まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたパラレルハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、駆動系および制御系の構成を説明する。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機CVTと、ファイナルギヤFGと、左駆動輪LTと、右駆動輪RTと、を備えている。
実施例1のハイブリッド駆動系は、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロール発進モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、モータアシスト走行モード・走行発電モード・エンジン走行モードの何れかにより走行するモードである。前記「WSCモード」は、「HEVモード」からのP、N→Dセレクト発進時、または、「EVモード」や「HEVモード」からのDレンジ発進時等において、モータ/ジェネレータMGを回転数制御することで第2クラッチCL2のスリップ締結状態を維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態やドライバー操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start Clutch」の略である。
前記エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとの間の位置に介装される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて常時締結(ノーマルクローズ)の乾式クラッチが用いられ、エンジンEng〜モータ/ジェネレータMG間の締結/半締結(スリップ締結)/開放を行なう。この第1クラッチCL1が完全締結状態ならモータトルク+エンジントルクが第2クラッチCL2へと伝達され、開放状態ならモータトルクのみが、第2クラッチCL2へと伝達される。なお、半締結/開放の制御は、油圧アクチュエータに対するストローク制御にて行われる。
前記モータ/ジェネレータMGは、交流同期モータ構造であり、発進時や走行時に駆動トルク制御や回転数制御を行うと共に、制動時や減速時に回生ブレーキ制御による車両運動エネルギーのバッテリー9への回収を行なうものである。
前記第2クラッチCL2は、ノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキであり、クラッチ油圧(押付力)に応じて伝達トルク(クラッチトルク容量)が発生する。この第2クラッチCL2は、自動変速機CVTおよびファイナルギヤFGを介し、エンジンEngおよびモータ/ジェネレータMG(第1クラッチCL1が締結されている場合)から出力されたトルクを左右駆動輪LT、RTへと伝達する。
なお、第2クラッチCL2としては、図1に示すように、独立のクラッチをモータ/ジェネレータMGと自動変速機CVTの間の位置に設定する以外に、自動変速機CVTと左右駆動輪LT、RTの間の位置に設定しても良い。
前記自動変速機CVTは、変速比を無段階に設定しつつそれらを連続的に変えることのできる機であり、本実施例1では2対のプーリーとその間に架け渡したベルトとから構成される(ベルト型CVT)。自動変速機CVTは、一方の対を為すプーリーの間隔を変化させて各プーリーに対するベルトの接触円を変化させるとともに、それに連携させて他方の対を為すプーリーの間隔も変化させて各プーリーに対するベルトの接触円を変化させることにより、連続的に変速する。なお、自動変速機としては、上記した自動変速機CVT以外に、トロイダル型CVTであってもよく、複数の遊星歯車から構成され有段階の変速段を得る機である自動変速機ATであっても良い。
実施例1のパラレルハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、第2クラッチ入力回転数センサ6(=モータ回転数センサ)と、第2クラッチ出力回転数センサ7と、インバータ8と、バッテリー9と、アクセルセンサ(アクセルポジションセンサ)10と、エンジン回転数センサ11と、油温センサ(CVT油温センサ)12と、ストロークセンサ(ストローク位置センサ)13と、統合コントローラ14と、変速機コントローラ15と、クラッチコントローラ16と、エンジンコントローラ17と、モータコントローラ18と、バッテリーコントローラ19と、ブレーキセンサ20と、車速センサ21と、オートクルーズ操作SW22と、ライン圧センサ23と、を備えている。
前記インバータ8は、直流/交流の変換を行い、モータ/ジェネレータMGの駆動電流を生成する高電圧インバータである。バッテリー9は、モータ/ジェネレータMGからの回生エネルギーを、インバータ8を介して蓄積する高電圧バッテリーである。
前記統合コントローラ14は、バッテリー状態、アクセル開度、および車速(変速機出力回転数に同期した値)から目標駆動トルクを演算する。そして、その結果に基づき各アクチュエータ(モータ/ジェネレータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、自動変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ15、16、17、18、19へと送信する。ここで、統合コントローラ14は、「HEVモード」である場合、演算した目標駆動トルクをエンジンEngとモータ/ジェネレータMGとに適宜分配し(駆動配分手段)、それに応じて演算した指令値を各アクチュエータに送信する。
前記変速機コントローラ15は、統合コントローラ14からの変速指令を達成するように変速制御を行なう。
前記クラッチコントローラ16は、第2クラッチ入力回転数センサ6と第2クラッチ出力回転数センサ7と油温センサ12とストロークセンサ13とからのセンサ情報を入力すると共に、統合コントローラ14からの第1クラッチ油圧指令値と第2クラッチ油圧指令値に対して、クラッチ油圧(電流)指令値を実現するようにソレノイドバルブ(油圧コントロールバルブ)の電流を制御する(クラッチ制御手段)。このソレノイドバルブは、クラッチコントローラ16による制御下でモータ/ジェネレータMG軸上に取り付けられたオイルポンプによる発生した油圧(ライン圧)を調圧し、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2を締結/半締結(スリップ締結)/開放する。このライン圧の検出のためにライン圧センサ23が設けられている。このクラッチコントローラ16は、第2クラッチCL2の回転数差を所定のものとする(差回転有りの状態とする)ように油圧制御して、第2クラッチCL2をスリップ締結とする。
前記エンジンコントローラ17は、エンジン回転数センサ11からのセンサ情報を入力すると共に、統合コントローラ14からのエンジントルク指令値を達成するようにエンジントルク制御を行なう。
前記モータコントローラ18は、統合コントローラ14からのモータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するようにモータ/ジェネレータMGの制御を行なう。
前記バッテリーコントローラ19は、バッテリー9の充電状態(SOC)を管理し、その情報を統合コントローラ14へと送信する。
また、統合コントローラ14は、定速走行制御いわゆるオートクルーズ制御(ASCD)を行うことが可能とされている。この定速走行制御とは、実車速が運転者の意思により設定された目標車速となるように制御するものである。定速走行制御では、後述するように、車速フィードバック制御を行うことにより、実車速が設定された目標車速となるための目標駆動トルクを算出し、その結果に基づき各アクチュエータ(モータ/ジェネレータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、自動変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ15、16、17、18、19へと送信する。統合コントローラ14は、常時においては、上述したように、バッテリー状態、アクセル開度、および車速(変速機出力回転数に同期した値)から演算した目標駆動トルクに基づく制御すなわちドライバー操作に基づく走行制御を行っており、定速走行の要求を受けた場合、定速走行制御に切り換える。また、統合コントローラ14は、定速走行制御時において、定速走行の要求が解除されると、ドライバー操作に基づく制御に切り換える。
統合コントローラ14は、本実施例1では、オートクルーズ操作SW22のON/OFF状態を検知可能であり、ON状態であることを検知すると、定速走行の要求が為されているものと判断する。また、統合コントローラ14は、本実施例1では、オートクルーズ操作SW22がOFF状態とされたことを検知した場合、アクセルペダルが踏み込まれた場合、ブレーキペダルが踏み込まれた場合、およびシフトポジションセンサによりシフトレバーが「D」から切り換えられた場合等に、定速走行の要求が解除されたものと判断する。このように解除されたものと判断すると、オートクルーズ操作SW22をOFF状態とする。
図2は、統合コントローラ14にて実行される走行制御処理内容を示すフローチャートである。図3は、統合コントローラ14における車速フィードバック制御を行うことによる目標駆動トルクの演算処理を示す制御ブロック図である。以下、図2のフローチャートの各ステップについて図3を用いて説明する。なお、図2のフローチャートは、「EVモード」で開始される。
ステップS1では、定速走行の要求が為されているか否かを判断し、Yesの場合はステップS2へ進み、Noの場合はステップS5へ進む。すなわち、オートクルーズ操作SW22がOFF→ONとされたこと、もしくはON状態であることを検知することにより、統合コントローラ14が定速走行の要求が為されていることを認識し、その認識に合わせて定速走行制御とドライバー操作に基づく制御との切り換えを行う(走行制御切換部)。
ステップS2では、ステップS1での定速走行の要求が為されているとの判断に続き、定速走行制御における目標車速を設定して、ステップS3へ進む。この実施例1では、車両が実際に走行している速度を検出する車速センサ21(図1参照)から取得した、定速走行の要求が為された時点での車速の実測値を、目標車速に設定する。すなわち、定速走行の要求が為された時点での車速を維持するように、定速走行制御を行うこととなる。なお、この目標車速は、オートクルーズ操作SW22もしくはその他の操作手段等により変更可能とされている。また、ステップS2では、ステップS14からステップS1へと戻ったときであって、何らの変更指令が出されていないときは、再度目標車速を設定する必要はない。
ステップS3では、ステップS2での目標車速の設定に続き、車速F/Bゲイン設定部30により設定された車速フィードバック制御のためのゲイン(図4のフローチャート参照)を読み込み、ステップS4へ進む。この車速F/Bゲイン設定部30でのゲインの設定については後述する。
ステップS4では、ステップS3でのゲインの読み込みに続き、目標駆動トルクを算出して、ステップS6へ進む。このステップS4では、図3に示すように、目標駆動トルク演算部31において、実車速が目標車速となるように、実車速と目標車速との偏差に基づく車速フィードバック制御により、目標駆動トルクを算出する。このとき、目標駆動トルク演算部31では、ステップS3で読み込んだ車速F/Bゲイン設定部30により設定されたゲインを用いて、目標駆動トルクを算出する。このように、統合コントローラ14は、実車速と目標車速等に基づいて車速フィードバック制御を行うことにより、より精度の良い定速走行制御のために、目標車速への追従性を向上させた目標駆動トルクを演算する。
ステップS5では、ステップS1での定速走行の要求が為されていないとの判断に続き、ドライバー操作に基づいて目標駆動トルク(ドライバー要求駆動トルク)を演算して(要求駆動トルク算出部)、ステップS6へ進む。この目標駆動トルクは、上述したように、バッテリー状態、アクセル開度、および車速(変速機出力回転数に同期した値)等から演算する。
ステップS6では、「HEVモード」であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS15へ進み、Noの場合はステップS7へ進む。すなわち、ステップS6では、エンジンEngが始動している(自立状態である)か否かを判断する。
ステップS7では、ステップS6での「HEVモード」ではない(「EVモード」である)との判断に続き、エンジン始動の要求が為されているか否かを判断し、Yesの場合はステップS8へ進み、Noの場合はステップS14へ進む。このエンジン始動の要求とは、バッテリー9の充電状態(SOC)が所定値よりも低くなったことを検知する等によりバッテリー9を充電する必要が生じたと判断した場合や、ステップS4で演算した目標駆動トルクがEV可能駆動トルクを超えているまたはステップS5で演算した目標駆動トルクが始動判定閾値を超えている等によりエンジンEngから出力されるエンジントルクが必要であると判断した場合等をいう。このEV可能駆動トルクとは、車速に対する走行駆動トルクの関係で見て、モータ/ジェネレータMGが出力するトルクのみで走行することのできる状況を示すものであり、各車速において「EVモード」を継続することのできる走行駆動トルクを示すものである。また、始動判定閾値は、バッテリー9の出力を考慮したモータ出力可能トルクから、エンジンEngのクランキングに必要なトルクを減算したものである。
ステップS8では、ステップS7でのエンジン始動の要求が為されているとの判断に続き、エンジン始動の要求が為された時点から所定の時間が経過したか否かを判断し、Yesの場合はステップS10へ進み、Noの場合はステップS9へ進む。
ステップS9では、ステップS8での所定の時間が経過していないとの判断に続き、第2クラッチCL2をスリップ締結して、ステップS14へ進む。このステップS9では、第2クラッチCL2における入力回転数(モータ/ジェネレータMG側)と出力回転数(自動変速機CVT側)との差を所定の値に保つように(以下、差回転有りの状態という)、第2クラッチCL2の伝達容量を制御している(第2クラッチスリップ締結制御)。詳細には、第2クラッチ入力回転数センサ6および第2クラッチ出力回転数センサ7から得られた両回転数の差が所定の回転数差よりも大きくなるとクラッチ油圧(押付力)を大きくし、両回転数の差が所定の回転数差よりも小さくなるとクラッチ油圧(押付力)を小さくするように、クラッチコントローラ16からの指令値(指令油圧)を制御する(第2クラッチ制御部)。このため、ステップS8の所定の時間は、ステップS7→ステップS8→ステップS9を行う(繰り返す)ことにより、締結状態の第2クラッチCL2がスリップ締結状態へと切り換わるまでに、十分な時間が経過したことを示す閾値として設定されている。このステップS9では、車両の駆動力を確保しつつエンジンEngの始動に伴うエンジン回転変動の駆動系への伝達を減少させるように、第2クラッチCL2の伝達容量を制御している。
ステップS10では、ステップS8での所定の時間が経過したとの判断に続き、第1クラッチCL1をスリップ締結(半締結)して、ステップS11へ進む。このステップS10では、油圧アクチュエータに対するストローク制御(第1クラッチスリップ締結制御)を行うべくクラッチコントローラ16からの指令値(指令油圧)を制御する(第1クラッチ制御部)。
ステップS11では、ステップS10での第1クラッチCL1をスリップ締結とすることに続き、エンジンEngが始動したか否かを判断し、Yesの場合はステップS13へ進み、Noの場合はステップS12へ進む。このエンジンEngの始動の判断は、エンジン始動制御(ステップS12)から所定の時間が経過したことを判断することで行うことができる。また、エンジンEngの始動の判断は、回転数の変動やトルクの変動を検出して判断することや、エンジンEngからの排気中の酸素濃度を検出して判断することにより行ってもよい。
ステップS12では、ステップS11でのエンジンEngが始動していないとの判断に続き、エンジン始動制御を行い、ステップS14へ進む。このエンジン始動制御では、ステップS10での第1クラッチCL1の半締結により立ち上げたエンジンEngのクランキング回転数を一定の回転数に保つクランキング動作とするとともに、一定の吸入空気量を保つ吸入空気制御と一定の燃料噴射量を保つ燃料噴射制御と点火プラグによる点火時期の制御とを行う(エンジン始動制御手段)。このステップS12でエンジンEngが始動することにより、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行する「EVモード」から、モータ/ジェネレータMGの動力とエンジンEngの動力とにより走行する「HEVモード」への切り換えが完了する。
ステップS13では、ステップS11でのエンジンEngが始動したとの判断に続き、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2を締結して、ステップS14へ進む。このとき、モータ/ジェネレータMGの回転数がエンジンEngの回転数に一致するようにモータ/ジェネレータMGを駆動制御し、モータ/ジェネレータMGとエンジンEngとの回転数が一致したら第1クラッチCL1および第2クラッチCL2を締結する。
ステップS14では、ステップS7での「EVモード」でエンジン始動の要求が為されていないとの判断、あるいは、ステップS9での第2クラッチCL2のスリップ締結、あるいは、ステップS12でのエンジン始動制御、あるいは、ステップS13での第1クラッチCL1および第2クラッチCL2の締結、あるいは、ステップS15での「HEVモード」でエンジン停止の要求が為されていないとの判断、あるいは、ステップS17での第2クラッチCL2のスリップ締結、あるいは、ステップS19での第2クラッチCL2の締結に続き、ステップS4で演算した目標駆動トルクあるいはステップS5で演算した目標駆動トルクを、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとに適宜分配し、その分配した各トルクに応じた指令値を演算し、その指令値を各アクチュエータに送信して、ステップS1へ戻る(駆動力配分演算部)。このステップS14では、「EVモード」であるとき(ステップS7、ステップS9、ステップS12あるいはステップS19から進んだ流れである場合)は、すべての目標駆動トルクをモータ/ジェネレータMGに負担させ(エンジンEngの分配比を0とする)、「HEVモード」である場合(ステップS13、ステップS15あるいはステップS17から進んだ流れである場合)は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとに適宜分配する。
ステップS15では、ステップS6での「HEVモード」であるとの判断に続き、エンジン停止の要求が為されているか否かを判断し、Yesの場合はステップS16へ進み、Noの場合はステップS14へ進む。このエンジン停止の要求とは、ステップS4またはステップS5で演算した目標駆動トルクがEV可能駆動トルク以下である等によりエンジンEngから出力されるエンジントルクが必要ないと判断した場合であって、バッテリー9の充電状態(SOC)が所定値よりも高くなったことを検知する等によりバッテリー9が十分に充電されていると判断した場合等をいう。
ステップS16では、ステップS15でのエンジン停止の要求が為されているとの判断に続き、エンジン停止の要求が為された時点から所定の時間が経過したか否かを判断し、Yesの場合はステップS18へ進み、Noの場合はステップS17へ進む。
ステップS17では、ステップS16での所定の時間が経過していないとの判断に続き、第2クラッチCL2をスリップ締結して、ステップS14へ進む。このステップS17での第2クラッチスリップ締結制御は、ステップS12と同様である。このため、ステップS16の所定の時間は、ステップS15→ステップS16→ステップS17を行う(繰り返す)ことにより、締結状態の第2クラッチCL2がスリップ締結状態へと切り換わるまでに、十分な時間が経過したことを示す閾値として設定されている。このステップS17では、車両の駆動力を確保しつつエンジンEngの停止に伴うエンジン回転変動の駆動系への伝達を減少させるように、第2クラッチCL2の伝達容量を制御している。
ステップS18では、ステップS16での所定の時間が経過したとの判断に続き、エンジン停止制御を行い、ステップS19へ進む。このエンジン停止制御では、第1クラッチCL1を開放して、エンジンEngする(エンジン停止制御手段)。このステップS18により、モータ/ジェネレータMGの動力とエンジンEngの動力とにより走行する「HEVモード」から、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行する「EVモード」への切り換えが完了する。
ステップS19では、ステップS18でのエンジン停止制御に続き、第2クラッチCL2を締結して、ステップS14へ進む。
図4は、統合コントローラ14の車速F/Bゲイン設定部30におけるフィードバック制御のゲインの設定処理内容を示すフローチャートである。図5は、統合コントローラ14の車速F/Bゲイン設定部30におけるフィードバック制御のゲインの設定の演算処理を示す制御ブロック図である。以下、図4のフローチャートの各ステップについて図3および図5を用いて説明する。なお、図4のフローチャートのゲインの設定処理は、図2のフローチャートが実行されている間、統合コントローラ14の車速F/Bゲイン設定部30により常に行われている。
統合コントローラ14の車速F/Bゲイン設定部30(図3参照)による車両フィードバック制御におけるゲインの設定は、第2クラッチCL2および第1クラッチCL1の状態から、駆動系における駆動源から両駆動輪RT、LTへのトルクの伝達経路を判断し、その伝達経路に応じて変化させるものである。これは、駆動系におけるトルク応答性は、モータ/ジェネレータMGの応答性とエンジンEngの応答性と第2クラッチCL2の油圧応答性とのうち、最も遅いものに依存することによる。ここで、第2クラッチCL2の油圧応答性が最も遅く、モータ/ジェネレータMGの応答性が最も早く、エンジンEngの応答性はその中間となる(トルク応答性:油圧応答<エンジン<モータ)。
ステップS30では、第2クラッチCL2の状態と第1クラッチCL1の状態とを読み込み、ステップS31へ進む。第2クラッチCL2の状態は、第2クラッチ入力回転数センサ6から取得した第2クラッチCL2における入力回転数(モータ/ジェネレータMG側)と、第2クラッチ出力回転数センサ7から取得した出力回転数(自動変速機CVT側)との差が所定の値(その近傍を含む)である場合にはスリップ締結状態と判断し、前記回転数差が所定の値以上の場合には締結状態と判断する(第2クラッチ状態判断部)。また、第1クラッチCL1の状態は、ストロークセンサ13からのセンサ情報に基づいて、締結/半締結(スリップ締結)/開放のいずれの状態であるかを判断する(第1クラッチ状態判断部)。ここで、第2クラッチCL2の状態の判断において、開放が含まれていないのは、車速フィードバック制御であることから、第2クラッチCL2が開放である場合、駆動源(モータ/ジェネレータMGおよびエンジンEng)のトルクが両駆動輪RT、LTへと伝達されない状況を考慮する必要がないことによる。
ステップS31では、ステップS30での第2クラッチCL2および第1クラッチCL1の状態の読み込みに続き、第2クラッチCL2がスリップ締結であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS32へ進み、Noの場合(上記したように開放は判断しないことから締結である)はステップS36へ進む。
ステップS32では、ステップS31での第2クラッチCL2がスリップ締結であるとの判断に続き、第1クラッチCL1の状態を判断し、第1クラッチCL1が開放である場合(1)はステップS33へ進み、第1クラッチCL1がスリップ締結である場合(2)はステップS34へ進み、第1クラッチCL1が締結である場合(3)はステップS35へ進む。
ステップS33では、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放であると判断したので、車速F/Bゲイン設定部30がゲインを小さな値に設定する。これは、第2クラッチCL2がスリップ締結であることから、トルク応答性が第2クラッチCL2での油圧応答に依存することによる。このため、ここでいう小さな値とは、第2クラッチCL2での油圧応答に起因して車速フィードバック制御によるハンチングの発生を抑制することができるものをいい、極めて小さい値を含む。場合によっては0を含んでもよい。このステップS33では、図5に示すように、先ず、暫定車速F/Bゲイン設定部34がゲインを暫定小さな値に設定する。次に、暫定車速F/Bゲイン設定部34が暫定小さな値として設定したゲインを、車速F/Bゲイン補正部35が、第2クラッチCL2に供給される油の油温および油流量、油の供給源となるラインにおける油圧(ライン圧)に基づいて補正する。これは、油温が高くなるに連れて油圧応答性が良くなり、油流量が多くなるに連れて油圧応答性が良くなり、ライン圧が高くなるに連れて油圧応答性が良くなることによる(油圧応答性:油温低<油温高、油流量少<油流量多、ライン圧低<ライン圧高)。車速F/Bゲイン補正部35は、油温に対する補正係数を示すマップと、油流量に対する補正係数を示すマップと、ライン圧に対する補正係数を示すマップと、を用いて、暫定車速F/Bゲイン設定部34が設定した暫定小さな値を適宜補正して小さな値を算出する。これにより、車速F/Bゲイン設定部30は、車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値として設定する。なお、この暫定小さな値として設定したゲインの補正は、補正後のゲインである小さな値における最大値であっても、第2クラッチCL2が締結しているときのゲイン(後述する大きな値および中間値)よりも小さくなるように設定されている。
ステップS34では、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1がスリップ締結であると判断したので、ゲインを小さな値に設定する。このゲインの設定は、ステップS33と同様である。
ステップS35では、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結であると判断したので、ゲインを小さな値に設定する。このゲインの設定は、ステップS33と同様である。
ステップS36では、ステップS31での第2クラッチCL2が締結であるとの判断に続き、第1クラッチCL1の状態を判断し、第1クラッチCL1が開放している場合(1)はステップS37へ進み、第1クラッチCL1がスリップ締結である場合(2)はステップS38へ進み、第1クラッチCL1が締結している場合(3)はステップS39へ進む。
ステップS37では、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放であると判断したので、ゲインを大きな値に設定する。これは、第2クラッチCL2が締結であって第1クラッチCL1が開放している、すなわちモータ/ジェネレータMGの動力のみで走行する「EVモード」であって、モータ/ジェネレータMGのトルクがそのまま両駆動輪RT、LTへと伝達される状況であることから、トルク応答性がモータ/ジェネレータMGの応答に依存することによる。
ステップS38では、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1がスリップ締結である場合であると判断したので、ゲインを中間値に設定する。これは、第2クラッチCL2が締結であって第1クラッチCL1がスリップ締結であることから、トルク応答性が基本的にエンジンEngの応答に依存することによる。このステップS38では、図5に示すように、先ず、モータ側トルク演算部36が、モータトルク指令値に基づいて、モータ/ジェネレータMGから両駆動輪RT、LTに伝達されるトルク(モータ側出力トルク)を算出する。次に、エンジン側トルク演算部37が、第1クラッチCL1に供給されている油の圧力に基づいて、エンジンEngから両駆動輪RT、LTに伝達されるトルク(エンジン側出力トルク)を算出する。これは、第1クラッチCL1がスリップ締結であることから、エンジンEngから両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクは、第1クラッチCL1の伝達容量に依存することによる。エンジン側トルク演算部37は、第1クラッチCL1に供給される油圧に対する容量トルクを示すマップを用いて、エンジン側出力トルクを算出する。次に、F/Bゲイン演算部38が、モータ側トルク演算部36からのモータ側出力トルクの、エンジン側トルク演算部37からのエンジン側出力トルクに対する比(モータトルク比)を算出し、モータトルク比に対する車速フィードバック制御のためのゲインを示すマップを用いてモータトルク比から車速フィードバック制御のためのゲインを算出する。このマップから算出されるゲインは、第2クラッチCL2がスリップ締結しているときのゲインにおける最大値(小さな値)よりも大きくなるように設定されており、第1クラッチCL1が開放しているときのゲイン(大きな値)よりも小さくなる変化幅に、すなわち中間値に設定されている。
ステップS39では、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結である場合であると判断したので、ゲインを中間値に設定する。これは、第2クラッチCL2が締結であって第1クラッチCL1が締結であることから、トルク応答性が基本的にエンジンEngの応答に依存することによる。このステップS39では、図5に示すように、先ず、モータ側トルク演算部36が、モータトルク指令値に基づいて、モータ/ジェネレータMGから両駆動輪RT、LTに伝達されるトルク(モータ側出力トルク)を算出する。次に、エンジン側トルク演算部37が、エンジントルク指令値に基づいて、エンジンEngから両駆動輪RT、LTに伝達されるトルク(エンジン側出力トルク)を算出する。これは、第1クラッチCL1が締結であることから、エンジンEngから出力されたトルクが両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクであることによる。次に、F/Bゲイン演算部38が、モータ側トルク演算部36からのモータ側出力トルクの、エンジン側トルク演算部37からのエンジン側出力トルクに対する比(モータトルク比)を算出し、モータトルク比に対する車速フィードバック制御のためのゲインを示すマップを用いてモータトルク比から車速フィードバック制御のためのゲイン(中間値)を算出する。
次に、作用を説明する。
図6は、統合コントローラ14における第1クラッチCL1および第2クラッチCL2の状態とフィードバック制御のゲインの設定の関係性を示す制御ブロック図である。以下、まず、「技術の課題」の説明を行い、続いて、実施例1の車両の制御装置における作用を、「第1状態の制御作用」と、「第2状態の制御作用」と、「第3状態の制御作用」と、「第4状態の制御作用」と、「第5状態の制御作用」と、「第6状態の制御作用」と、に分けて説明する。
「技術の課題」
車両の制御装置では、第2クラッチCL2をスリップ締結とする際、第2クラッチCL2の回転数差を所定のものとする(差回転有りとする)ように油圧制御する。このとき、第2クラッチCL2では、第2クラッチ入力回転数センサ6から取得した第2クラッチCL2における入力回転数(モータ/ジェネレータMG側)と、第2クラッチ出力回転数センサ7から取得した出力回転数(自動変速機CVT側)との差すなわち伝達トルク(クラッチトルク容量)が、所定の値となるように、クラッチコントローラ16を介して油圧制御される。ところが、所定の回転数差を維持するための油圧制御では、統合コントローラ14からの第2クラッチ油圧指令値の変化に対して、実際に第2クラッチCL2でのクラッチ油圧(押付力)に応じた伝達トルク(クラッチトルク容量)が変化するまでに時間差が生じる。この油圧制御の第2クラッチCL2の応答性は、駆動系における駆動源(モータ/ジェネレータMGおよびエンジンEng)の応答性に比べて悪い。このため、第2クラッチCL2をスリップ締結している状況では、駆動系に対して車速を変化させるために出力するトルクを変更する指令を出すと、駆動源(モータ/ジェネレータMGおよびエンジンEng)が目標トルクに到達するまでの時間に対して、それを両駆動輪RT、LTに伝達する第2クラッチCL2の伝達トルク(クラッチトルク容量)が目標値に到達するまでの時間には遅れが生じるので、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化は、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性すなわち第2クラッチCL2が伝達可能なトルクの大きさに依存する。
また、駆動源においても、モータ/ジェネレータMGの指令に対する応答性に比べて、エンジンEngの指令に対する応答性が悪いことから、第2クラッチCL2が締結されている状況では、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化は、基本的にエンジンEngの指令に対する応答性に依存する。ここで、駆動源としてのモータ/ジェネレータMGでは、統合コントローラ14からのモータトルク指令値の変化に対して、実際にモータ/ジェネレータMGから出力するトルクが変化するまでの時間差が殆どない。
上述したように、駆動系では、第2クラッチCL2がスリップ締結である場合、入力である駆動系への制御が、第2クラッチCL2の油圧制御による応答性で両駆動輪RT、LTのトルクの変化として現れるすなわち実車速の変化として現れる。このため、第2クラッチCL2がスリップ締結である場合、定速走行制御を適切なものとすべく実車速と目標車速との偏差をなくす車速フィードバック制御を行うと、入力である駆動系への制御が反映されていない実車速に基づいて、駆動系への制御内容を調整することとなり、適切な車速フィードバック制御が行えなくなる。
他方、駆動系では、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放である状況、すなわち「EVモード」では、定速走行制御を適切なものとすべく実車速と目標車速との偏差をなくす車速フィードバック制御を行うと、入力である駆動系への制御(統合コントローラ14からのモータトルク指令値の変化)に対して殆ど時間差なくモータ/ジェネレータMGのトルクが変化し、このトルクの変化がそのまま両駆動輪RT、LTのトルクの変化として現れることから、入力である駆動系への制御が反映された実車速に基づいて、駆動系への制御内容を調整することとなり、適切に車速フィードバック制御を行うことができる。
また、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結もしくはスリップ締結である状況では、上述したように、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が基本的にエンジンEngの指令に対する応答性に依存する。この基本的にとは、駆動源において、モータ/ジェネレータMGとエンジンEngとの双方がトルクを出力する場合、モータ/ジェネレータMGの目標駆動トルクに対する分担分(モータトルク比)のトルクは、統合コントローラ14からのモータトルク指令値の変化に対して殆ど時間差なく両駆動輪RT、LTのトルクの変化として現れることによる。このため、第2クラッチCL2が締結されかつ第1クラッチCL1が締結もしくはスリップ締結されている状況では、先ずモータ/ジェネレータMGのトルクの分担分(モータトルク比)だけ、入力である駆動系への制御が実車速に反映され、入力である駆動系への制御における残りのトルク分は、エンジンEngの指令に対する応答性に応じて実車速に反映されるので、第2クラッチCL2がスリップ締結とされている場合に比較すると影響は少ないが、適切な車速フィードバック制御が行えない。
このように適切ではない車速フィードバック制御を行うと、ハンチングの発生を招いたり、目標車速への追従性を悪化させたりしてしまう虞がある。他方、定速走行制御を適切なものとするには、実車速と目標車速との偏差をなくす車速フィードバック制御を行う必要がある。このため、何らかの対策により、車速フィードバック制御を適切なものとする必要がある。
「第1状態の制御作用」
第1状態とは、定速走行制御時に、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放であることをいう(図6の左上の欄参照)。この第1状態では、図4のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS33へと進み、ステップS33にて車速F/Bゲイン設定部30が車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値として設定する。
この第1状態は、「EVモード」での定速走行制御時であって、エンジン始動要求がある場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→へと進み、ステップS6において「HEVモード」ではないことからステップS7へと進み、ステップS7においてエンジン始動要求があることからステップS8→ステップS9へと進み、ステップS9において第2クラッチCL2がスリップ締結とされてから、ステップS14→ステップS1へと戻り、これが繰り返されてステップS8において所定の時間が経過したと判断されてステップS10へと進み、ステップS10において第1クラッチCL1がスリップ締結とされるまでの間があげられる。
また、第1状態は、「HEVモード」での定速走行制御時であって、エンジン停止要求があって「EVモード」への過渡の場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS15→ステップS16からステップS17において第2クラッチCL2がスリップ締結とされてステップS1へと元ってからステップS18へと進み、ステップS18において第1クラッチCL1が開放とされてから、ステップS19において第2クラッチCL2が締結されるまでの間があげられる。
さらに、「EVモード」での発進時等において定速走行制御要求が為された場合、すなわち「EVモード」での定速走行制御時であって「WSCモード」である場合があげられる。
上記のように、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放であるときは、車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値に設定するので、車速フィードバック制御による駆動力の変化への影響が小さくなり、車速フィードバック制御による実車速を目標車速とするまでの時間が長くなる(無駄時間が大きくなる)。すなわち、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性に依存する状況では、車速フィードバック制御を適切に行うことができないので、車速フィードバック制御による駆動系への制御の指令値の調整量を減らす。
このため、第2クラッチCL2がスリップ締結であるときに車速フィードバック制御を行うことによる悪影響すなわちハンチングの発生等を防止しつつ車速フィードバックを行うことができる。よって、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性に起因するハンチングの発生等を防止した定速走行制御を行うことができる。
また、車速フィードバック制御のためのゲインとして設定される小さな値は、第2クラッチCL2に供給される油の、油温、油流量およびライン圧に基づいて補正されていることから、より第2クラッチCL2の油圧応答に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
「第2状態の制御作用」
第2状態とは、定速走行制御時に、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1がスリップ締結であることをいう(図6の中上の欄参照)。この第2状態では、図4のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS34へと進み、ステップS34にて車速F/Bゲイン設定部30が車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値として設定する。
この第2状態は、「EVモード」での定速走行制御時であって、エンジン始動要求があってエンジン始動制御への過渡の場合(1つ目にあげた第1状態の後)、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS7→ステップS8からステップS9を経てステップS1へ戻ってからステップS10へと進み、ステップS10において第1クラッチCL1がスリップ締結とされてから、ステップS11→ステップS12→ステップS14へと進んでステップS1へと戻り、これが繰り返されてステップS11においてエンジンが始動したと判断してステップS13へと進み、ステップS13において第1クラッチCL1および第2クラッチCL2が締結されるまでの間があげられる。
上記のように、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1がスリップ締結であるときは、車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値に設定するので、車速フィードバック制御による駆動力の変化への影響が小さくなり、無駄時間が大きくなる。すなわち、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性に依存する状況では、車速フィードバック制御を適切に行うことができないので、車速フィードバック制御による駆動系への制御の指令値の調整量を減らす。
このため、第2クラッチCL2がスリップ締結であるときに車速フィードバック制御を行うことによる悪影響すなわちハンチングの発生等を防止しつつ車速フィードバックを行うことができる。よって、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性に起因するハンチングの発生等を防止した定速走行制御を行うことができる。
また、車速フィードバック制御のためのゲインとして設定される小さな値は、第2クラッチCL2に供給される油の、油温、油流量およびライン圧に基づいて補正されていることから、より第2クラッチCL2の油圧応答に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
「第3状態の制御作用」
第3状態とは、定速走行制御時に、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結であることをいう(図6の右上の欄参照)。この第3状態では、図4のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS35へと進み、ステップS35にて車速F/Bゲイン設定部30が車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値として設定する。
この第3状態は、「HEVモード」での定速走行制御時であって、エンジン停止要求があってエンジン停止制御への過渡の場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS15→ステップS16→ステップS17へと進み、ステップS17において第2クラッチCL2がスリップ締結とされてから、ステップS18へと進み、ステップS18において第1クラッチCL1が開放されるまでの間があげられる。
また、「HEVモード」での発進時等において定速走行制御要求が為された場合、すなわち「HEVモード」での定速走行制御時であって「WSCモード」とされた場合があげられる。
上記のように、第2クラッチCL2がスリップ締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結であるときは、車速フィードバック制御のためのゲインを小さな値に設定するので、車速フィードバック制御による駆動力の変化への影響が小さくなり、無駄時間が大きくなる。すなわち、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性に依存する状況では、車速フィードバック制御を適切に行うことができないので、車速フィードバック制御による駆動系への制御の指令値の調整量を減らす。
このため、第2クラッチCL2がスリップ締結であるときに車速フィードバック制御を行うことによる悪影響すなわちハンチングの発生等を防止しつつ車速フィードバックを行うことができる。よって、第2クラッチCL2の油圧制御の応答性に起因するハンチングの発生等を防止した定速走行制御を行うことができる。
また、車速フィードバック制御のためのゲインとして設定される小さな値は、第2クラッチCL2に供給される油の、油温、油流量およびライン圧に基づいて補正されていることから、より第2クラッチCL2の油圧応答に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
「第4状態の制御作用」
第4状態とは、定速走行制御時に、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放であることをいう(図6の左下の欄参照)。この第4状態では、図4のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS36→ステップS37へと進み、ステップS37にて車速F/Bゲイン設定部30が車速フィードバック制御のためのゲインを大きな値として設定する。
この第4状態は、「EVモード」での定速走行制御時であって、エンジン始動要求がない場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→へと進み、ステップS6において「HEVモード」ではないことからステップS7へと進み、ステップS7においてエンジン始動要求がないことからステップS14へと進み、ステップS1へと戻る流れがあげられる。
また、第4状態は、「HEVモード」での定速走行制御時であって、エンジン停止要求があり「EVモード」へと切り換えられる場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→へと進み、ステップS6において「HEVモード」であることからステップS15へと進み、ステップS15においてエンジン停止要求があり、ステップS16→ステップS17を行った後ステップS18→ステップS19へと進んでエンジン停止制御が終了し、ステップS19において第2クラッチCL2が締結されてから、ステップS14→ステップS1へと戻る流れもあげられる。
上記のように、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が開放であるときは、車速フィードバック制御のためのゲインを大きな値に設定するので、車速フィードバック制御による駆動力の変化への影響を大きくし、無駄時間が小さくなる。すなわち、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が、モータ/ジェネレータMGの制御に対する応答性に依存する状況では、車速フィードバック制御を適切に行うことができるので、車速フィードバック制御による駆動系への制御の指令値の調整量を増やす。
このため、モータ/ジェネレータMGからの駆動力で走行している状況では、より追従性を高めつつ適切に車速フィードバック制御を行うことができる。すなわち、制御に対する応答性の良好なモータ/ジェネレータMGの特性を活かした定速走行制御を行うことができる。
「第5状態の制御作用」
第5状態とは、定速走行制御時に、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1がスリップ締結であることをいう(図6の中下の欄参照)。この第5状態では、図4のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS36→ステップS38へと進み、ステップS38にて車速F/Bゲイン設定部30が車速フィードバック制御のためのゲインを中間値として設定する。
この第5状態は、例えば、エンジンEngが始動されていて(自立状態である)、両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクによりモータ/ジェネレータMGにおいて回生を行う場合であって、モータ/ジェネレータMG側のトルク比を高める場合があげられる。
上記のように、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1がスリップ締結であるときは、車速フィードバック制御のためのゲインを中間値に設定するので、車速フィードバック制御による駆動力の変化への影響を第1状態〜第3状態と第4状態との中間とし、無駄時間が中間の値となる。すなわち、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が、基本的にエンジンEngの応答性に依存する状況では、先ずモータ/ジェネレータMGのトルクの分担分(モータトルク比)だけ、入力である駆動系への制御が実車速に反映され、入力である駆動系への制御における残りのトルク分(ここでは第1クラッチCL1がスリップ締結であることから第1クラッチCL1が伝達可能なトルク分)は、エンジンEng側の指令に対する応答性に応じて実車速に反映されるので、この直ぐに反映されるモータ/ジェネレータMGのトルクの分担分(モータトルク比)に応じて、車速フィードバック制御による駆動系への制御の指令値の調整量を決定する。
このため、車速フィードバック制御による追従性を確保しつつエンジンEngとモータ/ジェネレータMGの応答性の差異に起因する車速フィードバック制御を行うことによる悪影響すなわちハンチングの発生等を防止しつつ車速フィードバックを行うことができる。すなわち、制御に対する応答性の良好なモータ/ジェネレータMGの特性を活かしつつエンジンEngの制御に対する応答性に起因するハンチングの発生等を防止した定速走行制御を行うことができる。
また、車速フィードバック制御のためのゲインとして設定される中間値は、モータ側トルク演算部36からのモータ側出力トルクの、第1クラッチCL1の伝達容量から算出されたエンジン側トルク演算部37からのエンジン側出力トルクに対する比であるモータトルク比に基づいて算出されていることから、より駆動源の応答性に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
さらに、モータ側トルク演算部36からのモータ側出力トルク、および第1クラッチCL1の伝達容量から算出されたエンジン側トルク演算部37からのエンジン側出力トルクが変化しても、安定して車速フィードバック制御を行うことができ、安定した目標車速への追従性を確保することができる。
「第6状態の制御作用」
第6状態とは、定速走行制御時に、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結であることをいう(図6の右下の欄参照)。この第6状態では、図4のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS36→ステップS39へと進み、ステップS39にて車速F/Bゲイン設定部30が車速フィードバック制御のためのゲインを中間値として設定する。
この第6状態は、「HEVモード」での定速走行制御時であって、エンジン停止要求がない場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6へと進み、ステップS6において「HEVモード」であることからステップS15へと進み、ステップS15においてエンジン停止要求がないことからステップS14へと進み、ステップS1へと戻る流れがあげられる。
また、第6状態は、「EVモード」での定速走行制御時であって、エンジン始動要求があり「HEVモード」へと切り換えられる場合、すなわち、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→へと進み、ステップS6において「EVモード」であることからステップS7へと進み、ステップS7においてエンジン始動要求があり、ステップS8→ステップS9を行った後ステップS8→ステップS10へと進み、ステップS11→ステップS12を行ってエンジン始動制御が終了してステップS11→ステップS13へと進み、ステップS13において第2クラッチCL2および第1クラッチCL1が締結とされてから、ステップS14→ステップS1へと戻る流れもあげられる。
上記のように、第2クラッチCL2が締結であり、かつ第1クラッチCL1が締結であるときは、車速フィードバック制御のためのゲインを中間値に設定するので、車速フィードバック制御による駆動力の変化への影響を第1状態〜第3状態と第4状態との中間とし、無駄時間が中間の値となる。すなわち、駆動系への制御に対して両駆動輪RT、LTに伝達されるトルクの変化が、基本的にエンジンEngの応答性に依存する状況では、先ずモータ/ジェネレータMGのトルクの分担分(モータトルク比)だけ、入力である駆動系への制御が実車速に反映され、入力である駆動系への制御における残りのトルク分は、エンジンEngの指令に対する応答性に応じて実車速に反映されるので、この直ぐに反映されるモータ/ジェネレータMGのトルクの分担分(モータトルク比)に応じて、車速フィードバック制御による駆動系への制御の指令値の修正量を決定する。
このため、車速フィードバック制御による追従性を確保しつつエンジンEngとモータ/ジェネレータMGの応答性の差異に起因する車速フィードバック制御を行うことによる悪影響すなわちハンチングの発生等を防止しつつ車速フィードバックを行うことができる。すなわち、制御に対する応答性の良好なモータ/ジェネレータMGの特性を活かしつつエンジンEngの制御に対する応答性に起因するハンチングの発生等を防止した定速走行制御を行うことができる。
また、車速フィードバック制御のためのゲインとして設定される中間値は、モータ側トルク演算部36からのモータ側出力トルクの、エンジン側トルク演算部37からのエンジン側出力トルクに対する比であるモータトルク比に基づいて算出されていることから、より駆動源の応答性に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
さらに、モータ側トルク演算部36からのモータ側出力トルク、および第1クラッチCL1の伝達容量から算出されたエンジン側トルク演算部37からのエンジン側出力トルクが変化しても、安定して車速フィードバック制御を行うことができ、安定した目標車速への追従性を確保することができる。
このように、実施例1の車両の制御装置では、第2クラッチCL2と第1クラッチCL1との状態(上記した第1状態〜第6状態)に応じて、車速フィードバック制御のためのゲインを最適なものに設定することから、いずれの状態であっても適切に車速フィードバック制御を行うことができ、ハンチング等を招くことなく目標車速への追従性を良好なものとすることができるので、定速走行制御時にドライバー(他の乗員を含む)が違和感を覚えることを防止することができる。
図7は、発進時等に定速走行制御要求が為され、その目標速度が切り換えられた際において、目標車速と実車速との関係、駆動力指令値、第2クラッチCL2の指令油圧、第1クラッチCL1の指令油圧、モータ/ジェネレータMGのトルク、エンジンEngのトルク、車速フィードバックのゲイン、第2クラッチCL2での差回転の有無の各特性を示すタイムチャートである。この図7では、発進後の時点T0において定速走行制御要求が為され、時点T1において目標速度が切り換えられたものとする。
実施例1の定速走行制御では、低い速度域での定速走行制御時であって、駆動力指令値(目標駆動トルク)が始動判定閾値(EV可能駆動トルク)を超えていない状況(T0〜T1参照)では、「EVモード」での「WSCモード」となり、第2クラッチCL2がスリップ締結であるとともに第1クラッチCL1が開放であることから、上記した「第1状態の制御作用」により車速フィードバックのゲインを小さな値に設定する。
上記のように、定速走行制御時において、「EVモード」での「WSCモード」、すなわちモータ/ジェネレータMGから出力されるトルクがスリップ締結の第2クラッチCL2により両駆動輪RT、LTに伝達される状況では、駆動系への制御に対する両駆動輪RT、LTでのトルクの変化の応答が、第2クラッチCL2における油圧制御の応答性となることから、車速フィードバックのゲインを小さな値としている。
また、定速走行制御時に目標速度が変更されて(T1参照)、変更された目標速度とすべく算出された駆動力指令値(目標駆動トルク)が始動判定閾値(EV可能駆動トルク)を超えると、エンジン始動要求が為されてエンジン始動制御が行われる(T1〜T2参照)。このエンジン始動制御では、第2クラッチCL2がスリップ締結であるとともに第1クラッチCL1がスリップ締結であることから、上記した「第2状態の制御作用」により車速フィードバックのゲインを小さな値に設定する。
上記のように、定速走行制御時において、「EVモード」から「HEVモード」への切り換え、すなわち駆動源から出力されるトルク(エンジンEngの始動前ではモータ/ジェネレータMGから出力されるトルクの一部であり、エンジンEngの始動後ではモータ/ジェネレータMGおよびエンジンEngから出力されるトルク)がスリップ締結の第2クラッチCL2により両駆動輪RT、LTに伝達される状況では、駆動系への制御に対する両駆動輪RT、LTでのトルクの変化の応答が、第2クラッチCL2における油圧制御の応答性となることから、車速フィードバックのゲインを小さな値としている。
このため、定速走行制御時において、スリップ締結された第2クラッチCL2の油圧応答性に依存することにより、駆動系への制御に対する両駆動輪RT、LTでのトルクの変化の応答性が低下する状況では、車速フィードバックのゲインを小さな値とすることにより、ハンチングを招くことなく車速フィードバック制御を行うことを可能とし、実車速をより適切に目標車速とすることができる。
なお、実施例1の車両の制御装置では、上記した定速走行制御時において、「EVモード」での「WSCモード」および「EVモード」から「HEVモード」への切り換えの状況、すなわち第2クラッチCL2をスリップ締結とする際(T0〜T2参照)、差回転を所定のものとするように第2クラッチCL2を油圧制御することに加えて、出力側の回転数であるファイナルギヤFGへと延びる出力軸の回転数(両駆動輪RT、LTの回転数に比例する)に、第2クラッチCL2の差回転数を加算した回転数となるように、入力側の回転数であるモータ/ジェネレータMGを回転数制御している。
さらに、エンジンEngが始動されて「HEVモード」に切り換えられると(T2〜参照)、第2クラッチCL2および第1クラッチCL1が締結されることから、上記した「第6状態の制御作用」により車速フィードバックのゲインを中間値に設定する。
上記のように、定速走行制御時において、「HEVモード」、すなわち駆動源から出力されるトルク(モータ/ジェネレータMGおよびエンジンEngから各分配比に応じて出力されるトルク)が両駆動輪RT、LTに伝達される状況では、駆動系への制御に対する両駆動輪RT、LTでのトルクの変化の応答が、基本的にエンジンEngへの制御に対する応答性となることから、車速フィードバックのゲインを中間値としている。
このため、定速走行制御時において、基本的にエンジンEngへの制御に対する応答性に依存することにより、駆動系への制御に対する両駆動輪RT、LTでのトルクの変化の応答性が低下する状況では、車速フィードバックのゲインを中間値とすることにより、ハンチングを招くことなく車速フィードバック制御を行うことを可能とし、実車速をより適切に目標車速とすることができる。
なお、実施例1の車両の制御装置では、上記した定速走行制御時の「HEVモード」、すなわち第2クラッチCL2を締結としかつ第1クラッチCL1を締結としたら(T2〜参照)、モータ/ジェネレータMGをトルク制御している。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)駆動系に、駆動源(モータ/ジェネレータMGおよびエンジンEng)と、駆動輪(左右後輪LT、RT)と、前記駆動源と前記駆動輪との間に介装した油圧クラッチ(第2クラッチCL2)と、前記油圧クラッチの回転数差を所定のものとするように油圧制御することにより該油圧クラッチをスリップ締結とするクラッチ制御部(クラッチコントローラ16)と、を有し、車速を目標車速に保つように前記駆動系を制御する定速走行制御を行う定速走行制御手段(ステップS2〜ステップS4)を備えた車両の制御装置であって、前記定速走行制御手段は、前記油圧クラッチがスリップ締結であるときは、該油圧クラッチが締結であるときよりも車速フィードバック制御のゲインを小さな値に設定する。このため、定速走行制御時に適切な車速フィードバック制御を行うことができる。
(2)前記駆動源と前記駆動輪との間に介装した油圧クラッチを第2クラッチ(第2クラッチCL2)とし、前記駆動源は、エンジン(エンジンEng)と、モータ(モータ/ジェネレータMG)とを有し、前記駆動系は、前記エンジンと前記モータとの間に介装された第1クラッチ(第1クラッチCL1)を有し、前記クラッチ制御部は、前記第2クラッチの制御とは別に前記第1クラッチを締結またはスリップ締結または開放すべく該第1クラッチを油圧制御し、前記定速走行制御手段は、前記第2クラッチが締結であるときは、車速フィードバック制御のゲインを、前記第2クラッチがスリップ締結であるときよりも大きな値であって、前記モータから出力するトルクの前記エンジンから出力するトルクに対する比に応じた値に設定する。このため、車速フィードバック制御による追従性を確保しつつエンジンEngとモータ/ジェネレータMGの応答性の差異に起因する車速フィードバック制御を行うことによる悪影響すなわちハンチングの発生等を防止しつつ車速フィードバックを行うことができる。すなわち、制御に対する応答性の良好なモータ/ジェネレータMGの特性を活かしつつエンジンEngの制御に対する応答性に起因するハンチングの発生等を防止した定速走行制御を行うことができる。
(3)前記定速走行制御手段は、前記油圧クラッチ(第2クラッチCL2)が締結であるときよりも小さな値の範囲内で、前記油圧クラッチにおける油温が高くなるにしたがって大きくするように、前記油圧クラッチがスリップ締結であるときの車速フィードバック制御のゲインを設定する。
このため、より第2クラッチCL2の油圧応答に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
また、暖機前と暖機後のように、第2クラッチCL2における油温の変化に拘らず安定した目標車速への追従性を確保することができる。
(4)前記定速走行制御手段は、前記油圧クラッチが締結であるときよりも小さな値の範囲内で、前記油圧クラッチにおける油流量が多くなるにしたがって大きくするように、前記油圧クラッチがスリップ締結であるときの車速フィードバック制御のゲインを設定する。
このため、より第2クラッチCL2の油圧応答に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
また、モータ軸上に取り付けられたポンプの回転の変化に拘らず安定した目標車速への追従性を確保することができる。
(5)前記定速走行制御手段は、前記油圧クラッチが締結であるときよりも小さな値の範囲内で、前記油圧クラッチへの油の供給源であるラインの圧力が高くなるにしたがって大きくするように、前記油圧クラッチがスリップ締結であるときの車速フィードバック制御のゲインを設定する。
このため、より第2クラッチCL2の油圧応答に適合するものとすることができ、より適切に車速フィードバックの効果を得ることができる。
また、ライン圧の変化に拘らず安定した目標車速への追従性を確保することができる。
以上、本発明の車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。