近年、光通信システムにおける、帯域利用効率の向上に向け、無線通信分野で用いられるような多値変調方式を光通信へ導入する検討が盛んに行われている。代表的な多値変調方式として、n値位相シフト変調(n−level Phase−Shift Keying:nPSK),n値強度・位相シフト変調(n−level Amplitude−and−Phase−Shift Keying:nAPSK),n値直交振幅変調(n−level Quadrature Amplitude Modulation:nQAM)方式が挙げられる。
このような、多値変調信号を生成する手段の1つとして、複数の2値PSK(Binary−PSK:BPSK)光信号を干渉させ、多値光信号を合成する手法が知られている。図1に、4値変調である直交位相変調(Quadrature Phase−Shift Keying:QPSK)信号を生成するための良く知られた変調器構成100を示す(従来技術1)。図1において、変調器100は、光強度分岐比及び結合比1:1(0.5:0.5)のY字型の光分岐及び結合手段131、132を有し、それらで構成されるマッハツェンダ(Mach−Zehnder:MZ)回路の各アームにそれぞれBPSK変調手段111および112が配置され、さらに片方のアームにπ/2の位相変化を与える位相シフタ121が設けられている。このとき、メイン入力ポート101への入力光電場をEin、メイン出力ポート102からの出力光電場をEout(いずれも複素数表現)とすると、変調器の伝達関数Tは、以下の式で表現することができる。
ここでr1、r2は、それぞれ、光分岐及び結合手段131、132の光強度分岐及び結合比であり、本実施形態では、r1=r2=0.5である。b1、b2は、それぞれBPSK変調手段111、112の伝達関数であり、シンボル点(時間軸上でのシンボルの中心タイミング)においては、+1または−1のいずれかの値をとる。なお、本明細書では、モデル簡易化のため、光分岐手段、結合手段、BPSK変調手段およびそれらをつなぐ光導波路は、全て過剰損失ゼロの理想的な場合を仮定する。
図2(a)、(b)、(c)は、それぞれTの右辺第1項0.5b1、第2項0.5jb2およびTのシンボル点における値を複素平面上に表した複素平面プロット200、210、220である。同図中の[d1d2]は、各点に対するバイナリデータのマッピングを表している。データビット値は、シンボル点における各BPSK変調手段の伝達関数の値と1対1で関連付けられる。ここでは、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1とした。図2(a)に対応する数式1のTの右辺第1項は、b2に依存しないため、2ビット目のデータはx(任意値)としてある。図2(b)についても、同様である。連続光Ein=1を入力すると、Eout=Tであるため、図2(c)は、そのまま、出力信号ダイアグラムに相当する。b1およびb2が、それぞれI相(実部)およびQ相(虚部)の正負に対応するQPSK信号が得られることがわかる。なお、BPSK変調手段としては両アームに高速位相変調手段を有するMZ回路(以下、単に「MZ変調回路」)を用いることが最も一般的である。このため一般的な、QPSK変調器は、図1の光分岐及び結合手段131、132で構成されるMZ回路の各アームにBPSK変調手段であるMZ変調回路が埋め込まれた形となり、しばしば、ネスト型MZ変調器とも呼ばれる。
非特許文献1では、さらに複雑な構成を使用したQAM変調器が報告されている。同文献では光強度分岐比及び結合比4:2:1の光分岐及び結合手段を用いたQPSK変調回路を3回路並列に接続することで、64QAM変調器を構成している。さらに、光強度分岐比及び結合比2N-1:2N-2:・・・:1の光分岐及び結合手段を用いてN個のQPSK変調回路を並列接続すれば4NQAM変調器を構成できることが記述されている。
図3に、同記述を応用した16QAM変調器の構成300を示す(従来技術2)。本構成では、分岐比及び結合比2:1(0.67:0.33)のY字型の光分岐及び結合手段335、336で構成されるMZ回路の各アームに、従来技術1と同構成のQPSK変調手段341、342が配置され、QPSK変調手段342の後段に位相シフタ323が配置されている。位相シフタ323の位相シフト量はπ/2の整数倍であればよいが、ここではモデル簡易化のため位相シフト量をゼロとして議論を進める。メイン入力ポート301からメイン出力ポート302への伝達関数Tは、以下の通りとなる。
ここで、T1、T2は、それぞれQPSK変調手段341、342の伝達関数である。b1、b2、b3、b4は、それぞれBPSK変調手段311、312、313、314の伝達関数であり、シンボル点においては+1または−1のいずれかの値をとる。r1、r2はそれぞれ光分岐及び結合手段335、336の光強度分岐及び結合比であり、本実施形態では、r1=r2=0.67である。
図4は、数式2の右辺各項および伝達関数Tのシンボル点における値を複素平面上に表した複素平面プロット400、410、420である。同図中の[d1d2d3d4]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。T1とT2を電界振幅比2:1(0.33:0.17)で足し合わせることで、T1に対応する4点の各々がT2の値に応じて4点に分裂し、16QAMの信号ダイアグラムが得られることがわかる。
図5に、非特許文献2のFig.15(b)に示される8APSK変調器の構成に、若干の修正と非特許文献1のアイディアを加えた例500を示す(従来技術3)。本実施形態では、2APSK変調手段541と、QPSK変調手段542が直列に接続されている。2APSK変調手段541は、分岐比及び結合比1−r:rのY字型の光分岐及び結合手段531、532を有し、それらで構成されるMZ回路の一方のアームのみにBPSK変調手段511、および位相変化π/4を与える位相シフタ521が配置されており、他方のアームは直線導波路となっている。本従来技術においては、
である。2APSK変調手段541の伝達関数T1、QPSK変調手段542の伝達関数T2および変調器全体の伝達関数Tは、それぞれ以下の式で表現できる。
ここで、b1、b2、b3は、それぞれBPSK変調手段511、512、513の伝達関数であり、シンボル点においては、+1、または−1のいずれかの値をとる。
図6は、数式3のT1、T2およびTのシンボル点における値を複素平面上に表した複素平面プロット600、610、620である。同図中の同図中の[d1d2d3]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。T1は、原点から実軸正方向へ1−rだけシフトした点を基点に、角度−π/4又は+π・3/4[rad]方向へそれぞれrだけシフトした2値をとる。原点から見たときの位相角は、それぞれ−π/12、+π/6であり、動径はそれぞれ
なので、T1のとる2値は相対位相π/4、電界強度比
の変則的な2APSKの信号ダイアグラムに相当する。一方T2は、数式2からも明らかな通り、動径
のQPSKの信号ダイアグラムに相当する4値をとる。このため、T=T2・T1のとる8値を複素平面上にプロットすると、外側QPSK信号点(図中[100]、[110]、[111]、[101])と内側QPSK信号点(図中[000]、[010]、[011]、[001])が互いに位相角π/4だけオフセットして配置され、外側QPSKと内側QPSKの電界強度比は、
であるような信号ダイアグラムが得られる。外側QPSKの1点とそれに近接する内側QPSKの2点、例えば[100]、[001]、[000]の3点が正三角形をなしていることが特徴である。この配置は、8値変調において、所与の出力信号ピーク強度(図3の場合、例えば[100]の状態における出力光強度)に対する最近接信号点間のユークリッド距離を最大化する配置であり、OSNR耐性の観点から有利であるため、近年多値光伝送の学術検討においてもしばしば用いられる変調方式である(例えば非特許文献3)。この変調方式は、8QAMと呼ばれることも多いが、本明細書では非特許文献2に倣い8APSKの呼称を採用する。
なお、非特許文献2のFig.15(b)では、2APSK変調手段におけるアーム間の光電界振幅比として2:1(光強度比が1:1/4、従って電界振幅比が1:1/2=2:1)が記載されているが、これは本実施形態に示した理想値
を整数で近似した値と考えられる。また、同文献では、電界振幅比2:1(理想的には
)を得るための具体的な回路構成についても記載されていないが、同文献Fig.5(b)から単純に類推して6dB光減衰器を用いると、減衰させた分の光過剰損失が生じてしまう。本実施形態では、ここへ、非特許文献1のアイディアを応用し、光強度分岐比及び結合比
の光分岐及び光結合手段を用いることで、光減衰器を用いる場合に比較して光過剰損失を低減している。
本発明は、変調器の回路構成に関するものであって、その効果は、変調器を形成する材料には依存しないため、以下に示す実施形態においては、材料を特に指定しない。変調器を形成する材料としては、電気光学(Electro−Optic:EO)効果の一種であるポッケルス効果を有するLiNbO3(LN)やKTa1-xNbxO3やK1-yLiyTa1-xNbxO3などの多元系酸化物結晶、電界吸収(Electro−Absorption:EA)効果や量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum Confined Stark Effect:QCSE)による屈折率または吸収係数の変調が可能なGaAs系やInP系の化合物半導体、クロモフォアなどのEO効果を有するポリマなどを用いることができる。さらには、複雑な構成の変調器回路を低損失に作製するため、非特許文献1で示されているように、上記材料基板と石英系平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)との異種基板接合型構成を用いてもよい。
以下、実施形態において、複数のBPSK変調手段の組み合わせによる多値変調器の構成を示すが、BPSK変調手段としてはMZ変調回路を用いることが最も一般的である。非特許文献2で、詳しく論じられている通り、MZ変調回路をアーム間位相差+π〜−πを与えるような電圧振幅でプッシュプル駆動すれば、駆動電気信号ノイズに起因する光出力の揺らぎを最小限に抑え、シンボル間干渉を抑制することができるというメリットがある。しかし、本発明の効果は、BPSK変調手段の具体的構成には依存しないので、例えば直線型の位相変調器等を用いても良い。
なお、特に断りのない場合、MZ回路の両アームの光路長は、全て等長とする。実際には、プロセスエラーやDCドリフト等により光路長のズレが生じるが、一般にそのようなズレは、位相シフタの調整により補償される。補償量は、材料や製造条件、また、変調器の使用環境等によって様々に異なるため、一意に定まるものではない。このため、以下の実施形態における位相シフタの位相シフト量の値には光路長補償のための位相シフト分は、含まないものとする。また、以下、実施形態においては数式による説明を簡易化するため位相シフタは、MZ回路の一方のアームのみに配置しているが、MZ回路においてはアーム間の位相差が本質的なパラメータであるため、位相シフタを他方のアームに配置しても、また両方のアームに配置しても、アーム間の位相差が同じになるような位相シフト量を設定すれば同じ効果が得られることは自明であり、本発明の効果は、位相シフタを配置するアーム(一方のアーム、他方のアーム、両方のアーム)の選択には依存しない。
また、本明細書の説明において、「信号ダイアグラム」とは、当該光信号の全信号点を複素平面上にプロットし、さらに、各信号点に対応するデータ値のマッピングを記載したものを指し、「コンスタレーション図形」とは、信号ダイアグラムからデータマッピングの情報を除いた図形、すなわち単に、信号点の描く図形を指すものとする。さらに、コンスタレーション図形同士を複素平面上での回転操作のみによって互いに重ねることができる場合、コンスタレーション図形が「等しい」と表現し、回転操作によって重ねることができない場合は、コンスタレーション図形が「異なる」と表現する。データマッピングが「等しい」または、「異なる」と表現する場合も同様である。これは、複素平面上での回転操作は単に基準位相の取り方の変更に相当するため、回転操作によって重ねることのできるコンスタレーション図形(または、データマッピング)は実質的に等しいと見做せるためである。
(第1の実施形態)
図7に、本発明の第1の実施形態である8APSK変調器の構成700を示す。第1の光信号を出力する出力ポート771及び第2の光信号を出力する出力ポート772を有する第1の光変調手段741と、出力ポート771に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段742と、第3及び第2の光信号を結合させメイン出力ポート2へ出力させる光結合手段753とで構成されている。
第1の光変調手段741は前記従来技術1とほぼ同等のQPSK変調手段であり、光分岐手段及び結合手段751、752と、それらで構成されるMZ回路の各アームに配置されたBPSK変調手段711および712、及び片方のアームに配置され、π/2の位相変化を与える位相シフタ721で構成されているが、光分岐手段及び結合手段として光強度結合比1:1(0.5:0.5)の2入力2出力の方向性結合器を用いる点が異なる。よく知られている通り、方向性結合器の伝達行列Scは、以下の式で表すことができる(非特許文献5等を参照)。
但し、Ein,A、Ein,Bは、それぞれ入力ポートA、Bからの入力光電場、Eout,C、Eout,Dは、それぞれ出力ポートC、Dからの出力光電場(いずれも複素数表現)、Rは光強度結合比である。第2の光変調手段742は、直列に接続されたBPSK変調手段713と位相シフタ722で構成されている。メイン入力ポート701から出力ポート771(スルー側)への伝達関数T1、メイン入力ポート701から出力ポート772(クロス側)の伝達関数T1´、第2の光変調手段の伝達関数T2、及びメイン入力ポート701からメイン出力ポート702への伝達関数Tは、それぞれ以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2、b3は、それぞれBPSK変調手段711、712、713の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。φは位相シフタ722による位相変化量であり、本実施形態では、φ=−π/4である。rは光結合手段753の光強度結合比であり、本実施形態では、
である。
図8(a)〜(e)は、T1、T1´、Tの右辺各項およびTのシンボル点における値を複素平面上にプロットした複素平面プロット800、810、820、830、840である。同図中の[d1d2d3]は各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。図8(a)及び(b)に示すT1及びT1´のプロット800、810は、メイン入力ポート701に連続光を入力した場合の第1及び第2の光信号の信号ダイアグラムに相当する。両者のコンスタレーション図形は、互いに等しく、動径
(従って原理損失3dB)のQPSKのコンスタレーション図形となっている。しかしながら両者のデータマッピングは異なっており、ちょうど[00x]と[11x]を結ぶ直線を対称軸とした鏡面対称の関係になっているため、どのように回転させても両者を一致させることはできないことがわかる。第1の光信号は第2の変調手段212によってさらに変調され第3の光信号として光結合手段753へと送られる。図8(c)は、Tの右辺第1項のプロット820であり、これは第3の光信号に対応する伝達関数T2T1に光結合手段753の光強度結合比に対応する係数
を掛けたものである。各信号点に2種類のデータが重なったQPSK信号となっていることがわかる。一方、第2の光信号はそれ以上の変調を受けずに光結合手段に到達する。図8(d)は、Tの右辺第2項のプロット830であり、これは単に第2の光信号に対応する伝達関数T1´に係数
を掛けたものである。図8(e)は、最終的な変調器の伝達関数Tのプロット840である。図8(d)の各点[d1d2x]が図8(c)の[d1d20]と[d1d21]に対応する2点に分裂(例えば、図8(d)の[10x]が図8(c)の[100]と[101]に対応する2点に分裂)し、8APSKの信号ダイアグラムとなっていることがわかる。このとき、外側の信号点(たとえば[101])の動径は、約0.89であり、前記の定義による原理損失は、1.0dBである。すなわち、前記従来技術3に比較し、原理損失を2.6dB低減している。
なお、rの値は、
としてもよく、また、φはπ/4の奇数倍であればよい。r、φを変更するとデータマッピングも、図8と異なる形となるが、やはり、原理損失1.0dBの8APSK信号が得られることは容易に確かめられる。
また、本実施形態を含む本発明の全ての実施形態において、2入力2出力の光結合手段(本例では光結合手段752)としては、方向性結合器の他にもマルチモード干渉(Multi Mode Interference:MMI)カプラや、非特許文献4に示される波長無依存カプラ(Wavelength Insensitive Coupler:WINC)を用いることもできる。これらのカプラの伝達関数は数式4とは異なるが、どのような2入力2出力カプラを用いても第1及び第2の光信号は、コンスタレーション図形が等しく、データマッピングが異なる関係となり、本実施形態の構成においてはデータマッピングが互いに鏡面対称になる。このことは、光カプラの相反性とエネルギー保存則から導くことができる(厳密には、カプラの内部損失によって信号ダイアグラムが乱れる場合があるが、内部損失の充分小さいカプラを用いれば問題ない)。さらに、メイン入力ポートに接続された光分岐手段(本例では、光分岐手段751)及びメイン出力ポートに接続された光結合手段(本例では、光結合手段753)としては、上記のような2入力2出力カプラを用いても、また、Y字型カプラを用いてもよい。但し、カプラの位相特性はカプラの種類によって異なるため、位相シフタ721、722の位相シフト量は用いるカプラの種類に応じて前記の値から変更する必要がある。
さて、本実施形態を含む本発明の全実施形態では、前記第1及び第2の光信号の両方を用いて最終的な出力光信号を生成しており、この点が本発明のアイディアの核である。QPSK変調手段の出力側光結合手段を2入力2出力カプラとし、第1及び第2の光信号を出力させる構成自体は、従来から知られている。例えば、特許文献1では、第1及び第2の光信号(同文献では「正相信号」及び「逆相信号」と表記)のうち一方を出力信号光、他方を変調器調整用のモニタ信号光として用いる構成が開示されている。しかしながら、第1及び第2の光信号の両方が出力信号光の合成に用いられることは従来なかった。なぜなら、第1及び第2の光信号は、データマッピングが互いに異なるため、単純に結合させただけでは、信号ダイアグラムを乱してしまうためである。一例として、両者を単純に結合させ、原理損失が3dBより小さいQPSK信号を得られるかどうか検討してみる。原理損失を最小化するためには、同じシンボル値に対応する信号同士が電界振幅を強めあうよう、同位相で干渉させればよい。例えば図8(a)、(b)の信号点[00x]と[11x]に着目すると、同位相で干渉させるためには第1及び第2の光信号を位相差ゼロで結合させればよいことがわかる。しかし、その場合信号点[10x]と[01x]は逆位相(位相差がπの奇数倍)で結合するため打ち消しあってしまい、結局QPSK信号を得ることはできない。より一般的には、第1及び第2の光信号を光強度比r´(0<r´≦1)、相対位相φ´で単純に結合させる場合の伝達関数、すなわち、
を考えればよい。QPSK信号を得るためにはb1とb2の係数の絶対値が等しく、位相がπ/2(もしくは、その奇数倍)異なることが必要だが、それを満たす実数r´、φ´の組み合わせが存在しないことは容易に確かめられる。このため、従来は、第1および第2の光信号のうちどちらか一方をメイン出力信号光として用い、他方はモニタ光として用いるしか利用手段はなく、これが3dBの原理損失要因となっていた。なお、前記従来技術1〜3のように光結合手段として2入力1出力のY字型カプラ等を用いた場合、図1、3、5に示した通り、第2(又は第1)の光信号に相当する光は、光結合部において放射光として捨てられており、やはり3dBの原理損失要因となっていた。本発明では、このように従来同時に信号光生成に用いることのできなかった第1及び第2の光信号に対し、その一方に他方とは、異なる変調をさらに加えてから結合させるという新たな着想により、同時に信号光生成に用いることを可能としている。これによって、従来より、小さい原理損失での多値信号生成を可能にしている。
(第2の実施形態)
図7に示した8APSK変調器と同様の構成で、光結合手段753の光強度結合比を
とし、位相シフタ722の位相シフト量をφ=π/2とすれば、8PSK変調器を構成することができる。変調器の伝達関数の形は数式5と同じである。
図9(a)〜(e)は、数式5で
とした場合のT1、T1´、Tの右辺各項およびTのシンボル点における値を複素平面上にプロットした複素平面プロット900、910、920、930、940である。図8に示した8APSKの場合と同様に、図9(c)に示すTの右辺第1項のプロット(第3の光信号に対応する伝達関数T2T1に係数
を掛けたもの)920は、各信号点に2種類のデータが重なったQPSK信号となるが、図9(e)に示す通り最終的な変調器の伝達関数Tのプロット940は、図9(d)の各点が図9(c)の値に対応する2点に分裂した8PSKの信号ダイアグラムとなる。このとき、各信号点の動径は、
なので、原理損失は、3.0dBである。図5に示した前記従来技術3と同じ構成で、光分岐および結合手段531および532の光強度分岐及び結合比を
とし、位相シフタ522の位相シフト量をφ=π/2とすればやはり8PSK変調器を構成することができるが、その原理損失は5.3dBとなる。すなわち、本実施形態は、従来技術3から容易に想到しうる8PSK変調器に比べ、原理損失を2.3dB低減している。
さらに、図9(e)のデータマッピングは、グレイコードになっていることがわかる(隣接信号点間で反転するビットの数が常に1ビット)。つまり、本例の8PSK変調器を用いれば、特別なエンコーダーを用いることなくグレイコードのマッピングが可能になるという副次的な効果も得られる。
なお、rの値は
としてもよく、また、φはπ/2の奇数倍であればよい。これらの値を変更した場合のデータマッピングは、図9とは異なるが、やはり原理損失3.0dBの8PSK信号が得られることは容易に確かめられる。
(第3の実施形態)
図10に、本発明の第3の実施形態である16QAM変調器の構成1000を示す。第1の光信号を出力する出力ポート1071及び第2の光信号を出力する出力ポート1072を有する第1の光変調手段1041と、出力ポート1042に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段1042と、第3及び第2の光信号を結合させメイン出力ポート1002へ出力させる光結合手段1053とで構成されている。
第1の光変調手段1041は、図7に示した第1の実施形態の第1の光変調手段1041と同等のQPSK変調手段である。第2の光変調手段1042は、図1に示した従来技術1と同等のQPSK変調手段に位相シフタ1022が直列接続されたものである。前記第1の実施形態と同様に伝達関数T1、T1´、T2、Tを定義すると、T2のみ数式5と異なり以下の形となる。
ただしb3、b4は、それぞれBPSK変調手段1013、1014の伝達関数であり、シンボル点においては+1または−1のいずれかの値をとる。φは位相シフタ1022による位相変化量であり、本実施形態では、φ=−π/4である。また光結合手段1053の光強度結合比rは、本実施形態では、r=1/3である。
図11(a)〜(e)は、本実施形態における、T1、T1´、Tの右辺各項およびTのシンボル点における値を複素平面上にプロットしたものである。同図中の[d1d2d3d4]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。図11(a)、(b)に示すT1、T1´のプロット1100、1110は、第1、第2の光信号の信号ダイアグラムに対応し、これは図7に示した前記第1の従来例と同等である。図11(c)に示すTの右辺第1項のプロット1120は、第3の光信号の信号ダイアグラムに係数
を掛けたものに対応し、本例では各信号点に4種類のデータが重なったQPSKの形となる。図11(d)は、Tの右辺第2項のプロット1130であり、これは単に第2の光信号に対応する伝達関数T1´に係数
を掛けたものである。図11(e)は、最終的な変調器の伝達関数Tのプロットであり、図11(d)の各点が、図11(c)の値に対応する4点に分裂する形で16QAMの信号ダイアグラムが得られていることがわかる。このとき、電界振幅が最大となる信号点(たとえば[1011])の動径は、
なので、原理損失は、1.2dBである。すなわち、前記従来技術2に比べ原理損失をさらに1.8dB低減している。
なお、第2の変調手段1042のQPSK変調部としては、図1に示した従来技術1と同等のQPSK変調手段のほかに、本実施形態の第1の光変調手段1041と同構成のQPSK変調手段を用いてもよい。後者を用いる場合、スルー側(数式7のT1に相当)とクロス側(数式7のT1´に相当)のどちらを用いても良い。またφは、π/4の奇数倍であればよい。いずれの置き換えを行った場合も、データマッピングが図11と異なる形になるが、やはり、原理損失1.2dBの16QAM信号が得られることは容易に確かめられる。
(第4の実施形態)
図12に、本発明の第4の実施形態である64QAM変調器の構成1200を示す。第1の光信号を出力する出力ポート1271及び第2の光信号を出力する出力ポート1272を有する第1の光変調手段1241と、出力ポート1271に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段1242と、第3及び第2の光信号を結合させ、メイン出力ポート1202へ出力させる光結合手段1253とで構成されている。
第1の光変調手段1241は、図7に示した第1の実施形態の第1の光変調手段1241と同等のQPSK変調手段である。第2の光変調手段1242は、図10に示した第3の実施形態と同等の16QAM変調手段1263に位相シフタ1222が直列接続されたものである。但し説明の都合上、図10のBPSK変調手段1011、1012、1013、1014は、以下の説明においてBPSK変調手段1213、1214、1215、1216と番号を読み替える。前記第1の実施形態と同様に伝達関数T1、T1´、T2、Tを定義すると、T2のみ数式5と異なり以下の形となる。
但し、T16QAM(b3、b4、b5、b6)は16QAM変調手段1263の伝達関数であり、数式7におけるTの変数b1、b2、b3、b4をb3、b4、b5、b6で置き換えた関数である。b3、b4、b5、b6は、それぞれ第2の変調手段の中に含まれるBPSK変調手段1213、1214、1215、1216の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。φは図12の位相シフタ1222による位相変化量であり、本例ではφ=−π/4である。rは、図12の光結合手段1253の光強度結合比であり、本例では、r=3/7である。
図13(a)〜(e)は、本例におけるT1、T1´、Tの右辺各項およびTのシンボル点における値を複素平面上にプロット1300〜1340したものである。同図中の[d1d2d3d4d5d6]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。但し図面の煩雑化を避けるため図13(c)、(e)は、4隅の点のみマッピング1320、1330を図示している。数式8にbnの値を代入してゆけば図13(c)、(e)の各点がどのようなデータ列に対応するかは容易に確認できる。図13(a)、(b)に示すT1、T1´のプロット1300、1310は第1、第2の光信号の信号ダイアグラムに対応し、これは、図7に示した前記第1の従来技術と同等である。図13(c)に示すTの右辺第1項のプロット1320は第3の光信号の信号ダイアグラムに係数
を掛けたものに対応し、本例では各信号点に4種類のデータが重なった16QAMの形となる。図13(d)はTの右辺第2項のプロット1330であり、これは単に第2の光信号に対応する伝達関数T1´に係数
を掛けたものである。図13(e)は最終的な変調器の伝達関数Tのプロット1340であり、図13(d)の各点が図13(c)の値に対応する16点に分裂する形で64QAMの信号ダイアグラム1320が得られていることがわかる。このとき、電界振幅が最大となる信号点(たとえば[100111])の動径は
なので、原理損失は、0.6dBである。非特許文献1の図8に示されるような従来の64QAM変調器においては、原理損失は3.0dBとなるため、本例は従来に比べ原理損失をさらに2.4dB低減している。
なお、前記第3の実施形態の16QAM変調器を新たな第2の光変調手段として埋め込むことで本例の64QAM変調器が得られたように、本例の64QAM変調器を新たな第2の光変調手段として埋め込めば、さらに256QAM変調器を構成できる。同様のスケーリングは、理論的には無限に可能であり、第2の変調手段として4n-1QAM変調手段を埋め込めば、4nQAM変調器を構成できる。この場合、nが大きくなる程、原理損失は小さくなる。一方、本実施形態における第2の光変調手段としては、ここで用いた原理損失1.8dBの16QAM変調器構成に限らず、従来技術2の原理損失3.0dBの16QAM変調器構成を用いることもできる。但し、光結合手段1453の光強度結合比r=9/17とする必要がある。この場合でも、従来より、原理損失の小さい64QAM変調器(原理損失1.4dB)を構成することができる。一般に、本例の構成を拡張し、第2の光変調手段として原理損失がxdBの4n-1QAM変調手段を用いて4nQAM変調器を構成する場合、光結合手段1453の光強度結合比rについては
とすればよい。
なお、本実施形態および本実施形態の構成を拡張した4nQAM変調器においても、前記第3の実施形態と同様、φはπ/4の奇数倍であればよいが、データマッピングはφに応じて異なる形となる。
(第5の実施形態)
図14に、本発明の第5の実施形態である16QAM変調器の構成を示す。第1の光信号を出力する出力ポート1471及び第2の光信号を出力する出力ポート1472を有する第1の光変調手段1441と、出力ポート1471に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段1442と、出力ポート1472に接続され、第2の光信号をさらに変調し第4の光信号を出力する第3の光変調手段1443と、第3及び第4の光信号を結合させメイン出力ポート1402へ出力させる光結合手段1453とで構成されている。
第1の光変調手段1441は、図7に示した実施形態1の第1の光変調手段1441と同等のQPSK変調手段である。第2の光変調手段1442は、BPSK変調手段1413で構成されている。第3の光変調手段1443は、分岐比及び結合比1−r3:r3のY字型の光分岐及び結合手段1431、1432を有し、それらで構成されるMZ回路の一方のアームのみにBPSK変調手段1414、および位相シフト量φ3を与える位相シフタ1423が配置され、他方のアームは直線導波路となっており、さらに光結合手段1432の後段に位相シフタ1422が直列に接続された構成となってる。本例では、r3=1/2、φ3=−π/2である。メイン入力ポート1401から第1の変調手段の出力ポート1471(スルー側)への伝達関数T1、メイン入力ポート1401から第1の変調手段の出力ポート1472(クロス側)の伝達関数T1´、第2の変調手段の伝達関数T2、第3の変調手段の伝達関数T3、及びメイン入力ポート1401からメイン出力ポート1402への伝達関数Tは、それぞれ以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2、b3、b4は、それぞれBPSK変調手段1411、1412、1413、1414の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。b4=+1のときT3=0.5(1−j)、b4=−1のときT3=0.5(1+j)となることから、第3の光変調手段は位相シフト幅がπ/2の変則的なBPSK変調手段となっていることがわかる(通常のBPSK変調手段は伝達関数が+1、−1の2値をとるので、位相シフト幅はπである)。φは位相シフタ1422による位相変化量であり、本例ではφ=+π/4である。rは光結合手段1453の光強度結合比であり、本例ではr=2/3である。
図15(a)〜(e)は、本例におけるT1、T1´、Tの右辺各項およびTのシンボル点における値を複素平面上にプロットしたものである。同図中の[d1d2d3d4]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。図15(a)、(b)に示すT1、T1´のプロット1500、1510は第1、第2の光信号の信号ダイアグラムに対応し、これは図7に示した前期第1の従来例と同等である。図15(c)に示すTの右辺第一項のプロット1520は第3の光信号の信号ダイアグラムに係数
を掛けたものに対応し、本例では各信号点に4種類のデータが重なったQPSKの形となる。図15(d)に示すTの右辺第二項のプロット1530は第4の光信号の信号ダイアグラムに係数
を掛けたものに対応し、こちらも各信号点に4種類のデータが重なったQPSKの形となるが、図15(c)とはデータマッピングが異なる。図15(e)は最終的な変調器の伝達関数Tのプロット1540である。図15(c)と図15(d)の各点の重なりは解消し、16QAMの信号ダイアグラムが得られていることがわかる。このとき、電界振幅が最大となる信号点(たとえば[1010])の動径は、
なので、原理損失は、1.2dBである。すなわち、前記従来技術2に比べ原理損失をさらに1.8dB低減している。
なお、φ、φ3の値は上記の値に限らず、φはπ/4の奇数倍、φ3はπ/2の奇数倍であればよい。いずれの値を変更した場合も図15のデータマッピングが変化するが、やはり原理損失1.2dBの16QAM信号が得られることは容易に確かめられる。
(第6の実施形態)
図16に、本発明の第6の実施形態である16APSK変調器の構成1600を示す。第1の光信号を出力する出力ポート1673及び第2の光信号を出力する出力ポート1674を有する第1の光変調手段1641と、出力ポート1673に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段1642と、第3及び第2の光信号を結合させメイン出力ポート1602へ出力させる光結合手段1653とで構成されている。
第1の光変調手段1641は前記第2の実施形態とほぼ同等の8PSK変調手段であり、その構成は図7とほぼ同等であるが、図7の光結合手段753の代わりに光結合手段1654として光強度結合比r1:1−r1の2入力2出力方向性結合器を用いている点が異なる。本実施例では
である。また、本例では位相シフタ1622の位相シフト量はゼロである。第2の光変調手段1642は、直列に接続されたBPSK変調手段1614と位相シフタ1623で構成されている。メイン入力ポート1601から出力ポート1673(スルー側)への伝達関数T1、メイン入力ポート1601から出力ポート1674(クロス側)の伝達関数T1´、第2の光変調手段の伝達関数T2、及びメイン入力ポート1からメイン出力ポート2への伝達関数Tはそれぞれ以下の式で表すことができる。
ただしb1、b2、b3、b4は、それぞれBPSK変調手段1611、1612、1613、1614の伝達関数であり、シンボル点においては+1または−1のいずれかの値をとる。φは位相シフタ1623による位相変化量であり、本例ではφ=0である。rは光結合手段1653の光強度結合比であり、本例では
である。
図17(a)〜(e)は、T1、T1´、Tの右辺各項およびTのシンボル点における値を複素平面上にプロットしたものである。同図中の[d1d2d3d4]は各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。図17(a)及び(b)に示すT1及びT1´のプロットは、それぞれ本実施形態における第1及び第2の光信号の信号ダイアグラムに相当する。両者のコンスタレーション図形は互いに等しく、動径
(従って原理損失3dB)の8PSKのコンスタレーション図形となっている。しかしながら両者のデータマッピングは、異なっており、図17(a)の16点のうち[111x]、[010x]、[001x]、[100x]の4点からなる正方形のみを180度回転させると図17(b)と等しい信号ダイアグラムが得られるような関係となっている(このため、どのように回転させても両者を一致させることはできない)。図17(c)は、Tの右辺第1項のプロットであり、これは第3の光信号に対応する伝達関数T2T1に光結合手段1653の光強度結合比に対応する係数
を掛けたものである。
各信号点に2種類のデータが重なった8PSK信号となっていることがわかる。図17(d)は、Tの右辺第2項のプロット1730であり、これは、単に第2の光信号に対応する伝達関数T1´に係数
を掛けたものである。図17(e)は最終的な変調器の伝達関数Tのプロット1740である。図17(d)の各点[d1d2d3x]が図17(c)の[d1d2d30]と[d1d2d31]に対応する2点に分裂して一方が内側リング、他方が外側リング上の点となる形で、8PSKのリングが二重になった形の16APSKの信号ダイアグラムとなっていることがわかる。本実施形態では内側8PSKと外側8PSKとの動径の比は、
となっており、内側の1点(例えば[0010])から見たとき、内側の隣接する2点([1101]、[1011])までの距離と、外側の隣接1点([0011])までの距離が等しくなっている。外側の信号点(たとえば[0011])の動径は約0.87であり、原理損失は1.2dBである。光伝送において16APSKが用いられることは稀であるが、少なくとも本実施形態のような変調器構成はこれまで知られていない。前述の通り、図5に示した前記従来技術3と同じ構成で、光分岐および結合手段1731および1732の光強度分岐及び結合比を
とし、位相シフタ1622の位相シフト量をφ=π/2とすれば8PSK変調器を構成でき、これに強度変調手段を直列接続すれば16APSK変調器を構成できるが、この場合の原理損失は、5.3dBなので、本実施形態は従来技術から容易に想到しうる16APSK変調器に比べ原理損失を4.1dB低減しているとも言える。
なお、本実施形態では、
としてもよく、またφはπの奇数倍であればよい。これらの値を変更した場合のデータマッピングは図17とは異なるが、やはり原理損失1.2dBの16PSK信号が得られることは容易に確かめられる。また、内側8PSKと外側8PSKの動径の比は、rを調整することで容易に調整できる。さらには、本例と同じ構成で
または、その奇数倍とすれば、伝達関数Tは、動径
の円周上に16個の信号点が等間隔に並んだ16PSKの信号ダイアグラムの形となり、原理損失3.0dBの16PSK変調器を構成することもできる。
最後に、これまでに挙げた全ての実施形態において、光入出力を逆転、すなわち各BPSK変調手段711〜713、1011〜1014、1211〜1216、1411〜1414、1611〜1614の入出力ポートの方向を逆転し、かつメイン出力ポート702、1002、1202、1402、1602をメイン入力ポートとして、メイン入力ポート701、1001、1201、1401、1601をメイン出力ポートとして用いるような構成としても、本発明の効果は同様に得ることができる。これまでに挙げた全実施形態において、光変調器を構成する回路要素のうちBPSK変調手段を除く回路要素は全てカプラ、位相シフタ、導波路からなる相反的な光回路であるため、BPSK変調手段の伝達関数bnが仮に入出力方向依存性を持たなければ、メイン入出力を逆転させても変調器の伝達関数は変化しない。実際にはBPSK変調手段は、入出力方向依存性を持つ場合がある。例えば、進行波型の変調電極を用いる場合、光の進行方向と駆動電気信号の進行方向を一致させる必要がある。従って、メイン入出力を逆転させた構成とする場合はBPSK変調手段の入出力方向も併せて逆転させればよく、その場合は変調器の伝達関数は元の構成と等しくなるため、同じく原理損失の小さい多値変調器を得ることができる。