以下、本発明の光学ガラスについて、詳細に説明する。
本発明の第1の基本態様の光学ガラスと第2の基本態様の光学ガラスは、陽イオンとしてBを含み、かつ陰イオンとしてOおよびFを含むガラス成分からなる光学ガラスである点では共通し、組成及び物性において重複する場合もある。即ち、第1の基本態様の光学ガラスは、第2の基本態様の光学ガラスを規定する要件を満たすこともでき、また、第2の基本態様の光学ガラスは、第1の基本態様の光学ガラスを規定する要件を満たすこともできる。
第1の基本態様の光学ガラスの好ましい組成範囲、好ましい特性を下記表1−1〜1−29及び2−1〜2−18に示すが、これらの表に示した組成範囲および特性の範囲の任意の組合わせを有する光学ガラスが本発明では可能である。
第2の基本態様の光学ガラスに、組成範囲、特性範囲について表1−1〜1−29及び2−1〜2−18に示した任意の範囲を組み合わせた光学ガラスは、第2の基本態様の光学ガラスの中にあって、好ましいガラスである。
A〜Dの4つの態様の好ましい組成範囲、好ましい特性も下記表1−1〜1−29及び2−1〜2−18に併記する。態様A〜Dについて、各態様の範囲内であれば、第1の態様および第2の態様における好ましい態様との任意の組合せが可能である。
態様Aは、前述のように、1.75〜1.81の屈折率nd及び48〜52のアッベ数νdという光学恒数の実現に好適なガラスである。
態様Aは、
陽イオン%表示で、
BO1.5を20〜70%、
LaO1.5を6〜30%、
GdO1.5を4〜25%、
含むとともに、O、Fを含み、
O含有量に対するF含有量のモル比F/Oが0.01〜0.30である光学ガラスである点で、本発明の第1の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。これらの条件を満たすことで、高屈折率低分散特性を有し、熱的安定性に優れ、ガラス転移温度が低く、精密プレス成形に適した光学ガラスが得られる。
さらに、態様Aは、Bを含む陽イオンと、OおよびFを含む陰イオンをガラス成分として含む光学ガラスであって、陽イオン%表示したときのBO1.5含有量を1.5倍した値BB、ガラス中の全陽イオンの合計量を100として、前記合計量に対する全酸素量のモル比をBOとしたとき、BB−(BO−BB)の値が−60〜+60の範囲である光学ガラスである点で、本発明の第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの条件を満たすことで、ガラス成分としてB、O、Fを含み、融液状態において揮発が少なく、光学特性などの諸特性の変動が少なく、品質の優れた光学ガラスが得られる。但し、態様Aでは、BB−(BO−BB)の上限値を+20とする。この理由は以下のとおりである。態様Aでは屈折率を高めるために、ガラス成分中に希土類やZr、Taなどといった高融点の成分が多く導入されて液相温度が上昇し、ガラスを流出する温度が高くなる傾向にある。したがって、より高い温度においてガラス成分の揮発を抑えるために、本ガラス系で揮発しやすい結合の割合を示す上記指標の上限値を制限する。
さらに、SiO2を0〜20%、
LiO0.5を0〜20%、
ZnOを0〜20%、
GeO2を0〜5%、
を含む点についても、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。
ZrO2を0〜4.5%、
TaO2.5を0〜7%、
YbO1.5を0〜0.5%、
を含む点は、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと相違する。
ZrO2を0〜4.5%とするのは、ZrO2の含有量が4.5%を超えると分散が増大傾向を示すとともに、液相温度が上昇傾向を示すためである。ZrO2の含有量の好ましい上限は3.8%、より好ましい上限は3.4%、さらに好ましい上限は3%、より一層好ましい上限は2.7%、さらに一層好ましい下限は2.5%である。
TaO2.5を0〜7%とするのは、TaO2.5の含有量が7%を超えると所要の分散と良好な安定性を維持することが難しくなるためであり、TaO2.5の含有量の好ましい上限は5%以下、より好ましい上限は4%以下、さらに好ましい上限は3%、より一層好ましい上限は2%、さらに一層好ましい下限は1.5%、なお一層好ましい下限は1.2%であり、TaO2.5の含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、さらに好ましい下限は0.5%、一層好ましい下限は0.6%である。
さらに、ガラス原料においてZrO2はもっとも溶解性が悪く均質化に高温を要する原料のひとつであることから、フッ素を含む本発明のガラスの原料を溶融・均質化する過程においてフッ素を多く揮発させる原因となり、揮発にともなうガラス特性の変動を抑える目的からも多量の導入は好ましくない。
YbO1.5を0〜0.5%とするのは、高価であるためと、過剰な導入によって液相温度が増加してガラス成分の揮発を間接的に助長し、ガラスの均質性と成形特性を損なうためである。さらに赤外領域に吸収を持つために、高精度のビデオカメラや監視カメラなど、近赤外領域の感光特性が求められる高感度の光学系への使用に適さない。特に態様Aの光学レンズは各態様の中で光学設計における汎用性が最も高く、上記の光学系においても使用できることから、YbO1.5の量を制限することが好ましい。
(ZnO+3ZrO2+5TaO2.5)を40%以下とするのは、低分散性を維持するためであり、(2LiO0.5+ZnO+(F/2))を20%以上とするのは、ガラス転移温度を低下させる(低く維持する)ためである。
特に、態様Aは上述のように、1.75〜1.81の屈折率nd及び48〜52のアッベ数νdという光学恒数を有する光学ガラスであることから、上記屈折率ndとアッベ数νdの両方を満たす光学ガラスとするために、成分としては、ガラス成分を以下のように分類し、その含有率を調整すればよい。すなわち、(1)導入量の増加とともに屈折率を減少させ、かつアッベ数を増加させる効果を持つBO1.5やSiO2、AlO1.5などといったガラス形成成分の合計量NWFと、(2)導入量の増加とともに屈折率を増加させ、かつアッベ数をわずかに減少させることでガラスの高屈折率・低分散性を高めるLaO1.5やGdO1.5、YO1.5などといった希土類成分の合計量ΣREと、(3)導入量の増加とともに屈折率を良く増加させるとともにアッベ数をやや減少させるZrO2やTaO2.5といった成分の合計量(ZrO2+TaO2.5)と、(4)導入量の増加とともに屈折率を大幅に増加させるとともにアッベ数を大幅に減少させるTiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量と、(5)導入量の増加とともにガラス原料の熔解温度を低下させ、ガラスの安定性を高め、液相温度を低下させ、ガラス転移点を低下させるなどの効果を有するLiO0.5やZnOといった一価・二価の成分の合計量と、(6)上記に属さないその他の成分の合計量のそれぞれを調整すれば良い。このうち光学特性の調整においては(1)〜(4)の調整が有効である。
具体的に、本発明で重要な成分である(1)〜(3)について、(1)NWFの上限は63%とすることが好ましく、さらには60%とすることがより好ましく、58%とすることがさらに好ましく、57%とすることが一層好ましく、56%とすることがより一層好ましく、55%とすることがさらに一層好ましく、54%とすることがなお一層好ましく、他方NWFの下限は41%とすることが好ましく、さらには44%とすることがより好ましく、46%とすることがさらに好ましく、47%とすることが一層好ましく、48%とすることがより一層好ましく、49%とすることがさらに一層好ましく、50%とすることがなお一層好ましい。また(2)ΣREの上限は38%とすることが好ましく、さらには36%とすることがより好ましく、35%とすることがさらに好ましく、34%とすることが一層好ましく、33%とすることがより一層好ましく、32%とすることがさらに一層好ましく、31%とすることがなお一層好ましく、他方ΣREの下限は20%とすることが好ましく、さらには22%とすることがより好ましく、23%とすることがさらに好ましく、24%とすることが一層好ましく、25%とすることがより一層好ましく、26%とすることがさらに一層好ましく、27%とすることがなお一層好ましい。また(3)(ZrO2+TaO2.5)の上限は8%とすることが好ましく、さらには7%とすることがより好ましく、6%とすることがさらに好ましく、5%とすることが一層好ましく、4.5%とすることがより一層好ましく、4%とすることがさらに一層好ましく、3.5%とすることがなお一層好ましく、他方(ZrO2+TaO2.5)の下限は0%とすることが好ましく、さらには1%とすることがより好ましく、2%とすることがさらに好ましく、2.5%とすることが一層好ましく、3%とすることがより一層好ましい。
ΣREとNWFの導入量はΣREとNWFの比率であるΣRE/NWFを参照して調整することもできる。ΣRE/NWFの上限は0.9とすることが好ましく、さらには0.85とすることがより好ましく、0.80とすることがさらに好ましく、0.75とすることが一層好ましく、0.70とすることがより一層好ましく、0.65とすることがさらに一層好ましく、0.60とすることがなお一層好ましく、他方ΣRE/NWFの下限は0.50とすることが好ましく、さらには0.45とすることがより好ましく、0.40とすることがさらに好ましく、0.35とすることが一層好ましく、0.30とすることがより一層好ましい。
それ以外の条件としては、希土類成分の混合により液相温度を低下させて、より光学特性に優れたガラスの安定性を高める(維持する)ために、希土類の合計量ΣREに対するLaO1.5の比率LaO1.5/ΣREに注意することが好ましい。上記の好ましい成分構成を持つ態様Aにおいて、LaO1.5/ΣREの上限は0.75とすることが好ましく、さらには0.7とすることがより好ましく、0.65とすることがさらに好ましく、0.6とすることが一層好ましく、0.57とすることがより一層好ましく、0.55とすることがさらに一層好ましく、0.53とすることがなお一層好ましく、特に0.52とすることが好ましく、他方LaO1.5/ΣREの下限は0.30とすることが好ましく、さらには0.4とすることがより好ましく、0.45とすることがさらに好ましく、0.48とすることが一層好ましく、0.49とすることがより一層好ましい。
特に態様Aでは必須の希土類成分に加えて、Zr、Ta、Ti、Nb、W、Biといった高屈折率・高分散成分のうち、ZrやTaを優先的に導入することが好ましい。更にはTaよりもZrを優先的に使用して、高屈折率化と低分散性を両立することが好ましい。それゆえ態様AではZrの導入量を最適化することがガラスの光学特性と成形特性の向上において非常に有効である。
さらに、態様Aにおいては、任意成分としてTiO2、NbO2.5を含有することもできる。TiO2、NbO2.5は、低分散性を維持しつつ、屈折率を高める働きがあるものの、分散を高める働きもあることから、TiO2は0〜3%とし、NbO2.5は0〜3%とする。
その他の高屈折率・高分散成分は、発明の効果を損なわない範囲で導入することができるが、TiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量の上限は6%とすることが好ましく、さらには5%とすることがより好ましく、4%とすることがさらに好ましく、3%とすることが一層好ましく、2%とすることがより一層好ましく、1%とすることがさらに一層好ましく、導入しないことが最も好ましい。
さらに、態様Aにおいては、SiO2を2%以上含有させること、及び(SiO2/BO1.5)を0.10以上とすることが好ましく、これにより、ガラス融液の粘度を増大させ、成形時の脈理発生を抑制する効果を改善することができる。
さらに、態様Aの光学ガラスは、屈折率ndとアッベ数νdとが、下記(1)式を満たすことが好ましい。屈折率ndとアッベ数νdとの関係については後述する。
nd-(2.25-0.01×νd)≧−0.01 ・・・(1)
態様Bは、1.79〜1.835の屈折率nd及び42〜48のアッベ数νdという光学恒数の実現に好適なガラスである。
態様Bは、
陽イオン%表示で、
BO1.5を20〜70%、
LaO1.5を6〜30%、
GdO1.5を4〜25%、
含むとともに、O、Fを含み、
O含有量に対するF含有量のモル比F/Oが0.01〜0.30である光学ガラスである点で、本発明の第1の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。これらの条件を満たすことで、高屈折率低分散特性を有し、熱的安定性に優れ、ガラス転移温度が低く、精密プレス成形に適した光学ガラスが得られる。
さらに、態様Bは、Bを含む陽イオンと、OおよびFを含む陰イオンをガラス成分として含む光学ガラスであって、陽イオン%表示したときのBO1.5含有量を1.5倍した値BB、ガラス中の全陽イオンの合計量を100として、前記合計量に対する全酸素量のモル比をBOとしたとき、BB−(BO−BB)の値が−60〜+60の範囲である光学ガラスである点で、本発明の第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの条件を満たすことで、ガラス成分としてB、O、Fを含み、融液状態において揮発が少なく、光学特性などの諸特性の変動が少なく、品質の優れた光学ガラスが得られる。但し、態様Bでは、BB−(BO−BB)の上限値を+20とする。この理由は以下のとおりである。態様Bでは屈折率を態様Cよりも高めるために、ガラス成分中に希土類やZr、Taなどといった高融点の成分が多く導入されて液相温度が上昇し、ガラスを流出する温度が高くなる傾向にある。したがって、より高い温度においてガラス成分の揮発を抑えるために、本ガラス系で揮発しやすい結合の割合を示す上記指標の上限値を制限する。
さらに、
SiO2を0〜20%、
LiO0.5を0〜20%、
GeO2を0〜5%、
を含む点についても、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。
ZnOを0〜25%、
ZrO2を8%以下、
TaO2.5を7%以下、
YbO1.5を0〜3%、
を含む点は、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと相違する。
ZnOを0〜25%とするのは、ZnOを多量に導入すると、光学特性面で屈折率がやや増加する一方、高分散化(νd減少)する問題があるが、態様Bは、態様Aよりも高屈折率かつ高分散領域のnd=1.79〜1.835、νd=42〜48の分散を持つガラスを得ることを目的としているので、許容される含有量が態様Aのガラスよりも増大するためである。
ZrO2、TaO2.5はともに、屈折率を高め、適量含有させることにより、ガラスを安定化し、液相温度を低下させるとともに、ガラス融液の粘度を増大させる働きがある成分である。ZrO2を8%以下とするのは、ZrO2の含有量が8%を超えると液相温度が上昇傾向を示すためである。ZrO2の含有量の好ましい上限は7%、より好ましい上限は6%、さらに好ましい上限は5%、一層好ましい上限は4.5%、より一層好ましい上限は4%であり、ZrO2の含有量の好ましい下限は0.5%、より好ましい下限は1%、さらに好ましい下限は1.5である。
TaO2.5を7%以下とするのは、TaO2.5の含有量が7%を超えると所要の分散と良好な安定性を維持することが難しくなるためである。TaO2.5の含有量の好ましい上限は6%以下、より好ましい上限は5%であり、TaO2.5の含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.3%、さらに好ましい下限は0.5%、一層好ましい下限は0.6%、より一層好ましい下限は1%、さらに一層好ましい下限は1.5%、なお一層好ましい下限は1.8、特に好ましい下限は2%である。
YbO1.5を0〜3%とするのは、高価であるためと、過剰な導入によって液相温度が増加してガラス成分の揮発を間接的に助長し、ガラスの均質性と成形特性を損なうためである。さらに赤外領域に吸収を持つために、高精度のビデオカメラや監視カメラなど、近赤外領域の感光特性が求められる高感度の光学系への使用に適さない。ただし態様Bのガラスは屈折率が高いため、赤外領域の光を受光しないコンパクトデジタルカメラ等に用途を限定して用いることも有効である。このため3%を上限としてYbO1.5を導入することもできる。
(ZrO2/(ZrO2+TaO2.5))を0〜0.7とするのは、態様Bで用いるZrとTaの配分を適正化し、液相温度を低下させてガラスの安定性を高めるためである。(ZrO2+TaO2.5)を3〜10とするのは、態様Aよりも多くのZrとTaを使用して、より高屈折率化をはかるためである。(2LiO0.5+ZnO+(F/2))の合計量が20%以上とするのは、ガラス転移温度を低下させる(低く維持する)ためである。
態様Bにおいては、ガラスの安定性をより一層改善し、液相温度を低下させるために、ZrO2/(ZrO2+TaO2.5)を0.7以下に制限することが好ましい。ガラスの安定性改善および液相温度の低下の観点から、ZrO2/(ZrO2+TaO2.5)の好ましい上限は0.6、より好ましい上限は0.55、さらに好ましい上限は0.50、一層好ましい上限は0.45であり、
ZrO2/(ZrO2+TaO2.5)の好ましい下限は0.00、より好ましい下限は0.10、さらに好ましい下限は0.20、一層好ましい下限は0.25、より一層好ましい下限は0.30、特に好ましい下限は0.35である。
上記の指標のかわりに、TaO2.5を含有するガラスにおいては、(ZrO2/TaO2.5)を2.0以下に制限することも好ましい。ガラスの安定性改善および液相温度の低下の観点から、(ZrO2/TaO2.5)の好ましい上限は1.8、より好ましい上限は1.6、さらに好ましい上限は1.4、一層好ましい上限は1.3、より一層好まし上限は1.2、さらに一層好ましい上限は1.1である。(ZrO2/TaO2.5)の好ましい下限は0.1、より好ましい下限は0.2、さらに好ましい下限は0.3、一層好ましい下限は0.4、より一層好ましい下限は0.5である。
特に、態様Bは上述のように、1.79〜1.835の屈折率nd及び42〜48のアッベ数νdという光学恒数を有する光学ガラスであることから、上記屈折率ndとアッベ数νdの両方を満たす光学ガラスとするために、成分としては、態様Aと同様にガラス成分を以下のように分類し、その含有率を調整すればよい。すなわち、(1)導入量の増加とともに屈折率を減少させ、かつアッベ数を増加させる効果を持つBO1.5やSiO2、AlO1.5などといったガラス形成成分の合計量NWFと、(2)導入量の増加とともに屈折率を増加させ、かつアッベ数をわずかに減少させることでガラスの高屈折率・低分散性を高めるLaO1.5やGdO1.5、YO1.5などといった希土類成分の合計量ΣREと、(3)導入量の増加とともに屈折率を良く増加させるとともにアッベ数をやや減少させるZrO2やTaO2.5といった成分の合計量(ZrO2+TaO2.5)と、(4)導入量の増加とともに屈折率を大幅に増加させるとともにアッベ数を大幅に減少させるTiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量と、(5)導入量の増加とともにガラス原料の熔解温度を低下させ、ガラスの安定性を高め、液相温度を低下させ、ガラス転移点を低下させるなどの効果を有するLiO0.5やZnOといった一価・二価の成分の合計量と、(6)上記に属さないその他の成分の合計量のそれぞれを調整すれば良い。このうち光学特性の調整においては(1)〜(4)の調整が有効である。
具体的に、本発明で重要な成分である(1)〜(3)について、(1)NWFの上限は60%とすることが好ましく、57%とすることがより好ましく、55%とすることがさらに好ましく、54%とすることが一層好ましく、53%とすることがより一層好ましく、52%とすることがさらに一層好ましく、51%とすることがなお一層好ましく、他方NWFの下限は35%とすることが好ましく、38%とすることがより好ましく、40%とすることがさらに好ましく、41%とすることが一層好ましく、42%とすることがより一層好ましく、43%とすることがさらに一層好ましく、44%とすることがなお一層好ましい。また(2)ΣREの上限は42%とすることが好ましく、40%とすることがより好ましく、38%とすることがさらに好ましく、37%とすることが一層好ましく、36%とすることがより一層好ましく、35%とすることがさらに一層好ましく、34%とすることがなお一層好ましく、他方ΣREの下限は20%とすることが好ましく、22%とすることがより好ましく、23%とすることがさらに好ましく、25%とすることが一層好ましく、27%とすることがより一層好ましく、28%とすることがさらに一層好ましく、29%とすることがなお一層好ましく、30%とすることが特に好ましい。また(3)(ZrO2+Ta2O5)の上限は10%とすることが好ましく、9%とすることがより好ましく、8%とすることがさらに好ましく、7.5%とすることが一層好ましく、7%とすることがより一層好ましく、6.5%とすることがさらに一層好ましく、6%とすることがなお一層好ましく、他方(ZrO2+Ta2O5)の下限は3%とすることが好ましく、3.5とすることがより好ましく、4.0とすることがさらに好ましく、4.5とすることが一層好ましく、5.0%とすることがより一層好ましい。
ΣREとNWFの導入量はΣREとNWFの比率であるΣRE/NWFを参照して調整することもできる。ΣRE/NWFの上限は1.2とすることが好ましく、1.1とすることがより好ましく、1.0とすることがさらに好ましく、0.95とすることが一層好ましく、0.9とすることがより一層好ましく、0.85とすることがさらに一層好ましく、0.8とすることがなお一層好ましく、他方ΣRE/NWFの下限は0.35とすることが好ましく、0.40とすることがより好ましく、0.45とすることがさらに好ましく、0.50とすることが一層好ましく、0.55とすることがより一層好ましく、0.60とすることがさらに一層好ましく、0.65とすることがなお一層好ましい。
それ以外の条件としては、希土類成分の混合により液相温度を低下させて、より光学特性に優れたガラスの安定性を高める(維持する)ために、希土類の合計量ΣREに対するLaO1.5の比率LaO1.5/ΣREに注意する。上記のようにZrとTaを共に適当量導入するような成分構成を持つ態様Bにおいては、Laを多く用いるような比率が有効である。すなわちLaO1.5/ΣREの上限は0.8とすることが好ましく、0.75とすることがより好ましく、0.70とすることがさらに好ましく、0.67とすることが一層好ましく、0.65とすることがより一層好ましく、0.63とすることがさらに一層好ましく、0.62とすることがなお一層好ましく、他方LaO1.5/ΣREの下限は0.30とすることが好ましく、0.4とすることがより好ましく、0.45とすることがさらに好ましく、0.5とすることが一層好ましく、0.55とすることがより一層好ましく、0.58とすることがさらに一層好ましく、0.59とすることがなお一層好ましい。
特に態様Bでは必須の希土類成分に加えて、Zr、Ta、Ti、Nb、W、Biといった高屈折率・高分散成分のうち、ZrやTaを優先的に導入することが好ましい。更にはTaの含有率を最適化しつつZrについても最適量を導入して、態様Aよりも高屈折率・高分散化することが好ましい。それゆえ態様BではTaとZrの導入量およびその比率を最適化することがガラスの光学特性と成形特性の向上において非常に有効である。
さらに、態様Bにおいては、任意成分としてTiO2、NbO2.5を含有することもできる。TiO2、NbO2.5は、低分散性を維持しつつ、屈折率を高める働きがあるものの、分散を高める働きもあることから、TiO2は0〜3%とし、NbO2.5は0〜3%とする。
その他の高屈折率・高分散成分は、発明の効果を損なわない範囲で導入することができるが、TiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量(TiO2+NbO2.5+WO3+BiO1.5)の上限は8%とすることが好ましく、6%とすることがより好ましく、5%とすることがさらに好ましく、4%とすることが一層好ましく、3%とすることがより一層好ましく、2%とすることがさらに一層好ましく、1%とすることがなお一層好ましく、低分散にするためには、導入しないことが最も好ましい。
態様Bにおいては、(2LiO0.5+ZnO+(F/2))を20%以上とすることも好ましい。ガラス転移温度を低下させるためである。
さらに、態様Bの光学ガラスは、屈折率ndとアッベ数νdとが、下記(2)式を満たすことが好ましい。屈折率ndとアッベ数νdとの関係については後述する。
nd-(2.25-0.01×νd)≧−0.01 ・・・(2)
態様Cは、1.675〜1.76の屈折率nd及び51〜58のアッベ数νdという光学恒数の実現に好適なガラスである。
態様Cは、
陽イオン%表示で、
BO1.5を20〜70%、
LaO1.5を6〜30%、
GdO1.5を4〜25%、
含むとともに、O、Fを含み、
O含有量に対するF含有量のモル比F/Oが0.01〜0.30である光学ガラスである点で、本発明の第1の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。これらの条件を満たすことで、高屈折率低分散特性を有し、熱的安定性に優れ、ガラス転移温度が低く、精密プレス成形に適した光学ガラスが得られる。
さらに、態様Cは、Bを含む陽イオンと、OおよびFを含む陰イオンをガラス成分として含む光学ガラスであって、陽イオン%表示したときのBO1.5含有量を1.5倍した値BB、ガラス中の全陽イオンの合計量を100として、前記合計量に対する全酸素量のモル比をBOとしたとき、BB−(BO−BB)の値が−60〜+60の範囲である光学ガラスである点で、本発明の第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの条件を満たすことで、ガラス成分としてB、O、Fを含み、融液状態において揮発が少なく、光学特性などの諸特性の変動が少なく、品質の優れた光学ガラスが得られる。
さらに、SiO2を0〜20%、
LiO0.5を0〜20%、
GeO2を0〜5%、
を含む点についても、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。
ZrO2を5%以下、
TaO2.5を3%以下、
YbO1.5を0〜3%、
を含む点は、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと相違する。
ZnOを0〜15%とするのは、ZnOの含有量が15%を超えると分散が増大傾向を示し、かつ安定性が低下するとともに液相粘性が低下傾向を示すためである。ZnOの含有量の好ましい上限は15%、より好ましい上限は10%、さらに好ましい上限は8%、一層好ましい上限は6%、より一層好ましい上限は4%、さらに一層好ましい上限は3%、なお一層好ましい上限は2%であり、ZnOの含有量の好ましい下限は0%、より好ましい下限0.5%、さらに好ましい下限は1%である。このためTg低下成分の調整の尺度となる2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)は、おのずと大きな値となる。すなわち2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)の好ましい下限は0.65であり、より好ましい下限は0.7、さらに好ましい下限は0.75、一層好ましい下限は0.8、より一層好ましい下限は0.85、さらに一層好ましい下限は0.9、なお一層好ましい下限は0.95、特に好ましい下限は1.0である。
ZrO2を5%以下とするのは、ZrO2の含有量が5%を超えると分散が増大傾向を示すとともに、液相温度が上昇傾向を示すためである。ZrO2の含有量の好ましい上限は5%、より好ましい上限は4%、さらに好ましい上限は3%、一層好ましい上限は2.5%、より一層好ましい上限は2%、さらに一層好ましい上限は1.5%、なお一層好ましい上限は1%、特に好ましい上限は0.5%であり、最も好ましくはZrO2を導入しない。
TaO2.5を3%以下とするのは、TaO2.5の含有量が3%を超えると所要の分散と良好な安定性を維持することが難しくなり、原料価格が増加するためである。TaO2.5の含有量の好ましい上限は3%以下、より好ましい上限は2%、さらに好ましい上限は1%、一層好ましい上限は0.5%、特に好ましくはTaO2.5を導入しない。
YbO1.5を0〜3%とするのは、高価であるためである。さらに赤外領域に吸収を持つために、高精度のビデオカメラや監視カメラなど、近赤外領域の感光特性が求められる高感度の光学系への使用に適さない。ただし態様Cの光学ガラスは態様Aよりも低分散であることと、YbO1.5の持つ低分散性を利用して例えばνd=55を超える低分散ガラスを作ることができるため、上限を3%としてYbO1.5を導入してもよい。
特に、態様Cは上述のように、1.675〜1.76の屈折率nd及び51〜58のアッベ数νdという光学恒数を有する光学ガラスであることから、上記屈折率ndとアッベ数νdの両方を満たす光学ガラスとするために、成分としては、態様Aと同様にガラス成分を以下のように分類し、その含有率を調整すればよい。すなわち、(1)導入量の増加とともに屈折率を減少させ、かつアッベ数を増加させる効果を持つBO1.5やSiO2、AlO1.5などといったガラス形成成分の合計量NWFと、(2)導入量の増加とともに屈折率を増加させ、かつアッベ数をわずかに減少させることでガラスの高屈折率・低分散性を高めるLaO1.5やGdO1.5、YO1.5などといった希土類成分の合計量ΣREと、(3)導入量の増加とともに屈折率を良く増加させるとともにアッベ数をやや減少させるZrO2やTaO2.5といった成分の合計量(ZrO2+TaO2.5)と、(4)導入量の増加とともに屈折率を大幅に増加させるとともにアッベ数を大幅に減少させるTiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量と、(5)導入量の増加とともにガラス原料の熔解温度を低下させ、ガラスの安定性を高め、液相温度を低下させ、ガラス転移点を低下させるなどの効果を有するLiO0.5やZnOといった一価・二価の成分の合計量と、(6)上記に属さないその他の成分の合計量のそれぞれを調整すれば良い。このうち光学特性の調整においては(1)〜(4)の調整が有効である。
具体的に、本発明で重要な成分である(1)〜(3)について、(1)NWFの上限は75%とすることが好ましく、72%とすることがより好ましく、70%とすることがさらに好ましく、68%とすることが一層好ましく、66%とすることがより一層好ましく、64%とすることがさらに一層好ましく、62%とすることがなお一層好ましく、他方NWFの下限は48%とすることが好ましく、50%とすることがより好ましく、52%とすることがさらに好ましく、53%とすることが一層好ましく、54%とすることがより一層好ましく、55%とすることがさらに一層好ましく、56%とすることがなお一層好ましい。また(2)ΣREの上限は35%とすることが好ましく、34%とすることがより好ましく、33%とすることがさらに好ましく、32%とすることが一層好ましく、31%とすることがより一層好ましく、30%とすることがさらに一層好ましく、29%とすることがなお一層好ましく、他方ΣREの下限は14%とすることが好ましく、16%とすることがより好ましく、17%とすることがさらに好ましく、18%とすることが一層好ましく、20%とすることがより一層好ましく、22%とすることがさらに一層好ましく、23%とすることがなお一層好ましく、特に24%とすることが好ましい。また(3)(ZrO2+TaO2.5)の上限は5%とすることが好ましく、4%とすることがより好ましく、3.5%とすることがさらに好ましく、3%とすることが一層好ましく、2.5%とすることがより一層好ましく、2%とすることがさらに一層好ましく、1.5%とすることがなお一層好ましく、1%とすることがさらになお一層好ましく、0.5%とすることが特に好ましく、(ZrO2+TaO2.5)を0%とすることが最も好ましい。
ΣREとNWFの導入量はΣREとNWFの比率であるΣRE/NWFを参照して調整することもできる。ΣRE/NWFの上限は0.8とすることが好ましく、0.75とすることがより好ましく、0.70とすることがさらに好ましく、0.65とすることが一層好ましく、0.60とすることがより一層好ましく、0.55とすることがさらに一層好ましく、0.50とすることがなお一層好ましく、他方ΣRE/NWFの下限は0.15とすることが好ましく、0.20とすることがより好ましく、0.25とすることがさらに好ましく、0.30とすることが一層好ましく、0.35とすることがより一層好ましく、0.40とすることがさらに一層好ましく、0.45とすることがなお一層好ましい。
それ以外の条件としては、希土類成分の混合により液相温度を低下させて、より光学特性に優れたガラスの安定性を高める(維持する)ために、希土類の合計量ΣREに対するLaO1.5の比率LaO1.5/ΣREに注意する。上記のようにZrとTaの導入量が制限される一方で、ΣREの合計量を態様Aより少なくすることもできる態様Cにおいては、LaO1.5/ΣREが幅広い値を取る。すなわちLaO1.5/ΣREの上限は0.9とすることが好ましく、0.80とすることがより好ましく、0.70とすることがさらに好ましく、0.60とすることが一層好ましく、0.57とすることがより一層好ましく、0.55とすることがなお一層好ましく、他方LaO1.5/ΣREの下限は0.30とすることが好ましく、0.4とすることがより好ましく、0.45とすることがさらに好ましく、0.48とすることが一層好ましい。特にΣREの合計量が20以下のガラスにおいてLaO1.5/ΣREを0.80以上にすることもできる。
特に態様Cでは必須の希土類成分に加えて、Zr、Ta、Ti、Nb、W、Biといった高屈折率・高分散成分を多く導入しないようにして、態様Aよりも低屈折率・低分散化することが好ましい。それゆえ態様CではTaとZrの導入量を制限することがガラスの光学特性と成形特性の向上において非常に有効である。
さらに、態様Cにおいては、任意成分としてTiO2、NbO2.5を含有することもできる。TiO2、NbO2.5は、低分散性を維持しつつ、屈折率を高める働きがあるものの、分散を高める働きもあることから、TiO2は0〜2%とし、NbO2.5は0〜3%とする。
その他の高屈折率・高分散成分は、発明の効果を損なわない範囲で導入することができるが、TiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量(TiO2+NbO2.5+WO3+BiO1.5)の上限は4%とすることが好ましく、さらには3%とすることがより好ましく、2%とすることがさらに好ましく、1%とすることが一層好ましく、導入しないことが最も好ましい。
(ZnO+3ZrO2+5TaO2.5)を15%以下にするのは、低分散性を維持するためである。
(2LiO0.5+ZnO+(F/2))を25%以上とするのは、態様Cが態様AよりもNWFの割合が多くなり、ガラス転移点(Tg)が高くなる傾向にあるので、これらのTg低下成分の増量によって、よりガラス転移温度を低下させるためである。
態様Cは、態様A、B、Dよりも低分散化するためにΣREに対するNWFの割合が多くなり、そのうち特にBO1.5が多く導入される結果、BB−(BO−BB)の上限値が+60と、態様A、B、Dと比較して大きな値になっている。そのため、揮発に関与するFの含有量を表すF/Oを0.21以下に制限することにより、BB−(BO−BB)の上限値が大きいことによる揮発抑制効果の低下を補うことができる。
さらに、態様Cの光学ガラスは、屈折率ndとアッベ数νdとが、下記(3)式を満たすことが好ましい。屈折率ndとアッベ数νdとの関係については後述する。
nd-(2.25-0.01×νd)≧−0.01 ・・・(3)
態様Dは、1.825〜1.90の屈折率nd及び35〜43のアッベ数νdという光学恒数の実現に好適なガラスである。
態様Dは、
陽イオン%表示で、
BO1.5を20〜70%、
LaO1.5を6〜30%、
GdO1.5を4〜25%、
含むとともに、O、Fを含み、
O含有量に対するF含有量のモル比F/Oが0.01〜0.30である光学ガラスである点で、本発明の第1の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。これらの条件を満たすことで、高屈折率低分散特性を有し、熱的安定性に優れ、ガラス転移温度が低く、精密プレス成形に適した光学ガラスが得られる。
さらに、態様Dは、Bを含む陽イオンと、OおよびFを含む陰イオンをガラス成分として含む光学ガラスであって、陽イオン%表示したときのBO1.5含有量を1.5倍した値BB、ガラス中の全陽イオンの合計量を100として、前記合計量に対する全酸素量のモル比をBOとしたとき、BB−(BO−BB)の値が−60〜+60の範囲である光学ガラスである点で、本発明の第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの条件を満たすことで、ガラス成分としてB、O、Fを含み、融液状態において揮発が少なく、光学特性などの諸特性の変動が少なく、品質の優れた光学ガラスが得られる。但し、態様Bでは、BB−(BO−BB)の上限値を0とする。この理由は以下のとおりである。態様Dでは屈折率を態様A,B,Cよりも高めるために、ガラス成分中に希土類やZr、Taなどといった高融点の成分が多く導入される上に、液相温度を低下させる効果がある一方で屈折率を低下させるNWF成分を少なくする必要があることから、いっそう液相温度が上昇し、ガラスを流出する温度がいっそう高くなる傾向にある。したがって、いっそう高い温度においてガラス成分の揮発を抑えるために、本ガラス系で揮発しやすい結合の割合を示す上記指標の上限値を厳しく制限する。
さらに、
SiO2を0〜20%、
ZrO2を0〜8%、
TaO2.5を0〜10%、
TiO2を0〜8%、
NbO2.5を0〜8%、
WO3を0〜10%、
GeO2を0〜5%、
を含む点についても、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと共通する。これらの組成物に関する説明は表1及び2を参照して後述する。
尚、ZrO2の含有量が8%を超えると分散が増大傾向を示すとともに、液相温度が上昇傾向を示すため、ZrO2の含有量を8%以下とする。ZrO2の含有量の好ましい上限は6%、より好ましい上限は5%、さらに好ましい上限は4%、一層好ましい上限は3.5%、より一層好ましい上限は3%であり、ZrO2の含有量の好ましい下限は0%、より好ましい下限は0.5%、さらに好ましい下限は1%、一層好ましい下限は1.5%、より一層好ましい下限は2%である。
TaO2.5の含有量が10%を超えると所要の分散と良好な安定性を維持することが難しくなるため、TaO2.5の含有量を10%以下とする。TaO2.5の含有量の好ましい上限は9%、より好ましい上限は8%、さらに好ましい上限は7%、一層好ましい上限は6%であり、TaO2.5の含有量の好ましい下限は1%、より好ましい下限は2%、さらに好ましい下限は3%、一層好ましい下限は4%、より一層好ましい下限は4.5%である。
特に、態様Dは上述のように、1.825〜1.90の屈折率nd及び35〜43のアッベ数νdという光学恒数を有する光学ガラスであることから、上記屈折率ndとアッベ数νdの両方を満たす光学ガラスとするために、成分としては、態様Aと同様にガラス成分を以下のように分類し、その含有率を調整すればよい。すなわち、(1)導入量の増加とともに屈折率を減少させ、かつアッベ数を増加させる効果を持つBO1.5やSiO2、AlO1.5などといったガラス形成成分の合計量NWFと、(2)導入量の増加とともに屈折率を増加させ、かつアッベ数をわずかに減少させることでガラスの高屈折率・低分散性を高めるLaO1.5やGdO1.5、YO1.5などといった希土類成分の合計量ΣREと、(3)導入量の増加とともに屈折率を良く増加させるとともにアッベ数をやや減少させるZrO2やTaO2.5といった成分の合計量(ZrO2+TaO2.5)と、(4)導入量の増加とともに屈折率を大幅に増加させるとともにアッベ数を大幅に減少させるTiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量と、(5)導入量の増加とともにガラス原料の熔解温度を低下させ、ガラスの安定性を高め、液相温度を低下させ、ガラス転移点を低下させるなどの効果を有するLiO0.5やZnOといった一価・二価の成分の合計量と、(6)上記に属さないその他の成分の合計量のそれぞれを調整すれば良い。このうち光学特性の調整においては(1)〜(4)の調整が有効である。
具体的に、本発明で重要な成分である(1)〜(3)について、(1)NWFの上限は49%とすることが好ましく、46%とすることがより好ましく、44%とすることがさらに好ましく、43%とすることが一層好ましく、42%とすることがより一層好ましく、41%とすることがさらに一層好ましく、40%とすることがなお一層好ましく、他方NWFの下限は32%とすることが好ましく、33%とすることがより好ましく、34%とすることが一層好ましく、35%とすることがより一層好ましく、36%とすることがさらに一層好ましく、37%とすることがなお一層好ましい。また(2)ΣREの上限は36%とすることが好ましく、35%とすることがより好ましく、34%とすることがさらに一層好ましく、33%とすることがなお一層好ましく、32%とすることがさらになお一層好ましく、31%とすることが特に好ましく、30%とすることが最も好ましく、他方ΣREの下限は21%とすることが好ましく、22%とすることがより好ましく、23%とすることがさらに好ましく、24%とすることが一層好ましく、25%とすることがより一層好ましく、26%とすることがなお一層好ましい。また(3)(ZrO2+TaO2.5)の上限は12%とすることが好ましく、さらには11%とすることがより好ましく、10%とすることがさらに好ましく、9.5%とすることが一層好ましく、9%とすることがより一層好ましく、8.5%とすることがなお一層好ましく、特に8%とすることが好ましい。(ZrO2+TaO2.5)の好ましい下限は3%、より好ましい下限は4%、さらに好ましい下限は5%、一層好ましい下限は5.5%、より一層好ましい下限は6%、さらに一層好ましい下限は6.5%、なお一層好ましい下限は7%である。
ΣREとNWFの導入量はΣREとNWFの比率であるΣRE/NWFを参照して調整することもできる。ΣRE/NWFの上限は1.2とすることが好ましく、1.1とすることがより好ましく、1.0とすることがさらに好ましく、0.95とすることが一層好ましく、0.9とすることがより一層好ましく、0.85とすることがさらに一層好ましく、0.8とすることがなお一層好ましく、他方ΣRE/NWFの下限は0.45とすることが好ましく、0.50とすることがより好ましく、0.55とすることがさらに好ましく、0.60とすることが一層好ましく、0.65とすることがより一層好ましく、0.70とすることがさらに一層好ましい。
それ以外の条件としては、希土類成分の混合により液相温度を低下させて、より光学特性に優れたガラスの安定性を高める(維持する)ために、希土類の合計量ΣREに対するLaO1.5の比率LaO1.5/ΣREに注意することが好ましい。上記のようにZrとTaを共に適当量導入するような成分構成を持つ態様Bにおいては、Laを多く用いるような比率が有効である。すなわちLaO1.5/ΣREの上限は0.9とすることが好ましく、0.85とすることがより好ましく、0.8とすることがさらに好ましく、0.77とすることが一層好ましく、0.75とすることがより一層好ましく、他方LaO1.5/ΣREの下限は0.5とすることが好ましく、0.55とすることがより好ましく、0.60とすることがさらに好ましく、0.65とすることが一層好ましく、0.70とすることがより一層好ましい。
特に態様Dでは必須の希土類成分に加えて、Zr、Ta、Ti、Nb、W、Biといった高屈折率・高分散成分のうち、ZrやTaを優先的に導入する一方で、Ti、Nb、W、Biについても最適量を導入して、態様A、B、Cよりも高屈折率・高分散化することが好ましい。それゆえ態様DではTaとZrの導入量に加えて、求める光学特性に応じて一定量のTi、Nb、W、Biを導入する事がガラスの光学特性と成形特性の向上において非常に有効である。
特に態様Dにおいては、任意成分としてWO3を導入することが高屈折率化と液相温度の低下において有効である。WO3の好ましい上限は10%、より好ましい上限は8%、さらに好ましい上限は7%、一層好ましい上限は6%、より一層好ましい上限は5.5であり、好ましい下限は0%、より好ましい下限は1%、さらに好ましい下限は2%、一層好ましい下限は3%、より一層好ましい下限は4%である。特にndを1.87以上に高める場合、WO3を3%以上、好ましくは4%以上に導入することが好ましい。
さらに、態様Dにおいては、任意成分としてTiO2、NbO2.5を含有することもできる。TiO2、NbO2.5は、低分散性を維持しつつ、屈折率を高める働きがあるものの、分散を高める働きもあることから、TiO2は0〜5%とし、NbO2.5は0〜5%とする。
その他の高屈折率・高分散成分は、発明の効果を損なわない範囲で導入することができるが、低分散性を保つ観点からはTiO2やNbO2.5やWO3やBiO1.5などといった高屈折率・高分散成分の合計量(TiO2+NbO2.5+WO3+BiO1.5)の上限は12%とすることが好ましく、さらには11%とすることがより好ましく、10%とすることがさらに好ましく、9%とすることが一層好ましく、8%とすることがより一層好ましく、7%とすることがなお一層好ましく、特に6%とすることが好ましく、他方、ガラスの安定性を保ち、かつ液相温度を著しく上昇させることなく屈折率を高める観点から、高屈折率・高分散成分の合計量(TiO2+NbO2.5+WO3+BiO1.5)の下限は1%とすることが好ましく、2%とすることがより好ましく、3%とすることがさらに好ましく、4%とすることが一層好ましく、5%とすることがより一層好ましい。
LiO0.5を0〜10%、
ZnOを0〜28%、
YbO1.5を0〜3%、
を含む点は、本発明の第1及び第2の基本態様の光学ガラスと相違する。
LiO0.5を0〜10%とするのは、
LiO0.5の含有量が10%を超えると屈折率が低下傾向を示すとともに、液相温度が上昇し、ガラス融液の粘度が低下傾向を示すため、LiO0.5の含有量を10%以下とする。LiO0.5の含有量の好ましい上限は7%、より好ましい上限は5%、さらに好ましい上限は4.5%であり、LiO0.5の含有量の好ましい下限は1%、より好ましい下限は2%、さらに好ましい下限は2.5%である。
ZnOを0〜28%とするのは、ZnOを多量に導入すると、光学特性面で屈折率がやや増加する一方、高分散化(νd減少)する問題があるが、態様Dは、態様A、B、Cよりも高屈折率かつ高分散領域のnd=1.825〜1.90、νd=35〜43の分散を持つガラスを得ることを目的としているので、許容される含有量が態様A、B、Cのガラスよりも増大するからである。このためTg低下成分の調整の尺度となる2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)は、おのずと小さい値となる。すなわち2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)の好ましい上限は0.7であり、より好ましい上限は0.6、さらに好ましい上限は0.5、一層好ましい上限は0.4である。2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)の好ましい下限は0であり、さらにより好ましい下限は0.05、さらに好ましい下限は0.1、一層好ましい下限は0.15、より一層好ましい下限は0.2、さらに一層好ましい下限は0.25である。
YbO1.5を0〜3%とするのは、YbO1.5が高価であるためと、過剰な導入によって液相温度が増加してガラス成分の揮発を間接的に助長し、ガラスの均質性と成形特性を損なうためである。さらに赤外領域に吸収を持つために、高精度のビデオカメラや監視カメラなど、近赤外領域の感光特性が求められる高感度の光学系への使用に適さない。ただし態様Dのガラスは屈折率が高いため、赤外領域の光を受光しないコンパクトデジタルカメラ等に用途を限定して用いることも有効である。このため3%を上限としてYbO1.5を導入することもできる。YbO1.5は高価かつ赤外線吸収効果があるため、上限を3%とする。
(2LiO0.5+ZnO+(F/2))を20%以上とするのは、ガラス転移温度を低下させるためである。
さらに、態様Dの光学ガラスは、屈折率ndとアッベ数νdとが、下記(4)式を満たすことが好ましい。屈折率ndとアッベ数νdとの関係については後述する。
nd-(2.25-0.01×νd)≧−0.01 ・・・(4)
各ガラス成分の作用、効果は以下に順次説明する。尚、表1−1〜1−29及び2−1〜2−18には、組成または物性の範囲の好ましい上限値及び下限値を示す。上限値及び下限値ともに番号1で示される値が、数値範囲の最も外側の値であり、番号が2、3、4、5、6、7、8と大きな番号で示されるにつれて、上限値及び下限値は、数値範囲の内側であって、より好ましい値になる。各表の上限値または下限値の欄において最も大きな番号で示された値が最も好ましい値(上限値または下限値)である。また、表1−1〜1−29及び2−1〜2−18中の上限値及び下限値を組み合わせることもできる。
BO1.5は、ガラスネットワーク形成成分であり、本発明の光学ガラスの必須成分である。本発明の光学ガラスがBO1.5を20%〜70%の範囲で含有することで、ガラス安定性を向上させる効果がある。BO1.5を20%以上含有することで、低分散性の向上効果と液相温度の低下効果が得られる。また、BO1.5を、70%を超えて含有すると、屈折率の低下及び揮発量の増加を招き好ましくない。このような観点から、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、BO1.5含有の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。特に、態様Dの上限は、屈折率を高めるという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。また、態様Cの下限は、νdを大きくするという観点から、基本態様に比べて比較的高い値に設定される。
SiO2は、ガラスネットワーク形成成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスは、SiO2を0〜20%の範囲で含有することができ、それによりガラス安定性を著しく向上させる効果がある。SiO2を、0%を超えて含有することで、融液粘度の上昇と液相温度の低下と機械的強度の向上効果が得られる。また、SiO2を、20%を超えて含有すると、屈折率の低下及びガラス転移温度の上昇を招き好ましくない。このような観点からSiO2含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。
BO1.5およびSiO2の合計含有量の好ましい範囲は以下のとおりである。
基本態様 32〜74%、より好ましくは36〜70%
態様A 42〜61%、44〜59%、46〜57%、48〜55%(左から右へ向かってより好ましくなる。以下の態様も同様)
態様B 39〜57%、41〜55%、43〜53%、45〜51%
態様C 50〜72%、52〜70%、54〜68%、56〜66%
態様D 30〜46%、32〜45%、34〜44%、35〜43%
尚、AlO1.5およびGeO2は、BO1.5およびSiO2と同等のネットワーク形成機能がある成分であり、本発明の光学ガラスがこれらの成分を含む場合には、上記合計含有量の範囲は、BO1.5およびSiO2に加えてAlO1.5およびGeO2を含む成分の合計含有量に適用される。但し、AlO1.5はBO1.5およびSiO2に比べて効果が劣るので、AlO1.5を含有するよりはBO1.5およびSiO2を含有する方が好ましく、GeO2は高価であるため、GeO2を含有するよりはBO1.5およびSiO2を含有する方が好ましい。
LaO1.5は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの必須成分である。本発明の光学ガラスがLaO1.5を6〜30%の範囲で含有することで、屈折率を上昇させる効果が得られる。LaO1.5を6%以上含有することで、低分散性の維持効果と化学的耐久性の向上効果と機械的強度の向上効果が得られる。さらに、LaO1.5は、他の希土類に比べて融点が低く、導入可能量が多いという利点もある。また、LaO1.5を、30%を超えて含有すると、ガラス安定性が低下し、液相温度が上昇し、ガラス転移温度も上昇するので好ましくない。このような観点からLaO1.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Dの下限は、屈折率を高めるという観点から、基本態様に比べて比較的高い値に設定される。
GdO1.5は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの必須成分である。本発明の光学ガラスがGdO1.5を4〜25%の範囲で含有することで、屈折率を上昇させる効果が得られる。GdO1.5を4%以上含有することで、低分散性の維持効果と化学的耐久性の向上効果と機械的強度の向上効果が得られる。さらに、GdO1.5は、他の希土類との混合により融点を低下させ成形性を高めるという利点もある。また、GdO1.5を、25%を超えて含有すると、ガラス安定性が低下し、液相温度が上昇し、ガラス転移温度も上昇するので好ましくない。このような観点からGdO1.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Dの上限は、高分散成分を導入しても液相温度が上昇しないような好ましいLaO1.5/ΣREの比率を設定するという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
YO1.5は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがYO1.5を0〜10%の範囲で含有することができ、それにより屈折率を上昇させる効果が得られる。YO1.5を0%を超えて含有することで、低分散性の維持効果と化学的耐久性の向上効果と機械的強度の向上効果が得られる。さらに、YO1.5は、他の希土類との混合により融点を低下させ成形性を高めるという利点もある。さらに、YO1.5は、比重当たりの屈折率が高く、本発明の光学ガラスからなるレンズの軽量化に寄与する。また、YO1.5を、10%を超えて含有すると、ガラス安定性が低下し、液相温度が上昇し、ガラス転移温度も上昇するので好ましくない。このような観点からYO1.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Dの上限は、高分散成分を導入しても液相温度が上昇しないような好ましいLaO1.5/ΣREの比率を設定し、かつ高い屈折率の希土類成分を優先的に使用するという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
LiO0.5は、ガラス転移温度、屈伏点を低下させ、プレス成形温度を低下させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがLiO0.5を0〜20%の範囲で含有することができ、それによりガラス転移温度を著しく低下させる効果が得られる。LiO0.5を、0%を超えて含有することで、他のアルカリに比べガラスを高密度化することができ、その結果、他のアルカリに比べ高屈折率の光学ガラスを提供することができる。また、LiO0.5を、20%を超えて含有すると、融液粘度が低下し、液相温度が上昇し、これらの結果、ガラスの安定性が低下する。さらに、LiO0.5を、20%を超えて含有すると、屈折率も低下するので好ましくない。このような観点からLiO0.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Dの上限は、高分散化を許容して、Tgを低下する成分としてLiよりZnを用いるという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
ZnOは、ガラス転移温度、屈伏点を低下させ、プレス成形温度を低下させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがZnOを0〜20%の範囲で含有することができ、それによりガラス転移温度を低下させる効果が得られる。ZnOを、0%を超えて含有することで、屈折率の上昇、液相温度の低下、他のTg低下成分に比べ揮発を抑制できる。また、ZnOを、20%を超えて含有すると、高分散化(νd減少)し、かつ比重あたりのndが低いので好ましくない。このような観点からZnO含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Cの上限は、低分散性を高めるという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。また、態様Dの下限は、屈折率を高めるという観点から、基本態様に比べて比較的高い値に設定される。
Fは、ガラス転移温度、屈伏点を低下させ、プレス成形温度を低下させる成分であり、本発明の光学ガラスの必須成分である。本発明の光学ガラスは、O(酸素)含有量に対するF含有量のモル比F/Oが0.01〜0.30である。この範囲でFを含有することでガラス転移温度を低下させる効果が得られる。Fを、モル比F/Oが0.01以上含有することで、希土類の導入量を増加させ、ガラスの安定性を向上させることができ、かつ耐候性を向上させることもできる。また、Fを、モル比F/Oが0.30を超えて含有すると、揮発による特性変動が増加、脈理の増加、屈折率の低下、融液粘度の低下が生じ、かつ比重あたりのndが極めて低いので好ましくない。このような観点からF含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。
ZrO2は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがZrO2を0〜8%の範囲で含有することができ、それにより屈折率を著しく上昇させる効果が得られる。ZrO2を0%を超えて含有することで、希土類よりもガラスを安定化、希土類よりも液相温度低下、粘性を上昇、化学的耐久性の向上、機械的強度の向上効果が得られる。また、ZrO2を、8%を超えて含有すると、やや高分散化(νd減少)し、ガラス転移温度も上昇するので好ましくない。このような観点からZrO2含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様A及びCの上限は、νdを大きくするという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
TaO2.5は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがTaO2.5を0〜10%の範囲で含有することができ、それにより屈折率を著しく上昇させる効果が得られる。TaO2.5を0%を超えて含有することで、希土類よりもガラスを安定化、希土類よりも液相温度低下、粘性を上昇、化学的耐久性の向上、機械的強度の向上効果が得られる。また、TaO2.5を、10%を超えて含有すると、やや高分散化(νd減少)し、ガラス価格も上昇するので好ましくない。このような観点からTaO2.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様A及びCの上限は、低分散化するという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
WO3は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがWO3を0〜10%の範囲で含有することができ、それにより屈折率を著しく上昇させる効果が得られる。WO3を0%を超えて含有することで、希土類よりもガラスを安定化、希土類よりも液相温度低下、粘性をやや上昇される効果が得られる。また、WO3を、10%を超えて含有すると、著しく高分散化(νd減少)するので好ましくない。このような観点からWO3含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Cの上限は、低分散化するという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。また、態様Dの下限は、高屈折率にするという観点から、基本態様に比べて比較的高い値に設定される。
NbO2.5は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがNbO2.5を0〜8%の範囲で含有することができ、それにより屈折率を著しく上昇させる効果が得られる。NbO2.5を0%を超えて含有することで、希土類よりもガラスを安定化、希土類よりも液相温度低下、粘性をやや上昇させる効果が得られる。また、NbO2.5を、8%を超えて含有すると、著しく高分散化(νd減少)するので好ましくない。このような観点からNbO2.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様A、B、Cの上限は、低分散化し、液相温度を低下させるという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
TiO2は、屈折率を上昇させる成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスがTiO2を0〜8%の範囲で含有することができ、それにより屈折率を著しく上昇させる効果が得られる。TiO2を0%を超えて含有することで、希土類よりもガラスを安定化、希土類よりも液相温度低下、粘性をやや上昇させる効果が得られる。また、TiO2を、8%を超えて含有すると、著しく高分散化(νd減少)するので好ましくない。このような観点からTiO2含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様A、B、Cの上限は、低分散化するという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
AlO1.5は、ガラスネットワーク形成成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスは、AlO1.5を0〜10%の範囲で含有することができ、それによりガラス安定性をやや向上させる効果がある。AlO1.5を、0%を超えて含有することで、低分散の向上、粘性をやや向上、化学的耐久性の向上、機械的強度の向上の各効果が得られる。また、AlO1.5を、10%を超えて含有すると、屈折率の低下、ガラス転移温度の上昇及び液相温度の上昇を招き好ましくない。このような観点からAlO1.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Dの上限は、屈折率を高めるという観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
GeO2は、ガラスネットワーク形成成分であり、本発明の光学ガラスの任意成分である。本発明の光学ガラスは、GeO2を0〜5%の範囲で含有することができ、それによりガラス安定性をやや向上させる効果がある。GeO2を、0%を超えて含有することで、粘性をやや向上し、SiO2より屈折率を上昇させる効果が得られる。また、GeO2を、5%を超えて含有すると、ガラス価格の上昇を招き好ましくない。このような観点からGeO2含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。但し、GeO2は使用すれば特性面で有利になるが格段に高価であることから、GeO2の量は極力削減して、所要の特性を有する光学ガラスを得ることが好ましい。
GaO1.5は、ガラスネットワーク形成成分であるが、特性を保つ範囲で導入可能だが、導入は望ましくない成分である。本発明の光学ガラスは、GaO1.5を0〜5%の範囲で含有することができ、それによりガラス安定性をやや向上させる効果がある。GaO1.5を、0%を超えて含有することで、粘性をやや向上させ、SiO2より屈折率を上昇させる効果が得られる。また、GaO1.5を、5%を超えて含有すると、ガラス価格の上昇を招き好ましくない。このような観点からGaO1.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。
PO2.5は、ガラスネットワーク形成成分であるが、特性を保つ範囲で導入可能だが、導入は望ましくない成分である。本発明の光学ガラスは、PO2.5を0〜5%の範囲で含有することができる。PO2.5を、5%を超えて含有すると、ガラスの安定性を低下させるので好ましくない。このような観点からPO2.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。
NaO0.5、KO0.5、RbO0.5、CsO0.5は修飾成分であり、特性を保つ範囲で導入可能である。本発明の光学ガラスは、NaO0.5、KO0.5、RbO0.5、CsO0.5は合計量で0〜10%の範囲で含有することができ、10%を超えて含有すると、LiO0.5よりガラスの安定性を低下させ、LiO0.5よりガラスの屈折率を低下させ、LiO0.5よりガラス転移温度を上昇させるので好ましくない。このような観点からNaO0.5、KO0.5、RbO0.5、CsO0.5の合計量の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。
MgO、CaO、SrO、BaOは修飾成分であり、特性を保つ範囲で導入可能である。本発明の光学ガラスは、MgO、CaO、SrO、BaOは合計量で0〜10%の範囲で含有することができ、10%を超えて含有すると、ZnOよりガラスの安定性を低下させ、ZnOよりガラスの屈折率を低下させ、ZnOよりガラス転移温度を上昇させ、ZnOより液相温度を上昇させるので好ましくない。このような観点からMgO、CaO、SrO、BaOの合計量の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。
ScO1.5、InO1.5、LuO1.5は修飾成分であり、特性を保つ範囲で導入可能である。本発明の光学ガラスは、ScO1.5、InO1.5、LuO1.5は合計量で0〜10%の範囲で含有することができ、10%を超えて含有すると、LaO1.5、GdO1.5よりガラスの安定性を低下させ、LaO1.5、GdO1.5より液相温度を上昇させ、LaO1.5、GdO1.5よりガラスの屈折率を低下させるので好ましくない。このような観点からScO1.5、InO1.5、LuO1.5の合計量の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。
YbO1.5は、修飾成分であるが、赤外域に吸収を生じるため可能な限り導入しないことが好ましい成分である。本発明の光学ガラスは、YbO1.5を0〜9%の範囲で含有することができる。YbO1.5を、9%を超えて含有すると、LaO1.5、GdO1.5よりガラスの安定性を低下させ、LaO1.5、GdO1.5より液相温度を上昇させ、LaO1.5、GdO1.5よりガラスの屈折率を低下させ、赤外域に吸収を有するので好ましくない。このような観点からYbO1.5含有の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。特に、態様Aの上限は、先に書かれた価格、液相温度、赤外吸収という観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。
BO1.5×F/Oは、揮発による特性変動の抑制の指標となる。BO1.5は陽イオン%で表され、F/OはFとOのモル比である。BO1.5×F/Oは、0.05〜10.00の範囲である。ガラスの揮発は硼素およびフッ素の低減により抑制される。したがって揮発成分は硼素とフッ素の化合物およびそれらと大気中の酸素や水分との反応で生じた成分と考えられる。定性的にその揮発成分の量はガラス中の硼素濃度とガラス中のフッ素濃度の積に比例する。この値が小さいほど、ガラスからの潜在的な揮発量が低減する。このような観点からBO1.5×F/Oの上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、BO1.5×F/Oの値は、BO1.5、F及びOの各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。特に、態様Cの上限は、低分散化という観点から、基本態様に比べて比較的高い値に設定され、態様Dの上限は、高屈折率という観点から、基本態様に比べて比較的低い値に設定される。また、態様Bの下限は、高屈折率という観点から、基本態様に比べて比較的高い値に設定される。
なお、ガラスの中の泡の量を調整するために以下の成分を添加してもよい。
CeO2は、本発明の効果を損なわない範囲で0〜2%の範囲で添加することができる。CeO2の好ましい添加量は0〜1%、さらに好ましい範囲は0〜0.5%、より好ましくは0〜0.3%、さらに好ましくは0〜0.1%であり、導入しないことが一層好ましい。
SnO2は、本発明の効果を損なわない範囲で0〜2%の範囲で添加することができる。SnO2の好ましい添加量は0〜1%、より好ましくは0〜0.5%、さらに好ましくは0〜0.3%、一層好ましくは0〜0.1%であり、導入しないことがより一層好ましい。
SbO1.5は、本発明の効果を損なわない範囲で、0〜1%の範囲で導入することができる。SbO1.5の好ましい添加量は0〜0.5%、より好ましい範囲は0〜0.1%、さらに好ましい範囲は0〜0.08%、一層好ましい範囲は0〜0.05%である。SbO1.5を添加する場合は0.01〜0.02%を導入することが好ましい。
さらに、本発明の目的を達成する上から、BO1.5、SiO2、GeO2、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、TiO2、ZrO2、TaO2.5、NbO2.5、WO3、YbO1.5、CeO2、SnO2、およびSbO1.5の合計量を95%以上にすることが好ましく、96%以上にすることがより好ましく、97%以上にすることがさらに好ましく、98%以上にすることが一層好ましく、99%以上にすることがより一層好ましく、99.5%以上にすることがさらに一層好ましく、100%とすることが特に好ましい。
また、本発明の目的を達成する上から、BO1.5、SiO2、GeO2、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、TiO2、ZrO2、TaO2.5、NbO2.5、WO3、YbO1.5、CeO2、SnO2、SbO1.5、GaO1.5、PO2.5、ScO1.5、InO1.5およびLuO1.5の合計量を98%以上にすることが好ましく、99%以上にすることがより好ましく、99.5%以上にすることがさらに好ましく、99.8%以上にすることが一層好ましく、99.9%以上にすることがより一層好ましく、100%とすることが特に好ましい。
余剰B-O-B結合:D (=BB-(BO-BB))は、揮発による特性変動の抑制の指標となり、−60〜+60の範囲である。ガラス成分のうち、特に硼素の揮発はガラス組成の影響を受ける。揮発のきっかけとなる初期の反応は、フッ素イオンによりガラス中の硼素−酸素結合の組み換えが生じる反応と考えられる。このとき、ガラス中で反応に寄与するB-O結合の数密度は、ガラス中の硼素の結合の数密度からガラス中の硼素以外の陽イオンとの架橋結合の数密度を差し引いたもの、すなわち余剰な硼素同士の結合の数密度に定性的に比例すると考えられる。したがってこの値が小さいほど、硼素とフッ素の反応が抑えられ、揮発の速度が低減する。特にこの値を0以下にすると効果が大きい。したがって、フッ素含有量が少なく、かつ余剰のB-O-B結合が少ないほど揮発を抑制する効果が大きく、特にこの値を0以下、つまり、ホウ素に結合する酸素量がその他の成分に結合する酸素量よりも小さいようにすると効果が大きい。単なるB×FでなくD×Fが小さいことも好ましい。
図10は、横軸にF含有量、縦軸に重量減少をとり、態様A〜Dに属する本発明の光学ガラスについて、F含有量の増減による重量減少(揮発)の変化を示したものである。このグラフより、F含有量の増加とともに、重量減少が増大する傾向があることがわかる。図11は、横軸にD値、縦軸に重量減少をとり、F含有量が7〜9%のガラスについて、D値と重量減少の関係を示したものである。また、図12は、横軸にD値、縦軸に重量減少をとり、F含有量が14〜16%のガラスについて、D値と重量減少の関係を示したものである。さらに、図14は、図12と13を合わせたものである。
重量減少は、ガラス融液からの揮発に起因するもので、揮発の定量的な指標となる。Fは、単独で揮発する場合もあるが、フッ素によりガラスネットワークを形成するB−O―Bの結合が切断され、BF3やBF2 +など、フッ素に対して他のガラス成分が結合した分子の形で揮発する場合もある。ガラスの成形において深刻な揮発の脈理や特性の時間変化をもたらすのは主に後者の揮発である。
フッ素により生成される揮発にはSiF4などホウ素以外のフッ素化合物も存在するが、その蒸気圧の違いから、揮発成分の多くはフッ素およびホウ素(およびガラスや大気中の酸素、水素)から構成されると考えて良い。
ガラスネットワーク中のB−O−Bという結合は、B−O−X(Xは、B以外のカチオン)という結合と比較すると、B−O−Bという結合のほうが、フッ素による酸素とフッ素の交換反応を受けたときに揮発成分を形成する確率が高い。
D値が大きいガラスにはB−O−B結合が多く存在するため、D値が大きいガラスのほうが、よりガラス中の成分が揮発しやすくなる。一方で、Bのネットワークが切断されやすくても、F含有量が少なければ、揮発物は生成されにくい。
また、F含有量が多くても、D値が小さく、Bのネットワークが切断されにくければ、揮発物は生成されにくい。
このように、揮発の大小に大きな影響を与える要因は、F含有量とD値である。
B以外のカチオンXで、BをFとともに揮発させずにガラス中にとどめておく力の強い成分が、Laに代表される希土類成分である。したがって、F含有量とD値に次いで、後述するように、揮発の大小に影響を与える指標として、BO1.5の含有量とF含有量の積をLaO1.5含有量で割った値、すなわち、(BO1.5×F)/LaO1.5が考えられる。(BO1.5×F)/LaO1.5を小さくすることにより、さらに揮発を抑えることができる。
このような観点から余剰B-O-B結合:Dの上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、余剰B-O-B結合:Dの値は、BO1.5、Fおよびその他の成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
(算出方法)
BB=(BO1.5量)×1.5
BO=全酸素量
D=BB-(BO-BB)
BO1.5量は、BO1.5含有量を陽イオン%で表したときの数値
BOは全陽イオンの合計量を100としたときのO量の相対値
BO1.5×F/LaO1.5
また、LaO1.5を必須成分とする本発明のガラスにおいて、いっそうの高屈折率・低分散性を維持しながら揮発量を調整するためには、BO1.5とFの積をLaO1.5で除した指標であるBO1.5×F/LaO1.5を調整することが好ましい。酸素およびフッ素の双方と結合が可能なLaO1.5の導入によって揮発に寄与する実効的なフッ素量が減少するためである。すなわちBO1.5×F/LaO1.5を小さくするほど揮発量が低下する。BO1.5×F/LaO1.5の値は、BO1.5やFやLaO1.5およびその他の成分を調整することで、適宜設定できる。
SiO2/BO1.5、すなわちBO1.5の含有量に対するSiO2の含有量の比は、粘性増大による成形脈理の抑制の指標となり、0.10〜0.40の範囲とすることが好ましい。ガラスネットワーク形成成分のうち、粘性を高めるSiO2を多く用いることで成形時の粘性を高め、脈理の発生によるガラスの内部品質の劣化を抑制する。このような観点からSiO2/BO1.5の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、SiO2/BO1.5の値は、SiO2及びBO1.5の各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
LaO1.5/ΣRe (ΣRe=希土類成分の合計量)、すなわち希土類成分の合計量に対するLaO1.5の含有量の比は、液相温度低下による成形脈理の抑制の指標となり、0.30〜0.80の範囲とすることが好ましい。ガラスの融点を高める希土類の比率を適正化することにより、共融効果による融点の低下がもたらされる。その結果、ガラス融液に結晶の析出する最低温度すなわち液相温度が低下するため、持続的に流出可能なガラス融液の最大粘性が増大する。このような観点からLaO1.5/ΣReの上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、LaO1.5/ΣReの値は、LaO1.5及び各希土類成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
2LiO0.5+ZnO+(F/2)、すなわち、LiO0.5の含有量の2倍、ZnOの含有量およびFの含有量の1/2倍の合計量は、ガラス転移温度Tg低下による精密プレス成形性の向上の指標となり、20〜60の範囲とすることが好ましい。ガラスへのLi、Zn、Fの導入によって当該ガラスのTgを低下させる効果は、それぞれLi、Zn、Fの順に1原子%あたり2、1、0.5となる。したがってこれらの総和である2LiO0.5+ZnO+(F/2)はガラスのガラス転移温度Tgと概ね連動するため、この指標の大きさがプレス成形しやすさの指標の一つになる。LiO0.5、ZnOは陽イオン%で表したときの値であり、Fは全陽イオンの合計量を100としたときのF量の相対値である。このような観点から2LiO0.5+ZnO+(F/2)の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、2LiO0.5+ZnO+(F/2)の値は、LiO0.5、ZnO及びFの各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
図5は、横軸に2LiO0.5+ZnO+(F/2)の値、縦軸にガラス転移温度Tgをとり、2LiO0.5+ZnO+(F/2)の増減によるTgの変化の様子を示したものである。図5より明らかなように、2LiO0.5+ZnO+(F/2)を増加させることによりTgを低下させることができ、2LiO0.5+ZnO+(F/2)を減少させるとTgが上昇する。
2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)、すなわちLiO0.5の含有量の2倍をLiO0.5の含有量の2倍とZnOの含有量の合計量で割った値は、Tg低下成分の調整によるガラス特性向上(νd低下の抑制および比重の低下に効果)に寄与し、0.10〜1.00の範囲とすることが好ましい。ガラスのガラス転移温度Tgを低下させる成分のうち、LiはZnと比べてνdの低下が少なく、また得られたガラスの比重に対する屈折率ndを高める効果があるため、高屈折率・低分散かつ低比重・高動粘度のガラスを得るのに有用である。このような観点から2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、2LiO0.5/(2LiO0.5+ZnO)の値は、LiO0.5及びZnOの各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
ZnO+3ZrO2+5TaO2.5、すなわちZnOの含有量、ZrO2の含有量の3倍およびTaO2.5の含有量の5倍の合計量は、高分散成分量の制御による低分散性の維持の指標となり、0〜60.0の範囲とすることが好ましい。ガラスへのZn、Zr、Taの導入によって当該ガラスのνdを低下させる効果は、それぞれZn、Zr、Ta順に1原子%あたりおおよそ1、3、5となる。したがってこれらの総和であるZnO+3ZrO2+5TaO2.5はガラスのνdと概ね連動するため、この指標の大きさが低分散性の指標の一つになる。なお、Taより分散を損なうW、Nb、Tiなどを指標に含むことも可能であるが、W、Nb、Tiは先に述べたとおり多量の導入は好ましくない。このような観点からZnO+3ZrO2+5TaO2.5の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、ZnO+3ZrO2+5TaO2.5の値は、ZnO、ZrO2及びTaO2.5の各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
ガラス転移温度Tg(℃)は、精密プレス成形の難易の指標の一つであり、200〜590℃の範囲とすることが好ましい。ガラス転移温度が低いとプレス成形温度も低くすることができる。測定は、示差熱分析装置DSCを用いて実施できる。このような観点からガラス転移温度Tg(℃)の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、ガラス転移温度Tg(℃)は、主に、LiO0.5、ZnO、Fの各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。さらにSiO2、TaO2.5の各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、さらに微調整することもできる。
液相温度LT(℃)は、ガラス安定性の指標の一つであり、500〜1140℃の範囲とすることが好ましい。熔融ガラスを炉内で保持し、結晶析出の見られない最低温度を液相温度(LT)と定義した。(炉温を10℃刻みで設定)液相温度LT(℃)の測定は、ガラス30ccを白金製坩堝に入れて1200℃〜1250℃の炉内で10〜20分程度熔解し、攪拌して均質化した後、得られたガラスを坩堝ごとガラス転移温度Tg以下まで冷却後、るつぼに白金製の蓋をかけ、1050℃〜1140℃に設定された炉内に2時間保持してガラス表面、内部、坩堝内壁との接触面に析出する結晶を観察することで行う。このような観点から液相温度LT(℃)の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。また、液相温度LT(℃)は、ガラスの熱的安定性を改善するBO1.5、SiO2などの各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。ガラスの熱的安定性を改善することにより、液相温度を低下させることができる。個々の態様の組成範囲の中では、熱的安定性を改善することにより、ガラスの液相温度が低下する傾向にある。
λ80、λ70、λ5(nm)は、それぞれ厚さ10mmのサンプルの外部透過率が80%、70%、5%を示す波長(nm)である。当該ガラスの特異な波長依存性を抑制する観点から、少なくともλ80〜1550nmまでの外部透過率が25%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは75%以下、いっそう好ましくは80%以下に低下しないことが望ましい。また、λ80、λ70、λ5(nm)およびλ80〜1550nmの波長域における外部透過率は、紫外吸収端の異なる各成分の光学ガラスへの導入量を調整し、不純物となるFe、Cr、Mn、Co、Niといった着色元素の量を制限し、各種酸化性ガス成分(NO3等)、還元性ガス成分(NH4等)を導入することで、適宜調整できる。このよう理由から、Fe、Cr、Mn、Co、Niをいずれも添加しないことが好ましく、Fe、Cr、Mn、Co、Niの不純物としての混入量も制限することが望ましい。
液相温度における粘度を室温における密度で割った値(動粘度)(10-4 m2/s=St)は、熔融ガラスの成形性の指標であり、0.20〜1000(St)の範囲であることが好ましい。これは液相温度における粘性ηLT(P)を比重(g/cc)で割ることで得られる。ガラスが自重によりパイプ等から流出される際の流量に対応し、熔融ガラスの成形しやすさの尺度となる。ガラスの比重を考慮していることにより、異なる比重のガラスとでその流量を比較しやすい。このような観点から液相温度における粘度を室温における密度で割った値の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。また、動粘度の値は、ガラスの熱的安定性を改善する効果のあるBO1.5や、同様に熱的安定性を改善しつつ、ガラスの粘性を高める効果のあるSiO2といった各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。ガラスの熱的安定性を改善することにより液相温度が低下し、液相温度における粘度が増加する。BO1.5、SiO2は、希土類成分などと比較し、ガラスの比重を減少させる働きもあるため、BO1.5、SiO2の導入量を増やすことにより、動粘度を増加させることができる。
単位時間あたりのガラスの流出量、すなわち流出速度は、ガラスの密度に比例し、ガラスの粘度に反比例する。したがって、動粘度の値の逆数は、流出速度に比例する。よって、動粘度の逆数は、流出速度の指標とすることができる。
図6は、横軸に温度、左側縦軸にガラスの粘度、右側縦軸に動粘度の逆数、すなわち流出速度の指標をとり、本発明の光学ガラスの一例における温度変化に対する粘度変化、動粘度の逆数の変化を示したものである。
図6において、比較的粘性の高い領域(例えば粘度10dPa・s以上、すなわち940℃以下)においては粘度が1dPa・s減少することによる流出速度の指標(動粘度の逆数)の増分が小さいことがわかる。
一方、比較的粘性の低い領域(例えば粘度5dPa・sあるいは3dPa・sなど)では、粘度が1dPa・s減少することによる流出速度の指標(動粘度の逆数)の増分が大きくなるので、粘度の値が0.5dPa・sあるいは1.0dPa・s異なるだけでも流出速度の相対的な変化が大きくなり、ガラスの成形性に大きく影響する。液相温度が1050℃超、更には1100℃以上となるようなガラス、すなわち、液相温度における粘性が上記低い粘性に属するガラスでは、液相温度が僅か10℃違っただけでも成形性に大きな影響が出る理由は、このような事情による。
液相温度における粘度が低いと脈理が発生しやすい、ガラスの流れを制御しにくいなどの問題が生じやすくなる。液相温度における粘度が高いと、ガラス流出量が減少し、生産性が低下する、あるいは、ガラス融液の溶解炉内における滞在時間が長くなりすぎて、諸特性が変動してしまう。
本発明の光学ガラスは、一眼レフカメラなどに用いられる大口径のレンズとして適しており、そのため比重が小さいことが望ましい。このような観点から比重の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。尚、比重は、アルキメデス法により測定できる。また、比重は、比較的分子量の小さいBO1.5やSiO2、比較的分子量の大きい希土類成分の各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
高屈折率・低分散性の度合い nd-(2.25-0.01×νd)
本発明の光学ガラスは高屈折率・低分散のガラスであり、その度合いは、横軸にnd、縦軸にνdをとったnd-νd図において、(nd、νd)=(1.80、45)と(1.75、50)を結ぶ直線よりも高屈折率・低分散側にあることが好ましい。またガラスの成形性を維持するためには、一定量のガラス形成成分が必要であるため、あまりにも高屈折率・低分散性の度合いが大きなガラス組成はガラスの成形性を損ない好ましくない。このような観点からnd-(2.25-0.01×νd)の上限及び下限は、本発明の基本態様並びにA、B、C及びDの各態様においては、以下のように設定することが適当である。nd-(2.25-0.01×νd)は、屈折率ndとアッベ数νdから計算される。また、nd-(2.25-0.01×νd)の値は、希土類成分を増量することにより増加し、BO1.5、ZnO、ZrO2、TaO2.5などを増量すると減少するので、これら各成分の光学ガラスへの導入量を調整することで、適宜設定できる。
化学量論比からのずれ(酸素+フッ素/2)/陽イオン (モル比)
ガラスへのフッ素イオンの導入は、主に、陽イオン%の酸化物を弗化物に置換する形で行われる。この際、ガラス中の酸素欠陥や陽イオンの欠陥に代表される格子欠陥由来の着色等を抑制するため、ガラス中の陽イオンと陰イオンは、ガラス中の電荷を中性に保つ形で導入されることが好ましい。したがって、ガラスの作製に用いられる成分は、1つの酸素原子を2つのフッ素原子で置換するなどして、ガラスの化学量論比を保つように導入されることが好ましい。このような観点から化学量論比からのずれの上限及び下限は以下のように設定することが適当である。酸素イオンのモル%およびフッ素イオンのモル%、ならびに陽イオン%の合計から計算できる。また、上記化学量論比からのずれは、ガラス成分として、遷移金属酸化物(ZrO2、TaO2.5、TiO2、NbO2.5、WO3など)を導入したときに各種酸化性ガス成分(NO3等)、還元性ガス成分(NH4等)などの導入によって適宜設定できる。なお化学量論比からのずれは、典型金属酸化物の導入の際はあまり起こらない。
酸素イオン/陽イオン(モル比)は、酸素イオンのモル%は、陽イオンを導入するための各成分の化学式に含まれる陽イオン1つあたりの単位酸素数(例:BO1.5の酸素数は1.5)を定義し、ガラス中の陽イオン%×単位酸素の総和を陽イオン%の和で除して百分率表示したものである。同じくフッ素イオンのモル%は、ガラス中に導入されたフッ素のイオン%の和を陽イオン%の和で除して百分率表示したものである。このような観点からの上限及び下限は以下のように設定することが適当である。酸素イオンのモル%と陽イオン%から計算できる。また、酸素イオン/陽イオン(モル比)は、ガラス成分として、遷移金属酸化物(ZrO2、TaO2.5、TiO2、NbO2.5、WO3など)を導入したときに各種酸化性ガス成分(NO3等)、還元性ガス成分(NH4等)などの導入によって適宜設定できる。なお酸素イオン/陽イオン(モル比)は,ガラス成分に価数の大きな陽イオンを導入するほど大きくなる一方、F/O比を大きくするほど小さくなる傾向がある。
ndの時間変化 Δnd(/hr)
屈折率の時間変化とは、熔融中のガラス融液をサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として、屈折率ndを測定し、上記サンプリングから所定の時間間隔を経た後、再度、ガラス融液からサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として屈折率ndを測定する作業を複数回行い、屈折率ndの各測定値と、サンプリングの時間間隔から求められる測定値である。余剰B-O-B結合を小さくし、また揮発成分の量であるBO1.5×F/Oを低減することにより、屈折率の時間変化が減少する。このような観点からndの時間変化 Δnd(/hr)の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。また、ndの時間変化は、ガラス融液からの揮発によってガラス組成が僅かながら変化することに起因する。上記揮発を抑制すれば、屈折率ndの時間変化も減少させることができる。揮発量の調整は、BO1.5やFをはじめとする諸成分の光学ガラスへの導入量を調整することにより可能である。揮発量の大小に最も大きく影響を与えるのが、BO1.5とFの光学ガラスへの導入量である。
Tgの時間変化 ΔTg(℃/hr)
Tgの時間変化とは、熔融中のガラス融液をサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として、ガラス転移温度Tgを測定し、上記サンプリングから所定の時間間隔を経た後、再度、ガラス融液からサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料としてガラス転移温度Tgを測定する作業を複数回行い、ガラス転移温度Tgの各測定値と、サンプリングの時間間隔から求められる測定値である。余剰B-O-B結合を小さくし、また揮発成分の量であるBO1.5×F/Oを低減することにより、Tgの時間変化が減少する。このような観点からTgの時間変化 ΔTg(℃/hr)の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。また、Tgの時間変化は、ガラス融液からの揮発によってガラス組成が僅かながら変化することに起因する。上記揮発を抑制すれば、ガラス転移温度Tgの時間変化も減少させることができる。揮発量の調整は、BO1.5やFをはじめとする諸成分の光学ガラスへの導入量を調整することにより可能である。揮発量の大小に最も大きく影響を与えるのが、BO1.5とFの光学ガラスへの導入量である。
比重の時間変化 Δ比重(/hr)
比重の時間変化とは、熔融中のガラス融液をサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として、比重を測定し、上記サンプリングから所定の時間間隔を経た後、再度、ガラス融液からサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として比重を測定する作業を複数回行い、比重の各測定値と、サンプリングの時間間隔から求められる測定値である。余剰B-O-B結合を小さくし、また揮発成分の量であるBO1.5×F/Oを低減することにより、比重の時間変化が減少する。このような観点から比重の時間変化 Δ比重(/hr)の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。また、比重の時間変化は、ガラス融液からの揮発によってガラス組成が僅かながら変化することに起因する。上記揮発を抑制すれば、比重の時間変化も減少させることができる。揮発量の調整は、BO1.5やFをはじめとする諸成分の光学ガラスへの導入量を調整することにより可能である。揮発量の大小に最も大きく影響を与えるのが、BO1.5とFの光学ガラスへの導入量である。
液相温度の時間変化 ΔLT(℃/hr)
液相温度の時間変化とは、熔融中のガラス融液をサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として、液相温度を測定し、上記サンプリングから所定の時間間隔を経た後、再度、ガラス融液からサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として液相温度を測定する作業を複数回行い、液相温度の各測定値と、サンプリングの時間間隔から求められる測定値である。余剰B-O-B結合を小さくし、また揮発成分の量であるBO1.5×F/Oを低減することにより、液相温度の時間変化が減少する。このような観点から液相温度の時間変化 ΔLT(℃/hr)の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。また、液相温度の時間変化は、ガラス融液からの揮発によってガラス組成が僅かながら変化することに起因する。上記揮発を抑制すれば、液相温度の時間変化も減少させることができる。揮発量の調整は、BO1.5やFをはじめとする諸成分の光学ガラスへの導入量を調整することにより可能である。揮発量の大小に最も大きく影響を与えるのが、BO1.5とFの光学ガラスへの導入量である。
動粘度の時間変化 Δ動粘度(m3/s/hr)
動粘度の時間変化は、熔融中のガラス融液をサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として、動粘度を測定し、上記サンプリングから所定の時間間隔を経た後、再度、ガラス融液からサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として動粘度を測定する作業を複数回行い、動粘度の各測定値と、サンプリングの時間間隔から求められる測定値である。余剰B-O-B結合を小さくし、また揮発成分の量であるBO1.5×F/Oを低減することにより、動粘度の時間変化が減少する。このような観点から動粘度の時間変化 Δ動粘度(m3/s/hr)の上限及び下限は以下のように設定することが適当である。また、動粘度の時間変化は、ガラス融液からの揮発によってガラス組成が僅かながら変化することに起因する。上記揮発を抑制すれば、動粘度の時間変化も減少させることができる。揮発量の調整は、BO1.5やFをはじめとする諸成分の光学ガラスへの導入量を調整することにより可能である。揮発量の大小に最も大きく影響を与えるのが、BO1.5とFの光学ガラスへの導入量である。
本発明において屈折率をd線における屈折率ndで代表した。分散はアッベ数νdで代表した。
本発明の第1及び第2の基本態様における屈折率ndの下限は、1.70、1.73、1.75、1.76、1.765の順に好ましくなる。高屈折率化によって、光学素子の高機能化、コンパクト化が容易になる。また、本発明の第1及び第2の基本態様における屈折率ndの上限は、1.90、1.87、1.83、1.81、1.79、1.78の順に好ましくなる。屈折率を過剰に高くしないことにより、ガラス転移温度を低く維持し、ガラスの熱的安定性を良好に維持しやすくなる。
本発明の第1及び第2の態様の基本態様において、アッベ数νdの下限は、36、39、43、46、48、49、49.3の順に好ましくなる。ガラスの低分散化によって色収差補正により好適な光学ガラスを実現することができる。本発明の第1及び第2の態様の基本光学ガラスにおいけるアッベ数νdの下限は、55、54、53、52、51、50.5、50、49.8の順に好ましくなる。アッベ数を過剰に大きくすると、ガラスの熱的安定性や低ガラス転移温度特性の維持が難しくなる傾向が生じるからである。
態様Aは、1.75〜1.81の屈折率nd及び48〜52のアッベ数νdを有する光学ガラス、
態様Bは、1.79〜1.835の屈折率nd及び42〜48のアッベ数νdを有する光学ガラス、
態様Cは、1.675〜1.76の屈折率nd及び51〜58のアッベ数νdを有する光学ガラス、
態様Dは、1.825〜1.90の屈折率nd及び35〜43のアッベ数νdを有する光学ガラス、
であり、各態様の好ましい屈折率nd及びアッベ数νdは、以下のとおりである。
上記好ましい屈折率、好ましいアッベ数とも、上記表1−1〜28に記載の任意の組成範囲、表2−1〜2−18に記載の任意の特性範囲を適宜組み合わせた光学ガラスとすることができる。
本発明の第1の基本態様、第2の基本態様、態様A〜Dの光学ガラスは、ホウ酸、酸化物、必要に応じて炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などの原料を用い、所要の特性が得られるように、各原料を秤量、調合して十分混合し、白金坩堝などの熔融容器中に投入し、加熱、熔融、清澄、均質化した後、成形して得ることができる。均質なガラスを得る上から熔融温度は、例えば、1100〜1400℃とすることが好ましい。
あるいは、ホウ酸、酸化物、必要に応じて炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などの原料を用いて、粗熔解(ラフメルト)して複数種のカレットを作製し、これらカレットを所要の特性が得られるように調合し、加熱、熔融、清澄、均質化した後、成形して得ることもできる。
[精密プレス成形用プリフォーム]
本発明は、上記本発明の第1の基本態様、第2の基本態様、態様A〜D光学ガラスより構成される精密プレス成形用プリフォームを包含する。
精密プレス成形用プリフォーム(Precision press-molding preform)とは、周知の精密プレス成形法に用いられる予備成形されたガラス素材である。
以下、精密プレス成形用プリフォームを単にプリフォームをいうことがある。プリフォームは、加熱して精密プレス成形に供されるガラス予備成形体を意味するが、ここで精密プレス成形とは、周知のようにモールドオプティクス成形とも呼ばれ、光学素子の光学機能面をプレス成形型の成形面を転写することにより形成する方法である。なお、光学機能面とは光学素子において、制御対象の光を屈折したり、反射したり、回折したり、入出射させる面を意味し、レンズにおけるレンズ面などがこの光学機能面に相当する。
精密プレス成形時にガラスとプレス成形型成形面との反応、融着を防止しつつ、成形面に沿ってガラスの延びが良好になるようにするため、プリフォームの表面に離型膜を被覆することが好ましい。離型膜の種類としては、貴金属(白金、白金合金)、酸化物(Si、Al、Zr、La、Yの酸化物など)、窒化物(B、Si、Alの酸化物など)、炭素含有膜があげられる。炭素含有膜としては、炭素を主成分とするもの(膜中の元素含有量を原子%で表したとき、炭素の含有量が他の元素の含有量よりも多いもの)が望ましい。具体的には、炭素膜や炭化水素膜などを例示することができる。炭素含有膜の成膜法としては、炭素原料を使用した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法や、炭化水素などの材料ガスを使用した熱分解などの公知の方法を用いればよい。その他の膜については、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法等を用いて成膜することが可能である。
本発明のプリフォームの作製方法は限定されないが、上記ガラスの優れた特質を活かして、次の方法により製造することが望ましい。
第1の精密プレス成形用プリフォームの製造方法(プリフォーム製法Iという。)は、ガラス原料を熔融し、得られた熔融ガラスを流出して熔融ガラス塊を分離し、該熔融ガラス塊を冷却過程で成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、上記光学ガラスからなるプリフォームを成形することを特徴とするものである。
第2の精密プレス成形用プリフォームの製造方法(プリフォーム製法IIという)は、ガラス原料を熔融し、得られた熔融ガラスを成形してガラス成形体を作製し、該成形体を加工して上記本発明の光学ガラスからなるプリフォームを作製するものである。
プリフォーム製法I、IIともガラス原料から均質な熔融ガラスを作製する工程は共通する。例えば、所要の特性が得られるように調合したガラス原料を白金製の熔融容器内に入れ、加熱、熔融、清澄、均質化して均質な熔融ガラスを用意し、温度調整された白金または白金合金製の流出ノズルあるいは流出パイプから流出する。なお、ガラス原料を粗熔解してカレットを作製し、得られたカレットを調合して加熱、熔融、清澄、均質化して均質な熔融ガラスを得、上記流出ノズルあるいは流出パイプから流出するようにしてもよい。
小型のプリフォームや球状のプリフォームを成形する場合は、熔融ガラスを流出ノズルから所望質量の熔融ガラス滴として滴下し、それをプリフォーム成形型によって受けてプリフォームに成形する。あるいは、同じく所望質量の熔融ガラス滴を流出ノズルより液体窒素などに滴下してプリフォームを成形する。中大型のプリフォームを作製する場合は、流出パイプより熔融ガラス流を流下させ、熔融ガラス流の先端部をプリフォーム成形型で受け、熔融ガラス流のノズルとプリフォーム成形型の間にくびれ部を形成した後、プリフォーム成形型を真下に急降下して、熔融ガラスの表面張力によってくびれ部にて熔融ガラス流を分離し、受け部材に所望質量の熔融ガラス塊を受けてプリフォームに成形する。
キズ、汚れ、シワ、表面の変質などがない滑らかな表面、例えば自由表面を有するプリフォームを製造するためには、プリフォーム成形型などの上で熔融ガラス塊に風圧を加えて浮上させながらプリフォームに成形したり、液体窒素などの常温、常圧下では気体の物質を冷却して液体にした媒体中に熔融ガラス滴を入れてプリフォームに成形する方法などが用いられる。
熔融ガラス塊を浮上させながらプリフォームに成形する場合、熔融ガラス塊にはガス(浮上ガスという)が吹きつけられ上向きの風圧が加えられることになる。この際、熔融ガラス塊の粘度が低すぎると浮上ガスがガラス中に入り込み、プリフォーム中に泡となって残ってしまう。しかし、熔融ガラス塊の粘度を3〜60dPa・sにすることにより、浮上ガスがガラス中に入り込むことなく、ガラス塊を浮上させることができる。
プリフォームに浮上ガスが吹き付けられる際に用いられるガスとしては、空気、N2ガス、O2ガス、Arガス、Heガス、水蒸気等が挙げられる。また、風圧は、プリフォームが成形型表面等の固体と接することなく浮上できれば特に制限はない。
プリフォームより製造される精密プレス成形品(例えば、光学素子)は、レンズのように回転対称軸を有するものが多いため、プリフォームの形状も回転対称軸を有する形状が望ましい。具体例としては、球あるいは回転対称軸を一つ備えるものを示すことができる。回転対称軸を一つ備える形状としては、前記回転対称軸を含む断面において角や窪みがない滑らかな輪郭線をもつもの、例えば上記断面において短軸が回転対称軸に一致する楕円を輪郭線とするものなどがあり、球を扁平にした形状(球の中心を通る軸を一つ定め、前記軸方向に寸法を縮めた形状)を挙げることもできる。
プリフォーム製法Iでは、ガラスを塑性変形可能な温度域で成形するので、ガラス塊をプレス成形することによりプリフォームを作製してもよい。その場合、プリフォームの形状を比較的自由に設定することができるので、目的とする光学素子の形状に近似させ、例えば、対向する面の一方を凸、他方を凹形状にしたり、両方を凹面にしたり、一方の面を平面、他方の面を凸面にしたり、一方の面を平面、他方の面を凹面にしたり、両面とも凸面に成形することもできる。
このようにして作製したプリフォーム表面には炭素含有膜をコートしてもよい。但し、フッ素を含む本発明の光学ガラスは、ガラス転移温度が低く、プレス成形温度を低くすることが可能なので、炭素含有膜をコートしなくてもよい。
プリフォーム製法2では、例えば、熔融ガラスを鋳型に鋳込んで成形した後、成形体の歪をアニールによって除去し、切断または割断して、所定の寸法、形状に分割し、複数個のガラス片を作製し、ガラス片を研磨して表面を滑らかにするとともに、所定の質量のガラスからなるプリフォームとする。このようにして作製したプリフォームの表面にも炭素含有膜を被覆して使用することが好ましい。プリフォーム製法2は、研削、研磨を容易にすることができる球状のプリフォーム、平板状のプリフォームなどの製造に好適である。
いずれの製法においても、使用する光学ガラスの熱的安定性が優れているため、ガラスの失透、脈理などにより不良品が発生しにくく、高品質のプリフォームを安定して製造することができ、光学素子の製造プロセス全体の量産性を高めることができる。
次に、精密プレス成形による光学素子の量産性をさらに高める上から、より好ましいプリフォームについて説明する。
本発明の光学ガラスはガラス素材の面から、優れた精密プレス成形性を提供するが、精密プレス成形におけるガラスの変形量を減少させることにより、精密プレス成形時のガラスと成形型の温度の低下、プレス成形に要する時間の短縮化、プレス圧力の低下などが可能になる。その結果、ガラスと成形型成形面との反応性が低下し、精密プレス成形時に発生する上記不具合が低減され、量産性がより高まる。
レンズを精密プレス成形する場合に使用する好ましいプリフォームは、互いに反対方向を向く被プレス面(精密プレス成形時に対向する成形型成形面でプレスされる面)を有するプリフォームであり、さらに2つの被プレス面の中心を貫く回転対称軸を有するプリフォームがより好ましい。こうしたプリフォームのうち、メニスカスレンズの精密プレス成形に好適なものは、被プレス面の一方が凸面、他方が凹面、平面、前記凸面より曲率が小さいと凸面のいずれかであるプリフォームである。
また、両凹レンズの精密プレス成形に好適なプリフォームは、被プレス面の一方が凸面、凹面、平面のいずれか、他方が凸面、凹面、平面のいずれかであるプリフォームである。
両凸レンズの精密プレス成形に好適なプリフォームは、被プレス面の一方が凸面、他方が凸面または平面のプリフォームである。
いずれの場合も精密プレス成形品の形状に、より近似する形状のプリフォームが好ましい。
熔融ガラス塊をプリフォーム成形型を用いてプリフォームに成形する場合、前記成形型上のガラスの下面は成形型成形面の形状によって概ね定まる。一方、前記ガラスの上面は熔融ガラスの表面張力とガラスの自重によって定まる形状となる。精密プレス成形時におけるガラスの変形量を低減するには、プリフォーム成形型において成形中のガラスの上面の形状も制御する必要がある。熔融ガラスの表面張力とガラスの自重によって定まるガラス上面の形状は凸面状の自由表面となるが、上面を平面、凹面あるいは前記自由表面よりも曲率が小さい凸面にするには、前記ガラス上面に圧力を加える。具体的には、ガラス上面を所望形状の成形面を有する成形型でプレスしたり、ガラス上面に風圧を加えて所望形状に成形する。なお、成形型でガラス上面をプレスする際、成形型の成形面に複数のガス噴出口を設け、これらガス噴出口からガスを噴出して成形面とガラス上面の間にガスクッションを形成し、ガスクッションを介してガラス上面をプレスしてもよい。あるいは、上記自由表面よりも曲率の大きい面にガラス上面を成形したい場合は、ガラス上面を近傍に負圧を発生させて上面を盛り上げるように成形してもよい。
また、精密プレス成形品の形状に、より近似する形状のプリフォームを得るために、表面を研磨したプリフォームも好ましい。例えば、被プレス面の一方が平面または球面の一部になるように研磨され、他方が球面の一部または平面になるように研磨されたプリフォームが好ましい。球面の一部は凸面でも凹面でもよいが、凸面とするか凹面とするかは、上記のように精密プレス成形品の形状によって決めることが望ましい。
上記各プリフォームは、直径が10mm以上のレンズの成形に好ましく、直径が20mm以上のレンズの成形により好ましい。また中心肉厚が2mmを超えるレンズの成形にも好ましい。
[光学素子]
次に本発明の光学素子について説明する。
本発明の光学素子は、上記第1の基本態様、第2の基本態様、態様A〜Dの態様の光学ガラスより構成される光学素子である。
光学素子の種類は限定されないが、典型的なものとしては、非球面レンズ、球面レンズ、あるいは平凹レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズなどのレンズ、マイクロレンズ、レンズアレイ、回折格子付きレンズ、プリズム、レンズ機能付きプリズムなどを例示することができる。光学素子として、好ましくは、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのレンズ、プリズム、回折格子を例示することができる。上記各レンズは非球面レンズであってもよいし、球面レンズであってもよい。表面には必要に応じて反射防止膜や波長選択性のある部分反射膜などを設けてもよい。
本発明の光学素子は、屈折率が高く、低分散特性を有するガラスからなるので、他のガラスからなる光学素子と組合せることにより、良好な色補正を行うことができる。また、本発明の光学素子は屈折率が高いガラスからなるので、撮像光学系、投射光学系などに使用することで光学系をコンパクト化することができる。
次に本発明の光学素子の製造方法について説明する。
本発明の光学素子は、上記本発明のプリフォームをプレス成形型を用いて精密プレス成形することにより製造できる。
本発明の光学素子の製造方法の好ましい態様は、上記本発明のプリフォームを、同一のプレス成形型を用いて精密プレス成形する工程を繰り返し、光学素子を量産する方法である。
プレス成形型ならびにプリフォームの加熱および精密プレス成形工程は、プレス成形型の成形面あるいは前記成形面に設けられた離型膜の酸化を防止するため、窒素ガス、あるいは窒素ガスと水素ガスの混合ガスなどのような非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガス雰囲気中ではプリフォーム表面を被覆する炭素含有膜も酸化されずに、精密プレス成形された成形品の表面に前記膜が残存することになる。この膜は、最終的には除去するべきものであるが、炭素含有膜を比較的容易にしかも完全に除去するには、精密プレス成形品を酸化性雰囲気、例えば大気中において加熱すればよい。炭素含有膜の酸化、除去は、精密プレス成形品が加熱により変形しないような温度で行うべきである。具体的には、ガラスの転移温度未満の温度範囲において行うことが好ましい。
精密プレス成形では、予め成形面を所望の形状に高精度に加工されたプレス成形型を用いるが、成形面には、プレス時のガラスの融着を防止するため、離型膜を形成してもよい。離型膜としては、炭素含有膜や窒化物膜、貴金属膜が挙げられ、炭素含有膜としては水素化カーボン膜、炭素膜などが好ましい。
より具体的には、精密プレス成形に用いるプレス成形型としては、本発明の光学ガラスのガラス転移温度が低いため、SiC製型に加え、WCなどの超硬材製型、サーメット製型などを使用することもできる。SiC製型の成形面には必要に応じて炭素膜をコートしてもよい。WCなどの超硬材製型の成形面には必要に応じて貴金属膜、貴金属合金膜をコートしてもよい。
光学素子の製造方法には、以下に示す2つの態様がある。
第1の態様(光学素子製法Iという)は、プリフォームをプレス成形型に導入し、前記プリフォームとプレス成形型を一緒に加熱して精密プレス成形する光学素子の製造方法であり、第2の態様(光学素子製法IIという)は、加熱したプリフォームを予熱したプレス成形型に導入し、精密プレス成形する光学素子の製造方法である。
光学素子製法Iでは、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間にプリフォームを供給した後、ガラスの粘度が105〜109dPa・s相当の温度まで成形型とプリフォームの両者を加熱してプリフォームを軟化し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写する。光学素子製法Iは、面精度、偏心精度など成形精度の向上を重視した場合、推奨される方法である。
光学素子製法IIでは、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間に、予めガラスの粘度で104〜108dPa・sに相当する温度に昇温したプリフォームを供給し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写することができる。光学素子製法IIは、生産性向上を重視した場合に推奨される方法である。
加圧時の圧力及び時間は、ガラスの粘度などを考慮して適宜決定することができ、例えば、プレス圧力は約5〜15MPa、プレス時間は10〜300秒とすることができる。プレス時間、プレス圧力などのプレス条件は成形品の形状、寸法に合わせて周知の範囲で適宜設定すればよい。
この後、成形型と精密プレス成形品を冷却し、好ましくは歪点以下の温度となったところで、離型し、精密プレス成形品を取出す。なお、光学特性を精密に所望の値に合わせるため、冷却時における成形品のアニール処理条件、例えばアニール速度等を適宜調整してもよい。
なお、本発明の光学素子は、プレス成形工程を経なくても作製することはできる。例えば、均質な熔融ガラスを鋳型に鋳込んでガラスブロックを成形し、アニールして歪を除去するとともに、ガラスの屈折率が所望の値になるようにアニール条件を調整して光学特性の調整を行ったのち、次にガラスブロックを切断または割断してガラス片を作り、さらに研削、研磨して光学素子に仕上げることにより得ることができる。
本発明のレンズユニットは、本発明の光学素子、好ましくは非球面レンズもしくは球面レンズを含む光学系を筐体に組み込んだものであり、一眼レフカメラの交換レンズ、あるいはコンパクトカメラに内蔵されるレンズユニットなどである。
本発明の撮像装置は、上記本発明の光学素子を備えるものである。本発明の光学素子は、高屈折率低分散特性を備える上記光学ガラスからなるため、例えば、高分散特性を備えるレンズと本発明の光学素子であるレンズとを組み合わせることにより、良好な色収差補正を可能とするコンパクトな撮像光学系を備えた撮像装置を提供することができる。撮像装置を構成する撮像素子としてはCCDあるいはCMOSなどのイメージセンサーを用いることができる。
即ち、本発明の撮像装置は、少なくとも上記レンズユニットとCCD、CMOSなどのイメージセンサーを備える。必要に応じて合焦(ピントを合わせる)機能を有する機構を備えてもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例
表3の実施例1〜33は主に態様Aの実施例であり、表4の実施例1〜44は主に態様Bの実施例であり、表5の実施例1〜28は主に態様Cの実施例であり、表6の実施例1〜9は主に態様Dの実施例である。
表3〜6に示す組成を有する光学ガラスが得られるように、硼酸もしくは無水硼酸、酸化物、弗化物、必要に応じて炭酸塩、硝酸塩などを用いてガラス原料を調合し、白金製坩堝中に入れ、好ましくは白金製の蓋をして大気中で加熱し、1150〜1250℃で1.5〜3時間、熔融し、清澄、均質化してから、予熱した鋳型に流し込んで成形し、徐冷してガラスブロックを得た。得られたガラスに結晶の析出や脈理は見られなかった。こうして得たガラスを用いて別表に記載の方法でガラスの諸特性を測定した。得られた結果を表3〜6に示す。態様Cに属する表5の実施例14の重量減少は0.61重量%、同じく表5の実施例18の重量減少は1.1重量%であった。
なお、表3の実施例32、33(態様A)については2時間半熔融して得たガラスの特性、表3〜6に示したその他の実施例の各特性は、2時間熔融して得たガラスの特性である。
(注1) BO1.5からSbO1.5までの含有量は陽イオン%表示
(注2) Fは、陽イオンの総量を100としたときのフッ素イオンの相対量(モル)
(注3) Oは、陽イオンの総量を100としたときの酸素イオンの相対量(モル)
(注4) 揮発ピークTvは、10℃/minで1200℃まで昇温されたガラスの不連続な重量減少率変化をともなう吸熱ピークの温度(℃)
(注5) 重量減少は、100mgのガラスを10℃/minで400℃から1200℃まで昇温したときの重量減少量(wt%)
(注1) BO1.5からSbO1.5までの含有量は陽イオン%表示
(注2) Fは、陽イオンの総量を100としたときのフッ素イオンの相対量(モル)
(注3) Oは、陽イオンの総量を100としたときの酸素イオンの相対量(モル)
(注4) 揮発ピークTvは、10℃/minで1200℃まで昇温されたガラスの不連続な重量減少率変化をともなう吸熱ピークの温度(℃)
(注5) 重量減少は、100mgのガラスを10℃/minで400℃から1200℃まで昇温したときの重量減少量(wt%)
(注1) BO1.5からSbO1.5までの含有量は陽イオン%表示
(注2) Fは、陽イオンの総量を100としたときのフッ素イオンの相対量(モル)
(注3) Oは、陽イオンの総量を100としたときの酸素イオンの相対量(モル)
(注4) 揮発ピークTvは、10℃/minで1200℃まで昇温されたガラスの不連続な重量減少率変化をともなう吸熱ピークの温度(℃)
(注5) 重量減少は、100mgのガラスを10℃/minで400℃から1200℃まで昇温したときの重量減少量(wt%)
(注1) BO1.5からSbO1.5までの含有量は陽イオン%表示
(注2) Fは、陽イオンの総量を100としたときのフッ素イオンの相対量(モル)
(注3) Oは、陽イオンの総量を100としたときの酸素イオンの相対量(モル)
(注4) 揮発ピークTvは、10℃/minで1200℃まで昇温されたガラスの不連続な重量減少率変化をともなう吸熱ピークの温度(℃)
(注5) 重量減少は、100mgのガラスを10℃/minで400℃から1200℃まで昇温したときの重量減少量(wt%)
陽イオン%表示したときのBO1.5含有量を1.5倍した値BB、ガラス中の全陽イオンの合計量を100として、前記合計量に対する全酸素量のモル比をBOとしたとき、BB−(BO−BB)の値をDとする。表3の実施例32においてDは−0.60、実施例33においてDは0.60である。参考試料(参考組成)としてDが22.0のガラスを作製した。
表3の実施例32、実施例33、参考組成の3種について、熔融時間を変えたとき屈折率nd、アッベ数νdがどのように変化するかを調べた。その結果を図1に示す。
図1の各プロット付近に記載した数値は、熔融時間を時間単位で表したものである。Dが小さい表3の実施例32、実施例33は、参考組成と比較し、熔融時間の変化に対する屈折率変化、アッベ数変化が小さい。
図2は、横軸を熔融時間、縦軸を屈折率ndとしたときの表3の実施例32、実施例33の屈折率変化を示すものである。
図3は、横軸を熔融時間、縦軸を比重としたときの表3の実施例32、実施例33の比重の変化を示すものである。
図4は、横軸を熔融時間、縦軸をガラス転移温度Tgとしたときの表3の実施例32のガラス転移温度の変化を示すものである。
これらの結果から、Dが22.0の参考組成よりもDが小さい表3の実施例32、実施例33のほうが熔融時間の変化に対する特性変化が小さいことがわかる。
Dが22.0より大きくなり、さらに60を超えるようになると熔融時間の変化に対する特性変化が著しく大きくなる。このことは、ガラスを製造する際、ガラスの諸特性の変動が大きくなってしまうことを意味する。特性の変動要因は、熔融状態のガラスからの揮発と考えられるが、揮発が著しいと成形したガラスに脈理が発生しやすくなる。
一方、表3の実施例32、実施例33をはじめとする本発明の実施例の光学ガラスは、Dが小さい値になっているので、上記揮発性が抑制され、脈理が発生しにくく、量産時の諸特性の変動が小さい。
このように、Dを上記所要の範囲にすることによりガラスの揮発性の制御が可能となり、特性変動、脈理による品質低下を防止することができる。
このようにして得られた光学ガラスは精密プレス成形用のガラス素材として好適なものである。
なお、光学ガラスの諸特性は、以下に示す方法により測定した。
(1)屈折率ndおよびアッベ数νd
降温速度−30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、nF、ncを測定し、これらの結果からアッベ数νdを算出した。
(2)液相温度LTおよび液相温度における粘度
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
"JIS Z 8803−1991 「液体の粘度−測定方法」8.単一円筒形回転粘度計による粘度測定"に基づき、回転円筒法によってガラスの液相温度における粘度を測定した。
(3)ガラス転移温度Tg
ブルカーAXS社製 示差熱分析装置(DSC3300)により、昇温速度10℃/分として測定した。
(4)比重
アルキメデス法により測定した。
(5)λ80、λ70、λ5(nm)
厚さ1.0mmの両面が互いに平行に光学研磨された板状のガラス試料を使用し、一方の光学研磨面に垂直に強度Iinの単色光を入射し、試料を透過して他方の光学研磨面から出射する光の強度Ioutから、外部透過率Iout/Iinを算出する。波長280nm〜700nmの範囲にわたり外部透過率を測定し、外部透過率が80%となる波長をλ80、外部透過率が70%となる波長をλ70、外部透過率が5%となる波長をλ5とした。
(6)時間変化の測定方法
(i)屈折率nd
(ii)アッベ数νd
(iii)比重
(iv)ガラス転移温度Tg
熔融中のガラス融液をサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として、
上記説明の方法により、各特性を測定した。さらに、上記サンプリングから所定の時間間隔を経た後、再度、ガラス融液からサンプリングし、サンプリングしたガラスを試料として各特性を測定した。このように、2回以上のサンプリングを行って得た各特性の測定値と、サンプリングの時間間隔から、各特性の時間変化を算出した。
(7)重量減少
Fを含有するガラスは、加熱にともなってガラス成分が揮発し重量減少を示す。この重量減少量を定量するためには、TG-DTA測定やTG-MSのように、温度変化に伴う試料重量の変化を計測する機器を用いることができる。
例えばTG-DTAでは、精密天秤に載せられたガラス試料を加熱して、各温度における試料の重量を計測することにより、温度上昇にともなうガラスの重量変化を定量することができる。
具体的には、リガク電機製TG−DTA(Thermo Plus TG8120)を用いて、Φ5mm×5mmHのPtセルに粉状のガラス試料を所定重量W(約100mg)充填し、昇温速度10℃/分で1200℃まで加熱したときのガラスの重量減少量ΔW(mg)を測定し、重量減少=ΔW/W×100(%)として求めた。
このとき、室温から400℃の温度領域では、ガラスに付着した水分や有機物の脱離によって、ガラス成分の揮発とは無関係な重量減少が見られることがあるため、400℃〜1200℃の重量減少をガラスの重量減少と定義した。
(8)揮発ピーク
揮発ピークは、示唆熱分析装置DSCの測定結果の高温域に現れる急峻な吸熱ピークの温度である。すなわち、Fを含有するガラスのTG−DTA測定では、900℃以上のある温度において、ガラス成分の重量減少の温度変化率が不連続に増加するとともに、ガラスの吸熱に伴う熱の移動が観測されることがある。このようにガラスの重量減少挙動の変化を伴い、かつ吸熱挙動のピークを示す温度を、本発明ではガラスの揮発ピーク温度Tvと定義した。温度Tvにおける吸熱ピークは、あらかじめTG-DTA測定によって重量減少率が変化する領域を特定しておけば、示差熱分析装置DSCを用いて観測することもできる。
Tv以上では著しい揮発が生じる。一旦析出した結晶が融解する温度域の下限温度が液相温度LTであり、ガラス融液をLT以上に保持する限り、結晶化(失透)はおこらない。TvがLTより高温であれば、LTとTvの間の温度で、ガラス融液を成形することができるので、失透を防止しつつ、揮発を防止することができる。さらに、LTとTvの温度差が大きいほど、失透および揮発を防止できる温度範囲が広くなるので、高品質のガラスをより安定に提供しやすくなる。
具体的な重量減少の温度変化率の大きさとして、例えばガラスの重量減少が0.5%の場合は、ガラスの重量の温度変化率は温度Tv以下で1×10-3wt%/℃程度、温度Tv以上で3×10-3wt%/℃程度となる。またガラスの重量減少が2%の場合は、ガラスの重量の温度変化率は温度Tv以下で1×10-3wt%/℃程度、温度Tv以上で15×10-3wt%/℃程度となる。
ところで、LT≦Tvでなければ、失透と揮発を同時に防止することができないというわけではない。ガラス融液をLTより若干低温で保持しても、結晶の析出には時間が必要なため、失透しない。(保持温度をより低くするほど、結晶析出までの時間は短くなる。)このような理由で、態様B(表4)における好ましいTvの範囲には、LTよりも低い温度範囲が含まれている。
(比較例)
特許文献1(特開2005-170782)に記載の実施例5のガラスを特許文献1に記載されている方法によって作製し、1140℃で2時間、保持した後、結晶の析出の有無を光学顕微鏡によって観察した。保持後のガラスの顕微鏡写真を図7に示す。図7より明らかなように、ガラス表面、内部に結晶の析出が認められた。この結果から、特許文献1(特開2005-170782)に記載の実施例5の液相温度は1140℃より高いことが明らかになった。
濡れ上がりの比較実験
表4の実施例22のガラス(態様B)及び、特許文献1の実施例2及び3のガラスについて、濡れ上がり比較実験を行った。結果(写真)を図8に示す。この結果、本発明のガラスは、濡れ上がりが無いのに対して、特許文献1の実施例2及び3のガラスは、顕著に濡れ上がりが観察され、揮発性が強いことが分かる。
透過率曲線
図9に以下のガラスを再現し、厚さ10mmの試料として、分光透過率を測定した結果である透過率曲線を示す。
(1)が特許文献3(WO2004/054937)に記載の実施例31(YbO1.5=0%)、
(2)が特許文献1(特開2005−170782号公報)の実施例5(YbO1.5=0%)、
(3)が実施例34(YbO1.5=6.11%)、(4)が実施例3(YbO1.5=1%)、(5)が実施例2(YbO1.5=0.98%)である。
上記特許文献1、3に記載のYbO1.5を含まない(1)、(2)は、波長900〜1000nmの範囲でも高透過率が得られているが、YbO1.5を僅かな量含む(4)、(5)では、上記波長域においてYbが強い吸収を示すため、透過率が20%未満にまで低下する。さらに(3)では、上記波長域の光をほとんど透過しない。このように、YbO1.5を0.5%超含むガラスは、赤外域において高い透過率が望まれる撮像光学系を構成する光学素子の材料としては適さない。
次に、上記各ガラスを研削、研磨して精密プレス成形用プリフォームを作製した。プリフォームの形状は、作製しようとする光学素子の形状に近似した形状としてもよいし、球状にしてもよいし、その他の形状にしてもよい。
こうして得たプリフォームの全表面に必要に応じて炭素膜をコートし、加熱し、SiC製のプレス成形型を用いて精密プレス成形し、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの非球面レンズを作製した。精密プレス成形後、必要に応じて成形品を心取りしてレンズに仕上げてもよい。得られたレンズの表面には必要に応じて反射防止膜をコートしてもよい。
また、SiC製型に代わりに、WC製型を用いて精密プレス成形してもよいし、サーメット製型を用いて精密プレス成形してもよい。SiC製型の成形面には炭素膜を離型膜としてコートしてもよい。WC製型の成形面には白金などの貴金属膜あるいは貴金属合金膜などをコートしてもよい。
光学ガラスのガラス転移温度が低いので、精密プレス成形温度を低くすることができるため、SiC製型のように極めて優れた耐熱性を有する型を用いなくても良好な精密プレス成形を行うことができる。
次に上記各種非球面レンズを組み込んだ一眼レフカメラ用の交換レンズやコンパクトカメラの撮像光学系を作製した。
さらにコンパクトカメラの撮像光学系にCCDあるいはCMOSを組み合わせ、撮像光学系ユニットを作製し、コンパクトカメラに組み込んだ。