近年、光通信システムにおける、帯域利用効率の向上に向け、無線通信分野で使用されるような多値変調方式を光通信へ導入する検討が盛んに行われている。代表的な多値変調方式として、n値位相シフト変調(n−level Phase−Shift Keying:nPSK)、n値強度・位相シフト変調(n−level Amplitude−and−Phase−Shift Keying:nAPSK),n値直交振幅変調(n−level Quadrature Amplitude Modulation:nQAM)方式が挙げられる。
このような、多値変調信号を生成する手段の1つとして、複数の2値PSK(Binary−PSK:BPSK)光信号を干渉させ、多値光信号を合成する手法が知られている。図1に、4値変調である直交位相変調(Quadrature Phase−Shift Keying:QPSK)信号を生成するための良く知られた変調器構成100を示す(従来技術1)。図1において、変調器100は、光強度分岐比及び結合比1:1(0.5:0.5)のY字型の光分岐及び結合手段131、132を有し、それらで構成されるマッハツェンダ(Mach−Zehnder:MZ)回路の各アームにそれぞれBPSK変調手段111および112が配置され、さらに片方のアームにπ/2の位相変化を与える位相シフタ121が設けられている。このとき、メイン入力ポート101への入力光電場をEin、メイン出力ポート102からの出力光電場をEout(いずれも複素数表現)とすると、変調器の伝達関数Tは、以下の式で表現することができる。
ここでr1、r2は、それぞれ、光分岐及び結合手段131、132の光強度分岐及び結合比であり、本実施形態では、r1=r2=0.5である。b1、b2は、それぞれBPSK変調手段111、112の伝達関数であり、シンボル点(時間軸上でのシンボルの中心タイミング)においては、+1または−1のいずれかの値をとる。なお、本明細書では、モデル簡易化のため、光分岐手段、結合手段、BPSK変調手段およびそれらをつなぐ光導波路は、全て過剰損失ゼロの理想的な場合を仮定する。
図2(a)、(b)、(c)は、それぞれTの右辺第1項0.5b1、第2項0.5jb2およびTのシンボル点における値を複素平面上に表した複素平面プロット200、210、220である。同図中の[d1d2]は、各点に対するバイナリデータのマッピングを表している。データビット値は、シンボル点における各BPSK変調手段の伝達関数の値と1対1で関連付けられる。ここでは、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1とした。図2(a)に対応する数式1のTの右辺第1項は、b2に依存しないため、2ビット目のデータはx(任意値)としてある。図2(b)についても、同様である。連続光Ein=1を入力すると、Eout=Tであるため、図2(c)は、そのまま、出力信号ダイアグラムに相当する。b1およびb2が、それぞれI相(実部)およびQ相(虚部)の正負に対応するQPSK信号が得られることがわかる。なお、BPSK変調手段としては両アームに高速位相変調手段を有するMZ回路(以下、単に「MZ変調回路」)を使用することが最も一般的である。このため一般的な、QPSK変調器は、図1の光分岐及び結合手段131、132で構成されるMZ回路の各アームにBPSK変調手段であるMZ変調回路が埋め込まれた形となり、しばしば、ネスト型MZ変調器とも呼ばれる。
非特許文献1では、さらに複雑な構成を使用したQAM変調器が報告されている。同文献では光強度分岐比及び結合比4:2:1の光分岐及び結合手段を使用したQPSK変調回路を3回路並列に接続することにより、64QAM変調器を構成している。さらに、光強度分岐比及び結合比2N-1:2N-2:・・・:1の光分岐及び結合手段を使用したN個のQPSK変調回路を並列接続すれば4NQAM変調器を構成できることが記述されている。
図3に、同記述を応用した16QAM変調器の構成300を示す(従来技術2)。本構成では、分岐比及び結合比2:1(0.67:0.33)のY字型の光分岐及び結合手段335、336で構成されるMZ回路の各アームに、従来技術1と同構成のQPSK変調手段341、342が配置され、QPSK変調手段342の後段に位相シフタ323が配置されている。位相シフタ323の位相シフト量はπ/2の整数倍であればよいが、ここではモデル簡易化のため位相シフト量をゼロとして議論を進める。メイン入力ポート301からメイン出力ポート302への伝達関数Tは、以下の通りとなる。
ここで、T1、T2は、それぞれQPSK変調手段341、342の伝達関数である。b1、b2、b3、b4は、それぞれBPSK変調手段311、312、313、314の伝達関数であり、シンボル点においては+1または−1のいずれかの値をとる。r1、r2は、それぞれ光分岐及び結合手段335、336の光強度分岐及び結合比であり、本実施形態では、r1=r2=0.67である。
図4は、数式2の右辺各項および伝達関数Tのシンボル点における値を複素平面上に表した複素平面プロット400、410、420である。同図中の[d1d2d3d4]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。T1とT2を電界振幅比2:1(0.33:0.17)で足し合わせることで、T1に対応する4点の各々がT2の値に応じて4点に分裂し、16QAMの信号ダイアグラムが得られることがわかる。
図5に、非特許文献2のFig.15(b)に示される8APSK変調器の構成に、若干の修正と非特許文献1のアイディアを加えた実施形態500を示す(従来技術3)。本実施形態において、2APSK変調手段541と、QPSK変調手段542が直列に接続されている。2APSK変調手段541は、分岐比及び結合比1−r:rのY字型の光分岐及び結合手段531、532を有し、それらで構成されるMZ回路の一方のアームのみにBPSK変調手段511、および位相変化−π/4を与える位相シフタ521が配置されており、他方のアームは直線導波路となっている。本従来技術においては、
である。2APSK変調手段541の伝達関数T1、QPSK変調手段542の伝達関数T2および変調器全体の伝達関数Tは、それぞれ以下の式で表現できる。
ここで、b1、b2、b3は、それぞれBPSK変調手段511、512、513の伝達関数であり、シンボル点においては、+1、または−1のいずれかの値をとる。
図6は、数式3のT1、T2およびTのシンボル点における値を複素平面上に表した複素平面プロット600、610、620である。同図中の同図中の[d1d2d3]は各点に対するバイナリデータのマッピングを表しており、bn=+1のときdn=0、bn=−1のときdn=1である。T1は、原点から実軸正方向へ1−rだけシフトした点を基点に、角度−π/4又は+π・3/4[rad]方向へそれぞれrだけシフトした2値をとる。原点から見たときの位相角は、それぞれ−π/12、+π/6であり、動径はそれぞれ
なので、T1のとる2値は相対位相π/4、電界強度比
の変則的な2APSKの信号ダイアグラムに相当する。一方T2は、数式2からも明らかな通り、動径
のQPSKの信号ダイアグラムに相当する4値をとる。このため、T=T2・T1のとる8値を複素平面上にプロットすると、外側QPSK信号点(図中[100]、[110]、[111]、[101])と内側QPSK信号点(図中[000]、[010]、[011]、[001])が互いに位相角π/4だけオフセットして配置され、外側QPSKと内側QPSKの電界強度比は、
であるような信号ダイアグラムが得られる。外側QPSKの1点とそれに近接する内側QPSKの2点、例えば[100]、[001]、[000]の3点が正三角形をなしていることが特徴である。この変調方式は、例えば非特許文献3などで使用されているように8QAMと呼ばれることも多いが、本明細書では非特許文献2に倣い8APSKの呼称を採用する。
なお、非特許文献2のFig.15(b)では、2APSK変調手段におけるアーム間の光電界振幅比として2:1(光強度比が1:1/4、従って電界振幅比が1:1/2=2:1)が記載されているが、これは本実施形態に示した理想値
を整数で近似した値と考えられる。また、同文献では、電界振幅比2:1(理想的には
)を得るための具体的な回路構成についても記載されていないが、同文献Fig.5(b)から単純に類推して6dB光減衰器を使用すると、減衰させた分の光過剰損失が生じてしまう。本実施形態では、ここへ、非特許文献1のアイディアを応用し、光強度分岐比及び結合比
の光分岐及び光結合手段を使用することにより、光減衰器を使用する場合に比較して光過剰損失を低減している。
このように、N個のBPSK変調手段の組合せにより2N値変調を行うことができる。
なお、上記に挙げた従来技術ではいずれも、BPSK変調手段としては両アームに高速位相変調手段を有するMZ回路(以下、単に「MZ変調回路」)を使用している。非特許文献2で詳しく論じられている通り、MZ変調回路のプッシュプル駆動によりBPSK変調を行うことにより、駆動電気信号のノイズや歪みに起因する光出力の揺らぎを最小限に抑え、高品質な光信号を得ることができるというメリットがある。このことを図7の実施形態を使用して説明する。図左に示すように、両アームに位相変調器を有するMZ変調回路において、予め各アームにバイアス電極を使用して光位相シフト量+π/2、−π/2を付与しておき、位相変調器の一方を駆動電気信号V(t)/2、他方をその反転信号−V(t)/2で駆動する。このときMZ変調回路の伝達関数は、半波長電圧(アーム間位相差をπ変化させるのに必要な電圧)をVπとすると、
となり、駆動電圧に対する出力光電界の変化は図右に示すようなsin関数となる。電圧振幅2Vπ(シンボル点においてV(t)=±Vπ)で駆動すれば、シンボル点近傍において駆動電圧に対する出力光電界の変化率が小さくなるため、駆動電気信号のノイズや歪みが出力光信号に与える影響を抑圧することができる。また、光位相はV(t)>0のときπ(伝達関数が負の実数)、V(t)<0のときゼロ(伝達関数が正の実数)の二値のみをとるため、シンボル間の遷移領域におけるチャープ(光位相の連続的な変化)が生じないというよく知られたメリットもある。なお、図7の位相変調電極等の配置はあくまで一例であり、使用する光導波路基板の種類によっては中心電極型(両アームの中央に信号電極を配置)などのバリエーションがあるが、両アームに反対符号の位相変調をかける構成(プッシュプル構成)で、かつ上式のV(t)にあたる値の振幅が2Vπである場合は全て同様のメリットを得ることができる。
さて、一般に、変調多値数を大きくするほど帯域利用効率は向上するが、信号空間において信号点間の距離が縮まるため、受信感度は低下する。このため、利用可能な変調多値数の上限(帯域利用効率の上限)は伝送路状況に依存する。近年無線通信においては、伝送路の状況に応じて変調多値数を最適に切換える適応変調技術が実用化され、データ通信の高速化・高品質化に貢献している。
このような技術を光伝送に導入する検討も進められている。例えば、非特許文献6では、リングネットワーク等においてノード間距離に応じて柔軟に光帯域割り当てを行い、割り当てられた帯域に応じて変調多値数を切り換えることで、全体としてより効率よく光帯域資源を利用する手法が提案されている。
本発明は、変調器の回路構成に関するものであって、基本的にその効果は変調器を形成する材料には依存しない。変調器を形成する材料としては、電気光学(Electro−Optic:EO)効果の一種であるポッケルス効果を有するLiNbO3(LN)やKTa1-xNbxO3やK1-yLiyTa1-xNbxO3などの多元系酸化物結晶、電界吸収(Electro−Absorption:EA)効果や量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum Confined Stark Effect:QCSE)による屈折率または吸収係数の変調が可能なGaAs系やInP系の化合物半導体、クロモフォアなどのEO効果を有するポリマなどを使用することができる。さらには、非特許文献1で示されているような、上記材料基板と石英系平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)との異種基板接合型構成を使用してもよい。
以下、実施形態において、複数のBPSK変調手段の組み合わせによる多値変調器の構成を示すが、BPSK変調手段としてはMZ変調回路を使用することが最も一般的である。図7に示した通り、また非特許文献2で詳しく論じられている通り、MZ変調回路をアーム間位相差+π〜−πを与えるような電圧振幅でプッシュプル駆動すれば、駆動電気信号ノイズに起因する光出力の揺らぎを最小限に抑え、シンボル間干渉を抑制することができるというメリットがある。しかし、本発明の効果は、BPSK変調手段の具体的構成には依存しないので、例えば直線型の位相変調器等を使用しても良い。
また、以下、実施形態において、可変光分岐及び結合手段を使用した多値変調器の構成を示すが、本発明の効果は、実施形態の説明中に示される光強度分岐及び結合比を実現できる限りにおいて、可変光分岐及び結合手段の具体的構成には依存しない。代表的な可変光分岐及び結合手段としては、非特許文献7に示されるようなMZ回路型のものが挙げられるが、他にも非特許文献8に示されるようなマルチモード干渉(Multi Mode Interference:MMI)カプラ型のものなどを使用しても良い。
なお、特に断りのない場合、全てのMZ回路(各アームにさらに別のMZ回路が含まれているような場合も含む)の両アームの光路長は、全て等長とする。実際には、プロセスエラーやDCドリフト等により光路長のズレが生じるが、一般にそのようなズレは、位相シフタの調整により補償される。補償量は、材料や製造条件、また、変調器の使用環境等によって様々に異なるため、一意に定まるものではない。このため、以下の実施形態における位相シフタの位相シフト量の値には光路長補償のための位相シフト分は、含まないものとする。また、以下、実施形態においては数式による説明を簡易化するため位相シフタは、MZ回路の一方のアームのみに配置しているが、MZ回路においてはアーム間の位相差が本質的なパラメータであるため、位相シフタを他方のアームに配置しても、また両方のアームに配置しても、アーム間の位相差が同じになるような位相シフト量を設定すれば同じ効果が得られることは自明であり、本発明の効果は、位相シフタを配置するアーム(一方のアーム、他方のアーム、両方のアーム)の選択には依存しない。
また、本明細書の説明において、「信号ダイアグラム」とは、当該光信号の全信号点を複素平面上にプロットし、さらに、各信号点に対応するデータ値のマッピングを記載したものを指し、「コンスタレーション図形」とは、信号ダイアグラムからデータマッピングの情報を除いた図形、すなわち単に、信号点の描く図形を指すものとする。さらに、コンスタレーション図形同士を複素平面上での回転操作のみによって互いに重ねることができる場合、コンスタレーション図形が「等しい」と表現し、回転操作によって重ねることができない場合は、コンスタレーション図形が「異なる」と表現する。データマッピングが「等しい」または、「異なる」と表現する場合も同様である。これは、複素平面上での回転操作は単に基準位相の取り方の変更に相当するため、回転操作により重ねることのできるコンスタレーション図形(または、データマッピング)は実質的に等しいとみなせるためである。
(第1の実施形態)
図8に、本発明の第1の実施形態であるBPSK/4APSK/QPSK可変変調器の構成を示す。固定光分岐手段(光強度分岐比1:1)831及び可変光結合手段852によって構成されるMZ回路の各アームにBPSK変調手段811、812が配置され、片方のアームに位相シフタ821が配置されている。メイン入力ポート801からメイン出力ポート802への伝達関数Tは、以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2は、それぞれBPSK変調手段811、812の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。r2は可変光結合手段852の光強度結合比である。φ1は、位相シフタ821により設定される光位相であり、その原点は、光分岐及び結合手段によって生じる光位相差をキャンセルする点とする。例えば、b1=b2かつφ1=0のとき、BPSK変調手段811側のアームから可変光結合手段852の出力ポートに結合する光と、BPSK変調手段812側のアームから可変光結合手段852の出力ポートに結合する光との間の位相差はゼロである。可変光結合手段の光強度結合比を変化させることにより光位相差が変化する場合は、φ1の原点もこれに合わせて変化するものとする。
このような構成を使用すれば、位相シフタ821と可変光結合手段852を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図9(a)〜(c)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、φ1とr2を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2]は各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。図9(a)に示す通り、r2=0(φ1は任意値)とすれば、
となるため、BPSK変調手段811をデータ駆動することによりBPSK変調を行うことができる。また、図9(b)に示す通り、φ1=0、r2=0.2とすれば、
となるため、BPSK変調手段811及び812をデータ駆動することにより、位相2値(0またはπ)、振幅2値
の4APSK変調を行うことができる。さらには、図9(c)に示す通り、φ1=π/2、r2=0.5とすれば、
となるため、BPSK変調手段811及び812をデータ駆動することにより、QPSK変調を行うことができる。
このように、本実施形態においては、φ1とr2の組合せを3通りに切換えることにより、変調フォーマットをBPSK、4APSK、QPSKの3通りに切換えることができる。また、r2の値をゼロに設定し、BPSK変調手段812とメイン出力ポート802を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を1とし、変調多値数を21=2(変調フォーマット:BPSK)とすることができる一方、r2の値を有限値(0.2または0.5)に設定し、同光路を開通することにより、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:4APSKまたはQPSK)とすることができる。
なお、本実施形態および以下に示す全ての実施形態においては、変調フォーマットを切換える際、各BPSK変調手段の伝達関数biのとり得る値のセット(−1または+1)は変更する必要がない。このため、BPSK変調手段としてMZ変調回路を使用する場合、その駆動電圧振幅は変更する必要がなく、常にアーム間位相差+π〜−πを与えるような電圧振幅でプッシュプル駆動することができる。これにより、非特許文献2で論じられている通り、駆動電気信号ノイズに起因する光出力の揺らぎを最小限に抑えた高品質な光信号を常に得ることができる。
また、φ1を上記の値からπの倍数だけ変化させても、またr2を1−r2で置き換えても、データマッピングが異なるものの同じ変調フォーマットの信号が得られることは容易に確かめられる。以下に示す全ての実施形態においても、ある所望の変調フォーマット信号を得るためのφiおよびriの値は、複数可能であるが、その選択は本発明の効果に本質的な影響はないため、以下の説明においては代表値のみを示す。
(第2の実施形態)
図10に、本発明の第2の実施形態であるBPSK/4APSK/QPSK可変変調器の構成を示す。本実施形態は、図8に示した上記第1の実施形態において、固定光分岐手段831を可変光分岐手段1051で置き換えたものである。メイン入力ポート1001からメイン出力ポート1002への伝達関数Tは、以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2は、それぞれBPSK変調手段1011、1012の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。r1及びr2は可変光分岐手段1051の光強度分岐比及び可変光結合手段1052の光強度結合比である。φ1は、位相シフタ1021により設定される光位相であり、その原点の取り方は上記第1の実施形態と同様である。
このような構成を使用すれば、位相シフタ1021と可変光分岐及び結合手段1051、1052を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図11(a)〜(c)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、φ1、r1、r2を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2]は各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。図11(a)に示す通り、r1=r2=0(φ1は任意値)とすれば、
となるため、BPSK変調手段1011をデータ駆動することでBPSK変調を行うことができる。また、図11(b)に示す通り、φ1=0、r1=r2=1/3とすれば、
となるため、BPSK変調手段1011及び1012をデータ駆動することで、位相2値(0またはπ)、振幅2値(1/3または1)の4APSK変調を行うことができる。さらには、図11(c)に示す通り、φ1=π/2、r1=r2=0.5とすれば、
となるため、BPSK変調手段1011及び1012をデータ駆動することにより、QPSK変調を行うことができる。
このように、本実施形態においては、φ1、r1、r2の組合せを3通りに切換えることで、変調フォーマットをBPSK、4APSK、QPSKの3通りに切換えることができる。また、r1、r2の値をゼロに設定し、BPSK変調手段1012とメイン入力ポート1001を結ぶ光路およびメイン出力ポート1002を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を1とし、変調多値数を21=2(変調フォーマット:BPSK)とすることができる一方、r1、r2の値を有限値(1/3または0.5)に設定し、同光路を開通することにより、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:4APSKまたはQPSK)とすることができる。上記第1の実施形態に比較して、本実施形態は、BPSKおよび4APSK変調時の変調損失が小さい(シンボル点におけるTの値の絶対値が大きい)というメリットがある。
なお、本実施形態において可変光結合手段1052を光強度結合比1:1の固定光結合手段に置き換えても、上記第1の実施形態と同等の効果を得られることは容易に確認できる。
(第3の実施形態)
図12に、本発明の第3の実施形態であるBPSK/QPSK/16QAM可変変調器の構成を示す。可変光分岐手段1255及び可変光結合手段1256によって構成されるMZ回路の各アームに、上記第2の実施形態と同様の構成と、上記従来技術1と同様の構成がそれぞれ配置され、片方のアームに位相シフタ1223が配置されている。メイン入力ポート1201からメイン出力ポート1202への伝達関数Tは、以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2、b3、b4は、それぞれBPSK変調手段1211、1212、1213、1214の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。r1、r2、r5、r6は、可変光分岐及び結合手段1251、1252、1255、1256の光強度分岐比及び結合比である。φ1、φ2、φ3は、位相シフタ1221、1222、1223により設定される光位相であり、その原点の取り方は上記第1の実施形態と同様である。本実施形態では、φ1=φ2=π/2、φ3=0とする。
このような構成を使用すれば、可変光分岐及び結合手段1251、1252、1255、1256を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図13(a)〜(c)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、r1、r2、r5、r6を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2d3d4]は各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。図13(a)に示す通り、r1=r2=r5=r6=0とすれば、
となるため、BPSK変調手段1211をデータ駆動することによりBPSK変調を行うことができる。また、図13(b)に示す通り、r5=r6=1(r1、r2は任意値)とすれば、
となるため、BPSK変調手段1213及び1214をデータ駆動することにより、QPSK変調を行うことができる。なお、r1=r2=0.5、r5=r6=0、としてもQPSK変調を行うことができる。さらには、図13(c)に示す通り、r1=r2=0.5、r5=r6=1/3とすれば、
となるため、BPSK変調手段1211、1212、1213、1214をデータ駆動することにより、16QAM変調を行うことができる。
このように、本実施形態においては、r1=r2=r5=r6=0とし、BPSK変調手段1212、1213、1214の各々とメイン入力ポート1201およびメイン出力ポート1202を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を1とし、変調多値数を21=2(変調フォーマット:BPSK)とすることができる。さらに、r5=r6=1とし、BPSK変調手段1211、1212との各々とメイン入力ポート1201およびメイン出力ポート1202を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:QPSK)とすることができる。さらに、r1=r2=0.5、r5=r6=1/3とし、全てのBPSK変調手段とメイン入力ポート1201およびメイン出力ポート1202を結ぶ光路を開通することにより、有効なBPSK変調手段の数を4とし、変調多値数を24=16(変調フォーマット:16QAM)とすることができる。
なお、φ1=0、r1=r2=1/3、r5=r6=0とすれば、上記第2の実施形態と同様の4APSK変調を行うこともできる。
また、本実施形態において可変光分岐手段1251もしくは結合手段1252のいずれかを光強度分岐もしくは結合比1:1の固定光分岐もしくは結合手段に置き換えても、変調損失は増大するものの、同様な変調フォーマットの切換えを行うことが可能であることは容易に確認できる。可変光結合手段1255もしくは分岐手段1256についても同様である。
(第4の実施形態)
図14に、本発明の第4の実施形態であるQPSK/16QAM/64QAM可変変調器の構成を示す。本実施形態では、変光分岐手段1451、1453及び可変光結合手段1452、1454によって、上記従来技術1と同等のQPSK変調手段が3組並列に接続された形となっている。メイン入力ポート1401からメイン出力ポート1402への伝達関数Tは、以下の式により表すことができる。
ただし、b1、b2、b3、b4、b5、b6は、それぞれBPSK変調手段1411、1412、1413、1414、1415、1416の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。r1、r2、r3、r4は可変光分岐及び結合手段1451、1452、1453、1454の光強度分岐比及び結合比である。φ1、φ2、φ3、φ4、φ5は、位相シフタ1421、1422、1423、1424、1425により設定される光位相であり、その原点の取り方は上記第1の実施形態と同様である。本実施形態では、φ1=φ2=φ3=π/2、φ4=φ5=0とする。
このような構成を使用すれば、可変光分岐及び結合手段1451、1452、1453、1454を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図15(a)〜(c)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、r1、r2、r3、r4を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2d3d4d5d6]は、各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。なお、図15(c)では、図が煩雑となるのを避けるため、4隅の点のみデータマッピングを表示した。他の全ての点のデータマッピングについては、上式に対応するbnの値を代入すれば容易に確認することができる。
なお、本実施形態において、可変光分岐手段1451もしくは、結合手段1452のいずれかを光強度分岐もしくは、結合比1:1の固定光分岐もしくは、結合手段に置き換えても、変調損失は、増大するものの、同様な変調フォーマットの切換えを行うことが可能であることは容易に確認できる。可変光結合手段1453もしくは分岐手段1454についても同様である。
(第5の実施形態)
図16に、本発明の第5の実施形態であるQPSK/8PSK/8APSK可変変調器の構成を示す。メイン入力ポート1601に上記従来技術1と同様の構成が接続され、さらにその後段に、可変光分岐手段1653と可変光結合手段1654によって構成されるMZ回路が直列に接続され、同MZ回路の一方のアームにはBPSK変調手段1613と位相シフタ1622が配置されている。メイン入力ポート1601からメイン出力ポート1602への伝達関数Tは、以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2、b3は、それぞれBPSK変調手段1611、1612、1613の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。r4は可変光分岐及び結合手段1653、1654の光強度結合比である。φ1、φ2は、位相シフタ1621、1622により設定される光位相であり、その原点の取り方は上記第1の実施形態と同様である。本実施形態では、φ1=π/2とする。φ3=0とする。
このような構成を使用すれば、位相シフタ1622、可変光分岐手段1653、可変光結合手段1654を使用して、変調フォーマットを切換えることができる。図17(a)〜(c)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、φ2、r3、r4を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2d3]は、各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。
図17(a)に示す通り、r3=r4=1(φ2は任意値)とすれば、BPSK変調手段1613とメイン入力ポート1601およびメイン出力ポート1602を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:QPSK)とすることができる。
また、r3=r4<1とすれば、全てのBPSK変調手段とメイン入力ポート1601およびメイン出力ポート1602を結ぶ光路を開通することにより、有効なBPSK変調手段の数を3とし、変調多値数を23=8とすることができる。具体的には、r3=r4=1/{1+tan(π/8)}、φ2=π/2とすれば、図17(b)に示す通り、8PSK変調を行うことができる。また、
とすれば、図17(c)に示す通り、8APSK変調を行うことができる。
なお、本実施形態において可変光分岐手段1653もしくは、結合手段1654のいずれかを光強度分岐もしくは結合比1:1の固定光分岐もしくは結合手段に置き換えても、変調損失は増大するものの、同様な変調フォーマットの切換えを行うことが可能であることは容易に確認できる。
(第6の実施形態)
図18に、本発明の第6の実施形態であるQPSK/8PSK/8APSK可変変調器の構成を示す。第1の光信号を出力する出力ポート1871及び第2の光信号を出力する出力ポート1872を有する第1の光変調手段1841と、出力ポート1871に接続され、第1の光信号をさらに変調し、第3の光信号を出力する第2の光変調手段1842と、第3及び第2の光信号を結合させメイン出力ポート2へ出力させる可変光結合手段1853とで構成されている。
第1の光変調手段1841は、上記従来技術1と、ほぼ同等のQPSK変調手段であり、固定光分岐手段及び結合手段1861、1862と、それらで構成されるMZ回路の各アームに配置されたBPSK変調手段1811および1812、及び片方のアームに配置され、π/2の位相変化を与える位相シフタ1821で構成されているが、光分岐手段1861及び結合手段1862として光強度結合比1:1(0.5:0.5)の2入力2出力の方向性結合器を使用する点が異なる。よく知られている通り、方向性結合器の伝達行列Scは、以下の式で表すことができる(非特許文献5等を参照)。
但し、Ein,A、Ein,Bは、それぞれ入力ポートA、Bからの入力光電場、Eout,C、Eout,Dは、それぞれ出力ポートC、Dからの出力光電場(いずれも複素数表現)、Rは、光強度結合比である。第2の光変調手段1842は、直列に接続されたBPSK変調手段1813と位相シフタ1822で構成されている。メイン入力ポート1801から出力ポート1871(スルー側)への伝達関数T1、メイン入力ポート1801から出力ポート1872(クロス側)の伝達関数T1´、第2の光変調手段の伝達関数T2、及びメイン入力ポート1801からメイン出力ポート1802への伝達関数Tは、それぞれ以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2、b3は、それぞれBPSK変調手段1811、1812、1813の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。φ2は位相シフタ1822による位相変化量である。r3は可変光結合手段1853の光強度結合比である。
このような構成を使用すれば、位相シフタ1822、可変光分岐手段1853を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図19(a)〜(c)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、φ2、r3を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2d3]は各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。
図19(a)に示す通り、r3=0(φ2は任意値)とすれば、BPSK変調手段1813とメイン入力ポート1801およびメイン出力ポート1802を結ぶ光路を遮断することで、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:QPSK)とすることができる。
また、r3>0とすれば、全てのBPSK変調手段とメイン入力ポート1801およびメイン出力ポート1802を結ぶ光路を開通することにより、有効なBPSK変調手段の数を3とし、変調多値数を23=8とすることができる。具体的には、
とすれば、図19(b)に示す通り、8PSK変調を行うことができる。また、
とすれば、図19(c)に示す通り、8APSK変調を行うことができる。
さらに本実施形態を使用すれば、上記第3の従来技術や上記第5の実施形態を使用した場合に比較して、光変調に伴う原理的な損失を低減できるという副次的な効果を得ることができる。具体的には、図19(c)の外側の信号点(例えば[101])の動径は、約0.89である。これに対し、図6(c)の外側の信号点(例えば[100])や、図17(c)の外側の信号点(例えば[000])の動径は、約0.66である。このことはすなわち、同じ強度の連続光を入力した場合のシンボル点における出力8APSK信号光強度が、本実施形態を使用した場合は、上記第3の従来技術や上記第5の実施形態を使用した場合に比較し、2.6dB大きい、すなわち8APSK変調に伴う原理的な損失が2.6dB小さいことを意味している。2.6dBという値は、以下の計算によって得ることができる。
同様に、8PSK変調を行う場合の原理的な損失も、上記第5の実施形態を使用する場合に比較して、2.3dB低減できる。
さて、本実施形態を含む本発明の第6以降の実施形態では、上記第1及び第2の光信号の両方を使用した最終的な出力光信号を生成しており、これによって光変調に伴う原理的な損失を低減している。従来は、第1および第2の光信号に相当する信号のうちどちらか一方をメイン出力信号光として使用して、他方は放射光として捨てるかモニタ光として使用するしか利用手段はなく、これが3dBの原理損失要因となっていた。本発明の第6以降の実施形態では、このように従来同時に信号光生成に使用することのできなかった第1及び第2の光信号に対し、その一方に他方とは、異なる変調をさらに加えてから結合させるという新たな着想により、同時に信号光生成に使用することを可能としている。これによって、従来より小さい原理損失での多値信号生成を可能にしている。
なお、本実施形態を含む本発明の全ての実施形態において、2入力2出力の光結合手段(本実施形態では、光結合手段1862)としては、方向性結合器の他にもマルチモード干渉(Multi Mode Interference:MMI)カプラや、非特許文献4に示される波長無依存カプラ(Wavelength Insensitive Coupler:WINC)を使用することもできる。これらのカプラの伝達関数は方向性結合器とは異なるが、どのような2入力2出力カプラを使用しても、本実施形態の機能は本質的に損なわれることはない。このことは、光カプラの相反性とエネルギー保存則から導くことができる(厳密には、カプラの内部損失によって信号ダイアグラムが乱れる場合があるが、内部損失の充分小さいカプラを使用すれば問題ない)。さらに、メイン入力ポートに接続された光分岐手段(本実施形態では、光分岐手段1861)としては、上記のような2入力2出力カプラを使用しても、また、Y字型カプラを使用してもよい。但し、カプラの位相特性はカプラの種類によって異なるため、位相シフタ1821の位相シフト量は使用するカプラの種類に応じて上記の値から変更する必要がある。
(第7の実施形態)
図20に、本発明の第7の実施形態であるQPSK/8PSK/8QAM/16QAM変調器の構成を示す。第1の光信号を出力する出力ポート2071及び第2の光信号を出力する出力ポート2072を有する第1の光変調手段2041と、出力ポート2071に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段2042と、第3及び第2の光信号を結合させメイン出力ポート2002へ出力させる可変光結合手段2053とで構成されている。
第1の光変調手段2041は、図18に示した第6の実施形態の第1の光変調手段1841と同等のQPSK変調手段である。第2の光変調手段2042は、図10に示した第2の実施形態と同等のQPSK変調手段に位相シフタ2022が直列接続されたものである。上記第6の実施形態と同様に伝達関数T1、T1´、T2、Tを定義すると、T2のみ第6の実施形態と異なり以下の形となる。
ただしb3、b4は、それぞれBPSK変調手段2013、2014の伝達関数であり、シンボル点においては+1または−1のいずれかの値をとる。φ2、φ3は位相シフタ2022、2023による位相変化量である。本実施形態では、φ3=π/2を使用する。r1、r2は、光結合手段2051、2052の光強度結合比である。
このような構成を使用すれば、位相シフタ2022、可変光分岐手段及び可変光結合手段2051、2052、2053を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図21(a)〜(d)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、φ2、r1、r2、r3を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2d3d4]は、各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。
図21(a)に示す通り、r3=0(r1、r2、φ2は任意値)とすれば、BPSK変調手段2013及び2014の各々とメイン入力ポート2001およびメイン出力ポート2002を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:QPSK)とすることができる。
また、r1=r2=0、r3>0とすれば、BPSK変調手段2014とメイン入力ポート2001およびメイン出力ポート2002を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を3とし、変調多値数を23=8とすることができる。具体的には、図21(b)に示す通り、
とすれば、8PSK変調を行うことができる。
また、図21(c)に示す通り、
とすれば、8APSK変調を行うことができる。
さらに図21(d)に示す通り、r1=r2=0.5、r3=1/3、φ2=−π/4とすれば、全てのBPSK変調手段とメイン入力ポート2001およびメイン出力ポート2002を結ぶ光路を開通することにより、有効なBPSK変調手段の数を4とし、変調多値数を24=16(変調フォーマット:16QAM)とすることができる。
本実施形態を使用すれば、上記第6の実施形態を使用した場合と同様、8PSKおよび8APSK変調に伴う原理的な損失を低減することができ、また、16QAM変調に伴う原理的な損失も低減することができるという副次的な効果が得られる。すなわち、上記第2の従来技術や上記第3の実施形態、上記第4の実施形態を使用した場合のコンスタレーションにおける外側の信号点(例えば、図4(c)の[0000])の動径は、
だが、本実施形態を使用した場合(たとえば図21(d)の[1011])の動径は、
なので、本実施形態を使用することにより上記第2の従来技術や上記第3の実施形態、上記第4の実施形態を使用した場合に比較して16QAM変調に伴う原理的な損失を1.8dB低減できる。
なお可変光分岐手段2051を光強度分岐比1:1の固定光分岐手段に置き換えても、8値変調時の原理損失は増大するものの、同様な変調フォーマットの切換えを行うことが可能であることは容易に確認できる。
図24に、本実施形態を使用した光変調器の具体的な構造の例を挙げる。図24の符号2401〜2462は、図20の符号2001〜2062に対応している。本実施形態では、非特許文献1に示されるような、光変調器をLNと石英系PLCの異種基板接合を使用して作製している。すなわち、XカットLN基板2491の両端面に、石英系PLC基板2481、2482を直接接合した形態となっている。
BPSK変調手段2411、2412、2413、2414の各々は、LN基板2491上の2本の導波路と、PLC基板2481および2482上の2個のY字型カプラで構成されたMZ回路であり、LN基板上の2本の導波路の中心に配置された信号電極と、図では省略されているが信号電極から見て各導波路を挟んで反対側に配置されたグランド電極からなる進行波型電極に駆動電気信号を印加することにより、プッシュプル駆動によるBPSK変調を行うことができる。なお上記の信号電極とは別に、一般的なLN変調器が備えるようなDCバイアス電極をLN基板上に形成してもよい。
2入力2出力の固定光結合手段及び分岐手段2461及び2462としては、非特許文献4に示される波長無依存カプラ(WINC)を使用している。
位相シフタ2421a、2421b、2422a、2422b,2423a,2423bとしては、熱光学位相シフタを使用している。各位相シフタは、図20の位相シフタ2021、2022、2023と異なり、各MZ回路の両アームに配置されている。熱光学位相シフタは、駆動電力に比例した位相シフト量を与えるため、印加電圧の正負を反転させても位相シフト量の正負を反転させることができないが、本実施形態のように両アームに位相シフタを配置しておけば、位相シフタを駆動するアームを切換えることにより実質的に位相シフト量の正負の切換えが可能であるため、このような配置としている。
可変光分岐手段及び結合手段2451、2452、2453としては、非特許文献7に示されるようなMZ回路型の可変カプラを使用している。非特許文献7では片アームのみに熱光学位相シフタが配置されているが、本実施形態のように両アームに配置しても当然同等の効果を得ることができる。
第1の変調手段2441と第2の変調手段2442および可変光結合手段2453との接続には、PLC基板2481上に形成された折り返し導波路を使用している。これにより回路全体をコンパクトにレイアウトすることができる。
本実施形態では、LNと石英系PLCの異種基板接合を使用することにより以下のメリットを得ている。
まず、高速位相変調部のみ応答帯域の広いLNを使用し、他の回路部分には低損失で回路レイアウト自由度の高い石英系PLCを使用することにより、両基板の材料特性を最大限に生かし、LNと同等の広帯域電気−光応答特性を持たせつつ、光損失を抑え、複雑な回路をコンパクトに作製することができる。特に折り返し導波路をコンパクトかつ低損失に形成することは、LN基板上では難しいが、石英系PLC基板を使用すれば容易である。
また、可変光分岐手段および可変光結合手段の分岐比及び結合比の調整に熱光学位相シフタを使用しているが、これには以下のメリットがある。よく知られている通り、LN基板上の電気光学位相シフタにおいては、バイアスドリフトが生じるため、位相シフト量を一定に保つためには光出力強度モニタを使用したフィードバック制御が必要となる。しかし石英系PLC上の熱光学位相シフタは基本的にバイアスドリフトを生じないため、これを使用することで可変光分岐手段及び結合手段のフィードバック制御が不要となり、制御が容易になる。
なお、本実施形態ではBPSK変調手段2411、2412、2413、2414であるマッハツェンダ変調回路のアーム部分のみをLN基板上に形成しているが、必ずしもこのようにする必要はなく、例えばY字型カプラ部を含むマッハツェンダ変調回路全体をLN基板上に形成してもよい。Y字型カプラはLN基板でも充分実績があるため、これをLN基板上に形成しても本実施形態の構成と大きな特性差は生じない。さらには位相シフタ2421、2423をLN基板上に形成しても良い。
また、高速位相変調部を形成する基板として最もポピュラーなLNを選択しているが、前述の通りEO効果を有する他の多元系酸化物結晶や化合物半導体、ポリマなどを使用しても良い。
(第8の実施形態)
図22に、本発明の第8の実施形態であるQPSK/8PSK/8QAM/16QAM変調器の構成を示す。第1の光信号を出力する出力ポート2271及び第2の光信号を出力する出力ポート2272を有する第1の光変調手段2241と、出力ポート2271に接続され、第1の光信号をさらに変調し第3の光信号を出力する第2の光変調手段2242と、出力ポート2272に接続され、第2の光信号をさらに変調し、第4の光信号を出力する第3の光変調手段2243と、第3及び第4の光信号を結合させメイン出力ポート2202へ出力させる光結合手段2253とで構成されている。
第1の光変調手段2241は、図18に示した実施形態6の第1の光変調手段1841と同等のQPSK変調手段である。第2の光変調手段2242は、BPSK変調手段2213で構成されている。第3の光変調手段2243は、可変光分岐手段2251及び可変光結合手段2252を有し、それらで構成されるMZ回路の一方のアームのみにBPSK変調手段2213、および位相シフト量−π/2を与える位相シフタ2223が配置され、他方のアームは直線導波路となっており、さらに光結合手段2252の後段に位相シフタ2222が直列に接続された構成となっている。メイン入力ポート2201から第1の変調手段の出力ポート2271(スルー側)への伝達関数T1、メイン入力ポート2201から第1の変調手段の出力ポート2272(クロス側)の伝達関数T1´、第2の変調手段の伝達関数T2、第3の変調手段の伝達関数T3、及びメイン入力ポート2201からメイン出力ポート2202への伝達関数Tは、それぞれ以下の式で表すことができる。
ただし、b1、b2、b3、b4は、それぞれBPSK変調手段2211、2212、2213、2214の伝達関数であり、シンボル点においては、+1または−1のいずれかの値をとる。φ2、φ3は位相シフタ2222、2223による位相変化量である。本実施形態ではφ3=−π/2を使用する。r1、r2、r3は光結合手段2251、2252、2253の光強度結合比である。
このような構成を使用すれば、位相シフタ2222、可変光分岐手段2251、2252、2253を使用して変調フォーマットを切換えることができる。図23(a)〜(d)に、伝達関数Tのシンボル点における値を、φ2、r1、r2、r3を3通りの組合せに設定した場合について、それぞれ複素平面上にプロットした複素平面プロットを示す。同図中の[d1d2d3d4]は、各点に対するデータマッピングを表しており、bn=+1のとき、dn=0、bn=−1のとき、dn=1である。dnの値がTの値に影響しない場合は、dn=xとする。
図23(a)に示す通り、r1=r2=1、r3=0(φ2は任意値)とすれば、BPSK変調手段2213及び2214の各々とメイン入力ポート2201およびメイン出力ポート2202を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を2とし、変調多値数を22=4(変調フォーマット:QPSK)とすることができる。
また、r1=r2=1、r3>0とすれば、BPSK変調手段2214とメイン入力ポート2001およびメイン出力ポート2002を結ぶ光路を遮断することにより、有効なBPSK変調手段の数を3とし、変調多値数を23=8とすることができる。具体的には、図23(b)に示す通り、
とすれば、8PSK変調を行うことができる。また、図23(c)に示す通り、
とすれば、8APSK変調を行うことができる。
さらに図21(d)に示す通り、r1=r2=0.5、r3=2/3、φ2=π/4とすれば、全てのBPSK変調手段とメイン入力ポート2201およびメイン出力ポート2202を結ぶ光路を開通することで、有効なBPSK変調手段の数を4とし、変調多値数を24=16(変調フォーマット:16QAM)とすることができる。
本実施形態を使用すれば、上記第7の実施形態を使用した場合と同様、8PSK、8APSKおよび16QAM変調に伴う原理的な損失を低減することができる。
なお可変光分岐手段2251を光強度分岐比1:1の固定光分岐手段に置き換えても、8値変調時の原理損失は増大するものの、同様な変調フォーマットの切換えを行うことが可能であることは容易に確認できる。
最後に、これまでに挙げた全ての実施形態において、光入出力を逆転、すなわち各BPSK変調手段811〜712、1011〜1012、1211〜1214、1411〜1416、1611〜1613、1811〜1813、2011〜2014、2011〜2014、2211〜2214、2411〜2414の入出力ポートの方向を逆転し、かつメイン出力ポート802、1002、1202、1402、1602、1802、2002、2202、2402をメイン入力ポートとして、メイン入力ポート801、1001、1201、1401、1601、1801、2001、2201、2401をメイン出力ポートとして使用するような構成としても、本発明の効果は同様に得ることができる。これまでに挙げた全実施形態において、光変調器を構成する回路要素のうちBPSK変調手段を除く回路要素は全てカプラ、位相シフタ、導波路からなる相反的な光回路であるため、BPSK変調手段の伝達関数bnが仮に入出力方向依存性を持たなければ、メイン入出力を逆転させても変調器の伝達関数は変化しない。実際にはBPSK変調手段は、入出力方向依存性を有する場合がある。例えば、進行波型の変調電極を使用する場合、光の進行方向と駆動電気信号の進行方向を一致させる必要がある。従って、メイン入出力を逆転させた構成とする場合はBPSK変調手段の入出力方向も併せて逆転させればよく、その場合は変調器の伝達関数は元の構成と等しくなる。