JP5742166B2 - 車両用走行制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジン及びモータを駆動源とし、走行の状態に応じてエンジン及びモータの少なくとも一方を使用して走行するハイブリッド車両の車両用走行制御の技術に関する。
ハイブリッド車両の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1には、定速走行制御を実施すると共に、エンジンを始動するために、クラッチを滑り締結しているときは、車速フィードバック制御のゲインを、クラッチ締結時に比べて小さな値に設定することが開示されている。
特開2010−179790号公報
エンジン始動のためにクラッチを滑り締結しているときは、駆動輪へ伝達される駆動トルクが低減するため、実車速が上がらないが上昇率が低減する。このため、実車速と目標車速と間に偏差速度が発生し、クラッチが滑り締結しているときに、上記偏差速度が大きくなるほど、目標車速とするための要求トルクが増加してしまう。この結果、エンジン始動が完了して上記クラッチを完全締結状態に変更したときに、急に加速度が上昇して飛び出し感が生じてしまう。
このとき、エンジン始動のためにクラッチを滑り締結状態としているとき、特許文献1に記載のように、車速フィードバック制御のゲインを小さな値に切り替える方式では、クラッチの滑り締結中の車速追従応答性が悪化するとともに、滑り締結から完全締結への変化のタイミングでのゲイン急変により、車速フィードバック制御の指令トルクが急変、つまり加速度が急変して、運転者に違和感を与えるおそれがある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、ハイブリッド車両において、エンジン始動に伴う加速度の急変を抑制することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は、駆動源としてエンジン及びモータを備え、エンジンから駆動輪へのトルク伝達経路の途中にモータが介装すると共に、上記トルク伝達経路における、モータと駆動輪との間にクラッチが介装するハイブリッド車両の走行を制御する車両用走行制御装置である。エンジン始動のための上記クラッチを滑り締結状態にした際には、目標車速が実車速よりも大きい場合、上記目標車速の増加率を、上記目標車速と実車速との偏差速度が予め設定した偏差判定値以下の場合には上記クラッチが締結状態のときの増加率よりも小さい第1の増加率とし、上記偏差速度が上記偏差判定値よりも大きい場合には上記第1の増加率よりも小さい第2の増加率とする。
本発明によれば、上記クラッチの滑り締結中における目標車速と実車速の車速偏差の蓄積を低減することで、上記クラッチの滑り締結終了後における加速度急変を抑制する。この結果、運転者に与える違和感を抑えることが可能となる。
本発明に基づく実施形態に係るハイブリッド車両の概要構成図である。 本発明に基づく実施形態に係るハイブリッドシステムの構成例を示す図である。 本発明に基づく実施形態に係る統合コントローラにおける基本的な信号の流れを示す図である。 本発明に基づく実施形態に係る統合コントローラの機能ブロックを示す図である。 目標駆動トルク演算部の機能ブロックである。 自動制御要求トルク演算部の構成を示す図である。 始動時CL2スリップ判定部に処理を説明する図である。 始動時CL2スリップ判定部の処理による動作例を示す図である。 増加側目標車速変化率算出部の処理を説明する図である。 目標車速設定本体部の処理を説明する図である。 車速サーボ部の処理を説明する図である。 車両状態モードの遷移関係を示す図である。 車両状態モード決定部の機能ブロックである。 エンジン始動判定処理部の処理を説明する図である。 エンジン停止判定値とエンジン始動判定値の関係を示す図である。 クルーズ要求トルクとエンジン始動要求との関係を示す図である。 本発明を適用しない場合の動作を説明する図である。 本実施形態を適用した場合の動作を説明する図である。 サーボゲインを低減する場合の問題点を説明する図である。 本実施形態を適用した場合の動作を説明する図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は実施形態に係るハイブリッド車両の概要構成図である。図1に示すハイブリッド車両は後輪駆動の例であるが、前輪駆動であっても本発明は適用可能である。
(駆動系の構成)
まず駆動系(パワートレーン)の構成について説明する。
本実施形態のパワートレーンは、図1に示すように、エンジン1から左右後輪(駆動輪)までのトルク伝達経路の途中に、モータ2及び自動変速機AT(=トランスミッションT/M)を介装する。エンジン1とモータ2との間に、第1クラッチ4を介装する。また、モータ2と駆動輪(後輪)との間のトルク伝達経路に第2クラッチ5を介装する。この例では、第2クラッチ5は、自動変速機AT(=トランスミッションT/M)の一部を構成する。自動変速機ATは、プロペラシャフト、ディファレンシャルDF、及びドライブシャフトを介して駆動輪7(後輪)に接続する。
上記エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。エンジン1は、後述するエンジンコントローラ22からの制御指令に基づき、スロットルバルブのバルブ開度等が制御可能となっている。なお、エンジン1の出力軸に、フライホイールが設けられていても良い。
上記モータ2は、例えばロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータである。モータ2は、後述するモータコントローラ23からの制御指令に基づき、後述のインバータ8で作り出した三相交流を印加することで制御出来る。このモータ2は、後述のバッテリ9からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできる(この状態を「力行」と呼ぶ)。また、モータ2は、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ9を充電することもできる(この動作状態を「回生」と呼ぶ)。このモータ2のロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結する。
上記第1クラッチ4は、上記エンジン1とモータ2との間に介装された油圧式単板クラッチである。上記第1クラッチ4は、後述するATコントローラ24からの制御指令に基づいて、入力した目標クラッチ伝達トルクとなるように、第1クラッチ油圧ユニット(不図示)が作り出した制御油圧により、締結状態若しくは開放状態となる。なお、締結・開放には、滑り締結と滑り開放を含む。
上記第2クラッチ5は、油圧式多板クラッチである。上記第2クラッチ5は、後述するATコントローラ24からの制御指令に基づき、目標クラッチ伝達トルクとなるように、第2クラッチ油圧ユニットで作り出した制御油圧により、締結状態若しくは開放状態となる。なお、締結・開放には、滑り締結と滑り開放を含む。
上記自動変速機ATは、例えば、前進7速後退1速や前進6速後退1速等の有段階の変速比を、車速や後述の統合コントローラ21から入力した変速用アクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機である。ここで、上記第2クラッチ5は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用して構成する。
ここで、本実施形態では、第2クラッチ5を自動変速機AT(=トランスミッションT/M)の一部として構成する場合を例示しているが、これに限定されない。第2クラッチ5は、モータ2と自動変速機ATとの間、若しくは自動変速機ATとディファレンシャル・ギヤDFとの間に配置する構成であっても良い。
また、各輪には、それぞれブレーキユニット(不図示)を備える。各ブレーキユニットは、例えばディスクブレーキやドラムブレーキからなる。各ブレーキユニットは、油圧ブレーキ装置であっても、電動ブレーキ装置であっても良い。各ブレーキユニットは、ブレーキコントローラ25からの指令に応じて、対応する車輪に制動力を付与する。なお、ブレーキユニットは、全ての車輪に設ける必要はない。
また、図1中、符号14は電動サブオイルポンプを示し、符号15は機械式オイルポンプを示す。これらのオイルポンプ14,15は、各クラッチのための油圧を発生する。また、符号10は、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサを、符号11は、モータ2の回転を検出するレゾルバ等のモータ回転センサを示す。また、符号12は、変速機の入力軸の回転を検出するAT入力回転センサを、符号13は、変速機の出力軸の回転を検出するAT出力回転センサを示す。また、符号27は、車輪の回転を検出する車輪速センサを示す。車輪速センサ27は、不図示の従動輪(前輪)にも設けてもよい。
図2は、図1に示したパワートレーンの制御システムを説明する構成図である。
符号33は運転者によって操作されるアクセルペダル33である。このアクセルペダル33のアクセル開度APOは、アクセルセンサ20によって検出され、アクセルセンサ20は、検出したアクセル開度APO情報を統合コントローラ21に出力する。
また、符号34はペダルアクチュエータ34である。ペダルアクチュエータ34は、車間制御コントローラ31からの指令に応じたペダル反力をアクセルペダル33に付与するアクチュエータである。
また符号32は、先行車検出手段を構成するレーダーユニット32である。レーダーユニット32は、車両前方の先行車両を検出し、検出した先行車両情報を車間制御コントローラ31に出力する。
また符号27は車輪速センサである。車輪速センサ27は、検出した車輪速情報をブレーキコントローラ25に出力する。また、車輪速情報から求まる車速情報は、ブレーキコントローラ25から統合コントローラ21及び車間制御コントローラ31に出力される。
また符号35は、運転者に走行状態を提示するためのメータである。メータ35は、オートクルーズの情報などを表示する。
また符号29はブレーキスイッチ29である。ブレーキスイッチ29は、ブレーキペダル(不図示)の操作を検出する。
符号28は、ステアリングスイッチである。ステアリングスイッチ28は、自動走行制御であるオートクルーズ走行の起動や走行条件(目標車速等)の変更指示を運転者が行うための操作子である。ここで、本実施形態のオートクルーズ走行には、定速走行制御(定速クルーズ)及び車車間走行制御(車間クルーズ)の両方を含む。
このステアリングスイッチ28には、定速走行制御の設定車速を予め設定した車速分だけ大きくする加速SW、及び定速走行制御の設定車速を予め設定した車速分だけ小さくするコーストSWを含む。
符号30は、ブレーキペダルに設けられたクルーズキャンセルスイッチである。クルーズキャンセルスイッチ30は、自動走行制御であるオートクルーズ走行の終了を指示するための操作子である。なお、上記ステアリングスイッチ28にもオートクルーズの終了を指示するスイッチが存在する。以下、このスイッチも含めクルーズキャンセルスイッチ30と呼ぶ。
符号18はバッテリ9の電圧を検出する電圧センサである。符号19はバッテリ9の電流を検出する電流センサである。
次に、ハイブリッド車両の制御系の構成について説明する。
上記ハイブリッド車両の制御系は、図2に示すように、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、インバータ8と、バッテリコントローラ26と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25と、統合コントローラ21と、を有する。また、本実施形態のハイブリッド車両の制御系は、車間制御コントローラ31を有する。
なお、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、ATコントローラ24と、ATコントローラ24と、ブレーキコントローラ25と、車間制御コントローラ31と、統合コントローラ21とは、互いに情報交換が可能なCAN通信線(不図示)を介して接続する。
上記エンジンコントローラ22は、エンジン回転数センサ10からのエンジン回転数情報を入力する。そして、上記エンジンコントローラ22は、統合コントローラ21からの目標エンジントルク等に応じ、エンジン動作点(Ne、Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Neの情報は、CAN通信線を介して統合コントローラ21から取得する。
上記モータコントローラ23は、モータ2のロータ回転位置を検出するモータ回転センサ11からの情報を入力する。そして、上記モータコントローラ23は、統合コントローラ21からの目標モータトルクや回転数指令等に応じ、モータ2のモータ動作点(Nm、Tm)を制御する指令をインバータ8へ出力する。
バッテリコントローラ26は、バッテリ9の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視している。バッテリコントローラ26は、バッテリSOC情報を、モータ2の制御情報等として、CAN通信線を介して統合コントローラ21へ供給する。
上記ATコントローラ24は、車速情報と第1及び第2クラッチ油圧センサからのセンサ情報を入力する。そして、上記ATコントローラ24は、統合コントローラ21からのアクセル開度APO情報、第1及び第2クラッチ制御指令(目標第1クラッチトルク、目標第2クラッチトルク)に応じ、変速制御における第2クラッチ制御に優先し、第2クラッチ5の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニットに出力すると共に、第1クラッチ4の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット(不図示)に出力する。
上記ブレーキコントローラ25は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ27とブレーキストロークセンサからのセンサ情報を入力する。上記ブレーキコントローラ25は、予め設定した制御サイクルで、ブレーキペダルのストローク量や車間制御コントローラ31などからの制動要求量、車速に基づき目標減速度を演算する。そして、ブレーキコントローラ25は、回生協調ブレーキ制御として、目標減速度を回転制動力としての協調回生ブレーキ要求トルク、及び機械制動力(油圧制動力)としての目標油圧制動力に制動力配分を行う。そして、協調回生ブレーキ要求トルクを統合コントローラ21のモータコントローラ23に出力する。目標油圧制動力を、油圧制動力装置に出力する。例えば、上記ブレーキコントローラ25は、ブレーキ踏み込み制動時のブレーキストロークBS等から求められる要求制動力に対し、回生制動力だけでは不足する場合、回生協調ブレーキ制御を行う。そいて、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ2制動力)で補うように、統合コントローラ21からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
また、車間制御コントローラ31は、運転者が設定したステアリングスイッチ28の情報、クルーズ制御作動許可状態、その他の必要情報を、統合コントローラ21から入力する。そして、車間制御コントローラ31は、統合コントローラ21からの情報に基づき、先行車に対する車間制御を実施すると判定すると、自車速、レーダーユニット32の検出に基づく先行車両の情報(車間距離や相対速度など)等に基づき、先行車に対して目標車間距離や目標車間時間とするための目標加速度及び目標減速度を演算する。そして、車間制御コントローラ31は、求めた目標加速度を車間クルーズ要求トルク(ACC要求トルク)として統合コントローラ21に出力する。また、車間制御コントローラ31は、求めた目標減速度を制動要求トルクとしてブレーキコントローラ25に出力する。
また、車間制御コントローラ31は、DCA制御(Distance Control Assist)部31Aを有する。DCA制御部31Aは、統合コントローラ21から受信するアクセル開度APO情報と、車輪速センサ27の検出に基づく車速情報、レーダーユニット32からの情報に基づきペダル反力指令を演算する。そして、DCA制御部31Aは、先行車との車間を保つ為の運転者への支援情報として、演算した反力指令をペダルアクチュエータ34に出力する。ペダルアクチュエータ34は、入力したアクセルペダル33に反力を付与する。
上記統合コントローラ21は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うものである。
上記統合コントローラ21は、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ10、モータ回転数Nmを検出するモータ回転センサ11、変速機入力回転数を検出するAT入力回転センサ12、変速機出力回転数を検出するAT出力回転センサ13からの情報を入力する。また、統合コントローラ21は、アクセルセンサ20からアクセル開度APO情報、バッテリコントローラ26からバッテリ9の蓄電状態SOCの情報を入力する。また、上記統合コントローラ21は、CAN通信線を介して取得した情報を出力する。
また、上記統合コントローラ21は、上記エンジンコントローラ22への制御指令によりエンジン1の動作制御を実行する。上記統合コントローラ21は、上記モータコントローラ23への制御指令によりモータ2の動作制御を実行する。上記統合コントローラ21は、上記ATコントローラ24への制御指令により第1クラッチ4の締結・開放制御を実行する。上記統合コントローラ21は、上記ATコントローラ24への制御指令により第2クラッチ5の締結・開放制御を実行する。
ここで、本実施形態のハイブリッド車両における基本動作モードについて説明する。
車両停止中において、バッテリSOCの低下時であれば、エンジン1を始動して発電を行い、バッテリ9を充電する。そして、バッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチ4は締結で第2クラッチ5は開放のままでエンジン1を停止する。
エンジン1による発進時には、アクセル開度APOとバッテリSOC状態によって、モータ2を連れ回し、力行/発電に切り替える。
モータ走行(EVモード)は、エンジン始動に必要なモータトルクとバッテリ出力を確保し、不足する場合はエンジン走行に移行する。また、予め設定したマップ等に基づき予め設定した所定車速以上となると、モータ走行(EVモード)からエンジン走行(HEVモード)に移行する。またエンジン走行時において、アクセル踏み込み時のレスポンス向上のために、エンジントルク遅れ分をモータ2によりアシストする。すなわち、エンジン走行中は、エンジン1の動力だけ、若しくはエンジン1及びモータ2の動力の両方で走行するモードが存在する。
ブレーキON減速時には、運転者のブレーキ操作に応じた減速力を回生協調ブレーキ制御にて得る。
エンジン走行やモータ走行中における変速時には、加減速中の変速に伴う回転数合わせのために、モータ2を回生/力行させ、トルクコンバータ無しでのスムーズな変速を行う。
図3は、本実施形態の統合コントローラ21の制御における基本的な指令値の基本的な流れを示す概要構成図を例示するものである。また、図4は本実施形態の統合コントローラ21の制御を機能的に説明する機能ブロック図である。
次に、統合コントローラ21にて実行する制駆動制御処理における、本発明に関わる部分について説明する。
統合コントローラ21は、図4に示すように、要求発電トルク演算部21A、要求エンジントルク演算部21B、モータ出力可能トルク演算部21C、目標駆動トルク演算部21D、車両状態モード決定部21E、エンジン始動制御部21F、エンジン停止制御部21G、目標エンジントルク算出部21H、目標モータトルク算出部21J、目標クラッチトルク算出部21Kを備える。
要求発電トルク演算部21Aは、車速情報やバッテリコントローラ26からのSOCなどのバッテリ情報などに基づき、モータ2で発電すべき要求発電トルクを演算する。
要求エンジントルク演算部21Bは、車速などの走行状態や要求発電トルク演算部21Aが演算した要求発電トルク等に基づき、エンジン1で発生すべき要求エンジントルクを演算する。
モータ出力可能トルク演算部21Cは、バッテリコントローラ26からのSOCなどのバッテリ情報や、車速などに基づき、モータ2が出力可能なモータ出力可能トルクを演算する。
目標駆動トルク演算部21Dは、目標とする目標駆動トルクを演算する。目標駆動トルク演算部21Dは、ドライバ要求トルク演算部、自動制御要求トルク演算部を備える。ドライバ要求トルク演算部は、運転者の操作するアクセルペダル33の操作量(アクセル開度APO)に基づき、運転者が要求していると推定するドライバ要求トルクを演算する。また、自動制御要求トルク演算部は、自動走行制御スイッチであるステアリングスイッチの操作によって作動し、クルーズキャンセルスイッチ30の操作による終了まで、運転者が予め設定した走行条件(設定車速)の走行状態に自動調整するための自動制御要求トルクを演算する。そして、目標駆動トルク演算部21Dは、ドライバ要求トルク演算部が演算したドライバ要求トルクと自動制御要求トルク演算部が演算した自動制御要求トルクとに基づき、目標駆動トルクを演算する。
本実施形態の目標駆動トルク演算部21Dは、図5に示すように、ドライバ要求トルク演算部21Da、自動制御要求トルク演算部21Db、第1目標駆動トルク演算部21Dc、車速リミッタトルク演算部21Dd、最終目標駆動トルク演算部21Deを備える。
ドライバ要求トルク演算部21Daは、少なくともアクセルペダル33のアクセル開度APO情報及び車速に基づき、ドライバ要求トルクを演算する。ドライバ要求トルク演算部21Daは、図3に示す例では、アクセル開度APO及び変速機入力回転数を入力し、ベーストルクマップを参照して基本ドライバ要求トルクを演算する。また、車速に基づき、クリープ・コースト駆動トルクテーブルを参照して第1の補正トルクを演算する。また、アクセル開度APO情報、変速機入力回転数、SOC等に基づく電力制限情報に基づき、MGアシストトルクMAPを参照して、第2の補正トルクを算出する。そして、ドライバ要求トルク演算部21Daは、演算した基本ドライバ要求トルク、第1の補正トルク、第2の補正トルクに基づき、最終的なドライバ要求トルクを求める。
自動制御要求トルク演算部21Dbは、ステアリングスイッチ28及びACC許可信号を車間制御コントローラ31に出力すると共に、該車間制御コントローラ31から車間クルーズ要求トルク(ACC要求トルク)を入力する。また、自動制御要求トルク演算部21Dbは、ステアリングリングSWによって設定された設定車速及び現在の車速に基づき、設定車速にフィードバック制御するためのクルーズ要求トルクを演算する。そして、自動制御要求トルクは、ACC作動(車間制御の作動)の有無に応じて、車間クルーズ要求トルク(ACC要求トルク)若しくはクルーズ要求トルクの一方を自動制御要求トルクとして選択する。ここでは、ACC作動時には、クルーズ要求トルクよりも車間クルーズ要求トルクを優先して選択するように処理する。
本実施形態に係る上記自動制御要求トルク演算部21Dbの構成例を図6に示す。
すなわち、本実施形態の自動制御要求トルク演算部21Dbは、入力処理許可判定部50、目標車速設定部51、加速度算出部52、車速サーボ部53、選択部54を備える。
入力処理許可判定部50は、運転者が操作したステアリングスイッチ情報と、車速情報とを入力して、自動制御の許可判定を実施すると共に、車速及びステアリングスイッチ情報中の設定車速情報などの情報を目標車速設定部51に出力する。また、車間設定情報などを車間制御コントローラ31に出力する。
加速度算出部52は、車速に基づき車両の加速度を算出して、車速サーボ部53に出力する。
目標車速設定部51は、運転者が設定した設定車速及び現在の車速から目標車速を算出し、算出した目標車速を車速サーボ部53に出力する。
上記目標車速設定部51は、始動時CL2スリップ判定部51A、増加側目標車速変化率算出部51B、目標車速設定本体部51Cを備える。
始動時CL2スリップ判定部51Aは、第2クラッチのエンジン始動時におけるスリップ締結状態を判定する処理部である。
始動時CL2スリップ判定部51Aの処理を、図7を参照して説明する。
始動時CL2スリップ判定部51Aは、所定サンプリング周期で起動し、先ず、ステップS300で、エンジン始動要求が有るか否かを判定する。エンジン始動要求が有るか否かは、エンジン始動フラグがONか否かで判定する。始動要求が有る場合にはステップS310に移行する。エンジン始動要求が無い場合にはステップS320に移行する。
ステップS310では、始動フェーズに1を設定する。また、始動時CL2スリップ判定をONに設定してステップS330に移行する。
ステップS320では、始動フェーズとして前回値を保持して、ステップS330に移行する。
ステップS330では、第1クラッチ4の収束判定を行う。エンジン1が始動して第1クラッチ4を滑り締結状態から完全締結のためのロックアップ状態に移行した場合には、第1クラッチが収束したと判定する。収束したと判定した場合にはステップS340に移行する。一方、収束したと判定しない場合には、ステップS350に移行する。
ステップS340では、始動フェーズとして2を設定してステップS360に移行する。
ステップS350では、始動フェーズとして前回値を保持して、ステップS360に移行する。
ステップS360では、第2クラッチ5の収束判定を行う。第2クラッチ5を滑り締結状態から完全締結のためのロックアップ状態に移行した場合には、第2クラッチが収束したと判定する。収束したと判定した場合にはステップS370に移行する。一方、収束したと判定しない場合には、ステップS380に移行する。
ステップS370では、始動フェーズに3を設定する。また、始動時CL2スリップ判定をOFFに設定してステップS390に移行する。
ステップS380では、始動フェーズとして前回値を保持して、ステップS390に移行する。
ステップS390では、エンジン始動シーケンスが終了したか判定する。すなわち、第2クラッチ5の滑り締結状態が終了してHEVモードに移行したか判定する。条件を満足する場合にはステップS400に移行する。条件を満足しない場合にはステップS410に移行する。
ステップS400では、始動フェーズとして4を設定して、復帰する。
ステップS410では、始動フェーズとして前回値を保持して、復帰する。
図8は、上記始動時CL2スリップ判定部51Aの処理におけるタイムチャート例である。図8の例は、EVモード状態から目標駆動トルクが増大してHEVモードに移行する場合の例である。図8に示すように、エンジン始動シーケンスの進行に伴い、始動フェーズ1〜始動フェーズ4に向けて順番に移行していく。
また、増加側目標車速変化率算出部51Bは、目標車速を増加する際における目標車速の増加率を、車速偏差に基づき算出する。なお、本実施形態では、目標車速の減少率は一定の場合とする。エンジン停止シーケンス時に目標車速の減少率を変更するなどしても良い。
その増加側目標車速変化率算出部51Bの処理を、図9を参照して説明する。
増加側目標車速変化率算出部51Bでは、まずステップS500で、目標車速偏差を、下記式に基づき算出する。
目標車速偏差 = 目標車速 −実車速
次に、ステップS510にて、始動時CL2スリップ判定部51Aで設定した、始動時CL2スリップ判定がONか否かを判定する。始動時CL2スリップ判定がONの場合にはステップS520に移行する。一方、始動時CL2スリップ判定がOFFの場合にはステップS550に移行する。始動時CL2スリップ判定がONの場合の場合には、エンジン始動シーケンス中である。エンジン始動フラグによって判定しても良い。
ステップS520では、ステップS500で求めた目標車速偏差が、予め設定した偏差判定値よりも大きいか否かを判定する。目標車速偏差が偏差判定値よりも大きい場合にはステップS530に移行する。一方、目標車速偏差が偏差判定値以下の場合にはステップS540に移行する。
ステップS530では、増加側目標車速変化率に予め決定されている設定値3を設定する。その後、復帰する。
ステップS540では、増加側目標車速変化率に予め決定されている設定値2を設定する。その後、復帰する。
ステップS550では、増加側目標車速変化率に予め決定されている設定値1を設定する。その後、復帰する。
ここで、設定値1,設定値2,設定値3は、次の大小関係に設定されている。
設定値1 > 設定値2 > 設定値3
また、目標車速設定本体部51Cは、現在の車両状態に基づき目標車速を求める。
その目標車速設定本体部51Cにおける目標車速増加する際の処理を、図10を参照して説明する。
目標車速設定本体部51Cは、先ずステップS600では、加速要求があるか否かを判定する。加速要求がある場合にはステップS610に移行する。加速要求がない場合にはステップS620に移行する。
ここで、ステアリングスイッチには、上述のように加速要求指示子である加速SWが存在し、加速した場合には運転者が上記加速SWを操作することで設定車速が大きくなる。この加速SWが操作されることで増大した設定車速と、目標車速とが比較されて、設定車速が目標車速よりも大きい場合には加速要求があると判定する。
ステップS610では、下記式に基づき、目標車速ベース値を増大する。その後ステップS630に移行する。
目標車速ベース値 =目標車速ベース値(前回値) + 目標車速変化率
ステップS620では、今回の目標車速ベース値として前回値を設定し、ステップS630に移行する。
ステップS630では、目標車速の増加側のレートリミット処理を行う。ステップS630では、まず、下記式によって、今回の目標車速を算出する。
目標車速 =目標車速(前回値) +増加側目標車速変化率
次に、算出した目標車速と、上記目標車速ベース値との低い方を目標車速とする。
また、ステップS640では、目標車速の減少側のレートリミット処理を行う。ステップS640では、まず、下記式によって、今回の目標車速を算出する。
目標車速 =目標車速(前回値) − 減少側目標車速変化率
減少側目標車速変化率は予め設定した正の値である。
次に、算出した目標車速と、上記目標車速ベース値との高い方を目標車速とする。その後、復帰する。
また、車速サーボ部53は、車速サーボ処理(車速フィードバック制御処理)を実施して、車速サーボ要求トルクを求める。
その車速サーボ部53の処理を、図11を参照して説明する。
車速サーボ部53は、まずステップS700では、下記式のように、目標車速設定本体部51Cで算出した目標車速から実車速を減算することで、車速サーボ用の目標車速偏差を求める。
目標車速偏差 =目標車速 −実車速
次に、ステップS710では、車速変化量から実加速度算出する。この情報は加速算出部52から入力する。
次に、ステップS720では、目標車速偏差と実加速度から、目標車速偏差をゼロ若しくは小さくするための加速度指令値を演算する。
次に、ステップS730では、加速度指令値からその加速度指令値を実現するための要求駆動力を算出する。
次に、ステップS740では、求めた要求駆動力に基づく要求トルクを算出する。この要求トルクをクルーズ要求トルクとする。
また選択部54では、車速サーボ部53で求めたクルーズ要求トルクと、車間制御コントローラ31からのACC要求トルクとから、最終的な自動制御要求トルクを決定する。
第1目標駆動トルク演算部21Dcは、ドライバ要求トルク演算部21Daが演算したドライバ要求トルクと、自動制御要求トルク演算部21Dbが演算した自動制御要求トルクのセレクトハイを実施して、大きい方を第1目標駆動トルクとして選択して出力する。
車速リミッタトルク演算部21Ddは、ステアリングスイッチ28によって設定される設定車速及び現在の車速に基づき、上限の車速以下とするための車速リミッタトルクを演算する。
最終目標駆動トルク演算部21Deは、第1目標駆動トルク演算部21Dcが出力する第1目標駆動トルクと、車速リミッタトルク演算部21Ddが演算した車速リミッタトルクとのセレクトローを実施する。すなわち、第1目標駆動トルクを車速リミッタトルクで制限して、目標駆動トルクを求める。
車両状態モード決定部21Eは、アクセル開度APO、車速情報(又は変速機出力回転数)、モータ出力可能トルク、要求エンジントルク、及び目標駆動トルクに基づき、車両状態モード領域マップ(EV−HEV遷移マップ)などを参照して、目標とする目標車両状態モード(EVモード、HEVモード)を決定する。たとえば、車両制駆動制御のための目標駆動トルクに、エンジン1の始動に必要なクランキングトルクを加えたトルクが、モータ2が出力可能なトルクを下回ると、HEVモードからEVモードに運転モードが遷移する。また、バッテリ充電要求等のシステム要求による要求エンジントルクがある場合には、目標とする目標車両状態モードをHEVモードとする。そして、現在の車両状態モードがEVモードであり、目標車両状態モードがHEVモードである場合には、エンジン始動シーケンスの処理を行う。また、現在の車両状態モードがHEVモードであり、目標車両状態モードがEVモードである場合には、エンジン停止シーケンスの処理を行う。
ここで、車両状態モードとしては、図12に示すように、HEVモード、EVモード、遷移時のモードである、エンジン停止シーケンス及びエンジン始動シーケンスのモードを備える。HEVモードは、少なくともエンジン1を駆動源として走行する車両状態モードである。エンジン停止シーケンスのモードは、HEVモードからEVモードに移行する際の遷移時の車両状態モードである。エンジン始動シーケンスのモードは、EVモードからHEVモードに移行する際の遷移時の車両状態モードである。そして、現在の車両状態モードと目標車両状態モードとが同じ場合には、前回の状態モードを保持する。例えば、現在の車両状態モードがEVモードで目標車両状態モードもEVモードの場合には、車両状態モードをEVモードとする。現在の車両状態モードがHEVモードで目標車両状態モードもHEVモードの場合には、車両状態モードをHEVモードとする。一方、現在の車両状態モードがEVモードで、目標車両状態モードがHEVモードの場合、若しくは現在の車両状態モードがHEVモードで、目標車両状態モードがEVモードの場合、遷移モードとして、エンジン1の停止若しくは始動の処理が完了するまでは、エンジン停止シーケンスのモード若しくはエンジン始動シーケンスのモードとなる。
本実施形態における車両状態モード決定部21Eは、図13に示すように、エンジン始動停止判定処理部21Ea及びモード遷移処理部21Ebを備える。
エンジン始動停止判定処理部21Eaの処理について、図14のフローチャートを参照して説明する。
まずステップS10では、目標駆動トルク(クルーズ要求トルク)が、予め設定したエンジン始動判定値以上か否かを判定する。エンジン始動判定値以上の場合にはステップS30に移行する。エンジン始動判定値未満の場合にはステップS20に移行する。
ステップS20では、目標駆動トルク(クルーズ要求トルク)が、予め設定したエンジン停止判定値未満か否かを判定する。エンジン停止判定値未満の場合にはステップS40に移行する。エンジン停止判定値以上の場合にはステップS50に移行する。
ここで、エンジン停止判定値は、図14に示すように、エンジン始動判定値よりも小さい値とする。
ステップS30では、トルク要求エンジン始動要求を「ON」に設定してステップS100に移行する。
ステップS40では、トルク要求エンジン始動要求を「OFF」に設定してステップS100に移行する。
ステップS50では、トルク要求エンジン始動要求として前回値を保持して、ステップS100に移行する。
ステップS100では、オートクルーズの制御中か否かを判定する。クルーズ制御中の場合にはステップS110に移行する。クルーズ制御中でない場合にはステップS140に移行する。
ステップS110では、クルーズ要求トルク(目標駆動トルク)が、予め設定した始動判定トルク以上か否かを判定する。始動判定トルク以上の場合には、ステップS120に移行する。クルーズ要求トルク(目標駆動トルク)が、始動判定トルク未満の場合にはステップS130に移行する。
ステップS120では、クルーズエンジン始動要求をONにしてステップS200に移行する。
ステップS130では、クルーズエンジン始動要求をOFFにしてステップS200に移行する。
ステップS140では、クルーズエンジン始動要求をOFFにしてステップS200に移行する。
ステップS200では、下記条件のいずれを満足する場合には、ステップS210に移行する。一方、条件を満足しない場合には、ステップS220に移行する。
(1)アクセル開度APOによる始動要求を満足する
(2)システムによる始動要求を満足するか否かを判定する。
(3)クルーズエンジン始動要求がON
アクセル開度APOによる始動要求は、現在のアクセル開度APOが予め設定した始動アクセル開度以上の場合に満足する。始動アクセル開度APOは、車速に応じて変更されても良い。
また、システムによる始動要求とは、SOC低下、水温低下、EV禁止車速などのシステム等によるエンジン1の駆動が必要なシステム状況の場合に他のエンジン始動要求を満足する。
クルーズエンジン始動要求がONとは、クルーズエンジン始動要求がONの場合である。
ステップS210では、エンジン始動要求をONにしてステップS250に移行する。その後、復帰する。
ステップS220では、エンジン始動要求をOFFにしてステップS250に移行する。その後、復帰する。
また、モード遷移処理部21Ebでは、エンジン始動停止判定処理部21Eaが求めたエンジン始動要求に応じてモード遷移処理を行う。すなわち、エンジン始動要求がONの場合には、現在の車両状態モードがHEVモードでなければ、エンジン始動フラグをONにして、エンジン始動制御部21Fを作動する処理を実行する。また、エンジン始動要求がOFFの場合には、EVモードで無ければエンジン停止フラグをONにして、エンジン停止制御部21Gを作動する処理を実行する。
目標エンジントルク算出部21Hは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、車速などの走行状態情報、目標駆動トルク、発電のために要求される要求エンジントルクに基づき、目標エンジントルクを算出する。なお、目標車両状態モードがEVモードである場合には、エンジントルクは不要であるので、目標エンジントルクは、ゼロ若しくは負値となっている。また、予め設定したF/C条件を満足している場合には、エンジンに対して燃料カット(F/C)を指示し、エンジンは空回りしている状態になっている。
目標モータトルク算出部21Jは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、車速などの走行状態情報、目標駆動トルク、要求発電トルクに基づき、目標モータトルクを算出する。例えば、目標駆動トルクから、目標エンジントルクに遅れ補正を施したトルク値分を減算した値を目標モータトルクとする。なお、他の制御部から回生ブレーキ要求トルク(<0)の入力がある場合には、目標モータトルクに対しその回生ブレーキ要求トルク分を足した値を最終的な目標モータトルクとする。
エンジン始動制御部21Fは、エンジン始動フラグがONの場合に作動して、モータ走行中にエンジン1を始動する処理を実施してHEVモードへの移行処理を行う。
次に、エンジン始動制御部21Fの処理例について説明する。
エンジン始動制御部21Fは、モータ走行中にエンジン始動指令(エンジン始動フラグがON)を取得すると起動する。
まず第2クラッチ5を目標クラッチ伝達トルクで滑り締結するための目標第2クラッチトルク指令を、ATコントローラ24に出力する。上記目標第2クラッチ伝達トルク指令TCL2は、エンジン始動処理前の出力トルク相当のトルクを伝達可能な伝達トルク指令であって、モータ2が出力する駆動トルクを増大したとしても出力軸トルクに影響を与えない範囲とする。ここで、ATコントローラ24は、指令に応じたクラッチ油圧が発生するように第2クラッチ油圧ユニットを制御する。このとき、第2クラッチ5は滑り締結状態となる。
次に、モータコントローラ23に、モータ2を回転数制御する指令を出力する。なお、モータ2の実トルクはモータ2に作用する負荷によって決定される。続いて、ATコントローラ24に対して、第1クラッチ4のトルク伝達トルクがエンジンクランキング用のトルクとなるトルク指令を出力する。これによって第1クラッチ4は滑り締結状態となる。
続いて、エンジン回転数とモータ回転数とが同期したことを検知したら、クランキング処理の終了として第1クラッチ4を完全締結とするロックアップ指令を出力する。第1クラッチ4の同期判定は、実モータ回転と実エンジン回転の差回転が規定値以下の状態が規定時間経過したときに同期したと判定する。規定値は第1クラッチトルク制御中から完全締結移行時の応答無駄時間相当の差回転を設定する。さらに、エンジン回転数が始動可能回転数以上になったことを検知したら、エンジンコントローラ22に対してエンジン始動指令を出力する。更に、第2クラッチ5を完全締結とするロックアップ指令を出力する。そしてエンジン始動フラグをOFFにして復帰する。
エンジン停止制御部21Gは、エンジン停止指令(エンジン停止フラグがON)を取得すると起動し、HEVモードからEVモードへの移行処理を行う。
例えば、エンジン停止制御部21Gは、エンジン停止指令(エンジン停止フラグがON)を取得すると起動して、まず、ATコントローラ24に対して、第1クラッチ4を滑り締結する予め設定したトルク指令を出力する。同期をとって、モータコントローラ23に、モータ2を回転数制御する指令を出力する。これによって、第1クラッチ4によるエンジン1からのトルクを減少しつつ、モータトルクを増大して、目標駆動トルクを得る。目標モータトルクが目標駆動トルクとなったら、第1クラッチ4を目標クラッチ伝達トルク=0にするための目標第1クラッチ4トルク指令を、ATコントローラ24に出力する。その後、エンジン停止フラグをONにし、またエンジンコントローラ22に対して目標エンジントルクにゼロを設定して出力する。これによって、エンジンは燃料カット(F/C)され、エンジンは空回りしている状態となる。
目標クラッチトルク算出部21Kは、車両状態モード決定部21Eが決定した目標車両状態モード、エンジン1及びモータ2の発生トルクに基づき、第1クラッチ4及び第2クラッチ5の目標各クラッチトルクを算出する。なお、EVモード状態の場合には、通常、ATコントローラ24に対し、第1クラッチ4の開放指令を出力すると共に第2クラッチ5の締結指令を出力することで、第1クラッチ4を開放状態とすると共に、第2クラッチ5を締結状態とする。また、HEVモード状態の場合には、通常、ATコントローラ24に対し、第1クラッチ4の締結指令を出力すると共に第2クラッチ5の締結指令を出力することで、第1クラッチ4を締結状態とすると共に第2クラッチ5を締結状態とする。また、エンジン始動若しくは停止処理の場合には、上述の締結開放状態となるクラッチトルクを算出する。
なお、図3におけるVAPO演算21Lは、クルーズ要求トルクから逆算して対応する推定アクセル開度を演算して、演算した推定アクセル開度を変速用アクセル開度としてATコントローラ24に出力する。
(作用)
自動走行であるオートクルーズ走行の制御中でない場合には、アクセル開度APOに基づくドライバ要求トルクを目標駆動トルクとして、駆動源であるエンジン1及びモータ2の少なくとも一方の出力が制御される。そして、例えば、アクセルが踏み込まれて車両が所定車速以上となるなど、エンジン始動条件を満足すると、エンジン1が始動されて、HEVモードでの走行状態となり、また、例えばアクセルが踏み戻されて、エンジン停止条件を満足すると、エンジン1が停止されてEVモードに移行する。
一方、ステアリングスイッチ28が操作されて、オートクルーズ走行の制御が起動されると、運転者によって設定された設定車速とするための自動制御要求トルクが目標駆動トルクとして算出され、その目標駆動トルクとなるように、駆動源であるエンジン1及びモータ2の少なくとも一方の出力が制御される。この場合、運転者が一時的な加速要求を実施しない場合には、アクセルペダル33はOFFの状態となっている。一時的に加速したい場合にだけ、運転者はアクセルペダル33を踏み込むことで、車両は一時的に加速される。またステアリングスイッチ28の加速SW及びコーストSWの操作によって設定車速の増減が行われる。
ここで、自動走行状態であるオートクルーズでの走行中を想定する。
この場合には、目標駆動トルク(自動制御要求トルク)がエンジン始動判定値以上となるとHEVモードに移行し、逆に目標駆動トルク(自動制御要求トルク)がエンジン停止判定値未満となるとEVモードに移行する。このとき、図15に示すように、エンジン停止判定値よりもエンジン始動判定値を大きくすることで、不感帯を設けてハンチングし難くする。
例えば、図16に示すように、自動制御要求トルク(クルーズ要求トルク)がエンジン始動判定値以上となることで、エンジン始動要求はONとなってエンジン始動モードとなり、続いて自動制御要求トルク(クルーズ要求トルク)がエンジン停止判定値未満となることで、エンジン始動要求がOFFとなってエンジンの停止処理が行われる。
ここで、EVモード状態で且つ設定車速となるように定速クルーズ走行となっている場合に、図17に示すように、運転者のステアリングスイッチの操作によって加速指示がなされたとする。この加速指示によって設定車速が上昇し、上昇した設定車速に向けて所定の車速変化率で目標車速が上昇する。目標車速の上昇によってクルーズ要求トルク(目標駆動トルク)が上昇することでエンジン始動要求がONとなると、HEVモードに移行するためのエンジン始動シーケンスが実施される。
エンジン始動シーケンスでは、第2クラッチ5を一旦滑り締結状態にすると共に第1クラッチ4も滑り締結にしてモータ2の出力の一部でエンジン1を始動する処理を行う。そして、エンジン1の始動が完了すると、第1クラッチ4をロックアップクラッチして第1クラッチ4を完全締結する。さらに第2クラッチ5のエンジン始動のための滑り締結状態を終了、例えば第2クラッチ5を完全締結状態としてエンジン始動シーケンスを完了する。
このときエンジン始動のため上記のように第2クラッチ5が滑り締結状態となると、駆動輪7に伝達される駆動力(実駆動トルク)が抑制される。このため、上昇する目標車速に対し、実車速が追従せずに上昇しない。このとき、目標車速と実車速との車速偏差が生じることで、加速度指令値及びクルーズ要求トルクが増加するが、それに応じた量だけ実車速は上昇しない。
エンジン始動シーケンスが進んで、第2クラッチ5が滑り締結からロックアップ状態となって完全締結に移行すると、駆動輪7への伝達トルクが増加して、実車速が上記第2クラッチ5が滑り締結状態の状態よりも大きな増加率で上昇し始める。
この際、第2クラッチ5の滑り締結中に車速のサーボ制御により加速度指令値は必要以上に増加してしまっている為、実駆動トルクが出始めた段階で目標車速を超過してしまう程の加速をしてしまう。
そして、目標車速に対する実車速超過分を車速サーボでフィードバックされることで、 目標車速と実車速が安定するまで加速度指令値、クルーズ要求トルクがふらつき、それに伴い実加速度もふらついてしまう、という現象が発生する。
次に、上記現象に対して本実施形態を採用した場合の作用を説明する。
エンジン始動のために第2クラッチ5が滑り締結中に、目標車速と実車速の偏差が予め設定した閾値以上となった場合には、目標車速の増加率を抑える。つまり目標加速度を切り替えて、実車速が追従できるまで待つ。
すなわち、エンジン始動のために第2クラッチ5が滑り締結中は、実車速に対する目標車速の偏差が予め設定した閾値以内に抑えることで、車速サーボでも必要以上の過大な加速度指令を行わずに抑えられる。そして、始動フェーズが進み、第2クラッチ5のロックアップにより伝達トルクが増加したとき、実車速が上昇し始めても、適切な加速度指令値によって、実加速度の変動が小さく抑えられ、目標車速に対する実車速のオーバーシュートを小さく抑える事が出来る。
ここで、比較のために、エンジン始動のために第2クラッチ5が滑り締結時に、車速サーボゲインを通常時に比べ小さく設定し、第2クラッチ5の完全締結後に車速サーボゲインを通常値に切り替える方式を取った場合の問題点を示す。図19が、その場合のタイムチャート例を図19に示す。
図19のように、第2クラッチ5の完全締結指令時点では、目標車速と実車速に偏差が生じている。このため、車速サーボゲイン切替時、加速度指令値が急変し、 実加速度が過大となり、目標車速を実車速がオーバーシュートしてしまう。
また、この問題を回避するために、車速サーボゲイン切替を徐々に行った場合、第2クラッチ5の完全締結後の車速応答性が鈍くなる問題が生じてしまう。
また図20に、本実施形態を適用した場合であって、エンジン始動シーケンスの処理の途中で、第2クラッチ5を滑り締結状態から完全締結状態に移行した場合のタイムチャート例を示す。
この図20のように、途中で第2クラッチ5をロックアップ状態に移行させても、つまり、エンジン始動シーケンス中に、第2クラッチ5をロックアップ状態として伝達トルクが増加、実車速が上昇し始めた場合でも、適切な加速度指令値により実加速度が所定内に抑えられ、目標車速に対する実車速のオーバーシュートが生じない。また、第2クラッチ5の滑り締結中に一律車速サーボゲインを通常時に比べて小さな値を設定する方式と比べても、要求加速度に対する応答性を向上することができる。
ここで、車両状態モード決定部21E、目標エンジントルク算出部21H、目標モータトルク算出部21J、目標クラッチトルク算出部21K、エンジン始動制御部21F、エンジン停止制御部21Gは、駆動制御部を構成する。
(本実施形態の効果)
(1)自動制御要求トルク演算部は、実車速を目標車速に調整するための自動制御要求トルクを算出する。駆動制御部は、上記自動制御要求トルクに基づき上記駆動源の出力を制御する。エンジン始動制御部は、エンジン始動条件を満足したと判定すると、第2クラッチを滑り締結状態にして、エンジン始動のための駆動力をモータからエンジンに出力する。
そして、第2クラッチが上記滑り締結状態と判定すると、目標車速が実車速よりも大きい場合、当該目標車速と実車速と偏差速度に応じて目標車速の増加率を変更し、上記偏差速度が大きい場合、当該偏差速度が小さい場合に比べて、上記増加率を小さく抑える。
これによって、上記クラッチの滑り締結中における目標車速と実車速の車速偏差の蓄積を低減することで、上記クラッチの滑り締結終了後における加速度急変を抑制する。この結果、運転者に与える違和感を抑えることが可能となる。
1 エンジン
2 モータ
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
7 駆動輪
9 バッテリ
21 統合コントローラ
21A 要求発電トルク演算部
21B 要求エンジントルク演算部
21C モータ出力可能トルク演算部
21D 目標駆動トルク演算部
21Da ドライバ要求トルク演算部
21Db 自動制御要求トルク演算部
21Dc 第1目標駆動トルク演算部
21Dd 車速リミッタトルク演算部
21De 最終目標駆動トルク演算部
21E 車両状態モード決定部
21Ea エンジン始動停止判定処理部
21Eb モード遷移処理部
21F エンジン始動制御部
21G エンジン停止制御部
21H 目標エンジントルク算出部
21J 目標モータトルク算出部
21K 目標クラッチトルク算出部
50 入力処理許可判定部
51 目標車速設定部
51A スリップ判定部
51B 増加側目標車速変化率算出部
51C 目標車速設定本体部
52 加速算出部
53 車速サーボ部
54 選択部

Claims (1)

  1. 駆動源としてエンジン及びモータを備え、エンジンから駆動輪へのトルク伝達経路の途中にモータが介装すると共に、上記トルク伝達経路における、モータと駆動輪との間にクラッチを介装するハイブリッド車両の走行を制御する車両用走行制御装置であって、
    実車速を目標車速に調整するための自動制御要求トルクを算出する自動制御要求トルク演算部と、
    上記自動制御要求トルクに基づき上記駆動源の出力を制御する駆動制御部と、
    エンジン始動条件を満足したと判定すると、上記クラッチを滑り締結状態にして、エンジン始動のための駆動力をモータからエンジンに出力するエンジン始動制御部と、を備え、
    上記自動制御要求トルク演算部は、上記クラッチが上記滑り締結状態と判定すると、上記目標車速が実車速よりも大きい場合、上記目標車速の増加率を、上記目標車速と実車速との偏差速度が予め設定した偏差判定値以下の場合には上記クラッチが締結状態のときの増加率よりも小さい第1の増加率とし、上記偏差速度が上記偏差判定値よりも大きい場合には上記第1の増加率よりも小さい第2の増加率とする目標車速設定部を備えることを特徴とする車両用走行制御装置。
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