JP5656114B2 - 超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心 - Google Patents

超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心 Download PDF

Info

Publication number
JP5656114B2
JP5656114B2 JP2011034190A JP2011034190A JP5656114B2 JP 5656114 B2 JP5656114 B2 JP 5656114B2 JP 2011034190 A JP2011034190 A JP 2011034190A JP 2011034190 A JP2011034190 A JP 2011034190A JP 5656114 B2 JP5656114 B2 JP 5656114B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ribbon
ultra
quenched
soft magnetic
alloy ribbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2011034190A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012174824A (ja
Inventor
克仁 吉沢
克仁 吉沢
直輝 伊藤
直輝 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Metals Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2011034190A priority Critical patent/JP5656114B2/ja
Publication of JP2012174824A publication Critical patent/JP2012174824A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5656114B2 publication Critical patent/JP5656114B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

本発明は、主として配電用トランスなどに用いられる低鉄損のFe基アモルファス合金やナノ結晶合金の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯およびこれらの材料から製造された高性能な磁心に関する。
配電用トランスなどの磁心に用いられる軟磁性材料としては、けい素鋼板やFe基アモルファス合金等が知られている。けい素鋼板は、材料が安価で磁束密度は高いが、アモルファス合金に比べると磁心損失が大きいという課題がある。アモルファス合金は、通常液相や気相から急冷し製造され、結晶が存在しないため結晶磁気異方性が存在せず、優れた軟磁気特性を示すことが知られている。アモルファス合金の中で比較すると飽和磁束密度Bsが高いFe基アモルファス合金は、軟磁性に優れ低損失であるため、Fe基アモルファス合金は、配電用トランスなどの磁心材料として使用されている(例えば、特許文献1参照)。一方、磁歪が小さく軟磁性が非常に優れているCo基アモルファス合金は、Fe基アモルファス合金に比べて飽和磁束密度が低いため、配電トランスなどの電力用トランスの用途には適していないが、その特長を活かし磁気ヘッド、可飽和コアや電流センサなどの磁心材料として使用されている。
アモルファス合金は、工業的には通常単ロール法などの超急冷法により製造される。単ロール法は、合金溶湯をノズルから高速に回転している合金製の冷却ロール上に噴出し合金薄帯を製造する方法である。量産性に優れているため、アモルファス合金の製造に一般的に使われている。アモルファス合金を量産する場合には、生産性を向上し材料コストを低減するため、広幅のアモルファス合金薄帯を長時間製造することにより、連続のアモルファス合金薄帯を作製した後に、この連続合金薄帯に対して、必要に応じてスリットや切断などの加工を行い、加工後のアモルファス合金薄帯を用いて磁心に成形し、熱処理を行い製品とする。配電用トランスなどに用いられるアモルファス合金薄帯は、広幅である必要があり、通常100mm幅以上の広幅材が使用される。現状では、最大210mmを超えるような広幅のアモルファス合金薄帯も製造されている。
配電用トランス等に用いられているFe−Si−B系合金などのFe基アモルファス軟磁性合金は、磁気ヒステリシスが小さく低保磁力でヒステリシス損失が小さい。しかしながら、鉄損値からヒステリシス損失を引いた、広義の渦電流損失は、一様磁化を仮定し求められる古典的渦電流損失の数十倍から100倍も大きいことが知られている。この増加分は、異常渦電流損失あるいは過剰損失と呼ばれており、主に不均一磁化変化に起因し、アモルファス合金の磁区幅が大きいことが原因であると考えられている。
したがって、この渦電流損失を低減し、更に鉄損を低減するため、以下に述べるような種々の磁区細分化手法による鉄損低減が試みられている。
Fe基アモルファス合金薄帯の異常渦電流損失を低減し、鉄損を低減する方法として、機械的にアモルファス合金薄帯表面を罫書くスクラッチ方法(特許文献2参照)や、レーザ光をアモルファス合金薄帯表面に照射し、局部的に溶解・急冷凝固させ磁区を細分化するレーザスクライビング法などが知られている(特許文献3参照)。
特許文献3には、パルスレーザをアモルファス合金薄帯の幅方向に照射することにより、このアモルファス合金薄帯の表面を局部的かつ瞬間的に溶解し、次いで急冷凝固させてアモルファス化させた円ないし楕円状の領域(レーザスポット)を点列状に形成することにより磁区を細分化する方法が開示されている。
しかしながら、これらのレーザ照射法を、電磁鋼板よりも板厚が一桁程薄い、板厚が20μm〜50μm程度のFe基アモルファス合金やFe基ナノ結晶合金等の超急冷Fe基合金薄帯に適用した場合、単位重量当たりの処理量は著しく小さくなり生産性が悪いという課題がある。
一方、特許文献4には、単ロール法によりアモルファス合金薄帯を製造する際に薄帯表面に縞状波(波目模様状の形状的な欠陥)を形成して、縞状波のピッチや縞状波の強さをある範囲に制御することにより磁区細分化し渦電流損失を低減し、鉄損低減を図る方法が開示されている。合金薄帯表面にこのような形状的欠陥ができる理由は、単ロール法などでアモルファス合金薄帯を製造する際に、ノズルから冷却ロール上に出湯され形成される溶湯パドルが、安定せず振動し、凝固した合金薄帯上にある間隔の縞状(波目模様状)の形状的欠陥が形成するためであると考えられている。この場合、合金薄帯製造時に薄帯表面に形状的欠陥を形成させることができるため、製造した合金薄帯に対して、レーザ処理などの処理を行ない形状的欠陥を形成する方法に比べ生産性に優れている。
特開2006−45662号公報 特公昭62−49964号公報 特公平3−32886号公報 特開昭61−24208公報
超急冷Fe基軟磁性合金材料の鉄損を低減させるために、アモルファス合金などのFe基軟磁性合金薄帯を製造する際に、薄帯長手方向に対してほぼ一定間隔で、薄帯表面に薄帯幅方向に向かって波目模様状の形状的欠陥部を形成し、磁区を細分化して鉄損を低減させる方法が知られている。しかし、20mm幅以上の広幅の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯(以下、単に薄帯と言う。)、特に50mm幅以上の広幅の薄帯を製造する場合には、この波目模様状の形状的欠陥が形成されない領域が生じやすくなり、この領域の割合が製造ロットにより変化するため、磁界中熱処理後の鉄損のばらつきが大きくなるだけでなく、十分鉄損が低減されないという課題があることが分った。このような領域ができる理由は、十分明らかにはなっていないが、ノズル先端部の変形や溶湯に温度分布ができるなどが原因となり、ノズルスリット部から出た合金溶湯が冷却ロール上に噴出し、形成される溶湯パドルの形状が幅方向で一定でなくなることに起因していると思われる。このような超急冷合金薄帯製造装置において、ノズルとロール間のギャップを広げるなど、製造条件を変えると、幅方向に向かって走る波目模様状の形状的欠陥を幅方向全領域に形成させることができる。しかし、このような装置で作製された薄帯は、形状的欠陥部の凹部欠陥が非常に深くなっている部分と浅い部分が混在するようになる。このようなとき、鉄損は低減されるが、一方で凹部の深い欠陥の影響で励磁電力が大きくなる課題がある。このため、このような超急冷薄帯製造装置においても、広幅の薄帯を製造した場合、安定した低鉄損と低励磁電力を実現し、これらの特性ばらつきを低減することが望まれている。
そこで、本発明は、広幅の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯において、鉄損や励磁電力のばらつきが小さく、低鉄損で低励磁電力の、変圧器鉄心などに好適な超急冷Fe基軟磁性合金薄帯およびこれを用いた磁心を提供することを目的とする。
本発明は、超急冷凝固法により製造した幅20mm以上の広幅のFe基軟磁性合金薄帯であって、前記Fe基軟磁性合金薄帯の自由凝固面側の長手方向に対してほぼ一定間隔で、薄帯表面に薄帯幅方向に向かって波目模様状の形状的欠陥が形成されており、同時に前記薄帯の全幅に対して前記波目模様状の形状的欠陥が形成されていない部分が存在し、当該波目模様状の形状的欠陥が形成されていない部分には、前記薄帯表面の薄帯幅方向にレーザ光照射による凹部が形成されている超急冷Fe基軟磁性合金薄帯である。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、前記波目模様状の形状的欠陥が薄帯の全幅に対して50%以上、95%以下形成していることが好ましい。
前記凹部が点列状であることは好ましい。
本発明は、前記超急冷Fe基軟磁性合金薄帯を積層又は巻き回して製造した磁心である。このとき、磁心の磁路方向の磁界中で熱処理されていることは好ましい。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、鉄損や励磁電力ばらつきが小さく、低鉄損で低励磁電力の、変圧器鉄心などに好適な超急冷Fe基軟磁性合金薄帯となる。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯の自由凝固面表面の形態を模式的に示した図である。 本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯の波目模様状の欠陥部を含む自由凝固面表面を長手方向に測定した表面粗さプロファイルを示した図である。 レーザ光照射により本発明に係る超急冷Fe基軟磁性合金薄帯の表面に形成されたレーザ照射部のスポットおよびスポット断面の形態の一例を示した図である。
以下、本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯を実施するための形態について説明する。
図1に本発明に係る薄帯の自由凝固面の表面の形態の模式図、図2に本発明に係る薄帯の波目模様状の欠陥部を含む自由凝固面の表面の表面粗さプロファイルの一例を示す。また、図3にレーザ光照射により本発明に係る薄帯の表面に形成されたレーザ照射部のスポットおよびスポット断面の形態の一例を示す。
本発明に係る薄帯において、波目模様状の欠陥は薄帯の全幅に対して50%以上95%以下形成しているのが好ましい。これは、50%未満であると生産性が非常に落ちるためであり、95%を超えるとレーザ光照射による鉄損低減の効果が小さくなってしまうためである。レーザ光の照射は、通常は薄帯の熱処理前に行うが、熱処理後に行っても良い。レーザ光を照射する面は、自由凝固面側、ロール接触面側どちらでもほぼ同等の効果が得られる。ただ、波目模様状の形状的欠陥は主として自由面側に形成されるので、自由面側にレーザ光照射を加え、波目模様状の形状的欠陥がない領域に凹部を形成した方が処理しやすい。ここで、レーザ光照射により形成する凹部は、形状的欠陥が形成されていない部分だけに形成するのが望ましいが、波目模様状の形状的欠陥部が形成されている境界の領域に凹部が一部形成されても、同等の効果が得られるので本発明と同一と見なすことができる。ただ、その領域は波目模様状の欠陥が存在する領域の20%以下であることが望ましい。20%を超えると励磁電力が増加するため好ましくない。また、この凹部は、波目模様状の形状的欠陥の延長線上に必ずしもある必要はない。
レーザ光照射により形成した凹部列の長手方向間隔Lは一般に2〜20mmで良く、より好ましくは3〜10mmである。幅方向凹部列では、凹部は間隔をあけて配列されていても、隣接する凹部が重複するように配列されていても良い。一般に幅方向凹部列における凹部の数密度は2〜25個/mmであり、好ましくは4〜20個/mmである。
また、前記波目模様状の形状的欠陥の長手方向に対する間隔L1が1mm以上5mm以下、薄帯の厚さTが15μm以上35μm以下、形状的欠陥の凹部と凸部の差tと厚さの比t/Tが0.02以上0.2以下の範囲にある場合、低い鉄損が得られるため好ましい。
レーザ光照射により形成された各凹部の周囲には、通常ドーナツ状突起部が形成され、ドーナツ状突起部はレーザ光の照射により溶解した合金の飛散物が実質的にない滑らかな表面を有する。高さtが2μm以下であり、かつ突起部高さtと凹部深さtの和をtとすると、tと前記薄帯の厚さTとの比t/Tが0.25以下であるとラミネーションファクタを高く維持し、励磁電力の増加を抑制しつつ鉄損を低減できるため、特に好ましい結果が得られる。前記ドーナツ状突起部の高さtが0.5〜2μmである場合に、特に低い鉄損が得られる。
また、レーザ光照射により形成された凹部が、点列状であると、励磁電力の増加が抑えられるため、より好ましい結果が得られる。レーザ光は、パルスレーザ光をファイバーレーザにより発生させるのが好ましい。集光性が高く小さなスポットに集光できるファイバーレーザは熱的影響が少ないので、凹部の周囲に、溶解した合金の飛散物が形成されるのを抑制することができ、もって滑らかな表面を有するドーナツ状突起部を形成することができる。また焦点深度を長くとれるので、高精度な深さ制御が可能であり、薄い合金薄膜に対しても凹部を浅くすることができる。
本発明において、超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、Fe−B、Fe−B−P、Fe−Si−B、Fe−Si−B−C、Fe−Si−B−P、Fe−Si−B−C−PなどのFe基アモルファス合金薄帯やナノ結晶軟磁性材料用のFe−Cu−B、Fe−Cu−P−B、Fe−Cu−Si−B、Fe−Cu−Si−B−C、Fe−Cu−Si−B−C−P、Fe-Cu-Nb−Si−B、Fe−Cu−Mo−Si−B、Fe−Cu−Nb−Si−B−Pなどの合金薄帯である。
合金薄帯中の不可避不純物としてはN、O、Sなどがあり、これらの元素を微量含むことができる。また、Fe量の50%未満をCo、Niから選ばれた少なくとも1種の元素で置換することができる。Co、NiをFeと置換することにより、誘導磁気異方性を制御することが可能である。また、CoをFeと置換する場合は飽和磁束密度を向上する効果もある。また、B、Si、CやPなどの元素の総量の50%以下をAl、Ga、Geから選ばれた少なくとも1種の元素で置換することができる。これらの元素を置換することにより、磁歪や磁気特性を調整することができる。また、必要に応じてNb、Ta、Mo、W、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、As、Se、Sb、Sn、In、Cd、Ag、Bi、Mg、Sc、Re、Au、白金族元素、Y、希土類元素から選ばれた少なくとも1種の元素を含むことができる。
また、上記ナノ結晶軟磁性材料用のFe−Cu−B、Fe−Cu−P−B、Fe−Cu−Si−B、Fe−Cu−Si−B−C、Fe−Cu−Si−B−C−P、Fe-Cu-Nb−Si−B、Fe−Cu−Mo−Si−B、Fe−Cu−Nb−Si−B−P系アモルファス合金などを作製後、結晶化温度以上の温度領域まで加熱し熱処理を施し、結晶粒径50nm以下の体心立方構造の結晶粒がアモルファス母相中に分散した組織とし、ナノ結晶粒相が体積分率で50%以上を占めるナノ結晶軟磁性材料は、軟磁性をアモルファス状態よりも更に改善させることや磁歪を低減させることが可能となる。Fe基ナノ結晶軟磁性材料では、熱処理後の合金中に存在する結晶粒の結晶粒径を、50nm以下となるようにすることが望ましい。これは、結晶粒径が50nmを超えると軟磁気特性の著しい劣化が起こり好ましくないためである。Fe基ナノ結晶軟磁性材料において、特に好ましい結晶粒径は5nm〜20nmであり、特に優れた軟磁性が得られる。具体的には、前記組成の溶湯を単ロール法等の超急冷技術によって、一旦アモルファス相を主相とする合金を作製後、これを加工し、熱処理を施して平均粒径が50nm以下の極微結晶組織を形成し製造する。ナノ結晶軟磁性材料は、Fe基アモルファス軟磁性合金材料よりも磁歪が小さく、磁心の騒音が小さい、接着や含浸硬化などの処理を行っても劣化が小さいという特徴を有する。
単ロール法等の急冷技術による薄帯の製造や製造された超急冷Fe基軟磁性合金薄帯の熱処理は、Ar、He、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素の雰囲気中や大気中あるいは減圧下で製造される。特に熱処理を磁界中熱処理とすることにより、誘導磁気異方性によって超急冷Fe基軟磁性合金の軟磁気特性が改善される。誘導磁気異方性を付与する磁界中熱処理は、熱処理中の一部の期間あるいは全期間磁界を印加しながら熱処理を行う。印加する磁界は、直流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれでも良い。印加磁界は、合金が磁気的に飽和する程度以上の強さとすると、好ましい結果が得られる。磁界中熱処理により、高角形比の角形性の良好なB−Hループや低角形比の直線性の良いフラットな形状のB−Hループを示す材料が得られる。また、回転磁界中熱処理により軟磁気特性を改善することもできる。熱処理は大気中、真空中、Ar、窒素等の不活性ガス中で行うことができるが、特に不活性ガス中で行うことが望ましい。熱処理は、組成によるが通常350℃から650℃の範囲で行なう。
一定温度で保持する時間は量産性の観点から通常は24時間以下であり、好ましくは4時間以下である。特に望ましくは1時間以下である。
熱処理の平均昇温速度は0.1℃/minから1000℃/minが好ましく、より好ましくは1℃/min以上10℃/min以下であり、低保磁力を得ることができる。熱処理は1段処理でなく、多段処理、複数回処理を行っても良い。さらに、合金に直接電流を流して、ジュール熱によって熱処理を施す、高周波励磁し発熱させて熱処理を施すこともできる。また、応力下で熱処理し、誘導磁気異方性を付与しB−Hループ形状を制御することも可能である。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、必要に応じてSiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成する、樹脂で合金表面を被覆するなどの処理を行うことにより、磁心に用いた場合に層間絶縁性を更に高めることができる。これは特に高周波励磁される場合において層間を渡る渦電流をより一層低減し、高周波における磁心損失を更に改善する効果がある。表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心に層間絶縁を適用すると更に著しい高周波磁気特性改善効果が得られる。
もう一つの本発明は、上述した超急冷Fe基軟磁性合金薄帯を積層又は巻き回してなる磁心である。この磁心において、薄帯長手方向が磁路方向であり、磁路方向の磁界中で熱処理されている場合、高角形比で低鉄損特性、低励磁電力の変圧器や磁気スイッチなどに適する高角形比で低鉄損特性が得られるため、本発明の効果が特に著しい。更に、磁心を作製する際に必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。
本発明による超急冷Fe基軟磁性合金薄帯や磁心は、高周波の用途として特にパルス状電流が流れるような応用品に最も性能を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が問題となる用途において優れた特性を発揮可能で、高エネルギー密度のパワーエレクトロニクスや電力関連の用途に特に適している。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
原子パーセントでSi3.7%、B14.3%、残部Feおよび不可避不純物からなる合金溶湯を単ロール法により超急冷して、幅170mm、平均板厚24.3μmの薄帯を作製した。作製した薄帯はX線回折を行ないアモルファス状態にあることを確認した。ロールは水冷されたCu-Cr-Zr合金製であり、製造時のノズルとロール間のギャップは180μmとした。超急冷法により作製されたFe基アモルファス合金薄帯の自由面側には波目模様状の形状的欠陥が形成していたが、一部波目模様状の欠陥が形成していない部分が存在していた。薄帯の平均板厚をT、幅方向における薄帯幅に対する波目模様状の欠陥が形成している部分の割合G、波目模様状の欠陥の長手方向に対する間隔Lを表1に示す。また、図2に示す凹部と凸部の差tおよびt/Tを表1に示す。波目模様状の欠陥が形成している部分の割合Gは、図1に示すような波目模様状の欠陥が連続している部分の総和の薄帯幅に対する割合で定義される。
次に、波目模様状の欠陥が形成していない部分に図1に示すようにパルスレーザ照射を行ない、点列状のレーザスポットを形成し、本発明の薄帯を作製した。点列状のレーザスポット列間の間隔L、幅方向に並ぶスポット列の数密度をR、前記突起部高さtと凹部深さtの和ttと前記薄帯の厚さTとの比tt/Tを表1に示す。
レーザ光照射を行った上記薄帯を切断し、窒素ガス雰囲気中で磁界中熱処理を行った。磁界中熱処理の際印加した磁界は薄帯長手方向に1500A/mの磁界を印加した。室温から320℃まで平均昇温速度5℃/minで昇温し、320℃で1時間保持後、平均冷却速度2.5℃/minで150℃まで冷却した後、熱処理炉から取り出し、室温まで冷却し磁界中熱処理を行った。熱処理後のアモルファス合金薄帯は、X線回折の結果、アモルファス相であることが確認された。熱処理後のアモルファス合金薄帯の1.3T、50Hzにおける鉄損P13/50と励磁電力S13/50を測定した。その結果を表1に示す。また、比較のためにレーザ光照射の処理を行わなかったアモルファス合金に対して、同様な熱処理を行った場合の1.3T、50Hzにおける鉄損P13/50と励磁電力S13/50を表1に示す。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、励磁電力S13/50をほとんど増加させずに、鉄損を低減することができるためその効果は著しいものがある。
(実施例2)
表2に示す組成の1250℃〜1350℃の合金溶湯を、スリット状のセラミックス製のノズルから周速20〜35m/sで回転するCu-Cr−Zr合金製の水冷冷却ロール上に噴出し、幅30 mmのFe基アモルファス合金薄帯を作製した。ノズル先端部のスリットは、幅30mm、スリット間隔0.5〜0.7mm、ノズル先端とロール間のギャップは150〜300μmとした。作製した薄帯のX線回折を行った結果、アモルファス特有のハローパターンを示しており、作製した合金はアモルファス状態にあることが確認された。また、作製したアモルファス合金薄帯の自由面表面には波目模様状の形状的欠陥が形成されていた。薄帯の平均板厚をT、幅方向における薄帯幅に対する波目模様状の欠陥が形成している部分の割合G、波目模様状の欠陥の長手方向に対する間隔Lを表2に示す。また、図2に示す凹部と凸部の差tおよびt/Tを表2に示す。
次に、波目模様状の欠陥が形成していない部分に図1に示すようにパルスレーザ照射を行ない、点列状のレーザスポットを形成し、本発明の薄帯を作製した。点列状のレーザスポット列間の間隔L、幅方向に並ぶスポット列の数密度をR、前記突起部高さtと凹部深さtの和ttと前記薄帯の厚さTとの比tt/Tを表2に示す。
レーザ光照射を行った上記薄帯を切断し、窒素ガス雰囲気中で磁界中熱処理を行った。磁界中熱処理の際印加した磁界は薄帯長手方向に1500A/mの磁界を印加した。室温から320℃まで平均昇温速度5℃/minで昇温し、320℃で1時間保持後、平均冷却速度2.5℃/minで150℃まで冷却した後、熱処理炉から取り出し、室温まで冷却し磁界中熱処理を行った。熱処理後のアモルファス合金薄帯は、X線回折の結果、アモルファス相であることが確認された。熱処理後のアモルファス合金薄帯の1.3T、50Hzにおける鉄損P13/50と励磁電力S13/50を測定した。その結果を表2に示す。また、比較のためにレーザ光照射の処理を行わなかったアモルファス合金に対して、同様な熱処理を行った場合の1.3T、50Hzにおける鉄損P13/50と励磁電力S13/50を表2に示す。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、励磁電力S13/50をほとんど増加させずに、鉄損を低減することができるためその効果は著しいものがある。
(実施例3)
表3に示す組成の1250℃〜1350℃の合金溶湯を、スリット状のセラミックス製のノズルから周速20〜35m/sで回転するCu-Cr−Zr合金製の水冷冷却ロール上に噴出し、幅30mmのFe基アモルファス合金薄帯を作製した。ノズル先端部のスリットは、幅30mm、スリット間隔0.5〜0.7mm、ノズル先端とロール間のギャップは150〜300μmとした。作製した合金薄帯のX線回折を行った結果、アモルファス特有のハローパターンを示しており、作製した合金はアモルファス状態にあることが確認された。また、作製したアモルファス合金薄帯の自由面表面には波目模様状の形状的欠陥が形成されていた。薄帯の平均板厚をT、幅方向における薄帯幅に対する波目模様状の欠陥が形成している部分の割合G、波目模様状の欠陥の長手方向に対する間隔Lを表3に示す。また、図2に示す凹部と凸部の差tおよびt/Tを表3に示す。
次に波目模様状の欠陥が形成していない部分に図1に示すようにパルスレーザ照射を行ない、点列状のレーザスポットを形成し、本発明の薄帯を作製した。点列状のレーザスポット列間の間隔L、幅方向に並ぶスポット列の数密度をR、前記突起部高さtと凹部深さtの和ttと前記薄帯の厚さTとの比t/Tを表3に示す。
レーザ光照射を行った上記薄帯を切断し、窒素ガス雰囲気中で磁界中熱処理を行った。磁界中熱処理の際薄帯長手方向に1500A/mの磁界を印加した。室温から320℃まで平均昇温速度5℃/minで昇温し、320℃で1時間保持後、平均冷却速度2.5℃/minで150℃まで冷却した後、熱処理炉から取り出し、室温まで冷却し磁界中熱処理を行った。熱処理後のアモルファス合金薄帯は、X線回折の結果、結晶ピークが認められナノ結晶化していることが確認された。透過電子顕微鏡によるミクロ構造観察の結果、bcc構造のFeを主体とする結晶相は体積分率で50%から60%程度であることが分った。熱処理後のナノ結晶合金薄帯の1.55T、50Hzにおける鉄損P15.5/50と励磁電力S15.5/50を測定した。その結果を表3に示す。また、比較のためにレーザ光照射の処理を行わなかったアモルファス合金に対して、同様な熱処理を行った場合の1.55T、50Hzにおける鉄損P15.5/50と励磁電力S15.5/50を表3に示す。
本発明超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、励磁電力S15.5/50をほとんど増加させずに、鉄損を低減することができるためその効果は著しいものがある。
本発明の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯は、トランス、リアクトル、チョークコイルなどの磁心材料に利用できる。また、本発明合金薄帯は特に配電用トランスの磁心に使用した場合、優れた特性を実現することができる。

Claims (5)

  1. 超急冷凝固法により製造した幅20mm以上の広幅のFe基軟磁性合金薄帯であって、前記Fe基軟磁性合金薄帯の自由凝固面側の長手方向に対してほぼ一定間隔で、薄帯表面に薄帯幅方向に向かって波目模様状の形状的欠陥が形成されており、同時に前記薄帯の全幅に対して前記波目模様状の形状的欠陥が形成されていない部分が存在し、前記波目模様状の形状的欠陥が形成されていない部分には、前記薄帯表面の薄帯幅方向にレーザ光照射による凹部が形成されていることを特徴とする超急冷Fe基軟磁性合金薄帯。
  2. 前記波目模様状の形状的欠陥が前記薄帯の全幅に対して50%以上、95%以下形成していることを特徴とする請求項1に記載の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯。
  3. 前記凹部が点列状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の超急冷Fe基軟磁性合金薄帯を積層又は巻き回してなることを特徴とする磁心。
  5. 請求項4に記載の磁心において、前記超急冷Fe基軟磁性合金薄帯が、磁路方向の磁界中で熱処理されていることを特徴とする磁心。
JP2011034190A 2011-02-21 2011-02-21 超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心 Expired - Fee Related JP5656114B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011034190A JP5656114B2 (ja) 2011-02-21 2011-02-21 超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011034190A JP5656114B2 (ja) 2011-02-21 2011-02-21 超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012174824A JP2012174824A (ja) 2012-09-10
JP5656114B2 true JP5656114B2 (ja) 2015-01-21

Family

ID=46977473

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011034190A Expired - Fee Related JP5656114B2 (ja) 2011-02-21 2011-02-21 超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5656114B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6191908B2 (ja) * 2013-06-12 2017-09-06 日立金属株式会社 ナノ結晶軟磁性合金及びこれを用いた磁性部品
JP2016020835A (ja) * 2014-07-14 2016-02-04 愛知時計電機株式会社 電磁流量計およびコア
CN115376808A (zh) 2015-07-03 2022-11-22 阿尔卑斯阿尔派株式会社 层叠磁芯
JP6687168B2 (ja) 2018-03-30 2020-04-22 日立金属株式会社 Fe基アモルファス合金薄帯及びその製造方法、鉄心、並びに変圧器
JP7192885B2 (ja) * 2019-06-28 2022-12-20 日立金属株式会社 Fe基アモルファス合金薄帯、鉄心、及び変圧器
JP7107285B2 (ja) 2019-07-12 2022-07-27 株式会社村田製作所 磁性構造体および磁性構造体の製造方法

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60216511A (ja) * 1984-03-30 1985-10-30 Nippon Steel Corp 非晶質磁性合金薄帯の磁性改善方法
US4724015A (en) * 1984-05-04 1988-02-09 Nippon Steel Corporation Method for improving the magnetic properties of Fe-based amorphous-alloy thin strip
JPS60233804A (ja) * 1984-05-04 1985-11-20 Nippon Steel Corp 非晶質合金薄帯の磁性改善方法
JPS6124208A (ja) * 1984-07-12 1986-02-01 Nippon Steel Corp 良好な磁気特性を有する非晶質磁性材料
JPS6134909A (ja) * 1984-07-26 1986-02-19 Nippon Steel Corp 変圧器用積層鉄心の製造方法
JPS61248507A (ja) * 1985-04-26 1986-11-05 Nippon Steel Corp 非晶質合金積み鉄心の磁性改善方法
JPS63239906A (ja) * 1987-03-27 1988-10-05 Hitachi Metals Ltd 高周波磁気特性に優れたFe基合金薄帯の製造方法
JP3499075B2 (ja) * 1996-04-03 2004-02-23 新日本製鐵株式会社 急冷金属薄帯表面性状の制御方法および装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012174824A (ja) 2012-09-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10468182B2 (en) Rapidly quenched Fe-based soft-magnetic alloy ribbon and its production method and core
KR101257248B1 (ko) 비정질 합금 박대, 나노 결정 연자성 합금, 및 자심
JP5455041B2 (ja) 軟磁性薄帯、その製造方法、磁性部品、およびアモルファス薄帯
JP5327074B2 (ja) 軟磁性合金薄帯及びその製造方法、並びに軟磁性合金薄帯を有する磁性部品
JP5720674B2 (ja) 初期超微結晶合金、ナノ結晶軟磁性合金及びその製造方法、並びにナノ結晶軟磁性合金からなる磁性部品
JP5327075B2 (ja) 軟磁性合金薄帯及びその製造方法、並びに軟磁性合金薄帯を有する磁性部品
JP5455040B2 (ja) 軟磁性合金、その製造方法、および磁性部品
US7935196B2 (en) Soft magnetic ribbon, magnetic core, magnetic part and process for producing soft magnetic ribbon
JP5440606B2 (ja) 軟磁性アモルファス合金薄帯及びその製造方法、並びにそれを用いた磁心
JP5429613B2 (ja) ナノ結晶軟磁性合金ならびに磁心
JP5656114B2 (ja) 超急冷Fe基軟磁性合金薄帯および磁心
KR102069927B1 (ko) 초미결정 합금 박대, 미결정 연자성 합금 박대 및 이것을 사용한 자성 부품
JP6080094B2 (ja) 巻磁心およびこれを用いた磁性部品
JP2007182594A (ja) 非晶質合金薄帯、ナノ結晶軟磁性合金ならびにナノ結晶軟磁性合金からなる磁心
KR20090113314A (ko) Fe 기재의 연자성 합금, 비정질 합금의 얇은 리본, 및 자성 부품
JP2008231533A (ja) 軟磁性薄帯、磁心、磁性部品、および軟磁性薄帯の製造方法
JP2008231534A (ja) 軟磁性薄帯、磁心、および磁性部品
JP6041181B2 (ja) 巻磁心
JP5645108B2 (ja) 非晶質合金薄帯および非晶質合金薄帯を有する磁性部品
JP2001295005A (ja) ナノ結晶軟磁性合金用Fe基アモルファス合金薄帯及び磁性部品
JP2008150637A (ja) 磁性合金、アモルファス合金薄帯、および磁性部品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140114

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20141010

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141031

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141113

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5656114

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees