JP5660180B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータ等の流体式動力伝達装置を搭載した車両の制御装置に係る。特に、本発明は、車両の発進に伴ってロックアップクラッチを半係合状態にするスリップスタート制御(フレックススタート制御とも呼ばれる)が実行可能な車両における発進制御の改良に関する。
従来より、エンジンを搭載した車両において、エンジンが発生するトルク及び回転速度を車両の走行状態に応じて適切に駆動輪に伝達する変速機として、エンジンと駆動輪との間の変速比を自動的に最適設定する自動変速機が知られている。
車両に搭載される自動変速機としては、例えば、クラッチ及びブレーキと遊星歯車装置とを用いて変速比(ギヤ段)を設定する遊星歯車式変速機や、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)がある。
また、この種の自動変速機が搭載された車両においては、エンジンと自動変速機との間にフルードカップリングやトルクコンバータ等の流体式動力伝達装置が配設されている。更に、この流体式動力伝達装置として、ロックアップクラッチを備えたものが知られている(例えば、下記の特許文献1及び特許文献2を参照)。このロックアップクラッチは、作動油(以下、オイルと呼ぶ場合もある)の油圧によって摩擦係合することにより、流体式動力伝達装置の入力側と出力側とを直結可能とするものである。
そして、このようなロックアップクラッチ付きの流体式動力伝達装置が搭載された車両においては、例えば、自動変速機の油圧制御を含む油圧制御系の油圧(ライン圧)を元圧として、ロックアップクラッチに作用させる油圧を制御することによって、ロックアップクラッチの係合状態、半係合状態(フレックスロックアップ状態)、解放状態を制御している。
具体的には、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータの場合、ロックアップ差圧制御用ソレノイドバルブ及びロックアップコントロールバルブ等を用いて、トルクコンバータの係合側油室と解放側油室との間の差圧(ロックアップ差圧)をロックアップ差圧指示値に基づいて制御(例えば上記ソレノイドバルブをDuty制御)することによって、ロックアップクラッチの係合・半係合・解放の制御を行っている。
また、下記の特許文献3及び特許文献4にも開示されているように、上記ロックアップクラッチ付きの流体式動力伝達装置が搭載された車両の発進時にロックアップクラッチを半係合状態とするスリップスタート制御を実行するものも知られている。このスリップスタート制御の実行により、車両発進時におけるトルクコンバータでの動力伝達ロスが削減されると共に、エンジン回転数の急上昇(所謂、吹け上がり)が抑制されることになり、燃料消費率の改善を図ることが可能になる。
特開2009−85319号公報 特開2007−205509号公報 特開2006−250287号公報 特開2005−16563号公報
上述したスリップスタート制御を実行するロックアップクラッチ付きの流体式動力伝達装置にあっては、車両発進時におけるロックアップクラッチのトルク容量(ロックアップクラッチの係合によって伝達されるトルクの大きさ)の制御を高い精度で行う必要がある。何故なら、ロックアップクラッチのトルク容量が適正なトルク容量よりも大きい場合(例えば、適切なタイミングよりも早いタイミングでトルク容量が大きくなってしまう場合)には、エンジン回転数が急低下し、場合によってはエンジンストールに至ってしまう可能性があるからである。また、逆に、ロックアップクラッチのトルク容量が適正なトルク容量よりも小さい場合(例えば、適切なタイミングよりも遅いタイミングでトルク容量が大きくなる場合)には、このトルク容量が得られるまでの間にエンジン回転数が急上昇し、燃料消費率の悪化を招き、スリップスタート制御の目的が達成できなくなる可能性があるからでもある。
しかしながら、上記ロックアップ差圧制御用ソレノイドバルブの製造時の個体差や長期間の使用に伴う特性変化等に起因し、ロックアップクラッチのトルク容量の発生特性(トルク容量が発生するタイミング等)には、ばらつきが生じてしまう。
図10は、この場合(上記ばらつきによりロックアップ実差圧が適正値から乖離している場合)におけるアクセル開度、エンジン回転数、タービン回転数、ロックアップ差圧指示、ロックアップ実差圧それぞれの変化の一例を示すタイミングチャート図である。この図10において実線で示すエンジン回転数及びロックアップ実差圧の波形は、ロックアップクラッチのトルク容量が適切なタイミングよりも早いタイミングで大きくなってしまった場合(上記ばらつきがロックアップ実差圧を大きくする側に乖離した上限品)を示している。また、破線で示すエンジン回転数及びロックアップ実差圧の波形は、ロックアップクラッチのトルク容量が適切なタイミングよりも遅いタイミングで大きくなる場合(上記ばらつきがロックアップ実差圧を小さくする側に乖離した下限品)を示している。尚、二点鎖線で示すロックアップ実差圧の波形は、適正なロックアップ実差圧が得られている場合(ノミナル品)を示している。このように、ロックアップ実差圧が大きくなる側に乖離した場合(上限品)、ロックアップクラッチのトルク容量が適正なトルク容量よりも大きくなってエンジン回転数が急低下してしまうことになる(実線で示すエンジン回転数を参照)。また、ロックアップ実差圧が小さくなる側に乖離した場合(下限品)、ロックアップクラッチのトルク容量が適正なトルク容量よりも小さくなってエンジン回転数が急上昇してしまうことになる(破線で示すエンジン回転数を参照)。
このため、このスリップスタート制御の実行時におけるロックアップ差圧を適正に得るための学習動作が必要となる。この学習動作は、ロックアップ差圧の発生時期、つまり、スリップスタート制御を開始してから(ロックアップ差圧指示が出力されてから)実際にロックアップ差圧が発生してロックアップクラッチが半係合となるタイミング(トルク容量が発生するタイミング)を適正化するために行われる。
具体的には、スリップスタート制御の開始時に、下記の式(1)によるロックアップクラッチのトルク容量の算出を所定時間間隔で繰り返し、ロックアップクラッチのトルク容量の変化、例えばトルク容量が「0」の状態からトルク容量が「正の値」になる時期(ロックアップクラッチの係合によるトルク伝達が開始されるタイミング)が適正なタイミングで得られているか否かを判定する。そして、このトルク容量の変化タイミングが適正な変化タイミングよりも遅い場合には、ロックアップクラッチへの差圧指示値を高くするように学習補正を行う一方、トルク容量の変化タイミングが適正な変化タイミングよりも早い場合には、ロックアップクラッチへの差圧指示値を低くするように学習補正を行う。
尚、ロックアップクラッチの差圧指示値と上記ロックアップ差圧との関係を規定するロックアップ差圧マップを予め作成しておき、ロックアップ差圧の変化タイミングが適正な変化タイミングに近付くようにロックアップ差圧マップを学習補正していく場合もある。
TCL=Te−C・Ne2−Ie・ΔNe …(1)
尚、TCLはロックアップクラッチのトルク容量、Teはエンジンのトルク、Cはトルクコンバータの容量係数、Neはエンジン回転数、Ieはエンジンのイナーシャ、ΔNeはエンジン回転数の単位時間当たりの変化量である。
ところが、上述したようなスリップスタート制御の開始時に行う学習動作にあっては、以下に述べるように、十分な学習精度が得られておらず、ロックアップクラッチのトルク容量を適正に得るためには更なる改良が要求されていた。
つまり、車両の発進時には、運転者のアクセルペダルの踏み込み量が大きく変化する過渡時であるため、上記式(1)における各項の精度を十分に得ることが困難である。例えば、この過渡時にはエンジントルク(式(1)の右辺の第1項:Te)の単位時間当たりの変化量が大きいため、このエンジントルクTeの推定精度を十分に得ることが難しい。また、この過渡時にはエンジン回転数(Ne)の単位時間当たりの変化量も大きいため、トルクコンバータのトルク容量(式(1)の右辺の第2項)やイナーシャトルク(式(1)の右辺の第3項)の演算精度も十分に得ることが難しい。このため、上記スリップスタート制御の開始時に上記式(1)により行う学習動作にあってはロックアップクラッチのトルク容量TCLを正確に得ることが困難であった。特に、車両発進初期時におけるエンジン回転数に対するタービン回転数の比(以下、「速度比」と呼ぶ:Nt/Ne)が小さい運転領域では、トルクコンバータ内部で発生する遠心油圧の影響を受けてロックアップクラッチが係合側に作動し、このロックアップクラッチに上記遠心油圧によるトルク容量が発生してしまうことになる。これでは、トルク容量の発生要因として、上記ロックアップ差圧指示に起因するものと、上記遠心油圧に起因するものとが併存することになり、本来の油圧制御(上記ロックアップ差圧指示に基づく制御)によって発生したロックアップクラッチのトルク容量の大きさを正確に求めることが不可能になり、学習精度の信頼性に悪影響を与えてしまうことになる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロックアップ差圧指示値と、それに起因するロックアップ差圧との関係を正確に求めて、スリップスタート制御の制御性の改善を図ることができる車両の制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、車両の発進時のエンジントルク及びエンジン回転数の変動量が大きいタイミングでの油圧学習を禁止し、それ以外のタイミングで実行された油圧学習での学習値によってロックアップ差圧を補正した状態でスリップスタート制御の実行を許可するようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、ロックアップクラッチ付き流体式動力伝達装置を走行用動力源と自動変速機との間に有し、車両発進時に上記ロックアップクラッチを半係合状態にするスリップスタート制御と車両定常走行時のロックアップ制御とが可能な車両の制御装置を前提とする。この車両の制御装置に対し、上記車両の発進時にはロックアップクラッチ油圧学習を禁止し、この車両の発進から所定期間を経過した以後の上記車両定常走行中のロックアップ制御時にロックアップクラッチ油圧学習を実行する油圧学習手段と、上記ロックアップクラッチ油圧学習完了してスリップスタート制御実行許可条件が成立した場合に、上記スリップスタート制御の実行を許可するスリップスタート制御許可手段とを備えさせている。
この特定事項により、上記ロックアップクラッチ油圧学習は、エンジントルクやエンジン回転数が大きく変動する車両発進時(過渡時)以外のタイミングで行われ、これにより信頼性の高い学習値が取得されることになる。このように信頼性の高い学習値で学習補正された油圧指示値(例えばロックアップ差圧指示値)によりスリップスタート制御が実行されることになるため、ロックアップ差圧が発生するタイミングが適正タイミングに設定されることになる。その結果、車両発進時において、ロックアップ差圧の発生タイミングが早すぎることによるエンジン回転数の急低下や、ロックアップ差圧の発生タイミングが遅すぎることによるエンジン回転数の急上昇が回避され、エンジンストールの防止及び燃料消費率の改善を図ることができる。
また、上記ロックアップクラッチの油圧学習を、ロックアップクラッチの出力軸回転数に対する入力軸回転数の比が、流体式動力伝達装置の内部で発生する遠心油圧に起因するロックアップクラッチのトルク容量が発生することのない所定値以上に達している際に実行するようにしている。
これによれば、流体式動力伝達装置(トルクコンバータ)の内部で発生する遠心油圧の影響によるトルク容量が発生しない状況で学習値の取得が行われ、学習値の信頼性をいっそう高めることができる。
また、上記スリップスタート制御許可手段の具体構成として、車両の走行距離が所定距離に達する度に上記スリップスタート制御実行許可条件を不成立にし、その後、上記油圧学習手段によって実行されたロックアップクラッチ油圧学習が完了して再びスリップスタート制御実行許可条件が成立した際にスリップスタート制御の実行を許可する構成としている。
これにより、流体式動力伝達装置の特性変化(例えば油圧回路を構成しているソレノイドバルブの特性変化)に起因して適正なロックアップ差圧が得られない状態でスリップスタート制御が実行されてしまうといった状況を回避することができる。
また、上記油圧学習は、ロックアップクラッチのトルク容量算出式、
TCL=Te−C・Ne2−Ie・ΔNe …(1)
TCLはロックアップクラッチのトルク容量、Teはエンジンのトルク、Cはトルクコンバータの容量係数、Neはエンジン回転数、Ieはエンジンのイナーシャ、ΔNeはエンジン回転数の単位時間当たりの変化量、
によってロックアップクラッチのトルク容量を算出することにより、ロックアップクラッチのトルク容量の発生時期を学習するよう構成されている。
本発明では、車両の発進時のエンジントルク及びエンジン回転数の変動量が大きいタイミングでの油圧学習を禁止し、それ以外のタイミングで実行された油圧学習での学習値によってロックアップ差圧を補正した状態でスリップスタート制御の実行を許可するようにしている。このため、車両発進時において、ロックアップ差圧の発生タイミングが早すぎることによるエンジン回転数の急低下や、ロックアップ差圧の発生タイミングが遅すぎることによるエンジン回転数の急上昇が回避され、エンジンストールの防止及び燃料消費率の改善を図ることができる。
実施形態に係る車両のパワートレインの概略構成を示す図である。 ロックアップクラッチの係合・解放制御に係る油圧回路を示す図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 ベルト式無段変速機の変速制御に用いる変速マップの一例を示す図である。 ロックアップ切換マップの一例を示す図である。 ロックアップ差圧指示値とロックアップ差圧との関係を示す図である。 スリップスタート制御の実行許可動作を説明するためのフローチャート図である。 目標無駄時間と実無駄時間との偏差を求める動作を説明するためのアクセル開度、エンジン回転数、タービン回転数、ロックアップクラッチのトルク容量、ロックアップ差圧指示、ロックアップ実差圧それぞれの変化の一例を示すタイミングチャート図である。 学習動作完了後のアクセル開度、エンジン回転数、タービン回転数、ロックアップクラッチのトルク容量、ロックアップ差圧指示、ロックアップ実差圧それぞれの変化の一例を示すタイミングチャート図である。 ロックアップ実差圧が適正値から乖離している場合のアクセル開度、エンジン回転数、タービン回転数、ロックアップ差圧指示、ロックアップ実差圧それぞれの変化の一例を示すタイミングチャート図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明に係る車両の制御装置を、変速機としてベルト式無段変速機(CVT)を搭載した車両に適用した場合について説明する。
図1は、本実施形態における車両のパワートレインの概略構成を示す図である。
本実施形態に係る車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両であって、走行用動力源であるエンジン(内燃機関)1、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ2、前後進切換装置3、ベルト式無段変速機4、減速歯車装置5、差動歯車装置6、及び、ECU(Electronic Control Unit)8(図3参照)などが搭載されており、そのECU8及び後述するロックアップ制御回路200(油圧制御回路20の一部)等によってロックアップクラッチ24の制御装置が構成されている。
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11はトルクコンバータ2に連結されており、エンジン1の出力が、トルクコンバータ2から前後進切換装置3、ベルト式無段変速機4及び減速歯車装置5を介して差動歯車装置6に伝達され、左右の駆動輪7L,7Rへ分配されるようになっている。
これらエンジン1、トルクコンバータ2、前後進切換装置3、ベルト式無段変速機4、及び、ECU8の各部について以下に説明する。
−エンジン−
エンジン1は、例えば多気筒ガソリンエンジンである。このエンジン1に吸入される吸入空気量は電子制御式のスロットルバルブ12により調整される。このスロットルバルブ12は、運転者のアクセルペダル操作とは独立してスロットル開度を電子的に制御することが可能であり、その開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ102によって検出される。また、エンジン1の冷却水温は水温センサ103によって検出される。
スロットルバルブ12のスロットル開度はECU8(図3参照)によって駆動制御される。具体的には、エンジン回転数センサ101によって検出されるエンジン回転数Ne、及び、運転者のアクセルペダル踏み込み量(アクセル操作量Acc)等のエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるようにスロットルバルブ12のスロットル開度を制御している。より具体的には、スロットル開度センサ102を用いてスロットルバルブ12の実際のスロットル開度を検出し、その実スロットル開度が、上記目標吸気量が得られるスロットル開度(目標スロットル開度)に一致するようにスロットルバルブ12のスロットルモータ13をフィードバック制御している。
−トルクコンバータ−
トルクコンバータ2は、入力側のポンプインペラ21、出力側のタービンランナ22、及び、トルク増幅機能を発現するステータ23などを備えており、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間で流体を介して動力伝達を行う。ポンプインペラ21はエンジン1のクランクシャフト11に連結されている。タービンランナ22はタービンシャフト28を介して前後進切換装置3に連結されている。
トルクコンバータ2には、このトルクコンバータ2の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチ(ロックアップクラッチ機構)24が設けられている。このロックアップクラッチ24は、係合側油室25内の油圧と解放側油室26内の油圧との差圧(ロックアップ差圧=係合側油室25内の油圧Pon−解放側油室26内の油圧Poff)を制御することにより、完全係合・半係合(スリップ状態での係合)または解放される。
ロックアップクラッチ24を完全係合させることにより、ポンプインペラ21とタービンランナ22とが一体回転する。また、ロックアップクラッチ24を所定のスリップ状態(半係合状態)で係合させることにより、エンジン駆動力の伝達時には所定のスリップ量でタービンランナ22がポンプインペラ21に追随して回転する。一方、ロックアップ差圧を負または同一に設定することによりロックアップクラッチ24は解放状態となる。尚、トルクコンバータ2にはポンプインペラ21に連結して駆動される機械式のオイルポンプ(油圧発生源)27が設けられている。
−前後進切換装置−
前後進切換装置3は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構30、前進用クラッチ(入力クラッチ)C1及び後進用ブレーキB1を備えている。
遊星歯車機構30のサンギヤ31はトルクコンバータ2のタービンシャフト28に一体的に連結されており、キャリア33はベルト式無段変速機4の入力軸40に一体的に連結されている。また、これらキャリア33とサンギヤ31とは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ32は後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。
前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は、油圧制御回路20によって係合・解放される油圧式摩擦係合要素であって、前進用クラッチC1が係合され、後進用ブレーキB1が解放されることにより、前後進切換装置3が一体回転状態となって前進用動力伝達経路が成立(達成)し、この状態で、前進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。
一方、後進用ブレーキB1が係合され、前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置3によって後進用動力伝達経路が成立(達成)する。この状態で、入力軸40はタービンシャフト28に対して逆方向へ回転し、この後進方向の駆動力がベルト式無段変速機4側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1がともに解放されると、前後進切換装置3は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
−ベルト式無段変速機−
ベルト式無段変速機4は、入力側のプライマリプーリ41、出力側のセカンダリプーリ42、及び、これらプライマリプーリ41とセカンダリプーリ42とに巻き掛けられた金属製のベルト43などを備えている。
プライマリプーリ41は、有効径が可変な可変プーリであって、入力軸40に固定された固定シーブ411と、入力軸40に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ412とによって構成されている。セカンダリプーリ42も同様に有効径が可変な可変プーリであって、出力軸44に固定された固定シーブ421と、出力軸44に軸方向のみの摺動が可能な状態で配設された可動シーブ422とによって構成されている。
プライマリプーリ41の可動シーブ412側には、固定シーブ411と可動シーブ412との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ413が配置されている。また、セカンダリプーリ42の可動シーブ422側にも同様に、固定シーブ421と可動シーブ422との間のV溝幅を変更するための油圧アクチュエータ423が配置されている。
以上の構造のベルト式無段変速機4において、プライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413の油圧を制御することにより、プライマリプーリ41及びセカンダリプーリ42の各V溝幅が変化してベルト43の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(変速比γ=入力軸回転数Nin/出力軸回転数Nout)が連続的に変化する。また、セカンダリプーリ42の油圧アクチュエータ423の油圧は、ベルト滑りが生じない所定の挟圧力でベルト43が挟圧されるように制御される。これらの制御はECU8及び油圧制御回路20(図3参照)によって実行される。
上記油圧制御回路20は、リニアソレノイドバルブ及びオンオフソレノイドバルブなどが設けられており、これらソレノイドバルブの励磁・非励磁を制御して油圧回路を切り換えることによって、ベルト式無段変速機4の変速制御やロックアップクラッチ24の係合・解放制御などを行う。油圧制御回路20のリニアソレノイドバルブ及びオンオフソレノイドバルブの励磁・非励磁は、ECU8からのソレノイド制御信号(指示油圧信号)によって制御される。上記ロックアップクラッチ24の係合・解放制御などを行うためのロックアップ制御回路200の具体構成及びその動作について以下に説明する。
−ロックアップ制御回路−
図2は、上記油圧制御回路20のうちロックアップクラッチ24の係合・解放制御を行う上記ロックアップ制御回路200を示す回路図である。
このロックアップ制御回路200は、ロックアップコントロールバルブ201、調圧弁220、ロックアップ差圧制御用のリニアソレノイドバルブ(SLUソレノイドバルブ)230などを備えている。
上記ロックアップコントロールバルブ201には、一対の第1ライン圧ポート202及び第2ライン圧ポート203が設けられており、さらに解放側ポート205、及び、信号圧ポート206が設けられている。第1ライン圧ポート202及び第2ライン圧ポート203には、調圧弁220からの元圧(ロックアップ圧)PLが供給される。調圧弁220は、油圧制御回路20(図3参照)内の制御圧(ライン圧)を調圧してロックアップコントロールバルブ201及びトルクコンバータ2の係合側油室25に供給するものである。また、ロックアップコントロールバルブ201の解放側ポート205は、トルクコンバータ2の解放側油室26に接続されている。
SLUソレノイドバルブ230は、リニアソレノイドバルブであって、励磁状態のときに制御信号圧PSLUを出力し、非励磁状態のときに制御信号圧PSLUの出力を停止する。このSLUソレノイドバルブ230は、ECU8から出力されるロックアップ差圧指示値PDに従って励磁電流がデューティ制御され、制御信号圧PSLUが連続的に変化する。このSLUソレノイドバルブ230から出力される制御信号圧PSLUはロックアップコントロールバルブ201の信号圧ポート206に供給される。
以上のロックアップ制御回路200において、ECU8から出力されるロックアップ差圧指示値PDに従ってSLUソレノイドバルブ230が励磁状態となり、その制御信号圧PSLUがロックアップコントロールバルブ201の信号圧ポート206に供給されると、このロックアップコントロールバルブ201では、図2の中心線より右側半分に示すように、スプール207が圧縮コイルばね208の付勢力に抗して上方へ移動した状態(ON状態)となる。この状態では、トルクコンバータ2の係合側油室25にロックアップ圧PLが供給された状態のまま、解放側ポート205がドレーンポート209に連通することにより、解放側油室26内の作動油がドレーンされ、ロックアップクラッチ24が係合(ON)する。
この際、ECU8から出力されるロックアップ差圧指示値PDのDuty比に応じて、ロックアップ差圧PLU、つまりロックアップクラッチ24の係合側油室25内の油圧Ponと解放側油室26内の油圧Poffとの差圧を連続的に制御することが可能となり、そのロックアップ差圧PLUに応じてロックアップクラッチ24の係合力を連続的に変化させることができる。
一方、SLUソレノイドバルブ230が非励磁状態となり、このSLUソレノイドバルブ230からの制御信号圧PSLUの出力が停止すると、ロックアップコントロールバルブ201は、図2の中心線より左側半分に示すように、圧縮コイルばね208の付勢力によってスプール207が下方へと移動して原位置に移動した状態(OFF状態)となる。
このOFF状態では、第2ライン圧ポート203と解放側ポート205とが連通し、ロックアップ圧PLが、これらポート203,205を経てロックアップクラッチ24の解放側油室26に供給されることになり、この解放側油室26内の油圧と係合側油室25内の油圧とが均圧されることになってロックアップクラッチ24が解放(OFF)状態となる。
−ECU−
上記ECU8は、図3に示すように、CPU81、ROM82、RAM83及びバックアップRAM84などを備えている。
ROM82には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU81は、ROM82に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM83はCPU81での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM84はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
これらCPU81、ROM82、RAM83、及び、バックアップRAM84はバス87を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース85及び出力インターフェース86に接続されている。
ECU8の入力インターフェース85には、エンジン回転数センサ101、スロットル開度センサ102、水温センサ103、タービン回転数センサ104、入力軸回転数センサ105、車速センサ106、アクセル開度センサ107、CVT油温センサ108、ブレーキペダルセンサ109、及び、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)を検出するレバーポジションセンサ110などが接続されている。そして、この入力インターフェース85によって、各センサの出力信号、つまり、エンジン1の回転数(エンジン回転数)Ne、スロットルバルブ12の開度θth、エンジン1の冷却水温Tw、タービンシャフト28の回転数(タービン回転数)Nt、入力軸40の回転数(入力軸回転数)Nin、車速V、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量(アクセル開度)Acc、油圧制御回路20の油温(CVT油温Thc)、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無(ブレーキON・OFF)、及び、シフトレバー9のレバーポジション(操作位置)などを表す信号がECU8に供給される。出力インターフェース86には、スロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15及び油圧制御回路20(ロックアップ制御回路200)などが接続されている。
ここで、ECU8に供給される信号のうち、タービン回転数Ntは、前後進切換装置3の前進用クラッチC1が係合する前進走行時には入力軸回転数Ninと一致し、車速Vはベルト式無段変速機4の出力軸44の回転数(出力軸回転数)Noutに対応する。またアクセル操作量Accは運転者の出力要求量を表している。
また、シフトレバー9は、駐車のためのパーキング位置「P」、後進走行のためのリバース位置「R」、動力伝達を遮断するニュートラル位置「N」、前進走行のためのドライブ位置「D」、前進走行時にベルト式無段変速機4の変速比γを手動操作で増減できるマニュアル位置「M」などの各位置に選択的に操作されるようになっている。
マニュアル位置「M」には、変速比γを増減するためのダウンシフト位置やアップシフト位置、あるいは、変速範囲の上限(変速比γが小さい側)が異なる複数の変速レンジを選択できる複数のレンジ位置等が備えられている。
レバーポジションセンサ110は、例えば、パーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」、ドライブ位置「D」、マニュアル位置「M」やアップシフト位置、ダウンシフト位置、あるいはレンジ位置等へシフトレバー9が操作されたことを検出する複数のON・OFFスイッチ等を備えている。なお、変速比γを手動操作で変更するために、シフトレバー9とは別にステアリングホイール等にダウンシフトスイッチやアップシフトスイッチ(所謂、パドルスイッチ)、あるいはレバー等を設けることも可能である。
そして、ECU8は、上記した各種のセンサの出力信号などに基づいて、エンジン1の出力制御、ベルト式無段変速機4の変速制御、ベルト挟圧力制御、及び、ロックアップクラッチ24の係合・解放制御を実行する。さらに、ECU8は、減速ロックアップ制御、ロックアップスムーズ係合制御(ロックアップクラッチ24を係合する際のショックを回避する油圧制御)、ロックアップスムーズOFF制御(ロックアップクラッチ24を解放する際のショックを回避する油圧制御)などを実行する。これら減速ロックアップ制御、ロックアップスムーズ係合制御、ロックアップスムーズOFF制御については既に公知であるため、ここでの説明は省略する。
エンジン1の出力制御は、スロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15及びECU8などによって行われ、ベルト式無段変速機4の変速制御、ベルト挟圧力制御、及びロックアップクラッチ24の係合・解放制御は、いずれも油圧制御回路20(ロックアップ制御回路200)によって行われる。これらスロットルモータ13、燃料噴射装置14、点火装置15、及び、油圧制御回路20はECU8によって制御される。
ベルト式無段変速機4の変速制御は、例えば図4に示すように、運転者の出力要求量を表すアクセル操作量Acc及び車速Vをパラメータとして予め設定された変速マップから入力側の目標回転数(目標回転速度)Nintを算出し、実際の入力軸回転数Ninが目標回転数Nintと一致するように、それらの偏差に応じてベルト式無段変速機4の変速制御、すなわちプライマリプーリ41の油圧アクチュエータ413に対する作動油の供給・排出によって変速圧Pinが制御され、変速比γが連続的に変化する。
図4のマップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル操作量Accが大きい程、大きな変速比γになる目標回転数Nintが設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転数Noutに対応するため、入力軸回転数Ninの目標値である目標回転数Nintは目標変速比に対応し、ベルト式無段変速機4の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で設定されている。
ロックアップクラッチ24を係合・解放する基本制御では、例えば図5に示すように、入力トルクに対応するスロットル弁開度θth及び車速Vをパラメータとして予め記憶された切換マップ(切換条件)に基づいて、実際のスロットル弁開度θth及び車速Vに応じてロックアップクラッチ24の係合・解放を切り換える。
図5に示す切換マップは、実線で示す係合切換線と破線で示す解放切換線とが所定のヒステリシスを有して設定されている。この図5に示す切換マップにおいて、ロックアップクラッチ24が解放状態(OFF)であるときから、車速Vが高車速側に変化したり、スロットル開度θthが低スロットル開度側に変化して係合切換線(実線)を横切った場合には、ロックアップクラッチ24を係合状態(ON)に切り換える。一方、ロックアップクラッチ24が係合状態(ON)にあるときから、車速Vが低車速側に変化したり、スロットル開度θthが高スロットル開度側に変化して解放切換線(破線)を横切った場合には、ロックアップクラッチ24を解放状態(OFF)に切り換える。
−スリップスタート制御−
次に、スリップスタート制御の概略について説明する。このスリップスタート制御は、車両の発進時に、ロックアップ差圧PLUを次第に上昇させていくことでロックアップクラッチ24を半係合状態とするものであって、このスリップスタート制御の実施により、車両発進時におけるトルクコンバータ2での動力伝達ロスが削減されると共に、エンジン回転数Neの急上昇(所謂、吹け上がり)が抑制されることになり、燃料消費率の改善を図ることが可能である。
具体的には、上記車速センサ106からの出力信号により車速が「0」であり、且つ上記ブレーキペダルセンサ109からの出力信号によりブレーキペダルが非操作状態とされた状態で、アクセル開度センサ107からの出力信号によりアクセル開度Accが「0」から増加されたことが検出されると、車両の発進時であると判定する。この発進判定に伴い、ECU8は、ロックアップ差圧指示値PDを所定のDuty比で出力し、これに伴い、ロックアップ差圧PLUつまりロックアップクラッチ24の係合側油室25内の油圧Ponと解放側油室26内の油圧Poffとの差圧(ロックアップ差圧)が連続的に制御されることになって、そのロックアップ差圧PLUに応じてロックアップクラッチ24の係合力が連続的に変化する(ロックアップクラッチ24にトルク容量が発生する)。つまり、ロックアップクラッチ24が半係合状態で車両が発進することになる。
尚、本実施形態では、後述するように、車両の発進時において常にスリップスタート制御を実施するのではなく、所定のスリップスタート制御許可条件(複数回の油圧学習動作の完了)が成立した場合に限って、車両の発進時にスリップスタート制御を実施するようにしている。詳しくは後述する。
図6は、このスリップスタート制御実行時におけるロックアップ差圧指示値PDとロックアップ差圧PLUとの関係を示す図である。この図6に示すように、上記SLUソレノイドバルブ230の製造時の個体差や長期間の使用に伴う特性変化等に起因し、ロックアップ差圧の発生特性(トルク容量が発生するタイミング:ロックアップ差圧PLUが発生するロックアップ差圧指示値PD)にばらつきが生じる。この図6における実線は、ノミナル品、つまり、適正なタイミングでロックアップ差圧が発生している場合のロックアップ差圧指示値PDとロックアップ差圧PLUとの関係を示している。この場合、ロックアップ差圧指示値PDの発信開始から、このロックアップ差圧指示値PDは次第に増大していき、タイミングT0でロックアップ差圧PLUが発生してロックアップクラッチ24にトルク容量が発生することになる。このタイミングT0でトルク容量が発生した場合、エンジン回転数の急低下や急上昇を招くことなく車両の発進が可能となる。
これに対して各破線で示す範囲内でロックアップ差圧PLUの発生特性にばらつきが生じる可能性がある。図中の上限品では、ロックアップ差圧PLUの発生タイミング(ロックアップクラッチのトルク容量の発生タイミング)が適切なタイミングよりも早くなっており(ロックアップ差圧指示値PDの発信開始からの経過時間が適正時間よりも短いタイミングT1でロックアップ差圧PLUが発生してロックアップクラッチ24にトルク容量が発生している)、この場合、エンジン回転数が急低下し、場合によってはエンジンストールに至ってしまう可能性がある。
一方、図中の下限品では、ロックアップ差圧PLUの発生タイミングが適切なタイミングよりも遅くなっており(ロックアップ差圧指示値PDの発信開始からの経過時間が適正時間よりも長いタイミングT2でロックアップ差圧PLUが発生してロックアップクラッチ24にトルク容量が発生している)、この場合、トルク容量が得られるまでの間にエンジン回転数が急上昇し、燃料消費率の悪化を招き、スリップスタート制御の目的が達成できなくなる可能性がある。
このため、適切なタイミングでロックアップ差圧を発生させるためには、油圧学習によってロックアップ差圧指示値PDを補正していくことが必要になる。
しかしながら、上述した如く、スリップスタート制御の開始時に学習動作を行った場合、エンジントルクの単位時間当たりの変化量やエンジン回転数の単位時間当たりの変化量が大きく、また、エンジン回転数に対するタービン回転数の比(速度比)が小さいことに起因してトルクコンバータ2の内部で発生する遠心油圧の影響によるトルク容量が発生してしまい、十分な学習精度を得ることができない。
そこで、本実施形態では、以下に述べるようにスリップスタート制御を実施するための許可条件を設定し、その許可条件が成立した場合に限ってスリップスタート制御を許可するようにしている。
−スリップスタート制御の実行許可動作−
次に、本実施形態の特徴とする動作であるスリップスタート制御の実行許可動作について説明する。このスリップスタート制御の実行許可動作の概略について説明すると、車両の発進時にスリップスタート制御の許可条件が成立しているか否かを判定し、この許可条件が成立していない場合には、上記スリップスタート制御を禁止する。つまり、ロックアップクラッチ24を解放状態にして車両の発進を行う。一方、スリップスタート制御の許可条件が成立している場合には、上記スリップスタート制御を許可する。つまり、車両の発進時にはロックアップクラッチ24を半係合状態にする。そして、上記スリップスタート制御の許可条件は、ロックアップクラッチ24の油圧学習が所定回数実行された場合に成立し、且つこの油圧学習は、車両の発進直後の所定期間(本来、スリップスタート制御を行う期間)以外の期間で実行される。言い換えると、車両定常走行時のロックアップ制御時の油圧学習の完了後(油圧学習動作が所定回数実行された場合に)、車両発進時のスリップスタート制御の実行を許可するようにしている。
図7は、スリップスタート制御実行許可動作の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、エンジン1の始動後、数msec毎またはクランクシャフトの所定回転角度毎に実行される。また、後述する油圧学習完了フラグは、例えば車両の走行距離が所定距離に達する度(例えば走行距離1000km毎)に「0」にリセットされるようになっている。つまり、所定期間毎に繰り返される図7のルーチンでは、定期的に油圧学習完了フラグが「0」にリセットされることになる。上記の値(走行距離1000km)はこれに限定されるものではなく任意に設定可能であるが、この値が小さすぎるとスリップスタート制御の実行機会が少なくなってしまい、大きすぎるとSLUソレノイドバルブ230の特性の経時変化等によって適正なロックアップ差圧が得られない状態でスリップスタート制御が実行されてしまう可能性がある。このため、この値は、これらを考慮して設定される。
先ず、ステップST1で油圧学習完了フラグが「1」にセットされているか否かを判定する。本フローチャートの第1回目のルーチン(車両の走行距離が上記所定距離に達した直後に実行されるルーチン)では油圧学習完了フラグが「0」にリセットされているため、ステップST1ではNO判定され、ステップST2に移る。このステップST2では、通常のロックアップ制御が実施されたか否かを判定する。この通常のロックアップ制御は、スリップスタート制御の実行時に行われるロックアップ制御とは異なるタイミングでのロックアップ制御であり、例えば、車速とスロットル開度(またはアクセル開度)とをパラメータとする上記ロックアップ切換マップに従って行われる。
通常のロックアップ制御が実施されておらず、ステップST2でNO判定された場合には、そのままリターンされる。一方、通常のロックアップ制御が実施され、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、油圧学習動作を実行して学習値の取得を行う(油圧学習手段によるロックアップクラッチ油圧学習)。
以下、この油圧学習動作の概略について説明する。図8は、車両発進から所定時間経過後に通常のロックアップ制御が実施され、それに伴って油圧学習動作が行われる場合のアクセル開度、エンジン回転数、タービン回転数、ロックアップクラッチのトルク容量、ロックアップ差圧指示、ロックアップ実差圧それぞれの変化の一例を示すタイミングチャート図である。
この学習動作は、上記速度比(エンジン回転数に対するタービン回転数の比)が所定値(例えば0.8)以上になった時点で開始される。この値はこれに限定されるものではなく、上記トルクコンバータ2の内部で発生する遠心油圧の影響によるトルク容量が発生しない変速比として実験的にまたはシミュレーションにより設定されている。
先ず、図中のタイミングt1でアクセルペダルの踏み込み操作がなされたことに伴って車両が発進し、タイミングt2で速度比が上記所定値以上に達する。このタイミングt2においてロックアップ差圧指示が出力される。そして、SLUソレノイドバルブ230の特性のばらつきに起因して、タイミングt3からロックアップ実差圧が増大していき、それに伴って、ロックアップクラッチ24にトルク容量が発生する。この図8に示す波形では、SLUソレノイドバルブ230の特性のばらつきによりロックアップ実差圧の発生タイミングが適正タイミング(ノミナル品での発生タイミング)よりも遅れている場合を示している。
そして、このロックアップクラッチ24のトルク容量は、タイミングt4で、予め設定された判定閾値に達する。本学習動作では、このロックアップ差圧指示が出力されてからロックアップクラッチのトルク容量が上記判定閾値に達するまでの期間(タイミングt2〜t4までの期間)を「実無駄時間」と呼び、この「実無駄時間」が目標とする「目標無駄時間(ノミナル品での無駄時間)」に一致するような学習値を求め、その学習値に従ってロックアップ差圧指示を補正するようにしている。尚、図8に二点鎖線で示すロックアップクラッチ24のトルク容量の変化(目標トルク容量変化)は上記ノミナル品のものを示している。
尚、このロックアップクラッチのトルク容量は、以下の式(1)での演算が所定時間間隔で繰り返されることで算出され、ロックアップクラッチのトルク容量が上記判定閾値に達した時期(タイミングt4)を判定することになる。
TCL=Te−C・Ne2−Ie・ΔNe …(1)
この式(1)におけるTCLはロックアップクラッチのトルク容量、Teはエンジンのトルク、Cはトルクコンバータの容量係数、Neはエンジン回転数、Ieはエンジンのイナーシャ、ΔNeはエンジン回転数の単位時間当たりの変化量である。
そして、図8に示すように「実無駄時間」が「目標無駄時間」よりも長い場合には、この「実無駄時間」を短縮化するようにロックアップ差圧指示を大きくする側(ロックアップクラッチのトルク容量の発生タイミングを早くする側)に補正し、逆に、「実無駄時間」が「目標無駄時間」よりも短い場合には、この「実無駄時間」を延長化するようにロックアップ差圧指示を小さくする側(ロックアップクラッチのトルク容量の発生タイミングを遅く側)に補正するようにしている。このようなロックアップ差圧指示の補正がロックアップ制御が実施される度に行われる。このため、ロックアップ制御が複数回実施されると、学習されたロックアップ差圧指示値が次第に適正値に収束していき、上記「実無駄時間」が「目標無駄時間」に略一致することになる。
上記油圧学習動作を実行して学習値の取得を行った後、ステップST4に移り、油圧学習実行回数Ngを「1」だけ加算(インクリメント)する。その後、ステップST5に移り、油圧学習実行回数Ngが所定回数α(例えば5回)に達したか否かを判定する。この回数はこれに限定されるものではなく、学習値の信頼性が十分に確保できる回数として設定される。
第1回目のルーチンでは油圧学習実行回数Ngは未だ所定回数αに達していないため、ステップST5でNO判定されリターンされる。
このような動作を複数回(通常のロックアップ制御が実施される度に)実行され、油圧学習実行回数Ngが所定回数αに達して、ステップST5でYES判定されると、ステップST6に移り、上記油圧学習完了フラグを「1」にセットする。
このようにして油圧学習完了フラグを「1」にセットした後の次回のルーチンでは、ステップST1でYES判定され、ステップST7に移る。このステップST7では、車両の発進時であるか否かを判定する。つまり、上述した如く、車速センサ106からの出力信号により車速が「0」であり、且つ上記ブレーキペダルセンサ109からの出力信号によりブレーキペダルが非操作状態とされた状態で、アクセル開度センサ107からの出力信号によりアクセル開度Accが「0」から増加されたか否かを判定する。
車両の発進時ではない場合にはステップST7でNO判定されて、そのままリターンされる。この場合、油圧学習完了フラグは継続的に「1」に維持される。一方、車両の発進時であってステップST7でYES判定された場合には、ステップST8に移り、上記スリップスタート制御を実行する。つまり、ロックアップクラッチ24を半係合状態にして車両を発進させる(スリップスタート制御許可手段によるスリップスタート制御の実行の許可)。以後の車両の発進時にあっては、上記油圧学習完了フラグが「0」にリセットされるタイミングを迎えるまでの間、車両の発進時には常時スリップスタート制御が実行されることになる。
このように、本来スリップスタート制御を行う期間以外の期間で油圧学習を実行したことにより、取得された学習値としては、エンジントルクやエンジン回転数が大きく変動する過渡時(車両発進時)以外のタイミングで取得されることになり、その信頼性が十分に確保されたものとなっている。また、上述した油圧学習では、上記速度比(エンジン回転数に対するタービン回転数の比)が所定値以上になった時点で開始しているため、上記トルクコンバータ2の内部で発生する遠心油圧の影響によるトルク容量が発生しない状況で学習値の取得が行われ、これによっても学習値の信頼性を高く得ることができる。
そして、この信頼性の高い学習値で学習補正されたロックアップ差圧指示値によりスリップスタート制御が実行されることになるため、ロックアップ差圧が適正タイミング(上記ノミナル品と略同一のタイミング)に設定されることになる。その結果、ロックアップ差圧の発生タイミングが早すぎることによるエンジン回転数の急低下や、ロックアップ差圧の発生タイミングが遅すぎることによるエンジン回転数の急上昇が回避され、エンジンストールの防止及び燃料消費率の改善を図ることができる。
図9は、このようにして学習動作が完了された後のスリップスタート制御が実行された際のアクセル開度、エンジン回転数、タービン回転数、ロックアップクラッチのトルク容量、ロックアップ差圧指示、ロックアップ実差圧それぞれの変化の一例を示すタイミングチャート図である。図中に破線で示す領域は上述した複数回の学習動作によってロックアップ差圧指示が補正された補正分を示している。この図9に示した学習補正分は増量補正されたものである。つまり、図8に示すように、ロックアップ実差圧の発生タイミングが適正タイミング(ノミナル品での発生タイミング)よりも遅れていた場合の学習補正分である。逆に、ロックアップ実差圧の発生タイミングが適正タイミングよりも早い場合には、学習補正分は減量補正となる。
この図9のエンジン回転数波形からも分かるように、上記学習動作によってロックアップ差圧(実差圧)が適正タイミングで発生し、エンジン回転数の急低下や急上昇は生じることがない。
尚、この図9に一点鎖線で示す波形は、スリップスタート制御が非実行とされた(ロックアップクラッチ24がOFFとされた)場合のエンジン回転数及びロックアップクラッチのトルク容量の変化を示している。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、変速機としてベルト式無段変速機(CVT)を搭載した車両に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、遊星歯車式変速機を搭載した車両に対しても適用可能である。
また、上記実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に対して本発明を適用した場合について説明したが、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両や4輪駆動車に対しても本発明は適用可能である。
また、上記実施形態では、ガソリンエンジン1を搭載した自動車に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、ディーゼルエンジンを搭載した自動車にも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(V型や水平対向型等)についても特に限定されるものではない。
本発明は、車両の発進に伴ってロックアップクラッチを半係合状態にするスリップスタート制御が実行可能な車両に対し、精度の高い油圧学習値に従ったスリップスタート制御を実現するための発進制御に適用可能である。
1 エンジン(走行用動力源)
11 クランクシャフト
2 トルクコンバータ(流体式動力伝達装置)
21 ポンプインペラ
22 タービンランナ
24 ロックアップクラッチ
25 係合側油室
26 解放側油室
28 タービンシャフト
4 ベルト式無段変速機(自動変速機)
8 ECU

Claims (4)

  1. ロックアップクラッチ付き流体式動力伝達装置を走行用動力源と自動変速機との間に有し、車両発進時に上記ロックアップクラッチを半係合状態にするスリップスタート制御と車両定常走行時のロックアップ制御とが可能な車両の制御装置において、
    上記車両の発進時にはロックアップクラッチ油圧学習を禁止し、この車両の発進から所定期間を経過した以後の上記車両定常走行中のロックアップ制御時にロックアップクラッチ油圧学習を実行する油圧学習手段と、
    上記ロックアップクラッチ油圧学習完了してスリップスタート制御実行許可条件が成立した場合に、上記スリップスタート制御の実行を許可するスリップスタート制御許可手段とを備えていることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 請求項1記載の車両の制御装置において、
    上記ロックアップクラッチ油圧学習は、ロックアップクラッチの出力軸回転数に対する入力軸回転数の比が、上記流体式動力伝達装置の内部で発生する遠心油圧に起因するロックアップクラッチのトルク容量が発生することのない所定値以上に達している際に実行されることを特徴とする車両の制御装置。
  3. 請求項1または2記載の車両の制御装置において、
    上記スリップスタート制御許可手段は、車両の走行距離が所定距離に達する度に上記スリップスタート制御実行許可条件を不成立にし、その後、上記油圧学習手段によって実行されたロックアップクラッチ油圧学習が完了して再びスリップスタート制御実行許可条件が成立した際にスリップスタート制御の実行を許可する構成とされていることを特徴とする車両の制御装置。
  4. 請求項1、2または3記載の車両の制御装置において、
    上記油圧学習は、ロックアップクラッチのトルク容量算出式、
    TCL=Te−C・Ne 2 −Ie・ΔNe …(1)
    TCLはロックアップクラッチのトルク容量、Teはエンジンのトルク、Cはトルクコンバータの容量係数、Neはエンジン回転数、Ieはエンジンのイナーシャ、ΔNeはエンジン回転数の単位時間当たりの変化量、
    によってロックアップクラッチのトルク容量を算出することにより、ロックアップクラッチのトルク容量の発生時期を学習するよう構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
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