JP5659691B2 - ハイブリッド車両の制御装置、ハイブリッド車両の制御方法 - Google Patents
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Description
このように、クルーズ走行中に設定車速を増加させてから、その設定車速を達成するまでの短時間のうちに、エンジンの始動と停止が行われると、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
本発明の課題は、クルーズ走行中に設定車速が増加し、その設定車速を達成するまでの違和感を抑制することである。
《第一実施形態》
《構成》
図1は、ハイブリッド車両の概要構成図である。
ここでは、後輪駆動のハイブリッド車両を例示しているが、勿論、前輪駆動のハイブリッド車両であってもよい。
先ず、動力系(パワートレーン)の構成について説明する。
エンジン1から左右後輪(駆動輪)までのトルク伝達経路の途中には、モータジェネレータ(以下、単にモータと称す)2、及び自動変速機(トランスミッションT/M)3が介装される。エンジン1とモータ3との間には、第1クラッチ4が介装され、モータ3と駆動輪7との間のトルク伝達経路には、第2クラッチ5が介装される。ここでは、第2クラッチ5が自動変速機3に内臓された構成を例示している。自動変速機3は、プロペラシャフト、ディファレンシャルギヤ6、及びドライブシャフトを介して駆動輪7に接続される。
モータ2は、例えばロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータである。モータ2は、後述するモータコントローラ23からの制御指令に基づき、後述のインバータ8で作り出した三相交流を印加することで制御される。モータ2は、後述のバッテリ9からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできる(この状態を「力行」と称す)。また、モータ2は、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ9を充電することもできる(この動作状態を「回生」と称す)。このモータ2のロータは、図外のダンパーを介して自動変速機3の入力軸に連結される。
第2クラッチ5は、油圧式多板クラッチである。第2クラッチ5は、後述するATコントローラ24からの制御指令に基づき、目標クラッチ伝達トルクとなるように、第2クラッチ油圧ユニットで作り出した制御油圧により、締結状態又は開放状態となる。なお、締結状態及び開放状態には、何れも滑り状態(半クラッチ状態)を含むものとする。
なお、本実施形態では、第2クラッチ5を自動変速機3の一部として構成する場合を例示しているが、これに限定されるものではない。他にも、第2クラッチ5を、モータ2と自動変速機3との間や、自動変速機3とディファレンシャルギヤとの間に配置する構成でもよい。
符号33は運転者によって操作されるアクセルペダル33である。このアクセルペダル33のアクセル開度APOは、アクセルセンサ20によって検出され、アクセルセンサ20は、検出したアクセル開度APO情報を統合コントローラ21に出力する。
また、符号34はペダルアクチュエータ34である。ペダルアクチュエータ34は、車間制御コントローラ31からの指令に応じたペダル反力をアクセルペダル33に付与するアクチュエータである。
また符号27は車輪速センサである。車輪速センサ27は、検出した車輪速情報をブレーキコントローラ25に出力する。また、車輪速情報から求まる車速情報は、ブレーキコントローラ25から統合コントローラ21及び車間制御コントローラ31に出力される。
また符号29はブレーキスイッチ29である。ブレーキスイッチ29は、ブレーキペダル(図示省略)の操作を検出する。
符号28は、ステアリングスイッチである。ステアリングスイッチ28は、ステアリングホイール部に設けられ、クルーズコントロールの起動や走行条件(設定車速等)の変更指示を運転者が行うための操作部である。本実施形態のクルーズコントロールとは、設定車速を維持する定速クルーズコントロール(ASCD:Auto Speed Control Device)、及び車間距離に応じて設定車速を自動調整する車間距離クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)の双方を含む。
符号18はバッテリ9の電圧を検出する電圧センサである。符号19はバッテリ9の電流を検出する電流センサである。
ハイブリッド車両の制御系は、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、インバータ8と、バッテリコントローラ26と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25と、統合コントローラ21と、車間制御コントローラ31と、を備えている。
なお、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25と、車間制御コントローラ31と、統合コントローラ21とは、CAN通信によって情報の授受が行われる。
バッテリコントローラ26は、バッテリ9の充電状態を示すSOCを監視している。バッテリコントローラ26は、SOC情報を、モータ2の制御情報等として、CAN通信を介して統合コントローラ21へ供給する。
統合コントローラ21には、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ10、モータ回転数Nmを検出するモータ回転センサ11、変速機入力回転数を検出するAT入力回転センサ12、及び変速機出力回転数を検出するAT出力回転センサ13からの各種情報が入力される。さらに、統合コントローラ21には、アクセルセンサ20からアクセル開度APO情報、バッテリコントローラ26からバッテリ9の蓄電状態SOCの情報が入力される。一方、統合コントローラ21は、CAN通信を介して、各種情報の出力も行う。
統合コントローラ21は、エンジンコントローラ22への制御指令によりエンジン1の駆動制御を実行し、モータコントローラ23への制御指令によりモータ2の駆動制御を実行し、ATコントローラ24への制御指令により第1クラッチ4及び第2クラッチ5の駆動制御を実行する。
車両停止中において、バッテリSOCの低下時であれば、エンジン1を始動して発電を行い、バッテリ9を充電する。そして、バッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチ4を締結状態とし、第2クラッチ5を開放状態としたままエンジン1を停止する。
エンジン1による発進時には、アクセル開度APOやバッテリSOC状態に応じて、モータ2を力行運転や発電運転に切り替える。
モータ走行時(EVモード)には、エンジン始動に必要なクランキングトルクとバッテリ出力を確保する必要があり、不足する場合にはエンジン走行に移行する。また、予め設定したマップ等に基づき所定車速以上となるときに、モータ走行(EVモード)からエンジン走行(HEVモード)へと移行する。
ブレーキ操作による減速時には、運転者のブレーキ操作に応じた減速トルクを回生協調ブレーキ制御によって実現する。
エンジン走行やモータ走行中における変速時には、加減速中の変速に伴う回転数合わせのために、モータ2を発電運転や力行運転に切り替えて、トルクコンバータ無しでのスムーズな変速を行う。
図3は、制御システムにおける制御指令の主な流れを示す図である。
図4は、制御システムにおける主な機能ブロックを示す図である。
統合コントローラ21は、図4に示すように、要求発電トルク演算部21Aと、要求エンジントルク演算部21Bと、モータ出力可能トルク演算部21Cと、目標駆動トルク演算部21Dと、車両状態モード決定部21Eと、エンジン始動制御部21Fと、エンジン停止制御部21Gと、目標エンジントルク算出部21Hと、目標モータトルク算出部21Jと、目標クラッチトルク算出部21Kと、を備える。
要求エンジントルク演算部21Bは、アクセル開度APOや車速V、また要求発電トルク演算部21Aが演算した要求発電トルク等に基づき、エンジン1で発生すべき要求エンジントルクを演算する。
モータ出力可能トルク演算部21Cは、バッテリコントローラ26からのSOCなどのバッテリ情報や、車速Vなどに基づき、モータ2が出力可能なモータ出力可能トルクを演算する。
目標駆動トルク演算部21Dは、目標駆動トルクを演算する。
目標駆動トルク演算部21Dは、アクセル要求トルク演算部21Daと、クルーズ要求トルク演算部21Dbと、基本目標駆動トルク演算部21Dcと、車速リミッタトルク演算部21Ddと、最終目標駆動トルク演算部21Deと、を備える。
アクセル要求トルク演算部21Daは、少なくともアクセルペダル33のアクセル開度APO情報及び車速に基づき、アクセル要求トルクを演算する。アクセル要求トルク演算部21Daは、図3に示す例では、アクセル開度APO及び変速機入力回転数を入力し、ベーストルクマップを参照して基本アクセル要求トルクを演算する。また、車速Vに基づき、クリープ・コースト駆動力テーブルを参照して第1の補正トルクを演算する。また、アクセル開度APO情報、変速機入力回転数、SOC等に基づく電力制限情報に基づき、MGアシストトルクMAPを参照して、第2の補正トルクを算出する。そして、アクセル要求トルク演算部21Daは、演算した基本アクセル要求トルク、第1の補正トルク、及び第2の補正トルクに基づき、最終的なアクセル要求トルクを求める。
車速リミッタトルク演算部21Ddは、ステアリングスイッチ28によって設定される設定車速Vs及び現在の車速V(n)に基づき、上限車速VMAX以下とするための車速リミッタトルクを演算する。
一方、車両状態モード決定部21Eは、アクセル開度APO、車速情報(又は変速機出力回転数)、モータ出力可能トルク、要求エンジントルク、及び目標駆動トルクに基づき、車両状態モード領域マップ(EV−HEV遷移マップ)などを参照し、目標車両状態モード(EVモード又はHEVモード)を決定する。
そして、現在の車両状態モードがEVモードであり、目標車両状態モードがHEVモードである場合には、エンジン始動シーケンスの処理を行う。逆に、現在の車両状態モードがHEVモードであり、目標車両状態モードがEVモードである場合には、エンジン停止シーケンスの処理を行う。
車両状態モード決定部21Eは、後述するエンジン始動停止判定処理を実行し、エンジンの始動及び停止を判定する。
エンジン始動制御部21Fは、車両状態モード決定部21EからエンジンON指令を受けると、EVモードからHEVモードへ移行するためにエンジン1を始動したり、HEVモードを維持するために、エンジン1の駆動状態を維持する。
エンジン始動制御部21Fは、先ず目標第2クラッチトルク指令TCL2をATコントローラ24に出力し、第2クラッチ5を目標クラッチ伝達トルクに制御する。目標第2クラッチトルク指令TCL2は、エンジン始動処理前の出力トルク相当のトルクを伝達可能なトルク指令であって、モータ2が出力する駆動力を増大したとしても出力軸トルクに影響を与えない範囲とする。ATコントローラ24は、指令に応じたクラッチ油圧が発生するように第2クラッチ油圧ユニットを制御する。
エンジン始動制御部21は、次に目標第1クラッチトルク指令TCL1をATコントローラ24に出力し、第1クラッチ4をエンジンクランキングトルクとなる目標クラッチ伝達トルクに制御する。
一方、エンジン停止制御部21Gは、車両状態モード決定部21EからエンジンOFF指令を受けると、HEVモードからEVモードへ移行するためにエンジン1を停止したり、EVモードを維持するために、エンジン1の停止状態を維持する。なお、本実施形態におけるエンジン停止とは、フェールカットを指す。
エンジン停止制御部21Gは、先ず目標第1クラッチトルク指令TCL1をATコントローラ24に出力し、第1クラッチ4を滑り状態にする予め定められた目標クラッチ伝達トルクに制御する。
エンジン停止制御部21Gは、次に同期をとってモータコントローラ23に、モータ2を回転数制御する指令を出力する。これによって、第1クラッチ4によるエンジン1からのトルクを減少しつつ、モータトルクを増大して、目標駆動トルクを得る。
一方、目標エンジントルク算出部21Hは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、車速などの走行状態情報、目標駆動トルク、発電のために要求される要求エンジントルクに基づき、目標エンジントルクを算出する。なお、目標車両状態モードがEVモードである場合には、エンジントルクは不要であるので、目標エンジントルクは、ゼロ又は負値となる。また、予め設定したフューエルカット条件を満足している場合には、エンジンに対してフューエルカットを指示し、エンジンは空回りしている状態になっている。
なお、図3のVAPO演算部21Lは、クルーズ要求トルクから逆算して対応する推定アクセル開度を演算して、演算した推定アクセル開度を変速用アクセル開度としてATコントローラ24に出力する。
図6は、エンジン始動停止判定処理を示すフローチャートである。
先ずステップS11では、クルーズコントロールがONに設定されているか否かを判定する。ここで、クルーズコントロールがONに設定されていれば、後述するステップS13に移行する。一方、クルーズコントロールがOFFに設定されていれば、ステップS12に移行する。
一方、ステップS13では、運転者がステアリングスイッチ28を介してアクセル機能操作を行ったか否かを判定する。ここで、アクセル機能操作が行われていれば、後述するステップS15に移行する。一方、アクセル機能操作が行われていなければ、ステップS14に移行する。
続くステップS16では、車両状態モードがEVモードであるか否かを判定する。ここで、車両状態モードが『HEVモード』であれば、エンジン1が既に始動されており、エンジン始動を禁止することはできないと判断して前記ステップS12に移行する。一方、車両状態モードが『EVモード』であれば、エンジン始動を禁止する必要があると判断してステップS17に移行する。
Vf ← V(n)
ステップS18では、加速フラグを『Fa=1』にセットする。
続くステップS19では、中止フラグがFs=0にリセットされているか否かを判定する。この中止フラグFsは、エンジン始動の禁止に対する中止要求の有無を示すフラグであり、Fs=0のときには、エンジン始動の禁止に対する中止要求がなく、Fs=1のときには、エンジン始動の禁止に対する中止要求があることを示す。初期設定では、Fs=0にリセットされている。ここで、判定結果が『Fs=1』であれば、後述するステップS30に移行する。一方、判定結果が『Fc=0』であれば、ステップS20に移行する。
図7は、増加補正量Tupの算出に用いるマップである。
このマップは、運転者によってアクセル機能操作が開始されてからの経過時間が設定値t1以下であるときには、増加補正量Tupは予め定められた値T1を維持し、経過時間が設定値t1を超えると、増加補正量Tupは値T1よりも小さくなり、経過時間が設定値t2に達すると、増加補正量Tupは0になるように設定されている。ここで、T1はクランキング必要トルク以下の値とする。
続くステップS25では、下記に示すように、増加補正量Tupの加算によってモータトルク上限値TLを増加補正する。下記に示すように、
TL ← TL+Tup
図8は、通常のモータトルク上限値TLを示すグラフである。
通常のモータトルク上限値TLは、モータ2で出力可能な最大トルクからクランキング必要トルクを減じた値に設定される。つまり、出力可能な最大トルクからクランキング必要トルクを残した余剰分に相当する。
続くステップS26では、バッテリ9の放電許容電力に対応するバッテリ出力上限値TBと補正後のモータトルク上限値TLとを比較し、モータトルク上限値TLをバッテリ出力上限値TB以下に制限する。すなわち、モータトルク上限値TLがバッテリ出力上限値TB以下であれば、モータトルク上限値TLを維持し、モータトルク上限値TLがバッテリ出力上限値TBを超えれば、モータトルク上限値TLを、バッテリ出力上限値TBに設定する。
ΔV=Vs−V(n)
続くステップS28では、車速偏差ΔVが予め定められた閾値Vthより大きいか否かを判定する。ここで、判定結果が『ΔV≦Vth』であれば、自車速は既に設定車速Vsに収束していると判断して後述するステップS36に移行する。一方、判定結果が『ΔV>Vth』であれば、自車速はまだ設定車速Vsに収束していないと判断してステップS29に移行する。
ステップS29では、禁止フラグをFNG=1にセットしてから後述するステップS37に移行する。
続くステップS31では、モータトルク上限値TLを、増加補正前の通常の値(出力可能な最大トルクからクランキング必要トルクを減じた値)まで徐々に戻す。具体的には、増加補正後のモータトルク上限値TLから、演算周期毎に予め定められた定量ずつ減少させ、増加補正量Tup分だけ解除する。
続くステップS32では、増加補正量Tupだけ解除できたか否かを判定する。ここで、増加補正量Tup分の解除が完了していればステップS27に移行する。一方、増加補正量Tup分の解除がまだ完了していなければステップS33に移行する。
ステップS33では、中止フラグをFs=0にリセットする。
続くステップS34では、加速フラグをFa=0にリセットする。
続くステップS35では、加速前車速Vfをリセットしてから前記ステップS12に移行する。
一方、ステップS37では、クルーズコントロールがONに設定されているか否かを判定する。ここで、クルーズコントロールがONに設定されていれば、後述するステップS41に移行する。一方、クルーズコントロールがOFFに設定されていれば、ステップS38に移行する。
1.アクセル開度によるエンジン始動要求
ここでは、アクセル開度APOが予め定められた始動判定閾値より大きいか否かを判定し、アクセル開度APOが閾値より大きいときに、エンジン始動要求が出力状態となる。閾値は車速Vに応じて設定されてもよい。
2.システムによるエンジン始動要求
ここでは、SOCが低下したり、水温が低下したり、EV走行禁止車速に達したりしたときに、エンジン始動要求が出力状態となる。
3.クルーズ制御によるエンジン始動要求
ここでは、クルーズ要求トルクTcが予め定められた始動判定閾値より大きいか否かを判定し、クルーズ要求トルクTcが始動判定閾値より大きいときに、エンジン始動要求が出力状態となる。
ステップS39では、エンジン停止制御部21Gに対してエンジンOFF指令を出力してから所定のメインプログラムに復帰する。
一方、ステップS40では、エンジン始動制御部21Fに対してエンジンON指令を出力してから所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS42では、エンジン停止制御部21Gに対してエンジンOFF指令を出力してから所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS44では、クルーズ要求トルクTcが、予め定められた停止判定閾値TOFF以上であるか否かを判定する。ここで、判定結果が『Tc<TOFF』であれば、エンジン1に対する停止要求であると判断して前記ステップS42に移行する。一方、判定結果が『Tc≧TOFF』であれば、エンジン1に対する停止要求はないと判断して前記ステップS40に移行する。
図9は、従来技術の問題点を示すタイムチャートである。
クルーズ走行しているときに、クルーズ要求トルクTcが始動判定閾値TONより小さいときにはEVモードでの走行となる。この状態で、ドライバが加速を望んでステアリングスイッチ28を介してアクセル機能操作を行うと、設定車速Vsが増加することで、クルーズ要求トルクTcが増加する。そして、クルーズ要求トルクTcが始動判定閾値TONを上回ると、エンジン1が始動されてHEVモードへと切り替わる。
そして、設定車速Vsが達成されたときに、アクセル機能操作を行う前と走行抵抗R/Lが一定であったとすると、クルーズ要求トルクTcが減少し、停止判定閾値TOFF以下となるので、再びエンジン1が停止することになる。
さらに、エンジン1を停止状態から始動(クランキング)する場合には、クラッチスリップ(半クラッチ)による駆動トルク制限が行われるので、エンジン1に対する始動要求が出されても、クルーズ要求トルクTcに高応答で追従できず、リニアなレスポンスを得にくい。
そこで、モータ2のみを駆動し、EVモードでクルーズ走行している状態で、運転者のスイッチ操作によって設定車速Vsが増加したら、この設定車速Vsを達成するまでは、エンジン1の始動を禁止する。
ここで、上記の動作を詳述する。
EVモードで、クルーズ要求トルクTcがアクセル要求トルクTaよりも大きいときには、クルーズ要求トルクTcに従ったクルーズ要求車速でのクルーズ走行をしている。このとき、定速クルーズ要求トルクが最終的なクルーズ要求トルクTcとして選択されているとすると、自車速は略一定の車速(設定車速Vs)を維持しており(S13、S14の判定が共に“No”)、禁止フラグはFNG=0にリセットされている(S12)。
こうして、加速期間もエンジン1はOFF状態を維持しているので、加速期間が終了したときにもエンジン1は既にOFF状態にある。これにより、加速期間が終了したときに、エンジン1を停止しなくて済むので、短時間のうち、エンジンの始動と停止を行うことがない。したがって、クルーズ走行中に設定車速Vsが増加し、その設定車速Vsを達成するまでの違和感を抑制することができる。
そこで、アクセル機能操作によって加速要求が出されたことで、禁止フラグをFNG=1にセットする際には、モータトルク上限値TLを増加補正する、つまり拡大する(S24、S25)。通常時の上限値TLは、クランキング必要トルクを確保しておくための制限値であるため、HEVモードへの移行を禁止して一時的にEVモードで加速する場合には、クランキングトルクは必要とされない。
さらに、増加補正した後の上限値TLを、バッテリ9の放電許容電力に対応するバッテリ出力上限値TB以下に制限する(S26)。これにより、過剰な電力消費を抑制し、モータ2、インバータ8、バッテリ9などの電力系統での過電流や過熱を抑制することができる。
そして、増加補正量Tupを解除できたら(S32の判定が“Yes”)、加速フラグをFa=0にリセットし(S34)、加速前車速Vfをリセットし(S35)、禁止フラグをFNG=0にリセットする(S12)。これにより、エンジン1の始動が再び許容される(S41の判定が“No”)。
1.アクセラレート操作(スイッチ長押し)の場合
運転者のアクセル機能操作が、アクセラレート操作である場合には、運転者はタップアップ操作のような一時加速ではなく、もっと大きな加速を望んでいる、つまり明確な加速意図があると判断できる。したがって、このアクセラレート操作の場合には、EVモードで加速するよりもHEVモードで加速した方がよい。
そこで、ステアリングスイッチ28の設定調節部を、第一の方向に押し始めてからの経過時間をカウントしておき、経過時間が予め定められた時間を超えたときには(S20の判定が“No”)、中止フラグをFs=1にセットし(S30)、エンジン始動の禁止を中止する。つまり、エンジン始動を許容する。これにより、運転者の加速意図に即した車両加速を実現することができる。
図11は、連続タップアップ操作時の動作を示すタイムチャートである。
運転者のアクセル機能操作が、連続タップアップ操作である場合には、上記のアクセラレート操作と同様で、運転者には明確な加速意図があると判断できる。したがって、タップアップ操作が連続して(二回以上)行われた場合には、EVモードで加速するよりもHEVモードで加速した方がよい。
そこで、タップアップ操作を行ってからの経過時間をカウントしておき、経過時間が予め定められた時間内の間に、再度タップアップ操作が行われたときには(21Sの判定が“No”)、中止フラグをFs=1にセットし(S30)、エンジン始動の禁止を中止する。つまり、エンジン始動を許容する。これにより、運転者の加速意図に即した車両加速を実現することができる。
EVモードでの加速を開始したにもかかわらず、加速前よりも車速が低下するということは、例えば路面の上り勾配が大きくなるなどして走行抵抗R/Lが増加していることが考えられる。この場合には、EVモードでの加速に限界があるため、HEVモードでの加速に切り替えた方がよい。
そこで、現在の自車速V(n)が加速前車速Vfよりも低くなったら(S22の判定が“No”)、中止フラグをFs=1にセットし(S30)、エンジン始動の禁止を中止する。つまり、エンジン始動を許容する。これにより、設定車速Vsを達成し、運転者の加速意図に即した車両加速を実現することができる。
EVモードでの加速を開始したにもかかわらず、なかなか設定車速Vsを達成できないということは、例えば路面の上り勾配が大きくなるなどして走行抵抗R/Lが増加していることや、またモータ出力が限界であること等が考えられる。
そこで、アクセル機能操作を開始してからの、つまりEVモードでの加速を開始してからの経過時間が予め定められた時間ts以上になったら(S23の判定が“No”)、中止フラグをFs=1にセットし(S30)、エンジン始動の禁止を中止する。つまり、エンジン始動を許容する。これにより、設定車速Vsを速やかに達成し、運転者の加速意図に即した車両加速を実現することができる。
以上より、基本目標駆動トルク演算部21Dc、エンジンコントローラ22、モータコントローラ23、及びATコントローラ24が「駆動制御手段」に対応し、ステップS20、S21の処理が「加速意図判断手段」に対応し、ステップS17の処理が「加速前車速記憶手段」に対応する。
(1)車輪を駆動可能なエンジンと、車輪を駆動可能なモータと、運転者のスイッチ操作によって設定可能な設定車速に応じて、前記エンジン及び前記モータの少なくとも一方を駆動する駆動制御手段と、を備え、前記駆動制御手段は、前記モータのみで前記車輪を駆動している状態で、運転者のスイッチ操作によって前記設定車速が増加したら、当該設定車速を達成するまでは、前記エンジンの始動を禁止することを特徴とする。
このように、モータのみで車輪を駆動している状態で、運転者のスイッチ操作によって設定車速が増加したら、この設定車速を達成するまでは、エンジンの始動を禁止することにより、短時間のうちに、エンジンの始動と停止を行うことがない。したがって、クルーズ走行中に設定車速が増加し、その設定車速を達成するまでの違和感を抑制することができる。
このように、モータの駆動力に対する上限値を増加補正することで、運転者の加速要求に応じてモータの駆動力を増加させることができる。したがって、モータだけを駆動した状態での一時的な加速要求を満たすことができる。
このように、上限値に対する増加補正を、モータへ出力可能な最大電力に応じて制限するので、過剰な電力消費を抑制することができる。
(4)前記駆動制御手段は、運転者のスイッチ操作によって前記設定車速が増加した後、予め定められた時間が終了したら、前記上限値の増加補正を解除し、当該上限値を増加補正前の値に復帰させることを特徴とする。
このように、設定車速が増加した後予め定められた時間が終了したら、上限値の増加補正を解除することで、過剰な電力消費を抑制することができる。
このように、運転者の加速意図の度合が、予め定められた閾値以上であるときには、エンジンの始動を許容することで、運転者の加速意図に即した車両加速を実現することができる。
このように、自車速が加速前車速より低くなったときには、エンジンの始動を許容することで、設定車速を達成して、運転者の加速意図に即した車両加速を実現することができる。
このように、上限値を増加補正前の値に復帰させてからエンジンの始動を許容することで、通常通りのクランキングトルクを用いてエンジンを始動することができる。したがって、エンジンを始動する際に生じるショックを最小限に抑制することができる。
このように、モータのみで車輪を駆動している状態で、運転者のスイッチ操作によって設定車速が増加したら、この設定車速を達成するまでは、エンジンの始動を禁止することにより、短時間のうちに、エンジンの始動と停止を行うことがない。したがって、クルーズ走行中に設定車速が増加し、その設定車速を達成するまでの違和感を抑制することができる。
2 モータ
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
7 駆動輪
20 アクセルセンサ
21 統合コントローラ
21A 要求発電トルク演算部
21B 要求エンジントルク演算部
21C モータ出力可能トルク演算部
21D 目標駆動トルク演算部
21Da アクセル要求トルク演算部
21Db クルーズ要求トルク演算部
21Dc 第1目標駆動トルク演算部
21Dd 車速リミッタトルク演算部
21De 最終目標駆動トルク演算部
21E 車両状態モード決定部
21F エンジン始動制御部
21G エンジン停止制御部
21H 目標エンジントルク算出部
21J 目標モータトルク算出部
21K 目標クラッチトルク算出部
21L VAPO演算
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 ATコントローラ
25 ブレーキコントローラ
26 バッテリコントローラ
28 ステアリングスイッチ
30 クルーズキャンセルスイッチ
31 車間制御コントローラ
Claims (7)
- 車輪を駆動可能なエンジンと、
車輪を駆動可能なモータと、
運転者のスイッチ操作によって設定可能な設定車速に応じて、前記エンジン及び前記モータの少なくとも一方を駆動する駆動制御手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、
前記モータで出力可能な最大トルクから前記エンジンの始動に必要なクランキングトルクを減じた値を上限値として設定し、前記モータの駆動力を前記上限値以下に制限するものであり、
前記モータのみで前記車輪を駆動している状態で、運転者のスイッチ操作によって前記設定車速が増加したら、当該設定車速を達成するまでは、前記エンジンの始動を禁止し、且つ前記クランキングトルクに相当する範囲内で前記上限値を増加補正することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記駆動制御手段は、
前記上限値に対する増加補正を、前記モータへ出力可能な最大電力に応じて制限することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 前記駆動制御手段は、
運転者のスイッチ操作によって前記設定車速が増加した後、予め定められた時間が終了したら、前記上限値の増加補正を解除し、当該上限値を増加補正前の値に復帰させることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 運転者のスイッチ操作の長さ及び回数の少なくとも一方に応じて、加速意図の度合を判断する加速意図判断手段を備え、
前記駆動制御手段は、
前記加速意図判断手段で判断した加速意図の度合が、予め定められた閾値以上であるときには、前記エンジンの始動を許容することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 車輪を駆動可能なエンジンと、
車輪を駆動可能なモータと、
運転者のスイッチ操作によって設定可能な設定車速に応じて、前記エンジン及び前記モータの少なくとも一方を駆動する駆動制御手段と、
運転者のスイッチ操作によって前記設定車速が増加した時点の自車速を加速前車速として記憶する加速前車速記憶手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、
前記モータのみで前記車輪を駆動している状態で、運転者のスイッチ操作によって前記設定車速が増加したら、当該設定車速を達成するまでは、前記エンジンの始動を禁止し、
自車速が前記加速前車速記憶手段で記憶した加速前車速より低くなったときには、前記エンジンの始動を許容することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記駆動制御手段は、
前記上限値の増加補正を解除し、当該上限値を増加補正前の値に復帰させてから前記エンジンの始動を許容することを特徴とする請求項4又は5に記載のハイブリッド車両の制御装置。 - 車輪を駆動可能なエンジンと、車輪を駆動可能なモータと、を備え、
アクセル操作とは異なる運転者のスイッチ操作によって設定車速を設定し、当該設定車速に基づいてクルーズ要求トルクを設定し、当該クルーズ要求トルクに基づいて、前記エンジン及びモータの少なくとも一方を駆動してクルーズ走行するハイブリッド車両の制御方法であって、
前記モータで出力可能な最大トルクから前記エンジンの始動に必要なクランキングトルクを減じた値を上限値として設定し、前記モータの駆動力を前記上限値以下に制限し、
前記モータのみを駆動してクルーズ走行している状態で、運転者のスイッチ操作によっ
て前記設定車速が増加したら、当該設定車速を達成するまでは、前記エンジンの始動を禁止し、且つ前記クランキングトルクに相当する範囲内で前記上限値を増加補正することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
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