以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。以下に説明される種々の図面において、各光学素子の左側は、前側又は物体側と呼ばれ、反対側(右側)は、後側又は像側と呼ばれる。従って、本明細書で使用される場合、光学素子(レンズ又はミラー)の撮像すべき物体が配置される側は、光学素子の「物体面側」、「物体側」又は「前側」と交換可能に呼ばれ、光学素子の像が形成される側は、光学素子の「像面側」、「像側」又は「後側」と交換可能に呼ばれる。光学素子の「厚さ」は、一般に、その光学素子の物体側面と像側面との間の軸方向距離と考えられる。本明細書において使用される用語「光学素子」は、一般に、1つの光学的に透明な固体材料片から製造されるか、或いは、1つの素子を形成するために互いに一体的に接合された複数の光学的に透明な固体材料片から製造されたレンズとして理解されるべきである。
図1に示すように、本発明の例示的な実施形態によれば、反射屈折光学系10は、光軸AXに沿って物体面OPから像面IPに向かって順に配置された第1の反射屈折群100、第2の反射屈折群200、視野レンズ群300及び屈折群400を含む。第1の反射屈折群100、第2の反射屈折群200、視野レンズ群300及び屈折群400は、互いに軸方向に配置されるのが好ましい。動作中、第1の反射屈折群100は、物体シーン(物体面OPに配置された物体O)からの光束を集光し、反射面内で3回以上光束を反射させ、且つ、第1の中間像(IIM1)を形成するために集光した光を中間像面(IMP1)に集束する。第2の反射屈折群200は、中間像面IMP1からの光束を集光し、且つ、その光束を少なくとも2回反射させる。視野レンズ群300は、第2の反射屈折群200から射出した光束を受け、第2の中間像(IIM2)を形成するために光束を第2の中間像面(IMP2)に集束する。屈折群400は、第2の中間像IIM2を拡大し、且つ、像面IPに最終像(FIM)を形成する。
反射屈折群100は、物体側に物体側面102aを有し、且つ、像側に像側面102bを有する1つの多重反射光学素子(MRE)102(「固体レンズ」とも称する)から構成される。特に、多重反射光学素子102は、その内部で入射光を3回以上反射させる。更に詳細には、多重反射光学素子102に光束が入射した場合、像側面102bは、物体側面102aに向かって光束を繰り返し反射させ、物体側面は、像側面に向かって光束を繰り返し反射させる。物体側面及び像側面の形状は、まず、入射光束が光軸から発散するように2つの面の間で順次反射され、次に、光軸に沿って焦点面に向かって収束するように順次反射されるように設計される。従って、反射屈折群100は、屈折体によって分離された反射面群として有効に作用する。そこで、説明をわかりやすくするために、反射屈折群100は、「第1の反射屈折群」とも呼ばれ、光学素子102は、「固体レンズ102」、反射屈折レンズ、或いは、MRE102と呼ばれる場合もある。このような名称は、同等であると考えられるべきである。
反射屈折群200(第2の反射屈折群群)は、反射屈折群100(第1の反射屈折群)と軸方向に配置される。図1に示す実施形態では、反射屈折群200は、物体側面202a及び像側面202bを有する第1のマンジャンミラー202と、物体側面204a及び像側面204bを有する第2のマンジャンミラー204とを含む。その他の実施形態において、反射屈折群200は、互いに対向する凹面の反射面(第1のミラー)及び凸面の反射面(第2のミラー)を含み、且つ、第1の反射屈折群100から像面に向かって光束を導光するように構成すれば十分である。換言すれば、当業者によって理解されるように、反射屈折群200は、反射面を有する固体レンズではなく、鏡面反射ミラーによって実現されてもよい。反射屈折パラメータの実現の詳細は、図7を参照して以下で説明する。
反射屈折群200と軸方向に配置された視野レンズ群300は、第1のレンズ302と、第2のレンズ304と、第3のレンズ306とを含む。視野レンズ群300は、2つ以下のレンズ又は4つ以上のレンズを適宜含んでもよい。屈折群400は、光軸AXに沿って順に、好ましくは、視野レンズ群300と軸方向に配置されたレンズ(屈折素子)402、404、406、408、410、412、414、416、418及び420を含む。本実施形態(図1)において、視野レンズ群300及び屈折群400は、2つの個別の光学系群として示され、且つ、説明されている。但し、これら2つの光学系群は、一般に、1つのレンズ群と考えてもよい。
動作中、反射屈折群100の光学素子102は、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1を形成するために、物体Oからの光束を集光する。なお、本実施形態において、第1の中間像IIM1は、光学素子102の本体の内部の像側面102bの頂点又は光学素子102の像側(外側)に形成されてもよい。反射屈折群200は、第1の中間像IIM1が形成される位置又はそのすぐ後の位置に配置される。従って、反射屈折群200は、反射屈折群100を通過した光束を集光し、且つ、第2の中間像面IMP2に第2の中間像IIM2を形成する。そのために、視野レンズ群300は、反射屈折群200から光束を受け、且つ、集光した光束を第2の中間像面IMP2に集束する。屈折群400は、第2の中間像IIM2を拡大し、且つ、最終(結果)像FIMを形成するために光束を最終像面IPに投影する。反射屈折光学系10は、リソグラフィ投影光学系の場合のように、物体面OPと像面IPとを入れ替えた反転光路でも動作できる。
本明細書において使用される用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、光学素子又は光学素子群の相対的位置を示し、この相対的位置は、各光学素子が物体平面OPと像平面IPとの間に空間的に配置される順序によって定義される。撮像装置が物体Oの像を検出するために使用される場合、像面IPは、CCDセンサ又はCMOSセンサなどの固体イメージセンサ(光電変換素子)の撮像面に相当する。更に、撮像装置に装着されたハロゲン化銀フィルムカメラの写真光学系が物体Oの像を検出するために使用される場合、像面IPは、フィルム面に相当する。
図1、図2A〜図2C及び図3A〜図3Bを参照して、反射屈折群100の構造及び機能を詳細に説明する。上述したように、例示的な実施形態において、反射屈折群100は、多重反射光学素子102から構成される。多重反射光学素子102は、平坦に形成されたほぼ円形の本体を有し、且つ、両側に物体側面及び像側面を規定する1つの固体レンズである。その他の実施形態において、多重反射光学素子102は、別の構造で実現されてもよい。例えば、多重反射光学素子102は、一方側に顕著な凸面形状を有し、反対側に平坦な形状を有してもよいが、そのような構造でも、ほぼ円形の本体を維持し、両側に物体側面及び像側面を規定する。
図1に示すように、光学素子102は、物体側に物体側面102aを含み、像側に像側面102bを含む。動作中、入射光束が光学素子102の内部で3回以上反射されるように、物体側面102a及び像側面102bは、それら2つの面の間に入射光束を閉じ込めるように作用する。
図2Aに示すように、幾つかの実施形態において、物体側面102aは、ほぼ平坦な面又は平面(湾曲していない面)であってもよい。一方、像側面102bは、物体側面に向かって凹面の連続的な湾曲面であるのが好ましい。像側面102bは、球面形状又は非球面形状のいずれかである。更に詳細には、図1に例示される実施形態に示すように、光の入射方向に見て、物体側面102aは、中心では、ほぼ平坦であるが、外側縁部では、像側に向かって僅かに湾曲している(凹面である)。この特有の形状は、光学素子102が物体側で(物体空間内で)浸漬液とともに作用するように設計されている場合に有利である。
従って、本実施形態において、光学素子102は、平凸レンズとして形成された1つの固体レンズである。但し、光学素子102は、単独の固体レンズに限定されない。例えば、光学素子102は、固体レンズと1つ以上のミラーとの組み合わせによって実現されてもよいし、或いは、適切な反射面を含めた複数の接合レンズの組み合わせによって実現されてもよい。特に、ミラーとレンズとの組み合わせの使用は、画質に不都合な影響を及ぼすこともあるが、反射屈折群の内部で3回以上の反射を発生させるという目的を達成することができる。更に、光学素子102は、平凸レンズではなく、両凸レンズとして、又は、球面又は非球面を有するメニスカスレンズとして形成されてもよいし、或いは、光学素子102の内部で3回以上の光反射を発生させることが可能な連続した滑らかなプロファイルを有する少なくとも1つの湾曲反射面を有する他の何らかの適切な形状で形成されてもよい。
更に詳細には、光学素子102は、光軸AXに関して対称であり、且つ、連続した滑らかな位相プロファイルを有する少なくとも1つの湾曲反射面を含む。換言すれば、光学素子102の像側面又は物体側面のうちの少なくとも一方は、光学素子の縁部から光軸を取り囲む中央領域まで連続する曲線を規定する回転面に基づく湾曲反射面を含む。図2Bに示すように、そのような反射面の母線Gxは、光軸から光学素子102の縁部まで続く連続的な湾曲線を含む。実現可能な湾曲面の形態の1つは、光軸AXの上に中心を有する非球面、球面又は円錐面を規定する間断のない線を回転させることによって定義される。製造を容易にするために、光学素子102の像側面102bが連続した滑らかな位相プロファイルを有する軸対称湾曲面であるとよい。
必要に応じて、物体側面102aも同様の形状で形成されてもよい。実際には、光学素子102の物体側面102a及び像側面102bは、湾曲し、且つ、連続した滑らかな位相プロファイルを有してもよく、その一例を図3Bに示す。但し、少なくとも特定の実施形態において、入射光束に対して適切な反射光路を規定するために、物体側面102aの曲率半径は、像側面102bの曲率半径とは異なっていなければならない。例えば、図1及び図2Bの実施形態に示すように、光学素子102の物体側面及び像側面のうちの一方は、連続した滑らかな位相プロファイルで湾曲し、他方の面は、ほぼ平坦な面又は平面であってもよい。
なお、光学素子102の面が湾曲しているかどうかにかかわらず、光学素子を何らかの周知の方法で製造できるように、光学素子102の面は、連続した滑らかなプロファイルを有するべきである。但し、入射光束が2つの面の内側で3回以上反射するように、光学素子102が2つの面の内側に光を閉じ込めるように構成されなければならないという条件は、依然として残っている。そのために、光学素子102に入射した光束は、光学素子102から射出する前に、一方の面で少なくとも2回反射され、他方の面で少なくとも1回反射されなければならない。
光学素子102の内部で3回以上の反射を実現するという条件を満たすために、図1に示すように、光軸AXに対して0よりも大きい所定の入射角で入射した光束は、一方側から光学素子102に入射し、他方側を通って射出する。また、光軸に対して所定の入射角で入射した光束は、同一側を通って光学素子102に入射し、射出してもよい。
図2A、図2B及び図2Cは、多重反射光学素子102を実現する例を異なる方向から見た図である。図2Aは、物体側から見た場合の光学素子102の物体側面102aの平面図を示す。一方、図2Cは、像側から見た場合の光学素子102の像側面102bの平面図を示す。図2Bは、光学素子102の横断面(側面)図を示す。詳細には、図2Bに示すように、物体側面102aは、ほぼ平坦な面として表され、像側面102bは、湾曲し、連続した滑らかな位相プロファイルを有する。湾曲面は、球面又は非球面のいずれであってもよく、光軸AXに関して回転対称であるのが好ましく、即ち、光学素子102は、軸対称の形状を有する固体レンズである。
図2Aに示すように、物体側面102aは、光軸AXの上に中心を有する円形の透過領域130(物体側透過領域)と、円形の透過領域130の周囲の回転対称ゾーンにおける反射領域120(物体側反射領域又は第2の反射面)とを含む。光軸AXの上に中心を有する円形の透過領域130は、光学的に透明な(透過)領域であり、光軸AXの上に配置され、且つ、(図1に示す)物体面OPに配置された物体Oで発生した光束を透過するように作用する。物体側面102aの反射領域120は、内側(内部)ミラーとして考えることができる構造を形成するために、反射率の高い材料の膜で被覆されるのが好ましい。反射領域120は、鏡面反射面として作用する領域における物体側面102aの一部領域である。円形の透過領域130は、光軸AXと同軸であり、反射被膜で被覆されていない領域である。また、所定の入射角で入射する特定の波長の光線の透過率を高くするために、透過領域130は、反射防止膜で被覆されていてもよい。これにより、円形の透過領域130は、光学素子102の入射面(又は入射瞳)として作用することができる。透過領域130は、適切な量の光を多重反射光学素子102に入射させる。
図2Cに示すように、光学素子102の像側面102bは、光軸AXの上に中心を有する中央透過領域170(像側透過領域)と、中央透過領域170の周囲の回転対称ゾーンにおける反射領域150(像側反射領域又は第1の反射面)とを含む。中央透過領域170は、所定の入射角で入射する全ての光を透過できるように、いかなる反射膜も形成されていない透明な面であるのが好ましい。反射領域150は、例えば、レンズの縁部と像側面102bの中央透過領域170との間の領域を反射率の高い材料で被覆することによって、或いは、何らかの周知の処理方法によって、鏡面反射面に形成される。更に詳細には、図2B及び図2Cに示すように、反射領域150は、像側面102bの中央透過領域170を除くほぼ全ての領域を含んでもよい。これにより、中央透過領域170は、射出面(Sout)又は射出瞳としても機能する。従って、中央透過領域170は、光学素子102を通過する光の量を調整する機能を有する。
反射領域150又は反射領域120を形成する鏡面反射膜は、例えば、アルミニウム及び銀などの金属膜又は種類の異なる反射材料から製造された多層膜から選択できる。反射膜の厚さは、例えば、数十ナノメートル(nm)から数百μmの間で選択される。更に詳細には、反射面を形成する反射膜の厚さ及び材料は、使用される光の波長に応じて選択されてもよい。光学素子102の材料は、例えば、クラウンガラス、鉛ガラス、異常分散ガラス、溶融シリカ、蛍石など、それらと同等の材料、及び、それらの組み合わせから選択できる。従って、多重反射光学素子102は、両凸レンズとして形成され、且つ、物体側及び像側に鏡面反射面を有する透明材料(例えば、ガラス)から製造された固体レンズであると考えられる。
以下、図3Aを参照して、光学素子102の内部における光束の伝播の一例を説明する。図3Aに示す光学素子102は、図2Bに示す光学素子と同一のプロファイルを有する光学素子を示すが、図3Aは、図2Bに示す反射面及び透過面の詳細を示していない。図3Aに示す例では、物体側面102aは、ほぼ平坦な面又は平面であり、像側面102bは、湾曲しているが、光学素子102の物体側面及び像側面の両方が連続した滑らかな位相プロファイルを有することに注意されたい。図3Bに示す例では、物体側面102aは、反対側の面に向かって凸面に湾曲し、像側面102bは、物体側に向かって凹面に湾曲している。但し、光学素子102の物体側面及び像側面の両方は、連続した滑らかな位相プロファイルを有する。図3A及び図3Bにおいて、光束の伝播は、ほぼ同じである。図3Aでは、物体側面102aは、ほぼ平坦な面又は平面として示されるが、実際には、光学素子102の内部で必要とされる3回以上の反射を実現するために、少なくとも光学素子102の反射領域に最小限の湾曲が必要である。従って、形状の説明において、特定の値を超える曲率半径を有する反射面は、ほぼ平坦な面又は平面であると考えるのが効果的である。しかしながら、光の反射に関しては、両方の面は、以下に更に詳細に説明される所定の条件によって判定される最小限の湾曲を少なくとも有する。
図3Aを参照するに、物体Oを透過した(又は物体Oから反射された)光は、入射開口又は(図2Bに示す)入射面Sinを通って光学素子102の物体側面102a(第1の面)に入射する。入射面Sinに入射した後、入射光束は、まず、像側面102bの反射面150(第1の反射面)に入射し、反射領域R1で1回目の反射を受ける。光束は、反射領域R1から物体側面102aに向かって進み、反射領域120(第2の反射面)の反射領域R2に入射する。反射領域R2において、光束は、2回目の反射を受け、像側面102bに向かって再び進む。そして、光束は、反射面150の反射領域R3に入射し、3回目の反射を受ける。3回目の反射を受けた後、光束は、物体側面102aに向かって再び進み、反射領域R4に入射する。反射領域R4において、光束は、4回目の反射を受け、像側面102bに向かって進む。物体側面102aの反射領域は、光を光軸AXに沿って焦点に向かって順次反射するように構成されているため、4回目の反射の後、光束は、(図2Bに示す)射出面Soutを通って進み、その後、第1の中間像面IMP1に集束される。
光束は、例えば、反射領域R1’、R2’、R3’及びR4’で順に反射を受けることによって、他の光路でも同様に伝播し、第1の中間像面IMP1に集束される。換言すれば、光束は、入射面Sinを通って光学素子102に入射し、往復しながら反射されるにつれて、光学素子の縁部に向かって発散するように周囲方向の外側へ徐々に導光される。反射面が湾曲しているため、光束は、光軸AXに向かって収束するように徐々に内側へ導光され、射出面Soutを通って射出される。反射面の形状、光学素子102の厚さ及び直径、光束の入射角、及び、光学素子の材料の屈折率などのパラメータに応じて、光束の往復反射は、所望の回数だけ繰り返される。
多重反射が徐々に生じるにつれて、光学素子102の一方又は両方の面の湾曲の形状及び半径は、(光軸に沿った)光束の焦点を決定する。当業者には理解されるだろうが、物体側面102aの湾曲及び焦点距離、及び、像側面102bの湾曲及び焦点距離に応じて、第1の中間像面IMP1は、(図3Aに示す)像側面102bの頂点に、或いは、(図3Bに示す)面の頂点の付近に高精度に位置決めされる。但し、オブスキュレーションが最小になる位置に、第1の中間像面IMP1を配置するのが有利である。
なお、各反射領域R1、R2、R3又はR4で生じる反射は、周知の光学的理論、例えば、スネルの法則によって支配される。スネルの反射の法則によれば、光線が鏡面反射鏡界面で反射された場合、反射光線は、入射平面内にとどまり、反射角θrは、入射角θiと等しくなる(即ち、θr=θi)。入射の場所は、入射光線及び入射点に対する垂線を含む。かかる状態において、光束が入射面Sinを通って入射し、像側面102bによって反射される場合、反射角θrは、主に、光束の入射角(マージナル光線角度)及び所定の点における曲率半径に依存する。従って、以下に説明する所定の条件に基づいて、所望の回数の反射に適応可能な反射面を数式化し、且つ、設計することは、当業者には可能である。
更に詳細には、光学素子102の内部で4回の反射を実現するために、物体側面及び像側面の構造形状によって、以下の2つの条件が同時に満たされる必要がある。
式中、R1は、像側面102bの反射領域の曲率半径であり、R2は、物体側面102aの反射領域の曲率半径であり、Tは、多重反射光学素子の軸方向の厚さである。更に詳細には、本明細書で使用される場合の軸方向の厚さTは、光軸AXに沿った像側面102bの反射面の母線と物体側面102aの反射面の母線との間の距離である。
反射が6回である場合、以下の条件が満たされる。
反射が8回である場合、以下の条件が満たされる。
軸方向の厚さと曲率半径との比T/R1及びT/R2は、所望の反射回数及び所望の焦点面が実現されるように、上述した所定の条件の上限と下限との間で繰り返し変動する。但し、T/R1及びT/R2のうちの少なくとも一方が下限を下回る場合、図2Bにおける射出面Soutの直径を拡大する必要がある。これにより、光学系におけるオブスキュレーションが増大するため、望ましくない。一方、T/R1及びT/R2のうちの少なくとも一方が上限より大きい場合、中間像IIM1の場所は、光学素子に更に近接しているか、或いは、光学素子の内側に入っている。これも、所望のレベルのオブスキュレーション補正又は収差補正を実現するのに不都合である。更に、多重反射光学素子の倍率が−1より大きくなるということは、中間像が物体空間の開口数と比較して大きいマージナル光線角度を有することを意味する。規定の限界を外れた数値を設定することも、像側面において決定されるオブスキュレーションに悪影響を及ぼす。また、提案した条件(1)〜(6)を外れた値は、収差の補正にも著しい困難を生じさせる。
背景技術で説明したように、従来のカタディオプトリック設計では、画質を劣化させずに、オブスキュレーションを特定のレベルを超えて低減することは不可能である。しかしながら、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、本明細書に開示される多重反射光学素子は、画質を劣化させることなく、オブスキュレーションを最小限に抑えるという目的を達成する。
更に詳細には、当業者には周知であるように、多重反射は、光学系の総焦点距離を非常に長くしながらも、光学系の全長を最小限に抑える。但し、従来のシステムでは、その結果、光学系では、大きなオブスキュレーション比を示し、且つ、収差が増大する設計となってしまう。しかしながら、本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、適正に構成された場合、反射屈折光学素子の適切な組み合わせによって、従来のレンズによって引き起こされていた正の色収差を相殺する負の色収差を実現することができる。同様に、本発明において、正のペッツヴァル湾曲は、負のペッツヴァル湾曲を相殺する。更に、本明細書で説明するように、屈折面と反射面との適切な組み合わせは、オブスキュレーション比を減少させ、且つ、光学系の位置合わせを容易にするという利点を有する。更に詳細には、多重反射素子102の内部の適切な回数の光束反射は、画質に影響を及ぼすことなく、オブスキュレーションの量を減少させるという利点を有する。
本明細書において使用される用語「相殺する」は、誤差、欠陥又は望ましくない効果を多少なりとも無効にするか、防止するか、なくすか、補償するか、埋め合わせるか、排除するための動作を示すために使用される。従って、本明細書及び特許請求の範囲において、第1の値が第2の値によってほぼ無効にされる場合、第1の値は、第2の値によって「相殺される」と考えることができる。
次に、図4A〜図4C及び図5A〜図5Cを参照して、反射屈折光学系10において、多重反射光学素子102を使用することの効果の詳細な解析を説明する。詳細には、上述したように、反射屈折群100の内部で光束を3回以上反射させることによって、光束は多数の屈折素子を透過しなくなるため、色収差が回避される。更に、多重反射光学素子の内部で(形状の異なる物体側面102aと像側面102bとの間で)生じる多重反射の結果、相対的に短い距離でフォーカシングを実現することができる。これにより、中間像面IMP1を光学素子自体の本体の内部、像側面の頂点又はオブスキュレーション及び収差を最小限に抑えられる所定の位置に厳密に配置することが可能になる。このようにして、オブスキュレーションを適切に制御することができる。
一般に、光学系において遮断される照明の割合を表すオブスキュレーション比は、次の式(7)によって定義される。
式中、θ1は、開口縁部で光学素子に入射する光線の最小角度であり(以下、θ1を「最小オブスキュレーション角度」と称する)、θmは、式(8)によって定義される開口数(NA)によって決定される入射光線の限界角度である。所望のオブスキュレーション比又は必要とされるオブスキュレーション比を実現するために、これらの2つの角度を操作することができる。
NAは、物体の詳細を解像するのに十分な光を集める機器の能力によって決定される。十分な光を集める能力に関して、顕微鏡のNAは、次の式(8)によって定義される。
式中、Noは、物体空間における媒体の屈折率であり、θmは、物体から発するマージナル光線と、そのマージナル光線が入射する面に対する垂線とが成す角度である(以下、θmを「マージナル角度」と称する)。特に、物体空間における開口数を大きくするために、第1の光学素子の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する浸漬液に物体を浸漬するのが好ましい。
最小オブスキュレーション角度及びマージナル角度を考慮すると、式(7)を簡略化すると、次の式(9)が得られる。
式中、kは、一般には、オブスキュレーション比の有効近似、或いは、単に、「オブスキュレーション比」と呼ばれる。
従って、式(7)〜(9)から、オブスキュレーションは、最短物体作動距離に直接影響を及ぼし、且つ、開口数に依存することがわかる。オブスキュレーション比が特定の閾値を超えると、像コントラストが著しく劣化し、光の強度が失われるため、最終的に得られる像の画質は低下する。例えば、物体の作動距離を変化させることでオブスキュレーションを減少しようとする試みは、いずれも、顕著な収差となって反映される。
背景技術で説明したように、従来の技術において、入射光束を内部で2回反射させる第1のレンズ素子を提供することで開口数を大きくしようとする種々の試みがなされてきた。この解決方法は、オブスキュレーション比を大きくするという欠点があるために最適ではない。
一方、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、光束を射出する前に4回、6回、8回又はそれを超える回数で反射させるように、多重反射光学素子102を具体的に設計することができる。非常に大きな開口数の光束は、入射面Sin(光軸の周囲)を通って多重反射光学素子102に入射し、まず、レンズの外側縁部に向かって、次いで、光軸に向かって半径方向に順次反射されるにつれて、光が自由空間及び屈折素子又は反射素子の幾つかの段階を通って進む間に散乱によって従来発生していた収差を光束が受けることなく、等価(有効)光路及び集束距離が増加する。
図4A、図4B及び図4Cは、それぞれ、光束が4回、6回、8回反射される、本発明者によって想定される多重反射光学素子の例示的な構成を示す。特に、光学素子102の像側面102bの凹面形状は外向きペッツヴァル湾曲を発生するが、多重反射が過剰な非点収差を防止する。
別の側面では、物体が多重反射光学素子から相対的に離れた場所にある場合、物体側面102aの開口によって決定されるオブスキュレーションを減少させることができる。しかしながら、反射回数を多くするためには、光学素子の光学的な厚さ及び直径を増加させなければならない。図4Dは、反射回数を増加することによって、光学素子102の中心の厚さを相対的に小さな増加に抑えて、オブスキュレーションを最小限にできることを示す。これは、反射回数が多くなるにつれて、像側面102bの形状は、物体側面102aから徐々に離間していかなければならないため、反射領域R1で反射された後の光束が物体側面102aのレンズの外側縁部へ進むことができるからである。これにより、物体Oからの光が更に広い幅でSinを透過できるように、入射面Sinの面積を拡大することができる。一方、4回、6回又は8回反射した場合の物体側の多重反射光学素子のオブスキュレーションは、反射領域R2ではなく、反射領域R4、R6又はR8の場所によって、それぞれ決定されてもよい。詳細には、反射4回の場合のR4の場所、反射6回の場合のR6の場所又は反射8回の場合のR8の場所は、物体側面102aにおいて、反射2回の場合のR2の場所よりも更に大きく光軸AXから離れることになる。従って、反射2回の素子の入射面Sinは、反射4回、6回又は8回の素子の入射面Sinよりも小さい。換言すれば、反射回数が多くなるほど、光学素子102の開口直径及び厚さは増加する。但し、大きなレンズを提供することによるコストは、光学系の光学素子の数を最小限に抑え、且つ、画質を改善することによってほぼ相殺される。
図4Dに示す値に関して、オブスキュレーションは、θinを68°で除算した値として定義された。また、図4Dにおいて、反射回数を多くすることによって、光学素子の中心の厚さの増加を小さく抑えながらオブスキュレーションを最小限にできることがわかる。特に、図4Dにおいて、反射が4回以上である場合、50〜80mmの厚さを有する光学素子によって、オブスキュレーションを30%以下に維持できることがわかる。
更に、図5Aのグラフに示すように、光学素子の中心の厚さに対する直径の線形依存性が観測される。図5Aにおいて、傾きは、反射回数(R)に依存する。従って、図5Aから、所定の回数の反射を実現するために、光学素子の中心の厚さ及び直径は、線形に増加すると推論できる。更に、図5Bに示すように、3回以上の反射を発生する多重反射光学素子が反射2回の光学素子よりも球面収差を減少させることができるのは明らかである。これは、反射回数が多くなることによって、収差補正の自由度が大きくなるからである。軸外収差では、コマ収差は、球面収差と同一の傾向を有すると考えられる。従って、コマ収差は、特定の量だけ増加すると考えられる。一方、反射回数が多くなるにつれて、反射ごとに発生する非点収差が小さくなり、中間像における収差は、全体としてほぼ無視できるほどになる。
画質に関しては、図5Bに示すように、軸上の物体の二乗平均(RMS)波面誤差は、反射2回の光学素子によって引き起こされる大きな収差を示す。しかしながら、本明細書において説明される実施形態のように、反射回数を3回以上に増すことによって、波面誤差に関して、収差は著しく低減される。軸外の物体に関しては、例えば、図5C及び図5Dに示すように、反射2回の光学素子は、軸上の物体の場合と同様の大きな収差を引き起こす。但し、反射回数が増加するにつれて、引き起こされる収差が減少する。軸上及び軸外の両方において、全ての反射回数に対して、光学素子の収差は、中心の厚さが増加するにつれて減少する。
発明者の実験観察によれば、反射回数の増加は、ペッツヴァル湾曲に影響を及ぼす。但し、これは、本明細書において開示される多重反射光学素子のマイナス面ではない。詳細には、多重反射によって光学素子の外向きペッツヴァル湾曲が増加すると、光学系の他の光学素子で引き起こされる内向きペッツヴァル湾曲によって、ペッツヴァル湾曲の増加を補正し、且つ、相殺することができる。
更に詳細には、以下に示す式(10)によって、所謂、ペッツヴァル和Pが定義される。式中、niは、i番目の光学素子の屈折率であり、fiは、i番目の光学素子の焦点距離である。ペッツヴァル曲率半径は、m個のレンズ素子の光学系によって形成される平面物体の像の近軸像面からのペッツヴァル面の高さYiの像点の変位Dxによって定義される。Dxは、式(11)によって定義される。
従って、図1に戻って説明すると、物体側面102aがほぼ平面であり、且つ、像側面102bが物体面に向かって凹面である多重反射光学素子102は、3回以上の反射によって、外向きペッツヴァル湾曲とともに、第1の中間像IIM1を形成する。これにより、光学系10の光捕捉能力を向上し、且つ、対物レンズの視野(FOV)を拡大することができる。なお、数値例1(表3参照)によれば、上述した式(10)及び(11)を使用することによって、図1に示す例示的な実施形態の反射屈折群100のペッツヴァル和は、+0.011であることがわかった。更に、光学素子102の像側面102bの凹面形状は、外向きペッツヴァル湾曲を発生させるが、多重反射が過剰な非点収差を防止する。
軸上色収差L(色収差の縦方向成分としても知られている)は、次の式(12)によって表される。
式中、hiは、近軸マージナル光線の高さであり、Viは、アッベ数であり、u’kは、画像平面における近軸光線角度である。
カタディオプトリック光学系群100で発生する軸上色収差は、光学素子102の内部で何度も反射された後に光束が像側面102bを通過する場合であっても、ごく微小である。更に詳細には、近軸マージナル光線の高さがほぼ0になるように、即ち、軸上色収差が少ないか、或いは、ほぼ無視できるほどになるように、光は、第1の中間像面IMP1で平行にされ、且つ、集束される。但し、光学素子102の像側面は特定の凹面に設計され、且つ、光が複数回往復反射されるため、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1を形成する非近軸光線は、この場合でも、ある程度の量の軸上収差を発生させる。従って、色収差を最小限に抑えるために、第1の中間像面IMP1を意図的に像側面102bの頂点に配置するか、或いは、図1に示すように、光学素子102の像側面の直前に配置するとよい。これにより、反射屈折群100は、軸上色収差及び外向きペッツヴァル湾曲をほぼ無視できる程度に抑えながら、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1を形成することができる。但し、反射屈折群100によって発生される外向きペッツヴァル湾曲は、光学系の他の光学素子によって容易に補正可能である。
また、詳細には、図1に示すように、第1のマンジャンミラー202及び第2のマンジャンミラー204を含む反射屈折群200は、特に、外向きペッツヴァル湾曲を発生するように構成される。同様に、第1のレンズユニット302、第2のレンズユニット304及び第3のレンズユニット306を含む視野レンズ群300は、補正過多の色収差を発生するように構成される。詳細には、第1の中間像面IMP1に到達した光は、第1のマンジャンミラー202の物体側面202aの透過領域を通過し、次いで、第2のマンジャンミラー204の反射面(像側面204b)で反射される。かかる反射光は、像側面202bを再び通って、第1のマンジャンミラー202に入射する。次に、光は、第1のマンジャンミラー202の反射面(第2のミラー)から第2のマンジャンミラー204の中央領域にある透過領域に向かって反射される。第2のマンジャンミラー204の透過領域を通過した光は、視野レンズ群300まで進む。視野レンズ群300のレンズ302、304及び306は、第2の中間像面IMP2に第2の中間像IIM2を形成するために、第2の中間像面IMP2に光を集束する。特に、マンジャンミラー202及び204の機能の1つは、カタディオプトリック光学系群100によって既に発生されていたペッツヴァル湾曲の外向き傾向を更に増大し、且つ、補正過多の色収差を発生することである。詳細には、第2のマンジャンミラー204は、物体面に対向する凹面形状を有し、物体側面204a及び像側面204bを含む。物体側面204aの凹面形状は、補正過多の軸上色収差を発生させ、像側面204bの凹面形状は、外向きペッツヴァル湾曲を発生させる。数値例1(表3参照)によれば、式(10)を使用することによって、本発明の実施形態において、反射屈折群200のペッツヴァル和は、+0.0023であることがわかり、視野レンズ群300のペッツヴァル和は、−0.012であることがわかった。このように、視野レンズ群300、特に、レンズ304は、補正過多の色収差及び内向きペッツヴァル湾曲を発生する。
複数の光学レンズ(図1には、10個のレンズが示されている)を含む屈折群400は、最終像面IPに最終像FIMを形成するために、第2の中間像IIM2を拡大するように構成される。視野レンズ群300のレンズは、特定の形状又は順序に限定されないが、視野レンズ群300は、全体として、第1の反射屈折群100及び第2の反射屈折群200によって発生された外向きペッツヴァル湾曲を補償し、且つ、補正するのに十分な内向きペッツヴァル湾曲を発生するのが好ましい。本明細書で説明される軸上色収差に関して、第1の反射屈折群100は、ほぼ無視できる程度の軸上色収差を発生し、第2の反射屈折群200は、僅かに補正過多の軸上色収差を発生する。一方、視野レンズ群300は、全体として、補正過多の軸上色収差を発生する。従って、屈折群400は、第2の反射屈折群200及び視野レンズ群300によって発生された補正過多の軸上色収差を補償し、且つ、補正するのに十分な補正不足の軸上色収差を発生するのが好ましい。表3に示す数値(数値例1に対応する)に基づいて、数式(9)を使用することによって発明者が実行したシミュレーションでは、屈折群400のペッツヴァル和は、0.001であることがわかった。従って、視野レンズ群300の内向き(正の)ペッツヴァル湾曲は、反射屈折群100の外向き(負の)ペッツヴァル湾曲、第2の反射屈折群200の外向きペッツヴァル湾曲及び屈折群400の外向きペッツヴァル湾曲を効果的に補正することが当業者には理解される。
このように、図1の光学系10において、第1の反射屈折群100は、外向きペッツヴァル湾曲を発生し、且つ、軸上色収差を無視できる程度まで最小限に抑えるように構成された多重反射光学素子102によって実現される。反射屈折群200は、外向きペッツヴァル湾曲及び補正過多の軸上色収差を発生するように構成され、視野レンズ群300は、補正過多の軸上色収差及び内向きペッツヴァル湾曲を発生するように構成され、屈折群400は、外向きペッツヴァル湾曲及び補正不足の軸上色収差を発生するように構成される。各光学系群は、収差の抑制に関して厳密な制限を課されることなく、個別に独立して設計可能であるが、一体に組み合わされた場合、多重反射光学素子と軸方向に位置合わせされた光学系群は、全体として、例外的に大きなFOVを有し、且つ、収差が殆どない最適化された最終像を得るために、収差を補正するように設計される。更に詳細には、反射屈折群100及び反射屈折群200の意図的に発生された外向きペッツヴァル湾曲は、視野レンズ群300の内向きペッツヴァル湾曲によって補償され、且つ、補正される。同様に、反射屈折群200及び視野レンズ群300によって発生される補正過多の軸上色収差は、屈折群400の補正不足の軸上色収差によって計画的に補償され、且つ、補正される。撮像光学系10に含まれる各光学群と、ペッツヴァル湾曲及び軸上色収差との関係を以下の表1に示す。
次に、図6を参照して、反射屈折光学系20を説明する。図6は、本発明の第2の例示的な実施形態に係る反射屈折光学系20の主要な構成要素を示す。図6において、図1に示す素子と同一の素子については、同一の符号で示す。第2の例示的な実施形態では、反射屈折群100の構成は、第1の例示的な実施形態における構成とほぼ同様である。従って、無用な重複を避けるために、反射屈折群100の説明を省略する。なお、図1の反射屈折光学系10は、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1を形成し、且つ、第2の中間像面IMP2に第2の中間像IIM2を形成するが、図6の反射屈折光学系20は、中間像面IMP1に1つの中間像IIM1を形成するだけである。
特に、第2の実施形態に係る反射屈折光学系20は、顕微鏡対物レンズ系の一例を表す。図6に示す反射屈折光学系において、反射屈折群100(第1の反射屈折群)、反射屈折群500(第2の反射屈折群)及びレンズ群600(レンズ群)は、物体面OPと像面IPとの間に、互いに軸方向に、この順序で配置されている。上述したように、本実施形態(図6)の反射屈折群100の構成は、第1の例示的な実施形態(図1)における構成とほぼ同様である。反射屈折群500は、第1のミラー504及び第2のミラー502を含んで、非球面から形成された反射屈折シェルを含む。レンズ群600は、複数のレンズ602、604、606、608、610、612、614、616、618、620及び622(11個のレンズ)を含む。図6に示すように、反射屈折群100は、第1の例示的な実施形態で説明したのと同一の構造を有し、且つ、同様に機能する多重反射光学素子102を含む。反射屈折群(シェル素子)500は、第1のミラー504及び第2のミラー502を含む。これらの2つのミラーは、先の実施形態で説明した反射屈折群200とほぼ同様の構造及び機能を有する。更に、レンズ群600は、第1の実施形態で説明した視野レンズ群300と屈折群400との組み合わせに類似している。
動作中、反射屈折群100は、物体シーン(物体面OPに配置された物体O)からの光束を集光し、光学系群の反射面の内側で光束を3回以上反射させ、第1の中間像(IIM1)を形成するために、集光された光を中間像面(IMP1)に集束する。反射屈折群500は、中間像面IMP1からの光束を集光し、且つ、その光束を第1のミラー504と第2のミラー502との間で少なくとも2回反射させる。レンズ群600は、反射屈折群500から射出する光束を受け、最終像(FIM)を形成するために、光束を像面(IP)に集束する。特に、レンズ群600は、中間像IIM1を拡大し、且つ、像面IPに最終像(FIM)を形成する。
数値例によれば、図6によって示される顕微鏡対物レンズは、20Xの倍率及び1.65のNAを有し、可視スペクトル帯(約400〜700nm)で機能する。物体作動距離は、0.25mm以上である。オブスキュレーションは、30%以下でなければならず、視野の大きさは、±0.875mmとすべきである。これらの目標条件に基づいて、上述した条件式(1)〜(2)を使用して、光学系20の反射屈折群100のパラメータを最適化することができ、数式(7)〜(12)の概念に基づいて、反射屈折群500及びレンズ群600を最適化することができる。また、反射屈折群500を多重反射光学素子102に更に厳密に整合させるために、反射屈折群500は、最終像FIMを形成するための入力として、(光学素子102によって形成される)中間像IIM1を使用する別の光学系として設計されてもよい。
図7は、反射屈折群500の実現可能な1つの構成を示す。図7に示すように、反射屈折群500に入射した光束は、第2のミラー502の中央領域(入射瞳又は入射開口)を通過し、第1のミラー504の射出瞳の縁部に入射する。その後、光束は、第1のミラー504と第2のミラー502との間で2回の反射を受け、第1のミラー504の中央領域(射出瞳)を通って、反射屈折群500から射出する。図6の反射屈折光学系20では、ミラー504及び502によって引き起こされる収差は、レンズ群600によって抑制される。
図7の反射屈折光学系の構成では、目標近軸倍率M0、オブスキュレーションk0及び全長L0が与えられれば、ミラー504の曲率半径R1及びミラー502の曲率半径R2は、以下のように、2つのミラーの軸方向の距離(t2及びt2)の関数として数式化できる。
φ1は、第1のミラー504のパワーであり、
L0は、第1のミラー504及び第2のミラー502によって形成される反射屈折群の目標全長である。なお、全長は、物体から像までの距離である。
t0は、物体面から第2のミラー502の頂点までの距離である。なお、第2のミラー502の物体面は、光学系全体の物体面OPと同一ではない。従って、「物体面」は、ミラー自体の物体面を表す。
t1は、第1のミラー504と第2のミラー502との間の距離である。
t2は、第2のミラー504の頂点から像面までの距離である。なお、「像面」は、ミラー自体の像面を表す。
k0は、次の式(16)によって定義される目標オブスキュレーション比である。
式中、θmは、第2のミラー502の開口(入射瞳)の縁部を通過するマージナル光線の角度であり、θapは、開口(射出瞳)縁部で第1のミラー504に入射する光線の角度である。なお、値R1及びR2の初期推定値を得るために、上述した式を使用できる。しかしながら、更に正確な値を計算するために、koを変更するためにオブスキュレーション値(又は目標オブスキュレーション値)の誤差が使用され、新たなR1及びR2値が繰り返し計算される。数回の繰り返しの後、実際のオブスキュレーションは、所望のオブスキュレーションに収束し(所望のオブスキュレーションと一致し)、R1及びR2の正確な値に到達する。
本発明者は、光学素子の数が多すぎるため、従来の反射屈折光学系の組み立ては難しく、一般に、オブスキュレーション比が大きくなることを見出した。しかしながら、本明細書で開示するような多重反射光学素子102を有する反射屈折光学系を構成するために、上述した構成及び数学的な原理を適用する場合、画質を劣化させずに、オブスキュレーションを大幅に低減することができる。更に、従来の設計よりも15%までの範囲で短い反射屈折光学系を設計することができる。また、白色光に対する波面収差も十分に抑制することができる。
図8A、図8B及び図8Cは、本発明の第2の例示的な実施形態(図6)に係る、例示的な反射屈折光学系の光路差を示すグラフである。詳細には、それらのグラフは、視野の中心から、それぞれ0mm(図8A)、0.5mm(図8B)及び0.875mm(図8C)における光路差(OPD)の誤差を示す。図8A〜図8Cの各グラフの最大スケールは、±0.200wavesである。一点鎖線−・−・−は、486nmの波長におけるOPD誤差を表し、破線− − −は、588nmの波長におけるOPD誤差を表し、実線―――は、656nmの波長におけるOPD誤差を表す。Pxは、x方向における正規化入射瞳座標であり、Pyは、y方向における正規化入射瞳座標であり、Wは、瞳座標の関数としての光路差である。
図9Aは、本発明の第1の実施形態(図1)に係る反射屈折光学系10の視野に沿ったRMS波面誤差を示す。図9Bは、本発明の第2の実施形態(図6)に係る例示的な反射屈折光学系の視野に沿った多色RMS波面誤差を示すグラフである。
次に、図10を参照して、第3の例示的な実施形態に係る反射屈折光学系30の主要な構成要素を説明する。図10において、図1に示す素子と同一の構造及び機能を有する素子は、同一の符号で示す。第3の例示的な実施形態において、反射屈折群100の構成は、第1の例示的な実施形態(図1)に示す構成及び機能とほぼ同様である。従って、無用な重複を避けるため、既に説明した素子の説明を省略する。なお、図1の反射屈折光学系10は、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1を形成し、且つ、第2の中間像面IMP2に第2の中間像IIM2を形成するが、本実施形態(図10)の反射屈折光学系30は、中間像面IMP1に1つの中間像IIM1を形成するだけである。
図10に示す反射屈折光学系は、物体面OPと像面IPとの間に、互いに軸方向に順に配置された反射屈折群100(第1の反射屈折群)、反射屈折群700(第2の反射屈折群)、反射屈折群800(第3の反射屈折群)及び視野レンズ群900(レンズ群)を含む。第1の実施形態と同様に、第1の反射屈折群100は、多重反射光学素子102を含む。多重反射光学素子102は、物体側及び像側に予め規定された反射領域及び透過領域を有する1つの固体レンズから構成される。第2の反射屈折群700は、湾曲した物体側面702a及び平坦な像側面702bを有する固体レンズ702を含む。固体レンズ702の湾曲した物体側面702aは、中央の透明領域と、透明領域を取り囲む反射領域とを含む。平坦な像側面702bは、中央の非透過領域と、リング状反射領域と、外側の透明領域とを含む。
第3の反射屈折群800は、物体面から像面に向かって順に、互いに軸方向に配置された小型レンズ810と、大型レンズ820とを含む。小型レンズ810は、反射物体側面810a及び透明な像側面810bを有するメニスカスレンズである。大型レンズ820は、ほぼ平坦な透過物体側面820aと、凹面の反射像側面820bとを含む。レンズ群900は、複数のレンズ902、904、906及び908(本例では、4個のレンズ)を含む。
本実施形態において、図11は、固体レンズ702の側面図(図面の中央)、物体側面702aの平面図(図面の左側)及び像側面702bの平面図(図面の右側)を示す。物体側面702aは、光軸AXの上に中心を有する円形の透過領域730(物体側透過領域)と、円形の透過領域730(斜線で示される領域)を取り囲む回転対称ゾーンにおける反射領域720(白色の領域)とを含む。少なくとも反射領域720は、像側に向かって凹面の(像側面702bに向かって凹面の)湾曲形状を有する。反射領域720は、凹面ミラーと考えられる構造を形成するために、反射率の高い被膜(膜)で被覆されているのが好ましい。そのために、物体側面702aの反射領域720は、球面又は非球面として実現されてもよい。但し、球面収差を最小限に抑えるためには、非球面が好ましい。反射領域720は、物体側面702aの外側領域内で固体レンズ702の領域であり、反射被膜で被覆された球面又は非球面であってもよい。円形の透過領域730は、光軸AXと同心であり、且つ、反射被膜又は反射膜で被覆されない領域である。しかしながら、物体Oから像側面702bに向かう光線の透過率を増加するように、円形の透過領域730は、任意に反射防止被膜(膜)で被覆されてもよい。
平坦な像側面702bは、中央の非透過領域770(光遮断領域又は光オブスキュレーション領域とも呼ばれる)と、非透過領域770を取り囲む回転対称のゾーンにおける光反射領域750(リング状反射領域)と、像側面702bの外側領域(白色の領域)のリング状の光反射領域750の周囲に回転対称の領域における透明領域710とを含む。透明領域710は、全反射(TIR)領域及び透過領域の2つの作用を有する。中央の非透過領域770は、光遮断(光減衰)材料で被覆されてもよい。従って、非透過領域770は、固体レンズ702の像側面702bのオブスキュレーション領域又は「オブスキュレーションされた」領域を形成する。透明領域710に対して所定の入射角で入射する光を容易に透過するように、透明領域710は、被膜又は膜を有していないのが好ましい。光反射領域750は、物体側面702aの反射領域720と同様の反射率の高い材料の被膜で被覆されるのが好ましい。
更に詳細には、図11に示すように、光反射領域750は、像側面702bの中央の非透過領域770の周囲の回転対称のゾーンに配置され、且つ、透明領域710に取り囲まれた領域に配置される。リング状の光反射領域750は、像側面702bの反射領域をTIR領域を越えて拡張する機能を有する。以下で更に詳細に説明するように、リング状の光反射領域750の面積は、必要とされるオブスキュレーション比の条件を満たすために必要な臨界角θc及び最小角度θ1と関連し、且つ、それらの角度によって決定される。
図11の固体レンズ702の側面図を再び参照するに、多重反射光学素子102を通過した光線は、第1の中間像(IIM1)を形成するために、中間像面(IMP1)に集束される。光束は、IMP1から物体側面702aの円形の透過領域730を通過し、像側面702bに向かって進む。当業者には理解されるように、像側面702bと像側面702bを取り囲む媒体との境界面において、スネルの法則などの基本的な光学的な原理に応じて、光束の一部が屈折し、且つ、透過してもよく、光束の一部が反射されて戻ってもよい。従来の技術によれば、臨界角θcよりも小さい入射角で像側面702bに入射した光線は反射されず、像側面702bを通って屈折(透過)される。これらの屈折光線は、オブスキュレーションを悪化させることで像コントラストを劣化させるか、或いは、光の強度の損失を招き、その結果、光学素子の結像能力を低下させる。一方、本実施形態によれば、臨界角θcよりも小さいが、必要とされるオブスキュレーション比の条件を満たすために必要な最小角度θ1よりも大きい入射角で像側面702bに入射した光線は、光反射領域750によって像側面702bから反射される。以下では、θ1を「最小オブスキュレーション角度」と称する。臨界角θcよりも小さいが、最小オブスキュレーション角度θ1よりも大きい入射角で像側面702bに入射した光線は、像の形成に寄与する。その結果、像コントラストが改善され、且つ、最適な光の強度が実現されるため、光学的な収差が殆どない高画質の像を得ることができるという利点がある。
次に、図12A及び図12Bを参照して、本実施形態に係る反射屈折群700の固体レンズ702の例示的な動作を詳細に説明する。図12Aは、固体レンズ702の側面図を例示的な光線の軌跡とともに示し、図12Bは、固体レンズ702の像側面702bと像側面702bを取り囲む媒体(空気)との間の平坦な境界面(境界平面)で反射される光線の光路を示す。更に詳細には、図12Aに示すように、図示の便宜上、光反射領域750は、像側面702bの上に重ねて配置された反射膜として示される。同様に、非透過領域770は、像側面702bの上に重ねて配置された非透過性(光減衰)被膜又は膜として示される。図12Bに示すように、光反射領域750は、臨界角θc以下であり、且つ、最小オブスキュレーション角度θ1以上である入射角で入射した光束を(鏡面反射によって)全反射するように構成される。
光反射領域750(像側面の反射領域)は、像側面702bの対応する部分を反射率の高い膜で被覆することによって形成されてもよい。また、光反射領域750は、像側面702bの対応する部分にリング状のミラーを追加(例えば、装着又は接合)することによって形成されてもよい。当業者であれば、過度な実験作業を実施することなく、光反射領域750を実現する他の同等の方法を認識できる。従って、本発明の実施形態は、リング状の光反射領域750を形成する特定の方法を限定するものではない。上述した入射角で入射する光束の光線をリング状の反射領域が鏡面反射するのであれば、どのような方法又は構造によって形成されたリング状の反射領域でも使用可能である。
図12Bは、光反射領域750から鏡面反射される光線L1、L2及びL3と、全反射(TIR)によって透明領域710から反射される光線L4の軌跡を特定して示す。図12Bを参照するに、光線L4は、像側面702bの透明領域710に臨界角θcよりも大きい入射角で入射することがわかる。透明領域710に入射すると、入射光線L4は、TIRを受け、光線L4’として反射される。このように、臨界角θcよりも大きく、且つ、マージナル角度θm以下の入射角θiで透明領域710に入射した光束の光線L4は、TIRによって反射される。
一方、入射角θi(θiは、臨界角θc以下であり、且つ、最小オブスキュレーション角度θ1以上である)を有する光線L1、L2及びL3は、像側面702bのリング状の光反射領域750に入射し、光反射領域750から物体側面702aの反射領域720に向かって光線L1’、L2’及びL3’として鏡面反射される。光線L1’、L2’及びL3’は、物体側面702aの反射領域720から、像側面702bの透明領域710に向かって反射される。この際、光線L1’、L2’及びL3’が透明領域710に入射するときの入射角は、臨界角θcよりも小さいため、光は、透明領域710を透過する。これにより、本実施形態では、従来の技術とは異なり、臨界角θcよりも小さい入射角を有する光線は、像側面702bから反射され、固体レンズ702によって集光される光の強度を最適化することで像コントラストを向上するために使用される。更に、中央の非透過領域770は、画質に悪影響を及ぼす傾向がある、固体レンズ702の光軸AXにほぼ沿って進む光線L0を遮断する。
本実施形態に係る反射屈折光学系30では、物体側面702aの曲率半径をr1とし、且つ、固体レンズ702の光軸AXに沿った物体側面702aと像側面702bとの間の距離をd1とすると、以下の式(17)が満たされるという利点がある。式(17)は、図12A及び図12Bに示す像側面702bの境界面における光線群I及び光線群IIの光線の反射の軌跡に基づいている。式(17)の数学的な原理の詳細は、本発明の範囲外である。しかしながら、そのような数学的な原理の詳細は、本明細書に参考として開示内容が取り入れられている2012年6月8日に出願され、且つ、譲受人をキャノン株式会社(本出願の共同譲受人)とする米国特許出願第13/492167号公報に示されている。
図12A及び図12Bを更に参照するに、中間像面IMP1からの光線は、3つの光線群に分類される。第1の光線群(光線群I)は、マージナル角度θmと臨界角θcとの間の入射角を有し、第2の光線群(光線群II)は、臨界角θcと必要とされるオブスキュレーション比を実現するために必要な最小角度θ1との間の入射角を有し、第3の光線群(光線群III)は、θ1と0との間の入射角を有する。
マージナル角度θmと臨界角θcとの間の入射角θiを有する光線である光線群Iの光路は、中間像面IMP1の中間像IIM1から始まり、固体レンズ702の像側面702bの透明領域710を通って射出する。詳細には、IMP1からの光線群Iの光線L4は、物体側面702aの透過領域730を通過し、像側面702bの透明領域710に入射した後に全反射される。反射光線L4’は、物体側面702aに戻る方向に反射され、物体側面702aの反射領域720によって像側面702bに向かって反射される。固体レンズ702の内部で少なくとも2回反射された後、光線群Iの光線L4’は、像側面702bの透明領域710で屈折され、その後、固体レンズ702の外側へ射出され、第3の反射屈折群800へ進む。換言すれば、マージナル角度θmと臨界角θcとの間の入射角θiを有する光線は、固体レンズ702の内部で多重反射を受け、固体レンズ702から光軸AXとほぼ平行に射出する。
θcとθ1との間の入射角を有する光線L1〜L3である光線群IIの光路もIMP1から始まり、固体レンズ702の像側面702bの透明領域710を通って射出する。詳細には、中間像面(IMP1)からの光線群IIの光線L1〜L3は、物体側面702aの透過領域730を通過し、像側面702bのリング状の光反射領域750で鏡面反射される。光線L1’〜L3’として鏡面反射された後、光線L1’〜L3’は、物体側面702aの反射領域720で反射される。光線L1’〜L3’は、反射領域720から像側面702bに向かって進み、透明領域710によって屈折された後、固体レンズ702の外側へ射出し、第3の反射屈折群800に向かって進む。従って、θcとθ1との間の入射角θiを有する光線も固体レンズ702の内部で多重反射を受け、固体レンズ702から光軸AXとほぼ平行に射出する。
θ1と0との間の入射角を有する光線L0である光線群IIIの光路もIMP1から始まるが、この光路は、固体レンズ702の像側面702bを通って射出しない。その代わりに、光線群IIIの光線L0は、像側面702bの円形の非透過領域730によって遮断される。
図13は、第3の反射屈折群800の概念的な構造及び機能を更に詳細に示す。上述したように、反射屈折群800は、小型レンズ810及び大型レンズ820を含む。また、小型レンズ810は、物体側面810a及び像側面810bを含む。物体側面810aは、像平面に向かって光を鏡面反射するように構成された凸面の反射面であるのが好ましい。大型レンズ820は、ほぼ平坦な物体側面820a及び湾曲した像側面820bを含む。湾曲した像側面820bは、凹面の鏡面反射ミラーであり、平坦な物体側面820aは、好ましくは、反射膜又は反射被膜を含まない透明な面である。従って、第3の反射屈折群800において、湾曲した像側面820bは、第1の反射面として効果的に機能し、物体側面810aは、第2の反射面として機能する。本実施形態では、小型レンズ810は、大型レンズ820に装着された接合レンズとして実現されてもよい。物体側反射面810a及び像側反射面820bの曲率半径、及び、それらの間の距離に関する反射屈折パラメータは、シュヴァルツシルト対物レンズ系と比例的に同等であってもよい。シュヴァルツシルト光学系では、2つの球面ミラーが互いに同心であり、且つ、光学系の焦点距離の2倍の距離だけ互いに離間して配置されている場合、2つのミラーの湾曲の共通中心に開口絞りが配置されると、第3次球面収差、コマ収差及び比点収差がほぼ排除される。
図10に戻って説明すると、(図12Aに示される)光線群I及びIIの光線は、固体レンズ702の像側面702bを透過し、最小限の色収差で第3の反射屈折群800に向かって進む。詳細には、物体側面702aの反射領域720で反射され、像側面702bの透明領域710で屈折された後、光線群I及びIIの光線は、物体側面820aを通って、大型レンズ820に入射する。固体レンズ702を通過した光が大型レンズ820の物体側面820aに入射すると、像側面702bの形状及び物体側面820aの形状が同一であるという効果によって、単色収差は、ほぼ抑制される。換言すれば、像側面702b及び物体側面820aの両方は、平坦であり、且つ、互いにほぼ平行であるが、それらの間には、僅かな間隙を有する。それらの2つの面の間隙は、数百μm程度であるが、光線群Iの光線が全反射する上で有効である(図12A及び図12B参照)。但し、収差という観点からは、2つの面の高さの差は、いずれも無視できると考えてもよい。光線群I及びIIの光線は、大型レンズ820の物体側面820aを透過した後、図10に示すように、像側反射面820b(凹面ミラー)によって集光され、その後、小型レンズ810の物体側面810a(凸面ミラー)によって反射される。光は、大型レンズ820の像側面820bの中央の透過領域を通って第3の反射屈折群800から射出する。そして、レンズ群900によって、像面IPに最終像が形成される。
小型レンズ810の第1の機能は、軸上色収差を補正することである。以下の表2から理解できるように、反射屈折群700(固体レンズ702)によって、更に詳細には、像側面702bによって、著しい量の軸上色収差(26.47)が発生する。しかしながら、この色収差は、大型レンズ820の物体側面820aによって、ほぼ完全に相殺することができる。換言すれば、物体側面820aは、固体レンズ702によって発生する収差と同量であるが、符号が逆の収差、即ち、−26.47の収差をもたらす。このため、物体側面820aに至るまでの軸上色収差は、収差に関しては、全く問題にならない。但し、像側面820bの透明領域を光が通過する際に、軸上色収差(−0.36)が発生する。レンズ群900は、像側面820bの透明領域で発生する量の色収差と、レンズ群自体の内部で発生する他方の収差とを同時に補正することができない。この問題を解決するために、小型レンズ810が湾曲ミラーとして作用するように、大型レンズ820の物体側に配置される。なぜなら、小型レンズ810の位置が他の収差ではなく、主に、軸上色収差に影響を及ぼすからである。その結果、小型レンズ810が0.2の軸上色収差を発生し、且つ、810から820bまでの軸上色収差の和が−0.16になる。そこで、−0.16はレンズ群900に相当する量であり、他方の収差はレンズ群900の内部で相殺される。小型レンズ810を使用しない実験的な設計では、レンズ群900だけでは補正することができない大きな軸上色収差が発生した。
従って、動作中、第1の反射屈折群100の多重反射光学素子102は、図1を参照して説明したのと同様に、物体シーン(物体面OPに配置された物体O)からの光を集光し、中間像面IMP1に中間像IIM1を形成する。中間像面IMP1からの光は、第2の反射屈折群700を通過し、最小限の色収差で第3の反射屈折群800へ進む。第3の反射屈折群800からの光は、拡大され、最終像(FIM)を形成するために像面(IP)に集束される。
図10の実施形態の各光学群の機能をペッツヴァル湾曲の補正及びTIRに関連して説明する。物体空間が浸漬液に浸漬されている場合、第1の反射屈折群100によって、1よりも大きいNAを実現できる。光学素子102が浸漬液の屈折率とほぼ一致する屈折率を有する場合、大きな入射角で光が光学素子102に入射しても、TIRは起こらない。更に、光学素子102の内部で光が4回以上反射されるように、光学素子102の面を設計できるため、色収差は、最小限に抑えられる。連続した滑らかな位相プロファイルを有する軸対称の湾曲面(穏やかな湾曲面)によって多重反射が発生されるため、像側面102bの凹面形状は、大きな非点収差を発生することなく、外向きペッツヴァル湾曲を発生する。反射屈折群700によって、物体側面702aの湾曲反射領域720は、意図的に、外向きペッツヴァル湾曲を発生する。マージナル角度θmよりも小さく、且つ、臨界角θcよりも大きい角度θiで平坦な像側面702bの透明領域710に入射した光線は、全反射を受けることによって、画質を劣化させることなく、オブスキュレーションの程度を最小限に抑えることができるという利点が得られる。第3の群は、全体として、内向きペッツヴァル湾曲を発生し、これが第1の群及び第2の群の外向きペッツヴァル湾曲を補償する。第4の群は、外向きペッツヴァル湾曲を発生する。
図14は、第1の光学素子102から構成される第1の反射屈折群100と、第2の固体レンズ702から構成される第2の反射屈折群700と、一体に接合された小型レンズ810及び大型レンズ820から構成される第3の反射屈折群800と、4つのレンズを含む視野レンズ群900とを有する、図10に示す実施形態に係る反射屈折光学系30の視野に沿ったRMS波面誤差を示すグラフである。特に、本実施形態(図10)の構成によって、光学素子の数が少ない(図1又は図6と比較して)小型の光学系を実現できる。それにもかかわらず、図14における視野及び波面収差は、図9Aに示す視野及び波面誤差とほぼ同様である。これは、反射屈折群800及びレンズ群900に光束を導入するために多重反射光学素子102を固体レンズ702と組み合わせることによって、大きな視野及び小さなオブスキュレーション比を実現し、且つ、維持しながら、収差を最小限に抑えるとともに、小型の反射屈折光学系を組み立てるために必要な光学素子の数を減少することができるという利点が得られることを示す。
構造及び機能に関しては、高い精度を必要とすることなく、製造を容易にするために、連続した滑らかな位相プロファイルを有する少なくとも1つの湾曲面を備えた多重反射光学素子を製造することができるということになる。また、色収差、球面収差及びオブスキュレーションを効率よく制御し、且つ、最小限に抑えるために、多様な光学的な構成(例えば、図1、図6又は図10)を採用することができる。
図15は、本発明の例示的な実施形態に係る反射屈折群CAT100及び光学系1008を使用する反射屈折光学系を備えた撮像装置1000を示す。反射屈折群CAT100は、物体シーン(物体面OPに配置された物体O)からの光束を集光し、中間像面IIMPに物体の中間像IMを形成する。反射屈折群CAT100は、連続した滑らかな表面形状プロファイルを有する少なくとも1つの湾曲面を含む1つの固体レンズから構成される。反射屈折群CAT100は、光束が中間像を形成する前に、表面の内側で光束を3回以上反射させるという利点を有する。光学系1008は、中間像IMを拡大し、且つ、像面IPに投影するように、中間像IMが形成される位置に配置される。光学系1008を実現するために、上述した反射屈折光学系10(図1)、反射屈折光学系20(図6)又は反射屈折光学系30(図10)のうちのいずれか1つを使用することができる。
このように、反射屈折光学系は、像面IPに中間像IMを形成し、像面IPには、イメージセンサ1010が配置される。撮像装置1000は、光源ユニット1002と、光源ユニット1002からの光束によって物体Oを照明する照明光学系1004とを更に含む。物体ステージ1006は、物体面OPにおいて、物体Oを保持する。物体ステージは、物体Oを照明する光束の量を調整する瞳として機能してもよい。撮像装置1000において、イメージセンサ1010は、画像処理システム1012に画像信号(データ)を供給するために、反射屈折光学系によって集束された物体像を光電気的に変換する。画像処理システム1012は、イメージセンサ1010のデータから画像情報を生成する。ディスプレイ及び入出力(I/O)ユニット1014は、画像処理システム1012によって生成された画像を表示し、且つ、操作するように機能する。
<数値例>
以下の数値例1及び2に対応するデータは、それぞれ、図1に示す反射屈折光学系10及び図6に示す反射屈折光学系20を表す。ここで、数値例においては、参照符号「i」(i=1,2,3・・・)は、物体面OPから像面IPに至るまでの光学系の面の順序を示す。これを前提として、「半径」データRiは、(i番目の平面における)i番目の曲率半径に対応し、厚さTiは、i番目の面と(i+1)番目の面との間の軸上距離(又は空間)を示し、参照符号ndi及びVdiは、それぞれ、フラウンホファーd線に関するi番目の光学素子の材料の屈折率及びアッベ数を示す。ndi及びVdiに関してデータを含まない面番号は、その面番号が空気の空間であることを示す。半径R=1.00E+18(1E+Xは、1×10+Xと同等である)は、ほぼ無限の半径、即ち、平坦な面を示す。更に、各数値例において、物体Oは、第1の光学面の物体側及び物体面OPに配置され、且つ、光軸AXとほぼ位置合わせされている、即ち、物体Oは、光学系と軸方向に位置合わせされていると想定する。物体空間は、ほぼテレセントリックであると考えることができるように、開口絞りSTOは、物体Oから相対的に大きく離間した場所に配置されていると想定する。詳細には、物体空間テレセントリック光学系(即ち、効果的に無限遠にある射出瞳を有する光学系)を形成するために、開口絞りSTOは、光学系の前焦点に配置されていると考えられる。この点に関して、物体面OPから少なくとも100,000mmの距離をおいて射出瞳が配置される場合、その射出瞳は、効果的に無限遠にあるものとする。数値例において、物体Oは、多重反射光学素子の屈折率と一致する屈折率を有する液体に浸漬されていると考えられる。非球面が存在する場合、その非球面は、面番号の隣に星印(「*」)を付すことによって示される。
各非球面において、円錐定数は、kで示され(kは、円錐面を表す数であり、球面の場合は0であり、放物面の場合は−1であり、回転円錐面を表す場合は他の数値である)、非球面係数は、それぞれ、4次、6次、8次、10次、12次、14次及び16次の係数であるA、B、C、D、E、F、G、J・・・で示され、光軸からの高さhの位置における光軸の方向への変位は、面の頂点に対してzで示される。非球面における変位は、以下の式(18)に基づいている。数値例1の場合の非球面係数を表4に示す。
数値例1:数値例1に対応するデータは、図1に示すように、物体側から像側へ順に、互いに軸方向に配置された第1の反射屈折群、第2の反射屈折群、視野レンズ群及び屈折群を備える反射屈折光学系を表す。数値例1の反射屈折光学系では、第1の反射屈折群は、物体面に配置された物体の第1の中間像を第1の中間像面に形成する。第2の反射屈折群及び視野レンズ群は、第1の中間像に基づいて、第2の中間像面に第2の中間像を形成する。屈折群は、第2の中間像を拡大し、且つ、第2の中間像に基づいて、像面に物体の最終像を形成する。
数値例2:数値例2に対応するデータは、図6に示すように、物体側から像側へ順に、互いに軸方向に配置された第1の反射屈折群、第2の反射屈折群及び視野レンズ群を備える反射屈折光学系を表す。第1の反射屈折群は、物体面に配置された物体の第1の中間像を第1の中間像面に形成する。第2の反射屈折群及び視野レンズ群は、第1の中間像に基づいて、像面に物体の最終像を形成する。
数値例3:数値例3に対応するデータは、図10に示すように、物体側から像側へ順に、互いに軸方向に配置された第1の反射屈折群、第2の反射屈折群、第3の反射屈折群及び視野レンズ群を備える反射屈折光学系を表す。第1の反射屈折群は、物体面に配置された物体の第1の中間像を第1の中間像面に形成する。第2の反射屈折群は、湾曲した像側面及びほぼ平坦な像側面を有する固体レンズから構成される。平坦な像側面は、光軸上に中心を有する中央非透過(オブスキュレーション)領域と、リング状反射領域と、透明(透過)領域とを含む。第2の反射屈折群及び視野レンズ群は、第1の中間像に基づいて、物体の最終像を像面に形成する。
以上、例示的な実施形態を参照して本発明の種々の態様を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを理解すべきである。全ての変形や同等の構造及び機能を含めるように、特許請求の範囲の範囲は最も広い意味で解釈されるべきである。