以下、実施形態に係る電線端部処理装置について説明する。
<全体構成>
まず、電線端部処理装置の全体構成について説明する。図1及び図2は加工対象を示す概略斜視図であり、図3は電線端部処理装置20を示す概略平面図であり、図4は図3の部分拡大説明図である。
この電線端部処理装置20は、連続的に供給される電線10を所定長に切断してその両端部の被覆部を皮剥ぎすることにより、両端部に所定長の芯線部12が露出すると共に中間部に被覆部14が被覆部された所定長の電線10(図1参照)を製造する。この後、電線端部処理装置20は、両端部に露出した芯線部12のそれぞれに端子18を圧着して、端子付電線11を製造する(図2参照)。以下の説明では、長尺な電線10が本電線端部処理装置20に供給される際において、送給方向前方側を電線10のF側、送給方向後方側を電線10のR側と記述することがある。本電線端部処理装置20は、露出した芯線部12に端子18を圧着する際に、端子18に対して露出した芯線部12を位置精度よく配設する技術に関する。
この電線端部処理装置20は、測長ユニット22と、F側搬送機構部30と、端部処理ユニットとしてのF側端子圧着ユニット40と、切断皮剥ユニット50と、R側搬送機構部60と、端部処理ユニットとしてのR側端子圧着ユニット70とを備えている。
測長ユニット22は、長尺な電線10を測長しつつ送給するユニットとして構成されている。そして、リール等に長尺な電線10を巻回収容した電線供給部21からの電線10が本測長ユニット22によって測長されつつ、F側搬送機構部30及びR側搬送機構部60に送込まれる。
F側搬送機構部30に送込まれた電線10は、当該F側搬送機構部30によって保持された状態で、切断皮剥ユニット50において切断される。そして、電線10のF側端部は、切断皮剥ユニット50によって皮剥処理された後、F側端子圧着ユニット40に移動し、端子圧着処理される。この後、電線10のF側端部は、切断皮剥ユニット50に対向する位置に戻り、R側搬送機構部60に受渡される。
F側に端子18が圧着された電線10は、測長ユニット22によって測長されつつさらに送給される。電線10が所定長送給されると、電線のR側の端部がR側搬送機構部によって保持された状態で、切断皮剥ユニット50において切断される。これにより、電線10が所定長に切断される。所定長に切断された電線10のR側端部は、切断皮剥ユニット50によって皮剥処理された後、R側端子圧着ユニット70に移動し、端子圧着処理され、製品電線として排出される。この後、電線10のR側端部は、切断皮剥ユニット50に対向する位置に戻る。このようにして、F側端部及びR側端部の両方に端子18が圧着された端子付電線11が製造される。
より具体的に説明すると、上記F側搬送機構部30は、電線10の端部を保持する電線保持部32と、電線保持部32を移動させる移動機構部34とを有している。移動機構部34としては、電線保持部32を電線10の長尺方向に沿って進退移動させる進退移動機構部36と、電線保持部32を切断皮剥ユニット50からF側端子圧着ユニット40に向けて移動させる旋回移動機構部38とを有している。
電線保持部32は、電磁的な或はエア圧の駆動等によるF側保持駆動部32a(図5参照)によって電線を挟込む等することにより、電線10を保持及び保持解除可能に構成されている。
進退移動機構部36は、長尺部材に形成され、その一端部にブラケット36bを介して電線保持部32を直線方向に沿って移動駆動可能に支持している。この進退移動機構部36は、直線方向の位置制御及び位置信号の出力が可能なF側進退駆動部36a(図5参照)を有している。かかるF側進退駆動部36aとしては、例えば、リニアモータ、スライダ側のナット部材が螺合するねじ軸をサーボモータの駆動により回転駆動する電動スライダ機構等を用いることができる。
旋回移動機構部38は、サーボモータ等、回転角度の制御及び回転角度信号の出力が可能なF側旋回駆動部38a(図5参照)を有しており、基台23に取付固定されている。上記進退移動機構部36の他端部が本旋回移動機構部38の駆動軸部に連結されている。
そして、旋回移動機構部38の正逆両方向への回転駆動によって、進退移動機構部36が旋回移動機構部38の回転軸周りに旋回駆動されるようになっている。これにより、電線保持部32が、後述する切断皮剥ユニット50の一対の切断刃52に対向する切断位置と、F側用の一対のストリップ刃54に対向する皮剥位置と、端子圧着ユニット40に対向する圧着位置との間で旋回移動されるようになる(図4参照)。
切断皮剥ユニット50は、一対の切断刃52と、F側用の一対のストリップ刃54と、R側用の一対のストリップ刃56とを有しており、これらはそれぞれボールねじと一対のナットとの組合わせを用いた接近離隔駆動機構或は電磁的な駆動機構等によって、接近及び離間移動可能に構成されている。そして、一対の切断刃52間に電線10を配設した状態で、一対の切断刃52を接近移動させることで当該電線10が切断される。また、F側用の一対のストリップ刃54或はR側用の一対のストリップ刃56間に電線10を配設した状態で、それらを接近移動させると、一対のストリップ刃54或は一対のストリップ刃56が被覆部14に切込むようになる。この状態で、電線10を引張ると、被覆部14が除去され、電線10の端部に芯線部12が露出するようになる。
本電線端部処理装置20は、上記電線保持部32によって保持された電線10の端部位置を検出する端部位置検出部としてリニア位置センサ100を備えている。ここでは、F側用の一対のストリップ刃54に対向する位置にリニア位置センサ100が設けられている。そして、電線保持部32に保持された電線10の端部が一対のストリップ刃54によって皮剥ぎされる動作に続いて、リニア位置センサ100から電線10の端部位置の検出結果が出力されるようになっている。このリニア位置センサ100の構成については、その検出結果に基づいて電線10の端部位置のずれ量を求める説明と共に後述する。
F側端子圧着ユニット40は、下側の端子圧着用の金型42及び上側の端子圧着用の金型44を有している(図18参照)。そして、一対の金型42、44間に電線10の端部の芯線部12及び端子18を配設した状態で、モータ、エアシリンダ、油圧シリンダ等の駆動力によって、両金型42、44を接近移動させることによって、端子18が芯線部12に圧着されるようになっている。
なお、上記一対の切断刃52、F側用の一対のストリップ刃54及びF側端子圧着ユニット40の金型42、44は、旋回移動機構部38の回転軸を中心とする弧状ラインに沿って配設されている。このため、旋回移動機構部38によって旋回移動する電線保持部32に保持された電線10の端部は、一対の切断刃52によって切断された後、一対のストリップ刃54間を経てF側端子圧着ユニット40の金型42、44間に移動するようになっている。
なお、上記F側用の一対のストリップ刃54とF側端子圧着ユニット40との間には、光センサ等の位置センサによって構成されるストリップ確認センサ48が設けられている。そして、電線保持部32によって保持された電線10の端部が本ストリップ確認センサ48上を通過する際の検出信号が出力されるようになっている。そして、その検出信号に基づいて、後述する制御ユニット80等が皮剥された芯線部12に対応する幅を有するか否かを判定し、その判定結果に応じて電線10の端部がうまく皮剥処理されているか否かを判定できるようになっている。なお、このストリップ確認センサ48は、省略されていてもよい。
また、R側搬送機構部60及びR側端子圧着ユニット70は、F側搬送機構部30及びF側端子圧着ユニット40と同様構成とされており、それらF側搬送機構部30及びF側端子圧着ユニット40に対して上記切断皮剥ユニット50を中心として180度回転対称位置に設けられている。
また、上記一対の切断刃52、R側用の一対のストリップ刃56及びR側端子圧着ユニット70の端子圧着用の金型も、R側搬送機構部60の旋回軸を中心とする弧状ラインに沿って配設されている。これにより、電線10のR側の端部に対しても、上記と同様に、皮剥処理及び端子圧着処理を施せるようになっている。また、これらの電線10のR側の端部を処理する部分に対しても、上記と同様に、リニア位置センサ100及びストリップ確認センサ48が設けられている。
以下では、電線10のF側の端部に対して皮剥処理、端子圧着処理、位置補正処理を行う構成を中心に説明するが、電線のR側の端部に対しても同様の構成を採用することができる。
図5は本電線端部処理装置20を示すブロック図である。この電線端部処理装置20は、制御ユニット80の制御により、電線10の切断、皮剥ぎ及び端子圧着処理を実行可能に構成されている。この処理を行う際に、制御ユニット80は、後に詳述するように、リニア位置センサ100の検出結果に基づいて、電線保持部32を移動させて、端子圧着ユニット40と電線保持部32の相対位置を補正する位置補正処理を実行する。
すなわち、制御ユニット80は、CPU81、ROM82、RAM83、外部記憶装置84等がバスライン85を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM82は基本プログラム等を格納しており、RAM83はCPU81が後述する各種処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置84は、フラッシュメモリ或はハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置84には、電線10の切断、皮剥ぎ及び端子圧着処理を行うための加工処理プログラム84aが格納されている。この加工処理プログラム84aには、位置補正処理を実行するための手順が記述されている。この加工処理プログラム84aに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU81が演算処理を行うことにより、電線10の切断、皮剥ぎ及び端子圧着処理が実行されると共に、その実行中に位置補正処理を行う各種機能が実現されるようになっている。加工処理プログラム84aは、通常、予め外部記憶装置84等の記憶装置に格納されて使用されるものであるが、CD−ROM或はDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の可搬性のある記録媒体に記録された形態で提供され或はネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され、追加的又は交換的に外部記憶装置84等の記憶装置に格納されるものであってもよい。なお、制御ユニット80が行う、位置補正処理を含む加工処理の一部或は全部の機能が、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
また、外部記憶装置84には、位置補正処理を実行するにあたってずれ量を求める基準となる端部位置基準値84bが格納されている。この端部位置基準値84bについては後述する。
また、この制御ユニット80では、センサ用入出力回路部86、入出力回路部87、その他、図示省略の入力部及び表示部もバスライン85に接続されている。
センサ用入出力回路部86は、増幅回路、AD変換回路等を有している。そして、リニア位置センサ100から出力された検出信号が本センサ用入出力回路部86を介してデジタル信号として入力されるようになっている。本センサ用入出力回路部86でデジタル信号に変換された検出信号は、例えば、物体の有無に応じた振幅を持つ時系列データとしてRAM83或は外部記憶装置84に記憶され、後述する位置補正処理に供される。なお、センサ用入出力回路部は、アナログ処理回路に限らず、デジタル処理回路であっても良い。
入出力回路部87は、CPU81による制御下、F側搬送機構部30のF側旋回駆動部38a、F側進退駆動部36a、F側保持駆動部32a、さらには、本電線端部処理装置20の各部に動作制御信号を出力すると共に、それらから必要に応じてモニタ信号等を入力可能に構成されている。ここでは、特に、入出力回路部87を通じて、F側搬送機構部30のF側旋回駆動部38a及びF側進退駆動部36aに移動位置を示す動作制御信号が出力可能に構成されると共に、それらのF側旋回駆動部38a及びF側進退駆動部36aの各動作中の位置を示すモニタ信号が入力可能に構成されている。
なお、図示省略の入力部としては、各種スイッチ、タッチパネル等が用いられる。この入力部を通じて、上記端部位置基準値84bの入力設定指示の他、加工処理を行うための諸指示が、受付けられる。図示省略の表示部は、液晶表示装置等により構成されており、CPU52による制御下、処理中の諸情報(異常状態の表示等)を表示可能に構成されている。
<リニア位置センサに係る構成>
リニア位置センサ100に係る構成及び当該リニア位置センサ100を用いて電線10の端部位置及びずれ量を求めるための構成について説明する。
図6〜図9は皮剥処理中における電線10の端部とリニア位置センサ100との位置関係を示す概略図である。図6は一対のストリップ刃54が被覆部14に切込む前の側方概略図であり、図7は一対のストリップ刃54が被覆部14に切込む前の正面概略図であり、図8は一対のストリップ刃54が被覆部14に切込んだ状態における側面概略図であり、図9は電線10を後退移動させて被覆部14を除去した状態を示す側面概略図である。
リニア位置センサ100は、直線における物体の有無を検出するセンサであり、ここでは、発光部102と受光部104とを有している。発光部102は、直線状発光エリアから検出光を照射可能に構成されている。検出光としては、可視光或は非可視光を用いることができ、好ましくはレーザー光を用いるとよい。受光部104は、前記検出光を受光可能な複数の受光素子を有している。この複数の受光素子は前記検出光の直線状発光エリアに対向して直線状に並べられている。そして、発光部102の直線状発光エリアと受光部104の複数の受光素子とを対向させて配置することで、それらの間の直線状の検知ラインにおける物体の有無及び位置を示す検出信号が出力されるようになっている。なお、発光部と受光部の配置は、上下が逆に配置されてもいても構わない。
また、このリニア位置センサ100は、電線10がその長手方向に沿って移動する際に、その端部の直線状移動軌跡に対して交差する位置及び姿勢で設置されている。ここでは、リニア位置センサ100の直線状検出ラインが、被覆部14除去時における、電線10の長手方向移動軌跡に対して交差する位置及び姿勢となっている。そして、電線10がその長手方向に沿って移動する際におけるリニア位置センサ100からの検出信号が制御ユニット80に対して入力されるようになっている。
より具体的には、被覆部14除去時には、まず、F側進退駆動部36aの駆動によって、電線10の端部を保持した電線保持部32が一対のストリップ刃54に向けて進出移動する。これにより、電線10の端部が一対のストリップ刃54間に配設される(図6及び図7参照)。
この後、一対のストリップ刃54が近接移動することで、一対のストリップ刃54が被覆部14に切込む(図8参照)。
この状態で、F側進退駆動部36aの駆動によって、電線10の端部を保持した電線保持部32が一対のストリップ刃54から退避移動する(図9参照)。これにより、電線10の端部が一対のストリップ刃54から退避移動し、一対のストリップ刃54が切込んだ部分よりも先端側の被覆部14が除去される。この際、電線保持部32が最も後退した状態で、電線保持部32により保持された電線10の端部よりも一対のストリップ刃54側にリニア位置センサ100の直線状検出ラインが位置するようになっている。これにより、電線保持部32が後退移動する際に、リニア位置センサ100が電線保持部32により保持された電線10の端部の位置を検出できるようになっている。また、一対のストリップ刃54とリニア位置センサ100の直線状検出ラインの間隔寸法は、除去される被覆部14の長さ寸法よりも大きくなるように設定されている。これにより、露出した芯線部12が一対のストリップ刃54に干渉しない状態で、リニア位置センサ100が、電線10の端部に露出した芯線部12を検出できるようになっている。
上記リニア位置センサ100の検出信号に基づいて、どのようにして電線10の端部位置及びずれ量を求めるかを説明する。なお、ずれ量とは、正確に加工処理するためにある時点で存在すべき位置からのずれの量であり、ここでは、電線保持部32に対するある基準位置からのずれ量である。
図10〜図13は、電線10の端部が正常な状態において、電線10をその長手方向に沿って移動させた際における電線10の端部とリニア位置センサ100との位置関係を示す図である。図14は電線10の端部が曲っていた場合において、電線10の端部とリニア位置センサ100との位置関係を示す図である。
すなわち、電線10の端部が電線10の中間部に対して直線状に延出し、かつ、電線保持部32に対する電線10の端部位置も正常である場合、図10〜図13に示すように、電線10の端部に露出した芯線部12は、リニア位置センサ100に対して直交する姿勢でかつリニア位置センサ100の中央を通って移動する。
電線保持部32の後退移動に伴って所定の期間毎に、直線状に並べられた複数の受光素子からの検出信号がシリアル出力されるとすると、リニア位置センサ100からの出力結果は図15に示すようになる。なお、図15の横軸は各期間S(1)、S(2)、S(3)・・・及びその各期間における検出位置(受光素子の位置)を示し、縦軸は光強度(つまり、電線10の端部の有無)を示している。各期間S(1)、S(2)、S(3)・・・は、電線保持部32の後退移動に伴って変化するので、それぞれ電線保持部32の位置に対応している。各期間S(1)、S(2)、S(3)・・・に対応する電線保持部32の位置は、F側進退駆動部36aからの位置信号に基づいて得ることができる。
この場合、例えば、期間S(1)、S(2)・・・S(a−1)、S(a)までは、物体の検知幅W1(光強度が小さい検出位置長さ)が比較的大きく(物体の幅が比較的大きい)、従って、電線10の被覆部14を検出していると考えることができる。
そして、期間S(a+1)では、物体の検知幅W2が比較的小さくなり、従って、電線10の端部に露出した芯線部12を検出していると考えることができる。
さらに、期間S(b+1)以降では、物体の検知がなされなくなり、光強度が強い状態が維持される。つまり、物体の検知幅W2が検知されなくなった1つ前の期間S(b)で、露出した芯線部12の先端部が検出されていることがわかる。つまり、制御ユニット80で、各期間において、物体の検知幅が所定幅(芯線部12幅に対応する検知幅W2よりも小さい幅)を下回るか否かを判別し、物体の検知幅が所定幅を下回ったと判別された期間S(b+1)の1つ前の期間S(b)を決定し、当該期間S(b)に対応する電線保持部32の位置に基づいて、電線保持部32に対する芯線部12の先端部の位置を特定することができる。以下では、期間S(1)、S(2)・・・に対応する電線保持部32の位置を、文字”X”の後に同括弧書きを付記して位置X(1)、X(2)・・・と表記する場合がある。
また、上記各期間S(1)、S(2)、S(3)・・・における物体の検出位置(ここでは、光強度が小さくなった位置)は、電線10の端部の幅方向における電線10の端部の位置を示している。そこで、例えば、各期間S(1)、S(2)、S(3)・・・における物体の検出期間の中央位置が、電線10の先端部の位置であると捉える(物体の検出期間の始期或は終期(これらは芯線部12の両側縁部を示している)が電線10の先端部の位置であると捉えてもよい)。そして、芯線部12の先端部の位置と特定された期間S(b)における、電線10の検知幅W2の中央位置Mbを、電線10の先端部の位置として特定することができる。
上記により電線保持部32に対する電線10の端部の位置(水平方向において、電線10の長手方向の相対位置X(b)、及び電線10の長手方向に対して直交する方向の相対位置Mb)を特定することができる。
次に、電線10の端部位置のずれ量の求め方について説明する。
すなわち、電線保持部32に対して正常姿勢及び正常位置で、電線10の端部が保持されている場合において、電線10の長手方向における電線10の端部の長手方向基準位置を位置X(b)(期間S(b)に対応する位置)、このときの電線10の端部の幅方向基準位置を位置Mbとする。なお、下記のようにずれ量を求める際、長手方向基準位置X(b)、幅方向基準位置Mbは、予め設定された値として外部記憶装置84等に格納されている。
ここで、図14に示すように、電線10の先端部がその幅方向一方側に曲っていたとする。この場合、電線保持部32の後退移動に伴って所定の期間毎に、直線状に並べられた複数の受光素子からの検出信号をシリアルに出力すると、リニア位置センサ100からの出力結果は図16に示すようになる。電線10の先端部が曲っているので、各期間S(1)、S(2)・・・における物体の検知幅は、図15に示す場合よりも早い期間で、所定幅を下回る。具体的には、期間S(n)では検知幅W2であるが、期間S(n+1)では物体は検知されなくなる。このため、期間S(n)に対応する電線保持部32の位置X(n)が、電線保持部32に対する芯線部12の先端部の相対位置であると特定することができる。
そして、上記長手方向基準位置X(b)と検出位置X(n)との差に基づいて、電線10の長手方向のずれ量dXを求めることができる。
また、期間S(n)における物体の検出期間の中央位置Mnが、電線10の先端部の幅方向位置であると特定される。そして、上記幅方向基準位置Mbと検出された中央位置Mnとの差に基づいて、電線10の幅方向のずれ量dMを求めることができる。なお、電線10の長手方向のずれ量dX及び電線10の幅方向のずれ量dMは、正負の記号等を用いて、ずれの方向と共に求められることが好ましい。
上記のようにして電線10の端部の位置及びずれ量が求められる。本実施形態では、電線保持部32を基準にして、電線10の端部の位置及びずれ量を求めているが、その他、電線保持部32を通る線を基準とする電線10の端部のずれ角度を求めてもよい。また、本電線端部処理装置20の基台23或は端子圧着ユニット40を基準とする座標系、F側搬送機構部30の旋回軸を中心とする極座標系において、上記位置及びずれ量が求められてもよい。
本実施形態では、上記端部位置及びずれ量を制御ユニット60で求める前提で説明したが、その一部処理機能がリニア位置センサ100側に組込まれていてもよい。例えば、リニア位置センサ100側に、物体の有無及びその位置を特定する処理機能が組込まれ、電線保持部32の進退移動に伴って、リニア位置センサ100から制御ユニット60に、物体の有無及びその位置を示す信号が入力されてもよい。
<位置補正処理を含む全体動作>
本電線端部処理装置の全体動作について補正処理動作と共に説明する。
図17は本電線端部処理装置の動作を示すフローチャートである。
すなわち、連続的に送給された電線10が切断皮剥ユニット50にて切断された後、ステップS1において、F側旋回駆動部38aの駆動によって、電線10の端部を保持した電線保持部32が皮剥位置へ移動する(図4参照)。
次ステップS2において、F側進退駆動部36aによる電線保持部32の進退駆動動作及び一対のストリップ刃54の接近移動動作により、電線10の端部の被覆部14が皮剥される(図6〜図9参照)。電線10の端部から所定長の被覆部14が除去された後、続いて電線10がその長手方向に沿って後退移動する際に、リニア位置センサ100からの検出信号が制御ユニット80に与えられる。
次ステップS3において、制御ユニット80は、リニア位置センサ100からの検出信号に基づいて、電線保持部32に対する電線10の端部位置(上記例では、長手方向位置X(n)及び幅方向位置Mn)を特定する。
次ステップS4において、予め設定された基準位置(上記例では、長手方向位置X(b)及び幅方向基準位置Mb)と、上記端部位置とに基づいて、電線10の端部のずれ量(上記例では、電線10の長手方向のずれ量dX及び電線10の幅方向のずれ量dM)を求める。
この後、ステップS5において、ずれ量に応じて電線保持部32を移動させる。すなわち、上記ずれ量を無くするように、F側進退駆動部36aの駆動によって電線保持部32を進退移動させと共に、F側旋回駆動部38aの駆動によって電線保持部32を旋回移動させて、位置補正処理を実行する。上記例では、電線10の長手方向のずれ量dXに応じた量で、電線保持部32を進退させる。また、旋回移動機構部38の旋回軸と電線保持部32との距離Lを参照して、電線10の幅方向のずれ量dMに対応する旋回角度θを求めて、当該旋回角度θに応じて電線保持部32を旋回移動させる。旋回角度θは、例えば、近似的に、θ=arcsin(dM/L)(”arcsin”は逆正弦関数)等により求めることができる。上記のように電線保持部32を移動させることにより、電線10の端部のずれが解消される。なお、補正後、ずれ量が完全に0になる必要はなく、位置補正処理前よりもずれ量が小さくなっていればよい。
ステップS5の位置補正処理は、皮剥処理に続いて行われることが好ましい。特に、皮剥処理のためにF側進退駆動部36aの駆動によって電線保持部32の後退移動する途中で上記位置補正処理が行われ、本来の停止位置に上記ずれ量dXを加減算した位置で電線保持部32が後退停止することが好ましい。これにより、電線保持部32を停止させることなく、円滑に補正することができる。
もっとも、位置補正処理は、皮剥処理して、電線保持部32が一旦停止した後に行われてもよい。また、電線保持部32が圧着位置に移動する途中、或は、電線保持部32が圧着位置に到着した後に行われてもよい。つまり、上記補正のための移動は、それ単独で行われてもよいし、他の場所への移動と共に行われてもよい。
この後、ステップS6に進み、旋回移動機構部38の駆動により、電線保持部32が圧着位置へ移動する。この際の電線保持部32は、補正後の位置から一定方向へ及び一定量で移動する。このため、電線10の端部のずれが解消された状態のまま、電線10の端部が端子圧着ユニット40に向けて移動される。
つまり、図18及び図19において2点鎖線で示すように、電線10の端部が曲っていたとしても、電線10の端部は、端子18の圧着部分内に配設されるように移動する。このため、端子18に対する電線10の端部のずれに起因する、端子18の圧着不良を抑制することができる。
以上のように構成された電線端部処理装置20によると、端部位置検出部であるリニア位置センサ100の検出結果に基づいて、電線保持部32を移動させて、端部処理ユニットである端子圧着ユニット40と電線保持部32の相対位置を補正するため、電線10の端部を端子圧着ユニット40に対して処理上適した位置に配設することができる。このため、電線10の端部に対する圧着不良を抑制することができる。また、電線10の端部位置にずれが生じる毎に圧着処理停止、排出等をおこなわなくともよいため、圧着処理を円滑に行うことができる。特に、ずれ量に応じて位置補正処理を実行するため、当該ずれ量に応じて適切な位置補正を行うことができる。
また、上記実施形態では、制御ユニット80は、リニア位置センサ100の検出結果に基づいて電線10の端部位置のずれ量を求め、そのずれ量が小さい場合にも、当該ずれ量に応じた位置補正処理を実行するため、電線10の端部に対する処理不良をより確実に抑制することができる。
また、端部位置検出部としてリニア位置センサ100を用いているため、イメージセンサ等を用いる場合と比べて低コスト化が可能となる。
また、リニア位置センサ100を、電線10がその長手方向に沿って移動する際のその端部の直線状移動軌跡に対して交差する位置及び姿勢で設けている。そして、電線10がその長手方向に沿って移動する際におけるリニア位置センサ100からの検出結果に基づいて、電線10の端部の長手方向の位置及びずれ量、電線10の端部の幅方向の位置及びずれ量を求めている。このため、イメージセンサ等の出力結果を用いる場合と比べて、比較的簡易な処理により電線10の端部位置及びそのずれ量を求めることができる。
もっとも、端部位置検出部としてリニア位置センサ100を用いることは必須ではない。例えば、端部位置検出部として、ある特定の1箇所の物体の有無を検出する位置センサ(光センサ等)を用いてもよい。この場合であっても、他の移動機構による移動位置と検出タイミングとの組合わせによって、電線10の端部位置を特定することができる。また、端部位置検出部として、2次元的に配列された検出素子を有する二次元センサ(CCD撮像素子等)を用い、電線10の端部を抽出して認識する画像処理等を用いて電線10の端部位置を特定してもよい。
また、制御ユニット80は、電線保持部32が端子圧着ユニット40に達する迄、ここでは、電線保持部32が皮剥位置に位置する状態で、位置補正処理を実行しているため、電線10の端部と端子圧着ユニット40との干渉を抑制しつつ、電線10の端部の位置補正を行うことができる。すなわち、電線10の端部がずれた状態で電線10の端部を端子圧着ユニット40に移動させると、電線10の端部が金型42、44或は端子18等と干渉してしまう恐れがある。そこで、予めずれ量を解消するように位置補正処理した後、電線保持部32を圧着位置に向けて移動させると、そのような干渉が抑制される。これにより、より確実に圧着処理を行える。
特に、移動機構部34は、一対のストリップ刃54が電線10の被覆部14に切込んだ状態でその被覆部14が除去されるように、電線10の長手方向に沿って電線保持部32を進退移動させる進退移動機構部36を有すると共に、電線保持部32を切断皮剥ユニット50から端子圧着ユニット40に向けて移動可能に構成されている。そして、制御ユニット80は、電線保持部32の後退移動時に電線10の端部の位置を特定し、被覆部14が除去される動作に連続して、位置補正処理を実行するようになっている。このため、被覆部の除去動作に続いて、位置補正処理を実行することができ、迅速に電線10の端部の位置を補正することができる。
これにより、別途位置補正用のステージを設けなくとも、電線10の端部の位置を特定し、さらに、電線10の端部の位置を補正することができる。
もっとも、電線保持部32が移動する途中に、電線10の端部位置を検出するための補正用のステーションが設けられ、電線保持部32が当該補正用のステーションで一旦停止することで、電線10の端部位置の検出がなされてもよい。この場合の位置補正処理は、当該補正用のステーションで行われてもよいし、その後の移動途中或は移動後に行われてもよい。
また、端部位置検出部が端部処理ユニットに設けられていてもよい。例えば、端部位置検出部が金型の前方位置に設けられ、或は、金型に組込んだ状態で設けられていてもよい。そして、電線10の端部を端部処理ユニットの加工位置に配設する際に、当該端部位置検出部からの検出結果に基づいて電線10の端部が所定の加工位置(金型による圧着加工に適した位置に)に正確に配設されるようにしてもよい。
{変形例}
以上のようにこの電線端部処理装置は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
図20は電線端部処理装置の動作変形例に係るフローチャートである。図20に示すフローチャートは、図17に示すフローチャートと同様にステップS1〜S6を備えている。図20に示すフローチャートが、図17に示すフローチャートと異なる点は、さらに他のステップS11〜S14を備える点である。その相違点を中心に説明すると、図20では、ステップS4とステップS5との間に、ステップS11及びS12が挿入されている。
そして、ステップS4においてずれ量が求められた後、ステップS11に進む。
ステップS11では、ずれ量(上記例では、電線10の長手方向のずれ量dX及び電線10の幅方向のずれ量dM)が上限ずれ量を超えるか否かを判定する。上限ずれ量は、例えば、電線10の長手方向のずれ量dX及び電線10の幅方向のずれ量dMのそれぞれに対して予め設定され、外部記憶装置84等に格納された値である。上限ずれ量は、ずれ量が大きすぎて補正しても加工処理をうまく行えないような値等として、実験的、経験的に設定される値である。ずれ量が上限ずれ量を超えるとの判定は、複数のずれ量のうちのいずれかが上限ずれ量を超える場合と判定された場合になされるとよい。ずれ量と上限ずれ量が同じである場合には、ステップS13及びステップS12のいずれに進んでもよい。本ステップS11において、ずれ量が上限ずれ量を超えると判定されると、ステップS13に進む。
ステップS13では、制御ユニット80から異常信号が出力される。そして、次ステップS13において、電線端部処理装置20の加工処理が停止されると共に、表示部等にエラー表示がなされる。これにより、作業者は、エラー対象となった電線10を除去し、本電線端部処理装置20の異常確認等を行う。なお、異常信号の出力により、その異常の対象となった電線を廃棄して続けて加工を行ってもよく、或は、その他の異常警告音を発してもよい。
一方、ステップS11において、ずれ量は上限ずれ量を超えないと判定された場合、ステップS12に進む。ステップS12では、ずれ量が補正不要ずれ量を超えるか否かが判定される。補正不要ずれ量は、例えば、電線10の長手方向のずれ量dX及び電線10の幅方向のずれ量dMのそれぞれに対して予め設定され、外部記憶装置84等に格納された値である。この補正不要ずれ量は、ずれ量が存在したとしてもずれ量が小さいため特に補正しなくとも加工処理をうまく行えるような値等として、実験的、経験的に設定される値である。ずれ量が補正不要ずれ量を超えるとの判定は、複数のずれ量のうちのいずれかが補正不要ずれ量を超える場合と判定された場合になされるとよい。ずれ量と上限ずれ量が同じである場合には、ステップS5及びステップS6のいずれに進んでもよい。本ステップS12において、ずれ量が補正不要ずれ量を超えると判定されると、ステップS5に進み、移動による相対位置を補正する。一方、ステップS12において、ずれ量は補正不要ずれ量を超えないと判定された場合、位置補正処理を行うことなく、ステップS6に進んで、電線保持部32を圧着位置へ移動させる。
なお、上記ステップS11及びステップS13のうちのいずれか一方が省略されていてもよい。
本変形例によると、制御ユニット80は、ずれ量が予め設定された補正不要ずれ量を超える場合に、位置補正処理を実行する。このため、位置ずれに起因する電線10の端部に対する加工不良を抑制することができる。一方、ずれ量が比較的小さい場合には、位置補正処理を実行せず、ずれ量が比較的大きい場合には、位置補正処理を実行する。このため、電線10の端部に対する処理を円滑に行うことができる。
また、制御ユニット80は、ずれ量が上限ずれ量を超える場合に、位置補正処理を実行せずに、異常信号を出力する。ずれ量が過大となる場合には、ずれ量の補正が困難、或は、装置の異常事態の発生等が想定されるため、このような場合に容易に対処できる。
また、上記実施形態では、端子圧着ユニット40に対して、より具体的には、端子圧着ユニット40に配設される端子18に対して電線10の端部を位置精度よく配設する例について説明したが、その他の端部処理ユニットに対して電線10の端部を配設する場合にも適用できる。
例えば、端部処理ユニットとしては、電線の端部をゴム栓等のシール材を装着するシール材装着ユニットを想定することができる。この場合には、上記と同様に、電線10の端部位置をシール材装着ユニット(より具体的には、シール材装着ユニットにおけるシール材のセット位置)に対して相対位置を補正して配設することで、電線10の端部に対してシール材を精度よく装着することができる。また、端部処理ユニットとして、電線10の端部を保持して次の加工ユニット或は排出ユニット等に受渡す端部保持ユニットを想定することもできる。この場合にも、上記と同様に、電線10の端部位置を端部保持ユニット(より具体的には、端部保持ユニットにおいて電線の端部を保持する部分)に対して相対位置を補正して配設することで、電線10の端部を精度よく次の端部保持ユニットに受渡すことができる。さらには、端部処理ユニットとして、電線10の端部の芯線部12に溶融半田を付着させる半田付着ユニットを想定することもできる。この場合、電線10の端部の芯線部12に、精度よい位置及び量で溶融半田を付着させることができる。このように、端部処理ユニットとしては、電線10の端部に対して各種加工、保持等、何らかの処理を及す各種ユニットを想定することができる。
なお、上記実施形態では、電線10の端部を保持する電線保持部32を移動させる例で説明したが、必ずしもその必要はない。すなわち、電線10の端部に対する加工不良を抑制するためには、電線保持部32と端部処理ユニットとの相対位置が補正されればよい。このため、端部処理ユニットを移動させる移動機構部を設け、制御ユニット80が、電線保持部32を移動させる代りに端部処理ユニットを移動させてもよいし、或は、電線保持部32と端部処理ユニットとの双方を相対移動させるようにしてもよい。端部処理ユニットを移動させる際には、端部処理ユニットの全体を移動させる必要はなく、少なくとも加工部分(端子圧着ユニット40では金型部分)を移動させればよい。
また、上記実施形態では、電線保持部32が旋回移動機構部38の回転駆動によって、切断位置と皮剥位置と圧着位置との間で旋回移動する構成とされているが、必ずしもその必要はない。他の、直線駆動機構の駆動によって、前述のような加工位置を直線移動する構成であってもよい。
また、上記実施形態では、進退方向と旋回方向の2方向でのずれ量を補正する例で説明したが、ずれ量を補正する方向はそのような例に限られない。進退方向或は旋回方向等の一方向のずれ量を補正する例でも構わない。また、電線10の端部の高さ位置を検出する高さセンサを設けると共に、電線保持部及び端部処理ユニットの少なくとも一方を高さ方向に調整駆動する駆動機構部を設けてもよい。そして、前記高さセンサに基づいて電線保持部及び端部処理ユニットの少なくとも一方の高さを調整し、高さ方向のずれ量をも解消するようにしても構わない。
また、上記実施形態では、ずれ量を求めた上で、当該ずれ量を解消するように、電線保持部32を移動させているが、必ずしもその必要はない。例えば、電線10の端部の検出位置を基準として、一定の量で電線保持部32を移動させるようにしてもよい。この場合でも、電線10の端部の検出位置を基準として、当該電線10の端部を所定の加工位置に精度よく配設することができる。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。