以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るエアマット装置1を備えたベッドBの斜視図である。エアマット装置1は、ベッドBのベッドフレームFに載置されて使用されるエアマット本体2と、エアマット本体2上の患者Y(図3(a)に示す)の体圧を検出する圧力センサ8(図3に示す)と、上記エアマット本体2への空気供給量を制御する制御ボックス3とを備えている。該制御ボックス3は、電源コードWによって電源の供給を受けていて、上記ベッドフレームFに取り付けられたヘッドボードHbに引っ掛けて使用するようになっている。尚、エアマット本体2及び制御ボックス3は、畳や床の上に直接置いて使用してもよい。
ベッドBは、図11に示すように、背上げ可能になっている。背上げ機構については、公知の機構を使用できるものであり、ここでは省略する。ベッドBのベッドフレームFのベースフレームF5の上に、背ボトムF1、臀部ボトムF2、上脚ボトムF3、下脚ボトムF4が設けられている。背上げした際には、背ボトムF1が揺動によって所定角度に傾くことができるようになっている。図11は、背ボトムが揺動して背上げ状態になったことを示す。上脚ボトムF3と下脚ボトムF4とは、患者の膝が曲がって持ち上がる状態を支持するように、上脚ボトムF3と下脚ボトムF4との合わせ部分が少し持ち上がるようになっている。
尚、本発明では、背ボトムF1が背上げされるようになったベッドであれば適用可能なものであり、上脚ボトムF3と下脚ボトムF4との合わせ部分が少し持ち上がる機構は無くても良い。
上記エアマット本体2は、図3に示すように、患者の寝姿勢の身長方向に並設された独立した複数のセルが表側に一列に並設された第1セル群12と、複数のセルが上記第1セル群12の下側に該第1セル群12に沿って一列に並設された第2セル群11と、該第2セル群11の下側に該第2セル群11に沿って一列に並設された第3セル群10を備えている。これら第1セル群12、第2セル群11及び第3セル群10の各セルは、柔軟な樹脂シートで気密に構成されていて、その内部には、空気が充填されるようになっている。尚、第1セル群12の各セルを第1セル12A,12B,…と呼び、第2セル群11の各セルを第2セル11A,11B,…,11Nと呼び、第3セル群10の各セルを第3セル10,10,…と呼ぶ。
上記第1セル12A,12Bは、エアマット本体2の幅方向に延びる筒状をなしていて、患者Yの頭側から足先に向けて交互に14個ずつ並設されている。上記第1セル12A,12A,…は互いに連通していて、上記制御ボックス3から延びる1本の配管22A(図2に示す)が接続され、この配管22Aを介して全ての第1セル12A,12A,…に同時に空気が給排されるようになっている。また、上記第1セル12B,12B,…も互いに連通していて、上記制御ボックス3から延びる1本の配管22Bが接続され、この配管22Bを介して全ての第1セル12B,12B,…に同時に空気が給排されるようになっている。すなわち、それぞれ第1セル12Aび第1セル12Bは、別々の配管系統により空気が給排されていて、各配管系統に対してそれぞれ空気供給量を調整できるようになっている。したがって、第1セル12A及び第1セル12Bを交互に減少・増加を繰り返す(図3(b)、(c)に一部を示す)ことでエアマット本体2上の患者Yの体全体の血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑えることができるようになっている。
上記第2セル11A,11B,…,11Nは、エアマット本体2の幅方向に延びる筒状をなしていて、患者Yの頭側から足先に向けて14個並設されている。上記第2セル11A,11B,…,11Nの径は、上記第1セル12A,12Bの径よりも大きく設定されていて、各第2セル11A,11B,…,11Nは、上記隣り合う第1セル12A,12B間に跨るように対応配置されている。上記第2セル11A,11B,…,11Nには、制御ボックス3から延びる14本の配管21A〜21N(図2に一部を示す)がそれぞれ接続され、これら配管21A〜21Nを介してそれぞれ独立に空気が給排されるようになっている。したがって、各第2セル11A,11B,…,11Nへの空気供給量を独立して調整して内圧を制御できるようになっていて、第2セル11A,11B,…,11Nの特定セルへの空気供給量を増減させてセル内圧を調圧したり、周期的に減少・増加を繰り返すことができるようになっている(図3(b)、(c)に一部を示す)。
上記各第3セル10は、エアマット2の幅方向に延びる筒状をなしていて、上記第2セル11A,11B,…,11Nの下側において患者Yの頭側から足先に向けて13個並設され、それぞれが上記各第2セル11A,11B,…,11Nの間に位置するようになっている。上記各第3セル10には、制御ボックス3から延びる1本の配管20(図2に示す)が接続され、この配管20を介して全ての第3セル10に同時に空気が給排されるようになっていて、上記第1セル12A,12B及び第2セル11A,11B,…,11Nへ給排する空気量が減少してしまうような非常時であっても患者YがベッドフレームFの固さを直接感じる状態になるのを確実に防止することができるようになっている。
尚、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10の各個数は上記に記載した個数に限らず、複数設けられていればよい。
また、上記各第2セル11A,11B,…,11Nは、2つの第1セル12に跨るように対応配置されているが、第1セル12A,12Bのうちの1つに対応配置されていてもよいし、3つ以上の第1セル12に跨るように対応配置されていてもよい。また、第1セル12A,12Bがそれぞれ別々の配管22A,22Bに接続されているが、2つの配管に限られるものではなく、それ以上の配管に接続されるようにして更に細かく調圧するようにしても良い。
上記圧力センサ8は、図6に示すように、エアマット本体2上に横たわる患者Yの体の各部分に加わる圧力の分布を検出するものであり、後述する制御装置5に接続され、検出した圧力分布に係る信号を制御装置5に送信するようになっている。上記圧力センサ8は、図3に示すように、上記第1セル12A,12B毎に、シート状の圧力センサが、第1セル12上に配設されていて、個々のシート状の圧力センサ内に、複数の荷重センサが第1セル12の長さ方向に並べて配設されている。これにより、エアマット本体2上で患者Yに加わる圧力が圧力センサ8に直接伝えられるようになり、精密な圧力測定が可能となっている。尚、上記圧力センサ8は、第1セル12A,12Bと第2セル11A,11B,…,11Nとの間に設けるようにしてもよい。また、図3では全部の第1セル12の上側にシート状の圧力センサを配設してあるが、全部に配設する必要はなく、例えば、頭側端や足側端等のように、圧力検出を省略しても差し支えない部分については、シート状の圧力センサを配設することを省いても差し支えない。
上記制御ボックス3は、図2に示すように、上記エアマット本体2に接続され、該エアマット本体2の第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10に空気をそれぞれ給排する空気給排装置4と、上記圧力センサ8の検出値に基づいて上記空気給排装置4を制御する制御装置5と、設定等を入力する及び表示する操作パネル6とを備えている。
上記空気給排装置4は、空気を継続して吐出可能な電動モータを備えた従来周知の第1空気ポンプ41及び第2空気ポンプ48と、上記第1空気ポンプ41に吐出管46を介して接続され、第1空気ポンプ41から吐出された空気を第1セル12A,12Bに分配する分配弁42と、上記吐出管46内の圧力を検出する第1空気圧センサ43と、上記第2空気ポンプ48から吐出された空気を第2セル11A,11B,…,11N及び各第3セル10,10,…に分配する電磁弁44と、上記第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10,10,…内の圧力をそれぞれ検出する第2空気圧センサ45A〜45N及び第3空気圧センサ49とを備えている。
上記分配弁42は、第1セル12A,12Bに連通する配管22A,22Bが接続される独立した接続口を有している。
上記分配弁42には、図示しない制御モータにより位置が変更可能な弁体が内蔵されていて、制御装置5からの信号に基づいて該弁体の位置を変更することにより、上記接続口のうち1つの接続口を開放するとともに他の接続口を閉塞するようになっている。すなわち、弁体の位置を変更して、例えば、第1セル12Aに接続される配管22Aの接続口を開放すると、他の接続口が閉塞されて、第1セル12Aに接続される配管22Aのみが吐出管46に連通するようになっている。また、第1セル12A内の空気を排出する際には、弁体を移動させて図示しない排気口から排出させるようにしている。
さらに、分配弁42には、弁体の位置を検出する弁体位置検出センサ47が設けられている。この弁体位置検出センサ47は制御装置5に接続されている。弁体位置検出センサ47は、図示しないが、弁体に一体化されたスリット付きの円盤と、円盤の表側から光を照射する発光素子と、発光素子から照射された光のうち、スリットを通過して円盤の裏側に達した光を検出する受光素子とを備えている。スリットを通過した光を受光素子で検出することで、弁体の位置を得ることができるようになっている。
上記第1空気圧センサ43は、第1空気ポンプ41の吐出管46に設けられている。上記第1空気圧センサ43は、吐出管46内の圧力を随時検出して電気信号に変換して出力し、制御装置5にこの出力信号を送るように構成されている。例えば、第1セル12A内の圧力を検出する場合、分配弁42の弁体を移動させ、第1セル12Aに接続される配管22Aと吐出管46とを連通させて上記第1セル12A内の圧力を検出するようになっている。尚、第1空気圧センサ43は、上記第1空気ポンプ41に空気が加わっていない状態でキャリブレーション(ゼロ点補正)が行われるようになっていて、これにより、第1空気圧センサ43は第1セル12A,12B内の圧力を精度良く測定できるようになっている。尚、上記第1空気圧センサ43を配管22A及び22Bに設けて、第1セル12A及び12B内の圧力を直接検出するようにしてもよい。
電磁弁44は、上記第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10にそれぞれ接続される配管22A〜22N,23毎に配設された各電磁弁の集合を示していて、制御装置5からの信号に基づいて弁体の位置を変更することにより、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10にそれぞれ接続される配管22A〜22N,23の接続口を独立して開閉することができるようになっている。停電時のように電力供給がなされない場合には、電磁弁44を閉状態にして、第3セル10から空気が抜けてしまうのを防止して、当該第3セル10を膨張状態で維持できるようになっている。また、第2セル11A,11B,…,11N及び各第3セル10の空気を排出する際には、弁体を移動させて図示しない排気口から排出させるようにしている。
また、電磁弁44には、上記分配弁42と同様に、弁体の位置を検出する弁体位置検出センサ47が設けられている。この弁体位置検出センサ47は制御装置5に接続されている。
上記各第2空気圧センサ45A〜45N及び第3空気圧センサ49は、配管21A〜21N及び配管20にそれぞれ設けられていて、各管内の圧力を検出して電気信号に変換して出力し、この出力信号を制御装置5に送るように構成されている。
操作パネル6は、介護者や看護師等の操作者が各種設定値等を所定のスイッチで入力したり、エアマット本体2上の患者Yの状態を表示或いは報知するためのものである。すなわち、操作パネル6には、図示しないが、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10内の内圧値Pn等を設定するための各種スイッチや、図4に示すように、圧力センサ8により検出した圧力分布の表示モニタ等が設けられている。
上記制御装置5は、図示しないが、中央演算処理装置(CPU)や、制御プログラムが格納されたメモリ等を備えている。上記制御装置5には、圧力センサ8、上記空気給排装置4の第1空気ポンプ41、分配弁42、第1空気圧センサ43、第2空気ポンプ48、電磁弁44、第2空気圧センサ45A〜45N、第3空気圧センサ49、及び弁体位置検出センサ47,47が接続され、さらに、上記操作パネル6の各スイッチが接続されていて、これらから信号が入力されるようになっている。そして、上記制御装置5は、上記操作パネル6の各スイッチ、圧力センサ8、第1空気圧センサ43、第2空気圧センサ45A〜45N及び弁体位置検出センサ47,47から入力された信号を処理して、第1空気ポンプ41、第2空気ポンプ48、分配弁42及び電磁弁44を制御するようになっている。
上記制御装置5には、図4に示すように、上記圧力センサ8の圧力分布に基づいて患者の姿勢を判定する体位判定部5aが設けられている。
該体位判定部5aは、予め設定された所定の基準値(基準体重、基準荷重範囲及び基準荷重比率)と、上記圧力センサ8で検出された検出値とに基づいて、患者Yが離床、端座位、背上げ及び仰臥位のうちのどの体位となっているかを判定するようになっている。例えば、圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて算出した値を推定体重とし、該体重が、上記基準体重W以下であれば患者Yは離床していると判定し、圧力センサ8で検出した検出値から算出した荷重範囲が基準荷重範囲内、すなわち、エアマット本体2の左右端から距離L1以内か若しくは頭側端及び足側端から距離L2以内であれば患者Yは端座位であると判定するようになっている。尚、頭側端及び足側端からは距離L2として同じ距離にしているが、それぞれ別々の距離に設定しても良い。また、エアマット本体2を頭側、中間、足側に略3等分し、上記圧力センサ8で検出した圧力分布から算出した荷重の全体に対する中間部分の比率が基準荷重比率X1%以上であれば患者Yは背上げ状態であると判定し、X1%以上でなければ患者Yは仰臥位であると判定するようになっている。
尚、上記荷重比率は、頭側、中間及び足側と3つに分けて算出する場合に限らず、例えば4つの区分に分けてもよいし、区分数にはこだわらない。また、各区分を等しい範囲で区分する必要はない。さらには、上述の如きエアマット本体2の長手方向に複数区切って荷重比率を算出する方法に限らず、エアマット本体2全体に対する所定の位置(例えば、臀部付近の最大体圧位置や患者Yの重心位置)の荷重比率を算出するようにしてもよい。
また、上記制御装置5には、上記圧力センサ8の検出信号に基づいて、患者Yが寝返りできるかできないかを判定する体動可否判定部5b及び患者Yが寝返りをしたか否かを判定する体動有無判定部5cと、寝返りしたか否かを判定する位置を上記エアマット本体2上で設定する判定位置設定部5dと、寝返りしたと判定する際に基準となる患者Yに加わる圧力の基準変化量(基準体圧低下量)が予め設定された変化圧設定部5eとが設けられている。さらに、上記制御装置5には、上記体動有無判定部5cで患者Yが寝返りしたと判定した時間を記憶する体動時間記憶部5fと、患者Yが寝返りできないと判定する際に基準となる所定の経過時間を設定する判定時間設定部5gとが設けられている。本発明では、体動できるとは寝返りできるということを示している。
上記判定位置設定部5dは、寝返りするか否かの判定を行う患者Yの所定位置を、判定位置として予め設定しておくものであって、上記圧力センサ8で検出する圧力分布に基づいて、当該判定位置がエアマット本体2上でどの位置となるかを特定するようになっている。本実施形態では、上記判定位置は、患者Yの重心位置か、若しくは最大体圧位置を選択して、予め設定できるようになっている。尚、当該判定位置は、患者Yの重心位置や最大体圧位置でなく、別の位置を設定するようにしてもよい。また、臀部付近の最大体圧位置のように、特定領域での最大体圧位置として、頭部や背中での最大体圧値と区別するようにしても良い。
上記体動有無判定部5cは、現在の判定位置と時間t1前の判定位置とを比較し、時間t1前の判定位置に対して現在の判定位置が所定の基準距離L3以上変化していれば患者Yが寝返りをしたものと判定するようになっている。また、制御装置5は、上記時間t1前の判定位置に対して現在の判定位置が所定の基準距離L3以上変化していなくても、上記判定位置の圧力センサ8で検出した体圧低下量が上記変化圧設定部5eで設定された基準体圧低下量X2%以上であれば、患者Yが寝返りしたと判定するようになっている。一方、上記体動有無判定部5cは、時間t1前の判定位置に対して現在の判定位置が所定の基準距離L3以下で、且つ、上記判定位置の圧力センサ8で検出した体圧低下量が上記変化圧設定部5eでの基準体圧低下量X2%以下であれば、患者Yが寝返りしていないと判定するようになっている。
上記体動可否判定部5bは、上記体動時間記憶部5fで記憶された患者Yが寝返りしたと判定した時間から、上記判定時間設定部5gで設定された所定の経過時間t2以上、且つ、t3以内に上記体動有無判定部5cで寝返りをしたと判定すると、患者Yは自力で寝返りできると判定する一方、上記体動有無判定部5cによって患者Yが寝返りしたと判定してから所定の経過時間t2以上、且つ、t3以内に上記体動有無判定部5cで寝返りしていないと判定すると、患者Yは自力で寝返りできないと判定するようになっている。
また、上記制御装置5には、上記圧力センサ8の圧力分布に基づいて患者の体型を判定する体型判定部5hが設けられている。
上記体型判定部5hは、圧力センサ8で検出した圧力分布から身長を算出し、且つ、圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて算出した算出値から体重を推定し、これら算出した身長・体重に基づいて患者Yの体型を判定するようになっている。本実施形態では、かなり細い、細い、普通、太い、かなり太い、の5段階の範囲が予め設定されていて、患者Yがどの範囲に当てはまるかを判定するようになっている。尚、患者Yの体型は上記の如き5段階でなくてもよく、任意の段階を設定すればよい。
また、上記制御装置5には、上記体動可否判定部5b、上記体位判定部5a及び上記体型判定部5hの各判定結果の組み合わせにそれぞれ対応する第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10の内圧値Pnを格納する基準圧格納部5iが設けられている。上記内圧値Pnは、各第1セル12A,12Bの内圧値Pn1、第2セル11A,11B,…,11Nの内圧値Pn2及び第3セル10の内圧値Pn3で構成されていて、これら3つの組み合わせが、例えば10通りに設定されて上記基準圧格納部5iに格納されている。当該10通りの組み合わせは、図7に示すように、基準圧Nを境に、該基準圧Nより低い圧力を設定圧S1〜S4の4段階に、基準圧Nより高い圧力を設定圧H1〜H5の5段階に分けて設定されていて、設定圧S1から設定圧S4になるにつれて圧力が低くなり、設定圧H1から設定圧H5になるにつれて圧力が高くなるように設定されている。尚、内圧値Pn1,Pn2,Pn3の組み合わせは、上述の如く10通りでなくてもよく、任意の数を設定すればよい。
また、上記制御装置5には、圧力センサ8により検出された検出値が高い圧力値になった場合を判定するために、予め設定された圧力設定値Nmaxが記憶された圧力記憶部5jが設けられている。
また、上記制御装置5には、背上げや背下げ等の背ボトムの揺動を検出する揺動検出部5nが設けられている。また、上記制御装置5には、揺動検出部5nで背ボトムF1の揺動が検出されたときに、第1セル群12及び/又は第2セル群11の圧力を制御する圧力コントロール部5kが設けられている。この実施形態では、圧力コントロール部5kは、揺動を検出した際にその検出状態が背上げであると、背ボトムF1に対応する位置にある第2セル11群内の空気を抜いて圧力を一旦所定圧力値まで低下させ、背ボトムF1の臀部側位置に対応する部位にある第2セル11からヘッド側位置に対応する部位にある第2セル11の方向に向けて、空気を供給して順次圧力を元の圧力値に回復させるようになっている。例えば、図3において背ボトムF1に対応する位置にある第2セル群11が11A,11B,…,11Gであるとすると、第2セル11A,11B,…,11Gの空気を同時に所定圧力まで抜いて、次に第2セル11G,11F,…,11Aの順番に空気を供給して元の圧力に回復させる。この実施形態では、圧力コントロール部5kにおいて、揺動時には背ボトムF1の臀部側位置に対応する部位にある第2セル11からヘッド側位置に対応する部位にある第2セル11の方向に向けて、順次圧力を元の圧力値に回復させるように制御しているが、本発明は、この制御に限られるものではなく、第2セル11を順次時間差を持って回復させれば別の制御でも良い。例えば、適当な間隔を空けて、臀部、背中部、頭部と回復させて、次にその間隔部分のセルを回復させるようにしても良い。また、1つおきに臀部のほうの第2セル11から回復させ、その後、間の第2セル11を一度に或いは順次回復させても良い。また、頭部付近の第2セル11については、圧力を抜くと患者が不快に感じることがあり、その場合には素早く元の圧力に回復させても良い。
また、背ボトムF1に対応する位置にある第2セル11について、圧力を増減する制御を行ったが、臀部ボトムF2を含んで上記のような回復制御(即ち圧力の増減制御)をしても良い。逆に、背ボトムF1に対応する位置にある第2セル群全てについて、上記のような制御をするのではなく、例えば、患者Yの背中部分からヘッド側に位置する第2セル群11、或いはズレを強く感じる可能性が高い部分の第2セル群11等に絞って制御するようにしても良い。
また、上記制御装置5には、隣接する各第2セル11に対して交互に圧力を増減させる圧力増減部5L及び第2セルの上側に配置された一方の第1セル12と他方の第1セル12とに対して交互に内圧を増減して膨脹・収縮を繰り返す状態や隣接する両方の第1セル12を膨張させた状態に維持する圧力調整部5mを備えている。
そして、上記制御装置5は、上記第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10内の圧力が上記体位判定部5a、上記体動可否判定部5b及び上記体型判定部5hの各判定結果の組み合わせに対応する内圧値Pnとなるように上記空気給排装置4から第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10へ供給する空気供給量を調整して内圧を制御するようになっている。上記エアマット2において、第3セル10内の圧力は、第1セル12A,12B及び第2セル11A,11B,…,11Nから空気が抜けた際に、患者YがベッドフレームFに当たらないようにする、或いは軽いクッション性(患者YがベッドフレームFに当たって硬いと感じることを防止する程度のクッション性)が残されることができる程度の圧力となっている。したがって、第1セル12A,12B及び第2セル11A,11B,…,11Nのセル内圧が減少したときに、患者YがベッドフレームF等に接触して硬いと感じるのを確実に防止でき、患者Yに対する安全性の高いエアマット装置1にできる。
また、制御装置5は、第2セル11A,11B,…,11Nへの空気供給量を調整して内圧を制御することにより、患者Yの寝姿勢をコントロールできるようになっている。上記制御装置5は、圧力センサ8により検出された圧力分布からエアマット2にかかる荷重を算出し、該算出した荷重に所定の係数を掛けたものを上記内圧値Pn2に加えて目標圧力とするようにしていて、上記第2セル11A,11B,…,11N内の圧力が上記目標圧力となるように、空気給排装置4を制御して、患者Yの寝姿勢をコントロールするようになっている。寝姿勢をコントロールする技術内容は、特開2009−183490号に開示された技術内容を利用できるものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
尚、本実施形態では、寝姿勢をコントロールすることが採用されているが、本発明はこの寝姿勢のコントロールがない実施形態でも適用可能である。
また、上記制御装置5は、第1セル12A,12Bへの空気供給量調整して内圧を静止モードと圧切替モードとに変更できるようになっている。静止モードにおける制御装置5は、第1セル12A,12Bを上記内圧値Pn1となるまで空気を供給し、その状態を維持するようになっている。一方、圧切替モードの制御装置5は、第1セル12A,12Bを上記内圧値Pn1となるまで空気を供給し、その後、図3(b)に示すように、第1セル12B内の圧力を内圧値Pn1で維持したまま、第1セル12Aから空気を抜いて該第1セル12Aを収縮させ、その状態を所定時間維持した後、図3(c)に示すように、第1セル12Aに内圧値Pn1となるまで空気を供給し、第1セル12Bから空気を抜いて該第1セル12Bを収縮させる動作を繰り返すように、空気給排装置4を調整して内圧を制御するようになっている。すなわち、上記制御装置5は、隣り合う2つの第1セル12A,12Bの内圧が交互に減少・増加を繰り返して一方が減少状態の際に他方が増加状態となるように空気給排装置4を調整して内圧を制御するようになっている。尚、上記静止モード及び圧切替モードは、通常時において、初期設定後の所定タイミングで自動で圧切替モードとなるように制御されているが、患者Yの個々の状況に応じて静止モードに切り替えることができるように上記入力操作パネル6において手動で切替可能となっている。
さらに、上記制御装置5は、圧切替モードにおいて一方の第1セル12A,12Bが膨張又は収縮している所定時間を短くする圧変動重視モードと、当該所定時間を長くする安定重視モードとに切り替えられるようになっている。尚、上記第1セル12A,12Bの膨張又は収縮のモードは、上記圧変動重視モード及び安定重視モードだけでなく、例えば、第1セル12A,12Bが膨張又は収縮している所定時間を数回短くし、その後、第1セル12A,12Bが膨張又は収縮している所定時間を数回長くするようなモードであってもよい。さらに、膨張又は収縮するたびに、膨張又は収縮している所定時間や第1セル12A,12B内の内圧値Pn1や収縮させたときの内圧値が変更されるようなモードであってもよい。
また、上記制御装置5は、上記圧力センサ8の検出値が上記圧力記憶部5jに記憶された圧力設定値Nmaxを超えると、隣り合う2つの第1セル12A,12Bの一方が増加状態若しくは減少状態を維持した安定状態、すなわち、上記第1セル12A,12Bが変化している途中の状態を除いて、上記圧力設定値Nmaxを超えた位置にある第2セル11A,11B,…,11Nへの内圧の減少・増加を時間の経過に伴って繰り返すように上記空気給排装置4を制御するようになっている。尚、第2セル11A〜11Nが第1セル群12の3つ以上のセルに跨っている場合、制御装置5は、上記圧力設定値Nmaxを超えた位置にある第2セル11A,11B,…,11Nに対応する第1セル群12の複数のセルの少なくとも1つが増加状態を維持している間に、上記圧力設定値Nmaxを超えた位置にある第2セル11A,11B,…,11Nの内圧の減少・増加を時間の経過に伴って繰り返すように上記空気給排装置4を制御するようになっている。
図5は、横軸を時間、縦軸を第1セル12A,12B及び第2セル11A,11B,…,11Nへの空気供給量を増減させたときの第1セル12A,12B及び第2セル11A,11B,…,11N内の圧力値を示したグラフであり、上記圧力センサ8の検出値が圧力設定値Nmaxを超えたときの第1セル12A,12Bの動作に対する第2セル11A,11B,…,11Nの動作タイミングを示している。D1は、第1セル12Aのデータを、D2は、第1セル12Bのデータを、D3は、第2セル11A,11C,11E,…,11Mのデータを、D4は、第2セル11B,11D,11F,…,11Nのデータを示していて、圧力センサ8の検出値が第2セル群11の隣り合う2つのセル(例えば、図6に示す第2セル11C,11D)の位置で圧力設定値Nmaxを超えた場合の動作を示している。また、図中のパターンAは、第1セル12A及び第1セル12Bの減少・増加の切替が1回行われる毎に、隣り合う2つの第2セル11A,11B,…,11Nが交互に1回ずつ収縮するパターンを示し、図中のパターンBは、第1セル12A及び第1セル12Bの減少・増加の切替が3回行われる毎に、隣り合う2つの第2セル11A,11B,…,11Nが交互に1回ずつ収縮するパターンを示している。
尚、介護者や看護師等の操作者は、入力操作パネル6を操作することによって、患者Yの状態に合わせてパターンA及びパターンBを変更することができる。
また、上記第1セル12A及び第1セル12Bを交互に減少・増加させるパターンは、上述のパターンに限らず、別のパターンであってもよい。例えば、第1セル12A及び第1セル12Bの減少・増加の切替が1回行われる毎に、第2セル11A,11B,…,11Nのうちの1つが1回収縮するようにしてもよいし、第2セル11A,11B,…,11Nのうち隣り合う3つが交互に1回ずつ収縮するようにしてもよい。
また、パターンAを数回繰り返した後、パターンBを数回繰り返すようであってもよい。
さらには、患者Yの状態(体動の可否、体型の違い等)に応じてパターンを変更するようにしてもよい。
次に、エアマット装置1の自動運転における具体的な制御動作を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず制御ボックス3の電源をONにし、操作者が入力操作パネル6を操作して、例えば、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10内の内圧値Pn1,Pn2,Pn3等を設定する。
その後、図8のフローチャートのステップSA1に進む。このステップSA1では、制御装置5が、電磁弁44を作動させて弁体の位置を変更させ、第3セル10、10…に接続される配管20と、第2空気ポンプ48とを連通させて第2空気ポンプ48を作動させる。これにより、第3セル10に空気が供給される。この間、第3セル10内の圧力は、上記第3空気圧センサ49により検出されていて、基準圧Nの内圧値Pn3となったときに弁体の位置を変更して、第3セル10に接続される配管20を閉状態にする。
次いで、制御装置5は、分配弁42の弁体の位置を変更させ、第1セル12Aに接続される配管22Aと、第1空気ポンプ41の吐出管46とを連通させて第1空気ポンプ41を作動させることにより、第1セル12Aに空気が供給される。第1セル12Bにも同様にして空気を供給する。そして、上記第1セル12A,12Bは基準圧Nの内圧値Pn1に設定された状態で維持される。
しかる後、制御装置5は、電磁弁44の弁体の位置を変更させ、第2セル11Aに接続される配管21Aと第2空気ポンプ48とを連通させて、基準圧Nの内圧値Pn2となるまで上記第2セル11Aに空気を供給するように空気給排装置4を制御する。このようにして、各第2セル11A,11B,…,11Nに対して順に空気を供給した後、ステップSA2に進む。
ステップSA2では、入力操作パネル6に圧力センサ8の検出値に基づいて図6に示すような体圧分布を表示する。そして、その後、ステップSA3に進んで体位判定処理が開始される。
ここでステップSA2における体位判定処理の具体的な制御動作を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
まずステップSB1では、上記圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて体重を算出する。
次に、ステップSB2では、ステップSB1で算出した体重が上記入力操作パネル6の各スイッチにより入力された所定の基準体重W以上かどうかを判定する。このステップSB2の判定がNOであるとき、すなわち、算出した体重が基準体重W以上でないと判定したときはステップSB3に進み、患者Yが離床しているとして終了する。
一方、ステップSB2の判定がYESであるときには、ステップSB4に進み、圧力センサ8で検出した圧力分布が基準荷重範囲内であるか否か、すなわち、エアマット2の左右端から距離L1以内か若しくは頭側端及び足側端から距離L2以内であるかどうかを判定する。
このステップSB4の判定がYESであるとき、すなわち、圧力センサ8で検出した圧力分布がエアマット2の左右端から距離L1以内か若しくは頭側端及び足側端から距離L2以内であるときには、ステップSB5に進み、患者Yが端座位であるとして終了する。
一方、ステップSB4の判定がNOであるときには、ステップSB6に進み、中間比率が基準荷重比率X1%以上かどうかを判定する。
このステップSB6の判定がYESであるとき、すなわち、中間比率が基準荷重比率X1%以上であるときには、ステップSB7に進み、患者Yが背上げ状態であるとして終了する。
一方、ステップSB6の判定がNOであるときには、ステップSB8に進み、患者Yが仰臥位であるとして終了する。
体位判定処理が終了し、ステップSA3の判定がNOであるとき、すなわち、患者Yが離床している、端座位である及び背上げ状態であると判定すると、ステップSA6に進み、後述する体動判定処理を行う。
一方、ステップSA3の判定がYESであるとき、すなわち、患者Yが仰臥位であると判定すると、ステップSA4に進み、圧力センサ8の圧力分布から患者Yの身長を算出し、さらに、圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて算出した値を患者Yの体重と推定してステップSA5に進む。
上記ステップSA5では、上記ステップSA4で算出された身長・体重に基づいて患者Yの体型を設定する。本実施形態では、かなり細い、細い、普通、太い、かなり太い、の5段階の範囲が予め設定されていて、患者Yがどの体型であるかを体型判定部5hで判定する。
そして、次のステップSA6に進んで体動判定処理が開始される。ここでステップSA6における体動判定処理の具体的な制御動作を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
まずステップSC1では、体動判定の判定位置が患者Yの重心位置か最大体圧位置のどちらかに選択される。
次に、ステップSC2では、圧力センサ8で検出された圧力分布に基づいてエアマット2上で判定位置を特定してステップSC3に進む。
ステップSC3では、現在の判定位置と時間t1前の判定位置とを比較し、時間t1前の判定位置に対して現在の判定位置が所定の基準距離L3以上変化したかどうかを判定する。このステップSC3の判定がYESであるとき、すなわち、時間t1前の判定位置に対して現在の判定位置が基準距離L3以上変化したと判定したときにはステップSC5に進み、患者Yが寝返りしたとしてステップSC7に進む。
一方、ステップSC3の判定がNOであるとき、すなわち、時間t1前の判定位置に対して現在の判定位置が基準距離L3以上変化していないと判定したときには、ステップSC4に進み、上記判定位置で検出した圧力センサ8の体圧低下量と上記変化圧設定部5eで設定した基準体圧低下量X2%とを比較判定する。
このステップSC4の判定がYESであるとき、すなわち、圧力センサ8で検出した体圧低下量が基準体圧低下量X2%以上であると判定したときにはステップSC5に進み、患者Yが寝返りしたとしてステップSC7に進む。
一方、ステップSC4の判定がNOであるときには、ステップSC6に進み、患者Yが寝返りをしていないとしてステップSC8に進む。
上記ステップSC7では、上記体動時間記憶部5fで記憶された患者Yが寝返りしたと前回判定した時間から、所定時間内の寝返りであるかどうかを判定する。このステップSC7の判定がNOであるとき、すなわち、今回の寝返りが前回の寝返りから所定の経過時間t2以上、且つ、時間t3以内を外れた場合には、ステップSC1に戻る。
一方、ステップSC7の判定がYESであるときには、ステップSC9に進んで患者Yが寝返りできるとし、ステップSC11に進んで圧切替モードを安定重視モードに設定して終了する。
即ち、本発明では、患者Yが自力で寝返りできる場合には、時間t2〜t3の間に寝返りすることが経験的に解かっている。それに対して、患者Yが自力で寝返りできない場合には、看護師や介護者が定期的に寝返りをさせるが、このときの時間は、通常時間t3以上となっていることが経験的に解かっている。これらの経験に基づいて、時間差を利用して自力で寝返りできるか否かを判定するようにした。
上記ステップSC8では、寝返りしていない経過時間がt4以上であるかどうかを判定する。このステップSC8の判定がNOであるとき、すなわち、寝返りしていない経過時間がt4以上でない場合には、ステップSC1に戻る。
一方、ステップSC8の判定がYESであるときには、ステップSC10に進んで患者Yが寝返りできないとし、そして、ステップSC12に進んで圧切替モードを圧変動重視モードに設定して終了する。
上記ステップSA6の判定がYESであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできると判定すると、ステップSA7に進み、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10が基準圧Nの内圧値Pnとなるように空気給排装置4が制御された後、ステップSA8へと進む。
一方ステップSA6の判定がNOであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできないと判定すると、ステップSA8へと進む。
上記ステップSA8では、体位判定部5a、体動可否判定部5b及び体型判定部5hの各判定結果に対応する設定圧に第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10の内圧を設定する。本実施形態では、図7に示すテーブルに基づいて、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10の内圧を設定圧S1〜S4,H1〜H5、基準圧Nのいずれかの価に基づいて内圧値Pn1,Pn2,Pn3に設定する。
しかる後、ステップ9へと進み、エアマット2上の患者Yに対して、寝姿勢をコントロールする。上記制御装置5は、圧力センサ8により検出された圧力分布からエアマット2にかかる荷重を算出し、該算出した荷重に所定の係数を掛けたものを上記内圧値Pn2に加えて目標圧力とする。そして、上記制御装置5は、上記第2セル11A,11B,…,11Nが上記目標圧力となるように、空気給排装置4を制御する。
その後、ステップ10へと進み、エアマット2上の患者Yに対して、制御装置5が圧切替モードの制御を行う。まず、図3(b)、(c)に示すように、制御装置5が、第1セル12B内の圧力を所定値で維持したまま、第1セル12A内への空気供給量を減少させて圧力を低下させる。この状態で所定時間経過した後に、第1セル12A内への空気供給量を増加させて圧力を上記第1セル12Bの所定値と同じ圧まで高め、第1セル12Bへの空気供給量を減少させて圧力を低下させる。これが繰り返されることにより、患者Yの体の各部位に長時間同じ圧力が作用したままになるのが防止され、床ずれが抑制される。
しかる後、ステップSA11へと進み、圧力センサ8の検出値から患者Yに高い圧力が加わっているかどうかを判定する。このステップSA11の判定がNOであるとき、すなわち、圧力センサ8の検出値が、圧力設定値Nmaxを超えていない場合には、ステップSA2に戻る。
一方、ステップSA11で判定がYESであるとき、すなわち、圧力センサ8の検出値が、圧力設定値Nmaxを超えていると、ステップSA12へ進み、患者Yが寝返りできるかできないかを判定する。このステップSA12の判定は、ステップSA6で行った判定結果を流用し、判定がYESであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできる場合には、ステップSA14へと進み部分圧切替制御を行って、ステップSA2に戻る。
一方、ステップSA12で判定がNOであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできない場合には、ステップSA13へと進み、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10内の設定圧がステップSA8で設定した設定圧に対して1段階下げた設定圧かどうかを判定する。このステップSA13の判定がNOであるとき、すなわち、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10の設定圧がステップSA8で設定した設定圧である場合には、設定圧を1段階下げてステップSA2へと戻る。本実施形態では、例えば、ステップSA8での設定圧がH5の場合、H4に変更されていなければステップSA2に戻る。
一方、ステップSA13の判定がYESであるとき、すなわち、第1セル12A,12B、第2セル11A,11B,…,11N及び第3セル10の設定圧がステップSA8で設定した設定圧より1段階下げた設定圧である場合、ステップSA14へと進み部分圧切替制御を行って、ステップSA2に戻る。
このステップSA14では、部分圧切替制御が行われるようになっている。具体的には、圧力センサ8の検出値により、患者Yに高い圧力が加わっている箇所に対応する第2セル群11の各セルへの空気供給量を周期的に減少・増加して内圧を増減する制御を繰り返す。例えば、図6のDe部分が第2セル11Dに予め設定された圧力設定値Nmaxを超えると、第2セル11Dへの空気供給量を減少させて元の圧力に戻す。この状態で所定時間経過した後に、第2セル11Dへの空気供給量を増加させて圧力を高くする。尚、本実施形態では、第1セル12A,12Bが圧切替モードである場合において、第2セル11D内の空気供給量が減少しているときに、当該第2セル11Dに跨る2つの第1セル12A,12Bのうち、1つは空気供給量が減少しないようになっている。したがって、当該箇所の患者Yの体の一部が深く沈み込むことを回避することができ、床ずれや痛みの発生を効果的に抑制しながら、患者Yの寝姿勢を崩さないようにできる。
更に、本実施形態では、背上げ時や背下げ時のように背ボトムF1を揺動させた際に、次のような制御を行うようにしている。図8に示すように、ステップSD1として、揺動検出部5nによって、仰臥位から背上げ又は背上げから仰臥位(背下げとも言う)にとベッドフレームFの揺動が検出されたときには、ステップSD2として揺動処理を行う。
この揺動処理SD2を図12に基づいて具体的に説明する。
ステップSE1において、ベースフレームF5の上の背ボトムF1が揺動されてないと判断するとそのままENDとなる。一方、背ボトムF1が揺動されたことが検出されるとステップSE2に進む。ステップSE2において、この揺動が仰臥位から背上げへの移動であるか否かが判断される。この判断がYESの場合には、ステップSE3として、圧力増減部5によって、第2セル群11の中で背上げ部F1の位置に相当する第2セル群11について、第2セル群11内の空気を抜いて一旦所定圧力まで圧力を下げて、臀部に近い方の第2セル11からヘッドに近い方の第2セル11の順番にセルに空気を供給して元の圧力に回復させる。これによって、背上げ時の圧迫感や身長方向へのずれを低減することができる。
一方、ステップSE2での判断がNOのときには、ステップSE4に進み、背上げから仰臥位に変化したか否かが判断される。この判断がNOのときには、そのままENDとなる。一方YESの場合には、ステップSE5として、圧力増減部5Lによって、第2セル群11の中で背上げ部F1の位置に相当する第2セル群11について、隣接する第2セル11の空気供給量を交互に増減させるとともに、第2セル11上の両方の第1セル12に空気を供給して膨張させた状態に維持する。これによって、背下げ時の圧迫感や身長方向へのずれを低減することができる。これによって、背下げ時の圧迫感や身長方向へのずれを低減することができる。
尚、ステップSE5として、圧力増減部5Lによって隣接する第2セル11の空気供給量を交互に増減させるとともに、第2セル11上の両方の第1セル12も交互に増減させるようにしても良い。特に、この場合、第2セル11の増減周期を第1セル10の増減周期よりも短くし、且つ第1セル12の増減周期内(即ち、一方の第1セルの圧力が増加して他方の第1セルが減少して安定している状態内)で第2セル11の増減周期を行うようにすることが好ましい(図5参照)。尚、背下げ時の第2セル11や第1セル12の圧力の増減は、背ボトムF1だけでなく、全ボトムで行なっても良い。
上記説明で仰臥位から背上げに変化したことが検出された際に行なった背上げ制御を背下げ時の制御に適用しても良い。逆に背下げ字の制御を背上げ時の制御に適用しても良い。
以上より、本発明の実施形態によれば、揺動検出部5nで背上げや背下げ等の揺動が検出されると、背ボトムF1に対応する位置にある第2セル群11の圧力を減少・増加することにより、ベッドBの背上げ及び背下げ時の患者に対する圧迫感及び患者のベッドB長手方向へのずれ(図12の矢印A)を確実に防止することができる。
また、本発明の実施形態によれば、圧力センサ8で高い圧力が検出されると、当該箇所に対応する第2セル11A,11B,…,11Nへのセル内圧を周期的に減少・増加を繰り返すことにより、当該箇所に連続して高い圧力がかからないようになるので、患者Yの床ずれや痛みの発生を抑制することができる。そして、当該箇所に対応する第2セル11A,11B,…,11N内への空気供給量を減らしたままとしないので、当該部分に対応する患者Yの体の一部が沈み込んだ状態のまま維持されなくなり、患者Yの寝姿勢を崩すことなく快適性を高く維持することができる。また、当該箇所に対応する第2セル11A,11B,…,11nへのセル内圧を時間の経過に伴って減少・増加させることで当該箇所の静脈、動脈及びリンパ等が開放と押圧を繰り返されるようになり、静脈血やリンパの環流が促進されるとともに、動脈血の流入を盛んにして血行を改善することができる。
また、上記各第1セル12A,12Bが交互に減少・増加を繰り返すことにより、エアマット2上の患者Yの体全体の血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑えることができる。それに加えて、特に圧力センサ8で高い圧力が検出された箇所には、第2セル11A,11B,…,11Nを用いてさらに血管を圧迫しないようにできる。
また、エアマット2上で患者Yに加わる圧力が圧力センサ8に直接伝えられるようになり、精密な圧力測定が可能となるので、圧力の高い箇所に対応する正確な位置の第2セル11A,11B,…,11Nの内圧を制御できる。
また、第1セル12A,12Bを2つの配管系統だけで制御可能となるので、シンプルな構成の低コストなエアマット装置1にできる。
また、エアマット2上の患者Yの姿勢に応じてエアマットが最適な硬さに変更されるようになるので、患者Yがエアマット2上においてどのような姿勢であっても快適さが損なわれない。
また、患者Yがエアマット上に寝転ぶだけ(仰臥するだけ)で、圧力センサによって、エアマット2上の患者Yの状態、すなわち、患者Yの身長、体重や体型等が自動的に推測されるので、これらの設定値を患者毎に入力する手間が省け、作業性が向上すると共にミスを防止できる。
また、患者Yの姿勢、即ち、離床、端座位、背上げ、仰臥位等を自動判定できる共に、患者Yが自力で寝返りできるか否かも自動判定できるようにしたので、これらの判定を患者毎に入力する手間が省け、作業性が向上すると共にミスを防止できる。
その上、患者Yの状態、即ち寝姿勢や体型、さらには、寝返りできるかできないかを自動で判定して、エアマット2をそれぞれの組み合わせに応じた最適な固さとなるように空気給排装置4を制御装置5で制御するようになっている。したがって、看護師や介護者等のエアマット2上の患者Yに対する負担を減らすことができ、使い勝手の良いエアマット装置1にできる。