以下に、本発明の実施形態にかかる車両用空調制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両用空調制御装置に関する。図1は、車速が所定車速以下であり、かつブレーキONの状態におけるエンジン停止可能時間を示す図、図2は、車速が所定車速よりも大、あるいはブレーキOFFの少なくともいずれか一方である場合のエンジン停止可能時間を示す図、図3は、実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
本実施形態に係る車両は、駆動力が必要ないときにドライバーの意思あるいは制御装置の判断でエンジンを停止するフリーランS&Sシステムを搭載している。車両のエンジンが停止すると、空調装置のコンプレッサやウォーターポンプが停止することで、空調が十分に行われなくなり、ウィンドウガラスに曇りが発生する可能性がある。
従来、停車中にエンジンを停止するアイドルストップ車両は、曇りを防止するため、環境条件に応じてエンジン停止時間を制限したり、アイドルストップを禁止したりする。フリーランS&Sシステムを搭載した車両では、走行中にエンジンを停止するため、曇りを抑制して視界を確保する必要性が高い。本実施形態に係る車両用空調制御装置は、走行中のエンジン停止要件を停車中のエンジン停止要件とは異なるものとする。例えば、車速等の走行状態に応じてエンジン停止要件が可変とされる。本実施形態に係る車両用空調制御装置によれば、エンジンを停止して走行するフリーランにおいてウィンドウガラスの曇りを発生しにくくすることができる。
本実施形態は、以下の構成を前提としている。
(1)走行中にエンジン停止が可能な車両。
(2)走行中にエンジンとT/Mとを切り離すこと(惰性走行)が可能な車両。
(3)自動でエンジン再始動を制御できる機構。
(4)室内・外の気温と湿度を検出する装置。
(5)空調制御装置。
図3に示すように、車両100は、エンジン1、T/M(トランスミッション)2、空調装置4、エンジンECU30、S&SECU31を備える。また、本実施形態の車両用空調制御装置1−1は、エンジン1、空調装置4、エンジンECU30およびS&SECU31を備える。
エンジン1は、車両100の動力源としての機能を有する。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを回転軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1は、クラッチ3を介してT/M2と接続されている。T/M2は、運転者の変速操作によって変速段の切替えがなされる有段の手動変速機である。クラッチ3は、運転者の操作によって係合あるいは開放する。クラッチ3は、摩擦係合式のクラッチ装置であって、図示しないクラッチペダルに対する運転者の操作によって、完全係合状態、半係合状態あるいは開放状態に操作可能である。
T/M2の出力軸は、差動機構6を介して駆動輪7に接続されている。エンジン1が出力する動力は、クラッチ3、T/M2および差動機構6を介して駆動輪7に伝達される。
空調装置4は、コンプレッサ4aを有する。空調装置4は、コンプレッサ4a、コンデンサ4b、エキスパンションバルブ4c、およびエバポレータ4dを含む冷媒の循環路によって冷凍サイクルが構成されている。エバポレータ4dは、通過する空気を冷却して空気中の水分を結露させることによって、除湿をすることができる。また、空調装置4は、ヒータコア4eに供給されるエンジン冷却水の熱によって、エバポレータ4dで除湿された空気を加熱することができる。除湿された空気は、目標とする吹き出し温度に応じて適宜ヒータコア4eによって加熱される。エンジン冷却水は、W/P(ウォーターポンプ)11によってヒータコア4eに供給される。
また、空調装置4は、ブロアー4fを有する。ブロアー4fは、車両100の外部の空気(以下、単に「外気」とも記載する。)および車両100の内部の空気(以下、単に「内気」とも記載する。)を車室内に送るものである。ブロアー4fは、内気あるいは外気の少なくともいずれか一方をエバポレータ4dを介して車両100の内部、すなわち車室内に送るものである。ブロアー4fは、例えば電動のブロアーであり、バッテリ5から供給される電力によって作動することができる。すなわち、ブロアー4fは、エンジン1の停止中に動作可能なものである。
エンジン1には、コンプレッサ4a、オルタネータ8、スタータ9およびW/P11が配置されている。コンプレッサ4aは、エンジン1から伝達される動力によって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮装置である。つまり、空調装置4の冷凍サイクルは、エンジン1から伝達される動力によって作動するものである。言い換えると、空調装置4は、エンジン1から伝達される動力によって駆動されることで除湿機能や冷却機能を発揮することができる。
オルタネータ8は、エンジン1から伝達される動力によって駆動されて発電を行う発電機である。オルタネータ8によって発電された電力は、例えば、電気負荷やバッテリ5に供給される。W/P11は、エンジン1を冷却するエンジン冷却水を循環させるポンプである。W/P11によって送り出されるエンジン冷却水は、エンジン1や空調装置4のヒータコア4eを連通する冷却水路を循環する。
スタータ9は、供給される電力によって駆動されてエンジン1を始動する始動装置である。スタータ9は、オルタネータ8およびバッテリ5と接続されており、オルタネータ8あるいはバッテリ5の少なくともいずれか一方から電力の供給を受けることができる。バッテリ5は、充電および放電が可能な蓄電装置である。BBC(バックアップ・ブースト・コンバータ)10は、バッテリ5からの出力電圧が低下した場合に、電圧を昇圧して電力供給する電圧補償手段である。
コンプレッサ4a、オルタネータ8およびW/P11は、ベルト12を介してエンジン1の回転軸と動力を伝達することができる。例えば、エンジン1の運転時には、エンジン1によって出力される動力がベルト12を介してコンプレッサ4a、オルタネータ8およびW/P11に伝達されてそれぞれの機器を駆動する。
クラッチ3には、クラッチストロークセンサ21、クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23が設けられている。クラッチストロークセンサ21は、クラッチペダルのペダルストロークを検出するものである。クラッチアッパースイッチ22は、クラッチペダルが操作されていないことや、クラッチペダルに対する踏み込みが浅い場合など、クラッチ3が完全係合状態であることを検出する。クラッチロワースイッチ23は、クラッチペダルが完全に踏み込まれてクラッチ3が開放状態であることを検出する。
エンジンECU30およびS&SECU31は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。エンジンECU30は、エンジン1の運転、停止を含むエンジン1の動作を制御するものである。エンジンECU30およびS&SECU31は、クラッチストロークセンサ21、クラッチアッパースイッチ22およびクラッチロワースイッチ23と接続されている。また、エンジンECU30およびS&SECU31は、室内気温センサ24、室外気温センサ25、室内湿度センサ26および室外湿度センサ27と接続されている。
室内気温センサ24は、車両100の内部の温度、言い換えると車室内の気温を検出する。室外気温センサ25は、車両100の外部の温度、言い換えると車室外の気温を検出する。室内湿度センサ26は、車室内の湿度を検出する。室外湿度センサ27は、車室外の湿度を検出する。本明細書では、車室内の気温を単に「内気温」とも記載し、車室外の気温を単に「外気温」とも記載する。
エンジンECU30およびS&SECU31は、車輪速センサ28と接続されている。車輪速センサ28は、各車輪の回転速度を検出するものである。また、エンジンECU30およびS&SECU31は、シフトポジションセンサ29と接続されている。シフトポジションセンサ29は、運転者によって操作されるシフトレバーのシフトポジションを検出する。エンジンECU30およびS&SECU31には、各センサ21,22,23,24,25,26,27,28および29から検出結果を示す信号が入力される。エンジンECU30およびS&SECU31は、車輪速センサ28の検出結果に基づいて車両100の車速を取得することができる。
エンジンECU30は、S&SECU31と協調して車両100においてフリーランを実行することができる。フリーランは、例えば、車速の変化が少ない定常走行時に実行される。フリーランでは、エンジン1と駆動輪7との動力の伝達を遮断し、かつエンジン1に対する燃料の供給を停止して、車両100の慣性エネルギーを利用して惰性により車両100を走行させる。本明細書では、フリーランを「惰性走行」とも記載する。
S&SECU31は、フリーランの実行条件および終了条件を判定する。S&SECU31は、例えば、運転者が車両100を加速させる意思がないと判断できる場合にフリーランの実行条件が成立したと判定する。一例として、クラッチアッパースイッチ22、クラッチロワースイッチ23およびシフトポジションセンサ29の検出結果より、運転者がクラッチペダルを踏み込み、クラッチ3を切断した後、シフトレバーをニュートラル位置に操作し、クラッチ3を再び接続したことを検出したら、S&SECU31はフリーランを行うと判定する。
S&SECU31は、フリーランの実行中に、フリーランの終了条件が成立すると、フリーランを終了させる。フリーランの終了条件は、例えば、運転者に車両100を加速させる意思があると判断できる場合である。一例として、フリーランの実行中にクラッチロワースイッチ23の検出結果より、運転者がクラッチペダルを踏み込んでクラッチ3を切断した場合にフリーランを終了させるようにしてもよい。また、運転者がクラッチ3を切断してシフトレバーをいずれかの走行用のポジションに操作したことを検出したらフリーランを終了させるようにしてもよい。
フリーランの実行中は、エンジン1が停止されるため、燃料が消費されない。またフリーランの実行中は、駆動輪7に対してエンジンブレーキが作用せず、車両100の慣性エネルギーが消費されない。このため、フリーランを実行することで燃費の向上を図ることができる。
ここで、エンジン1が停止していると空調装置4による除湿能力が低下する。エンジン1が停止していると、空調装置4においてコンプレッサ4aが作動しないため、冷凍サイクルが停止する。これにより、エンジン1を停止していると、時間が経過するにつれてエバポレータ4dの温度が上昇することで、空調装置4による除湿機能が低下する。このため、エンジン1の停止時間が長くなると、フロントガラス等のウィンドウガラスが曇る可能性がある。
上記従来技術では、停車中にエンジンを停止するときのガラスの曇りを抑制する技術が提案されている。一方、本実施形態は、定常走行時などの走行中にエンジン1を停止するという上記従来技術には開示されていない制御によって燃費の向上を図るものである。エンジン1を停止して走行するフリーランでは、車両100の環境が停車中とは異なる。例えば、フリーランによる走行中は、車両100にあたる風(空気)の量が停車中とは異なる。走行速度が高いほど、車両100にあたる風量が多くなり、車体の放熱量が増えるため、ガラス表面が結露して曇りやすくなるという問題がある。こうした問題は走行中にエンジン1を停止する場合に特有のものであり、停車中のエンジン停止時には生じないものである。走行中にエンジン1を停止する場合に特有の問題を解決し、ガラスの曇りを抑制できることが望まれている。
本実施形態の車両用空調制御装置1−1は、エンジン1を停止して惰性により車両100を走行させる惰性走行中にエンジン1を始動するタイミングを車速に応じて変化させる。これにより、車速に応じて適切にエンジン1の始動タイミングを決定することができ、ガラスの曇りを抑制することができる。なお、エンジン1の始動タイミングとは、惰性走行の開始時を基点としたエンジン1の始動タイミングを示すものであり、惰性走行を連続して実行する継続時間に対応する。
車両用空調制御装置1−1は、車速が大きい場合、車速が小さい場合よりもエンジン1を始動するタイミングを早める。これにより、車速が大きく、車体の放熱量が大きくなる場合は、車速が小さく、車体の放熱量が小さい場合よりも早いタイミングでエンジン1が再始動される。よって、車速に応じてガラスの曇りを抑制することができる。一方、車両用空調制御装置1−1は、車速が小さい場合は車速が大きい場合よりもエンジン1の始動タイミングを遅くする。よって、相対的にガラスの曇りが生じにくい場面ではフリーランの実行時間を延長して燃費の向上を図ることができる。
図1および図2は、本実施形態のエンジン停止可能時間を示す図である。図1は、車速が所定車速V以下であり、かつブレーキONの状態におけるエンジン停止可能時間を示す図であり、図2は、車速が所定車速Vよりも大、あるいはブレーキOFFの少なくともいずれか一方である場合のエンジン停止可能時間を示す図である。図1および図2において、横軸は外気温、縦軸はエンジン停止可能時間を示す。
ここで、エンジン停止可能時間とは、エンジン1を停止しておくことができる時間であり、フリーランの要求がなされている場合に連続してエンジン1を停止しておくことを許容できる時間である。エンジン停止可能時間は、ガラスの曇り防止要件である。フリーラン実行中に、エンジン1を停止してからの経過時間がエンジン停止可能時間に達すると、エンジンECU30およびS&SECU31によってエンジン1が自動的に再始動される。なお、所定車速Vは、例えば、20km/hとすることができる。ただし、所定車速Vは、20km/hに限定されるものではなく、適宜定めることができる。所定車速Vは、例えば、停車する直前の車速や、車両100が直ちに停止することができる車速であってもよい。
図1において、符号C1は、車速が所定車速V以下であり、かつブレーキONの状態におけるエンジン停止可能時間を示す。エンジン停止可能時間C1は、下限温度t1においてステップ的に増加する。外気温が下限温度t1未満の場合、エンジン停止可能時間C1は0であり、フリーランは許可されない。下限温度t1よりも高温の領域では、外気温の増加に応じてエンジン停止可能時間C1が増加する。つまり、外気温が高温であるほど長時間フリーランを継続することが許容される。本実施形態では、下限温度t1よりも高温の領域において、エンジン停止可能時間C1が外気温の増加に対して指数関数的に増加する。すなわち、エンジン停止可能時間C1は、外気温の増加に応じて増加し、かつ外気温が高くなるほど、外気温の増加に対するエンジン停止可能時間C1の増加割合が大きくなる。なお、外気温が一定以上に高温の場合、継続時間に制限を設けずにフリーランを実行できるようにしてもよい。
図2において、符号C2は、車速が所定車速Vよりも大、あるいはブレーキOFFの少なくともいずれか一方である状態におけるエンジン停止可能時間を示す。図2に示すように、同じ外気温に対して、エンジン停止可能時間C2は、エンジン停止可能時間C1よりも短い。つまり、車両100が相対的に高車速で走行している場合や、ブレーキOFFの状態では、低車速かつブレーキONされている場合よりもフリーランの継続可能時間が短くされる。
このように、本実施形態では相対的に高車速で走行している場合のエンジン停止可能時間C2が、低車速で走行している場合のエンジン停止可能時間C1よりも短い時間とされる。すなわち、S&SECU31は、車速が大きい場合、車速が小さい場合よりも惰性走行中にエンジン1を始動するタイミングを早める。また、ブレーキペダルが踏まれていない場合のエンジン停止可能時間C2が、ブレーキペダルが踏まれている場合のエンジン停止可能時間C1よりも短い時間とされる。これにより、比較的高速で走行する場合や、定常速度を維持しようとする場合などの曇りが生じやすくなる状況において窓の曇りの発生を効果的に抑制することができる。
エンジン停止可能時間C2を示すラインは、エンジン停止可能時間C1を示すラインを外気温の高温側に平行移動させたものとすることができる。外気温が下限温度t2未満の場合、エンジン停止可能時間C2は0であり、フリーランは許可されない。エンジン停止可能時間C2は、下限温度t2においてステップ的に増加する。下限温度t2よりも高温の領域では、外気温の増加に応じてエンジン停止可能時間C2が増加する。
エンジン停止可能時間C2は、車速が大きいほどエンジン停止可能時間C1に対して短くなるようにされてもよい。一例として、エンジン停止可能時間C1を示すラインを外気温の高温側に平行移動させたものをエンジン停止可能時間C2とする場合、車速が大きいほど下限温度t2を高温とするようにしてもよい。
S&SECU31は、エンジン停止可能時間C1,C2を予めマップとして記憶しており、このマップを参照してフリーランの実行を許可するか否かを決定する。例えば、S&SECU31は、フリーランの実行開始を許可するか否かをエンジン停止可能時間C1,C2に基づいて決定する。S&SECU31は、運転者が車両100を加速させる意思がないと判断した場合など、エンジン停止可能時間以外のフリーラン実行条件が成立した場合、車速やブレーキ操作状態に基づいてフリーランを許可するか否かを判定する。ただし、フリーラン実行条件の判定順序はこれには限定されない。例えば、まずエンジン停止可能時間に基づいてエンジン1を停止することが可能か否かを判定し、その後に運転者が車両100を加速させる意思がないか否かを判定することもできる。
ブレーキ操作状態は、例えば、ブレーキスイッチの状態に基づいて取得することができる。ブレーキスイッチは、例えば、ブレーキペダルに対する踏込み量が一定以上である場合に信号を出力するもの、言い換えると、ブレーキONの状態であると信号を出力するものである。S&SECU31は、ブレーキスイッチが出力する信号に基づいて、ブレーキONあるいはブレーキOFFのいずれの状態であるかを判定することができる。
S&SECU31は、車速が所定車速V以下でかつブレーキONの状態である場合、外気温とエンジン停止可能時間C1とに基づいてフリーランの開始を許可するか否かを判定する。S&SECU31は、外気温が下限温度t1未満であればフリーランの実行を禁止し、エンジン停止可能時間C1以外のフリーラン実行条件が成立していたとしても、エンジン1を停止することを禁止する。これにより、空調装置4における除湿能力が維持され、ガラスの曇りの発生が抑制される。一方、S&SECU31は、外気温が下限温度t1以上であれば、フリーランの開始を許可する。この場合、S&SECU31は、エンジンECU30に対して、エンジン1の停止を指示する。エンジン1の停止指示を受けたエンジンECU30は、エンジン1に対する燃料の供給を停止してエンジン1を停止させ、フリーランを開始する。
S&SECU31は、フリーランが実行されている場合、フリーランの継続時間が外気温に応じたエンジン停止可能時間C1に達すると、フリーランを終了させる。フリーランが終了してエンジン1が再始動されることで、コンプレッサ4aの作動が開始され、空調装置4における冷凍サイクルが開始される。これにより、空調装置4における除湿能力が向上し、ガラスの曇りの発生が抑制されるようになる。
S&SECU31は、車速が所定車速Vよりも大である条件、あるいはブレーキOFFである条件の少なくともいずれか一方の条件が成立する場合、外気温とエンジン停止可能時間C2とに基づいて、フリーランの開始を許可するか否かを判定する。その判定の方法については、外気温とエンジン停止可能時間C1とに基づく判定方法と同様とすることができる。S&SECU31は、判定結果に基づいてフリーランの実行を許可あるいは禁止する。
S&SECU31は、エンジン再始動後のエンジン停止禁止時間(以下、単に「エンジン停止禁止時間」とも記載する。)を設ける。エンジン停止禁止時間は、フリーランの終了によってエンジン1が再始動された後に再びエンジン1を停止することを禁止する期間である。つまり、フリーランから復帰した後は、車室内の湿度が低下するまでフリーランの実行が禁止される。図4は、エンジン停止禁止時間を示す図である。図4において、横軸は外気温、縦軸はエンジン停止禁止時間を示す。外気温が高い場合のエンジン停止禁止時間は、外気温が低い場合のエンジン停止禁止時間よりも短い。また、エンジン停止禁止時間は、外気温が低くなるほど長い時間とされる。
このエンジン停止禁止時間は、車速に応じて可変とされてもよい。例えば、車速が大きい場合のエンジン停止禁止時間は、車速が小さい場合のエンジン停止禁止時間よりも長時間とすることができる。また、エンジン停止禁止時間は、車速が大きいほど長時間とされてもよい。
なお、エンジン停止可能時間のラインは、図1および図2に示すものには限定されない。エンジン停止可能時間は、例えば、図5に示すような形状とされてもよい。図5は、直線状に増加するエンジン停止可能時間を示す図である。図5に示すエンジン停止可能時間C3は、下限温度t3でステップ的に増加する。下限温度t3未満では、エンジン停止可能時間C3は0である。エンジン停止可能時間C3は、下限温度t3よりも高温の領域では、外気温の増加に対して直線的に増加する。
また、エンジン停止可能時間は、例えば、図6に示すような形状とされてもよい。図6は、対数関数的に増加するエンジン停止可能時間を示す図である。図6に示すエンジン停止可能時間C4は、下限温度t4でステップ的に増加する。下限温度t4未満では、エンジン停止可能時間C4は0である。エンジン停止可能時間C4は、下限温度t4よりも高温の領域では、外気温の増加に対して対数関数的に増加する。すなわち、エンジン停止可能時間C4は、外気温の増加に応じて増加し、かつ外気温が高くなるほど、外気温の増加に対するエンジン停止可能時間C4の増加割合が減少する。
(第1実施形態の第1変形例)
第1実施形態の第1変形例について説明する。上記第1実施形態(図1、図2)では、車速が所定車速V以下でかつブレーキONの状態と、それ以外の状態とでエンジン停止可能時間を異ならせたが、エンジン停止可能時間を可変とする条件はこれには限定されない。
例えば、車速が所定車速V以下である場合と、車速が所定車速Vよりも大の場合とでエンジン停止可能時間を異ならせるようにしてもよい。この場合、車速が所定車速Vよりも大である場合、車速が所定車速V以下の場合よりもエンジン停止可能時間を短くする。また、所定車速Vに対して車速が大であるほどエンジン停止可能時間を短くするようにしてもよい。
また、例えば、ブレーキONの走行状態と、ブレーキOFFの走行状態とでエンジン停止可能時間を異ならせるようにしてもよい。この場合、ブレーキOFFである状態では、ブレーキONである状態よりもエンジン停止可能時間を短くする。このようにブレーキ操作状態に応じてエンジン停止可能時間を可変とする場合、エンジン1を始動するタイミングを車速に応じて変化させないようにすることができる。
また、例えば、車速が所定車速V以下の条件、あるいはブレーキONの条件の少なくともいずれか一方の条件が成立する状態と、いずれの条件も成立しない状態とでエンジン停止可能時間を異ならせるようにしてもよい。このようにすれば、車両100の制動時にはエンジン1を始動するタイミングを車速に応じて変化させないようにすることができる。なお、いずれの条件も成立しない状態とは、車速が所定車速Vよりも大で、かつブレーキOFFの状態である。この場合、所定車速Vに対して車速が大であるほどエンジン停止可能時間を短くするようにしてもよい。
(第1実施形態の第2変形例)
第1実施形態の第2変形例について説明する。上記第1実施形態では、環境に関するパラメータ(以下、単に「環境パラメータ」とも記載する。)としての外気温と、車速やブレーキ操作状態とに基づいてエンジン停止可能時間が決定されたが、エンジン停止可能時間を決定する環境パラメータは、外気温には限定されない。なお、環境パラメータは、窓の曇りが発生しない状態でエンジン1を停止しておくことができる時間に影響を与えるパラメータであり、ガラスの曇りやすさに影響を与えるものである。
エンジン停止可能時間を決定する環境パラメータは、例えば、車両100の室内外の気温差の絶対値とされてもよい。例えば、室内外の気温差の絶対値が大きい場合のエンジン停止可能時間は、室内外の気温差の絶対値が小さい場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされる。なお、エンジン停止可能時間は、上記気温差の絶対値が同一であっても、外気温と内気温のいずれが高温であるかによって異なる値とされてもよい。一例として、気温差の絶対値が同一であるときに、外気温が内気温よりも低温である場合のエンジン停止可能時間が、外気温が内気温よりも高温である場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされてもよい。
エンジン停止可能時間を決定する環境パラメータは、室内湿度とされてもよい。例えば、室内湿度が高い場合のエンジン停止可能時間は、室内湿度が低い場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされてもよい。
エンジン停止可能時間を決定する環境パラメータは、室外湿度とされてもよい。例えば、室外湿度が高い場合のエンジン停止可能時間は、室外湿度が低い場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされてもよい。
エンジン停止可能時間を決定する環境パラメータは、室内外の湿度差の絶対値とされてもよい。例えば、室内外の湿度差の絶対値が大きい場合のエンジン停止可能時間は、室内外の湿度差の絶対値が小さい場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされてもよい。なお、エンジン停止可能時間は、上記湿度差の絶対値が同一であっても、室内湿度と室外湿度のいずれが高湿度であるかによって異なる値とされてもよい。一例として、湿度差の絶対値が同一であるときに、室内湿度が室外湿度よりも高湿度である場合のエンジン停止可能時間が、室内湿度が室外湿度よりも低湿度である場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされてもよい。
エンジン停止可能時間を決定する環境パラメータは、室内気温とされてもよい。例えば、室内気温が低い場合のエンジン停止可能時間は、室内気温が高い場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされてもよい。
なお、エンジン停止可能時間を決定するための環境パラメータは、例示したものには限定されない。例示した以外の環境パラメータに基づいてエンジン停止可能時間が決定されてもよい。
(第1実施形態の第3変形例)
第1実施形態の第3変形例について説明する。エンジン停止可能時間は、複数の環境パラメータの組合せに基づいて決定されてもよい。図7は、複数の環境パラメータとエンジン停止可能時間との対応関係を示す3次元マップの一例を示す図である。
図7に示すマップは、3次元の直交座標系において定められたエンジン停止可能時間のマップである。図7において、x軸およびy軸はそれぞれ環境パラメータを示し、z軸はエンジン停止可能時間を示す。x軸およびy軸には、例えば、車内温度、車内湿度、車外温度、車外湿度から互いに異なる環境パラメータを選択することができる。本変形例では、x軸が車両100の室内温度(内気温)、y軸が車両100の室外温度(外気温)を示す。これに限らず、車内湿度および車外温度に基づくエンジン停止可能時間のマップが用いられてもよく、車外湿度および車内温度に基づくエンジン停止可能時間のマップが用いられてもよい。なお、環境パラメータとして、室内外(車内外)の気温差の絶対値や室内外の湿度差の絶対値がマップに用いられてもよい。
図7において、符号C5は、y−z平面におけるエンジン停止可能時間を示す。エンジン停止可能時間C5は、内気温がマップにおける最低温度(原点に対応する内気温)である場合のエンジン停止可能時間を示している。エンジン停止可能時間C5は、下限温度t5においてステップ的に増加する。内気温が最低温度であり、かつ外気温が下限温度t5未満の場合、エンジン停止可能時間C5は0であり、フリーランは許可されない。下限温度t5よりも高温の領域では、外気温の増加に応じてエンジン停止可能時間C5が増加する。エンジン停止可能時間C5は、例えば、外気温の増加に対して指数関数的に増加する。
符号C6は、x−z平面におけるエンジン停止可能時間を示す。エンジン停止可能時間C6は、外気温がマップにおける最低温度(原点に対応する外気温)である場合のエンジン停止可能時間を示している。エンジン停止可能時間C6は、下限温度t6においてステップ的に増加する。外気温が最低温度であり、かつ内気温が下限温度t6未満の場合、エンジン停止可能時間C6は0であり、フリーランは許可されない。下限温度t6よりも高温の領域では、内気温の増加に応じてエンジン停止可能時間C6が増加する。エンジン停止可能時間C6は、例えば、内気温の増加に対して指数関数的に増加する。
外気温が最低温度よりも高く、かつ内気温が最低温度よりも高い領域におけるエンジン停止可能時間は、エンジン停止可能時間C5とエンジン停止可能時間C6とを接続する面SF1によって規定されている。エンジン停止可能時間を示す面SF1は、例えば、符号C7に示すように、エンジン停止可能時間C5とエンジン停止可能時間C6とを直線的に接続する面として定められている。直線C7よりも原点側の領域では、エンジン停止可能時間は0であり、フリーランは許可されない。また、直線C7よりも原点側と反対側の領域では、外気温および内気温に基づいてエンジン停止可能時間が正の値として定められ、エンジン停止可能時間を上限としてフリーランを継続的に実行することが許可される。
上記第1実施形態と同様に、エンジン停止可能時間は、走行状態に応じて可変とされる。走行状態は、例えば、車速やブレーキ操作状態とすることができる。一例として、車速が所定車速Vよりも大である条件あるいはブレーキOFFである条件の少なくともいずれか一方の条件が成立する場合のエンジン停止可能時間は、車速が所定車速V以下でかつブレーキONである場合のエンジン停止可能時間よりも短い時間とされる。車速が所定車速Vよりも大である条件あるいはブレーキOFFである条件の少なくともいずれか一方の条件が成立する場合のエンジン停止可能時間は、例えば、図7に示すエンジン停止可能時間SF1を内気温および外気温の高温側に平行移動させたものとすることができる。更に、車速が所定車速Vに対して高速であるほどエンジン停止可能時間が短くされてもよい。
本変形例によれば、複数の環境パラメータに基づくことで、車両内外の状況を正確に把握してエンジン停止可能時間を定めることができる。ガラスに曇りが生じるまでの時間を精度よく予測することができ、曇りの抑制による視界の確保と、燃費の向上とを高次元で両立することができる。
なお、本変形例では、二つの環境パラメータに基づいてエンジン停止可能時間を算出したが、これに限らず、三つ以上の環境パラメータに基づいてエンジン停止可能時間を算出するようにしてもよい。
(第1実施形態の第4変形例)
第1実施形態の第4変形例について説明する。エンジン停止可能時間は、周辺環境に基づいて可変とされてもよい。例えば、前方を先行車が走行中である場合と、先行車が存在しない場合とで車両100にあたる空気の量は変化する。先行車がいる場合、先行車がいない場合よりも車両100にあたる空気の量が減少する。また、先行車がいる場合、先行車の排気が自車両にあたることで、先行車がいない場合よりも自車両のガラスの温度が高くなる。
S&SECU31は、先行車が存在する場合、先行車が存在しない場合よりもエンジン停止可能時間を長い時間とするようにしてもよい。なお、先行車を検出する方法は、レーダーセンサによる検出方法等の従来公知の方法とすることができる。
エンジン停止可能時間は、自車両と先行車との車間距離に基づいて可変とされてもよい。例えば、車間距離が小さい場合のエンジン停止可能時間は、車間距離が大きい場合のエンジン停止可能時間よりも長い時間とされる。
エンジン停止可能時間は、先行車の車両サイズに基づいて可変とされてもよい。例えば、先行車がトラックやバス等の大型車両である場合、先行車が乗用車等の小型車両である場合よりも、自車両にあたる空気の量が少なくなることや、多くの排気が自車両にあたることが考えられる。S&SECU31は、先行車が大型車両である場合、先行車が小型車両である場合よりもエンジン停止可能時間を長い時間とするようにしてもよい。
(第1実施形態の第5変形例)
第1実施形態の第5変形例について説明する。上記第1実施形態および上記各変形例の車両用空調制御装置1−1が適用可能な車両は、上記第1実施形態で開示されたものには限定されない。例えば、車両用空調制御装置1−1は、図8を参照して説明する車両110に適用されてもよい。図8は、本変形例に係る車両の概略構成を示す図である。
図8に示す車両110において、上記第1実施形態の車両100と異なる点は、T/M20として自動変速機を備える点である。T/M20は、例えば、有段変速機あるいは無段変速機であり、T/MECU32によって変速段あるいは変速比の切替えが自動でなされる。フリーランを実行する場合、S&SECU31は、走行中にエンジン1を停止する。このときに、S&SECU31は、T/MECU32によってT/M20による動力の伝達を遮断させる。
S&SECU31がフリーランの実行を決定する条件には、例えば、走行中にアクセルOFFされている条件が含まれる。例えば、シフトポジションが前進用のポジションであって、かつ走行中にアクセルOFFされた場合、S&SECU31は、上記第1実施形態や上記各変形例で算出されるエンジン停止可能時間に基づいて、フリーランを実行するか否かを決定する。また、S&SECU31は、フリーランの実行中に、フリーランによる連続走行時間がエンジン停止可能時間に達すると、フリーランを終了してエンジン1を再始動する。フリーランを終了する場合、S&SECU31は、エンジン1の再始動と同期して、あるいはエンジン1の再始動と前後してT/MECU32によってT/M20による動力の伝達を接続させる。
(第2実施形態)
図9から図13を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態において、上記第1実施形態と異なる点は、フリーラン中のブロアー4fによる送風量を調節することにより、車両100内部の乾燥を促進し、エンジン停止可能時間の延長を図る点である。図9は、本実施形態におけるブロアー4fの風量の設定を示す図である。以下の説明では、ブロアー4fの風量を単に「ブロア風量」とも記載する。
図9において、横軸はエンジン停止時間差、縦軸はブロア風量の調節量を示す。エンジン停止時間差とは、車両100の停車中と走行中とのエンジン1を停止可能な時間差を示す。停車中にエンジン1を停止するアイドルストップと、走行中にエンジン1を停止するフリーランとでは、車両100にあたる風量が異なるなど、車両100の環境が異なることから、エンジン1を停止してからガラスの曇りが発生するまでの時間が異なる。エンジン停止時間差ΔTは、停車中にエンジン1を停止しておくことができる時間である停車時エンジン停止可能時間T1と、フリーランによってエンジン1を停止しておくことができる時間であるフリーラン時エンジン停止可能時間T2との差分であり、下記式(1)で表される時間差である。
ΔT = T1−T2…(1)
なお、停車時エンジン停止可能時間T1は、車両100の停車中にエンジン1を停止した場合に車両100の窓に曇りが発生するまでの時間の予測値に基づく第一予測時間である。停車時エンジン停止可能時間T1は、室外気温、室外湿度、室内気温、室内湿度等に基づいて算出することができる。フリーラン時エンジン停止可能時間T2は、惰性走行した場合に窓に曇りが発生するまでの時間の予測値に基づく第二予測時間である。フリーラン時エンジン停止可能時間T2は、上記第1実施形態のフリーラン時のエンジン停止可能時間と同様にして算出することができる。
図9に示すように、S&SECU31は、エンジン停止時間差ΔTが小さい場合、すなわち停車時と走行時とでエンジン1を停止しておくことができる時間に大きな差がない場合は、ブロア風量の調節量を小さくする。一方、S&SECU31は、エンジン停止時間差ΔTが大きい場合、すなわち、停車時にエンジン1を停止しておくことができる時間と、フリーランでエンジン1を停止しておくことができる時間との差が大きい場合、ブロア風量の調節量を大きくする。これにより、以下に図10から図12を参照して説明するように、フリーランを実行可能な時間の延長を図ることができる。
図10は、ブロア風量と空気量との関係を示す図、図11は、空気量と曇り発生までの時間との関係を示す図、図12は、曇り発生までの時間とエンジン停止可能時間との関係を示す図である。
図10に示すように、ブロア風量が大となるほど車室内に供給される乾燥した空気量が多くなる。つまり、ブロア風量の調節によって車両100内部の乾燥を促進する度合いを変化させることができる。また、図11に示すように、車室内に供給される乾燥した空気量が多くなると、エンジン1が停止されてからガラスに曇りが発生するまでの経過時間が長くなる。そして、図12に示すように、曇りが発生するまでの時間が長くなることで、エンジン1を連続して停止しておくことができる時間が長くなる。本実施形態によれば、エンジン停止時間差ΔTに応じてブロア風量が増加されることで、ガラスに曇りが発生することなくエンジン1を停止してフリーランを継続することができる時間の延長を図ることができる。本実施形態のS&SECU31は、空調装置4を制御する機能を有している。
図13を参照して、本実施形態の動作について説明する。図13は、本実施形態の空調制御の動作を示すフローチャートである。図13に示す制御フローは、車両100のシステムが作動しているときに実行されるものであり、例えば所定の間隔で繰り返し実行される。なお、本制御フローは、空調装置4がONとされている場合に限り実行されてもよく、あるいは空調装置4において風量の調節や内気循環/外気導入の切替え等が自動でなされるオートモードが選択されている場合に限り実行されてもよい。
ステップS1では、S&SECU31により、ブロアONであるか否かが判定される。S&SECU31は、ブロアー4fが作動しているか否かを判断する。その判定の結果、ブロアONであると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS2に進み、そうでない場合(ステップS1−N)には本制御フローは終了する。
ステップS2では、S&SECU31により、エンジン停止中であるか否かが判定される。S&SECU31は、エンジンECU30から取得する情報に基づいてステップS2の判定を行う。ステップS2の判定の結果、エンジン停止中であると判定された場合(ステップS2−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS2−N)には本制御フローは終了する。
ステップS3では、S&SECU31により、外気温と湿度のマップから停車時エンジン停止可能時間T1が算出される。S&SECU31は、外気温と、車内湿度と停車時エンジン停止可能時間ΔTとの対応関係を定めたマップを予め記憶しており、このマップを参照して停車時エンジン停止可能時間T1を算出する。
次に、ステップS4では、S&SECU31により、走行中であるか否かが判定される。その結果、走行中であると判定された場合(ステップS4−Y)にはステップS5に進み、そうでない場合(ステップS4−N)には本制御フローは終了する。なお、ステップS4で否定判定がなされた場合、停車時エンジン停止可能時間T1に到達するまでアイドルストップを実行するようにしてもよい。
ステップS5では、S&SECU31により、フリーラン時エンジン停止可能時間T2が算出される。S&SECU31は、走行中曇り防止のためのエンジン停止時間マップを予め記憶している。走行中曇り防止のためのエンジン停止時間マップは、例えば、上記第1実施形態で図1および図2を参照して説明したものを用いることができる。ステップS5が実行されると、ステップS6に進む。
ステップS6では、S&SECU31により、停車時エンジン停止可能時間T1がフリーラン時エンジン停止可能時間T2よりも大であるか否かが判定される。S&SECU31は、ステップS3で算出された停車時エンジン停止可能時間T1と、ステップS5で算出されたフリーラン時エンジン停止可能時間T2とに基づいてステップS6の判定を行う。その判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS6−Y)にはステップS7に進み、そうでない場合(ステップS6−N)には本制御フローは終了する。
ステップS7では、S&SECU31により、エンジン停止時間差ΔTが算出される。エンジン停止時間差ΔTは、上記式(1)によって算出される。ステップS7が実行されると、ステップS8に進む。
ステップS8では、S&SECU31により、ブロア風量の調整量が計算される。S&SECU31は、ステップS7で算出されたエンジン停止時間差ΔTに基づいてブロア風量の調整量を算出する。S&SECU31は、例えば、図9を参照して説明したように、エンジン停止時間差ΔTが大きな場合、エンジン停止時間差ΔTが小さな場合よりもブロア風量の調整量を大きな値とする。S&SECU31は、決定したブロア風量の調整量の分だけブロア風量を増加させるようにブロア風量の目標値を定める。すなわち、S&SECU31は、本実施形態のブロア風量の調整がなされない場合のブロア風量に対して、ステップS8で算出した調整量を加算したものをブロア風量の目標値とする。ステップS8が実行されると、ステップS9に進む。
ステップS9では、S&SECU31により、ブロア風量が調整される。S&SECU31は、ステップS8で定めたブロア風量の目標値を実現するように、ブロアー4fを制御する。ステップS9が実行されると、本制御フローは終了する。
なお、ステップS8におけるブロア風量の調整量の計算において、内外気の切替えが考慮されてもよい。例えば、空調装置4においてオートモードが選択されている場合、内気循環の場合と外気導入の場合とでブロア風量の調整量が可変とされてもよい。例えば、内気循環の場合、外気導入の場合よりもブロア風量の調整量として大きな値が定められてもよい。また、それまで内気循環されていた場合に、ブロア風量の調整に加えて、外気導入への切替えがなされてもよい。
また、ステップS8では、エンジン停止時間差ΔTに応じてブロア風量の調整量が計算されたが、これには限定されない。フリーランにおいてエンジン1を停止しておくことができる時間は、例えば、車速に応じて変化する。従って、ブロア風量の調整量は、車速に基づいて算出するようにされてもよい。例えば、車速が大である場合のブロア風量の調節量が、車速が小である場合のブロア風量の調節量よりも大きな値とされてもよい。また、車速の増加に対して、ブロア風量の調整量が直線的に増加するようにされてもよい。
本実施形態によれば、エンジン停止時間差ΔTに応じてブロア風量が調節されることで、曇り抑制による視界の確保とエンジン停止時間の確保による燃費向上とを両立させることができる。
なお、ブロア風量の調節に加えて、外気の導入量が調節されてもよい。外気が導入されることで、車室内の空気が入れ換えられ、乾燥が促進される。例えば、ブロア風量の調節に加えて、ブロアー4fが送る空気における内気循環の空気量と外気導入の空気量との割合を調節することで、車室内の乾燥を促進することが可能である。一例として、ブロア風量の調整量が大きい場合の外気の割合は、ブロア風量の調整量が小さい場合の外気の割合よりも大きな値とされる。また、例えば、ブロア風量の調整を全て導入する外気量の調整で実現するようにしてもよい。すなわち、ブロア風量の調整量の分だけ外気の導入量を増加するようにしてもよい。
(第3実施形態)
図14から図16を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の車両用空調制御装置1−2において、上記各実施形態の車両用空調制御装置1−1と異なる点は、コンプレッサ4aで生成した冷気を溜めておく装置を備え、予め蓄積しておいた乾燥した冷気をフリーラン時に車室内に供給する点である。S&SECU31は、乾燥した空気を供給することで車両120内部の乾燥を促進し、フリーラン中のガラスの曇りを抑制する。図14は、本実施形態のブロア風量の説明図、図15は、本実施形態に係る車両120の概略構成図、図16は、本実施形態の空調制御の動作を示すフローチャートである。
図14において、横軸はエンジン停止時間差ΔT、縦軸はブロア風量をそれぞれ示す。本実施形態のS&SECU31は、空調装置4を制御する機能を有している。S&SECU31は、ブロアー4fによって車室内に送られる空気と共に、溜めておいた乾燥空気を車室内に供給することができる。乾燥空気を混合した空気が車室内に供給されることで、車両内部の乾燥が促進される。車室内の乾燥が促進されることで、ガラスに曇りが生じることが抑制され、エンジン停止可能時間の延長が可能となる。
S&SECU31は、例えば、エンジン停止時間差ΔTに応じた割合で、ブロアー4fによって車室内に供給する空気に対して溜めておいた乾燥空気を混合する。エンジン停止時間差ΔTが大きい場合の送風量における乾燥空気の割合は、エンジン停止時間差ΔTが小さい場合の乾燥空気の割合よりも高くされる。乾燥空気の割合を調節することにより、車両120内部の乾燥を促進する度合いを変化させることができる。
本実施形態では、エンジン停止時間差ΔTが大きくなるほど乾燥空気の割合が高くされる。よって、本実施形態によれば、車速が大きい場合などのガラスの曇りが生じやすい走行状態であっても、曇りの発生を抑制しつつフリーランを実行できる時間を延長することができ、燃費を向上させることができる。
図15に示すように、空調装置4は、冷気保存装置4gを有する。冷気保存装置4gは、エバポレータ4dを通過して除湿された乾燥した冷気を蓄える装置である。冷気保存装置4gは、例えば、乾燥した冷気を蓄える蓄積容器と、蓄積容器の開口部を開閉し、かつ任意の開度に制御可能な制御弁と、開口部を介して蓄積容器内に冷気を送り込むポンプ等の圧送手段とを有する。圧送手段は、エンジン1の動力によって駆動されて冷気を送るものとすることができる。蓄積容器は、蓄えた乾燥空気の温度の変化を抑制する断熱容器であることが好ましい。冷気保存装置4gは、乾燥した空気を溜めておくだけのものであってもよい。従って、冷気保存装置4gは、快適性向上のための蓄冷用の装置とは異なり、簡易的なものとすることができる。
蓄冷湿度センサ33は、冷気保存装置4gの蓄積容器内の湿度を検出するものである。蓄冷湿度センサ33は、エンジンECU30およびS&SECU31に接続されており、エンジンECU30およびS&SECU31に対して検出結果を示す信号を出力する。
S&SECU31は、エンジン1の運転時であって、かつ空調装置4による除湿が行われているときに、除湿された乾燥空気を冷気保存装置4gの蓄積容器に蓄える。S&SECU31は、冷気保存装置4gの制御弁を開弁させて開口部を開放し、圧送手段によってエバポレータ4dよりも下流側の乾燥空気を蓄積容器に送り込む。S&SECU31は、制御弁によって開口部を閉鎖することで、蓄積容器に蓄えられた乾燥空気をフリーラン時に備えて保持しておくことができる。
また、S&SECU31は、冷気保存装置4gの蓄積容器に蓄えた乾燥空気を車室内に供給する場合、制御弁を開き、保存用器内の乾燥空気をエバポレータ4dの下流側に流出させる。これにより、ブロアー4fによって送られる空気と、冷気保存装置4gから流出する乾燥空気とが混合されて車室内に供給される。S&SECU31は、冷気保存装置4gによって乾燥空気を供給させる場合、冷気保存装置4gによって供給する乾燥空気とブロアー4fによって送るブロア風量とを合計した風量がブロアの設定風量となるように、ブロアー4fを制御する。すなわち、S&SECU31は、冷気保存装置4gが供給する乾燥空気の風量に応じてブロア風量を低減させる。本実施形態では、車室内に吹き出す風量を変動させることなく車両内部の乾燥を促進することができるという利点がある。
図16を参照して、本実施形態の空調制御の動作について説明する。図16に示す制御フローは、例えば、車両120のシステムが作動しているときに実行されるものであり、例えば所定の間隔で繰り返し実行される。なお、本制御フローは、空調装置4がONとされている場合に限り実行されてもよく、あるいは空調装置4において風量の調節や内気循環/外気導入の切替え等が自動でなされるオートモードが選択されている場合に限り実行されてもよい。
ステップS11からステップS17までは、上記第2実施形態(図13)のステップS1からステップS7までと同様とすることができる。すなわち、ブロアON(ステップS11−Y)であり、エンジン停止中(S12−Y)であると、ステップS13で停車時エンジン停止可能時間T1が算出され、ステップS14に進む。そして、走行中(ステップS14−Y)であると、ステップS15でフリーラン時エンジン停止可能時間T2が算出され、ステップS16に進む。停車時エンジン停止可能時間T1がフリーラン時エンジン停止可能時間T2よりも大(ステップS16−Y)であると、ステップS17でエンジン停止時間差ΔTが算出され、ステップS18に進む。
ステップS18では、S&SECU31により、エンジン停止時間差ΔTとブロア設定量から蓄冷混合割合が算出される。蓄冷混合割合は、ブロア設定量の風量のうち冷気保存装置4gから流出して車室内に供給される乾燥空気の風量の割合である。蓄冷混合割合は、例えば、図14に示すマップを参照して定められる。なお、蓄冷混合割合は、更に、冷気保存装置4gに蓄えられた乾燥空気の湿度に基づいて算出されるようにしてもよい。一例として、蓄えられた乾燥空気の湿度が高い場合、乾燥空気の湿度が低い場合よりも乾燥空気の混合割合を高めるようにしてもよい。また、蓄冷混合割合は、車室内に供給する空気の目標湿度に基づいて定められてもよい。ステップS18が実行されると、ステップS19に進む。
ステップS19では、S&SECU31により、エンジン停止時間とフリーラン時エンジン停止可能時間T2とに基づいて、風量調整開始時刻を過ぎたか否かが判定される。S&SECU31は、下記式(2)が成立するか否かを判定する。
エンジン停止時間 > T2−3[s]…(2)
上記式(2)のエンジン停止時間は、フリーランにおいて連続してエンジン1を停止している時間であり、フリーランの開始から現在までの経過時間である。つまり、S&SECU31は、エンジン停止時間が、フリーラン時エンジン停止可能時間T2に達するまで所定時間未満となると、ステップS19で肯定判定を行う。この所定時間は、例えば3[s]とされる。なお、所定時間は、3[s]に限定されるものではなく、適宜定めることができる。所定時間は、例えば、運転者の好みに応じて可変とされてもよい。ステップS19の判定の結果、上記式(2)が成立すると判定された場合(ステップS19−Y)にはステップS20に進み、そうでない場合(ステップS19−N)には本制御フローは終了する。
ステップS20では、S&SECU31により、ブロア風量が調整される。S&SECU31は、ステップS18で算出された蓄冷混合割合を実現するように、ブロアー4fおよび冷気保存装置4gをそれぞれ制御する。ステップS20が実行されると、本制御フローは終了する。
ブロア風量の調整は、例えば、冷気保存装置4gに蓄えられた乾燥空気が減少して要求される風量の乾燥空気を供給できなくなるまで行われる。なお、ステップS18では、エンジン停止時間差ΔTに応じて蓄冷混合割合が計算されたが、これには限定されない。蓄冷混合割合は、例えば、エンジン停止時間差ΔTに代えて、車速に基づいて算出されてもよい。例えば、車速が大である場合の蓄冷混合割合は、車速が小である場合の蓄冷混合割合よりも大きな値とされる。また、車速の増加に対して、蓄冷混合割合が単調に増加するようにされてもよい。
本実施形態によれば、エンジン停止時間差ΔTに応じて、車室内に供給される空気に冷気保存装置4gからの乾燥空気が混合される。これにより、曇り抑制による視界の確保とエンジン停止時間の確保による燃費向上とを両立させることができる。冷気保存装置4gは、乾燥した低温の空気を車室内に供給することができる。このため、エンジン1が停止されて空調装置4の冷凍サイクルが停止し、エバポレータ4dによる冷却能力や除湿能力が低下した状態であっても、冷気保存装置4gの乾燥空気によって適切な湿度や温度を実現しやすくなる。
本実施形態では、フリーラン開始後の初期(S19−N)には冷気保存装置4gの乾燥空気が使用されず、エンジン停止時間がフリーラン時エンジン停止可能時間T2に近くなって(S19−Y)から冷気保存装置4gの乾燥空気が車室内に供給される。つまり、ガラスの曇りが発生しやすい室内環境となるまで乾燥空気が温存される。よって、冷気保存装置4gに乾燥空気を蓄えるための動力損失が抑制される。
なお、本実施形態の冷気保存装置4gは、蓄積容器に対して乾燥空気を送り込む圧送手段を有していたが、これには限定されない。冷気保存装置4gは、圧送手段を備えていないものであってもよい。例えば、蓄積容器は、ブロアー4fによって送られる空気の流れによって乾燥空気が流入し、かつブロアー4fによって送られる空気の流れによって蓄えた乾燥空気を流出させるものであってもよい。蓄積容器は、例えば、エバポレータ4dよりも下流側の空気の流路に配置され、空気の流れ方向の上流側に向けて開口する流入口と、空気の流れ方向の下流側に向けて開口する流出口とを有するものとしてもよい。流入口および流出口に制御弁を配置することで、蓄積容器に対する乾燥空気の流入量および蓄積容器からの乾燥空気の流出量を制御することができる。
また、本実施形態では、空調装置4によって除湿された空気が冷気保存装置4gに蓄えられたが、これに限定されるものではない。例えば、車両用空調制御装置1−2は、空調装置4とは別に除湿手段を備え、当該除湿手段によって除湿した空気を冷気保存装置4gに蓄えるようにしてもよい。また、車両用空調制御装置1−2は、低湿度の外気を予め冷気保存装置4gに蓄えるようにしてもよい。例えば、外気が低湿度であるときに外気を冷気保存装置4gに蓄えておくようにすればよい。
冷気保存装置4gの乾燥空気を車室内に供給することに加えて、外気の導入量が調節されてもよい。外気が導入されることで、車室内の空気が入れ換えられ、乾燥が促進される。ブロアー4fが送る空気における内気循環の空気量と外気導入の空気量との割合を調節することで、車室内の乾燥を促進することが可能である。一例として、エンジン停止時間差ΔTが大きい場合の外気の割合は、エンジン停止時間差ΔTが小さい場合の外気の割合よりも大きな値とされる。
また、例えば、冷気保存装置4gの乾燥空気を車室内に供給することと、外気の導入とを選択的に実行するようにしてもよい。例えば、冷気保存装置4gに蓄えられた乾燥空気あるいは外気のいずれか湿度が低い方の空気を車室内に導入するようにすることができる。このようにすれば、効果的に車室内の乾燥を促進することができる。
上記の各実施形態および各変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。