)、SSC(細胞の密度)のパラメータで展開した場合、両パラメータ値が高い群が活性化リンパ球で、低い群は刺激が入っていない非活性のリンパ球であると予測された。
FSC/SSC高値にゲートをかけた場合、CD8、CD4陽性細胞ともにCD25高発現、BTN3減少の細胞集団(ポピュレーション)が濃縮されて観察された。一方FSC/SSC低値にゲートをかけた場合は前者とは対照的に、CD25低発現、BTN3高発現ポピュレーションが観察された。
これらのことからBTN3分子は活性化に伴いその発現が減少し、活性化マーカーとの発現と逆の相関を示すことが判明した。
<BTN3発現減少と活性化マーカーとの逆相関2>
BTN3は殆どのPBMCsに発現しているが、CD45ROを発現しているメモリーT細胞画分では一部BTN3の発現が減少している。
実施例8において、活性化リンパ球ではBTN3の減少が起こることを記載したが、刺激前からBTN3が減少している画分が増殖したという可能性を打ち消す目的で、BTN3を100%発現しているナイーブT細胞(CD4CD25CD45RO)を分離して刺激を行った。
ナイーブT細胞の分離はまずPBMCsからCD4CD25 regulatory Tcell isolation kit(Miltenyi Biotec)を用いて、ネガティブセレクションによってCD4CD25T細胞を得た。
続いて、CD4CD25T細胞1×10個に対してヒトCD45ROマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を10μl添加し、MACSバッファ(1% BSA、2mM EDTA in PBS)で洗浄後、磁場カラムに通し、CD4CD25CD45ROナイーブT細胞を得た。
こうして得られた上記ナイーブT細胞1×10個をOKT3(5μg/ml)プレコーティング24wellプレートに播種し、10%FCS、50U/ml rhIL−2、5μg/ml抗ヒトCD28抗体を含む培地で6日間培養した。6日後、細胞を回収し、FITC−232−5/PE−ヒトCD25(2A3;BD Bioscience)、FITC−232−5/PE−ヒトCD45RO(UCHL1;ベックマンコールター)で染色した。またBT3.1にもFITC化を施し(DOJINDO)、同様の染色を行い、フローサイトメーター解析を行った。
図15に本試験の結果を示す。
CD25は活性化マーカー、CD45ROはメモリーマーカーとして知られている。フローサイトメーターの結果、本発明抗体によるBTN3の発現減少と、CD25/CD45RO分子の発現が逆相関していることが示された。BT3.1を用いても同様の傾向は観察されたが、本発明抗体(232−5抗体)を用いた場合程の明瞭な結果は得られなかった。
<リンパ球活性化に伴う活性化マーカーとの相関性>
BTN3分子はリンパ球活性化に伴い減少することを示したが、BTN3分子を発現していないリンパ球も存在するので、ほぼ100%BTN3分子を発現しているナイーブCD4陽性T細胞を用いて検証を行った。
健常人PBMCsからヒトCD4 isolation kit(Miltenyi biotec)とヒトCD25ビーズ(Miltenyi biotec)、CD45ROビーズ(Miltenyi biotec)を用いてCD4+CD25−CD45RO−ナイーブT細胞を得た。これらの細胞を固相化OKT3(5μg/ml)、rIL−2(50U/ml)、αCD28抗体(5μg/ml、BD Bioscience)で7日間刺激し、その後フローサイトメーター解析を行った。染色はFITC−232−5、FITC−34−7、FITC−BT3.1、FITC−IgG2a(ベックマンコールター)、PE−CD25(Miltenyi biotec)、PE−CD45RO(ベックマンコールター)、PE−CD70(BD Bioscience)、PE−CD103(BD Bioscience)、PE−ICOS(BD Bioscience)、PE−PD−1(BD Bioscience)を用いた。
本試験の結果を図16に示す。
図14と同様にナイーブT細胞を活性化させた際にもCD25の発現に伴いBTN3分子の発現減少が観察された。その他の活性化/メモリーマーカー(CD45RO、CD70、CD103、ICOS、PD−1)とBTN3分子の発現について解析しても、BTN3分子の活性化に伴う発現減少が観察された。これらのことから、BTN3分子はCD25以外の活性化/メモリーマーカーとも発現が逆相関することが確認された。一方、e−Bioscience社のBT3.1を用いて解析した場合も活性化、メモリーマーカーとの逆相関が観察されたが、232−5、34−7を用いたようなクリアな結果(細胞集団を明確に分けること)を得ることは出来なかった。
以上説明したように、本発明の抗体はBTN3を特異的に認識する特性を有する。また、リンパ球は活性化するとBTN3の発現が低下する。これらの特性を利用して、活性化したリンパ球と非活性のリンパ球を効率よく識別する事ができる。例えば、抗体吸着カラム等に応用する事で、活性化リンパ球集団から活性化したリンパ球と非活性リンパ球を効率よく分離する事ができる。また、免疫細胞療法を実施する機関においては、リンパ球の活性化効率を投与前に診断する事が可能となる。
さらに、本発明の抗体はリンパ球に対し増殖抑制に働く特性を持つことから、抗体医薬品として開発された場合には免疫抑制剤として機能すると考えられるため、自己免疫疾患、臓器移植後の治療等に応用できる可能性がある。

Claims (15)

  1. 受託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体と同一の抗原認識部位を有する、膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識するモノクローナル抗体。
  2. 前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする請求項1に記載のモノクローナル抗体。
  3. 前記モノクローナル抗体がBTN3(配列番号2、4又は6)の35番目〜40番目間のアミノ酸配列を抗原として認識する事を特徴とする請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体。
  4. 前記モノクローナル抗体が、リンパ球に対して増殖抑制に働くことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
  5. 受託番号FERM BP−11177又はFERM BP−11178のハイブリドーマから産生される抗体である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
  6. リンパ球の集団における活性化リンパ球又は非活性のリンパ球の割合の測定方法であって、
    リンパ球の集団に膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を結合させる工程と、
    リンパ球に結合したモノクローナル抗体を検出する工程と、
    モノクローナル抗体が結合したリンパ球を非活性のリンパ球として、リンパ球の集団における活性化リンパ球又は非活性のリンパ球の割合を算出する工程、
    とからなる測定方法。
  7. 膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を用いた、リンパ球の集団における活性化リンパ球又は非活性のリンパ球の割合の測定装置。
  8. 膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を用いた、活性化リンパ球と非活性のリンパ球の分離方法。
  9. 前記分離方法が、
    リンパ球の集団にブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を添加する工程と、
    リンパ球の集団に含まれる非活性のリンパ球と前記モノクローナル抗体とを結合させる工程と、
    前記モノクローナル抗体の結合したリンパ球と結合していないリンパ球とを分離する工程と、
    からなる請求項8に記載の分離方法。
  10. 膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を用いた、活性化リンパ球と非活性のリンパ球の分離装置。
  11. 膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体とリンパ球とを体外において接触させることを特徴とするリンパ球の増殖抑制方法。
  12. 膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3を特異的に認識する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含む、リンパ球の増殖抑制剤。
  13. 膜貫通分子ブチロフィリン(BTN)3からなる活性化リンパ球の逆相関マーカー。
  14. 前記膜貫通分子BTN3が、BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3であることを特徴とする請求項13に記載のマーカー。
  15. 請求項13または14に記載のマーカーと、前記マーカーに特異的に結合する請求項1〜5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体とを結合させ、マーカーの発現量を調べることを特徴とする非活性のリンパ球の検出方法。
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