JP5676221B2 - 送信装置、通信システム、通信方法、プロセッサ - Google Patents
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Description
近年、下りリンクの周波数利用効率改善のため、基地局装置(Base Station:BS)の複数のアンテナを用いて、複数の異なる端末装置(Mobile Station:MS)にデータ信号を同一周波数・同一時刻で送信するMulti-User Multi Input Multi Output(MU-MIMO)の研究が行われている。その中でもMU-MIMO Linear Precoding(LP)は、複数の端末装置宛の信号に対して線形フィルタを乗算することで端末装置間のユーザ間干渉 (Multi User Interference: MUI)を除去する技術である(下記非特許文献1参照)。
一方、送信装置が、受信装置の受ける干渉をあらかじめ除去したうえで、信号を送信する技術の一つとして、Tomlinson Harashima Precoding(THP)が注目されている。THPは、送受信両装置がModulo(モジュロ、剰余)演算を行うことで、良好な伝送特性を維持しつつ、送信電力を抑圧できるという特徴を持つ(下記非特許文献2参照)。
THPは、ダウンリンク(Downlink:DL)のMU-MIMOに応用されており、DL MU-MIMO THPと呼ばれている。DL MU-MIMO THPは、基地局装置が、同一時刻・同一周波数で複数の端末装置に信号を送信するときに発生するMUIを、THPを用いて電力効率良く除去し、複数の端末装置に対して信号を送信する技術である(下記非特許文献2参照)。
また、DL MU-MIMO THPの中で、MU-MIMO Lattice Redcution Aided THP(LRATHP)という技術がある(下記非特許文献3参照)。LRATHPは、THPに加え、格子基底縮小(Lattice Reduction:LR)という処理を行うことで、電力効率を高めた技術である。LRATHPでは、LLL-algorithmというアルゴリズムを用いてLRを行っている(下記非特許文献3及び4参照)。LLL-algorithmは、ある収束条件を満たすまで、演算を繰り返すという収束アルゴリズムであるため、処理時間が不確定である。LRATHPに、LLL-algorithmを組み込んだとき、伝搬路状態によっては、処理遅延時間が非常に長くなってしまう。そのため、実際にLLL-algorithmを組み込んだ通信システムを設計するときには、最も処理遅延時間が長くなる最悪値を考慮しなければならいという問題がある(下記非特許文献4参照)。
一方、先に述べたMU-MIMO LPとMU-MIMO THPは、どちらもあらかじめ決められた一定量の処理により終了する決定論的アルゴリズムであるため、MU-MIMO LRA-THPと比較して設計が容易であり、実用性が高い。実際に、MU-MIMO LPはLong Term Evolution(LTE)等で仕様化されている(下記非特許文献1参照)。このように、収束アルゴリズムではなく、決定論的アルゴリズムによる処理を行うことは、実用性を高めるという利点がある。
しかし、MU-MIMO LPは、一般に非ユニタリ行列の線形フィルタでMUIを抑圧する必要があり、電力効率が低下するという問題がある。MU-MIMO THPも、一部のMUIを除去するために線形フィルタを乗算する必要があり、やはり、電力効率が低下するという問題がある。
SU(Single-User)-MIMOなどで用いられる行列分解アルゴリズムの一つに、ソート付きQR分解(Sorted QR decomposition:SQRD)というアルゴリズムがある(下記非特許文献5参照)。通常のQR分解は、行列Xをユニタリ行列Qと上三角行列Rの積に分解する。すなわち
X=Q×R (0−1)
と表すことができる。一方、ソート付きQR分解は、
X×Π=Q×R (0−2)
と表すことができる。ここで、Πは置換行列である。このソート付きQR分解は、行列Xの列を適切に入れ替えることによって(つまり、置換行列Πを適切に選択することによって)、Rの対角成分を、2乗ノルムが左上から順に概ね小さくなるように並べるQR分解を行うアルゴリズムである。ここで2乗ノルムとは、スカラーにおいては、絶対値の2乗、ベクトルにおいては、各成分の絶対値の2乗の和を表す。またソート付きQR分解など、行列を三角行列と他の行列の積に分解する処理を三角化という。
本発明の第1実施形態は、伝搬路に対して予め決められた演算量の処理の「一括基底準直交化」を施すことにより、直交性が高くMU-MIMO LP方式で各端末装置の信号を分離しやすい等価的伝搬路を生成し、この等価伝搬路に対してMU-MIMO LP方式を適用することでの伝送特性を向上することを可能にする。
図1は、本実施形態における基地局装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
符号部1−1〜nは、各端末装置宛の情報ビットを誤り訂正符号化し、各端末装置宛の符号化ビットを変調部3−1〜nに入力する。変調部3−1〜nは、入力された各端末装置宛の符号化ビットを変調し、各端末装置宛のデータ信号(変調信号)を生成する。各端末装置宛のデータ信号を生成した変調部3−1〜nは、固有信号構成部5にデータ信号を入力する。またDRS生成部7は、各端末装置宛の固有参照信号(Dedicated Reference Signals:DRS)を生成して、固有信号構成部5にDRSを入力する。固有信号構成部5は、変調信号とDRSを用いて、各端末装置宛の固有信号を構成する。
H=[Re(Hc)-Im(Hc);Im(Hc) Re(Hc)] (1−1)
を満たす。なお、式(1−1)の右辺は、第1行から第n行が[Re(Hc)-Im(Hc)]と表され、第n+1行から第2n行が[Im(Hc)Re(Hc)]と表される2n行2n列の実数行列である。ここで、Re(α)を行列αの各要素の実部を取り出す関数とし、Im(α)を行列αの各要素の虚部を取り出す関数とする。またフィルタ算出部23内の三角化部241、直交化整数算出部243、ユニモジュラ行列算出部245を併せて一括基底準直交化部246と呼ぶ。
HT×Π_I=Q_I×R_I (1−2)
を満たす直交行列Q_I、上三角行列R_I、及び置換行列Π_Iを算出する。ここで、Q_Iは直交行列であるが、直交行列は全要素が実数で構成されるユニタリ行列である。また、ソート付きQR分解とは、R_Iの対角成分の2乗ノルムが左上ほど小さくなる傾向をもって並ぶようにQR分解する方法である。図6はソート付きQR分解の手順を示す図である。
(0行目)三角化部241にHTが入力される。
(1行目)R_Iを2n行2n列のゼロ行列とし、Q_IをHTと等しい行列とし、Π_Iを2n行2n列の単位行列とする。
(2行目)以下の(3行目)〜(11行目)の処理を整数iに対して1,2,3,4,…,2nの値をそれぞれ代入して繰り返す。
(3行目)3行目の処理「argmin_(m=i,…,2n)||Q_I(:,m)||2」はQ_Iのi〜2n列の中で2乗ノルム(各成分の2乗の和)が最も小さい列の番号をkiに代入する処理を示す(X(:,m)は行列Xの第m列目を示す。)。
(4行目)Q_Iのki列目とi列目を入れ替える。
(5行目)R_Iのki列目とi列目を入れ替える。
(6行目)Π_Iのki列目とi列目を入れ替える。
(7行目)R_Iのi行i列成分であるR_I(i,i)にQ_Iのi列の2乗ノルムである||Q_I(:,i)||2を代入する。
(8行目)以下の(9行目)と(10行目)の処理を整数mに対してi+1,2,3,4,…,2nの値をそれぞれ代入して繰り返す。
(9行目)R_Iのi行m列成分であるR_I(i,m)にQ_Iのi列目の転置とQ_Iのm列目を乗算した値を代入する。
(10行目)Q_Iのm列目から、R_I(i,m)倍したQ_Iのi列目を、減算する。
(11行目)8行目に述べたように(9行目)〜(10行目)の操作をm=i+1から順に2nになるまで、2n-i回繰り返す。
(12行目)2行目に述べたように(3行目)〜(11行目)の操作をi=1から順に2nになるまで、2n回繰り返す。
(13行目)Q_IとR_IとΠ_Iを出力する。
(0行目)直交化整数算出部243に上三角行列R_I(第1の上三角行列)が入力される。
(1行目)行列Mの初期値として2n×2nの単位行列I_2nを代入し、行列R_Lの初期値としてR_Iを代入する。
(2行目)以下の(3行目)〜(7行目)の処理を整数kに対して2,3,4,…,2nの値をそれぞれ代入して繰り返す。
(3行目)以下の(4行目)〜(6行目)の処理を整数iに対してk-1,k-2,…1の値をそれぞれ代入して繰り返す。
(4行目)整数μに「R_L(i,k)/R_L(i,i)」を代入する(また「α」はαに最も近い整数を求める関数とする。)。
(5行目)4行目で算出した整数μを用いて、
R_L(1:i,k)=R_L(1:i,k)-μR_L(1:i,i) (1−3)
を計算する。ここでR_Lの第1〜i-1列のi行目〜2n行目は全て0である。これはR_Iが上三角行列であり、R_Lは直交化整数算出部43における処理においても常に上三角行列であるからである。そのため式(1−3)は、R_Lのj列目をR_L_jと書くとすると下記の式と等価になる。
R_L_k=R_L_k-μR_L_i (1−4)
(6行目)行列Mにおいて、k行目に整数(-μ)倍したi行目を加算する。
(7行目)3行目に述べたように(4行目)〜(6行目)の操作をi=k-1から順に1になるまで、k-1回繰り返す。
(8行目)2行目に述べたように(3行目)〜(7行目)の操作をk=2から順に2nになるまで、2n-1回繰り返す。
(9行目)最終的に上三角行列R_L(第2の上三角行列)と整数行列M(直交化整数行列)を出力する。
ユニモジュラ行列算出部245が、上三角行列Mと置換行列Π_Iを乗算し、ユニモジュラ行列D(D=Π_I×M)を生成して、等価伝搬路算出部247にDを入力する。またDTをプレコーディング部25に入力する。
HT=Q_I×R_I×Π_I-1 (1−5)
GT=HT×D=Q_I×R_I×Π_I-1×D=Q_I×R_L×M-1×Π_I-1×D=Q_I×R_L (1−6)
(ここで、D=Π_I×Mであることを用いた。)
直交行列Q_Iや置換行列Π_Iは直交性に影響を及ぼさないため、HとGの「直交性」はそれぞれ上三角行列R_IとR_Lの各列の「直交性」に置き換えられる(各行ではなく各列となっているのは、HTやGTなど転置した式していることを考慮に入れたものである。)。
MU-MIMOにより空間多重する全端末装置の固有信号を表すベクトルをscとおく。scは複素数を各成分に持つn次元ベクトルである。またsは、scを2n次元の実数ベクトルに変換したベクトルであり、
s=[Re(sc)T Im(sc)T]T (1−7)
と表すことができる。ユニモジュラ行列乗算部261が、フィルタ算出部から入力されたユニモジュラ行列DTをsに対して乗算し、その積(=DTs)の各成分をそれぞれModulo演算部263−1〜263−2nに入力する。
mod(α)=α-floor((α+τ/2)/τ)τ (1−8)
ここで、floor(β)は、βを超えない最大の整数を表す関数である。また、τは、変調信号の平均電力を1に正規化した場合、変調方式に応じて、あらかじめ送受信側で既知な所定の値となる。例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)ではτ=2√2であり、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)ではτ=8/√10であり、64QAMではτ=16/√42とすることが望ましいが、これらの値と異なる値を用いても良い。
本実施形態は、図4に示したフィルタ算出部23内の一括基底準直交化部246が伝搬路Hよりも直交性が高い等価的な伝搬路Gを生成することが特徴である。
H=D-T×G (1−9)
という関係を持つ。MU-MIMO LPの場合、ZF規範のプレコーディングフィルタはH-1(=G-1×DT)となる。本実施形態では、ユニモジュラ行列乗算部261でDTを、プレコーディングフィルタ乗算部273でG-1を乗算する。すなわち、二つの処理を合わせれば送信信号に対してH-1を乗算している。しかし、その2つの処理の間に、Modulo演算部263−1〜263−2nを導入することで送信信号電力を低減している。Modulo演算部263−1〜2nは、ユニモジュラ行列を乗算された信号に対して、Modulo幅の整数倍の信号を加算することで、送信信号の振幅をModulo幅τの半分以下に抑える処理であり、Modulo演算後の信号は、変調信号とほぼ同等の電力となる。このModulo演算後の信号に対して、準直交化された等価伝搬路Gに対応するプレコーディングフィルタを適用するため、通常の準直交化前の伝搬路Hに各プレコーディングフィルタよりも電力効率が高くなる。言い換えれば、H-1を乗算する処理を、あえて2つのG-1とDTの乗算という処理に分離し、その間にModulo演算部263−1〜2nを入れることで電力損失を低減している。
前述の第1の実施形態と異なる手順でフィルタを算出する方法について説明する。本変形例1は、フィルタ算出部23の構成のみが異なり、他の基地局装置の構成や端末装置の構成は、前述の第1の実施形態と同じである。
以上が本変形例1に係るフィルタ算出部23の動作である。尚、他の構成部分の動作は、前述の第1の実施形態と同様であるため省略する。
本変形例1に係る基地局装置は、前述の第1の実施形態と同様にMU-MIMO LPよりも電力損失を抑えることで、良好な特性を実現できる。さらに、プレコーディングフィルタ演算部340に相当する処理がMU-MIMO LPに存在するため、図4と比較して、従来技術からの構成の変更を少なく抑えることが出来るという利点を持つ。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施形態に係る通信システムは、第1の実施形態に係る通信システムに比べて、さらに高い直交性を持つ等価伝搬路を生成することで、より電力損失を抑えた伝送を行う。
D=D1×D2×D2×…×DP (2−1)
ユニモジュラ行列合成部444は、生成したユニモジュラ行列Dを等価伝搬路算出部447に入力するとともに、Dの転置行列DTをプレコーディング部25に入力する。
本実施形態に係る基地局装置は、多段一括基底準直交化部448において、基底のソート(三角化部441)と基底の準直交化(直交化整数算出部443)を複数回行うことが可能である。一括準直交化を繰り返すほど等価伝搬路Gの直交性が向上するので、最終的な電力損失を低減することができて、ひいては伝送特性の向上に寄与する。また、この一括基底準直交化の処理回数は予め一定回数Pに決めることができ、伝搬路状態Hなどによって変わることがない決定論的アルゴリズムである。すなわち、本実施形態は、予め決められた演算量と伝送特性のトレードオフで自由に一括基底準直交化の処理回数を決めることを可能にする。
第2の実施形態の変形例1では、第1の実施形態の変形例1と同様の変更を、前述の第2の実施形態に加える方法について説明する。
本変形例1に係る基地局装置は、前述の第1の実施形態と同様にMU-MIMO LPよりも電力損失を抑えることで、良好な特性を実現できる。さらに、プレコーディングフィルタ演算部340に相当する処理がMU-MIMO LPに存在するため、図12と比較して、従来技術からの構成の変更を少なく抑えることが出来るという利点を持つ。
上記の第1及び第2の実施形態では、直交性の高い等価伝搬路Gに対してMU-MIMO LPに基づくプレコーディングを施していたが、本発明の第3の実施形態では、等価伝搬路Gに対してMU-MIMO THPに基づくプレコーディングを施すことにより、さらに伝送特性を改善することを可能にする。
GT×Π=Q×R (3−1)
s=[Re(sc)T Im(sc)T]T (3−2)
と表すことができる。
(ステップS101) ユニモジュラ行列乗算部61が、sに対してユニモジュラ行列DTを乗算して得たベクトル(=DT×s)をオーダリング部62に入力する。
(ステップS102) オーダリング部62が、入力されたベクトルDTsに対して置換行列ΠTを乗算する。乗算して得たベクトルをu(u=ΠT×DT×s)とおく。uは、sと同様2n次元実数ベクトルである。uの第k成分をu_kとおく。
(ステップS103) Modulo演算部63−1は入力された信号u_1に対して、式(1−8)で示されるModulo演算を施してv_1(=mod(u_1))を算出し、v_1を干渉算出部65と線形フィルタ乗算部73に入力する。
(ステップS104−2) 干渉算出部65は、v_1と干渉係数Fの2行目の第1成分F(2,1)を用いて、干渉成分f_2を下式(3−3)で算出し、干渉減算部71-kに入力する。
f_2=F(2,1)v_1 (3−3)
(ステップS105−2) 干渉減算部71−2は、u_2から干渉成分f_2を減算したu_2-f_2をModulo演算部63−2に入力する。
(ステップS106−2) Modulo演算部63−2は入力された信号u_2-f_2に対して式(1−8)で示されるModulo演算を施し、v_2を算出し、v_2を干渉算出部65と線形フィルタ乗算部73に入力する。
(ステップS104−k) 干渉算出部65は、v_1〜v_(k-1)と、干渉係数Fのk行目の第1〜(k-1)成分F(k,1:k-1)とを用いて、干渉成分f_kを下式(3−4)で算出する。
f_k=F(k,1:k-1)×(v_1, v_2, ..., v_(k-1) )T (3−4)
(ステップS105−k) 干渉減算部71−kは、u_kから干渉成分f_kを減算したu_k-f_kをModulo演算部63−kに入力する。
(ステップS106−k) Modulo演算部63−kは、入力された信号u_k-f_kに対して式(1−8)で示されるModulo演算を施し、v_kを算出し、v_kを干渉算出部65と線形フィルタ乗算部73に入力する。ここでk=2nのときは、v_2nを干渉算出部65には入力せずに線形フィルタ乗算部73にのみ入力する。
(ステップS107) 線形フィルタ乗算部73は、Modulo演算部63−1〜63−2nから入力されたv(=(v_1,v_2,...,v_2n)T)に対して線形フィルタPを乗算して得た信号xを、複素数で表される信号xcに変換し、xcをフレーム構成部27に入力する。ここで信号xは2n次元の実数ベクトルで表される。また、xcは、k番目の成分xc_kがアンテナkで送信する信号を表す。xc_kの実部(In-phase channel:I-ch)にx_kを代入し、xc_kの虚部(Qudrature channel:Q-ch)にx_(k+n)を代入する。
本実施形態に係る基地局装置は、第1の実施形態と比較して、等価伝搬路Gに対してさらにMU-MIMO THPを施す。MU-MIMO THPは、MU-MIMO LPよりも電力損失を抑えた通信を可能にする技術であり、直交性が向上した等価伝搬路Gに対してさらに電力損失を抑えたプレコーディング方式を用いることができる。そのため、第1の実施形態よりもさらに高い伝送特性を実現できる。
本発明の第3の実施の形態の変形例1では、MU-MIMO LP方式を用いる第1の実施形態の変形例1に対して、代わりにMU-MIMO THP方式を導入する。本変形例1に係る基地局装置は、図20に示すように、原則的に第1の実施形態と同じ構成を持つが、フィルタ算出部723と、プレコーディング部625の動作が異なる。また本変形例に係るプレコーディング部625は、前述の第3の実施形態のプレコーディング部625(図18)と全く同じ動作をする(そのため、第3の実施形態(図18)と同じ番号を用いて表している。)。よって、本変形例1では、フィルタ算出部723の動作のみを説明し、他の基地局装置の構成及び動作の説明は省略する。
本実施形態に係る基地局装置は、第1の実施形態の変形例1と比較して、等価伝搬路Gに対してさらにMU-MIMO THPを施す。MU-MIMO THPは、MU-MIMO LPよりも電力損失を抑えた通信を可能にする技術であり、直交性が向上した等価伝搬路Gに対してさらに電力損失を抑えたプレコーディング方式を用いることができる。そのため、第1の実施形態の変形例よりも高い伝送特性を実現できる。
第4の実施形態では、第3の実施形態で導入した等価伝搬路GにMU-MIMO THP方式を適用する方法に対して、さらに第2の実施形態で導入した多段一括基底準直交化を導入する。多段一括基底準直交化とMU-MIMO THP方式を両方導入することで、第1〜第3の実施形態よりも良好な特性を有する伝送方式を実現する。
また本実施形態に係る端末装置は、第1〜第2の実施形態と同じ構成を持つ。
以上の構成により、本実施形態では、第1〜第3の実施形態よりも良好な特性を有する伝送方式を実現できる。
本変形例1では、第3の実施形態の変形例1で導入した等価伝搬路GにMU-MIMO THP方式を適用する方法に対して、さらに第2の実施形態の変形例1で導入した多段一括基底準直交化を導入する。この多段一括基底準直交化とMU-MIMO THP方式を両方導入することで、第1〜第3の実施形態の変形例1よりも良好な特性を有する伝送方式を実現する。
また本実施形態に係る端末装置は、第1〜第2の実施形態と同じ構成を持つ。
以上の構成により、第1〜第3の実施形態の変形例1よりも良好な特性を有する伝送方式を実現できる。
第1の実施形態から第4の実施形態では、ZF規範のフィルタを用いていたが、本実施形態では、MMSE規範に基づく方式について説明する。本実施形態では、第3の実施形態の変形例1及びと第4の実施形態の変形例1を前提として、両変形例からの変更点を説明する。
プレコーディングフィルタ算出部1040では、伝搬路状態情報Hcを用いて、下記手順で準直交化を行う行列Lを算出する。
C=Hc×HcH+ξ×I (5−1)
その後、行列Cの逆行列C-1を算出し、C-1をコレスキー分解する。ξは、n個のMSの雑音分散の和をBSの1サブキャリア1OFDMシンボルに割り当てられた送信電力で除算した値である。行列C-1とコレスキー分解後の行列Lcは
LcH×Lc=C (5−2)
という関係を持ち、Lcは上三角行列である。行列Lを式(1−1)と同様に実数で表した行列をLとおく。本実施形態では行列Lに対して準直交化を行うため、プレコーディングフィルタ算出部1040が一括基底準直交化部746と等価フィルタ算出部1047に行列Lを入力する。またプレコーディングフィルタ算出部1040は、行列HTLTを等価フィルタ算出部1047に入力する。
JT×Π=Q×R (5−3)
次に、等価フィルタ算出部1045は、Rと同じ対角成分を持つ対角行列Aを用いて線形フィルタP(P=HT×LT×Q×A-1)、干渉係数F(F=RT×A-1-I)、を算出する。また等価フィルタ算出部1047は、PとFをプレコーディング部25に入力する。また、等価フィルタ算出部1047は、置換行列の転置ΠTもプレコーディング部625に入力する。
また、第4の実施形態の変形例1のように一括基底準直交化部746を多段一括基底準直交化部548に変更してもよい。
MMSE規範を用いることで、各端末装置に対するMUIを完全には除去しないかわりに、MUI抑圧に伴う電力損失を抑え、各端末装置のSignal to Noise and Interference Ratio(SINR)を最大化することができる。ひいては、各端末装置の伝送特性を改善できる。
上記実施形態は、第1から第4の実施形態ではZF規範で説明し、第5の実施形態で、MMSE規範の一例を説明した。しかし、下記の第5の実施形態と異なるMMSE規範を用いたフィルタを用いても良い。MMSE規範を用いる場合、Hcの代わりに、(HcHcH+ξ*I)Hc-H(={HcH(HcHcH+ξ*I)-1}-1)を用いる。また、n×2n行列[Hc η*I_n]を用いても良い。この第5の実施形態の他にこの2つの方式もをMinimum Mean Squared Error(MMSE)方式と呼ぶ。またηは受信SNRの逆数である。
Claims (10)
- 複数の受信装置に対してそれぞれ異なる信号を送信する送信装置であって、
前記複数の受信装置より通知される伝搬路状態情報に基づく前記複数の受信装置との間の伝搬路行列を準直交化して等価伝搬路行列を生成し、前記等価伝搬路行列に対応するプレコーディングフィルタを算出するフィルタ算出部と、
算出された前記プレコーディングフィルタに基づいて、前記受信装置宛の信号を多重した信号を算出するプレコーディング部と、
前記多重した信号を送信する送信部と、を有し、
前記フィルタ算出部は、
前記伝搬路行列を準直交化する準直交化部を1つ以上有し、
前記準直交化部の少なくとも1つは、
前記伝搬路行列の列、又は前記伝搬路行列から生成した行列の列、を並び替えた行列を上三角行列と他の行列との積に分解し、さらに前記並び替えを示す置換行列を算出する三角化部と、
前記上三角行列のある列の整数倍を、前記列より右の列に加算する上三角行列のある列の整数倍を、前記列より右の列に加算し、さらに前記整数に基づいて直交化整数行列を算出する直交化整数算出部と、
前記直交化整数行列と前記置換行列に基づいて、前記準直交化に必要とされるユニモジュラ行列を算出するユニモジュラ行列算出部と、を有し、
前記準直交化部の少なくとも1つは、前記等価伝搬路行列に対してさらに前記準直交化を施すこと、を特徴とする送信装置。 - 前記準直交化部のうち少なくとも一部は、前記準直交化後の前記等価伝搬路行列の上三角行列を算出し、
前記上三角行列に対して準直交化を施すことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。 - 前記フィルタ算出部は、
前記受信装置と前記送信装置間の複素利得を各成分に有する伝搬路行列に基づいて、算出したMU−MIMO LP用の線形フィルタを算出するプレコーディングフィルタ算出部を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。 - 前記フィルタ算出部は、
前記伝搬路行列から生成した行列と前記ユニモジュラ行列に基づいて等価フィルタを算出する等価フィルタ算出部を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。 - 前記プレコーディング部は、前記ユニモジュラ行列に基づく行列を各端末装置宛の固有信号に対して乗算して等価伝搬路用信号を生成するユニモジュラ行列乗算部を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
- 前記プレコーディング部は、
前記等価伝搬路行列に基づいて、前記受信装置間の干渉の一部を除去する線形フィルタ、及び前記受信装置間の干渉のうち前記線形フィルタで除去しない干渉を除去する干渉係数を算出するプレコーディングフィルタ算出部と、
前記干渉係数に基づいて、前記受信装置宛の信号から前記受信装置間の干渉の少なくとも一部を減算して干渉減算後信号を算出する干渉減算部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。 - 前記プレコーディング部は、
前記干渉減算後信号に対して予め前記送信装置と前記受信装置で共有する所定の信号の整数倍の摂動ベクトル信号を加算する摂動ベクトル加算部を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。 - 前記プレコーディング部は、
前記干渉減算後信号に対してModulo演算を施すModulo演算部を有することを特徴とする請求項11に記載の送信装置。 - 複数の受信装置に対してそれぞれ異なる信号を送信する送信装置における通信方法であって、
前記複数の受信装置より通知される伝搬路状態情報に基づく前記複数の受信装置との間の伝搬路行列を準直交化した等価伝搬路行列に対応するプレコーディングフィルタを算出するステップと、
算出された前記プレコーディングフィルタに基づいて、前記受信装置宛の信号を多重した信号を算出するステップと、
前記多重した信号を送信するステップと、を有し、
前記フィルタを算出するステップは、
前記伝搬路行列を準直交化するステップを1つ以上有し、
前記準直交化するステップの少なくとも1つは、
前記伝搬路行列の列、又は前記伝搬路行列から生成した行列の列を並び替えた行列を上三角行列と他の行列との積に分解し、さらに前記並び替えを示す置換行列を算出するステップと、
前記上三角行列のある列の整数倍を、前記列より右の列に加算する上三角行列のある列の整数倍を、前記列より右の列に加算し、さらに前記整数に基づいて直交化整数行列を算出するステップと、
前記直交化整数行列と前記置換行列に基づいて、前記準直交化に必要とされるユニモジュラ行列を算出するステップと、を有し、
前記準直交化するステップの少なくとも1つは、前記等価伝搬路行列に対してさらに前記準直交化を施すステップと、
を有することを特徴とする通信方法。 - 複数の受信装置に対してそれぞれ異なる信号を送信する送信装置におけるプロセッサであって、
前記複数の受信装置より通知される伝搬路状態情報に基づく前記複数の前記受信装置との間の伝搬路行列を準直交化した等価伝搬路行列に対応するプレコーディングフィルタを算出するフィルタ算出部と、
算出された前記プレコーディングフィルタに基づいて、前記受信装置宛の信号を多重した信号を算出するプレコーディング部と、
前記多重した信号を送信する送信部と、を備え、
前記フィルタ算出部は、
前記伝搬路行列を準直交化する準直交化部を1つ以上有し、
前記準直交化部の少なくとも1つは、
前記伝搬路行列の列、又は前記伝搬路行列から生成した行列の列、を並び替えた行列を三角行列と他の行列との積に分解し、さらに前記並び替えを示す置換行列を算出する三角化部と、
前記上三角行列のある列の整数倍を、前記列より右の列に加算する上三角行列のある列の整数倍を、前記列より右の列に加算し、さらに前記整数に基づいて直交化整数行列を算出する直交化整数算出部と、
前記直交化整数行列と前記置換行列に基づいて、前記準直交化に必要とされるユニモジュラ行列を算出するユニモジュラ行列算出部と、を有し、
前記準直交化部の少なくとも1つは、前記等価伝搬路行列に対してさらに前記準直交化を施すこと、を特徴とするプロセッサ。
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