JP5679116B2 - 消泡装置 - Google Patents
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Description
また、本出願人は、パルス状レーザー光のレーザー誘起ブレークダウンの衝撃によって発生するパルス状音波が消泡に対して優れた効果を発揮することを見出し、「パルス状音波を用いて泡沫を破壊して消泡する消泡方法」を提案した(特許文献2)。
一方、前記特許文献2による消泡技術は、レーザー誘起ブレークダウンの衝撃によってパルス状音波を発生させ、音源から強い圧力変化を伴うパルス状音波が球面波として伝播して泡を破壊して消泡するため、容器の内周面までパルス状音波が伝播し、従来の方法では消泡が困難であった容器内周面近傍の泡も効果的に消泡することができる。
しかし、飲料等の液体表面の衝撃が大きく、液滴が飛散して装置、或いは集光レンズなどの集光光学系等に付着して汚染を生じる。
このため、レーザー光発振装置、集光レンズなどの集光光学系等を液体表面からの蒸気や、破泡した泡の雫などによる汚染を防ぐため、その位置を前記液体表面から離さなければならず、レーザー光の集光性が低下して消泡性を高めることができない。
このように、本出願人が提案した特許文献2の消泡技術は、従来の特許文献1等の消泡技術に対して優れた技術であるが、その後の研究により、1.パルス状のレーザー光が液体表面を向いて照射され、レンズなどの光学素子が液体表面からの蒸気や、破泡した泡の雫などで汚染するのを防ぐには焦点距離を長くしなければならず、前記焦点距離を短くしてレーザー光の集光性を高める改良、2.パルス状音波が自由空間で発生して球面波で伝播し、前記パルス状音波の一部しか消泡に関与しないことから消泡効率が低下するため、前記消泡効率を高める改良、といったさらなる改良が望まれている。
また、前記パルス状音波の反射波が、飲料等の内容液の液体表面に到達するまでの反射回数も減少するため、この反射によるエネルギーの減衰も減少し、よりエネルギーの利用効率が向上し、低いレーザー出力で効果的に消泡することができる。
さらに、このため、レーザー光発振装置、集光光学系を液体表面から離すことが可能となり、その配置の自由度が高まり、前記レーザー光発振装置、集光光学系の汚染を防止することができ、且つ、効率的な集光光学系等を構築できる。
また、音響導波管の内周面を単純な形状として、パルス状音波の音響導波管の内周面における反射波を開口部方向に向けることが可能となり、また、音響導波管の構造が単純となり製造が容易でコストが低減されるとともに、設備への配置も容易となり自由度も向上する。
さらに、ストレート部を設けることによって、音響導波管の長さにかかわらず開口部の面積を一定とし、反射波を一定の面積の開口部に集中させることができるため、レーザー光の焦点と液体表面との距離を自由に設定することが可能となり、レーザー光発振装置や集光光学系の配置の自由度がさらに高まり、汚染を防止することができるとともに、より効率的な集光光学系を構築できる。
図中、100は消泡装置であり、パルス状の光Lを発生するパルス状レーザー光発振装置110、該パルス状レーザー光発振装置110より発振されたパルス状レーザー光Lを焦点Sに集光する集光光学系120、及び音響導波管130とから構成され、該音響導波管130の開口部131が消泡対象物の飲料等の液体表面に対して、鉛直方向上方に面するように配置されている。
図1に示す実施形態では、容器Aへの内容物Cの密封充填ラインにおいて、内容物Cが充填された容器Aを密封装置に搬送するコンベヤの上方、または密封装置内の封止前の容器通過位置の上方に音響導波管130を垂直に配置し、該音響導波管130の軸心方向からパルス状レーザー光Lを照射するように、パルス状レーザー光発振装置110及び集光光学系120が配置されている。
また、集光光学系120は、パルス状レーザー光発振装置110と別体に形成してもよいが、パルス状レーザー光発振装置110に一体に設けることも可能である。また、図2に示すように、集光光学系120にプリズム122や反射鏡等を設けてパルス状レーザー光Lを屈曲させて集光し、パルス状レーザー光発振装置110の照射方向が音響導波管130の軸心方向以外の方向となるように配置しても良い。
焦点Sでは、レーザー誘起ブレークダウンによりパルス状音波Pが発生し、その強さは、焦点Sにおける単位面積あたり光パワー密度により変化する。従って、集光光学系120を最適化して集光性を高めることによって、同じレーザー出力から効率よくレーザー誘起ブレークダウンを発生させることができる。一般に、集光性を高めるには、レンズの開口数(NA)が大きいほうが有利である。このことは、大口径で焦点距離の短いレンズほど集光性が高まることを意味する。しかしながら、集光効率の良い焦点距離の短いレンズを使用すると、液体表面との距離が狭まり、液滴の飛散などによって集光光学系が汚染される。また、集光性を高めるためには、波面が揃っているほうが有利である。このため、複数のレンズの組合せにより収差を補正した組合せレンズ(アプラナートレンズ)や、レンズ面の形状を波面の状態に合わせて設計した非球面レンズなどを用いるのが好ましい。
本発明では音響導波管130を採用し、パルス状音波Pの音響導波管130の内周面における反射波が、液体表面に対向する音響導波管130の開口部131方向に向けられ進行する各方向の反射波のパルス状音波Pが開口部131に達するまでの時間差を少なくしたものである。
このため、自由空間でパルス状音波Pを発生させた場合と比較して、相対的に長い距離を音響導波管130により、前記パルス状音波Pの単位面積当たりのエネルギーを減衰させずに伝えることができ、かつ、進行する各方向の反射波の開口部131に達するまでの時間差を少なくすることによって、液体表面に作用するパルス状音波Pの時間あたりのエネルギーの減少も小さいものとなる。そして、レーザー光の焦点Sの液体表面からの距離を長くすることが可能になり、また、前記音響導波管130を用いることにより、前述した汚染を防止し、集光効率の良い焦点距離の短いレンズを用いて集光性を高めることが可能となる。
しかしながら、実質的には、音響導波管130の内周面で数回反射しても近似的に十分な効果を得ることが可能で、そのために、音響導波管130が、少なくとも焦点P近傍において開口部131に向かって内周面の内径が増加するように形成されていることで十分に効果を奏する。具体的には、製作が簡単で、容易に効果が得られる形状として、音響導波管130の内周面が、開口部131に向かってテーパ部132を有していれば良い。
特に、反射波の進行方向を音響導波管130の軸心方向に対して40°以下とすることで顕著な効果が認められ、そのためには、前記音響導波管130の内周面のテーパ部が一段のテーパ部132から成り、テーパ角度が軸心方向に対して25°乃至60°に形成されていることが望ましい。
また、より理想的な内周面形状に近い形状とするためには、前記テーパ部132が、音響導波管130の開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる二段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°に形成されていることがより望ましい。
さらに、より一層、理想的な内周面形状に近い形状とするために、図3に示すように、
前記テーパ部132が、音響導波管130の開口部131に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる三段のテーパ部132a、132b及び132cから成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°、10°乃至20°に形成されているのがより一層望ましい。
本実施形態では、音響導波管230のテーパ部232の側方にレーザー光入射孔234を設け、パルス状レーザー光発振装置210及び集光光学系220を側方に設けて、パルス状レーザー光Lを側方から照射して焦点Sに集光するように構成されている。
そして、音響導波管230の焦点Sより反開口部側に後方反射壁235を設けることにより、焦点Sより反開口部方向に進行するパルス状音波Pを後方反射壁235によって開口部231方向に反射させて消泡のためのエネルギーとして利用する。
このことにより、さらにエネルギーの利用効率が向上し、低いレーザー出力でも効果的に消泡することができる。
また、レーザー光路とパルス状音波Pの進路とを分離できるので、集光光学系220の制約が少なく、集光効率の高い集光光学系を構築できる。
なお、音響導波管230の内部に反射鏡を設ける場合は、該レーザー光通過孔236は形成する必要はない。
また、音響導波管230の周壁にガス導入口を設け、外部より音響導波管230内にガス(例えば窒素ガス等の不活性ガスや空気等)を導入してもよい。
この場合、例えば、内容物充填後、直ちに消泡を行う際に、容器内の飲料等の充填内容液から発する蒸気が音響導波管に侵入して汚染するのを防ぐことができ、ブレークダウンにより発生するオゾンが開口部231から流出して容器内に入ることを防ぐことができる。なお、ガス導入口を設ける場合、レーザー光の焦点Sと開口部231の間に位置するのが好ましい。
また、音響導波管の開口部231は、開口部におけるパルス状音波の伝播損失を抑制するためにホーン形状に形成してもよい。
また、音響導波管の反開口部側に後方反射壁235を設ける場合は、図5に示したテーパ部232の延長部を閉塞する平面形状に限定されず、前記音響導波管内部のパルス状音波Pの進行方向を考慮した適宜の形状で良い。
レーザー発振装置:Quantel社製YAGレーザー発振装置(Brilliant
B)、(レーザー光の波長:1064nm)
集光レンズ:シグマ光機製集光レンズ(NYTL−30−50PY1)
2.音響導波管
(1)長さ
レーザー光入射孔の中心に焦点を結ぶように長さ100mm。
(2)レーザー光入射孔内径、開口部内径
実験1:レーザー光入射孔内径、開口部内径φ40mm。
実験2乃至7:レーザー光入射孔内径φ10mm、開口部の内径φ40mm。
(3)内周面形状
実験1:ストレート管。
実験2:レーザー光入射孔からテーパ角度150°(高さ4mm)のテーパ部を
形成したテーパ管。
実験3:レーザー光入射孔からテーパ角度120°(高さ8.7mm)のテーパ
部を形成したテーパ管。
実験4:レーザー光入射孔からテーパ角度90°(高さ15mm)のテーパ部を
形成したテーパ管。
実験5:レーザー光入射孔からテーパ角度60°(高さ26mm)の一段のテー
パ部を有するテーパ管。
実験6:レーザー光入射孔からテーパ角度75°(高さ5.2mm)、45°
(高さ32mm)の二段のテーパ部を有するテーパ管。
実験7:レーザー光入射孔からテーパ角度71°(高さ4.4mm)、42°
(高さ25mm)、13°(高さ60mm)の三段のテーパ部を有する
テーパ管。
なお、前記テーパ部のテーパ角度、高さは、前記音響導波管の軸心方向に対する角度、高さであり、開口部に向かって残部はストレート部である。
3.飲料缶
内容量200g缶に、65℃のミルク入りコーヒー190gを漏斗により、泡立てながらに充填し、音響導波管の開口部より10mm離した位置に設置した。
図6に各実験の結果を示す。
各実験1乃至7における音響導波管の内周面形状について、OPHIR社製パワーメーター30A−P−17及びVEGAを用いてパルス状レーザーの1パルスあたりの出力を260mJと390mJに設定し、1回のパルス状音波を発生させた時の消泡結果を写真で確認した。
その結果、レーザー光焦点近傍から音響導波管の開口部に向かって内周面の内径が増加するテーパ部が一段のテーパ部から成り、テーパ角度が60°に形成されていること(実験5)、また、前記テーパ部が、音響導波管の開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる二段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が75°、45°に形成されていること(実験6)、さらに、前記テーパ部が、音響導波管の開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる三段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が71°、42°、13°に形成されていること(実験7)で消泡効果が向上した。
前記各実験1乃至7における音響導波管の内周面形状において、パルス状音波が発生後、294マイクロ秒(μs)経過後のパルス状音波の伝播状態を確認した結果、顕著に消泡効果が上昇する実験5乃至7においては、音響導波管の内周面を進行する各方向のパルス状音波の反射波が、前記音響導波管の軸心方向に対して40°以下の角度ズレを生じていることが判明した。
このように、この40°以下の角度ズレによって、反射波が音響導波管の開口部方向に向かい、前記開口部に直接向かう直射波が到達した時点で反射波も開口部付近に達し、前記反射波と直射波との前記開口部に達する時間差が少なくなり、顕著に消泡効果が上昇する。
従って、この結果から、音響導波管の内周面形状を、前述した40°以下の角度ズレが生じる形状とすること、具体的には、レーザー光の焦点或いはその近傍から前記音響導波管の開口部に向かって内周面の内径が増加する形状とすることが重要である。
そして、音響導波管の内周面の形状は、前述した実験5の音響導波管の開口部に向かって内径が増加する一段のテーパ部、特に、前記開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる実験6の二段のテーパ部、或いは実験7の三段のテーパ部に形成することが、パルス状音波の音響導波管の内周面における反射波が、開口部方向に向けられ、進行する各方向の反射波の前記開口部に達する時間差が順次少なくなる。
このため、音響導波管の内周面の形状は、前述したテーパ部とするのが好適である。
本発明は、金属缶、プラスチック製カップ、トレー状容器、PETボトル、ボトル缶、ガラス瓶などの各種容器に適用することができる。一般にパルス状レーザー光の繰返し周期及びパルス幅は短いので、容器が搬送されていても実質的には止まっているものとして扱うことができ、一つの容器に対して、1回だけパルス状音波を発生させてもよいし、任意の繰返し周期で複数回発生させてもよい。また、単一の光束を照射してもよいし、複数の光束を照射してもよい。さらに、ガルバノミラーなどの光学素子を用いて、光束を走査しながら複数のパルス状音波を発生させることも可能である。
110、210 ・・・ パルス状レーザー光発振装置
120、220 ・・・ 集光光学系
121、221 ・・・ レンズ
122 ・・・ プリズム
223 ・・・ 反射鏡
130、230 ・・・ 音響導波管
131、231 ・・・ 開口部
132、232 ・・・ テーパ部
133、233 ・・・ ストレート部
134、234 ・・・ レーザー光入射孔
235 ・・・ 後方反射壁
236 ・・・ レーザー光通過孔
A ・・・ 容器
B ・・・ 泡
C ・・・ 内容物
L ・・・ レーザー光
S ・・・ 焦点
P ・・・ パルス状音波
Claims (5)
- パルス状レーザー光によるパルス状音波で液体表面の泡沫を破壊させる消泡装置であって、パルス状レーザー光発振装置、該パルス状レーザー光発振装置より発振されたパルス状レーザー光を集光する集光光学系、集光されたレーザー光の焦点が内部空間に位置し開口部が液体表面に対向するよう配置された音響導波管とを備え、
前記音響導波管が、前記パルス状レーザー光の通過するレーザー光入射孔を有するとともに、少なくとも前記焦点或いはその近傍から前記開口部に向かって内周面の内径が増加するテーパ部を有し、前記テーパ部の下方にストレート部を有することを特徴とする消泡装置。 - 前記テーパ部が一段のテーパ部から成り、テーパ角度が軸心方向に対して25°乃至60°に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の消泡装置。
- 前記テーパ部が、前記開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる二段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の消泡装置。
- 前記テーパ部が、前記開口部に向かって徐々にテーパ角度が小さくなる三段のテーパ部から成り、それぞれのテーパ角度が軸心方向に対して60°乃至80°、30°乃至50°、10°乃至20°に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の消泡装置。
- 前記集光されたレーザー光の焦点より反開口部側には、前記焦点から反開口部方向に進行する各方向のパルス状音波を開口部方向に反射する後方反射壁を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の消泡装置。
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