JP2011189812A - 車両の制御装置 - Google Patents

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圭佑 福田
Noriaki Iwase
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Abstract

【課題】アイドルストップ制御機能付きの車両において、アイドルストップ中の空調能力向上とエンジン停止時間(アイドルストップ時間)の延長とを実現する。
【解決手段】車両トルクモデルを用いてエンジン回転速度が容量可変型のコンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下するタイミング(以下「コンプレッサ停止タイミング」という)を予測し、予測したコンプレッサ停止タイミングの所定時間前からエバポレータ温度低下制御を実行する。このエバポレータ温度低下制御実行中は、コンプレッサ1の容量を最大容量に増加させ且つ送風ファン12の回転速度(送風量)を所定量低下させると共に、ラジエータファン47の回転速度(送風量)を最大値まで増加させる。このエバポレータ温度低下制御を終了してエンジン4がアイドルストップした後も、引き続き送風ファン12の回転速度(送風量)を所定量低下させた状態に維持する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジン運転中に自動停止要求が発生した時に該エンジンを自動停止するアイドルストップ制御機能を備えた車両の制御装置に関する発明である。
アイドルストップ制御機能付きの車両では、走行中に空調装置を作動させて車室内を空調している場合は、アイドルストップ後も、車室内の空調を継続する必要がある。しかし、アイドルストップ中は、エンジンが停止して空調装置のコンプレッサ(圧縮機)の駆動が停止されるため、アイドルストップ中はエバポレータ(蒸発器)への冷媒の循環が停止してエバポレータの温度上昇を抑えることができない。このため、アイドルストップ中の空調能力が低下すると共に、アイドルストップ中にエバポレータの温度がコンプレッサ駆動開始温度を越えてエンジンが再始動されるまでの時間(エンジン停止時間)が短くなりやすい。
そこで、特許文献1(特開2001−310620号公報)では、ブレーキ作動中に車速が判定閾値(所定車速)以下になったか否かで停車直前の状態であるか否かを判定し、停車直前の状態であると判定したときに、エバポレータの温度を所定温度以下に低下させるようにコンプレッサの運転を制御することで、アイドルストップ開始時のエバポレータの温度を従来よりも低下させるようにしている。更に、特許文献1では、エンジン運転中及びアイドルストップ中における空調装置の送風ファンの回転速度(送風量)を、乗員が空調温度設定スイッチで設定した目標吹出温度に応じて設定するようにしている。
特開2001−310620号公報
ところで、車両減速中にエンジン回転速度がコンプレッサを駆動可能な最小のエンジン回転速度(以下「コンプレッサ停止回転速度」という)まで低下すると、コンプレッサの駆動が停止されるため、特許文献1のように、ブレーキ作動中に車速が判定閾値(所定車速)以下になったか否かで、エバポレータの温度を低下させるタイミングを判定すると、アイドルストップ開始までにエバポレータの温度を十分に低下させる時間を確保できない可能性がある。
これを具体的に説明すると、車速とエンジン回転速度との関係は、一定ではなく、変速機のギア比やトルクコンバータの入出力軸回転速度比によって変化するため、車速が判定閾値(所定車速)に達した時のエンジン回転速度が想定範囲よりも低くなる可能性があり、その結果、車速が判定閾値(所定車速)に達してからエンジン回転速度がコンプレッサ停止回転速度に達するまでの時間が想定範囲よりも短くなる可能性がある。しかも、エバポレータの温度を低下させる制御の実行中も、空調装置の送風ファンの回転速度(送風量)が走行中と同じ目標吹出温度に応じて設定されるため、エバポレータの温度を低下させる速度が遅くなって、アイドルストップ開始までにエバポレータの温度を所定温度以下に低下させることができない可能性がある。しかも、アイドルストップ中も、空調装置の送風ファンの回転速度(送風量)が走行中と同じ目標吹出温度に応じて設定されるため、エバポレータの温度上昇を遅くすることができず、エンジン停止時間(アイドルストップ時間)が短くなってしまう可能性がある。このため、特許文献1の技術では、アイドルストップ前のエバポレータ温度低下制御によるアイドルストップ中の空調能力向上とエンジン停止時間(アイドルストップ時間)の延長に関して、期待するほどの効果は得られないと思われる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アイドルストップ中の空調能力向上とエンジン停止時間(アイドルストップ時間)の延長とを実現できる車両の制御装置を提供することである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の動力源となるエンジンと、前記エンジンの運転中に自動停止要求が発生した時に該エンジンを自動停止するアイドルストップ制御手段と、前記エンジンによって駆動されるコンプレッサによって冷凍サイクル内の冷媒をエバポレータへ循環させて該エバポレータの冷却作用によって車室内に吹き出す空気温度を調節する空調装置とを備えた車両の制御装置において、前記コンプレッサは、容量可変型のコンプレッサであり、エンジン回転速度の変化を予測する車両トルクモデルを用いてエンジン回転速度が前記コンプレッサを駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下するタイミング(以下「コンプレッサ停止タイミング」という)を予測するコンプレッサ停止タイミング予測手段と、前記コンプレッサ停止タイミング予測手段で予測したコンプレッサ停止タイミングの所定時間前から前記コンプレッサの容量を増加させ且つ前記空調装置の送風ファンの回転速度を低下させるエバポレータ温度低下制御を実行する空調制御手段とを備えた構成としたものである。
この場合、エバポレータ温度低下制御の実行中にコンプレッサの容量を最大容量まで増加させても良いし、それよりも少ない所定量まで増加させるようにして良い。コンプレッサの容量が大きくなるほど、エバポレータの温度低下速度を速めることができ、エバポレータ温度低下制御の実行時間を短くすることができる。また、エバポレータ温度低下制御の実行中に空調装置の送風ファンの回転速度(送風量)を低下させる量は、乗員が送風量の低下をさほど不快に感じない範囲で設定すれば良い。
本発明では、車両トルクモデルを用いてエンジン回転速度がコンプレッサを駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下するコンプレッサ停止タイミングを予測し、予測したコンプレッサ停止タイミングの所定時間前からエバポレータ温度低下制御を実行するようにしているため、アイドルストップ前にエバポレータ温度低下制御を実行する時間を確実に所定時間確保することができる。しかも、エバポレータ温度低下制御の実行中にコンプレッサの容量を増加させて冷凍サイクルの冷却能力を増大させながら空調装置の送風ファンの回転速度(送風量)を低下させるため、アイドルストップ開始までにエバポレータの温度を効率良く低下させることが可能となる。これにより、アイドルストップ開始時のエバポレータの温度を従来より低下させることが可能となり、アイドルストップ中の空調能力を向上させることができると共に、エンジン停止時間(アイドルストップ時間)の延長も可能となる。この場合、エバポレータ温度低下制御の実行中に送風ファンの回転速度(送風量)を低下させるため、乗員が空調温度設定スイッチで設定した目標吹出温度よりも吹出温度が少し高くなるかもしれないが、エバポレータ温度低下制御の実行時間は短時間であるため、乗員がほとんど不快感を感じることはない。
更に、空調装置の冷凍サイクルがエンジンルーム内に配置されていることを考慮して、請求項2のように、エバポレータ温度低下制御の実行中にエンジンルーム内に設置されたラジエータファンの回転速度(送風量)を増加させるようにすれば良い。このようにすれば、エバポレータ温度低下制御の実行中に、ラジエータファンの送風量を増加させてエンジンルーム内の空冷効果を高めることができるため、その空冷効果によって冷凍サイクル周辺の雰囲気温度を低下させて、エバポレータの温度低下を促進することができる。この場合、エバポレータ温度低下制御の実行中にラジエータファンの回転速度を最大値まで増加させても良いし、それよりも少ない所定量まで増加させるようにして良い。ラジエータファンの回転速度が高くなるほど、冷凍サイクルに対する空冷効果を高めることができる。
ところで、運転者がアクセルを踏み込んで走行している状態が続いている期間は、自動停止要求(アイドルストップ要求)が発生しないが、運転者がブレーキを踏み込んで減速し始めると、その後、車両が停止する可能性があるため、状況によっては、自動停止要求が発生してアイドルストップが実行される可能性がある。このように、アイドルストップが実行される場合は、その前提条件として、少なくともブレーキの踏込み操作が行われていることが条件となる。
この点を考慮して、請求項3のように、ブレーキ操作検出手段でブレーキの踏込み操作が検出されてからコンプレッサ停止タイミングの予測演算を開始するようにしても良い。このようにすれば、暫くするとアイドルストップが実行される可能性がある運転領域でのみコンプレッサ停止タイミングの予測演算を行い、暫くしてもアイドルストップが実行される可能性がない運転領域ではコンプレッサ停止タイミングの予測演算を行わずに済むため、その予測演算を実行する車載コンピュータの演算処理負荷を軽減できる。但し、本発明は、車載コンピュータの演算処理能力に余裕があれば、全運転領域でコンプレッサ停止タイミングの予測演算を所定周期で繰り返すようにしても良いことは言うまでもない。
また、請求項4のように、所定の演算周期でコンプレッサ停止タイミングを予測する演算を繰り返し、それまでに予測した複数のコンプレッサ停止タイミングの中から最も早く到来するコンプレッサ停止タイミングを最終的なコンプレッサ停止タイミングとして決定し、最終的なコンプレッサ停止タイミングの所定時間前からエバポレータ温度低下制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、コンプレッサ停止タイミングの予測誤差があっても、エバポレータ温度低下制御の実行時間を所定時間確保することができ、コンプレッサ停止タイミングの予測誤差によってエバポレータ温度低下制御の実行時間が短くなることを防止できる。この場合、エバポレータ温度低下制御の開始タイミングが到来するまでコンプレッサ停止タイミングの予測演算を所定の演算周期で繰り返すようにすれば良い。
本発明は、エバポレータ温度低下制御の実行時間(所定時間)は予め決められた一定時間としても良いが、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータの温度が高いほど、エバポレータ温度低下制御によりエバポレータの温度をアイドルストップ開始時の目標温度領域に低下させるのに要する時間が長くなるため、請求項5のように、エバポレータの温度に基づいて前記所定時間(エバポレータ温度低下制御の実行時間)を設定するようにしても良い。このようにすれば、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータの温度が高い場合は、それに応じてエバポレータ温度低下制御の実行時間を長く設定し、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータの温度が低い場合は、それに応じてエバポレータ温度低下制御の実行時間を短く設定するという制御が可能となる。これにより、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータの温度が高い場合でも、エバポレータ温度低下制御によりエバポレータの温度をアイドルストップ開始時の目標温度領域まで確実に低下させることができ、一方、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータの温度が低い場合は、エバポレータ温度低下制御によりエバポレータがアイドルストップ開始時の目標温度領域以下に過冷却されることを防止できる。
また、請求項6のように、エバポレータ温度低下制御により空調装置の送風ファンの回転速度を低下させた状態をエンジンの自動停止後(アイドルストップ中)も継続するようにしても良い。このようにすれば、アイドルストップ中のエバポレータの温度上昇速度を遅くすることができ、エバポレータ温度低下制御によりアイドルストップ開始時のエバポレータの温度を低下させることと相俟ってエンジン停止時間(アイドルストップ時間)をより効果的に延長することができる。
この場合、請求項7のように、エバポレータを通過した風量のうちヒータコアをバイパスする風量と該ヒータコアを通過する風量との割合を調整するエアミックスドアを備えた空調装置においては、エバポレータ温度低下制御により空調装置の送風ファンの回転速度を低下させる低下量を、エバポレータの温度とエアミックスドアの開度とに基づいて設定するようにしても良い。このようにすれば、空調装置の送風ファンの回転速度(送風量)を低下させる低下量を、乗員がさほど不快感を感じないように適正に設定できる。
また、アイドルストップ中にエバポレータの温度が高くなり過ぎると、空調能力が低下して乗員が不快感を感じるようになるため、請求項8のように、アイドルストップ中にエバポレータの温度が所定温度T1以上に上昇した時にエンジンを始動させてコンプレッサを駆動するようにすると良い。このようにすれば、アイドルストップ中にエバポレータの温度上昇により空調能力が低下して乗員が不快感を感じるようになる前に、コンプレッサを駆動してエバポレータの温度を低下させて空調能力を回復させることができる。
また、請求項9のように、エバポレータ温度低下制御の実行中にエバポレータの温度が所定温度T2以下に低下した時にコンプレッサの容量を所定量低下させるようにすると良い。このようにすれば、エバポレータ温度低下制御の実行中にエバポレータの温度が所定温度T2以下に低下した時にエバポレータの温度低下を抑えることができ、エバポレータの凍結を防止できる。
図1は本発明の一実施例の制御系全体の構成を示す図である。 図2はアイドルストップ用空調制御の一例を説明するタイムチャートである。 図3はエバポレータ温度低下制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャート(その1)である。 図4はエバポレータ温度低下制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャート(その2)である。 図5はアイドルストップ中空調制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態をトルクコンバータ付きの自動変速機を搭載した車両に適用して具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて制御系全体の構成を説明する。
車両に搭載される空調装置の冷凍サイクル11には、冷媒を吸入、圧縮、吐出するコンプレッサ1が設けられている。コンプレッサ1は、容量可変型のコンプレッサで、動力断続用の電磁クラッチ2を有し、該コンプレッサ1には電磁クラッチ2およびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達される。電磁クラッチ2への通電は空調用電子制御装置(以下「エアコンECU」という)5により断続され、電磁クラッチ2への通電の断続によりコンプレッサ1の運転が断続される。
コンプレッサ1から吐出された高温、高圧のガス冷媒は、コンデンサ6に流入し、ここで、冷却ファン(図示せず)より送風される外気により冷却されて凝縮する。このコンデンサ6で凝縮して液化した冷媒は受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクル11内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。
この受液器7からの液冷媒は膨張弁8により減圧され、低圧の気液2相状態となる。膨張弁8はエバポレータ9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁である。この膨張弁8からの低圧冷媒はエバポレータ9に流入する。このエバポレータ9は車両用空調装置の空調ケース10内に設置され、エバポレータ9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。エバポレータ9の出口はコンプレッサ1の吸入側に結合され、上記したサイクル構成部品によって、冷媒が循環する閉回路が構成されている。
空調ケース10内のエバポレータ9の上流側には、モータ13で駆動される送風ファン12が設置されている。送風ファン12の吸入側には内外気切替ケース14が配置され、この内外気切替ケース14内の内外気切替ドア14aにより外気導入口14bと内気導入口14cを開閉する。これにより、内外気切替ケース14内に外気(車室外空気)又は内気(車室内空気)が切替導入される。内外気切替ドア14aはサーボモータ等からなる電気駆動装置14eにより駆動される。
空調ケース10内のエバポレータ9の下流側には、エアミックスドア19が配置されている。このエアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式のヒータコア20が設置されている。このヒータコア20の側方部には、ヒータコア20をバイパスして空気を流すバイパス通路21が形成されている。
エアミックスドア19は回動可能な板状ドアであり、サーボモータ等からなる電気駆動装置22により駆動される。エアミックスドア19は、ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する。
ヒータコア20の下流側には、該ヒータコア20に沿って延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風とバイパス通路21からの冷風が空気混合部24で混合されて、車室内への吹出空気温度が調節される。
更に、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25から車両フロントガラス内面に空気が吹き出される。デフロスタ開口部25は、回動自在な板状のデフロスタドア26により開閉される。
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27から車室内乗員の上半身に向けて空気が吹き出される。フェイス開口部27は回動自在な板状のフェイスドア28により開閉される。
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にフット開口部29が形成され、このフット開口部29から車室内乗員の足元に向けて空気が吹き出される。フット開口部29は回動自在な板状のフットドア30により開閉される。
上記吹出モードドア26,28,30は共通のリンク機構(図示せず)に連結され、このリンク機構を介してサーボモータ等からなる電気駆動装置31により駆動される。
次に、空調装置の制御系の構成を説明する。
エバポレータ9の温度を検出する温度検出手段として、サーミスタ等の温度センサ32が設けられている。この温度センサ32は空調ケース10内でエバポレータ9の空気吹出直後の部位に配置され、エバポレータ吹出温度Teを検出する。
エアコンECU5には、上記温度センサ32の他に、空調制御のために、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する各センサ33〜36から検出信号が入力される。また、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル37には乗員により手動操作される操作スイッチ37a〜37eが設けられ、各操作スイッチ37a〜37eの操作信号もエアコンECU5に入力される。
具体的には、目標吹出温度Tsetを設定する温度設定スイッチ37a、風量切替信号を発生する風量スイッチ37b、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ37c、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ37d、エアコンスイッチ37e、エコノミースイッチ37f等が設けられている。
吹出モードスイッチ37cは、フェイスモード、フットモード、バイレベルモード、フットデフモード、デフロスタモードの各モードを手動操作で切り替えるものである。また、エアコンスイッチ37eは、コンプレッサ1のオン・オフ信号を発生すると共に、エバポレータ9の目標温度TEOをフロスト防止用の低めの温度に設定する信号を発生する。エコノミースイッチ37fは、コンプレッサ1のオン・オフ信号を発生すると共に、エバポレータ9の目標温度TEOをフロスト防止用の低めの温度から高めの温度に引き上げる信号を発生する。
更に、エアコンECU5は、エンジン用電子制御装置(以下「エンジンECU」という)38に接続され、両ECU5,38間で各種信号を送受信するように構成されている。エンジンECU38には、エンジン4のクランク軸が所定クランク角回転する毎にパルスを出力するクランク角センサ41が接続され、このクランク角センサ41の出力パルスに基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。その他、エンジンECU38には、ブレーキの踏込み操作を検出するブレーキスイッチ42(ブレーキ操作検出手段)、車速を検出する車速センサ43、外気温(又は吸気温)を検出する外気温センサ44(又は吸気温センサ)、スロットル開度を検出するスロットルセンサ45、アクセル開度を検出するアクセルセンサ46等が接続されている。
エアコンECU5は、コンプレッサ1の駆動中にエンジン回転速度がコンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下した時に、電磁クラッチ2への通電をオフしてコンプレッサ1の駆動を停止し、その後、エバポレータ吹出温度Te(エバポレータ9の温度)が所定温度T1以上に上昇した時に電磁クラッチ2への通電をオンしてコンプレッサ1の駆動を再開する。
一方、エンジンECU38は、上述した各種センサ等で検出したエンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御すると共に、エンジン運転中に自動停止要求(アイドルストップ要求)が発生したか否かを監視して、自動停止要求が発生したときに燃料噴射を停止(燃料カット)してエンジン4の燃焼を自動的に停止させるアイドルストップ制御を実行するアイドルストップ制御手段として機能する。ここで、自動停止要求は、例えば、ブレーキスイッチ42のオン(ブレーキ作動中)、アクセル全閉、停車中(車速=0)等の条件を全て満たした時に発生する。尚、アイドルストップ制御を実行する運転領域を、車両走行中に車両停止に至る可能性のある低速での減速領域まで拡大するようにしても良い。
アイドルストップ中(エンジン自動停止中)に、運転者が車両を発進又は再加速させようとする操作(例えば、ブレーキ解除操作、アクセル踏込み操作、シフトレバーのドライブレンジへの操作等)を行ったときに、再始動要求が発生してエンジン4を再始動させる。その他、後述するようにエアコンECU5から再始動要求が発生してエンジン4を再始動させる場合もある。
更に、本実施例では、アイドルストップ中の空調能力向上とエンジン停止時間(アイドルストップ時間)の延長とを実現するために、エアコンECU5は、後述する図3及び図4のエバポレータ温度低下制御ルーチンを実行することで、エンジン回転速度の変化を予測する車両トルクモデルを用いてエンジン回転速度がコンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下するタイミング(以下「コンプレッサ停止タイミング」という)を予測し、予測したコンプレッサ停止タイミングの所定時間前からコンプレッサ1の容量を増加させ且つ送風ファン12の回転速度を低下させるエバポレータ温度低下制御を実行するようにしている。
ここで、車両トルクモデルの内容を、トルクコンバータ付きの自動変速機を搭載した車両を例にして説明する。
時刻(k) でのエンジン回転速度をNe(k)、タービン回転速度(トルクコンバータの出力軸回転速度)をNt(k)とすると、時刻(k) でのトルクコンバータの入力トルクTin(k) は、次式で算出される。
Tin(k) =Cp(Nt(k)/Ne(k))×Ne(k)2
ここで、Cp(Nt(k)/Ne(k))は、トルクコンバータの容量係数であり、エンジン回転速度Ne(k)とタービン回転速度Nt(k)との回転速度比(Nt(k)/Ne(k))をパラメータとするマップ又は数式等により算出される。
上式により算出したトルクコンバータの入力トルクTin(k) を用いて、時刻(k) での加速度a(k) は、次式で算出される。
a(k) ={G(k) ×ファイナルギア比×ζ(k) ×Tin(k) }/(タイヤ径×車重)
G(k) :時刻(k) での変速機のギア比
ζ(k) :時刻(k) でのトルクコンバータのトルク増幅比
上式により算出した加速度a(k) と車速センサ43で検出した車速spd(k) を用いて時刻(k+n) での予測車速spd(k+n) は、次式で算出される。
Figure 2011189812
ここで、演算周期をdtとすると、時刻(k+n) は、現在の時刻(k) から(n×dt)経過後の時刻である。時刻(k+m-1) での予測ギア比G(k+m-1) は、時刻(k+m-1) での予測車速spd(k+m-1) に基づいてマップ等により設定される。
時刻(k+n) での予測車速spd(k+n) と予測ギア比G(k+n) を用いて、時刻(k+n) での予測タービン回転速度Nt(k+n)は、次式で算出される。
Nt(k+n)=spd(k+n) ×ファイナルギア比×G(k+n) /タイヤ径
時刻(k+n) での予測エンジン回転速度Ne(k+n)は、次式で算出される。
Figure 2011189812
上式により、時刻(k+n) での予測エンジン回転速度Ne(k+n)を算出し、予測エンジン回転速度Ne(k+n)がコンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度(以下「コンプレッサ停止回転速度」という)まで低下する演算時期nを求める。
Ne(k+n)≦コンプレッサ停止回転速度
上式の条件を満たすnの最小値nmin を求め、現在の時刻(k) から(nmin ×dt)経過したタイミングがコンプレッサ停止タイミング(コンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下するタイミング)となる。
本実施例では、コンプレッサ停止タイミングの予測誤差があることを考慮して、図2に示すように、所定の演算周期dtで、コンプレッサ停止タイミングを予測する演算を繰り返し、それまでに予測した複数のコンプレッサ停止タイミングの中から最も早く到来するコンプレッサ停止タイミングを最終的なコンプレッサ停止タイミングとして決定し、最終的なコンプレッサ停止タイミングの所定時間前からエバポレータ温度低下制御を実行するようにしている。この場合、エバポレータ温度低下制御の開始タイミングが到来するまでコンプレッサ停止タイミングの予測演算を所定の演算周期dtで繰り返すようにすれば良い。このようにすれば、コンプレッサ停止タイミングの予測誤差があっても、エバポレータ温度低下制御の実行時間を確実に所定時間確保することができ、コンプレッサ停止タイミングの予測誤差によってエバポレータ温度低下制御の実行時間が短くなることを防止することができる。
本実施例では、図2に示すように、エバポレータ温度低下制御の実行中にコンプレッサ1の容量を最大容量まで増加させるようにしているが、それよりも少ない所定量まで増加させるようにして良い。コンプレッサ1の容量が大きくなるほど、エバポレータ9の温度低下速度を速めることができ、エバポレータ温度低下制御の実行時間を短くすることができる。また、エバポレータ温度低下制御の実行中に送風ファン12の回転速度(送風量)を低下させるほど、エバポレータ9の温度低下速度を速めることができるが、送風ファン12の回転速度(送風量)を低下させ過ぎると、乗員が送風量の低下を不快に感じてしまう可能性があるため、送風ファン12の回転速度(送風量)の低下量は、乗員が送風量の低下をさほど不快に感じない範囲で設定すると良い。
更に、本実施例では、冷凍サイクル11がエンジンルーム内に配置されていることを考慮して、図2に示すように、エバポレータ温度低下制御の実行中に、エンジンルーム内の冷却水循環回路のラジエータ(図示せず)を空冷するラジエータファン47の回転速度を増加させるようにしている。このようにすれば、エバポレータ温度低下制御の実行中に、ラジエータファン47の送風量を増加させてエンジンルーム内の空冷効果を高めることができるため、その空冷効果によって冷凍サイクル11周辺の雰囲気温度を低下させて、エバポレータ9の温度低下を促進することができる。
また、本実施例では、ラジエータファン47の回転速度が高くなるほど、冷凍サイクル11に対する空冷効果を高めることができることを考慮して、エバポレータ温度低下制御の実行中にラジエータファン47の回転速度を最大値まで増加させるようにしているが、それよりも少ない所定量まで増加させるようにして良い。
ところで、運転者がアクセルを踏み込んで走行している状態が続いている期間は、自動停止要求(アイドルストップ要求)が発生しないが、運転者がブレーキを踏み込んで減速し始めると、その後、車両が停止する可能性があるため、状況によっては、自動停止要求が発生してアイドルストップが実行される可能性がある。このように、アイドルストップが実行される場合は、その前提条件として、少なくともブレーキの踏込み操作が行われていることが条件となる。
この点を考慮して、本実施例では、図2に示すように、ブレーキスイッチ42でブレーキの踏込み操作が検出されてからコンプレッサ停止タイミングの予測演算を開始するようにしている。このようにすれば、暫くするとアイドルストップが実行される可能性がある運転領域でのみコンプレッサ停止タイミングの予測演算を行い、暫くしてもアイドルストップが実行される可能性がない運転領域ではコンプレッサ停止タイミングの予測演算を行わずに済むため、その予測演算を実行するエアコンECU5(又はエンジンECU38)の演算処理負荷を軽減できる。但し、本発明は、予測演算を実行するエアコンECU5(又はエンジンECU38)の演算処理能力に余裕があれば、全運転領域でコンプレッサ停止タイミングの予測演算を所定周期で繰り返すようにしても良い。
本発明は、エバポレータ温度低下制御の実行時間(所定時間)は予め決められた一定時間としても良いが、エバポレータ温度低下制御開始時のエバポレータ9の温度が高いほど、エバポレータ温度低下制御によりエバポレータ9の温度をアイドルストップ開始時の目標温度領域に低下させるのに要する時間が長くなるため、本実施例では、エバポレータ9の温度(エバポレータ吹出温度Te)に基づいてエバポレータ温度低下制御の実行時間(所定時間)を設定するようにしている。このようにすれば、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータ9の温度が高い場合は、それに応じてエバポレータ温度低下制御の実行時間を長く設定し、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータ9の温度が低い場合は、それに応じてエバポレータ温度低下制御の実行時間を短く設定するという制御が可能となる。これにより、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータ9の温度が高い場合でも、エバポレータ温度低下制御によりエバポレータ9の温度をアイドルストップ開始時の目標温度領域まで確実に低下させることができ、一方、エバポレータ温度低下制御の開始時のエバポレータ9の温度が低い場合は、エバポレータ温度低下制御によりエバポレータ9がアイドルストップ開始時の目標温度領域以下に過冷却されることを防止できる。
また、本実施例では、図2に示すように、エバポレータ温度低下制御により送風ファン12の回転速度を低下させた状態をエンジン4の自動停止後(アイドルストップ中)も継続するようにしても良い。このようにすれば、アイドルストップ中のエバポレータ9の温度上昇速度を遅くすることができ、エバポレータ温度低下制御によりアイドルストップ開始時のエバポレータ9の温度を低下させることと相俟ってエンジン停止時間(アイドルストップ時間)をより効果的に延長することができる。
この場合、エバポレータ温度低下制御により送風ファン12の回転速度を低下させる低下量を、エバポレータ9の温度とエアミックスドア19の開度とに基づいて設定するようにしている。このようにすれば、送風ファン12の回転速度(送風量)の低下量を、乗員がさほど不快感を感じないように適正に設定できる。
また、アイドルストップ中にエバポレータ9の温度が高くなり過ぎると、空調能力(冷房能力)が低下して乗員が不快感を感じるようになるため、アイドルストップ中にエバポレータ9の温度が所定温度T1以上に上昇した時にエンジン4を始動させてコンプレッサ1を駆動するようにしている。ここで、所定温度T1は、コンプレッサ1を駆動しなくても空調可能(冷房可能)なエバポレータ9の温度範囲の上限温度に設定されている。このようにすれば、アイドルストップ中にエバポレータ9の温度上昇により空調能力が低下して乗員が不快感を感じるようになる前に、コンプレッサ1を駆動してエバポレータ9の温度を低下させて空調能力を回復させることができる。
また、エバポレータ温度低下制御の実行中にエバポレータ9の温度が所定の過冷却温度T2以下に低下した時にコンプレッサ1の容量を所定量低下させるようにしている。このようにすれば、エバポレータ温度低下制御の実行中にエバポレータ9の温度が過冷却温度T2以下に低下した時にエバポレータ9の温度低下を抑えることができ、エバポレータ9の凍結を防止できる。
以上説明した本実施例のアイドルストップ用空調制御は、エアコンECU5によって図3乃至図5のアイドルストップ用空調制御の各ルーチンに従って実行される。以下、各ルーチンの処理内容を説明する。尚、各ルーチンの一部の処理をエンジンECU38で演算して、その演算結果をエアコンECU5に送信するようにしても良い。
[エバポレータ温度低下制御ルーチン]
図3及び図4のエバポレータ温度低下制御ルーチンは、エアコンECU5の電源オン期間中に所定の演算周期dtで繰り返し実行され、特許請求の範囲でいうコンプレッサ停止タイミング予測手段及び空調制御手段としての役割を果たす。
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ100で、エンジン運転中であるか否かを判定し、エンジン運転中でなければ、エバポレータ温度低下制御を行う必要がないため、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。一方、上記ステップ100で、エンジン運転中であると判定されれば、ステップ101に進み、ブレーキスイッチ42がオン状態(ブレーキ踏込み操作中)であるか否かを判定し、ブレーキスイッチ42がオフ状態(ブレーキ操作解除)であれば、暫くしてもアイドルストップ要求が発生しないと判断して、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ101で、ブレーキスイッチ42がオン状態(ブレーキ踏込み操作中)であると判定されれば、暫くするとアイドルストップ要求が発生する可能性があると判断して、ステップ102に進み、クランク角センサ41で検出した現在の時刻(k) でのエンジン回転速度Ne(k)を読み込む。この後、ステップ103に進み、前述した車両トルクモデルを用いて、現在の時刻(k) から(n×dt)経過した時刻(k+n) での予測エンジン回転速度Ne(k+n)を算出する。
そして、次のステップ104で、予測エンジン回転速度Ne(k+n)がコンプレッサ停止回転速度(コンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度)まで低下するコンプレッサ停止タイミングを予測する。
Ne(k+n)≦コンプレッサ停止回転速度
上式の条件を満たすnの最小値nmin を求め、現在の時刻(k) から(nmin ×dt)経過したタイミングをコンプレッサ停止タイミングとする。
この後、ステップ105に進み、それまでに予測した複数のコンプレッサ停止タイミングの中から最も早く到来するコンプレッサ停止タイミングを最終的なコンプレッサ停止タイミングとして決定する。次のステップ106で、温度センサ32で検出したエバポレータ9の温度(エバポレータ吹出温度Te)に基づいてエバポレータ温度低下制御の実行時間(所定時間)をマップ等により算出する。
この後、ステップ107に進み、コンプレッサ停止タイミングからエバポレータ温度低下制御の実行時間(所定時間)だけ前の時刻をエバポレータ温度低下制御開始タイミングとして決定する。次のステップ108で、エバポレータ9の温度(エバポレータ吹出温度Te)とエアミックスドア19の開度とに基づいて、エバポレータ温度低下制御実行中の送風ファン12の回転速度(送風量)の低下量をマップ等により算出する。
この後、ステップ109に進み、エバポレータ温度低下制御開始タイミングになったか否かを判定し、まだエバポレータ温度低下制御開始タイミングになっていないと判定されれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。これにより、それまでに予測した複数のコンプレッサ停止タイミングの中から最も早く到来するコンプレッサ停止タイミングになるまで、上記ステップ101〜109の処理を所定の演算周期dtで繰り返し実行する。
その後、上記ステップ109で、エバポレータ温度低下制御開始タイミングになったと判定されれば、図4のステップ110に進み、エバポレータ温度低下制御を開始する。このエバポレータ温度低下制御実行中は、コンプレッサ1の容量を最大容量まで増加させると共に、ラジエータファン47の回転速度(送風量)を最大値まで増加させ、更に、送風ファン12の回転速度を、前記ステップ108で算出した送風ファン12の回転速度低下量だけエバポレータ温度低下制御開始前の送風ファン12の回転速度よりも低下させる。
エバポレータ温度低下制御実行中は、ステップ111で、クランク角センサ41で検出したエンジン回転速度がコンプレッサ停止回転速度以下に低下したか否かを判定し、まだエンジン回転速度がコンプレッサ停止回転速度以下に低下していなければ、ステップ112に進み、エバポレータ9の温度(エバポレータ吹出温度Te)が過冷却温度T2以下になったか否かを判定し、エバポレータ9の温度が過冷却温度T2以下になっていないと判定されれば、ステップ114に進み、ブレーキスイッチ42がオフ(ブレーキ操作解除)されたか否かを判定し、ブレーキスイッチ42がオン状態(ブレーキ踏込み操作中)に維持されていれば、ステップ110に戻り、上述したエバポレータ温度低下制御を継続する。
その後、エバポレータ温度低下制御実行中に、上記ステップ112で、エバポレータ9の温度が過冷却温度T2以下になったと判定されれば、ステップ113に進み、コンプレッサ1の容量を所定量低下させると共に、ラジエータファン47の回転速度(送風量)を所定量低下させた上で、ステップ114に進み、ブレーキスイッチ42がオフ(ブレーキ操作解除)されたか否かを判定し、ブレーキスイッチ42がオン状態(ブレーキ踏込み操作中)に維持されていれば、ステップ110に戻り、上述したエバポレータ温度低下制御を継続する。
エバポレータ温度低下制御実行中に、上記ステップ114で、ブレーキスイッチ42がオフ(ブレーキ操作解除)されたと判定されれば、アイドルストップ要求が発生しないと判断して、ステップ115に進み、エバポレータ温度低下制御を中止して通常の空調制御に復帰する。
また、エバポレータ温度低下制御実行中に、上記ステップ111で、エンジン回転速度がコンプレッサ停止回転速度以下に低下したと判定されれば、ステップ116に進み、コンプレッサ1を停止させ、次のステップ117で、ラジエータファン47を停止させて、エバポレータ温度低下制御を終了する。
[アイドルストップ中空調制御ルーチン]
図5のアイドルストップ中空調制御ルーチンは、エアコンECU5の電源オン期間中に所定の演算周期dtで繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう空調制御手段としての役割を果たす。
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、アイドルストップ中であるか否かを判定し、アイドルストップ中でなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ201で、アイドルストップ中であると判定されれば、ステップ202に進み、温度センサ32で検出したエバポレータ9の温度(エバポレータ吹出温度Te)が所定温度T1以上に上昇したか否かを判定する。ここで、所定温度T1は、コンプレッサ1を駆動しなくても空調可能(冷房可能)なエバポレータ9の温度範囲の上限温度に相当する温度に設定されている。
このステップ202で、エバポレータ9の温度が所定温度T1以下と判定されれば、コンプレッサ1を駆動する必要がないと判断して、ステップ203に進み、アイドルストップ中に送風ファン12の運転のみを継続して車室内の空調(冷房)を継続する。このアイドルストップ中の送風ファン12の回転速度(送風量)は、エバポレータ温度低下制御終了時と同じ回転速度(送風量)に維持される。従って、アイドルストップ中の送風ファン12の回転速度(送風量)は、前記ステップ108で算出した送風ファン12の回転速度低下量だけエバポレータ温度低下制御開始前の送風ファン12の回転速度(送風量)よりも低下された状態に維持される。
これに対して、上記ステップ202で、エバポレータ9の温度が所定温度T1を上回ったと判定されれば、空調能力(冷房能力)が不足すると判断して、ステップ204に進み、エンジン4を再始動させてコンプレッサ1を駆動し、エバポレータ9の温度を低下させる。
以上説明した本実施例によれば、車両トルクモデルを用いてエンジン回転速度がコンプレッサ停止回転速度(コンプレッサ1を駆動可能な最小のエンジン回転速度)まで低下するコンプレッサ停止タイミングを予測し、予測したコンプレッサ停止タイミングの所定時間前からコンプレッサ1の容量を増加させ且つ送風ファン12の回転速度を低下させるエバポレータ温度低下制御を実行するようにしたので、アイドルストップ前にエバポレータ温度低下制御を実行する時間を確実に所定時間確保することができる。しかも、エバポレータ温度低下制御の実行中にコンプレッサ1の容量を増加させて冷凍サイクル11の冷却能力を増大させながら送風ファン12の回転速度(送風量)を低下させるため、アイドルストップ開始までにエバポレータ9の温度を効率良く低下させることが可能となる。これにより、アイドルストップ開始時のエバポレータ9の温度を従来より低下させることが可能となり、アイドルストップ中の空調能力(冷房能力)を向上させることができると共に、エンジン停止時間(アイドルストップ時間)の延長も可能となる。この場合、エバポレータ温度低下制御の実行中に送風ファン12の回転速度(送風量)を低下させるため、乗員が温度設定スイッチ37aで設定した目標吹出温度Tsetよりも吹出温度が少し高くなるかもしれないが、エバポレータ温度低下制御の実行時間は短時間であるため、乗員がほとんど不快感を感じることはない。
尚、本実施例では、コンプレッサ停止タイミングの予測演算を実行する運転領域をブレーキ踏込み操作中に限定したが、例えば、ブレーキ踏込み操作中で且つ車速が所定値以下の領域でのみコンプレッサ停止タイミングの予測演算を実行するようにしても良い。或は、車両の減速度(加速度)の絶対値が所定値以上の減速領域でのみコンプレッサ停止タイミングの予測演算を実行するようにしても良い。
また、本実施例では、エバポレータ9の温度に基づいてエバポレータ温度低下制御の実行時間を設定するようにしたが、外気温が低いほどエンジンルーム内の温度が低くなってエバポレータ9の温度低下が促進されることを考慮して、エバポレータ9の温度と外気温(又は吸気温)とに基づいてエバポレータ温度低下制御の実行時間をマップ等により算出するようにしても良い。
その他、本発明は、空調装置の構成を変更したり、トルクコンバータ付きの自動変速機以外の変速機を搭載した車両であっても、アイドルストップ制御機能を搭載した車両であれば、本発明を適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
1…コンプレッサ、5…エアコンECU(コンプレッサ停止タイミング予測手段,空調制御手段)、6…コンデンサ、7…受液器、8…膨張弁、9…エバポレータ、11…冷凍サイクル、12…送風ファン、19…エアミックスドア、20…ヒータコア、21…バイパス通路、23…温風通路、32…温度センサ(温度検出手段)、38…エンジンECU(アイドルストップ制御手段)、42…ブレーキスイッチ(ブレーキ操作検出手段)、43…車速センサ、44…外気温センサ、45…スロットルセンサ、46…アクセルセンサ、47…ラジエータファン

Claims (9)

  1. 車両の動力源となるエンジンと、前記エンジンの運転中に自動停止要求が発生した時に該エンジンを自動停止するアイドルストップ制御手段と、前記エンジンによって駆動されるコンプレッサによって冷凍サイクル内の冷媒をエバポレータへ循環させて該エバポレータの冷却作用によって車室内に吹き出す空気温度を調節する空調装置とを備えた車両の制御装置において、
    前記コンプレッサは、容量可変型のコンプレッサであり、
    エンジン回転速度の変化を予測する車両トルクモデルを用いてエンジン回転速度が前記コンプレッサを駆動可能な最小のエンジン回転速度まで低下するタイミング(以下「コンプレッサ停止タイミング」という)を予測するコンプレッサ停止タイミング予測手段と、 前記コンプレッサ停止タイミング予測手段で予測したコンプレッサ停止タイミングの所定時間前から前記コンプレッサの容量を増加させ且つ前記空調装置の送風ファンの回転速度を低下させるエバポレータ温度低下制御を実行する空調制御手段と
    を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記空調制御手段は、前記エバポレータ温度低下制御の実行中にエンジンルーム内に設置されたラジエータファンの回転速度を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. ブレーキの踏込み操作を検出するブレーキ操作検出手段を備え、
    前記コンプレッサ停止タイミング予測手段は、前記ブレーキ操作検出手段で前記ブレーキの踏込み操作が検出されてから前記コンプレッサ停止タイミングの予測演算を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記コンプレッサ停止タイミング予測手段は、所定の演算周期で前記コンプレッサ停止タイミングを予測する演算を繰り返し、それまでに予測した複数のコンプレッサ停止タイミングの中から最も早く到来するコンプレッサ停止タイミングを最終的なコンプレッサ停止タイミングとして決定し、
    前記空調制御手段は、前記最終的なコンプレッサ停止タイミングの所定時間前から前記エバポレータ温度低下制御を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両の制御装置。
  5. 前記空調制御手段は、前記エバポレータの温度に基づいて前記所定時間を設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両の制御装置。
  6. 前記空調制御手段は、前記エバポレータ温度低下制御により前記空調装置の送風ファンの回転速度を低下させた状態を前記エンジンの自動停止後も継続することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。
  7. 前記エバポレータを通過した風量のうちヒータコアをバイパスする風量と該ヒータコアを通過する風量との割合を調整するエアミックスドアを備え、
    前記空調制御手段は、前記エバポレータ温度低下制御により前記空調装置の送風ファンの回転速度を低下させる低下量を、前記エバポレータの温度と前記エアミックスドアの開度とに基づいて設定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両の制御装置。
  8. 前記空調制御手段は、前記エンジンの自動停止中に前記エバポレータの温度が所定温度T1以上に上昇した時に該エンジンを始動させて前記コンプレッサを駆動することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両の制御装置。
  9. 前記空調制御手段は、前記エバポレータ温度低下制御の実行中に前記エバポレータの温度が所定温度T2以下に低下した時に前記コンプレッサの容量を所定量低下させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両の制御装置。
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