顕微鏡検査又はリソグラフィで使用され、物体の表面の数ミクロン以下の程度の小さい構造を結像することができる光学系がよく知られている。良好な像を生成するために、光学系は、物体から反射された(又は物体を透過した)光を十分に収集し、像の細部を分離し、像を拡大し、細部を人間の眼又は光検出器に見えるようにしなければならない。光学系の開口数(NA)は、光を採集し、固定の物距離における微細な物体細部を解像する性能の尺度である。微細な細部を解像し、良好な像を生成する光学系の性能は、光学収差によって妨げられる。大部分の収差は、光と光学要素(レンズ又はミラー)との相互作用から生じるアーチファクトによって引き起こされる。特に、色収差は、光のスペクトルに見いだされる広範囲の周波数と相互作用する場合、特に、可視光で結像させる場合、光学要素の屈折率の変動から生じる。一般に、光学収差は、光学系によって観察される像のフィーチャに光学的欠陥を導入し、それによって、光学系の性能を劣化させる。
光学顕微鏡では、結像される物体に最も近い光学系は、対物光学系、或いは、単に、「対物レンズ」と呼ばれ、それは、物体の倒立拡大実像を形成する。この像は、中間像と呼ばれ、接眼レンズの視野絞りの面に存在する。対物レンズの開口数は、解像力、作動距離、視野及び対物レンズによって収集される光の量を含むいくつかの要因に影響を及ぼす。作動距離は、対物光学系の最前面とそれに最も近い物体の表面との間の空間である。作動距離は、「物体空間」と呼ばれ、即ち、対物レンズの第1のレンズの入射表面と物体面との間の空間を決定する。視野(FOV)は、作動距離において、対物レンズを介して一度に見る物体の領域である。解像力は、互いに小さい角距離で配置された物体の点を分離する(別個として見る)ための結像デバイスの性能である。NAは、対物光学系の解像力と、対物光学系が収集できる光量との両方に影響を及ぼす。一般に、NAは、特定の対物レンズ設計を使用して結像される物体に光を供給することができる角度、又は、それから光を収集することができる角度の範囲を示す。対物光学系を設計する場合、多くの要因が考慮されなければならないが、最終目的は、収差の量を減らすことである。
高NA照明による結像から生じる問題の1つは、色収差である。当業者に知られているように、色収差は、異なる波長の光と相互作用する場合に材料の屈折率の変動から生じる。具体的には、例えば、白色光がレンズを通過する場合、成分波長は、その周波数に応じて屈折する。正レンズでは、青色光が最大限まで屈折し、その後に緑色光成分や赤色光成分が続く。レンズは色の全てを共通焦点に合わせることができないため、波長成分ごとに僅かに異なる像サイズ及び焦点がもたらされる。この現象は、軸上色収差として知られている。白色光が軸外れで収束される場合、或いは、白色光源が僅かに軸外れで配置される場合、追加の横色収差(倍率色収差)が生じることがある。特に、約400nm(ナノメートル)から700nmの範囲の波長を含む可視スペクトルの端から端まで色収差を補正することは、特に、困難である。通常、顕微鏡は、正レンズと考えることができる。その意味において、正レンズの屈折力は、「過小補正の」軸上色収差として知られているものを生成する。それを補償するために、過大補正の軸上色収差が、特別に設計された光学要素を顕微鏡の光学系に付加することによって意図的に生成される。
高NA照明による結像に関連する別の問題は、全反射(TIR)の可能性である。具体的には、特に、図2に関して以下で説明するように、レンズ−空気界面において、大きい入射角を有する光が屈折される場合、TIRが生じることがある。TIRは、屈折率が対物光学系の最前面の屈折率と可能な限り一致する結合流体を使用することによって防止することができる。
また、像面湾曲は、考慮されるべき別の結像の性質である。具体的には、試料の像は、一般に、平面を有するCCD(電荷結合素子)又はCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサなどのセンサによって撮像されるため、センサが配置される面で平らな像が必要とされる。しかしながら、一般に、顕微鏡は、正レンズと見なすことができるため、正レンズの屈折力が、内側に曲がる像面を有する像を生成する。その結果として生じる像の湾曲は、ペッツバール湾曲として知られている。内向ペッツバール湾曲(inward Petzval curvature)を補償するために、特別に設計された光学要素を顕微鏡の光学系に付加することによって、外側に曲がる像面が意図的に生成される。具体的には、凹面ミラーを使用することは、内側ペッツバール湾曲を補償するための有効な方法であることが知られている。従って、収差の補正は、かなりの数のレンズ要素を対物光学系に導入することによって達成することができることは明らかである。このような光学要素の数の著しい増加は、多くの場合、窮屈で、位置合わせが困難な、大型の対物系をもたらす。
上述の背景を考慮して、開口数を増加させ、且つ、収差を最小にするための試みがなされてきた。Hwang等(以下、「Hwang」)によるWO2009/046137A1として公開された国際特許出願PCT/US2008/078493は、例えば、色収差を最小にし、且つ、ペッツバール湾曲の補正を最適化し、その結果、平らなペッツバール像面を有する像を得るために必要とされる反射屈折対物レンズを含む結像光学系を開示している。しかしながら、Hwangの結像光学系のNAは、1よりも小さい。
Chuang等(以下、「Chuang」)の米国特許第7646533B2号は、極めて高いNAを有する小型の反射屈折対物レンズの様々な実施形態を開示している。対物レンズは、中間像を形成する少なくとも1つの収束レンズを有するレンズ群を含む。対物レンズは、中間像に近接して配置された少なくとも1つの視野レンズと、少なくとも1つの視野レンズからの中間像を受け取るように位置決めされた反射屈折系とを更に含む。反射屈折系は、少なくとも1つのマンジャン要素を含み、メニスカスレンズ要素を含むことができる。Chuangの系は「極めて高いNA」と称しているが、NAは1よりも小さい。
Shafer等(以下、「Shafer」)の米国特許第6600608号は、2つの中間像を形成する反射屈折対物レンズを開示している。対物レンズは、2つの屈折部分対物レンズと、1つの反射屈折部分対物レンズとを含む。対物レンズは、第1の部分対物レンズと、第1の中間像と、第2の部分対物レンズと、第2の中間像と、第3の部分対物レンズとを含む。部分対物レンズのうちの少なくとも1つは、純粋な屈折系である。部分対物レンズの1つは、純粋な屈折系であり、1つは、純粋な反射系である。Shaferによれば、反射光学部分対物レンズは、ペッツバール和の減少即ち像面平坦化の義務を担っている。これによって、屈折部分対物レンズは、負及び正レンズ群によってビームの縮小や拡大を行う必要性から解放される。しかしながら、Shaferによって開示された対物レンズは、電磁スペクトルの深紫外線(DUV)領域で主に動作するマイクロリソグラフィ投影露光装置での使用に限定される投影対物レンズである。
最後に、J. Joseph Armstrong(以下、「Armstrong」)の米国特許第7884998号は、広帯域顕微鏡検査で使用するための、液浸液を使用する反射屈折顕微鏡対物レンズを開示している。対物レンズは、約480から660ナノメートルの波長範囲の光エネルギーを供給する光エネルギー源から光エネルギーを受け取り、1.0を超える開口数、及び、0.05ミリメートルを超える視野サイズ(field size)を提供するために、液浸液と共にマンジャンミラー構成を使用している。Armstrongが認めているように、液浸結像系で使用される液浸対物レンズに関する問題は、低波長又は広波長範囲の光エネルギーの存在下において、或いは、異なるタイプの照明及び結像モードの存在下において、像を解像することができないことを含む。更に、液浸法は、標準顕微鏡において利用可能な対物レンズでは、例外なく使用されるというものではない。
従って、現在の最新技術で達成された進歩にもかかわらず、現在利用可能な対物レンズでは、大きいFOVに対して結像ができない。本発明者の知る限りでは、現在利用可能な液浸対物レンズは、約1.3のNA、約1ミリメートルよりも広くないFOV、及び、70mλ(ミリラムダ)以下の波面R.M.S.を与えることができる。本発明者は、現在、約400から700nmのスペクトル範囲の広い波長に対応し、大きいFOVサイズを示し、1.60以上の高いNAで光を受け入れ、40mλ以下のR.M.S.誤差を有する波面を生成することができる液浸対物レンズを知らない。
以下の説明において、開示される光学系を実施することができる実施形態の説明図である添付図面が参照される。しかしながら、当業者は、本開示に添付された特許請求の範囲の新規性及び範囲から逸脱することなく他の構造的及び機能的な変形形態を生み出すことができることを理解するべきである。
説明において、開示される例についての十分な理解を与えるために、具体的な詳細が記載される。他の例では、よく知られている方法、手順、構成要素及び回路は、不必要に本開示を長くしないために、詳細には説明していない。本発明の幾つかの実施形態は、一般に、情報及び命令を処理するための1つ又は複数のプロセッサと、情報及び命令を記憶するためのランダムアクセス(揮発性)メモリ(RAM)と、静的情報及び命令を記憶するための読み出し専用(不揮発性)メモリ(ROM)と、情報及び命令を記憶するための磁気ディスク、光ディスク及びディスクドライブなどのデータ記憶デバイスと、コンピュータユーザに情報を表示するための表示デバイス(例えば、モニタ)などのオプションのユーザ出力デバイスと、プロセッサに情報及びコマンド選択を伝えるための英数字やファンクションキーを含むオプションのユーザ入力デバイス(例えば、キーボード)と、プロセッサにユーザ入力情報及びコマンド選択を伝えるためのカーソル制御デバイスなどのオプションのユーザ入力デバイス(例えば、マウス)とを含むコンピュータシステムで実施することができる。
当業者には理解されるように、本例は、システム、装置、システムを使用する方法、或いは、有形のコンピュータ読み取り可能媒体において具現されるコンピュータプログラムとして具現することができる。従って、幾つかの例は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又は、本明細書では、全て「回路」、「モジュール」又は「システム」と称することがあるソフトウェアの態様とハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形態をとることができる。更に、幾つかの実施形態は、コンピュータで使用可能なプログラムコードが記憶されている任意の有形の表現媒体で具現されたコンピュータプログラムの形態をとることができる。例えば、方法、装置(システム)、コンピュータプログラムのフローチャート及び/又はブロック図を参照して以下で説明される幾つかの実施形態は、コンピュータプログラム命令によって実施することができる。コンピュータプログラム命令は、特定の方法で機能するようにコンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置に指示することができるコンピュータ読み取り可能媒体に記憶され、その結果、コンピュータ読み取り可能媒体に記憶された命令は、本明細書で開示されるフローチャート及び/又はブロック図において指定された機能/動作/ステップを実施する命令及びプロセスを含む製品を構成することができる。
本明細書において、結像されるべき物体が配置される面は「物体面」と称され、物体の像が形成される面は「像面」と称される。光学系と、撮像要素とを含む撮像装置全体を考える場合、像面は、光学系の後焦点面に配置される面に対応する。更に、結像されるべき物体が配置されるレンズの側は、レンズの「物体面側」、「物体側」又は「前側」と交換可能に称され、像が形成されるレンズの側は、レンズの「像面側」、「像側」又は「後側」と交換可能に称される。
図1は、本発明の第1の態様における顕微鏡の対物光学系として使用することができる光学系1を示す。光学系1は、反射要素及び屈折要素の両方を含み、即ち、光学系1は、反射屈折光学系であり、光軸AXに沿って配置された第1の光学群100、第2の光学群200及び第3の光学群300を含む。第1の光学群100は、第1の中間像面IMP1において、物体面OPに配置された物体Oの第1の中間像IIM1を形成する。第2の光学群200は、第2の中間像面IMP2において、第1の中間像IIM1に基づいて第2の中間像IIM2を形成する。第3の光学群300は、最終像面IPにおいて、第2の中間像IIM2に基づいて最終像FIMを形成する。第1の光学群100、第2の光学群200及び第3の光学群300は、物体面側から像面側にかけて、この順に配置されると言うことができる。本明細書で使用する「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、光学要素又はそれらの群の相対位置を表し、この相対位置は、物体Oで生じた光が物体面OPから最終像面IPまで進む順序によって定義される。像面IPは、ビデオカメラ又はデジタルカメラの写真光学系が物体の像を検出するために使用される場合、CCDセンサ又はCMOSセンサなどの像を受け取る固体画像センサ(光電変換素子)の結像面に対応する。また、像面IPは、ハロゲン化銀フィルムカメラの写真光学系が使用される場合、フィルム表面に対応する。
第1の光学群100は、固体レンズ102からなり、固体レンズ102は、その物体側及び像側のそれぞれに第1の表面104及び第2の表面106を有する。第2の光学群200は、マンジャン群202及びレンズ群208を含む。マンジャン群202は、第1のマンジャンミラー204及び第2のマンジャンミラー206を含み、レンズ群208は、第1のレンズ210及び第2のレンズ212を含む。固体レンズ102、第1のマンジャンミラー204及び第2のマンジャンミラー206は、それらの中央領域(不図示)を含み、かかる中央領域は、反射性でなく、光を遮ることなく透過させることができる。第3の光学群300は、物体側から像側まで次の順に配置された一群の12個のレンズ302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322及び324を含む。
各群の具体的な構造及び機能を説明する。動作時において、第1の光学群100は、全反射(TIR)を防止し、1.60以上の高い開口数を提供することによって、光学系の光収集能力を最適化する。固体レンズ102からなる第1の光学群100の構造及び機能をよりよく示すために、図2は、第1の表面1104及び第2の表面1106を有する単一の対物レンズ1102からなる簡単化した対物光学系1100のダイアグラムを示す。図2の右側は、TIRが対物レンズ1102の光採集能力に与える負の効果を示し、図2の左側は、レンズが液浸流体(オイル)に浸漬される場合の対物レンズの光採集能力の増加を示す。具体的には、図2に示されるように、物体Oが薄いカバーガラス1110の下に配置される場合、物体Oで生じる有用な光線1114は、角度θaで薄いカバーガラス1110を通過し、次に、角度θ’aで空気を通って進み、レンズ1102の第1の表面1104に入射する。ガラス−空気界面での屈折に起因して、物体Oで同様に生じるがθaよりも大きい角度になる光線1108は、TIRによって、薄いカバーガラス1110のガラス−空気界面で反射される。従って、光線1108は、対物レンズ1102に到達しない。物体Oがカバーガラスの下に配置される状況は、生体細胞のマニピュレーションが水などの液浸流体の中で行われる生理学の分野で主として使用される。この状況や他の状況において、カバーガラスは、試料の汚染を避けるために物理的な障壁として頻繁に使用される。従って、カバーガラスが試料を保護するために使用される場合、物体空間におけるTIRを避けることは有利である。
TIRの負の効果は、屈折率がカバーガラスの屈折率と可能な限り一致する液浸流体を使用することによって、部分的に克服することができる。具体的には、図2の光軸AXの左側に示されるように、液浸流体1112(オイル)の層を、カバーガラス1110と対物レンズ1102との間で使用する。この場合、物体Oにおいてθo(θaよりも大きい)で生じた光線1116は、TIRを受けることなく液浸流体を透過することができ、次に、同じ角度θoで対物レンズ1102によって捕捉される。より具体的には、液浸流体1112の屈折率noがカバーガラス1110の屈折率ngと一致するように選択されるため、物体Oにおいて角度θoで生じる光線1116は、TIRを受けることなく、実質的に同じ角度θoでガラス−オイル界面及びオイル−レンズ界面を通って伝搬する。このようにして、物体Oで生じた光は、入射角θoと実質的に等しい角度θ’0で対物レンズ1102によって収集される。従って、対物光学系の光採集能力は、顕微鏡の物体空間の屈折率をカバーガラス1110及び/又は対物レンズ1102の屈折率と一致させることによって向上される。この正の効果は、物体Oが液浸流体の中に直接(カバーガラスなしに)配置され、対物レンズ1102が液浸流体に沈められた物体Oを観察するように設計される場合、特に有利となる。レンズ1102の光採集能力の尺度は、開口数で与えられ、開口数は、式(1)で定義することができる。
NA=no sinθm 式(1)
ここで、noは、物体空間の媒体(空気、オイル、水など)の屈折率であり、θmは、第1の対物レンズによって捕らえられる最大光錐の半角である。別の表現をすれば、θmは、レンズの光軸AXと、物体Oで生じ、対物レンズによって捕捉される周辺光線との間に形成される角度である。第1の対物レンズで捕らえられる最大光錐の最大角は、光を失わず、且つ、著しい収差を生成しない角度である。
顕微鏡の対物光学系の解像度Rは、式(2)で与えられる。
R=0.61(λ/NA) 式(2)
ここで、λは、照明に使用される光の波長であり、NAは、式(1)で定義される物体空間での顕微鏡の開口数であり、0.61は、レイリーの基準から導出される。従って、式1及び式2から、高い解像度Rを達成するためには、波長を低減するか、又は、開口数を増加させるかのどちらかであり、より好ましくは、両方が試みられるべきである。しかしながら、非常に狭い波長を有する放射光源は高価であり、殆どの実際の用途において取扱いに注意を要するため、顕微鏡の解像度Rを増加させるための取組みは、一般には、NAを増加させることを指向してきた。具体的には、高いNAは、高解像度Rを有し、物体の著しく小さいフィーチャを解像することができる顕微鏡対物レンズをもたらすため、本願の背景技術の欄で説明した参考文献の各々は、NAを増加させ、且つ、収差を最小にする試みを行ってきた。
Armstrong(上記で説明した)によって開示されたように、液浸流体を使用することによって物体空間の屈折率noを増加させることは、より大きいNAを取得し、対物光学系の光採集能力を高めるための1つの既知の技術である。従って、上述したように、物体空間は、屈折率が約1である空気の代わりに屈折率no>1を有する液浸流体に浸漬されることが有益である。しかしながら、物体空間に液浸流体を使用することは、それ自体は、色収差や制限された視野などの他の制限を克服することができない。
そこで、本発明で開示するように、図1に示す光学系1は、具体的には、1.60以上の高いNAを与えるだけでなく、400から700nmの広い波長範囲の光が高角度θmで収集されるときに生じる様々な収差を補正するように設計される。その目的のために、固体レンズ102は、具体的には、それを透過する光が外向ペッツバール湾曲を有する第1の中間像IIM1を生成することができるように設計され、第2の光学群200は、外向ペッツバール湾曲及び過大補正の軸上色収差を有する第2の中間像IIM2を生成する。また、第3の光学群300は、第2の光学群によって生成された過大補正の色収差及び外向ペッツバール湾曲を補償するように、過小補正の色収差及び内向ペッツバール湾曲を生成するように設計される。
より具体的には、第1の表面104及び第2の表面106のそれぞれは、レンズの光軸に実質的に中心を有する透明部分と、透明部分を囲む(同心で)反射部分とを含む。固体レンズ102の第1の表面及び第2の表面の反射部分は、例えば、光学コーティングによって形成することができる。部分的にコーティングされた表面を有するレンズは、当業者にはよく知られていると考えられる。従って、コーティング材料又はコーティング技術に関する具体的な詳細は、ここでは説明しない。しかしながら、重要なことには、固体レンズ102及びその表面は、好ましくは、ドライ環境又はウエット環境のいずれかで動作するように設計することができる。より具体的には、固体レンズ102の少なくとも第1の表面104は、空気にさらされるか、或いは、液浸流体に沈められて動作するように設計することができる。その目的のために、第1の表面104は、高反射性材料でコーティングされるべきであり、高反射性材料は、腐食に耐性があるべきである。液浸流体の屈折率は、好ましくは、固体レンズ102及び/又は第1の表面104のコーティングの屈折率と一致するように選択される。
図3は、第1の光学群の固体レンズ102及びその光収集能力を示す。ここで、固体レンズは、単一の固体材料で製作されたレンズ又は単一の固体要素で製作されたレンズに限定されない。換言すれば、固体レンズ102は、同じ材料又は異なる材料の2つ以上のレンズ要素を接合することによって得てもよい。図3において、物体Oで生じ、角度θmでレンズ102に入射する光F1の光線は、第1の表面104の透明領域Tを通過し、まず、第2の表面106の反射領域Rに入射し、次に、光F1の光線は、第1の表面104に向けて光F2として反射される。第1の表面104の反射領域Rから、光F2は、固体レンズ102の頂点の近くに(それの近傍に)、及び、それと直交して配置される第1の中間像面IMP1に向けて収集光F3の光線として前方反射される。第1の中間像面IMP1において、収集光F3の反射光線は、結合されて第1の中間像IIM1を形成する。従って、第1の光学群100は、その内部に2つの反射面(104及び106におけるR)と、その中心領域に透過部分Tとを有する固体レンズ102からなると言うことができる。これらの2つの反射面(104及び106におけるR)によって、物体Oで生じた光は、固体レンズ102の内部で少なくとも2つの反射を受け、外向ペッツバール湾曲及び最小の軸上色収差を有する中間像IIM1を形成する。具体的には、レンズ102の第2の表面106の凹面湾曲は、外向ペッツバール湾曲を意図的に生成するように設計され、外向ペッツバール湾曲は、第3の光学群300によって生成される内向ペッツバール湾曲で補正することができる。液浸流体112に沈められることが好ましい物体Oは、第1の表面104から所定の距離内に配置される。第1の表面104から物体Oまでの所定の距離は、作動距離と称されるもの即ち顕微鏡の対物光学系の物体空間を定める。物体空間のNAは、式(1)で定義されるような角度θmによって決定される。
上述したように、顕微鏡の対物光学系は正レンズと同等である、と見なすことができる。その場合、光学系1によって像面IP(図1を参照)に形成される最終像は、ペッツバール湾曲に起因して内側に曲がった像面を有する像を生成することになる。ペッツバール和は、式(3)で与えられる。
ここで、niは、屈折率であり、fiは、i番目の光学要素の焦点距離である。ペッツバール曲率半径は、m個のレンズ要素の光学系によって生成される平面物体の像の近軸像面からのペッツバール表面上の高さYiにおける像点の変位Δxで与えられる。Δxは、式(4)で与えられる。
従って、図3を参照するに、固体レンズ102(第1の表面104は、実質的に平坦であり、第2の表面106は、物面に向けて凹面である)は、外向ペッツバール湾曲を有する第1の中間像IIMIを生成する平凸レンズから実質的に形成される。これにより、光学系1は、対物レンズのFOVを増大させるとともに、光捕捉能力を高めることができる。ここで、数値例1(表3を参照)に従って、且つ、式(3)を使用することによって、第1の光学群100のペッツバール和は、本発明の実施形態では、−0.0068であることが見いだされたことに留意されたい。
軸上色収差L(或いは、色収差の縦方向成分として知られている)は、式(5)で与えられる。
ここで、hiは、近軸周辺光線の高さであり、Viは、アッベ数であり、u’kは像面での近軸光線角度である。第1の光学群で生成された軸上色収差は、光が第1の表面104で反射された後、第2の表面106を通過するときに顕著となる。より具体的には、第1の中間像面IMP1において、光は、近軸周辺光線の高さが略ゼロとなるようにコリメートされて収束され、それは、軸上色収差が低いか、或いは、実質的に無視できることを意味する。しかしながら、固体レンズ102の特定の凹面設計のために、第1の中間像面IMP1で第1の中間像IIM1を形成する非近軸光線は、ある一定量の軸上収差を生成する。従って、第1の光学群100は、第1の中間像面IMP1において、過大補正の軸上色収差及び外向ペッツバール湾曲を有する第1の中間像IIM1を形成すると言うことができる。
次に、第2の光学群200の構造及び機能を詳細に説明する。図1を参照するに、第1のマンジャンミラー204及び第2のマンジャンミラー206からなるマンジャン群202は、外向ペッツバール湾曲を生成し、第1のレンズユニット210及び第2のレンズユニット206からなるレンズ群208は、過大補正の色収差を生成する。具体的には、第1の中間像面IMP1に到達した光は、第1のマンジャンミラー204の透過部分を通過し、第2のマンジャンミラー206の反射面で反射され、かかる反射光は、第1のマンジャンミラー204に再度入射する。次に、光は、第1のマンジャンミラー204の反射面から、第2のマンジャンミラー206の中央部分における透過部分に向けて反射される。第2のマンジャンミラー206の透過部分を通過した光は、レンズ群208を通って進む。レンズ群208の第1のレンズ210及び第2のレンズ212は、第2の中間像面IMP2の上に光を収束して、そこに第2の中間像IIM2を形成する。注目すべきは、マンジャン群202の機能のうちの1つは、第1の光学群100によって既に与えられているペッツバール湾曲の外向傾向を更に増加させること、及び、過大補正の色収差を生成することである。具体的には、第2のマンジャンミラー206は、物体面に面する凹面形状を有し、第1の表面206a及び第2の表面206bを含む。第1の表面206aの凹面形状は、過大補正の軸上色収差を生成し、第2の表面206bの凹面形状は、外向ペッツバール湾曲を生成する。数値例1(表3を参照)に従って、且つ、式(3)を使用することによって、第2の光学群200のペッツバール和は、本発明の実施形態では、−0.0053であることが見いだされた。
第3の光学群300は、複数の光学レンズ(12個のレンズが第1の実施形態では示されている)を含み、第2の中間像IIM2を拡大して最終像面IPに最終像FIMを形成する。第3の光学群300のレンズは、如何なる特定の形状又は順序にも限定されないが、第3の光学群300は、全体として、第1の光学群100及び第2の光学群200によって生成された外向ペッツバール湾曲を補償及び補正するのに十分な内向ペッツバール湾曲を生成することが好ましい。更に、第3の光学群300は、全体として、第2の光学群200によって生成された過大補正の軸上色収差を補償及び補正するのに十分な過小補正の軸上色収差を生成することが好ましい。表1(数値例1に対応する)に示されたデータに基づき、及び、式(3)を使用することによって、本発明者が行ったシミュレーションでは、第3の光学群300のペッツバール和は、0.012であることが見いだされた。従って、第3の光学群300の内向(正)ペッツバール湾曲は、第1の光学群100の外向(負)ペッツバール湾曲及び第2の光学群200の外向(負)ペッツバール湾曲を効果的に補償していることを当業者は理解するであろう。
従って、要約すると、光学系1において、第1の光学群100は、外向ペッツバール湾曲を生成し、且つ、軸上色収差を最小にし、第2の光学群200は、外向ペッツバール湾曲及び過大補正の軸上色収差を生成し、第3の光学群300は、内向ペッツバール湾曲及び過小補正の軸上色収差を生成する。このようにして、第1の光学群100、第2の光学群200及び第3の光学群300は、収差の制御に関して厳しい制限なしに、独立して個々に設計することができるが、一緒に組み込まれると、全体として、3つの光学群は、互いの収差を補償し、著しく大きなFOVを有し、実質的に収差のない最適化された最終像が得られるように設計される。より具体的には、第1の光学群100及び第2の光学群200の意図的に生成された外向ペッツバール湾曲は、第3の光学群300の内向ペッツバール湾曲によって補償及び補正される。同様に、第1の光学群及び第2の光学群で意図的に許容された過大補正の軸上色収差は、戦略的に、第3の光学群の過小補正の軸上色収差で補償及び補正される。ペッツバール湾曲及び軸上色収差に対する光学系1の各光学群の関係は、表1に要約される。
表1:図1に示す光学系1の屈折力及び収差特性の要約
図4は、本発明の第2の態様における顕微鏡の対物光学系として使用することができる光学系2を示す。光学系2は、反射要素及び屈折要素の両方を含む、即ち、光学系2は、反射屈折光学系である。具体的には、光学系2は、物体側から像側まで順に光軸AXに沿って配置された第1の光学群400、第2の光学群500及び第3の光学群600を含む。第1の光学群400は、中間像面IMP1において、物体面OPに配置された物体Oの中間像IIM1を形成する。物体Oは、第1の光学群400の物体側に、第1の光学群400から適切な距離(作動距離)を離して配置される。液浸流体(流体)は、物体Oで生じた光を光学系2に結合するために使用される。ここで、「物体Oで生じた光」とは、物体Oから反射されるか、或いは、物体Oを透過して屈折される照明光である。いずれの場合においても、物体Oで生じた光は、第1の光学群400によって収集されることが理解されるべきである。第2の光学群500は、中間像IIM1を、中間像面IMP1から第3の光学群600に中継する(受け取って渡す)。中間像IIM1の中継において、第2の光学群500は、必要に応じて、中間像IIM1を拡大する。第3の光学群600は、最終像面IPにおいて、中間像IIM1に基づいて、拡大した最終像FIMを形成する。第1の光学群400、第2の光学群500及び第3の光学群600は、対物光学系2の物側から像側まで、この順に配置されると言うことができる。本明細書で使用する「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、光学要素又はそれらの群の相対位置を表し、この相対位置は、光学群ごとに、その光学要素又は表面が物面OPから最終像面IPまで順に配置される順序で定義される。
第1の光学群400は、その物体側及び像側のそれぞれに第1の表面404及び第2の凹面表面406を有する固体レンズ402からなる。第2の光学群500は、レンズユニット502と、少なくとも1つのマンジャンミラー504と、ミラー506とを含む。レンズユニット502は、固体レンズ402の第2の表面406とマンジャンミラー504との間に配置される(光線追跡のために、レンズユニット502は、図4では明確には示されていない)。第3の光学群600は、物体側から像側まで次の順に配置された一群の4つのレンズ602、604、606及び608を含む。
図5は、光学系2の第2の光学群500の構造及び構成を更に詳細に示す。図5に示されるように、レンズユニット502、マンジャンミラー504及びミラー506は、光軸AXに沿って同軸状に位置合わせされる。レンズ502は、ペッツバール湾曲を制御することができるように、中間像面IMP1に、又は、その近傍に配置される。マンジャンミラー504は、図1に示し、上記で説明したマンジャンミラー206と実質的に同様の構造及び機能を有することができる。ミラー506は、好ましくは、光軸AXに関して対称であり、光学系の物体側に面する凹面反射表面を有する。
次に、光学系2の各光学群の具体的な構造及び機能を詳細に説明する。固体レンズ402からなる第1の光学群400は、図1に示す第1の光学群100と実質的に同様である。動作時において、第1の光学群400は、物体空間の全反射(TIR)を防止し、1.65以上の高い開口数を提供することによって、光学系2の光収集能力を最適化する。より具体的には、光学系1の固体レンズ102と同様に、固体レンズ402の第1の表面404及び第2の表面406のそれぞれは、その光軸に実質的に中心を有する透明(透過)部分と、透明部分を同心状に囲む反射部分とを含む。固体レンズ402の第1の表面及び第2の表面の反射部分は、例えば、反射性であることが望まれる固体レンズの領域を選択的にコーティングすることによって形成することができる。このようにして、固体レンズ402は、反射部分内で光を内部反射し、透明部分を通して高NAで光を収集する。コーティングした反射部分と、透過(透明)部分とを含む表面を有するレンズは、当業者によく知られていると考えられる。従って、コーティング材料又はコーティング技術に関する具体的な詳細は、ここでは説明しない。しかしながら、重要なことには、固体レンズ402の表面(404及び406)の反射部分は、好ましくは、約400から700ナノメートルの波長を有する光を反射するように設計する。更に、固体レンズ402は、ドライ環境又はウエット環境で動作することができる。例えば、固体レンズ402の少なくとも第1の表面404は、開放環境(例えば、空気)にさらされるか、或いは、液浸流体(例えば、オイル)に沈められて動作するように設計することができる。その目的のために、固体レンズ402の第1の表面404の少なくとも反射部分は、高反射性材料でコーティングされるべきであり、高反射性材料は、腐食に耐性があるべきである。液浸流体の屈折率は、好ましくは、第1の表面404の透明(透過)領域の屈折率に可能な限り接近して一致するように選択する。従って、固体レンズ402(第1の表面404は、実質的に平坦であり、第2の表面406は、物体面に対して凹面であり、それらは、それぞれ、その中に内部反射領域を有する)は、その内部で光を少なくとも2回反射し、外向ペッツバール湾曲を有する第1の中間像IIM1を生成する平凸レンズから形成される。これにより、光学系2は、対物レンズのFOVを増大させるとともに、光捕捉能力を高めることができる。
図4の光学系2では、物体Oで生じた光は、固体レンズ402の内部で少なくとも2回反射されながら集光される。物体Oで生じた光は、第1の表面404の透過部分を通過し、第2の表面406に向けて前進する。第2の表面406において、その反射部分で、収集光は、第1の表面404に向けて反射され、収集光は、そこから第2の表面406の透過部分に向けて再度反射される。固体レンズ402の実質的に頂点において、或いは、それのすぐ近くにおいて、固体レンズ402の内部で少なくとも2回反射された光は組み合わされて、中間像IIM1を形成する。換言すれば、図4の第1の光学群400は、図1の第1の光学群100と実質的に同様に機能する。第1の光学群400が物体Oで生じた光を収集する方法は、図3に示したものと同様である。従って、第1の光学群400のペッツバール湾曲及び色収差は、第1の光学群100のものと実質的に同様である。実際に、数値例2(表5のデータを参照)に従って、且つ、式(3)を使用することによって、第2の実施形態の第1の光学群400のペッツバール和は、−0.0036であることが見いだされた。
図5は、図4の光学系2の第2の光学群500の構成を示す。図示するように、中間像IIM1は、第1の光学群400と第2の光学群500との間の中間像面IMP1に形成される。中間像面IMP1から、図5に示されるように、収集光は、レンズユニット502を通過し、マンジャンミラー504の中空部を通って前進する。次いで、マンジャンミラー504の中空部を通過する収集光F1は、像面の方向に前進し、ミラー506の凹面表面によって、その物体側に向かって収集光F2として反射される。そして、収集光F2は、マンジャンミラー504によって、収集光F3として反射される。次に、マンジャンミラー504によって反射された収集光F3は、ミラー506の中空部分(不図示)を通って像面に向かい続ける。最後に、ミラー506の中空部分(中央領域の)を通過する収集光F3は、図4に示すように、第3の光学群600によって受け取られ、像面IPの上に収束されて、最終像FIMを形成する。
利点は、第1の光学群400において、物体空間で使用される液浸流体は、第1の表面404(固体レンズ402)の屈折率と実質的に一致し、それによって、TIRが防止され、NAが増加する。また、第2の表面406の凹面形状は、外向ペッツバール湾曲を生成し、且つ、過大補正の軸上色収差を意図的に生成するように機能する。第1のレンズユニット502、マンジャンミラー504及び凹面ミラー506を含む第2の光学群500は、内向ペッツバール湾曲及び過小補正の軸上色収差を生成する。第2の光学群500において、数値例2(表5のデータを参照)に従って、且つ、式(3)を使用することによって、ペッツバール和は、0.0053であった。
第3の光学群600は、複数の光学レンズ(図4では、4つ)を含み、中間像IIM1を拡大して最終像面IPにおいて最終像FIMを形成する。第3の光学群600のレンズは、如何なる特定の形状、数、順序にも限定されないが、第3の光学群600は、全体として、第2の光学群500によって生成された内向ペッツバール湾曲を補正するのに十分な外向ペッツバール湾曲を生成することが好ましい。更に、第3の光学群600は、全体として、第2の光学群500によって生成された過小補正の軸上色収差に対する平衡及び補正に十分な過大補正の軸上色収差を生成することが好ましい。数値例2のデータを使用し、式(3)に基づいた第3の光学群600のペッツバール和は、−0.0016であった。
従って、要約すると、光学系2において、第1の光学群400は、外向ペッツバール湾曲及び過大補正の軸上色収差を生成し、第2の光学群500は、内向ペッツバール湾曲及び過小補正の軸上色収差を生成し、第3の光学群600は、外向ペッツバール湾曲及び過大補正の軸上色収差を生成する。光学系2の各光学群のそのペッツバール湾曲及び軸上色収差に対する関係は、表2に要約される。
表2:図4に示す光学系2の特性の要約
数値例:次に、図1に示す光学系1を代表する数値例(数値例1)に対応するデータ、及び、図4に示す光学系2を代表する数値例(数値例2)に対応するデータを説明する。ここで提示する各数値例において、参照符号「i」(ここで、i=1、2、3…)は、物体面から像面までの光学系における表面の順序を表す。この前提によって、「半径」のデータRiは、i番目の曲率半径(i番目の面の)に対応し、厚さTiは、i番目の表面と(i+1)番目の表面との間の軸上の距離又は空間を表し、参照符号ndi及びνdiのそれぞれは、フラウンホーファーのd線に対するi番目の光学要素の材料の屈折率及びアッベ数を表す。ndi及びνdiのデータのない表面番号は、かかる表面番号が空気間隙であることを表わす。表3において、半径R=1.00E+18(ここで、1E+Xは1×10+xと同等である)は、実質的に無限大の半径、即ち、平面を表す。また、各数値例において、物体Oは、第1の光学表面の物体側で物体面OPに配置されると仮定されている。絞りSTOは、物体空間にテレセントリシティを形成するために物体Oから比較的離れた距離に配置される。各数値例において、物体Oは、第1の光学表面の屈折率と一致する(即ち、数値例1では、固体レンズ102の屈折率と一致する、及び、数値例2では、固体レンズ402の屈折率と一致する)屈折率を有する流体に浸漬されると見なされる。非球面は、存在する場合、表面番号の隣に加えられたアスタリスク(「*」)によって表される。
各非球面において、円錐定数は、kで表され、非球面の次数の係数は、それぞれ、4次、6次、8次、10次、12次、14次及び16次の係数であるA、B、C、D、E、F、G、…で表され、光軸から高さhの位置での光軸の方向の変位は、表面の頂点を基準としてzで表される。非球面の変位は、以下で与えられる式(6)に基づいている。
光学系1に対応する数値例1の光学構成要素のパラメータの要約は、表3に一覧にされている。光学系1に対応する数値例の非球面のデータの要約は、表4に一覧にされている。同様に、光学系2に対応する数値例2の光学構成要素のパラメータの要約は、表5に一覧にされている。光学系2に対応する数値例の非球面のデータの要約は、表6に一覧にされている。適合及び該当する場合、光学構成要素のパラメータに対応するデータは、ミリメートル(mm)で与えられる。
表3:光学系1(図1)に対応する光学構成要素のパラメータ
表4:光学系1(図1)の非球面のデータ
表5:光学系2(図4)に対応する光学構成要素のパラメータ
表6:光学系2(図4)の非球面のデータ
図6Aは、本発明における例示的な光学系1のFOVの端から端までのRMS(平方2乗平均)波面誤差のグラフを示す。図6Bは、本発明における光学系2のFOVの端から端までのRMS波面誤差のグラフを示す。一般に、RMS波面誤差の定義は、全波面領域にわたって、最良適合基準球状波面から測定したときの実際の収差波面の光路差(OPD)の標準偏差として理解される。より具体的には、波面RMS誤差は、基準近軸球状波面と比較した実際の収差波面の光路の山から谷までの差の有効平均化の平方根を表す。レンズ設計において、波面誤差の標準偏差は、RMS波面誤差と呼ばれ、かかるRMS波面誤差は、以下の式(7)で与えられる。
ここで、Wiは、光路差であり、Wmeanは、平均光路差である。
この場合、図6A及び図6Bに示すように、RMS波面誤差は、光学系1のFOVの端から端まで35mwavesの最大波面誤差(図6A)、及び、光学系2のFOVの端から端まで40mwavesの最大波面誤差(図6B)を示す。図6A及び図6Bに示されたデータは、光学系1(図1)及び光学系2(図4)から得られた結果に対応し、ここで、焦点距離は、550mmであり、波長帯域幅は、400から700nmの範囲であった。中央遮蔽率は、0.3であった。図6A及び図6Bに示された結果で使用された他の全ての値は、それぞれ、数値例1及び数値例2に関して表にされたデータから得られた。
次に、図7を参照して、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態における光学系が顕微鏡(撮像装置の例)に適用される例を説明する。図7は、透過光、反射光、又は、その両方によって物体Oを結像する例示的な縦型の顕微鏡700の主要構成要素を示す概略図である。図7に示すように、例示的な顕微鏡700は、サンプルホルダ706と、光源710と、集光レンズ704と、接眼レンズ715と、電子光学検出器720と、本発明の少なくとも1つの実施形態における対物光学系702とを含む。コンピュータシステム730は、サンプルホルダ706及び電子光学検出器720に動作可能に接続する。コンピュータシステム730は、コンピュータ制御データ取得及び記憶を行う。コンピュータシステム730では、データに適合し、様々な計算を行い、データをグラフ形式で表示するために専用ソフトウェアが使用される。電子光学検出器720は、CCD(電荷結合素子)センサアレイ又はCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサアレイを含む。光源710は、連続波レーザやパルスレーザなどのコヒーレント光源、又は、タングステンランプや水銀ランプなどのインコヒーレント光源のいずれかを含むことができる。光源は、可視光を放出する光源に限定されず、紫外(UV)、深UV(DUV)、赤外(IR)、近赤外(NIR)などを含む光源を含むことができる。
動作において、物体Oは、対物光学系702の光軸AXに沿って配置され、好ましくは、水、オイル、グリセリンなどのような流体物質(液浸媒体)に浸漬される。光源710は、照明光IBを生成する。ビームスプリッタBS1は、照明光IBを、透過照明光TBと反射照明光RBとに分離する。必要に応じて、スイッチSW(光学又は電子)は、物体Oを照明するために透過照明光TBを使用するか、或いは、反射照明光RBを使用するかを制御する。また、透過照明光TB及び反射照明光RBは、異なる光源で別々に生成してもよい。透過照明光TBが使用される場合、光は、レンズL1を通って進み、ミラーM1で反射し、集光レンズ704を通過することによって物体Oの上に収束される。反射照明光RBが使用される場合、光は、ミラーM2で反射され、レンズL2を通って進み、ビームスプリッタBS2は、反射照明光RBを物体Oに向けて反射する。この場合、反射照明光RBは、対物光学系702を通って進み、物体Oの上に収束される。使用する光学系に応じて、物体Oで生じる光は、対物光学系702で収集され、物体Oの像は、上述したように形成される。対物光学系702で収集された光は、ビームスプリッタBS2を通って進み、ビームスプリッタBS3まで前進する。ビームスプリッタBS3は、接眼レンズ715及び電子光学検出器720に光を導く。このようにして、最終像FIMは、接眼レンズ715で観察されるか、或いは、光学検出器720で検出される。
当業者は、本明細書で説明した例の範囲内で多くの変更形態が可能であることを理解するであろう。従って、本発明の特徴は、特定の実施形態を参照して説明されたが、構造及び機能の変形は、以下の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく行われることが理解されるであろう。