JP5683936B2 - 熱硬化性樹脂の射出成形方法、射出成形用金型および射出成形機 - Google Patents
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Description
特に、ポリメチルメタクリレート樹脂などのポリ(メタ)アクリレート系重合体は、光学特性に優れ、光学部品用樹脂材料として用いられている。しかしながら、ポリメチルメタクリレート樹脂は、耐熱性および熱安定性が十分とは言えず、これらの特性が要求される分野には適用が困難であった。また、光学部品用樹脂材料には、近年の軽薄短小化、部品点数の削減を反映して、ハンダリフロー工程に耐えうる非常に高い耐熱性および熱安定性が要求されている。
また、当該光学部品用樹脂は、熱硬化性樹脂であり、60℃以上という低温で硬化を開始するため、硬化開始直前まで硬化が開始されないよう温度を制御する必要がある。さらに、当該光学部品用樹脂は、ラジカル重合により硬化するため、酸素雰囲気下では重合が抑制され、硬化しにくいという性質を有する。したがって、硬化状態に差がない均一な製品を得るためには、温度の制御を行うこと、および低酸素濃度雰囲気下で硬化させることが必要である。しかしながら、特許文献2に記載の方法は、通常の熱硬化性樹脂を用いた成形方法であり、温度の制御および低酸素濃度雰囲気とすることについて記載がなく、均一な製品を得ることが難しい。
また、本発明の熱硬化性樹脂の射出成形方法は、所定量の熱硬化性樹脂をプランジャー内に充填する工程、前記プランジャー内に充填された熱硬化性樹脂を前記プランジャーにより、金型内のキャビティに充填する工程、前記キャビティ内で前記熱硬化性樹脂を熱硬化する工程、前記熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出す工程、からなる熱硬化性樹脂の射出成形方法であって、前記熱硬化性樹脂の30℃での粘度が、5Pa・s以下であり、前記熱硬化する工程を低酸素濃度雰囲気で行い、前記金型が、熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出すための押出ピンと、当該押出ピンを収納する押出ピン収納孔からなるピン突出部を備え、当該押出ピン収納孔は、当該金型において前記キャビティを構成する面内に開口部を有するとともに当該開口部から金型内部に向かう押出ピンと、前記押出ピンの外径と略同径の小径孔と、それに連続する大径孔と、からなり、当該小径孔が、1.5mm以上20mm以下の長さであるピン突出部を一又は複数有する金型であることを特徴とする。
この発明によれば、熱硬化する工程で、プランジャーを1.0MPa以上15MPa以下に加圧するので、成形品の転写性を向上することができる。
アダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物は低粘度であるとともに、ラジカル重合により硬化するため、酸素雰囲気下では硬化し難い。本発明によれば、上述の通り、熱硬化性樹脂をプランジャーにより、金型内のキャビティに充填し、熱硬化を低酸素濃度雰囲気下で行うので、アダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物からなる熱硬化性樹脂であっても、成形品のばらつきや歪みを防止できる。また、アダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物を用いるので、光学特性に優れるとともに、耐熱性を備えた成形品を得ることができる。
この発明によれば、酸素濃度が5%以下と、十分に低いので、熱硬化する工程において、熱硬化性樹脂のラジカル重合が確実かつ均一に起こり、成形品の歪みをより一層防止できる。
そして、本発明の熱硬化性樹脂の射出成形方法では、前記プランジャー内に充填された前記熱硬化性樹脂をプランジャーにより、金型内のキャビティに充填する工程が、50℃以下に温度制御された流動路を介して金型内のキャビティに充填する工程であることが好ましい。
この発明によれば、熱硬化性樹脂の流動路を50℃以下に温度制御するので、流動路内で熱硬化性樹脂の粘度が上昇したり、硬化したりすることがない。したがって、熱硬化性樹脂を低粘度に維持したまま、スムーズにキャビティに充填できる。
この発明によれば、押出ピン収納孔が開口部から金型内部に向かう押出ピンと略同径の小径孔を備え、小径孔が、1.5mm以上20mm以下の長さであるので、熱硬化性樹脂が押出ピンと押出ピン収納孔の間の隙間に浸透してきても、熱硬化性樹脂の浸透量を少なくかつ浸透速度を遅くすることができる。したがって、熱硬化性樹脂が小径孔内に浸透中に硬化し、この隙間を閉塞する。これにより、熱硬化性樹脂が大径孔まで浸透して硬化し、押出ピンの動作を阻害することがなく、熱硬化された熱硬化性樹脂、すなわち、成形品をスムーズに取り出すことができ、成形品の成形効率を上げることができる。
また、本発明の射出成形機は、成形材料を金型に押し出すプランジャー機構を有する射出成形機であって、当該金型が前記金型であることが好ましい。
そして、本発明の射出成形機は、成形材料を金型に押し出すプランジャー機構を有する射出成形機であって、当該金型が前記金型であるとともに、当該金型外部に前記細孔と連結した脱気手段を有することが好ましい。
〔熱硬化性樹脂〕
本実施形態に用いられる熱硬化性樹脂としては、30℃での粘度が5Pa・s以下であるアダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物(以下、「原料組成物」ということがある。)が用いられる。アダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物としては、(A)アダマンタン構造を含む炭化水素基がエステル結合した(メタ)アクリレート化合物、を含む組成物であって、(B)上記(A)成分以外の多官能基を持つ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
(A)成分のうちの、2官能基を持つ(メタ)アクリレート化合物としては、アダマンチルジメタノールジ(メタ)アクリレート及びアダマンチルジエタノールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、(A)成分のうちの3官能基を持つ(メタ)アクリレート化合物としては、アダマンチルトリメタノールトリ(メタ)アクリレート及びアダマンチルトリエタノールトリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
(A)成分の(メタ)アクリレート化合物は、一種であっても二種以上の組み合わせであってもよい。
(B)成分のうちの、2官能基を持つ(メタ)アクリレート化合物としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの他、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、及び脂環式炭化水素基がエステル結合するジ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。該脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、2−デカヒドロナフチル基、ノルボルニル基、1−メチル−ノルボルニル基、5,6−ジメチル−ノルボルニル基、イソボルニル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、9−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、ボルニル基及びジシクロペンタニル基などが挙げられる。
(B)成分の(メタ)アクリレート化合物は、一種であっても二種以上の組み合わせであってもよい。
(B)成分のソフトセグメント部位を含む(メタ)アクリレート化合物の含有量は、20〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは23〜100質量%、さらに好ましくは25〜100質量%である。ソフトセグメント部位を含む(メタ)アクリレート化合物の含有量が20質量%以上であると、耐熱性が良好となるためクラックの発生が抑制される。
(メタ)アクリレート変性シリコーンオイルは、主としてジメチルポリシロキサンの変性物により得ることができる。また、ジメチルポリシロキサンのメチル基に代えてフェニル基やメチル基以外のアルキル基によりジアルキルポリシロキサン骨格中のアルキル基の全部、あるいは一部が置換されていてもよい。メチル基以外のアルキル基としてはエチル基、プロピル基などが挙げられる。このような(メタ)アクリレート変性シリコーンオイルとして具体的には、信越化学工業(株)製のX−24−8201、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2404、X−22−164A及びX−22−164C、東レ・ダウコーニング(株)製のBY16−152D、BY16−152及びBY16−152C等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリレート変性シリコーンオイルの中では、重合して得られた樹脂の透明性の観点から、(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)末端ポリジメチルシロキサン及びアクリロキシ末端エチレンオキシドジメチルシロキサン−エチレンオキシドABAブロック共重合体が好適である。
なお、シラン系(メタ)アクリレート化合物(C)は、以下の一般式(I)で表される。
U2は単結合、炭化水素基又はオキシアルキレン基である。U2の炭化水素基は炭素数が1〜10であり、2〜5がより好ましく、より好ましくは3である。炭素数が10より多い場合、無機材料と接触するSiO基量が少なくなり無機材料との密着性が低下する可能性がある。オキシアルキレン基は、―(―O―R0―)p―で表され、R0は炭素数1〜4の炭化水素基、pは1〜10の整数である。
Rはメチル基又はエチル基であり、Lは0又は1である。Vは炭素数1〜5のアルコキシ基又はヒドロキシ基である。mは0〜3、nは1〜4の整数であり、L+n+m=4である。アルコキシ基は、水分の存在下で容易に加水分解して、シラノール基(SiOH)を生成する。
シラン系(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、本実施形態に用いる原料組成物は、(C)成分を含んでいてもよい。(C)成分を含む場合、成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計量に対して、(C)成分が20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。(C)成分が20質量%より多い場合は、加熱時に成形品にクラックが入ったり、材料の弾性率の低下を伴う可能性があり、光学部品として適当でない。
次に本発明の成形機について説明する。
本発明の成形機は、成形材料を金型に押し出すプランジャー機構を有する射出成形機であって、図1に示すプランジャー11を有する充填装置10と、図2(A)に示すキャビティ21とを備えた金型20を備え、図示は省略するが、金型20内のキャビティ21を脱気するための細孔231に接続された脱気手段としての減圧装置と、金型20に接続された加熱手段としての加熱装置と、冷却装置とを備える。成形材料としては、前述の熱硬化性樹脂を用いることができる。
固定金型22は、充填装置10に接続される導入路221と、この導入路221のキャビティ21に通じる開口部222に対し進退可能に設けられ、開口部222を開閉するニードル223と、可動金型23に対向する面に2個の弾性部材224とを備えている。また、この固定金型22は、可動金型23に対向する面の近傍が加熱装置により加熱される加熱部22Aとなっており、導入路221が設けられた部分は、図示しない冷却手段により冷却される冷却部22Bとなっている。そして、図2(A)に示すように、ニードル223が可動金型23側に移動され、開口部222が閉鎖された状態においては、導入路221が加熱部22Aの手前で分断され、導入路221に導入された組成物が冷却部22B内に留まり、加熱部22Aに流れ込んだり、接触したりしない構造になっている。
なお、弾性部材224は、ゴム等の弾性を有する部材からなる。
細孔231は固定金型22に対向する面に開口して設けられ、型締めの際、固定金型22と可動金型23との間を減圧することにより、キャビティ21を減圧する。具体的には、固定金型22と可動金型23の弾性部材224と弾性部材238とが接触するまで可動金型23を可動させ、減圧を開始する。減圧後、固定金型22と可動金型23とを完全に閉じ、キャビティ21を減圧する。
図3(A)に示すように、押出ピン233は、キャビティ21に対し、押出ピン収納孔234内を進退可能、かつ押出ピン収納孔234から先端がキャビティ21内に突出可能に設けられている。この押出ピン233は、成形品を取り出す際、押出ピン収納孔234から突出して成形品を押すことにより、成形品を可動金型23から分離可能にするものである。
小径孔235は、押出ピン233の外径と略同じ寸法に形成された内径を備え、有効長Lは、1.5mm以上20mm以下であり、好ましくは、1.7mm以上であり、より好ましくは、2.0mm以上である。ここで有効長Lは、小径孔235の長さ寸法に等しい。そして、このような押出ピン233の外径Xは小径孔235の内径Yとの間に0.8≦X/Y≦0.999の関係を有することが好ましく、より好ましくは0.85≦X/Y≦0.999の関係を有し、さらに好ましくは0.90≦X/Y≦0.998の関係を有する。
図3(A),(B)に示すように、従来の成形機の有効長L1が0.5mmから1mm程度であるのに対し、本実施形態の有効長Lは、より長い寸法を有している。すなわち、押出ピン233と小径孔235との隙間237が長い寸法を有するため、原料組成物が隙間237に浸透してきても浸透量および浸透速度を押さえることができる。そして、浸透に時間を要することにより、浸透してきた原料組成物が順次隙間237内で硬化して、隙間237を密閉するため、原料組成物が大径孔236に到達することがない。したがって、押出ピン収納孔234内での押出ピン233の動きが制限されることなく、後の工程においても、押出ピン233を進退させることが可能となる。
大径孔236は、押出ピン233の進退がスムーズに行えるよう、小径孔235よりも大きい径を有している。
加熱装置は、加熱部22Aおよび可動金型23を加熱する装置である。これらの加熱により、キャビティ21内の温度(「キャビティ温度」とも言う)を所定の温度とすることができる。
冷却装置は、原料組成物の流動路を冷却する装置である。具体的には、充填装置10および金型20の冷却部22Bを50℃以下に冷却する。
次に、熱硬化性樹脂の射出成形方法について説明する。本実施形態の射出成形方法は、
型締工程、所定量の熱硬化性樹脂をプランジャー内に充填する工程としての計量工程、プランジャー内に充填された熱硬化性樹脂をプランジャーにより、金型内のキャビティに充填する工程としての充填工程、キャビティ内で熱硬化性樹脂を熱硬化する工程としての硬化工程、および熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出す工程としての離型工程を備える。
熱硬化性樹脂を成形するには、まず、可動金型23を固定金型22に近接させ、型締を行う。可動金型23の弾性部材238が固定金型22の弾性部材224に当接する位置で一旦可動金型23の移動を止める。次いで、ニードル223を後退させ、開口部222を開放した状態で、減圧装置を作動させ、成形機内を減圧し、低酸素濃度雰囲気とする。そのためにキャビティ21の減圧度15.0kPa以下となるよう減圧し、好ましくは5.0kPa以下とし、より好ましくは1.5kPa以下とする。その後、可動金型23をさらに固定金型22に近接させて、完全に型締を行う。
次に、ニードル223を前進させ開口部222を閉鎖する。そして、冷却装置を作動させ、原料組成物の流動路全域、すなわち、成形機の充填装置10および金型20の固定金型22に設けられた冷却部22Bを冷却する。この際、冷却温度は50℃以下に設定されることが好ましく、特に好ましくは30℃以下に設定される。同時に、加熱装置を作動させ、可動金型23および固定金型22に設けられた加熱部22Aを加熱し、キャビティ温度が60℃以上、好ましくは90℃以上180℃以下、特に好ましくは110℃以上150℃以下となるよう設定する。
次いで、原料組成物を図示しない投入口から図1に示した充填装置10に投入する。投入された原料組成物は、スクリュー12に押し出され、ついでプランジャー11にて所定量が計量される。この間、流動路は冷却装置により冷却されているため、原料組成物は硬化することなくスムーズに流動する。
[充填工程]
図2(A)に示すように、金型20の導入路221に原料組成物の所定量が導入される。そして、図2(B)に示すようにニードル223を後退させ、開口部222を開放し、プランジャー11を前進させてキャビティ21内に原料組成物を充填する。
キャビティ21への原料組成物の充填が完了すると、同時に原料組成物の硬化が開始されるが、成形品の転写性を向上するためには、所定の圧力を加えて硬化させることが必要である。すなわち、プランジャー11を1.0MPa以上15MPa以下に加圧した状態であることが好ましい。転写性を向上するために、原料組成物に加えるこの圧を保圧と言う。
しかし、本実施形態の原料組成物のように低粘度の材料においては、材料粘度が低粘度の状態で圧を加えると、低粘度材のゆえ、固定金型22と可動金型23の隙間から材料が漏れ出し硬化する(バリ)不良現象や、押出ピン233まわりの隙間などに原料組成物が浸透することによる押出ピン233の動作不良などが発生する。一方、硬化初期P2で粘度が高くなった状態や、硬化後期P3の状態で圧を加えても、原料組成物の粘度が高いため圧縮変形することができず転写性を向上させることはできない。したがって、転写性の高い成形品を得るためには、保圧開始のタイミング(保圧開始時刻T)を硬化工程の誘導期P1から硬化初期P2に移行するタイミングに合わせる必要がある。
本実施形態における原料組成物は、硬化初期P2で増粘すると同時に収縮し始める。したがって、収縮し始める時間を検出すれば、保圧開始時刻Tを適切に決めることができる。
続いて、バリが発生しない程度に原料組成物にプランジャー11を介して圧を加える。その圧力は0.3MPaから2.5MPaまでの範囲であり、好ましくは0.3MPaから1.5MPaまでの範囲である。原料組成物の硬化が開始されると、同時に原料組成物の収縮が発生するため、充填工程完了後停止していたプランジャー11が再度前進開始する。充填工程完了から、収縮によりプランジャー11が再度前進開始するまでに要した時間t2を測定する。原料組成物の硬化が開始されるまでの時間は材料固有のものであり、金型温度が変化しない限り、この時間は大きく変化しない。
このように測定した時間t1とt2との合計時間tは、原料組成物の硬化開始時刻に近いため、この時間tの前後を保圧開始時刻Tとすれば、成形品の転写性を向上することができる。
一定時間の保圧完了後、図2(C)に示すようにニードル223を前進させて開口部222を閉塞し、未硬化部分が発生しないよう、一定時間加熱して原料組成物を完全に硬化させる。
図2(D)に示すように、固定金型22から可動金型23を離間させる。そして、図2(D)への図示は省略するが、可動金型23に設けられた押出ピン233を成形品に対して突出させることにより、成形品を押し出すことにより、成形品を金型20から取り出す。
以上により本実施形態では、以下の作用効果を奏することができる。
プランジャー11を有する充填装置10により、原料組成物を計量し、金型20内に充填するので、低粘度であるアダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物からなる樹脂であっても、隙間等に逆流することなく、確実に所定量の熱硬化性樹脂を充填でき、成形品のばらつきを防止することができる。また、硬化工程を酸素濃度が5%以下である低酸素濃度雰囲気下で行うので、酸素雰囲気下では硬化し難いアダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物であっても、重合が確実かつ均一に起こり、歪みを防止することができる。そして、アダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物を用いるので、光学特性に優れるとともに、耐熱性を備えた成形品を得ることができる。
また、成形機の充填装置10および金型20の固定金型22に設けられた冷却部22Bを50℃以下とするので、流動路内で原料組成物の粘度が上昇したり、硬化したりすることがない。したがって、原料組成物を低粘度に維持したまま、計量し、スムーズにキャビティ21に充填できる。
また、この加圧のタイミング(保圧開始時刻T)を、予め求めた時間tに対し、±10秒間としたので、低粘度であるアダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物からなる樹脂を用いる場合であっても、金型20の隙間に浸透することを防ぐことができる。したがって、成形品にバリが発生することを抑制することができ、得られる成形品の転写性を向上できる。
さらに、可動金型23のキャビティ21を構成し、かつ固定金型22に対向する面232に設けられた押出ピン収納孔234が、1.5mm以上20mm以下の有効長Lを有するので、押出ピン233と押出ピン収納孔234との隙間237を1.5mm以上20mm以下にわたって小さくすることができる。原料組成物がこの隙間237に浸透してきても、浸透量を少なくかつ浸透速度を遅くすることができるため、小径孔235内に浸透中に原料組成物が硬化し、この隙間237を閉塞する。したがって、熱硬化性樹脂が大径孔236まで浸透して硬化し、押出ピン233の動作を阻害することがなく、硬化完了後の成形品をスムーズに取り出すことができる。
(原料組成物1)
成分(A)として下記式(1)で表される1-アダマンチルメタクリレート〔出光興産(株)製〕30質量%、成分(B)として下記式(2)で表されるトリシクトデカンジメタノールジアクリレート〔新中村化学(株)製〕35質量%および下記式(3)で表されるエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート〔サートマー社製〕20質量%、成分(C)として下記式(4)で表される3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)社製〕15質量%、下記式(5)で表される1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製)0.7質量部を混合し、原料組成物1(常温での粘度:40mPa・s)を得た。なお、下記式において、Meはメチル基を示す。
次いで、この原料組成物1を実施形態に記載の方法を用い、以下の成形条件で成形し、成形品を得た。
得られた成形品を目視にて確認したところ、未硬化、変色、未充填は確認できなかった。
耐熱性評価は、成形品に以下の熱工程を経ることにより熱工程前後での成形品の変形、変色、割れ有無の比較を行った。熱工程を成形品表面温度250℃以上10秒かつ200℃以上60秒の条件で行った。
耐熱性評価を実施したところ、熱工程前後での変色、変形、割れは確認できなかった。
<成形条件>
成形機:液状熱硬化性樹脂射出成形機LA−40S、(株)ソディックプラステック製(プランジャー方式)
成形品:直径3mm、厚み0.5mmの円板。
キャビティ温度:130℃
キャビティの減圧度:1kPa
流動路温度:30℃
充填時間:10秒
充填時圧力:1MPa
保圧開始時間:12秒
保圧時圧力:5MPa
保圧時間:20秒
硬化時間:90秒
実施例1において、金型を変更し、成形品を直径4mm、厚み1mmの円板とした以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
得られた成形品を目視にて確認したところ、未硬化、変色、未充填は確認できなかった。耐熱性評価を実施したところ、熱工程前後での変色、変形、割れは確認できなかった。
実施例1において、原料組成物1の代わりに以下の原料組成物2を用いる以外は同様にして成形品を得た。
得られた成形品を目視にて確認したところ、未硬化、変色、未充填は確認できなかった。耐熱性評価を実施したところ、熱工程前後での変色、変形、割れは確認できなかった。
成分(A)として下記式(6)で表される1-アダマンチルメタクリレート〔出光興産(株)製〕35質量%、成分(B)として下記式(7)で表されるエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート〔サートマー社製〕50質量%、下記式(8)で表されるジペンタエリスリトールペンタクリレート〔サートマー社製〕15質量%、上記式(5)で表される1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製)0.7質量部を混合し、原料組成物2(常温での粘度:60mPa・s)を得た。
原料組成物1を用い、実施形態に記載の方法を用い、以下の成形条件で成形品を得た。さらに熱工程を成形品表面温度250℃以上10秒かつ200℃以上60秒の条件で行った。
得られた成形品を目視にて確認したところ、未硬化部分およびボイドが確認された。さらに、変色が確認された。
成形機:液状熱硬化性樹脂射出成形機LA−40S、(株)ソディックプラステック製(プランジャー方式)
成形品:直径3mm、厚み0.5mmの円板
キャビティ温度:130℃
キャビティの減圧度:60kPa
流動路温度:30℃
充填時間:10秒
充填時圧力:1MPa
保圧開始時刻:12秒
保圧時圧力:5MPa
保圧時間:20秒
硬化時間:60秒
成分(A)としてメタクリル酸(広島和光(株)製)27質量%、成分(B)として上記式(2)で表されるトリシクトデカンジメタノールジアクリレート〔新中村化学(株)製〕44質量%および下記式(3)で表されるエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート〔サートマー社製〕17質量%、成分(C)として上記式(4)で表される3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)社製〕12質量%を混合し、原料組成物3(常温での粘度:40mPa・s)を得た。
(成形方法)
次いで、この原料組成物3を実施形態に記載の方法を用い、以下の成形条件で成形品を得た。さらに熱工程を成形品表面温度250℃以上10秒かつ200℃以上60秒の条件で行った。
得られた成形品を目視にて確認したところ、未硬化部分は確認できなかったが、変色、変形、および割れが確認された。
成形機:液状熱硬化性樹脂射出成形機LA−40S、(株)ソディックプラステック製(プランジャー方式)
成形品:直径3mm、厚み0.5mmの円板
キャビティ温度:130℃
キャビティの減圧度:1kPa
流動路温度:30℃
充填時間:10秒
充填時圧力:1MPa
保圧開始時刻:12秒
保圧時圧力:5MPa
保圧時間:20秒
硬化時間:90秒
原料組成物1を用い、以下の成形方法および成形条件で成形を行った。しかしながら、流動路の温度が高く、キャビティへの充填が完了する前に原料組成物1が硬化し、目的とする形状の成形品が得られなかった。
(成形条件)
成形機:液状樹脂成形装置LM−1、(株)多加良製作所製(プランジャー方式)
成形品:直径3mm、厚み0.5mmの円板
キャビティ温度:130℃
キャビティの減圧度:1kPa
流動路温度:130℃
充填時間:10秒
充填時圧力:1MPa
保圧開始時刻:12秒
保圧時圧力:5MPa
保圧時間:20秒
硬化時間:60秒
原料組成物1を用い、以下の成形方法および成形条件で成形を行った。しかしながら、計量時および充填時に原料組成物1の逆流が生じ、所定量の計量および充填ができず、目的とする形状の成形品が得られなかった。
(成形条件)
成形機:液状電動式射出成形機EC100LIM、東芝機械(株)(スクリュー方式)
成形品:直径3mm、厚み0.5mmの円板
キャビティ温度:130℃
キャビティの減圧度:1kPa
流動路温度:130℃
充填時間:10秒
充填時圧力:1MPa
保圧開始時刻:12秒
保圧時圧力:5MPa
保圧時間:20秒
硬化時間:60秒
原料組成物1を用い、以下の成形方法および成形条件で成形を行った。しかしながら、充填時間が長いため、キャビティの充填が完了する前に原料組成物1が硬化し、目的とする形状の成形品は得られなかった。
(成形条件)
成形機:液状熱硬化性樹脂射出成形機LA−40S、(株)ソディックプラステック製(プランジャー方式)
成形品:直径3mm、厚み0.5mmの円板
キャビティ温度:130℃
キャビティの減圧度:1kPa
流動路温度:30℃
充填時間:45秒
充填時圧力:1MPa
保圧開始時刻:35秒
保圧時圧力:5MPa
保圧時間:20秒
硬化時間:60秒
11…プランジャー
20…金型
21…キャビティ
233…押出ピン
234…押出ピン収納孔
234A…開口部
235…小径孔
236…大径孔
Claims (10)
- 所定量の熱硬化性樹脂をプランジャー内に充填する工程、
前記プランジャー内に充填された熱硬化性樹脂を前記プランジャーにより、金型内のキャビティに充填する工程、
前記キャビティ内で前記熱硬化性樹脂を熱硬化する工程、
前記熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出す工程、
からなる熱硬化性樹脂の射出成形方法であって、
前記熱硬化性樹脂の30℃での粘度が、5Pa・s以下であり、
前記熱硬化する工程が、前記プランジャーを1.0MPa以上15MPa以下に加圧した状態で熱硬化する工程であって、かつ、低酸素濃度雰囲気で行うことを特徴とする熱硬化性樹脂の射出成形方法。 - 所定量の熱硬化性樹脂をプランジャー内に充填する工程、
前記プランジャー内に充填された熱硬化性樹脂を前記プランジャーにより、金型内のキャビティに充填する工程、
前記キャビティ内で前記熱硬化性樹脂を熱硬化する工程、
前記熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出す工程、
からなる熱硬化性樹脂の射出成形方法であって、
前記熱硬化性樹脂の30℃での粘度が、5Pa・s以下であり、
前記熱硬化する工程を低酸素濃度雰囲気で行い、
前記金型が、熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出すための押出ピンと、当該押出ピンを収納する押出ピン収納孔からなるピン突出部を備え、
当該押出ピン収納孔は、当該金型において前記キャビティを構成する面内に開口部を有するとともに当該開口部から金型内部に向かう押出ピンと、前記押出ピンの外径と略同径の小径孔と、それに連続する大径孔と、からなり、
当該小径孔が、1.5mm以上20mm以下の長さであるピン突出部を一又は複数有する金型であることを特徴とする熱硬化性樹脂の射出成形方法。 - 前記金型が、熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出すための押出ピンと、当該押出ピンを収納する押出ピン収納孔からなるピン突出部を備え、
当該押出ピン収納孔は、当該金型において前記キャビティを構成する面内に開口部を有するとともに当該開口部から金型内部に向かう押出ピンと、前記押出ピンの外径と略同径の小径孔と、それに連続する大径孔と、からなり、
当該小径孔が、1.5mm以上20mm以下の長さであるピン突出部を一又は複数有する金型であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂の射出成形方法。 - 前記熱硬化性樹脂が、アダマンチル(メタ)アクリレートを含む組成物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂の射出成形方法。
- 前記低酸素濃度雰囲気が、5%以下の酸素濃度雰囲気であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂の射出成形方法。
- 前記プランジャー内に充填された前記熱硬化性樹脂をプランジャーにより、金型内のキャビティに充填する工程が、50℃以下に温度制御された流動路を介して金型内のキャビティに充填する工程であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂の射出成形方法。
- 射出成形用金型であって、熱硬化された熱硬化性樹脂を押し出すための押出ピンと、当該押出ピンを収納する押出ピン収納孔からなるピン突出部を備え、
当該押出ピン収納孔は、当該金型においてキャビティを構成する面内に開口部を有するとともに当該開口部から金型内部に向かう押出ピンと、前記押出ピンの外径と略同径の小径孔と、それに連続する大径孔と、からなり、
当該小径孔が、1.5mm以上20mm以下の長さであるピン突出部を一又は複数有する
ことを特徴とする射出成形用金型。 - 成形材料を金型に押し出すプランジャー機構を有する射出成形機であって、
当該金型が請求項7に記載の金型であることを特徴とする射出成形機。 - 前記射出成形用金型が、当該金型内のキャビティを脱気するための細孔を有することを特徴とする請求項7に記載の射出成形用金型。
- 成形材料を金型に押し出すプランジャー機構を有する射出成形機であって、当該金型が請求項9に記載の金型であるとともに、当該金型外部に前記細孔と連結した脱気手段を有することを特徴とする射出成形機。
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