(第1の実施形態)
図1は、画像形成装置1の全体構成を模式的に示す説明図である。この画像形成装置1は、例えば複写機といった電子写真方式の画像形成装置であり、画像データに基づいて用紙Pに画像を形成する。画像形成装置1は、原稿読取装置5と、露光部10と、感光体ドラム21と、帯電部22と、現像部23と、転写部24と、定着装置30と、メイン制御部50とを主体に構成されている。
原稿読取装置5は、画像形成装置1本体の筐体上部に配置され、画像を読み取る際に原稿を自動的に移動させる自動原稿送り部を備えている。この原稿読取装置5は、原稿に形成された画像を読み取り、所定の画像信号を出力する。出力された画像信号は、A/D変換が施されることにより画像データとして作成される。原稿読取装置5は、画像データに、シェーディング補正やディザ処理、圧縮等の処理を施し、この処理により得られるデータを最終的な画像データとしてメイン制御部50に出力する。なお、メイン制御部50は、原稿読取装置5から画像データを取得するのみならず、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピューターや他の画像形成装置から画像データを受信してもよい。
露光部10は、画像データをもとにメイン制御部50から出力される出力情報に対応して、感光体ドラム21の表面をレーザービームにより走査露光する。この走査露光により、感光体ドラム21に所定の静電潜像が形成される。
感光体ドラム21は、帯電部22によりその表面が一様に帯電させられており、前述の通り、露光部10によりその表面に潜像が形成される。現像部23は、トナーで現像することによって感光体ドラム21上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラム21上にトナー画像が形成される。
用紙収納部40に収納された用紙Pは、転写部24へ給紙される。転写部24は、感光体ドラム21の表面上のトナー画像を用紙Pへ転写し、その後、分離部25は、トナー画画像が転写された用紙Pを感光体ドラム21から分離する。一方、クリーニング装置26は、転写部24によりトナー画像が用紙Pに転写された後の感光体ドラム21の表面に残留しているトナーを除去する。中間搬送部41は、分離された用紙Pを定着装置30へ搬送する。
定着装置30は、用紙Pに対する加熱及び加圧によって、トナー画像を用紙Pに定着させる。定着装置30は、例えば定着上ローラと定着下ローラとを主体に構成されており、定着上ローラ及び定着下ローラは、互いに圧接した状態で配置され、定着上ローラ及び定着下ローラとの接触位置に定着ニップ部が形成される。また、例えば定着上ローラの内部には、熱定着を行う加熱手段としての発熱体31が内蔵されており、発熱体31からの輻射熱により定着上ローラが加熱される。発熱体31は、通電によって発熱するものであり、発熱体31としては、例えばハロゲンランプを用いることができる。なお、本実施形態の特徴の一つは、定着装置30の発熱体31に対する給電手法にあり、その詳細については後述する。
排紙部42は、定着処理が施された用紙Pを用紙トレイ45へ排出する。また、用紙Pの両面に画像形成を行う場合、定着装置30により定着処理が施された用紙Pは、搬送経路切換板43により、その搬送方向が排紙部42側から下方(反転搬送部44)側へと切り換えられる。反転搬送部44は、用紙Pをスイッチバックすることにより用紙Pの表裏を反転させた上で用紙Pを転写部24へ搬送する。転写部24は、トナー画像を用紙Pの裏面へ転写し、当該用紙Pは定着装置30を経て、排紙部42から用紙トレイ45へ排紙される。
図2は、第1の実施形態にかかる定着装置30の発熱体31への給電構成を模式的に示すブロック図である。定着装置30の発熱体31には、第1の電源ラインL1を介して交流電源100からの交流電力(AC)が供給されている。ここで、交流電源100は、オフィス等といった、画像形成装置1の使用環境における商用電源であり、コンセント、差込プラグ及びケーブル(図示せず)を介して第1の電源ラインL1と接続されている。なお、この交流電源100としては、商用電源に限らず、画像形成装置1の各部へと電力供給を担う電源装置(図示せず)であればよい。
第1の電源ラインL1には、当該第1の電源ラインL1を接続又は遮断する第1の切換部32が設けられている。第1の切換部32としては、オン又はオフを切換可能なスイッチやリレーなどを利用することができる。例えば、第1の切換部32は、オンに対応して第1の電源ラインL1を接続し、オフに対応して第1の電源ラインL1を遮断する。
また、定着装置30は、補助電源33を備えている。この補助電源33は、第2の電源ラインL2を介して交流電源100からの交流電力が入力されるとともに、発熱体31と接続された第3の電源ラインL3を介して直流電力(DC)を出力する。具体的には、補助電源33は、入力された交流電力を直流電力に変換する手段(電力変換手段)と、変換した直流電力を蓄電し及び当該蓄電した直流電力を出力(放電)する手段(蓄電手段)とを備えている。補助電源33としては、例えば、電力変換手段としての、4つのダイオードを用いたブリッジ回路からなる整流器と、蓄電手段としてのコンデンサとの組み合わせにより構成することができる。すなわち、補助電源33は、第2の電源ラインL2から入力される交流電力を整流器により直流電力に変換し、変換した直流電力をコンデンサに蓄電するとともに当該コンデンサに蓄電した電力を放電する。なお、交流電源100から第1の電源ラインL1を介して供給される電力量と比して、補助電源33から発熱体31に供給される電力量の方が小さくなるように、補助電源33のコンデンサの容量が設定されている。
なお、本実施形態において、第2の電源ラインL2の端部は、第1の電源ラインL1における第1の切換部32と交流電源100との間の任意の点(第1接続点)に接続されている。このため、第2の電源ラインL2には、第1の電源ラインL1を経由して、交流電源100からの交流電流が供給される。また、第3の電源ラインL3の端部は、第1の電源ラインL1における第1の切換部32と発熱体31との間の任意の点(第2接続点)に接続されている。このため、第1の電源ラインL1の一部は、第3の電源ラインL3の一部として共用されている。
第2の電源ラインL2には、当該第2の電源ラインL2を接続又は遮断する第2の切換部34が設けられており、また、第3の電源ラインL3には、当該第3の電源ラインL3を接続又は遮断する第3の切換部35が設けられている。第2及び第3の切換部34,35としては、オン又はオフを切換可能なスイッチやリレーなどを利用することができる。例えば、第2の切換部34は、オンに対応して第2の電源ラインL2を接続し、オフに対応して第2の電源ラインL2を遮断し、また、第3の切換部35は、オンに対応して第3の電源ラインL3を接続し、オフに対応して第3の電源ラインL3を遮断する。
定着制御部36は、熱定着に必要な定着温度を制御する定着温度制御を行う。定着制御部36としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。具体的には、定着制御部36は、第1から第3の切換部32,34,35のオンオフ状態を制御することにより、発熱体31への通電を制御し、これにより、定着温度制御を行う。前述の構成に示すように、同一の発熱体31、すなわち、発熱体31の通電部(ハロゲンランプであればフィラメント)には、第1の電源ラインL1又は第3の電源ラインL3から電力の供給が可能となっている。そのため、本実施形態において、定着制御部36は、第1の電源ラインL1を介した交流電源100からの交流電力又は第3の電源ラインL3を介した補助電源33からの直流電力を発熱体31(具体的には、その通電部)に対して選択的に供給することができる。
以下、図3から図6を参照して、定着装置30に関する制御動作について説明する。
図3は、定着装置30の起動制御に関する一連の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、画像形成装置1の電源オンに対応して、定着制御部36によって実行される。なお、画像形成装置1の電源オフに伴い、第1から第3の切換部32,34,35はオフに設定されるため、起動制御を実行する前提として、第1の切換部32から第3の切換部32,34,35はオフとなっている。
まず、ステップ1(S1)において、定着制御部36は、第2の切換部34をオンに設定する。第2の切換部34のオンにともない、第2の電源ラインL2が接続されるため、補助電源33に交流電源100からの交流電力が供給され、これにより、補助電源33のコンデンサへの電荷の蓄積、すなわち、補助電源33の充電が開始される。
ステップ2(S2)において、定着制御部36は、補助電源33に所定の電力が供給されたか否かを判断する。このステップ2の判断により、補助電源33に所定量の電力が充電されたか否かが判断される。当該判断は、例えば、第2の切換部34をオンに設定したタイミングからの経過時間が、所定の基準時間に到達したか否かにより行うことができる。このステップ2において否定判定された場合、すなわち、補助電源33に所定の電力が供給されていない場合には、再度ステップ2の判断を行う。一方、補助電源33に所定の電力が供給されると、ステップ2において肯定判定されるため、ステップ3(S3)に進む。
ステップ3において、定着制御部36は、第2の切換部34をオフに設定する。第2の切換部34のオフにともない、第2の電源ラインL2が遮断されるため、補助電源33への交流電力の供給が遮断される。
図4は、定着装置30における定着温度制御に関する一連の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、起動制御の終了後、定着制御部36によって実行される。
まず、ステップ10(S10)において、定着制御部36は、発熱体31に通電を開始しそれを継続する点灯制御の開始を指示する。
ここで、発熱体31の点灯制御に関して図5を参照して説明する。図5は、点灯制御の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、前述のステップ10による点灯制御の開始指示に対応して、定着制御部36により開始される。
まず、ステップ20(S20)において、定着制御部36は、充電判定フラグFlagが「1」に設定されているか否か判断する。この充電判定フラグFlagは、放電された補助電源33に対して充電中か否かを示すフラグである。この充電判定フラグFlagは、初期的には、充電中ではないことを示す「0」にセットされている。また、この充電判定フラグFlagは、後述するステップ13(S13)の肯定判定に従い、点灯制御の開始指示が再度なされる場合には、「0」にリセットされる。このステップ20において否定判定された場合、すなわち、充電判定フラグFlagが「0」である場合には、ステップ21(S21)に進む。一方、あるタイミングで充電判定フラグFlagが「0」から「1」に一旦変更されると、それ以降は、当該充電判定フラグFlagが「0」に変更されるまで、ステップ20の肯定判定に従い、後述するステップ28(S28)に進む。
ステップ21において、定着制御部36は、第1の切換部32をオフに設定する。つぎに、ステップ22(S22)において、定着制御部36は、第2の切換部34をオフに設定する。そして、ステップ23(S23)において、定着制御部36は、第3の切換部35をオンに設定する。第1及び第2の切換部32,34のオフにともない、第1及び第2の電源ラインL1,L2が遮断される。このため、発熱体31及び補助電源33に対する交流電源100からの交流電力の供給は遮断される。一方、第3の切換部35のオンにともない、第3の電源ラインL3が接続される。このため、補助電源33のコンデンサに蓄積された電荷が、第3の電源ラインL3を介して発熱体31への供給電力として放出される。すなわち、第3の電源ラインL3を介した補助電源33からの直流電力が、発熱体31に対して供給される。
ステップ24(S24)において、定着制御部36は、第3の切換部35がオンに設定されたタイミングからの経過時間が所定時間に到達したか否かを判断する。ステップ24において肯定判定された場合、すなわち、経過時間が所定時間に到達した場合には、ステップ25(S25)に進む。一方、ステップ24において否定判定された場合、すなわち、経過時間が所定時間に到達していない場合には、ステップ24の判断を再度行う。
ステップ25において、定着制御部36は、第3の切換部35をオフに設定する。第3の切換部35のオフにともない、第3の電源ラインL3が遮断されるため、発熱体31に対する補助電源33からの直流電力の供給が遮断される。
ステップ26(S26)において、定着制御部36は、第1の切換部32をオンに設定する。第1の切換部32のオンにともない、第1の電源ラインL1が接続されるため、第1の電源ラインL1を介した交流電源100からの交流電力が、発熱体31に対して供給される。
ステップ27において、定着制御部36は、補助電源33の充電プロセスに先立ち、充電判定フラグFlagを「1」にセットする。
ステップ28(S28)において、定着制御部36は、第2の切換部34をオンに設定する。第2の切換部34のオンにともない、第2の電源ラインL2が接続されるため、補助電源33に交流電源100からの交流電力が供給され、これにより、補助電源33の充電が開始される。
ステップ29(S29)において、定着制御部36は、前述のステップ2の処理と同様に、補助電源33に所定の電力が供給されたか否かを判断する。ステップ29において否定判定された場合、すなわち、補助電源33に所定の電力が供給されていない場合には、ステップ29の判断を再度行う。一方、補助電源33に所定の電力が供給されると、ステップ29において肯定判定されるため、ステップ30(S30)に進む。
ステップ30において、定着制御部36は、第2の切換部34をオフに設定する。第2の切換部34のオフにともない、第2の電源ラインL2が遮断されるため、補助電源33への交流電力の供給が遮断される。
ステップ31(S31)において、定着制御部36は、補助電源33が充電した電力が所定の電力範囲内であるか否かを判断する。このステップ31において肯定判定された場合、すなわち、補助電源33の電力が所定の電力範囲内である場合、ステップ31の判断を再度行う。一方、ステップ31において否定判定された場合、すなわち、補助電源33の電力が所定の電力範囲内でない場合には、ステップ28以降の一連のプロセスを実行する。
再び図4を参照するに、ステップ11(S11)において、定着制御部36は、定着温度が目標温度に到達したか否かを判断する。この目標上限温度は、定着温度を管理するための参照温度として予め設定される一定の値であり、実験やシミュレーションを通じて、定着装置30に適した値が予め設定されている。このステップ11において否定判定された場合、すなわち、定着温度が目標温度に到達していない場合には、ステップ11の判断を再度行う。一方、ステップ11において肯定判定された場合、すなわち、定着温度が目標温度に到達した場合には、ステップ12(S12)に進む。
ステップ12において、定着制御部36は、発熱体31への通電を終了する消灯制御の開始を指示する。
ここで、発熱体31の消灯制御に関して図6を参照して説明する。図6は、消灯制御の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、前述のステップ12による消灯制御の開始指示に対応して、定着制御部36により開始される。
ステップ40(S40)において、定着制御部36は、定着制御部36は、第1の切換部32をオフに設定する。第1の切換部32のオフにともない、第1の電源ラインL1が遮断される。このため、発熱体31に対する交流電源100からの交流電力の供給が遮断される。
再び図4を参照するに、ステップ13において、定着制御部36は、定着温度が目標温度よりも低下したか否かを判断する。このステップ13において否定判定された場合、すなわち、定着温度が目標温度よりも低下していない場合には、ステップ13の判断を再度行う。一方、ステップ13において肯定判定された場合、すなわち、定着温度が目標温度よりも低下した場合には、本ルーチンを抜け、再度、ステップ10以降の一連のプロセスを実行する。
このように本実施形態において、定着制御部36は、第1の電源ラインL1を介した交流電源100からの交流電力又は第3の電源ラインL3を介した補助電源33からの直流電力の何れか一方を発熱体31に対して選択的に供給することができる。
かかる構成によれば、交流電源100からの交流電力のみならず、これにかえて、補助電源33からの直流電力を発熱体31に対して供給することができる。直流電力を発熱体31に対して供給することで、発熱体31を直接的に加熱し、これにより、発熱体31の抵抗を増加させることができる。特に、補助電源33からの直流電力が供給される発熱体31の通電部(ハロゲンランプであればフィラメント)は、交流電源100からの交流電力が供給される発熱体31の通電部(ハロゲンランプであればフィラメント)と同一であるため、直流電力により、交流電力が供給される発熱体31を直接的に加熱することができる。このような発熱体31の抵抗の増加により、突入電流抑制抵抗を用いずとも、発熱体31に交流電源100からの交流電流を供給する際の突入電流を抑制することができる。その結果、フリッカー対策を適切になし得ることができる。これにより、エネルギー損失を抑制しつつ、フリッカー対策を適切に達成することができる。
また、本実施形態において、定着制御部36は、発熱体31への通電時、補助電源33からの直流電力を発熱体に対して初期的に供給してから補助電源33からの直流電力の供給を停止し、その後、交流電源100からの交流電力を発熱体31に対して供給している。フリッカー現象は、発熱体31への通電初期時に顕著となるため、発熱体31への通電時に、このような順番で電力を供給することにより、フリッカー対策を有効になし得ることができる。
また、補助電源33は、交流電力を直流電力に変換する電力変換手段と、当該変換された直流電力を蓄電又は放電する蓄電手段とで構成されている。補助電源33から電力を供給するためには、電気的なエネルギーを貯える必要があるが、前述の通り、補助電源33が交流電流を出力するのではなく、直流電力を出力する構成としたことで、直流電力を蓄電又は放電する蓄電手段を利用して、電気的なエネルギーを貯えることができる。また、補助電源33からの直流電流を発熱体31に供給し続けた場合には、発熱体31(特にハロゲンランプ)の劣化を招来する虞があるが、補助電源33からの直流電力から、交流電源100からの交流電力へと切り換えることができるので、発熱体の劣化を抑制することができる。
なお、上述した実施形態では、蓄電手段として、コンデンサを使用しているが、直流電力を蓄電又は放電することができるものを広く用いることができる。蓄電手段としては、例えば2次電池を利用することができる。
また、本実施形態において、定着制御部36は、定着温度を管理するための参照温度として一定の値を用いて定着温度制御を行っている。定着温度制御、すなわち、発熱体31への通電制御は、定着温度を管理するための参照温度に基づいて行われる。ここで、参照温度を一定値として定着温度制御を行った場合には、オンオフの切換回数が増加する傾向となるため、突入電流抑制抵抗を用いたのみでは、フリッカー対策が不十分となる虞がある。そこで、従来の手法では、参照温度を上限温度と下限温度とで規定される所定の温度範囲とすることで、オンオフの切換回数の増加を抑制し、これにより、フリッカー対策を講じることとしていたが、一方で、定着温度の温度リップルが生じるという問題がある。
この点、本実施形態によれば、補助電源33によりフリッカー対策を適切に達成することができるので、参照温度として所定の範囲ではなく一定の値を用いることができる。これにより、参照温度に対する定着温度の応答性を高めることができるので、温度リップルも効果的に抑制することができる。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態にかかる定着装置30の発熱体31への給電構成を模式的に示すブロック図である。この第2の実施形態にかかる定着装置30が、第1の実施形態のそれと相違する点は、発熱体31への通電に伴い補助電源33から発熱体31へと電力を供給した後に、発熱体31に対して供給する電力を補助電源33側から交流電源100側へと切り換えるタイミングを所定の条件により決定した点である。なお、第1の実施形態と重複する構成については省略することしし、以下、相違点を中心に説明を行う。
図7に示すように、この定着装置30は、第1の実施形態に示す構成に加えて、電流を検出する電流センサ37aと、電圧を検出する電圧センサ37bとをさらに有している。電流及び電圧を検出する検出部としての電流センサ37a及び電圧センサ37bは、第3の電源ラインL3の一部として機能する第1の電源ラインL1上における第2接続点と発熱体31との間にそれぞれ設けられている。
定着制御部36は、電流センサ37aによって検出される電流値及び電圧センサ37bによって検出される電圧値を読み込むことができる。これにより、定着制御部36は、読み込んだ電流値及び電圧値に基づいて、発熱体31の抵抗値を演算することができる。そして、定着制御部36は、演算される発熱体31の抵抗値が所定の判定抵抗値に到達したことを条件に、発熱体3への電力の供給を補助電源33から交流電源100へと切り換える。すなわち、前述の第1の実施形態では、所定時間の経過を条件に(ステップ24)、発熱体3への電力の供給を補助電源33から交流電源100へと切り換えているが(ステップ25,26)、本実施形態では、発熱体31の抵抗値に基づいて、発熱体3への電力の供給を補助電源33から交流電源100へと切り換えている。
図8は、総抵抗値とフリッカー測定値との関係を示す説明図である。同図に示すデータは、突入電流抑制抵抗と発熱体抵抗との合計である総抵抗値と、所定の測定器により計測したフリッカー測定値との関係を示すものであり、発熱体を1000W程度の条件としている。突入電流抑制抵抗を用いる場合において、突入電流抑制抵抗を序々に増加させていくと、フリッカー測定値は一旦減少し、総抵抗値が22Ωで極小値を迎え、その後に増加するという傾向を示す。これは、突入電流抑制抵抗により発熱体への電力供給が制限されるため、フィラメントの温度増加、すなわち、抵抗値増加が不十分な状態となっており、その後、発熱体のみに電力を供給することで、大きな突入電流が発生するためである。
したがって、この事象を本実施形態の定着装置30に適用すると、総抵抗値、すなわち、発熱体31の抵抗が22Ω以上であれば、発熱体31への電力の供給を補助電源33から交流電源100へと切り換えたときに突入電流が発生しても、フリッカー規格を満足することができる。そこで、このような観点から、前述した所定の判定抵抗値を、例えば22Ωと定めることができる。
このように本実施形態において、定着制御部36は、発熱体31の抵抗値に基づいて、発熱体31に対して供給する電力を補助電源33側から交流電源100側に切り換える切換タイミングを決定している。より具体的には、定着制御部36は、発熱体31の抵抗値が、所定の判定抵抗値に到達したことを条件に、発熱体31に対して供給する電力を切り換えている。かかる構成によれば、適切なタイミングで電力の供給元を切り換えることができるので、フリッカー対策を有効になし得ることができる。
図9は、発熱体31への通電を開始した後又は発熱体への通電を終了した後の発熱体31の抵抗値変化量ΔRの推移を示す説明図である。同図に示すように、発熱体31への通電を開始すると、すなわち、発熱体31への電力供給を開始すると、フィラメントの温度増加に伴い、抵抗値も増加する。一方、発熱体31への通電を終了すると、すなわち、発熱体への電力供給を遮断すると、フィラメントの温度低下に伴い、抵抗値も低下する。
一方、第1の切換部32と、第3の切換部35とが同時にオンとなると、補助電源33に破損の危険が生じる。ここで、第1及び第3の切換部32,35として機械的な接点よりなるリレーを想定した場合、チャタリングを考慮すると、第1及び第3の切換部32,35は、完全にオン又はオフするのに50mSが必要となる。この時間を第1及び第3の切換部32,35にそれぞれ割り振ると、第1の切換部32と第3の切換部35との間に最大で100mSの時間が存在することとなる。
図9に示すように、100mSを経過した後の抵抗値変化量ΔRは15Ωである。そのため、定着制御部36は、発熱体31の抵抗値が37Ω以上になったときに第3の切換部35をオフに設定し、その後、第1の切換部32をオンに設定することにより、当該第1の切換部32が完全にオンしたときには、発熱体31の抵抗値が22Ωになっていることになる。そこで、このような観点から、前述した所定の判定抵抗値を、例えば37Ωと定めることができる。
このように本実施形態において、定着制御部36は、フリッカー規格を具備するための抵抗値(例えば22Ω)と、第1の切換部32と第3の切換部35との切換時間差の間に低下する抵抗値(例えば15Ω)とに基づいて、判定抵抗値を設定している。かかる構成によれば、適切なタイミングで電力の供給元を切り換えることができるので、フリッカー対策を有効になし得ることができる。
ところで、前述した手法では、発熱体31の抵抗値に基づいて切換タイミングを決定している。しかしながら、補助電源33に充電される電力(充電量)に基づいて、切換タイミングを決定してもよい。例えば、発熱体31へ電力供給を開始した際の補助電源33の電力をP1とする。また、電力供給が開始された発熱体31の抵抗値が前述の判定抵抗値に到達するまでに必要な電力をP2とする。この場合、定着制御部36は、補助電源33の充電量が電力P1から電力P2を差し引いた電力(P1−P2)以下になったことを条件として、電力の切り換えを行うといった如くである。
例えば、補助電源33の蓄電手段としてコンデンサを利用する場合、図10に示すように、定着制御部36は、電荷の放出に伴うコンデンサの蓄積エネルギーの状態を規定する関係式を保持する。この場合、補助電源33から電力の供給を開始してから、発熱体31の抵抗値が前述の判定抵抗値に到達するまでに、必要なエネルギーを斜線部の面積とする。そうすると、残余の面積から、所定のエネルギーに相当する補助電源33の充電量から、発熱体31の抵抗値が前述の判定抵抗値に到達したタイミングを把握することができる。
このように本実施形態において、定着制御部36は、補助電源33の蓄電手段の充電量に基づいて、発熱体31に対して供給する電力を補助電源33側から交流電源100側に切り換える切換タイミングを決定している。これにより、適切なタイミングで電力の供給元を切り換えることができるので、フリッカー対策を有効になし得ることができる。
また、補助電源33の電力供給を開始してから、発熱体31の抵抗値が前述の判定抵抗値へと到達するまでの時間を、実験やシミュレーションを通じて予め取得しておくことで、定着制御部36は、かかる時間を参照時間として保持しておく。そして、定着制御部36は、補助電源33の電力供給を開始してからの経過時間が、参照時間に到達すること条件に、切り換え条件を判断してもよい。
もっとも、補助電源33に使用するコンデンサの種類に応じて、又は補助電源33としてコンデンサではなく2次電池を使用した場合には、前述の参照時間は異なる。また、冬期の早朝での使用シーンや、夏期の連続稼働中とった使用シーンといったように、環境温度に応じも、前述の参照時間は異なる。そこで、季節や日付といった情報や環境温度に対応する適切な参照温度を、実験やシミュレーションを通じて予め取得しておき、定着制御部36は、かかる情報を保持しておく。そして、定着制御部36は、図11に示すように、定着装置30の周囲温度を検出する環境温度検出部38a、並びに、日付及び時刻をカウントする時刻カウンタ38bを参照することで、現在の環境に応じた参照時間を用いることが好ましい。
なお、上述した実施形態では、定着装置30として発熱体31を単体で備える構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、用紙Pの搬送方向と直交する方向において、中央部と、その両側に相当する端部とのそれぞれに発熱体31とを配置してもよい。この場合、図12に示すように、発熱体31毎に、第1の切換部32、補助電源33、第2の切換部34及び第3の切換部35を設け、これを一つのユニットU1,U2として構成すればよい。この場合、定着制御部36は、各ユニットU1,U2にそれぞれ設ける必要はなく、各ユニットU1,U2をそれぞれ制御すれば足りる。
以上、本発明の実施形態にかかる画像形成装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。また、前述した画像形成装置に適用可能な定着装置も、本発明の一部をとして機能する。さらに、定着制御部は独立した構成してもよいが、画像形成装置に組み込んで使用する場合には、この機能をメイン制御部が実現する構成であってもよい。