JP6770907B2 - 身体支持装置 - Google Patents
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Description
エアマット装置は、複数のエアセル内に空気(流体)を供給したり排出したりしてマット部の上面を所望の形状にする。これにより、マット部上に寝る使用者がマット部に作用させる力の圧力分布(体圧分布)を調節することができる。
一般的に、従来は最大圧力が作用しているエアセルを収縮させることで体圧を分散していた。
しかしながら、従来のエアマット装置では、使用者の身体にマット部がフィット(適合)できていない。
(1)本発明に係る身体支持装置は、流体を収容可能な複数の流体セルを有するマット部と;それぞれの前記流体セルへの前記流体の供給及び前記流体セルからの前記流体の排出を行う供給排出部と;前記マット部に設けられ、使用者の体重が前記マット部に付与する圧力分布を検出する圧力分布検出部と;前記圧力分布のうち前記使用者の身体の第1部位による部分圧力分布、前記部分圧力分布による荷重、及び前記圧力分布検出部に前記第1部位から前記使用者の体重が作用している面積の少なくとも一つを指標にしながら、前記供給排出部を駆動して前記使用者の身体の第2部位に対応する前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作する流体調整部と;を備えることを特徴とする。
また、流体を供給又は排出することで、複数の流体セルの全体としての形状が変化し、使用者の姿勢を変えることができる。
この発明によれば、操作する流体セルとは異なる流体セルの圧力を変化させるのに前記操作する流体セルの圧力を変化させることで、より広い範囲にわたる流体セルの圧力を変化させ、使用者の身体にマット部を効果的にフィットさせることができる。
この発明によれば、これまで圧力が所定の値以下であることを圧力分布検出部が検出していた流体セルに流体を供給又は排出し、その流体セルを膨張又は収縮させる。これにより、使用者の体圧をより効率的に分散させることができる。
この発明によれば、圧力が最大である流体セルを直接操作しないで、圧力が最大である流体セルにおける圧力を変化させることができる。
この発明によれば、操作する流体セルの内圧を調節する目標が設定内圧として予め記憶されているため、操作する流体セルの内圧の調節を素早く行うことができる。
この発明によれば、既存情報記憶部に記憶されている複数組の既存圧力分布及び設定内圧のうち、検出結果に最も近い既存圧力分布に対応する設定内圧に基づいて、操作する流体セルに流体を供給又は排出することができる。
この発明によれば、既存情報記憶部に記憶されている複数組の身体の状態及び設定内圧のうち、圧力分布検出部の検出結果に最も近い身体の状態に対応する設定内圧に基づいて、操作する流体セルに流体を供給又は排出することができる。
この発明によれば、供給排出部の駆動の過程において、圧力を変化させることを所望する流体セルに作用する圧力が最小になったときの状態に、操作する流体セルの内圧を調節することができる。
この発明によれば、第2部位に対応する流体セルだけでなく第1部位に対応する流体セルに流体を供給又は排出することで、より広い範囲にわたる流体セルの圧力を変化させ、使用者の身体にマット部を効果的にフィットさせることができる。
この発明によれば、例えば、圧力分布検出部により使用者の圧力分布を1度検出するだけで、既存情報記憶部に記憶されている複数組の既存圧力分布及び設定内圧のうち、圧力分布検出部の検出結果に最も近い既存圧力分布に対応する設定内圧に基づいて、操作する流体セルに流体を供給又は排出することができる。検出結果から予め記憶された設定内圧を選ぶため、使用者の身体にマット部をフィットさせることができる。
圧力分布を1度検出すれば、その後で、指標を用いて流体を供給又は排出して操作する必要がなくなる。
以下、本発明に係る身体支持装置の第1実施形態を、身体支持装置がエアマット装置である場合を例にとって、図1から図6を参照しながら説明する。
図1及び図2に示す本実施形態のエアマット装置1は、例えば、医療環境下(介護環境下を含む)において利用することができる。図1以降において、矢印Hは、エアマット装置1に仰臥位で寝る使用者Pに対して頭側となる向きを示す。また、矢印F、R、Lは仰臥位で寝る使用者Pに対して足側、右側(一方側)、左側(他方側)となる向きを示している。
以下の説明においては、頭側H及び脚側Fを含む方向を頭足方向(第一の方向)D1、右側R及び左側Lを含む方向を左右方向(第二の方向)D2と称する。左右方向D2は、頭足方向D1に直交(交差)する方向である。
主エアセル12の構成は、特に限定されない。本実施形態では、図1及び図2に示すように、各主エアセル12は、マット部11の左右方向D2の全長にわたり延びる棒状のセルである。主エアセル121〜12Nは、頭側Hから脚側Fに向けて主エアセル121〜12Nの順で並べて配置されている。複数の主エアセル12は、前後方向D1に並べられることで、マット部11の外形となる主マット部11Aを構成する。主マット部11Aは、例えば20本から30本の主エアセル12により構成される。
各主エアセル12は、例えば塩化ビニル又はウレタン製のフィルムを袋状に溶着して製造することができる。頭足方向D1に隣接して配置された主エアセル12同士は、互いに固定されていてもよいし、互いに固定されていなくてもよい。各主エアセル12は、複数の主エアセル12を一体に覆う図示しないカバーに、ボタンや紐等を介して固定すること等もできる。
主マット部11Aは、水平面に沿って延びるように配置される。
図2に示すように、補助エアセル131は、例えば左右方向D2に延びるとともに凹部131aが脚側Fを向くように配置されている。補助エアセル131は、使用者Pの例えば首部に接触するように配置されている。
補助エアセル132は、頭足方向D1に延びるとともに凹部132aが左側Lを向くように配置されている。補助エアセル132は、使用者Pの例えば右肩部に接触するように配置されている。
補助エアセル133は、補助エアセル132に対して左右方向D2に対向するように配置されている。
補助エアセル135は、補助エアセル134に対して左右方向D2に対向するように配置されている。
補助エアセル136は、頭足方向D1に延びるとともに凹部136aが左側Lを向くように配置されている。補助エアセル136は、使用者Pの例えば右ひざ部に接触するように配置されている。
補助エアセル137は、補助エアセル136に対して左右方向D2に対向するように配置されている。
補助エアセル13は、主マット部11A上に配置される。
接続路27は、主エアセル121〜12Nに対応してN本設けられた分岐路301〜30Nと、補助エアセル131〜137に対応して7本設けられた分岐路311〜317と、分岐路301〜30N、311〜317が共通して接続される共通路32と、を有している。分岐路301は、主エアセル121に接続されている。同様に、分岐路302〜30Nは主エアセル122〜12Nにそれぞれ接続されている。分岐路311〜317は、補助エアセル131〜137にそれぞれ接続されている。
開閉弁281は、分岐路301と、ポンプ25及び排気弁26と、の間を互いに連通した開状態と、この連通が解除された閉状態とに切り替える。開閉弁282〜28N、291〜297についても、分岐路302〜30N、311〜317と、ポンプ25及び排気弁26と、の間で同様の切り替え動作をする。
すなわち、例えば主エアセル121に給気(空気の供給)を行う場合には、開閉弁281を開状態にするとともに、開閉弁282〜28N、291〜297、排気弁26を閉状態にする。ポンプ25を駆動することで、共通路32、分岐路301を通して、主エアセル121内に空気が給気される。給気された空気は、主エアセル121内に収容される。
一方で、主エアセル121の排気(空気の排出)を行う場合には、開閉弁281を開状態にするとともに、開閉弁282〜28N、291〜297を閉状態にする。排気弁26を開状態にすることで、主エアセル121内の空気が、分岐路301及び共通路32を通して、排気弁26から外部に排出される。
各主エアセル122〜12N、各補助エアセル13についても、同様に給気及び排気をすることができる。
複数の圧力センサ35aは、例えば頭足方向D1及び左右方向D2に沿って碁盤目状に配置されている。なお、複数の圧力センサ35aは、特定の部分だけ設けなかったり、後述する上半身領域A2、臀部領域A3、又は使用者Pの腰やかかと等に対応する部分にピンポイント(局所的)に1つ又は複数設けたりしてもよい。
各圧力センサ35aにより、圧力(圧力値)が検出される。検出された圧力を圧力センサ35aの位置に碁盤目状に配置することで、圧力分布が検出される。
センサ部35は、補助エアセル13上に配置される。なお、センサ部35は主マット部11Aの下方に配置されてもよい。
処理部36のメモリには、各圧力センサ35aが占める面積等が記憶されている。さらに、このメモリには、各圧力センサ35aから送信された圧力の検出結果が記憶される。
演算回路は、メモリに記憶された複数の圧力から、検出した圧力が最大の圧力センサ35a(最大圧力を検出した圧力センサ35a)を、圧力センサ35aの識別番号(位置)等により特定することができる。
なお、処理部36はセンサ部35に取付けられてもよい。
すなわち、本実施形態では、圧力センサ39は各主エアセル12及び補助エアセル13に対して1つ設けられている。内圧検出部17は、接続路27を通して各主エアセル12内、及び各補助エアセル13の内圧を検出する。
例えば内圧検出部17が主エアセル121の内圧を検出する場合には、開閉弁281を開状態にするとともに、開閉弁282〜28N、291〜297、排気弁26を閉状態にして、主エアセル121の内圧を検出する。
なお、内圧検出部は、各主エアセル12、及び各補助エアセル13に対応してそれぞれ設けられてもよい。
なお、ケーシング44内に収容されたポンプ25等により、制御ユニット48が構成される。
各圧力センサ35aに対応する主エアセル12及び補助エアセル13とは、より具体的には、各圧力センサ35aの下方にある主エアセル12及び補助エアセル13のことを意味する。
各補助エアセル13の設定内圧とは、例えば4kPa(キロパスカル)である各補助エアセル13の内圧を上げた後の圧力である。
ここで言う対象セルとは、使用者Pから付与される圧力を変化させるエアセル12、13のことを意味する。さらに言い換えれば、対象セルとは、圧力を変化させる目的とするエアセル12、13、圧力を変化させることを所望するエアセル12、13のことを意味する。
なお、流体調整部19は操作セルを設定しなくてもよい。この場合、例えば、流体調整部19は所定の順番にしたがって操作対象となるエアセル12、13に空気を供給又は排出させる等してもよい。
以下では説明を簡単にするために、操作セルが主エアセル121〜12k−1、12k+1〜12Nを含まずに、補助エアセル131〜137のみであるとして説明する。
流体調整部19は、対象セル及び操作セルを設定したときに、供給排出部15のポンプ25、排気弁26、開閉弁281〜28N、291〜297を駆動して、補助エアセル13に給気する。
入出力部46は、キーボード等の入力部46aと、液晶モニタ等の出力部46bと、を有している。
医療従事者等の介助者が入力部46aから入力した指示は、バス45を介して流体調整部19、主制御部42等に送信される。出力部46bには、使用者Pや介助者に対する表示が示される。
本実施形態のエアマット装置1の動作の概要を説明すると、まず、複数の補助エアセル13を順番に膨張させる。膨張させた時の主エアセル12k(対象セル)に付与される圧力が初期最大圧力よりも上がったときには、例えばその補助エアセル13の内圧を膨張させる前の初期内圧に戻す等し、それ以外のときは補助エアセル13の内圧を保持する。
以下、エアマット装置1の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
これにより、例えば、エアマット装置1の最大使用荷重の使用者Pが仰臥位で乗ったときであっても、使用者Pの底付きを抑えることができる。
一方で、初期状態では、各補助エアセル13内には空気が供給されていなく、各補助エアセル13は平坦な状態になっている。
初期状態においては、センサ部35の上面はほぼ平坦である。
初期体圧測定工程S11では、センサ部35は使用者Pの体重がマット部11に付与する圧力分布(体圧分布)を検出する。センサ部35は、各圧力センサ35aによる検出結果を、処理部36に送信する。処理部36は、センサ部35から送信された圧力分布から、最大圧力、及び最大圧力を検出した圧力センサ35aの識別番号を特定する。この例では、処理部36は図1に示す位置Qに最大圧力が作用したことを検出したとする。処理部36は、最大圧力、及び圧力センサ35aの識別番号を流体調整部19に送信する。
流体調整部19は、初期体圧測定工程S11を終了し、ステップS13に移行する。
ステップS14では、流体調整部19は変数iの値を0に設定し、ステップS15に移行する。
ステップS15では、変数iの値を1増やしてステップS16に移行する。ステップS14において変数iの値を0に設定しているため、ステップS14の直後のステップS15の終了時点では変数iの値は1になる。
ステップS16では、流体調整部19は、補助エアセル13iが操作セルか否かを判断する。ステップS16でYESと判断したときには、ステップS17に移行する。一方で、ステップS16でNOと判断したときには、ステップS15に移行する。この例では、補助エアセル131は操作セルであるため、ステップS16でYESと判断してステップS17に移行する。
まず、ステップS18において、流体調整部19は、供給排出部15を駆動することで補助エアセル131に給気し、ステップS19に移行する。補助エアセル131に給気する空気の量は、適宜設定される。給気している補助エアセル13を出力部46bに示して、使用者Pを安心させてもよい。
ステップS18を行うことにより、図4に示すように補助エアセル131が平坦な状態から、図5に示すように補助エアセル131が膨張した状態になる。なお、図4及び図5ではセンサ部35は示していない。
膨らんだ補助エアセル131は、使用者Pの首部P1に接触する。このとき、使用者Pの体圧を補助エアセル131で支持する割合が増加する。
縦軸における最大圧力が初期最大圧力(圧力P8)よりも下がる(低くなる)領域R6が、主エアセル12kに作用する圧力が下がり使用者Pの体圧が分散される望ましい領域となる。
すなわち、流体調整部19は、最大圧力という指標に基づいて供給排出部15を駆動して補助エアセル131を操作し、操作する補助エアセル131とは異なる主エアセル12kが使用者Pから付与される圧力を変化させる。
以上でステップS18を終了し、ステップS19に移行する。
言い換えれば、流体調整部19は、補助エアセル131の内圧が設定内圧に至るまで供給排出部15を駆動する。その後で、流体調整部19は、補助エアセル131の内圧を、供給排出部15の駆動の過程で、主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの補助エアセル131の内圧に、補助エアセル131の内圧を設定する。
曲線L7で示すように、補助エアセル131の内圧が上がるにしたがい最大圧力が一度上がっても最終的には初期最大圧力P8よりも下がる場合には、補助エアセル131の内圧を内圧P7に設定する。
曲線L9で示すように、補助エアセル131の内圧が上がるにしたがい最大圧力が、補助エアセル131の内圧P9で最小になりその後初期最大圧力P8よりも上がる場合には、補助エアセル131の内圧を内圧P9に設定する。
このように、曲線L6〜L9で示したいずれの場合においても、最大圧力は初期最大圧力P8以下になる。
首部に対応する補助エアセル13とは、首部に接触するように配置された補助エアセル13、又は、首部の下方に配置された補助エアセル13のことを意味する。
流体調整部19は、供給排出部15を駆動した結果を見る。その結果に応じて、流体調整部19は、補助エアセル131の内圧を初期最大圧力P8以下にすることで、補助エアセル131の内圧を初期の内圧以下に抑えることができる。
以上でステップS19を終了し、ステップS20に移行する。
具体的には、図6で曲線L6、L7、L9で示したように最大圧力が下がる場合には、測定情報記憶部18に初期最大圧力よりも下がった後の最大圧力を、初期最大圧力として記憶させる。
曲線L6、L7で示したように最大圧力が下がる場合には、測定情報記憶部18に補助エアセル131の初期内圧として内圧P7を記憶させる。曲線L9で示したように最大圧力が下がる場合には、測定情報記憶部18に補助エアセル131の初期内圧として内圧P9を記憶させる。
一方で、曲線L8で示したように最大圧力が上がる場合は、上がった後の最大圧力を記憶させない。
以上でステップS20を終了し、ステップS21に移行する。
次に、ステップS16〜19を繰り返すことで、補助エアセル132〜137に対して補助エアセル131と同様の工程を行う。
補助エアセル131〜137に対して順番に給気して補助エアセル131〜137内の圧量を調整して、エアマット装置1の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
流体調整部19は、最大圧力に基づいて供給排出部15を駆動して補助エアセル13を操作し、操作する補助エアセル131とは異なる主エアセル12kが使用者Pから付与される圧力を変化させる。主エアセル12kの圧力を変化させるのに補助エアセル131の圧力を変化させることでより広い範囲にわたるエアセル12、13の圧力を変化させ、使用者Pの身体にマット部11を効果的にフィットさせることができる。
また、補助エアセル13を膨張させることで、エアセル12、13の全体としての形状が変化し、エアセル12、13上に寝る使用者Pの姿勢を変えることができる。
流体調整部19は、圧力が最大であるエアセル12、13を対象セルとして設定するため、圧力が最大である対象セルで支持する使用者Pの体圧を減少させ、最大圧力を下げることができる。
流体調整部19は、補助エアセル131の内圧が設定内圧に至るまで供給排出部15を駆動した後、補助エアセル131の内圧を、供給排出部15の駆動の過程で、主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの補助エアセル131の内圧に、補助エアセル131の内圧を設定する。これにより、供給排出部15の駆動の過程において、主エアセル12kに作用する圧力が最小になったときの状態に、補助エアセル131の内圧を調節することができる。
また、流体調整部19は使用者Pにより付与される圧力が最大であるエアセル12、13を対象セルとして設定するとした。しかし、対象セルの設定方法はこれに限られず、使用者Pにより付与される圧力が、2番目に大きいエアセル12、13や3番目に大きいエアセル12、13等を対象セルとして設定してもよい。
流体調整部19は、圧力が最大でないエアセル12、13を操作し、圧力が最大である主エアセル12kにおける圧力を変化させてもよい。このように構成することで、圧力が最大である主エアセル12kを直接操作しないで、主エアセル12kにおける圧力を変化させることができる。
このように構成することで、首部に対応するエアセル12、13だけでなく臀部に対応するエアセル12、13に空気を供給することで、より広い範囲にわたるエアセル12、13の圧力を変化させ、使用者Pの身体にマット部11を効果的にフィットさせることができる。
次に、本発明の第2実施形態について図7から図9を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態のエアマット装置2は第1実施形態のエアマット装置1の各構成に加えて、予め取得された圧力分布等を含む既存情報の束を複数記憶した既存情報記憶部56と、既存情報の束を選択する選択部57と、を備えている。
なお、本実施形態では流体調整部19のメモリに設定内圧が記憶されていなくてもよい。
図8に示すように、既存情報の束D6は、既存圧力分布D6a、及び設定内圧D6bを含む。
既存圧力分布D6aは、予め1又は複数の使用者(以下、先の使用者と称する)に対して取得された圧力分布である。先の使用者は、エアマット装置2を新たに用いようとする使用者と別の者でもよいし、同一の者でもよい。先の使用者は、エアマット装置2のセンサ部35上に乗る等して圧力分布検出部16に体重を付与し、圧力分布検出部16が圧力分布を検出する。この検出した圧力分布を、既存圧力分布D6aとする。既存圧力分布D6aは、例えばセンサ部35の頭足方向D1及び左右方向D2の複数の位置に対応する圧力を、マトリクス状に配置したデータである。
既存圧力分布D6aは、方向D1、D2に関するマトリクス状のデータであるため、本明細書では便宜上、(D1,D2)と表す。
言い換えれば、設定内圧D6bは、各先の使用者に対して最終的に各補助エアセル13をどの圧力まで変化させたかの記録である。
本明細書では、設定内圧D6bを便宜上(P1,‥,P7)と表す。
既存情報の束D6では、既存圧力分布D6aと設定内圧D6bとが組合わせられるとともに関連付けられる。
複数の既存情報の束D6のうち、例えばm1個の既存情報の束D6が後述する第一記憶部56aに記憶され、m2個の既存情報の束D6が後述する第二記憶部56bに記憶されている。すなわち、(D1,D2)1から(D1,D2)m1までの既存圧力分布D6a、及び、(P1,‥,P7)1から(P1,‥,P7)m1までの供給後セル内圧力D6bが第一記憶部56aに記憶される。(D1,D2)1から(D1,D2)m2までの既存圧力分布D6a、及び、(P1,‥,P7)1から(P1,‥,P7)m2までの供給後セル内圧力D6bが第二記憶部56bに記憶される。
各既存情報の束D6は、使用者Pに適用するのに好ましい補助エアセル13の内圧である。
第一記憶部56aは、例えばケーシング44内に配置された状態で、バス45を介して流体調整部19に接続されている。第二記憶部56bは、インターネット等のネットワーク上に配置された装置であり、バス45とは公知の有線回線又は無線回線で接続されている。
介助者等が入出力部46の入力部46aから入力した指示の一部は、既存情報記憶部56に送信される。これにより、介助者等は、既存情報記憶部56に記憶された既存情報の束D6の既存圧力分布D6a等の値を修正することができる。
選択部57は、既存情報記憶部56に記憶された複数の既存情報の束D6が含む既存圧力分布D6aの中から、圧力分布検出部16が検出した圧力分布(検出結果)に最も近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D6を選択する。
複数の既存圧力分布D6aのうち検出した圧力分布に最も近い既存圧力分布D6aを判定する方法は、特に限定されず公知の画像処理方法等を用いることができる。例えば、以下の方法で判定することができる。
●荷重:検出した圧力分布と既存圧力分布D6aとを、両圧力分布から得られる荷重(体重)で比較する。両圧力分布から得られる荷重が一致するほど、両圧力分布が近いことを意味する。
●面積:検出した圧力分布と既存圧力分布D6aとを、両圧力分布が分布している面積(圧力を検出した圧力センサ35aの数)で比較する。両圧力分布から得られる面積が一致するほど、両圧力分布が近いことを意味する。
本実施形態では、流体調整部19は、圧力分布検出部16が検出した圧力分布のうち使用者Pの身体の全体(第1部位)による圧力分布(部分圧力分布)を指標にしながら、選択部57が選択した設定内圧D6bに基づいた使用者Pの第2部位に対応する補助エアセル13に対して空気を供給して操作する。
本実施形態のエアマット装置2の動作の概要を説明すると、まず、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D6をデータベースから読み込む。各補助エアセル13を既存情報の束D6が含む設定内圧D6bまで順番に膨張させ、第1実施形態のエアマット装置1と同様の動作をする。
以下、エアマット装置2の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
ステップS26では、選択部57は、使用者Pの体重に対して圧力分布検出部16が検出した圧力分布に基づいて既存情報の束D61(図8参照)を前述のように選択し、ステップS13に移行する。
ステップS13以降は、第1実施形態と同様である。
ただし、個別圧力調整工程S17のステップS18では、ステップS26で選択した既存情報の束D61の設定内圧D6bに基づいて補助エアセル131に給気する。具体的には、例えば図6における補助エアセル131の内圧を上げる目標値である内圧P7(設定内圧)を、既存情報の束D61の設定内圧D6bにおけるデータP1(補助エアセル131に対応する設定内圧D6bのデータ)が表す圧力にする。言い換えれば、流体調整部19は、補助エアセル131について、選択部57が選択した既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bにおけるデータP1と、内圧検出部17が検出する内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル131に給気する。
この場合、既存情報の束D61において設定内圧D6bのデータP1の値を内圧P6(初期内圧)に修正したデータ(修正した既存情報の束D61)を、既存情報記憶部56に記憶してもよい。修正した既存情報の束D61は、既存情報記憶部56に記憶されていた内圧の設定が当てはまらなかった新たなケースとして、既存情報記憶部56に記憶される。
この場合、流体調整部19は、予め既存情報記憶部56に記憶された補助エアセル13の設定内圧D6bと内圧検出部17が検出する補助エアセル13の内圧とが、補助エアセル13の少なくとも一部で等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気させる。
必要に応じて介助者等は、入力部46aを操作して、記憶部56a、56bに記憶された既存情報の束D6の既存圧力分布D6a等の値を修正する。
さらに、エアマット装置2が既存情報記憶部56及び選択部57を備えることで、既存情報記憶部56に記憶されている複数組の既存圧力分布D6a及び設定内圧D6bのうち、検出結果に最も近い既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bに基づいて、補助エアセル13に空気を供給することができる。
エアマット装置2が既存情報の束D6を修正可能な入力部46aを備えることで、既存情報の束D6が含む情報が誤っている場合等に既存情報の束D6を修正し、既存情報の束D6の信頼性を高めることができる。そして、使用者Pの体圧を分散させるアルゴリズムの精度を向上させることができる。
次に、本発明の第3実施形態について図10及び図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10に示すように、本実施形態のエアマット装置3は、第1実施形態のエアマット装置1の測定情報記憶部18及び流体調整部19に代えて、前述の既存情報記憶部56及び選択部57、そして流体調整部63を備えている。
本実施形態のエアマット装置3の動作の概要は、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D6をデータベースから読み込む。そして、読み込んだ既存情報の束D6の設定内圧D6bに基づいて補助エアセル13を膨張させる。
以下、エアマット装置3の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
ステップS11の後で、既存圧力調整工程(図11に示すステップS31)を行う。
既存圧力調整工程S31では、まず、選択部57は、圧力分布検出部16が検出した使用者Pの体重の圧力分布に基づいて、この圧力分布に最も近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D61を前述のように選択する(ステップS32)。そして、ステップS33に移行する。
以上で、既存圧力調整工程S31、及びエアマット装置3の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
さらに、既存情報記憶部56に記憶されている複数の既存情報の束D6のうち、使用者Pの圧力分布に近い既存圧力分布D6aを含む既存情報の束D61の設定内圧D6bに基づいて、各補助エアセル13内に給気することができる。これにより、各補助エアセル13内の好ましい圧力を素早く決めることができる。
エアマット装置3は、圧力分布検出部16により使用者Pの圧力分布を1度検出するだけで、既存情報記憶部56に記憶されている複数組の既存圧力分布D6a及び設定内圧D6bのうち、圧力分布検出部16の検出結果に最も近い既存圧力分布D6aに対応する設定内圧D6bに基づいて、補助エアセル13に空気を供給することができる。
検出結果から予め記憶された設定内圧D6bを選ぶため、使用者Pの身体にマット部11をフィットさせることができる。
圧力分布を1度検出すれば、流体調整部19はその後で指標に基づいて空気を供給して操作する必要がなくなる。
次に、本発明の第4実施形態について図12及び図13を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12に示すように、本実施形態のエアマット装置4は第3実施形態のエアマット装置3の各構成に加えて、前述の測定情報記憶部18を備えている。
本実施形態のエアマット装置4の動作の概要を説明すると、まず、使用者Pの圧力分布に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D6をデータベースから読み込んで補助エアセル13を適宜膨張させる。補助エアセル13を膨張させた後で最大圧力が上がったときに、一つの補助エアセル13を膨張させる。膨張させた時の最大圧力が、前記初期最大圧力よりも下がったときは、補助エアセル13の内圧を保持し、補助エアセル13の内圧をデータベースに記憶する。それ以外のときは、その補助エアセル13の内圧を膨張させる前の圧力に戻す等する。
以下、エアマット装置4の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
ステップS13の後で、前述の既存圧力調整工程S31を行う。既存圧力調整工程S31を終了すると、ステップS36に移行する。
ステップS36でYESと判断したときには、ステップS37に移行する。一方で、ステップS36でNOと判断したときには、エアマット装置4の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
ステップS37では、前述のステップS13と同一の工程を行い測定情報記憶部18に初期最大圧力と初期内圧とを記憶させ、ステップS38に移行する。
ステップS39、及びステップS39に続いて行うステップS40では、補助エアセル131に対して前述のステップS19、S20と同一の工程を行い、ステップS42に移行する。
ステップS42では、流体調整部63は測定情報記憶部18に記憶された初期最大圧力に比べて圧力分布検出部16が検出した最大圧力が下がったか否かを判断する。ステップS42でYESと判断したときには、ステップS43に移行する。一方で、ステップS42でNOと判断したときには、エアマット装置4の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
修正された既存情報の束D6が既存情報記憶部56に記憶されることで、既存情報の束が表す調整すべき圧力の情報を改善される。そして、エアマット装置4の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
さらに、既存圧力調整工程S31を行った後で圧力分布検出部16が検出する最大圧力が上がったとき、操作セル(補助エアセル13)の一つに給気する。そして、初期最大圧力に比べて最大圧力が下がれば、修正した設定内圧を含む既存情報の束D6を既存情報記憶部56に記憶し、最大圧力が初期最大圧力以上になれば、操作セルの内圧を操作セルを膨張させる前の圧力に戻す等する。これにより、最大圧力が下がるように操作セルの内圧を修正するとともに、既存情報の束D6が表す調整目標となる圧力の情報を改善することができる。
次に、本発明の第5実施形態について図14から図33を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図14に示すように、本実施形態のエアマット装置5は第3実施形態のエアマット装置3の既存情報記憶部56、選択部57、流体調整部63に代えて、判定部66、既存情報記憶部67、選択部68、流体調整部69を備えている。
頭部領域A1は、使用者Pの身体の頭部による圧力分布が検出される領域である。同様に、上半身領域A2は使用者Pの身体の頭部以外の上半身による圧力分布が検出される領域であり、臀部領域A3は使用者Pの身体の臀部による圧力分布が検出される領域であり、足部領域A4は使用者Pの身体の足部による圧力分布が検出される領域である。
足部領域A4は、頭側Hから脚側Fに向けて足部第一領域A41、足部第二領域A42を有する。足部第一領域A41は、足部領域A4のうち頭足方向D1の中央部よりも臀部領域A3寄りの領域である。足部第二領域A42は、足部領域A4のうち頭足方向D1の中央部よりも臀部領域A3とは反対寄りの領域である。
各領域A1、A2、A3、A4、A21、A22、A41、A42の頭足方向D1の長さは、エアマット装置1を使用する複数の使用者の体型等に応じて適切な値に設定されている。
判定部66のメモリには、使用者Pの体重に対する割合を表す第四の割合、上半身領域A2、臀部領域A3の左右に作用する全荷重の割合を表す第五の割合、第六の割合が予め記憶されている。なお、第一の割合から第三の割合は、後述するように主制御部42に記憶されている。
第四〜六の割合は、例えば「10%」等の値や、「20%以上30%以下」等の範囲として設定することができる。
記憶部67a、67bには、図16に示すように、複数の既存情報の束D10が予め記憶されている。それぞれの既存情報の束D10は、使用者Pの身体の状態D10a、及び、前述の設定内圧D6bを含む。
身体の状態D10aにおいて、例えば、データC1は使用者Pの円背の有無をYES(円背が有る(円背である))又はNO(円背が無い)で表す情報である。データC2は、使用者Pの下肢拘縮の有無をYES(下肢拘縮が有る(下肢拘縮である))又はNO(下肢拘縮が無い)で表す情報である。データC3、C4(不図示)は、使用者Pの上半身、下半身の向きを、右向き、仰向け、及び左向きで区別して表す情報である。
本明細書では、身体の状態D10aを便宜上(C1,C2,‥)と表す。既存情報の束D10では、身体の状態D10aと設定内圧D6bとが組合わせられるとともに関連付けられる。
(C1,C2,‥)1から(C1,C2,‥)m1までの身体の状態D10aが、第一記憶部67aに記憶される。(C1,C2,‥)1から(C1,C2,‥)m2までの身体の状態D10aが、第二記憶部67bに記憶される。
すなわち、選択部68は、既存情報記憶部67に記憶された複数の身体の状態D10aの中から、判定部66が判定した身体の状態に最も近い身体の状態D10aを選択する。
例えば、この例では身体の状態D10aとして円背、下肢拘縮、上半身の向き、及び下半身の向きの4つの項目がある。一致している項目の数が多い身体の状態D10aほど、判定部66が判定した身体の状態に近いとしてもよい。
第一の身体の状態D10aは判定部66が判定した身体の状態に対して一致している項目の数が3であり、第二の身体の状態D10aは判定部66が判定した身体の状態に対して一致している項目の数が1である。この場合、選択部68は、第二の身体の状態D10aよりも第一の身体の状態D10aの方が判定部66が判定した身体の状態に近いと判定し、第一の身体の状態D10aを含む既存情報の束D10を選択する。
なお、判定部66が身体の状態が近いことを判断する方法は、これに限られない。
主制御部42のメモリには、使用者Pの体重に対する割合を表す第一の割合、第二の割合、及び第三の割合が予め記憶されている。各割合は、前述の第四〜六の割合と同様に設定することができる。
本実施形態のエアマット装置5の動作の概要は、使用者Pの身体の状態に最も近い身体の状態D10aを含む既存情報の束D10をデータベースから読み込む。そして、読み込んだ既存情報の束D10の設定内圧D6bに基づいて補助エアセル13を膨張させる。
以下、エアマット装置5の体圧を分散させる動作について詳細に説明する。
第1実施形態における初期体圧測定工程S11の前までは、第1実施形態と同様である。
これらの各領域A1、A2、A3、A4の圧力分布による全荷重を合計することで、使用者Pの体重を演算する。
この際に、上半身領域A2における圧力分布を、上半身領域A2内で最も広い範囲にわたり連続した圧力分布が生じている領域である主領域R21と、主領域R21から離間して圧力分布が生じている領域である離間領域R22とに分けてもよい。そして、圧力中心位置を、上半身領域A2の主領域R21における圧力を検出した圧力センサ35aの位置の重心としてもよい。
同様に、演算回路は、臀部領域A3における圧力分布の圧力中心位置P3を算出する。
演算回路は、臀部領域A3の圧力中心位置P3に対する右側Rの臀部右側領域A33の圧力分布による全荷重と、上半身領域A2の圧力中心位置P3に対する左側Lの臀部左側領域A34の圧力分布による全荷重と、をそれぞれ演算する。
演算された各領域A23、A24、A33、A34ごとの圧力分布による全荷重は、処理部36のメモリに記憶される。
以上で、使用者Pの身体の状態を判定するための基礎となる演算が終了する。
次に、身体の状態を判定する前に、使用者Pの初期の位置を調節する初期工程(図17のステップS45)を行う。
なお、以下で説明する初期工程S45におけるステップS46の工程は、センサ部35に対して使用者Pが寝る頭足方向D1の位置が、使用者Pの臀部を中心に一意に定まると考えるために行う工程である。また、初期工程S45におけるステップS47の工程は、センサ部35上に使用者Pを正しく寝させるための工程である。
ステップS46でYESと判断したときには、ステップS47に移行する。一方で、ステップS46でNOと判断したときには、ステップS48に移行する。
ステップS47でYESと判断したときには、初期工程S45を終了してステップS50に移行する。一方で、ステップS47でNOと判断したときには、ステップS48に移行する。
ステップS46でYESと判断され、さらに、ステップS47でYESと判断されるまで、ステップS46、S47、S48の工程を繰り返し行う。
最初に、ステップS51の円背判定工程を行う。図18に示すように、まず、判定部66が、上半身第一領域A21の圧力分布である上半身第一圧力分布による全荷重よりも上半身第二領域A22の圧力分布である上半身第二圧力分布による全荷重の方が大きいか否かを判断する(ステップS52)。言い換えれば、上半身第一圧力分布による全荷重と上半身第二圧力分布による全荷重とを比較し、上半身領域A2に作用する荷重が臀部領域A3側(脚側F)に偏っているか否かを判断する。使用者Pが円背であると、使用者Pの上半身が脚側Fに曲がるため、このように判断する。
ステップS52でYESと判断したときには、ステップS53に移行する。一方で、ステップS52でNOと判断したときには、ステップS54に移行する。
ステップS53では、判定部66が使用者Pの身体が屈曲していて使用者Pの身体の状態が円背であると判定する。そして、ステップS51の全ての工程を終了し、ステップS61に移行する。ステップS54では、判定部66は使用者Pが円背でないと判定する。そして、ステップS51の全ての工程を終了し、ステップS61に移行する。
足部第一圧力分布がいずれかの位置で0Paよりも大きいとは、足部第一領域A41に対応する複数の圧力センサ35aのいずれかが0Paよりも大きい圧力を検出することを意味する。足部第二圧力分布がいずれの位置においても0Paに等しいとは、足部第二領域A42に対応する複数の圧力センサ35aのいずれも0Paの圧力を検出することを意味する。
ステップS62でYESと判断したときには、ステップS63に移行する。一方で、ステップS62でNOと判断したときには、ステップS64に移行する。
ステップS63では、判定部66が使用者Pの身体の状態が下肢拘縮であると判定する。そして、ステップS61の全ての工程を終了し、ステップS71に移行する。
ステップS64でYESと判断したときには、ステップS63に移行する。一方で、ステップS64でNOと判断したときには、ステップS65に移行する。
ステップS65では、判定部66は使用者Pが下肢拘縮でないと判定する。そして、ステップS61の全ての工程を終了し、ステップS71に移行する。
ステップS72で、上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合よりも小さいと判断したときには、ステップS73に移行する。ステップS72で、上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合よりも大きいと判断したときには、ステップS74に移行する。そして、ステップS72で、上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合に入ると判断したときには、ステップS75に移行する。
ステップS82で、臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合よりも小さいと判断したときには、ステップS83に移行する。ステップS82で、臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合よりも大きいと判断したときには、ステップS84に移行する。そして、ステップS82で、臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合に入ると判断したときには、ステップS85に移行する。
例えば、上半身向き判定工程S71で使用者Pの上半身が右向きと判定し、下半身向き判定工程S81で使用者Pの下半身が仰向け又は左向きと判定することで、使用者の身体の捻じれを判定することができる。上半身向き判定工程S71で使用者Pの上半身が左向きと判定し、下半身向き判定工程S81で使用者Pの下半身が仰向け又は右向きと判定した場合、及び、上半身向き判定工程S71で使用者Pの上半身が仰向けと判定し、下半身向き判定工程S81で使用者Pの下半身が右向き又は左向きと判定した場合も同様に、使用者の身体の捻じれを判定することができる。
使用者Pの身体の水平位からの屈曲及び捻じれに応じて、使用者Pが作用させた圧力分布が変化する。この圧力分布の偏りや分布等を分析することで、使用者Pの身体が水平位から屈曲したり、捻じれている状態が分かる。
ステップS93では、流体調整部69は、この選択された既存情報の束D101の補助エアセル13の設定内圧D6bと内圧検出部17が検出する補助エアセル13の内圧とが等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気する。具体的には、1〜7までの自然数iに対して、内圧検出部17が検出する各補助エアセル13iの内圧を、既存情報の束D101の設定内圧D6bにおけるデータPiが表す圧力にする。言い換えれば、流体調整部69は、補助エアセル13について、選択部68が選択した身体の状態に対応する設定内圧D6bと、内圧検出部17が検出する内圧と、が等しくなるように、供給排出部15を駆動して補助エアセル13に給気させる。
以上で、既存圧力調整工程S91、及びエアマット装置5の体圧を分散させる動作の全ての工程を終了する。
以下では、本発明の実施例を具体的に示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施形態のエアマット装置5及び身体状態判定方法を用いて、実験を行った。この実施例では、センサ部35として頭足方向D1に沿って144個、左右方向D2に沿って48個(図23参照)の圧力センサ35aを碁盤目状に配置した。
頭部領域A1、上半身領域A2、臀部領域A3、及び足部領域A4の頭足方向D1の長さの比は、1:2:2:4とした。上半身第一領域A21、上半身第二領域A22の頭足方向D1の長さの比は、1:1とした。足部第一領域A41、足部第二領域A42の頭足方向D1の長さの比は、1:1とした。
このため、頭足方向D1において、No.1〜16の圧力センサ35aが頭部領域A1となる。同様に、No.17〜48の圧力センサ35aが上半身領域A2となり、No.49〜80の圧力センサ35aが臀部領域A3となり、No.81〜144の圧力センサ35aが足部領域A4となる。
左右方向D2において、No.1〜24の圧力センサ35aが左側Lとなり、No.25〜48の圧力センサ35aが右側Rとなる。
なお、第一の割合から第六の割合は、これらの範囲に限定されず、適切な範囲に設定することができる。
〔サンプル1〕
使用者Pの円背、下肢拘縮、上半身及び下半身の向きを評価した。図22に示すように、エアマット装置5のセンサ部35上で、使用者Pに仰臥位で寝て(横たわって)もらった。なお、図22及び後述する図25、図27、図29、図31では、エアマット装置5は、主に関連する構成のみ示している。この使用者Pは、わずかに円背であり、下肢拘縮である。使用者Pは、上半身は仰向け、下半身は右向きの状態で寝ていた。
圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、図23に示す。図23では、約0Paの圧力が検出された部分を白色で示し、検出された圧力が高くなるのにしたがって濃い灰色で示す。後述する図24、図26、図28、図30、及び図32も同様である。
使用者Pの身体の水平位からの屈曲及び捻じれに応じて、使用者Pの体重による圧力分布が変化する。
・使用者Pの体重:43.6kg
・頭部領域A1に作用する荷重:3.5kg(8%)
・上半身領域A2に作用する荷重:18.3kg(42%)
上半身第一領域A21に作用する荷重:6.0kg(14%)
上半身第二領域A22に作用する荷重:12.3kg(28%)
上半身右側領域A23の圧力分布による全荷重:9.1kg(21%)
上半身左側領域A24の圧力分布による全荷重:9.2kg(21%)
・臀部領域A3に作用する荷重:18.7kg(43%)
臀部右側領域A33の圧力分布による全荷重:6.3kg(14%)
臀部左側領域A34の圧力分布による全荷重:12.4kg(29%)
・足部領域A4に作用する荷重:3.0kg(7%)
図23より足部第一圧力分布及び足部第二圧力分布がいずれかの位置でそれぞれ0Paよりも大きいため、ステップS62においてNOと判断した。足部領域A4に体重の7%(第四の割合は0%以上10%以下)の荷重が分布していることから、ステップS64においてYESと判断し、使用者Pが下肢拘縮であると判定した。
上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が50%(第五の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS72において上半身全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が第五の割合に入ると判断し、使用者Pの上半身が仰向けと判定した。
臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が34%(第六の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS82において臀部全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が第六の割合よりも小さいと判断し、使用者Pの下半身が右向きと判定した。
使用者Pの上半身が仰向けであり下半身が左向きと判定したときには、使用者Pの身体の軸が捻じれていることが分かる。この場合には、例えば使用者Pの下半身が仰向けになるように、流体調整部69は補助エアセル135及び補助エアセル137を膨らませてもよい。このようにすることで、使用者Pの身体の軸の捻じれを無くし、使用者Pの姿勢を矯正することができる。
使用者Pが寝ている状態は示さないが、使用者Pは円背及び下肢拘縮がなく、上半身は仰向け、下半身は仰向けの状態で寝ていた。圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、図24に示す。
検出した使用者Pの圧力分布から、圧力分布検出部16は以下のように演算した。
・使用者Pの体重:59kg
・頭部領域A1に作用する荷重:3.3kg(6%)
・上半身領域A2に作用する荷重:23.8kg(40%)
上半身第一領域A21に作用する荷重:12.4kg(21%)
上半身第二領域A22に作用する荷重:11.4kg(19%)
上半身右側領域A23の圧力分布による全荷重:12.2kg(21%)
上半身左側領域A24の圧力分布による全荷重:11.6kg(20%)
・臀部領域A3に作用する荷重:25.2kg(43%)
臀部右側領域A33の圧力分布による全荷重:12.9kg(22%)
臀部左側領域A34の圧力分布による全荷重:12.3kg(21%)
・足部領域A4に作用する荷重:6.8kg(12%)
図24より足部第一圧力分布及び足部第二圧力分布がいずれかの位置でそれぞれ0Paよりも大きいため、ステップS62においてNOと判断した。足部領域A4に体重の12%(第四の割合は0%以上10%以下)の荷重が分布していることから、ステップS64においてNOと判断し、使用者Pが下肢拘縮でないと判定した。
上半身全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が51%(第五の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS72において上半身全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第五の割合に入ると判断し、使用者Pの上半身が仰向けと判定した。
臀部全荷重の和に対して第一圧力分布による全荷重が51%(第六の割合は45%以上55%以下)であることから、ステップS82において臀部全荷重の和に対する第一圧力分布による全荷重が第六の割合に入ると判断し、使用者Pの下半身が仰向けと判定した。
図25に示すように、エアマット装置5のセンサ部35上で、円背である使用者Pに仰臥位で寝てもらった。各主エアセル12及び各補助エアセル13は、前述の初期状態になっている。
このとき、圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、図26に示す。図26及び後述する図28中には、補助エアセル131の位置を示した。圧力分布検出部16が検出した圧力の最大値は45.7mmHg(1mmHgは133.3Pa(パスカル))であった。
図29に示すように、エアマット装置5のセンサ部35上で、下肢拘縮である使用者Pに仰臥位で寝てもらった。各主エアセル12及び各補助エアセル13は、前述の初期状態になっている。
このとき、圧力分布検出部16が検出した圧力分布を、図30に示す。図30及び後述する図32中には、補助エアセル136の位置を示した。圧力分布検出部16が検出した圧力の最大値は54mmHgであった。
さらに、使用者Pの身体の軸の捻じれが改善され、捻じれによって生じる筋緊張を緩和し、拘縮の進行を抑えることができる。
さらに、既存情報記憶部67に記憶されている複数組の身体の状態及び設定内圧のうち、圧力分布検出部16の検出結果に最も近い身体の状態に対応する設定内圧に基づいて、補助エアセル13に空気を供給することができる。
図33(C)に示すように、補助エアセル73は、C字形でもよい。図示はしないが、補助エアセルはこの形以外にも、丸形、O字形、凹字形等でもよい。図33(D)に示すように、補助エアセル74はV字形(半円筒形)でもよい。図示はしないが、補助エアセルはこの形以外にも、山字形等でもよい。
前記した各実施形態についても、補助エアセル13の形状は特に限定されない。
次に、本発明の第6実施形態について図34及び図35を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図34に示すように、本実施形態のエアマット装置6は第5実施形態のエアマット装置5の各構成に加えて、前述の測定情報記憶部18を備えている。
本実施形態のエアマット装置6の動作の概要を説明すると、まず、使用者Pの身体の状態に最も近い既存圧力分布を含む既存情報の束D10をデータベースから読み込んで補助エアセル13を適宜膨張させる。補助エアセル13を膨張させた後で最大圧力が上がったときに、一つの補助エアセル13を膨張させる。膨張させた時の最大圧力が初期最大圧力よりも下がったときは、補助エアセル13の内圧を保持し、補助エアセル13の内圧をデータベースに記憶する。それ以外のときは、その補助エアセル13の内圧を膨張させる前の圧力に戻す等する。
以下、エアマット装置6の体圧を分散させる動作について説明する。
初期工程S45の後で、前述のステップS13を行い測定情報記憶部18に初期最大圧力と初期内圧とを記憶させる。
さらに、第5実施形態と同様の身体の状態判定工程S50及び既存圧力調整工程S91を行い、ステップS36に移行する。
ステップS36〜S43の工程は、第4実施形態と同様なので説明を省略する。
なお、ステップS43では、既存情報記憶部67に既存情報の束D10が記憶される。
さらに、既存圧力調整工程S91を行った後で圧力分布検出部16が検出する最大圧力が上がったとき、操作セルの一つに給気する。そして、初期最大圧力に比べて最大圧力が下がれば、修正した設定内圧を含む既存情報の束D10を既存情報記憶部67に記憶し、最大圧力が初期最大圧力以上になれば、操作セルの内圧を操作セルを膨張させる前の圧力に戻す等する。これにより、最大圧力が低下するように各補助エアセル13の内圧を修正するとともに、既存情報の束D10が表す調整目標となる圧力の情報を改善することができる。
このように設定することで、これまで圧力が所定の値以下であることを圧力分布検出部16が検出していたエアセル12、13に給気し、そのエアセル12、13を膨張させ、使用者Pに接触させる。これにより、使用者Pの体圧をより効率的に分散させることができる。
流体調整部は、対象セルに空気を供給又は排出して操作してもよい。
流体調整部は、圧力分布検出部16の検出結果に基づいて供給排出部15を駆動することで、エアセル12、13に空気を供給するとしたが、エアセル12、13から空気を排出するとしてもよい。
身体支持装置はエアマット装置であるとしたが、身体支持装置はこれに限られず、椅子、介護等に用いられるロボット等でもよい。身体支持装置が例えばロボットである場合には、身体状態判定装置は、使用者の身体の立位からの屈曲及び捻じれの少なくとも一方を判定する。ここで言う立位とは、身体を鉛直方向に沿って伸ばしている状態を意味する。身体支持装置が椅子等である場合も同様である。
11 マット部
12 主エアセル(流体セル)
13、71、72、73、74 補助エアセル(流体セル)
15 供給排出部
16 圧力分布検出部
17 内圧検出部
19、63 流体調整部
56、67 既存情報記憶部
57、68 選択部
66 判定部
D6、D10 既存情報の束
D6a 既存圧力分布
D6b 設定内圧
D10a 身体の状態
P 使用者
Claims (9)
- 流体を収容可能な複数の流体セルを有するマット部と;
それぞれの前記流体セルへの前記流体の供給及び前記流体セルからの前記流体の排出を行う供給排出部と;
前記マット部に設けられ、使用者の体重が前記マット部に付与する圧力分布を検出する圧力分布検出部と;
前記圧力分布のうち前記使用者の身体の第1部位による部分圧力分布を指標にしながら、前記供給排出部を駆動して、前記第1部位に対応する前記流体セルに対しては前記流体を供給又は排出せずに、前記使用者の身体の第2部位に対応する前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作する流体調整部と;
を備える身体支持装置。 - 前記流体調整部は、前記指標に基づいて前記供給排出部を駆動して前記流体セルを操作し、前記操作する前記流体セルとは異なる前記流体セルが前記使用者から付与される圧力を変化させる
請求項1に記載の身体支持装置。 - 前記流体調整部は、前記圧力が所定の値以下である前記流体セルを操作する
請求項2に記載の身体支持装置。 - 前記流体調整部は、前記圧力が最大でない前記流体セルを操作し、前記圧力が最大である前記流体セルにおける前記圧力を変化させる
請求項2又は3に記載の身体支持装置。 - 前記複数の流体セルの内圧をそれぞれ検出する内圧検出部をさらに備え;
前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、予め記憶された設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動する
請求項1から4のいずれか一項に記載の身体支持装置。 - 予め取得された既存圧力分布と、前記既存圧力分布に関連付けて設定した前記設定内圧と、の組合わせを複数組、記憶した既存情報記憶部と;
複数の前記既存圧力分布の中から、前記圧力分布検出部の検出結果に最も近い前記既存圧力分布を選択する選択部と;
をさらに備え、
前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、前記選択部が選択した前記既存圧力分布に対応する前記設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動する
請求項5に記載の身体支持装置。 - 前記圧力分布検出部の検出結果に基づいて、前記使用者の身体の状態を判定する判定部と;
前記身体の状態と、前記身体の状態に関連付けて設定した前記設定内圧と、の組合わせを複数組、記憶した既存情報記憶部と;
前記既存情報記憶部に記憶された複数の前記身体の状態の中から、前記判定部が判定した前記身体の状態に最も近い前記身体の状態を選択する選択部と;
をさらに備え、
前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルについて、前記選択部が選択した前記身体の状態に対応する前記設定内圧と、前記内圧検出部が検出する内圧と、が等しくなるように、前記供給排出部を駆動する
請求項5に記載の身体支持装置。 - 前記流体調整部は、前記操作する前記流体セルの内圧が前記設定内圧に至るまで前記供給排出部を駆動した後、前記操作する前記流体セルの内圧を、前記駆動の過程で、前記使用者から付与される圧力を変化させることを所望する前記流体セルに作用する前記圧力が最小になったときの内圧に設定する
請求項5から7のいずれか一項に記載の身体支持装置。 - 前記流体調整部は、前記供給排出部を駆動して前記第1部位に対応する前記流体セルに対して前記流体を供給又は排出して操作する
請求項1から8のいずれか一項に記載の身体支持装置。
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