ところで、特許文献1や特許文献2で提案のものの如く一列の淡炎孔の両側に濃炎孔をそれぞれ配置して淡炎孔を単に両側から挟んだだけの濃淡燃焼バーナではなくて、さらに淡炎孔の中心線上に延びるように一列の濃炎孔を追加することで短手方向(幅方向)において例えば濃−淡−濃−淡−濃というような配列で濃炎孔と淡炎孔とが交互に並ぶ構成の濃淡燃焼バーナの開発を本出願人において進めている。この場合には、2列の淡炎孔を形成する必要があるため、前記の特許文献2で提案された手法を活用しようとすると、各列に対し淡炎孔形成部材を組み付けなければならず、加工誤差や組み付け位置の誤差の累積に起因して特に長手方向両端部における密着性が十分に確保できず、隙間の発生により淡混合気が周囲に漏れて保炎性を損ねてしまうおそれが生じることになる。その上、淡炎孔に形成される淡火炎と、幅方向両側で隣接する濃炎孔からの濃火炎との基部境界位置には何も流さない分離帯を区画形成すべきところ、前記の誤差に起因して長手方向端部付近の密着性が阻害されて隙間が生じると、分離帯に淡混合気が漏出する結果、保炎性を損ねる事態を招くことになる。
例えば図22に示す組付構造にすると、前記の如き不都合が発生するおそれが考えられる。すなわち、中央の濃炎孔形成部材101と、両外側の濃炎孔形成部材102,102とを長手方向端部においてそれぞれのフランジ部を平面同士の接合(例えば溶着)により固定させると共に、そのフランジ部間に一対の組付溝103,103を区画形成しておく。これにより、中央の濃炎孔形成部材101を挟んで両外側の濃炎孔形成部材102,102との間に淡混合気が供給される空間104,104が区画形成される。そして、例えば3枚の金属板素材を接合することで一対の淡炎孔形成部材105,105を形成しておき、前記淡混合気が供給される空間104,104に淡炎孔形成部材105を1つずつ嵌め込んで、その長手方向端部を前記組付溝103内にそれぞれ差し入れることで互いに組み付ける。この場合には、それぞれの長手方向端部で接合固定されているため、加工誤差や組付位置の誤差が生じると、密着性が十分に確保し得ず、前記の如き不都合発生のおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、淡炎孔が複数の整流板を相対向間に隙間をあけて淡混合気の流路を形成するように組み付けることで構成される濃淡燃焼バーナにおいて、淡炎孔を形成するための部材の特に長手方向両端部における組み付けの容易化・確実化を図りつつも、その形成部材と濃炎孔を形成するための部材との互いの密着性を確実に確保し得る濃淡燃焼バーナを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、複数の整流板が相対向間に隙間をあけて淡混合気の流路を形成するように組み付けられることにより構成された淡炎孔と、この淡炎孔の外側位置に配列された濃炎孔とを備えた濃淡燃焼バーナを対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記複数の整流板の内の最外側となる整流板の長手方向端部を平面視で外側に向けて凸カーブを描いて湾曲させ、その最外側の整流板の長手方向先端を、前記複数の整流板の内の最内側の整流板の長手方向先端に被さるように配置することとする。
このような特定事項による場合、淡炎孔や濃炎孔を形成するための部材に加工誤差や組み付け位置誤差等が発生したとしても、特に密着性を損ねるおそれのある長手方向端部において、容易かつ確実な組み付けを実現させつつ、淡炎孔を形成するための整流板と、淡炎孔の外側位置の濃炎孔を形成する部材との間を確実に密着状態に維持させ得ることになる。例えば、淡炎孔を構成する複数の整流板を配置するための空間の内幅が、前記の加工誤差等に起因して本来の寸法から僅かに狭幅になってしまったとしても、湾曲された長手方向端部が押されて先端側に延びるように弾性変形することで吸収され、最外側の整流板と外側位置の濃炎孔を形成するための部材との間の密着状態を維持することが可能となる。この際、湾曲された長手方向端部が押されて先端側に延びたとしても、最内側の整流板の先端がその弾性変形の支障にならないため、組み付けの容易性も、密着性の維持も、共に図り得ることになる。そして、密着性の維持が図られるため、淡炎孔の側から淡混合気の漏出のおそれが確実に防止される結果、漏出に起因する保炎性の悪化発生のおそれも確実に防止し得ることになる。
本発明では前記特定事項に加えて、さらに、前記の最外側の整流板の長手方向端部が、素材の有する弾性に基づき弾性変形することにより前記濃炎孔を形成する部材の内面に密着されているようにした(請求項1)。このようにすることにより、前記特定事項の作用を確実に実現させ得る一方、前記の空間の内幅が、前記の加工誤差等に起因して本来の寸法から僅かに広幅になってしまったとしても、湾曲された長手方向端部の弾性復元変形により、前記濃炎孔を形成する部材の内面に密着したまま追随することになり、両者間の密着状態を維持することが容易となる。
短手方向中央位置において長手方向に延びるように配列された中央濃炎孔と、この中央濃炎孔を短手方向両側から挟むように配列された2列の淡炎孔と、この両側の淡炎孔をさらに外側から挟むように配列された2列の外側濃炎孔とを備えたものにおいて、前記中央濃炎孔を挟んで両側の各淡炎孔を構成する前記複数の整流板の内の最外側となる整流板の長手方向端部を、平面視で外側に向けて凸カーブを描いて湾曲させ、その最外側の整流板の長手方向先端を、前記複数の整流板の内の最内側の整流板の長手方向先端に被さるように配置することができる(請求項2)。この場合、中央濃炎孔を挟んで両側位置に対し、複数の整流板により構成された淡炎孔をそれぞれ配置するという、加工誤差や組み付け位置誤差が累積し易い構造のものにおいても、前記の作用を確実に得られることになって、有用なものとなる。
又、最内側の整流板に隣接する他の整流板の長手方向端部を、前記最内側の整流板の側に向けて屈曲されてなるようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、前記の内幅の変動に伴い、最内側の整流板に対し隣接する整流板の側に近づくような押圧力が作用したとしても、隣接する整流板の屈曲された先端部が最内側の整流板に接触することで、淡炎孔として所定量の隙間量を確保して維持させることが可能となる。
以上、説明したように、本発明の濃淡燃焼バーナによれば、淡炎孔や濃炎孔を形成するための部材に加工誤差や組み付け位置誤差等が発生したとしても、特に密着性を損ねるおそれのある長手方向端部において、容易かつ確実な組み付けを実現させつつ、淡炎孔を形成するための整流板と、淡炎孔の外側位置の濃炎孔を形成する部材との間を確実に密着状態に維持させることができるようになる。すなわち、淡炎孔を構成する複数の整流板を配置するための空間の内幅が、前記の加工誤差等に起因して本来の寸法から僅かに狭幅になってしまったとしても、湾曲された長手方向端部が押されて先端側に延びるように弾性変形することで吸収され、最外側の整流板と外側位置の濃炎孔を形成するための部材との間の密着状態を維持することができる。この際、湾曲された長手方向端部が押されて先端側に延びたとしても、最内側の整流板の先端がその弾性変形の支障にならないため、組み付けの容易性も、密着性の維持も、共に図ることができるようになる。そして、密着性の維持を図ることができるため、淡炎孔の側からの淡混合気の漏出のおそれを確実に防止することができる結果、漏出に起因する保炎性の悪化発生のおそれも確実に防止することができるようになる。
加えて、最外側の整流板の長手方向端部が、素材の有する弾性に基づき弾性変形することにより、濃炎孔を形成する部材の内面に密着されているようにすることで、前記の効果を確実に実現させることができる一方、前記空間の内幅が、加工誤差等に起因して本来の寸法から僅かに広幅になってしまったとしても、湾曲された長手方向端部の弾性復元変形により、濃炎孔を形成する部材の内面に密着したまま追随することができ、両者間の密着状態を維持することを容易に実現させることができるようになる。
又、請求項2によれば、短手方向中央位置において長手方向に延びるように配列された中央濃炎孔と、この中央濃炎孔を短手方向両側から挟むように配列された2列の淡炎孔と、この両側の淡炎孔をさらに外側から挟むように配列された2列の外側濃炎孔とを備えたものにおいて、中央濃炎孔を挟んで両側の各淡炎孔を構成する複数の整流板の内の最外側となる整流板の長手方向端部を、平面視で外側に向けて凸カーブを描いて湾曲させ、その最外側の整流板の長手方向先端を、複数の整流板の内の最内側の整流板の長手方向先端に被さるように配置することで、中央濃炎孔を挟んで両側位置に対し、複数の整流板により構成された淡炎孔をそれぞれ配置するという、加工誤差や組み付け位置誤差が累積し易い構造のものにおいても、本発明の効果を確実に得ることができ、有用となる。
請求項3によれば、最内側の整流板に隣接する他の整流板の長手方向端部を、最内側の整流板の側に向けて屈曲させることで、内幅の変動に伴い、最内側の整流板に対し隣接する整流板の側に近づくような押圧力が作用したとしても、隣接する整流板の屈曲された先端部が最内側の整流板に接触することで、淡炎孔として所定量の隙間量を確保して維持させることができるようになる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る濃淡燃焼バーナを適用した燃焼装置2を示す。この燃焼装置2は、缶体21内において、所定数の濃淡燃焼バーナ3,3,…を横に隣接させて並べた状態のバーナセットが固定されたものである。缶体21の上部空間は燃焼空間22とされ、下部空間23に送風ファン24からの燃焼用空気が供給される一方、各濃淡燃焼バーナ3の一側にガスマニホールド25(図1(b)にのみ示す)が配設され、このガスマニホールド25から濃淡燃焼バーナ3毎に2つのガスノズル26,27が突出されている。一方(下段)のガスノズル26は濃淡燃焼バーナ3の第1供給口31に向けて、他方(上段)のガスノズル27は濃淡燃焼バーナ3の第2供給口32に向けて、それぞれ燃料ガスを噴出させ得るようになっている。そして、下部空間23からの空気を各ガスノズル26,27の周囲から送風ファン24の吐出圧により押し込んで、燃料ガス及び空気の双方を第1及び第2供給口31,32に供給し得るようになっている。この際、第1供給口31は第2供給口32よりもかなり大径に設定されて、より多くの空気を押し込むようにされる一方、第2供給口32は比較的小径に設定されて、押し込む空気の量が絞られるようにされている。このようにして、第1供給口31からは供給される燃料ガスに加え、その燃料ガス量に比して1.0倍よりも大きい所定の空気比となる量の空気が内部に供給される一方、第2供給口32からは同様に供給される燃料ガスに加え、その燃料ガス量に比して1.0倍よりも小さい所定の空気比となる量の空気が内部に供給されるようになっている。なお、下部空間23と濃淡燃焼バーナ3,3,…とを仕切るように配設された整流板28(図1(b)参照)には多数の小孔が開けられ、この小孔を通して相隣接する濃淡燃焼バーナ3,3間に二次空気が供給されるようになっている。
濃淡燃焼バーナ3は、図2に示すように、金属板素材を用いてプレス加工及び折り曲げ加工を経て所定形状に加工されたものである。すなわち、濃淡燃焼バーナ3は、1列の濃炎孔列33からなる中央濃バーナ部3aと、2列の淡炎孔列34,34からなる淡バーナ部3bと、2列の濃炎孔列35,35からなる外側濃バーナ部3cとを備えて全体として扁平形状に形成されたものであり、これらが3種類のプレート部材4,4、5,5、6と、炎孔形成部材7とを用いて形成されたものである。図3の上下方向を長手方向(前後方向)、図3の左右方向を短手方向(幅方向)というとすれば、長手方向一側(図2の左側)において下側位置に第1供給口31が開口し、上側位置に第1供給口31よりも小径の第2供給口32が開口され、上端面に燃焼火炎が形成される複数の炎孔列が図3に示すように長手方向に延びるように形成されている。炎孔列としては、図3(a),(b)に示すように、短手方向中央位置において狭幅の1列の濃炎孔列33が長手方向全長に延び、この濃炎孔列33の短手方向両側位置のそれぞれにおいて比較的広幅の淡炎孔列34が長手方向全長に延び、両側の淡炎孔列34,34のさらに外側位置においてそれぞれ狭幅の濃炎孔列35が長手方向全長に延びている。そして、淡炎孔列34,34の各淡炎孔341には第1供給口31(図2参照)から供給されて混合された淡混合気が導かれ、この淡混合気によりそれぞれ淡火炎が形成され、中心位置の濃炎孔列33の各濃炎孔331と、両外側位置の2列の濃炎孔列35,35の各濃炎孔351とには第2供給口32(図2参照)から供給されて混合された濃混合気が導かれ、この濃混合気によりそれぞれ濃火炎が形成されるようになっている。
このような濃淡燃焼バーナ3は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、図4及び図5に示すように、3種類のプレート部材4,4、5,5、6と、一対の炎孔形成部71,71が少なくとも1つ(図例では2つ)の架橋部72,72により一体に連結された炎孔形成部材7とを用いて構成する。第3プレート部材6(図6参照)は、金属板素材に対し相対向する一側面になるプレート部65と、他側面になるプレート部65とが、折り曲げ線Tを挟んで線対称配置に配置された状態になるように一枚物のプレート素材6aとしてプレス成形され、成形後に、折り曲げ線Tを中心にして両側のプレート部65,65を共に内向き(一点鎖線の矢印の向き)に相対向させるように折り曲げて、後端縁651,651同士や前端縁652,652同士を互いに密着させることで形成されている。折り曲げ後の状態では、折り曲げ線Tに沿った折り曲げ部位が下端部60a,60b(図4も併せて参照)となり、この下端部60a,60bから上方に延びる両側のプレート部65,65が所定の狭い間隔で相対向し、その内面間に濃混合気の供給通路が形成されて上端面の濃炎孔列33に連通されるようになっている。又、前記の折り曲げ線Tに沿って前端側位置の下端部60aにおいて両側のプレート部65,65に第1連通孔61がそれぞれ貫通形成されるとともに、前記の展開状態のプレート素材6a(図6参照)において略菱形の切欠開口601が第1連通孔61,61の後側位置において折り曲げ線Tを挟んで予め形成され、折り曲げられた状態で切欠凹部60c(図4も併せて参照)が形成されるようになっている。このようにして第3プレート部材6により中央濃バーナ部3aが形成されることになる。
そして、この中央濃バーナ部3aを一対の第1プレート部材4,4間の上端開口から内部に下方に差し込むことで、一対の第1プレート部材4,4の短手方向の相対向間の中央位置に中央濃バーナ部3aが配置され(図7参照)、第1プレート部材4,4の上端開口が中央濃バーナ部3aにより2つに区画された状態になる。そして、この2つに区画された上端開口内に炎孔形成部材7が上から装入され、この炎孔形成部材7を構成する一対の炎孔形成部71,71が中央濃バーナ部3aの濃炎孔列33を短手方向両側から囲んだ状態に組み付けられる。この組み付けの際、炎孔形成部材7の架橋部72,72を第3プレート部材6の濃炎孔列33に形成された凹状の嵌合溝332(図4も併せて参照)に内嵌させる。これにより、長手方向に対する位置決め及び上下方向への位置決めが共にされた状態で、一対の炎孔形成部71,71の上端面に2列の淡炎孔列34,34(図3も併せて参照)が形成されて、淡バーナ部3bが形成されることになる。なお、炎孔形成部材7の製造方法及び組み付け構造等の詳細については後述する。第2プレート部材5,5は、淡バーナ部3bの第1プレート部材44の外側に被せられて(例えば図5参照)、上端側に外側の濃炎孔列35,35(図3参照)が形成されるとともに、各第2プレート部材5の内面と相対向する第1プレート部材4の外面との間に濃混合気が各濃炎孔列35まで供給される供給通路が区画形成され、これにより、外側濃バーナ部3c(図2,図3参照)が形成されることになる。
次に、図8,図9を参照しつつ淡混合気及び濃混合気の供給構造部分について説明する。なお、図8,図9において、メッシュ状のハッチングを付した部分は接合面であり、密接又は圧接により互いに密着され、加えて線状の溶着又は点付け溶接等も付加されて、密着状態が維持されている。前記の淡バーナ部3bにおいて、一側に開口する第1供給口31から供給された燃料ガスと空気とが筒部36内で混合されて淡混合気となり、この淡混合気が筒部36(図10,図11の点線の矢印を参照)を通して他側に送られ、他側から上側に向きを変え(図12の点線の矢印を参照)、一対の第1プレート部材4,4間の空間が第3プレート部材6の下端部60bによって区画形成(分割)された2つの内部空間37,37を通して、上端の各淡炎孔列34まで供給されるようになっている。前記の筒部36と内部空間37,37とにより淡混合気を2列の淡炎孔列34,34まで供給する淡混合気供給通路が構成される他、筒部36は第1供給口31から供給される燃料ガスと空気との混合室及び導入通路(淡混合気導入通路)の役割をも果たすようになっている。前記の第3プレート部材6が後述の第1濃混合気供給通路を区画形成するための形成部材を構成し、この第3プレート部材6によって、前記の淡混合気導入通路の下流側が二分(2つに分断)されて2つの淡混合気供給通路(内部空間37,37)が区画形成されるようになっている。
又、濃混合気については、上流端側である第2供給口32に供給される燃料ガスと空気とが筒部38内で混合されて濃混合気となり、この濃混合気が筒部38(図13も併せて参照)を通して下流端側である奥方(後方)の閉塞端381側まで導かれる間にさらに混合されることになる。そして、この濃混合気が中央濃バーナ部3a及び左右両側の外側濃バーナ部3c(図10又は図11参照)のそれぞれに供給されるようになっている。すなわち、筒部38内には、中央濃バーナ部3aの前端側の下端部60aが上から差し込まれて筒部38内で宙に浮いた状態(図10又は図14も併せて参照)に突出した突出部として配設され、この突出部(下端部60a)において第1連通孔61,61が筒部38の内部空間である混合室の上方寄り位置(上側位置)で開口して、混合室と中央濃バーナ部3aの内部空間62とが連通されるようになっている。これにより、筒部38内の濃混合気は、両第1連通孔61,61及び内部空間62を通して濃炎孔列33に供給されることになる。
加えて、前記の両第1連通孔61,61の開口位置よりも下流側(閉塞端381側)位置において、筒部38を構成する一対の第1プレート部材44に第2,第3連通孔41,41(図11又は図13も参照)が貫通形成されており、一側(図11の右側,図13の上側)の第2連通孔41により筒部38内の前記混合室が一側の第1プレート部材4と同じ側の第2プレート部材5との間の内部空間51と連通され、他側(図11の左側,図13の下側)の第3連通孔41により筒部38内の前記混合室が他側の第1プレート部材4と同じ側の第2プレート部材5との間の内部空間52と連通されている。これにより、筒部38内の濃混合気が第2連通孔41及び内部空間51を通して一側の濃炎孔列35に供給される一方、同様に筒部38内の濃混合気が他側の第3連通孔41及び内部空間52を通して他側の濃炎孔列35に供給されるようになっている。加えて、第2連通孔41及び第3連通孔41は第3プレート部材6の切欠凹部60c(図9参照)に臨む位置において短手方向に相対向して開口するように設定され、これにより、一対の第2,第3連通孔41,41が短手方向(幅方向)において何も遮ることのない筒部38内の空間を介して相対向して開口するようになっている(図11又は図13参照)。
なお、前記の筒部38は第2供給口32から供給される燃料ガスと空気とを混合するための混合室、及び、混合された濃混合気を導入するための濃混合気導入通路を構成する一方、前記の内部空間51,52,62は濃混合気を対応する濃炎孔列35,33,35に供給するための濃混合気供給通路を構成する役割をも果たすようになっている。つまり第2連通孔41に連通する内部空間51が第2濃混合気供給通路を構成し、第3連通孔41に連通する内部空間52が第3濃混合気供給通路を構成し、第1連通孔61,61に連通する内部空間62が第1濃混合気供給通路を構成する。
次に、図15及び図16を参照しつつ、炎孔形成部材7について詳細に説明する。炎孔形成部材7は、前述の如く、それぞれが1列の淡炎孔列34を構成する一対の炎孔形成部71,71が少なくとも1つ(図例では2つ)の架橋部72,72により両者の上端位置で橋渡しするように互いに連結されて一体化され、これにより、側面から見た形状又は横断面形状が一対の炎孔形成部71,71の間に所定の内幅の隙間S(図16参照)を有し下方に開放した門形に形成されたものである。各炎孔形成部71は、プレス成形により所定の凹凸形状に成形された少なくとも2枚(図例では4枚)の帯状の整流板73,74,75,76が互いに重ね合わされて接合され、それらの相対向面間に前記凹凸形状に基づき淡混合気の通路が区画形成されるとともに、上端面に淡炎孔341(図15にのみ表れる)が開口するように形成されたものである。
前記の図16の隙間Sの内幅(内表面711,711間の内幅)は、第3プレート部材6により形成される中央濃バーナ部3aの短手方向の幅寸法(具体的には後述の両側の膨出部654,654の幅方向寸法)に合致するように設定され、又、一対の炎孔形成部71,71の両側の外表面710,710間の外幅が第1プレート部材4,4の短手方向の内幅(内面間隔)に合致するように設定されている。これにより、炎孔形成部材7の一対の炎孔形成部71,71を、第3プレート部材6と両側の第1プレート部材4,4との間の空間に対し上から装入すれば、各炎孔形成部71の最外側の表面(整流板73の外表面)710が第1プレート部材4の内面(具体的には後述の膨出部44)と密接する一方、各炎孔形成部71の最内側の表面(整流板76の外表面)711が第3プレート部材6の外面(具体的には後述の膨出部654)と密接し、互いの間を混合気が通り抜けないようにメタルシールされるとともに、一対の炎孔形成部71,71が第3プレート部材6を挟んで短手方向に対し確実に対称位置に位置決めされて、第3プレート部材6や第1プレート部材4,4に対し確実に所定位置に組み付け得るようになっている。
この点につき、さらに詳述すると、図16に示すように、第3プレート部材6にはその各プレート部65の上端寄り位置の外側面に短手方向外側に膨出するリブ状の膨出部654(図4,図5も併せて参照)が長手方向全長に延びるように形成され、この膨出部654に前記の各炎孔形成部71の最内側の表面711が密接することになる。一方、第1プレート部材4にも短手方向内側に向けて膨出するリブ状の膨出部44(図4,図5も併せて参照)が長手方向全長に延びるように形成され、この膨出部44に前記の各炎孔形成部71の最外側の表面710が密接することになる。これにより、前記のメタルシールが行われるとともに、各淡炎孔列34(図14参照)に形成される淡火炎と、これを挟んで中央濃炎孔列33及び外側濃炎孔35に形成される2列の濃火炎との間に、膨出部44,654,654,44の膨出量の相当する僅かな短手方向幅分の帯状で長手方向全長に延びる混合気の非噴出帯39,40,40,39を形成することができる。
又、前記の炎孔形成部材7の架橋部72,72を第3プレート部材6の中央濃炎孔列33が形成されている上端縁に上から跨るように当接させて組み付けることで、一対の炎孔形成部71,71を支持させることができる。加えて、架橋部72,72を第3プレート部材6の嵌合溝332,332に内嵌させることで、上下方向の位置決めのみならず、長手方向に対する位置決めや、位置ずれを阻止した状態で炎孔形成部材7と第3プレート部材6とを一体化することができる。すなわち、図17に詳細を示すように、前記の第3プレート部材6の中央濃炎孔列33には、前記炎孔形成部材7の各架橋部72の長手方向形成位置に対応する長手方向各位置に、各架橋部72の帯幅に対応する長手方向長さと、所定の深さを有する嵌合溝332(図4も併せて参照)が形成されており、この嵌合溝332に架橋部72を上から内嵌させることで、一対の炎孔形成部71,71を、第3プレート部材6や第1プレート部材4,4に対し、長手方向に対して位置ずれしないように保持された状態で、確実に所定の長手方向位置に組み付け得るようになっている。なお、第1プレート部材4,4との組み付けは、先に第3プレート部材6を第1プレート部材4,4に組み付けた後に炎孔形成部材7を上から組み付けるようにしても、あるいは、予め炎孔形成部材7を第3プレート部材6に組み付けた上で両者を第1プレート部材4,4に組み付けるようにしても、いずれでもよい。
なお、第3プレート部材6の各プレート部65の上端寄り位置には、例えば図4又は図5に示すように、短手方向外側に突出する適宜数(図例では2つ)の突起655,655が形成されている。そして、前記の炎孔形成部材7の各炎孔形成部71が前記の如く上から装入されて架橋部72,72が前記の嵌合溝332,332に内嵌して組み付けられた状態で、前記の突起655,655(図16参照)が各炎孔形成部71の最内側の表面711に形成された凹部に嵌り込んで、各炎孔形成部71が上方に抜け出ないように抜け止めを果たすようになっている。
一方、炎孔形成部材7の各炎孔形成部71の長手方向各端部の構造として、次のような構成を採用している。すなわち、図18に示すように、第1プレート部材4及び第2プレート部材5の双方の長手方向各端部401,501が第3プレート部材6の端縁651(652)の側に滑らかに湾曲し、短手方向の両側同士で互いに接合されている。これにより、第1プレート部材4と第3プレート部材6との間に、詳しくは、第1プレート部材4の膨出部44と、第3プレート部材6の膨出部654との間に、淡混合気が供給される空間であって、各炎孔形成部71が内嵌される空間が区画形成されることになる。そして、最外側の整流板73の長手方向端部を外側に凸になって最内側の整流板76の側に湾曲させて湾曲部730とし、この湾曲部730の先端731を、最内側の整流板76の長手方向先端761に対し外側から被さるように配置する。つまり、長手方向端部において、最内側の整流板76は長手方向先端761まで一直線状に延ばす一方、最外側の整流板73は湾曲部730とすると共にその先端731を、前記整流板76の先端761に被さった状態になるように、炎孔形成部71は形成されている。加えて、最内側の整流板76に隣接する整流板75の先端部751が最内側の整流板76の側に所定量屈曲されている。その屈曲量は、最内側の整流板76が隣接する整流板75の側に相対的に近づくような外力が作用したとしても、整流板76と整流板75との間の隙間量が過小にならない程度に定めればよい。従って、先端部751が最内側の整流板76と接触する程度、又は、先端部751が本来位置にある最内側の整流板76の近傍に位置する程度に、前記屈曲量を定めればよい。なお、図18中の符号740は整流板74から隣接する整流板75の側に突出する凸部、符号750は整流板75から隣接する整流板74の側に突出する凸部であり、両側の凸部740,750が互いに当接することで、隣接する2枚の整流板74,75の相対間隔が所定量以下に狭くなることを防止している。
このような構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、加工誤差や組み付け位置誤差等が発生したとしても、特に長手方向端部において、容易かつ確実な組み付けを実現させつつ、炎孔形成部71の最外側の表面を相対向する第1プレート部材4の膨出部44に密着した状態に維持させることができるようになる。例えば、第1プレート部材4の膨出部44と、第3プレート部材6の膨出部654との間の内幅Yが、前記の加工誤差等に起因して本来の寸法から僅か(例えば0.1mm)に狭幅になってしまったとしても、湾曲部730が膨出部44に押されて先端側に延びるように弾性変形することで吸収することができ、湾曲部730は膨出部44との間の密着状態を維持することができる。又、この場合に、最内側の整流板76に対し隣接する整流板75の側に近づくような押圧力が作用したとしても、隣接する整流板75の屈曲された先端部751が整流板76に接触することで、淡炎孔として所定量の隙間量を確保して維持させることができるようになる。
逆に、内幅Yが、本来の寸法から僅か(例えば0.1mm)に広幅になってしまったとしても、湾曲部730が弾性変形することで膨出部44に対し、膨出部44との密着状態を維持したまま、追随することができる。この際、湾曲部730の追随性を強めるために、湾曲部730を膨出部44の本来のアール形状よりも大アールのものに形成して、スプリングバックの力を利用し得るようにしておけばよい。以上のように、特に密着性を損ねるおそれのある長手方向端部における、淡炎孔34を形成するための炎孔形成部71と、これを挟む中央濃炎孔33の側の第3プレート部材6及び外側濃炎孔35の側の第1プレート部材4との間を確実に密着状態に維持することができるため、淡混合気が非噴出帯39,40に漏出してしまうことに起因する保炎性の悪化発生のおそれを確実に防止することができる。
以上の本実施形態の作用効果について、図19に示す対比例と比較する。図19の対比例の場合、最外側の整流板73の先端731aを、最内側の整流板76の先端部761aに対し突き当てた状態に配置している。かかる配置の場合、両側の膨出部44,654間の内幅Yが本来の寸法よりも例えば狭幅になってしまった場合には、最外側の整流板73の先端731aが最内側の整流板76の先端部761aに対し突き当っているため、弾性変形が不能となってしまうことになる。最外側の整流板73の先端731aが先端部761aに対し突き当っていなくても突き当たる手前の近傍位置に配置されていた場合であっても、加工誤差等を吸収するための弾性変形が抑制されてしまうことになる。この結果、内幅Yの空間に対し上から装入して組み付けることすら不能になるおそれが生じてしまうことになる。
次に、以上のような構成の炎孔形成部材7の製造方法について説明する。図20は炎孔形成部材7の製造方法の例を示している。この例では、1枚物の金属板素材に対しプレス成形により所定の凹凸形状の形成や切断を行うことにより展開状態の炎孔形成素材7aを成型し、これをアコーディオン状に折り曲げることで炎孔形成部材7を形成するようにしている。すなわち、架橋部72,72を挟んで両側に炎孔形成部71,71となる成形部71a,71aが互いに対称配置で架橋部72,72により一体に接続されているように成形する。各成形部71aは、所定の凹凸形状を有する前記の帯状整流板73〜76が細帯状の適宜数の連結部77,78,79により一体に接続されているように成形される。そして、架橋部72,72を挟んで両側の各成形部71aに対し互いに平行に設定された所定の折り曲げ線b1,b2,b3,b4位置でアコーディオン状に互い違いに折り曲げてゆき(図21も併せて参照)、隣接する帯状整流板73,74、74,75、75,76同士を互いに接合することで、炎孔形成部材7を形成する。
以上の濃淡燃焼バーナ3の場合、前記の特徴的な作用効果に加えて、基本的な効果を得ることができる。すなわち、2列の淡炎孔列34,34のそれぞれを濃炎孔列35,33、又は、濃炎孔列33,35によって両側から挟み込んでいるため、両淡炎孔列34,34に形成される各淡火炎を両側から濃火炎により囲むことができるようになる。つまり、短手方向における火炎の構成を、濃火炎−淡火炎−濃火炎−淡火炎−濃火炎の配列順にすることができる。これにより、淡炎孔列34を2列にして淡炎孔列の面積を増大させるようにしても、淡火炎の火炎長が長くなることを回避して燃焼室22(図1参照)の燃焼室高さを低く抑えることができ、燃焼室高さを低く抑えつつも、淡炎孔の面積(比率)を増大させることによりさらなる低NOx化を図ることができ、又、燃焼のより安定化を図ることができるようになる。又、1つの淡炎孔列を両側から濃炎孔列により挟み込んで1つのバーナを構成した場合と比べ、同じ淡炎孔面積を実現する上で効率よくバーナの軽量化を図ることができるようになる。さらに、1つの燃料ガス及び空気の供給口(第2供給口32)から筒部38内に導入されて混合された濃混合気を、筒部38の閉塞端側の領域とそれぞれ連通して開口された中央濃バーナ部3aの第1連通孔61,61、一側の外側濃バーナ部35の第2連通孔41、又は、他側の外側濃バーナ35の第3連通孔41を通して対応する内部空間62,51,52に対し分流(分岐供給)させることができる。これにより、中央及び両外側に3つの濃炎孔列35,33,35を形成する場合であっても、濃混合気を簡単な構造でスムースかつ確実に分流させてそれぞれの濃炎孔列35,33,35に供給させることができる。以上より、中央濃バーナ部3aとして短手方向の厚みを比較的薄いもので実現して、濃火炎−淡火炎−濃火炎−淡火炎−濃火炎の配列を実現する濃淡燃焼バーナとしてコンパクトなもので実現することができるようになる。
<他の実施形態>
中央濃炎孔331からなる中央濃炎孔列33と、これを短手方向両側から挟むそれぞれ淡炎孔341からなる一対の淡炎孔列34,34と、さらに、各淡炎孔列34を外側から挟むように配列された外側濃炎孔351からなる外側濃炎孔列35とを備えた濃淡燃焼バーナであれば、前記実施形態で示した炎孔形成部材7を、炎孔形成部材7に関係する構成を除き、前記実施形態以外の構造の濃淡燃焼バーナに対し適用することができる。
炎孔形成部71としては、最外側と最内側の2枚の整流板により形成されたものであってもよい。又、最外側の整流板73の先端731が最内側の整流板76の先端761に被さるように配置されている、とは、図例の如く前記先端731が前記先端761に被さって長手方向先端側に延びている場合の他に、前記先端761とほぼ同等の長手方向位置であってもその先端761の角部に被さっていて、湾曲部730に先端側への弾性変形が生じたとしても、その先端731が前記先端761に突き当たることなく長手方向先端側に相対移動可能である配置状態、つまり、前記先端761が湾曲部730の先端731の弾性変形の支障にならない配置状態を含むものである。
炎孔形成部材7としては、一枚物の金属板素材に対しプレス成形により所定の凹凸形状の形成や切断を行うことにより展開状態の炎孔形成素材7aを用いて形成する場合の他に、別個に形成した複数の整流板を例えばスポット溶接等の手段により組み付けて形成されたものであってもよい。