以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印Zは鋼管の軸方向を示している。
先ず、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。
図1及び図2には、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10の一部が示されている。コンクリート充填鋼管柱10は、例えば、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm2以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められる柱として好適に用いられるものである。
コンクリート充填鋼管柱10は、鋼管12と、鋼管12の内部に充填される充填コンクリート14を備えている。鋼管12は角形鋼管からなり、軸方向(矢印Z方向)を上下方向として、図示しない基礎等の上に立てられている。充填コンクリート14は、鋼管12の内部に充填されたコンクリートが硬化したものである。なお、鋼管12の外周部には耐火被覆が施されておらず、コンクリート充填鋼管柱10は、無耐火被覆のコンクリート充填鋼管柱(無耐火被覆CFT柱)とされている。
充填コンクリート14の外周部には、規制部材としての4つの縦規制部材20が埋設されている。縦規制部材20は板状の鋼板で構成され、長手方向を鋼管12の軸方向にすると共に、鋼管12の各側壁12Aの中央部(幅方向の中央部)に接触した状態で配置されている。具体的には、図2に示されるように、各縦規制部材20は、その幅方向の一端部20A(端面)が充填コンクリート14の外周面から露出しており、鋼管12の各側壁12Aの略中央部に略垂直に突き当てられている。これにより、鋼管12の側壁12Aの内側(鋼管12の中心軸へ向う側)への変形が抑制されている。
なお、縦規制部材20の幅方向の他端部20Bは、平面視にて充填コンクリート14の中央部に達しておらず、これにより、鋼管12の内部にコンクリートが充填し易くなっている。
ここで、本実施形態では、先ず、縦規制部材20の幅方向の一端部20Aを鋼管12の側壁12Aに接触させた状態で鋼管12の内部に縦規制部材20を配置し、次に、鋼管12の内部にコンクリートを充填して充填コンクリート14を形成した。
なお、施工性の観点から、縦規制部材20の上端部及び下端部を鋼管12の側壁12Aに点溶接、接着剤等で仮留めし、運搬時や鋼管12へのコンクリート充填時における縦規制部材20の位置ズレを抑制しても良い。この鋼管12の側壁12Aに対する縦規制部材20の仮留めは、現場で行っても良いし、予め工場等で行っても良い。
次に、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の作用について説明する。
例えば、図3に示されるように、火災によってコンクリート充填鋼管柱10が矢印A方向から加熱されると、先ず、温度上昇に伴って鋼管12が熱膨張し、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)へ伸張すると共に、徐々に軟化して剛性が低下する。また、鋼管12の側壁12Aを介して、当該側壁12Aを内部から支持する充填コンクリート14の外周部に熱が伝達され、当該外周部の温度が上昇する。そして、充填コンクリート14の外周部の温度が所定温度(熱劣化温度)以上になると、充填コンクリート14の外周部が熱劣化する。これにより、充填コンクリート14の外周部が脆く、脆性的に破壊され易くなり、鋼管12の側壁12Aの支持強度が低下する。この結果、図中の二点鎖線で示されるように、温度上昇により剛性が低下した鋼管12の側壁12Aが面外方向へ凸状に湾曲し、局部座屈する。そして、鋼管12の側壁12Aが局部座屈すると、矢印Qで示されるように、内側へ凸状に湾曲した鋼管12の側壁12Aによって充填コンクリート14の外周部が押圧され、当該外周部が圧壊する。また、鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)に縮むため、鋼管12が負担していた軸力Fの一部が充填コンクリート14に導入され、充填コンクリート14の負担軸力が増加する。これにより、充填コンクリート14の外周部の圧壊が促進され、コンクリート充填鋼管柱10の耐力(軸耐力)が急激に低下し、最終的に破壊に至る。
このように鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、充填コンクリート14が所定の耐力(火災時耐力)を発揮する前に、コンクリート充填鋼管柱10は脆性的に破壊してしまう。
そこで、本実施形態では、充填コンクリート14の外周部に縦規制部材20を埋設し、当該縦規制部材20の幅方向の一端部20Aを鋼管12の側壁12Aに接触させている。これにより、鋼管12の側壁12Aの内側への変形(面外変形)が規制される。また、縦規制部材20の幅方向の他端部20B(図2参照)は充填コンクリート14の内部に入り込んでいる。従って、充填コンクリート14の外周面付近が熱劣化しても、縦規制部材20の他端部20Bが充填コンクリート14に支持されるため、鋼管12の側壁12Aの内側への変形が規制される。更に、縦規制部材20の幅方向の一端部20Aは、鋼管12の側壁12Aの中央部に対して略垂直に突き当てられている。従って、縦規制部材20が鋼管12の側壁12Aに対して傾斜する構成と比較して、鋼管12の側壁12Aに内側への変形が効率的に規制される。
このように本実施形態では、充填コンクリート14の外周部に、鋼管12の側壁12Aの内側への変形を規制する縦規制部材20を埋設することにより、火災時における鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制される。従って、コンクリート充填鋼管柱10が所定の耐力(軸耐力)を発揮可能になるため、コンクリート充填鋼管柱10の耐火性能が向上する。
また、本実施形態は、充填コンクリート14に埋設された縦規制部材20の幅方向の一端部20Aを鋼管12の側壁12Aに接触させて、当該側壁12Aの内側への変形を規制する構成であるため、従来技術(例えば、特許文献1)のように、鋼管12の側壁12Aに縦規制部材20を溶接等で固定して、熱膨張による縦規制部材20の軸方向の伸び出しを規制する必要がない。従って、コンクリート充填鋼管柱10の施工性が向上する。
なお、縦規制部材20の数や配置は上記したものに限らず、適宜変更可能である。例えば、鋼管12の各側壁12Aに対して、複数枚の縦規制部材20を接触させても良い。また、縦規制部材20を鉄筋、PC鋼棒等で構成しても良い。
更に、上記実施形態では、縦規制部材20を鋼管12の軸方向に沿って配置したが、例えば、鋼管12の軸方向に対して傾斜する方向に沿って縦規制部材20を配置しても良い。また、図4(A)及び図4(B)に示されるように、鋼管12の側壁12Aの幅方向(鋼管12の周方向)に沿って横規制部材22を配置しても良い。具体的には、横規制部材22は板状の鋼板で構成され、充填コンクリート14の外周部に埋設されている。また、横規制部材22は、鋼管12の側壁12Aの幅方向の略全長に渡って配置されている。更に、横規制部材22は、図4(B)に示されるように、各側壁12Aに対して鋼管12の軸方向に間隔を空けて複数設けられている。この横規制部材22によって鋼管12の側壁12Aの内側への変形を規制することにより、当該側壁12Aの局部座屈が抑制される。従って、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、ここでいう鋼管の周方向とは、角形鋼管のように複数の側壁を備える鋼管がある場合は、横補強リブ22が接合される鋼管12の側壁12Aの幅方向に沿った方向を意味し、後述する丸形鋼管62(図11参照)のように断面円形形状の側壁を備える鋼管の場合は、側壁462Aに沿った円周方向を意味する。
また、本変形例では、横規制部材22を鋼管12の側壁12Aの幅方向の略全長に渡って設けたが、横規制部材22の長手方向の長さを短くし、鋼管12の側壁12Aの幅方向の中央部にのみ設けても良い。また、鋼管12の各側壁12Aに接触される4枚の横規制部材22を枠状に連結しても良い。更に、横規制部材22は、鋼管12の仕口部(鉄骨梁との接合部)に設けても良いし、鋼管12の仕口部に横規制部材22を設けずに、鋼管12の上下の仕口部間にのみ横規制部材22を設けても良い。
次に、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
図5(A)及び図5(B)には、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱30が示されている。なお、図5(A)及び図5(B)では、充填コンクリートの図示を省略している。
コンクリート充填鋼管柱30を構成する鋼管12の内部には、規制部材(板状部材)としての規制プレート34が略水平に配置されている。規制プレート34は、円盤状の鋼板で構成され、鋼管12の側壁12Aから内側へ突出する一対の係止リブ36の上に載置されている。また、規制プレート34は、その外周部34Aを鋼管12の各側壁12Aの中央部(幅方向の中央部)に接触させた状態で、鋼管12の内部を上下に仕切るように鋼管12の内部に配置されている。更に、規制プレート34には複数の貫通孔38が形成されており、これらの貫通孔38を通して硬化前のコンクリートが鋼管12の内部に充填されるようになっている。
なお、規制プレート34を鋼管12の内部に配置する際は、例えば、図5(B)に示されるように、鋼管12の上端部から規制プレート34を落下させて係止リブ36の上に載置しも良いし、規制プレート34を図示しない吊り材で支持しながら、鋼管12の上端部から徐々に降下させて、係止リブ36の上に載置しても良い。
次に、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管構造の作用について説明する。
本実施形態では、規制プレート34の外周部34Aが、鋼管12の各側壁12Aに接触するため、鋼管12の各側壁12Aの内側への変形が規制される。また、規制プレート34は、対向する側壁12A間に渡っており、その外周部34Aが対向する側壁12Aにそれぞれ接触している。これにより、例えば、対向する一方の側壁12Aが内側へ変形して規制プレート34を押圧したときに、対向する他方の側壁12Aに規制プレート34を介して押圧力が伝達される。即ち、対向する一方の側壁12Aの内側への変形に対し、規制プレート34だけでなく、対向する他方の側壁12Aが抵抗する。従って、前述した縦規制部材20(図2参照)のように、対向する鋼管12の側壁12A間に渡らない構成と比較して、鋼管12の側壁12Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。
また、規制プレート34には、複数の貫通孔38が形成されている。従って、鋼管12の内部にコンクリートを充填するときに、貫通孔38を通して硬化前のコンクリートが流動するため、鋼管12に対するコンクリートの充填効率が向上する。更に、規制プレート34に形成された貫通孔38にもコンクリートが充填されるため、規制プレート34と充填コンクリート14(図1参照)との付着力(一体性)が高められる。従って、鋼管12の側壁12Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。
なお、規制プレート34の形状は円形に限らず、多角形等でも良い。また、規制プレート34には、少なくとも1つの貫通孔38が形成されていれば良く、また、貫通孔38の形状、大きさは、コンクリートの粘性や骨材の大きさに応じて適宜変更可能である。
次に、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の変形例について説明する。なお、以下で説明する図6〜図8では、充填コンクリートの図示を省略している。
先ず、図6に示される変形例では、鋼管12の軸方向に延びる保持部材としての吊り材44に、複数の規制プレート34が取り付けられている。これらの規制プレート34は、鋼管12の軸方向に間隔を空けて吊り材44に取り付けられている。吊り材44は鉄筋、PC鋼線、PC鋼棒等で構成されており、各規制プレート34の中央部をそれぞれ貫通している。各規制プレート34は溶接、接着剤等によって吊り材44に固定され、吊り下げられた状態で吊り材44に保持されている。
このように複数の規制プレート34が取り付けられた吊り材44を鋼管12の上端部から鋼管12の内部に挿入することで、複数の規制プレート34を鋼管12の内部に所定の間隔で配置することができる。従って、施工性が向上すると共に、広範囲に渡って鋼管12の側壁12Aの局部座屈を抑制することができる。また、各規制プレート34には貫通孔38が形成されており、これらの貫通孔38を通して硬化前のコンクリートが鋼管12の内部に充填される。従って、鋼管12に対するコンクリートの充填効率が向上する。
次に、図7に示される変形例では、鋼管12の軸方向に延びる複数(本実施形態では、4本)の吊り材44に、リング状の規制プレート46が鋼管12の軸方向に間隔を空けて複数取り付けられている。規制部材(板状部材)としての規制プレート46は、吊り材44に略水平に取り付けられ、その外周部46Aを鋼管12の各側壁12Aに接触させた状態で、鋼管12の内部に配置されている。
このように規制プレート46をリング状に形成することにより、鋼管12に対するコンクリートの充填効率が向上すると共に、規制プレート46の軽量化を図ることができる。また、充填コンクリート14(図1参照)の外周部に埋設される複数の吊り材44が、補強筋としても機能するため、コンクリート充填鋼管柱30の曲げ剛性、曲げ耐力が向上する。従って、耐火性能だけでなく、耐震性能も向上する。
次に、図8に示される変形例では、保持部材としての吊り材44に、平面視にて十字形状に連結された一対の棒材48が鋼管12の軸方向に間隔を空けて複数取り付けられている。規制部材としての棒材48は、例えば、鉄筋、PC鋼線、PC鋼棒等で構成されており、各々の両端部を鋼管12の側壁12Aに接触させた状態で、鋼管12の内部に配置されている。これにより、鋼管12の側壁12Aの内側への変形が規制されている。また、棒材48は軽く、加工が容易であるため、施工性が向上する。更に、前述した規制プレート34,46と比較して、鋼管12に対するコンクリートの充填性が向上する。
なお、棒材48の形状は適宜変更可能であり、例えば、棒材48の両端部を鋼管12の側壁12Aに沿って屈曲させ、当該側壁12Aとの接触面積を大きくしても良い。
次に、第3実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、第1,第2実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
図9及び図10(A)には、第3実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱50が示されている。なお、図9及び図10(A)では、充填コンクリートの図示を省略している。
コンクリート充填鋼管柱50を構成する鋼管12の内部には、規制部材としての複数の規制フレーム52が、鋼管12の軸方向に積み上げられた状態で配置されている。各規制フレーム52は、略鉛直に立てられた2つの枠体52A,52Bを平面視にて十字形状に連結して構成されている。各枠体52A,52Bは矩形の枠状で、鋼管12の軸方向に延びる2本の縦枠材56と、これらの縦枠材56の間に渡され、縦枠材56の上端部及び下端部をそれぞれ連結する上横枠材58、下横枠材60を備えている。
図10(A)に示されるように、2つの枠体52A,52Bの上横枠材58同士は、各々の長手方向の中央部で略直角に交差し、当該中央部で連結されている。これと同様に、枠体52A,52Bの下横枠材60同士は、各々の長手方向の中央部で略直角に交差し、当該中央部で連結されている。また、連結された上横枠材58同士は、段差ができないように各々の長手方向の中央部を共有している。これと同様に、連結された下横枠材60同士は段差ができないように各々の長手方向の中央部を共有している。これにより、複数の規制フレーム52を積み上げたときに、規制フレーム52のガタツキが防止されている。
このように構成された規制フレーム52は、4本の縦枠材56を鋼管12の各側壁12Aの中央部(幅方向の中央部)にそれぞれ接触させた状態で、鋼管12の内部に配置され、複数段に積み上げられる。この状態で、鋼管12の内部にコンクリートが充填され、各規制フレーム52が充填コンクリート14(図1参照)の内部に埋設される。
次に、第3実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の作用について説明する。
本実施形態では、各規制フレーム52の縦枠材56が、鋼管12の各側壁12Aに接触するため、鋼管12の各側壁12Aの内側への変形が規制される。また、対向する縦枠材56は、上横枠材58及び下横枠材60によって連結されている。従って、例えば、対向する一方の側壁12Aが内側へ変形して縦枠材56を押圧したときに、対向する他方の側壁12Aに上横枠材58及び下横枠材60を介して押圧力が伝達される。即ち、対向する一方の側壁12Aの内側への変形に対し、縦枠材56だけでなく、対向する他方の側壁12Aが抵抗する。従って、鋼管12の側壁12Aの内側への変形に対する規制効果が向上する。
また、複数の規制フレーム52を鋼管12の内部に順に配置し、これらの規制フレーム52を積み上げることにより、鋼管12の下端部から上端部に渡って、縦枠材56を配置することができる。従って、コンクリート充填鋼管柱50の施工性が向上する。更に、複数の規制フレーム52を積み上げることにより、各規制フレーム52の小型化を図ることができため、規制フレーム52の運搬性が向上する。
なお、規制フレーム52の形状は上記したものに限らない。規制フレーム52は、鋼管12の軸方向に延びると共に、当該鋼管12の周方向に間隔を空けて配置され、鋼管12の側壁12Aに接触する複数の縦枠材と、縦枠材の間に渡され、これらの縦枠材を自立可能に連結する横枠材と、を備えていれば良い。例えば、図10(B)に示される規制フレーム53のように、上横枠材58及び下横枠材60で複数の縦枠材56を平面視にて略矩形形状に連結しても良いし、図11に示される規制フレーム64のように、鋼管として丸型鋼管62を用いた場合は、上横枠材58及び下横枠材60で複数の縦枠材56を平面視にて三角形状に連結しても良い。また、上記実施形態では、施工性の観点から複数の規制フレーム52を鋼管12の内部に積み上げたが、鋼管12の下端部から上端部に渡る複数の縦枠材を備える1つの規制フレームを鋼管12の内部に配置しても良い。この場合、隣接又は対向する縦枠材同士を横枠材で適宜連結して、縦枠材を自立させれば良い。
次に、第4実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
図12(A)及び図12(B)には、第4実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱70が示されている。コンクリート充填鋼管柱70における充填コンクリート14の外周部には、規制部材としての4枚のPC板72が埋設されている。各PC板72は、プレキャストコンクリート製の板材で、鋼管12の軸方向に延びると共に、鋼管12の各側壁12Aにそれぞれ重ねられ、当該側壁12Aに接触した状態で配置されている。これらのPC板72は、充填コンクリート14よりも耐火性に優れたコンクリートで形成されており、充填コンクリート14よりも先に熱劣化しないようになっている。例えば、PC板72は充填コンクリート14よりも耐火性に優れた骨材(例えば、硬質砂岩、安山岩、流紋岩など)や強度の低いコンクリート(例えば、設計基準強度60N/mm2未満)が考えられる。さらには、PC板72のコンクリートに鋼繊維、鉄繊維、ガラス繊維等の繊維補強材を混入することで火災時の強度を高めても良い。
また、各PC板72の上端部には、図示しない鋼製の取付ブラケットが埋設されており、この取付ブラケットを鋼管12の各側壁12Aに溶接等することにより、当該側壁12Aに仮留めされている。この状態で、鋼管12の内部にコンクリートを充填することにより、充填コンクリート14に埋設される。
このように、充填コンクリート14の外周部に埋設されたPC板72を、鋼管12の各側壁12Aに接触させることにより、鋼管12の各側壁12Aの内側への変形が規制される。従って、上記第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上記第1実施形態では、規制部材としての縦規制部材20の幅方向の一端部20Aを鋼管12の側壁12Aに接触させたが、当該一端部20Aは必ずしも鋼管12の側壁12Aに接触させる必要はなく、当該側壁12Aが局座屈しない程度に近接させても良い。つまり、鋼管12の側壁12Aと縦規制部材20の幅方向の一端部20Aとの間に、当該側壁12Aが局座屈しない程度の隙間を設け、当該隙間に充填コンクリート14を充填しても良い。上記第2〜第4実施形態における規制プレート34,46、棒材48、規制フレーム52,53,64等についても同様である。また、鋼管12は、内部にコンクリートを充填可能であれば良く、丸形鋼管や断面多角形状の鋼管でも良い。
また、上記第1〜第4実施形態におけるコンクリート充填鋼管柱10,30,50には、必要に応じて耐火被覆を施しても良い。
以上、本発明の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1〜第4実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
次に、耐火試験について説明する。
本耐火試験では、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm2以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められるコンクリート充填鋼管柱において、鋼管12の内部に充填される充填コンクリート14の骨材が、耐火性能に与える影響を検証した。充填コンクリート14の骨材としては、従来から一般的に用いられている硬質砂岩骨材と、近年、広く用いられるようになってきた石灰岩骨材を用いた。
耐火試験では、2つの試験体1,2に鉛直荷重(軸力比=0.4)を載荷しながら、試験体1,2をバーナーで加熱し、各試験体1,2の軸方向の変形量をそれぞれ測定した。試験体1は、石灰岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱であり、試験体2では、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱である。また、試験体1,2における角形鋼管の水平断面積は同一であり、これらの角形鋼管に充填されるコンクリートのコンクリート強度も略同一(呼び強度55N/mm2、試験時強度70N/mm2程度)である。
図13には、耐火試験の試験結果が示されている。図中に実線で示す曲線は試験体1の試験結果であり、点線で示す曲線は試験体2の試験結果である。なお、図13における横軸は加熱時間(分)であり、縦軸は試験体1,2の軸方向の変形量(mm)である。この変形量(mm)は、各試験体1,2に鉛直荷重を載荷した状態をゼロとし、軸方向に伸びる方向を正、軸方向に縮む方向を負としている。
図13に示される試験結果から、石灰岩骨材を用いた試験体1は、硬質砂岩骨材を用いた試験体2よりも早期に軸方向の変形量(縮み量)が大きくなり、急激に耐力が低下したことが分かる。これは、石灰岩骨材を用いた試験体1では、充填コンクリートの外周部が早期に熱劣化し、鋼管の側壁に局部座屈が発生したためと考えられる。石灰岩骨材を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートに比べ耐火性能が劣ることが知られている。試験体1は加熱によって熱劣化し、脆くなった鋼管周辺のコンクリートが、図3に示す鋼管の面外への変形を抑えることができなくなり、鋼管の局部座屈によって脆性的に崩壊したものと思われる。このように負担軸力が大きいCFT柱(例えば軸力比0.3以上)に石灰岩のように脆い骨材を用いる場合は、充填コンクリートが十分な耐力を残している場合でも、鋼管の局部座屈によって早期に破壊が生じる。なお、骨材として安山岩、流紋岩を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートと同等以上の耐火性能を有することが知られている。従って、石灰岩骨材を用いたコンクリートは、安山岩、流紋岩を用いたコンクリートよりも早期に熱劣化するが分かる。
一方、石灰岩は、硬質砂岩、安山岩、流紋岩等と比較して安価で、かつコンクリート強度の高強度化(設計基準強度で80N/mm2程度まで)が可能であり、近年、広く用いられるようになっている。従って、上記第1〜第4実施形態は、前述した高い強度が求められ、かつ、充填コンクリートの骨材として石灰岩が用いられたコンクリート充填鋼管柱に特に有効であり、このようなコンクリート充填鋼管柱に上記第1〜第4実施形態を適用することで、コスト削減を図りつつ、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能を飛躍的に向上させることができる。
なお、上記第1〜第4実施形態は、充填コンクリートの骨材として硬質砂岩、安山岩、流紋岩等を用いたコンクリート充填鋼管柱や、一般的な強度のコンクリート充填鋼管柱にも、当然ながら適用可能である。