JP5654957B2 - 点火プラグ - Google Patents

点火プラグ Download PDF

Info

Publication number
JP5654957B2
JP5654957B2 JP2011166556A JP2011166556A JP5654957B2 JP 5654957 B2 JP5654957 B2 JP 5654957B2 JP 2011166556 A JP2011166556 A JP 2011166556A JP 2011166556 A JP2011166556 A JP 2011166556A JP 5654957 B2 JP5654957 B2 JP 5654957B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal shell
agent
spark plug
nickel layer
seizure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011166556A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013030402A (ja
Inventor
児玉 和宏
和宏 児玉
弘哲 那須
弘哲 那須
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NGK Spark Plug Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NGK Spark Plug Co Ltd filed Critical NGK Spark Plug Co Ltd
Priority to JP2011166556A priority Critical patent/JP5654957B2/ja
Publication of JP2013030402A publication Critical patent/JP2013030402A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5654957B2 publication Critical patent/JP5654957B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Spark Plugs (AREA)

Description

本発明は、内燃機関等に使用させる点火プラグに関する。
点火プラグは、例えば、内燃機関(エンジン)等に取付けられ、燃焼室内の混合気への着火のために用いられる。一般に点火プラグは、軸孔を有する絶縁体と、軸孔の先端側に挿通される中心電極と、絶縁体の外周に設けられる主体金具と、主体金具に接合され、中心電極との間で火花放電間隙を形成する接地電極とを備える。
また、耐食性の向上を図るべく、主体金具の表面に、ニッケルを主成分とする金属からなるニッケル層を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。さらに、ニッケル層とともに、クロム成分を含んでなるクロメート層を設けることで、耐食性の更なる向上を図る技術も提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
特開2002−184552号公報 特開2006−286370号公報
ところで近年では、二酸化炭素の排出抑制等を図るべく、内燃機関等の燃料としてエタノール等のアルコールが含有されたものを用いることがある。このような燃料を用いる場合には、酸による主体金具の腐食を防止する必要があるが、ニッケル層だけでは十分な酸に対する耐食性(耐酸食性)を得ることができないおそれがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、主体金具の外表面に、ピンホール数が所定値以下とされたニッケル層を設けるとともに、所定の成分を含有する焼付き防止剤を塗布することで、優れた耐酸食性を実現することができる点火プラグを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成の点火プラグは、軸線方向に延びる筒状をなす主体金具を備え、
前記主体金具は、
自身の先端側外周に形成された雄ねじ部と、
前記雄ねじ部よりも前記軸線方向後端側に形成され、径方向外側に突出する座部と、
前記座部よりも前記軸線方向後端側に形成され、軸直交断面形状が多角形状をなし、工具と係合するための複数の平面部を有する工具係合部と、
自身の外表面に設けられ、ニッケルを主成分とする金属からなるニッケル層とを備える点火プラグであって、
前記ニッケル層は前記平面部において、ピンホールの数が単位表面積当たり75点/cm以下とされるとともに、
前記主体金具の先端から前記座部までの前記軸線に沿った距離をLとしたとき、前記主体金具の先端から前記軸線に沿ってL/3後端側までの間に位置する前記主体金具の外周表面領域の80%以上に、炭化水素系の有機成分を媒体とする焼付き防止剤が塗布され、
前記焼付き防止剤は、前記雄ねじ部の後端よりも前記軸線方向先端側に設けられ、
前記焼付き防止剤には、グラファイトが含有されるとともに、
前記焼付き防止剤中における前記グラファイトの含有量をA質量%とし、前記焼付き防止剤中におけるニッケル、アルミニウム、亜鉛、及び、銅の総含有量をX質量%としたとき、X/A≦2.0を満たし、
前記焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量が、0.1mg/cm以上45mg/cm以下とされることを特徴とする。
尚、「ニッケル層の単位表面積当たりのピンホールの数」とあるのは、JIS H8617に規定されるフェロキシル試験に基づいて計測される1cm2当たりのはん点数をいう。具体的には、所定の試験液に浸した所定の試験紙を、主体金具の工具係合部の平面部(ニッケル層)に張り付け、5分後に試験紙を剥がす。そして、試験紙を水洗後水分を吸い取り、試験紙上に現れた青色はん点について1cm2当たりのはん点数を算出する。すなわち、はん点の径が1mm未満のものは、はん点1個につき1点とし、はん点の径が1mm以上3mm未満のものは、はん点1個につき3点とし、はん点の径が3mm以上5mm未満のものは、はん点1個につき10点とし、得られた点数を試験紙のうち平面部に張付けられた部分の面積(cm2)で除算することにより、1cm2当たりのはん点数を算出することができる。例えば、径が1mm未満のものがa個、径が1mm以上3mm未満のものがb個あり、試験紙のうち平面部に張付けられた部分の面積がS(cm2)である場合、ニッケル層の単位表面積当たりのピンホールの数は、(a×1+b×3)/S(点/cm2)となる。尚、ピンホール数の測定対象を平面部としているのは、平面部は比較的大きな平面であり、計測作業が容易であることによる。
上記構成1によれば、主体金具の外表面には、ニッケル層が設けられるとともに、ニッケル層における単位表面積当たりのピンホール数が75点/cm2以下とされている。従って、主体金具の表面に対し、酸や酸による腐食の要因となる酸素との接触をより確実に抑制することができる。
さらに、主体金具の先端から軸線に沿ってL/3後端側までの間に位置する主体金具の外周表面領域(すなわち、燃料が付着しやすく、腐食が特に懸念される部位)の80%以上に焼付き防止剤が塗布されており、当該焼付き防止剤には、グラファイト(C)が含有されている。ここで、主体金具を構成する金属よりもグラファイトの方が酸化しやすいため、グラファイトが率先して酸化し、酸素ゲッターとして機能することで、主体金具の表面に対する酸素の接触を一層抑制することができる。その結果、ニッケル層のピンホール数が75点/cm2以下とされることと相俟って、優れた耐酸食性を実現することができる。
加えて、X/A≦2.0を満たすように構成されており、焼付き防止剤中におけるNiやAl等の総含有量に対して、グラファイトが十分に多く含有されている。そのため、焼付き防止剤中においてNiやAl等の金属成分が安定的に存在することとなる。従って、焼付き防止剤の塗布性を向上させることができ、点火プラグを内燃機関等に取付ける際などにおいて、塗布された焼付き防止剤が一層取れにくくなる。その結果、上述の優れた耐酸食性をより確実に発揮させることができる。
また、上記構成1によれば、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量が0.1mg/cm 2 以上とされている。従って、焼付き防止剤を設けることによる上記作用効果がより確実に発揮されることとなる。
一方で、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を過度に多くしてしまうと、点火プラグを内燃機関等に取付ける際に、焼付き防止剤がはみ出して点火プラグの座部に付着してしまい、座部の摩擦力が低下してしまうおそれがある。座部の摩擦力が低下してしまうと、所定の取付トルクにて点火プラグを取付けた場合であっても、点火プラグが回転しすぎてしまい、内燃機関等に対して点火プラグを適正な位置に取付けることができないおそれがある。
この点、上記構成1によれば、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量が45mg/cm 2 以下とされているため、焼付き防止剤のはみ出しをより確実に防止することができる。その結果、点火プラグをより確実に適正な位置に取付けることができる。
尚、焼付き防止剤中に、NiやAl等を含有させなくてもよいが、耐酸食性の更なる向上を図るという面では、焼付き防止剤にNiやAl等を含有させることが好ましい。比較的高融点のNi等を含有させることで、焼付き防止剤の耐熱性を向上させることができ、内燃機関の動作時等における焼付き防止剤の揮発をより確実に防止することができる。また、焼付き防止剤中に含有されたNiやAl等は不動態皮膜を形成するため、耐酸食性をより高めることができる(尚、不動態皮膜によりアルカリに対する耐食性も向上する)。
構成2.本構成の点火プラグは、上記構成1において、X≧25を満たすことを特徴とする。
上記構成2によれば、NiやAl等の総含有量が25質量%以上とされている。従って、焼付き防止剤の揮発を一層確実に防止できるとともに、不動態皮膜がより形成されやすくなる。その結果、耐酸食性の更なる向上を図ることができる。
構成3.本構成の点火プラグは、上記構成1又は2において、前記ニッケル層、及び、前記焼付き防止剤間には、含有されるクロム成分のうち95質量%以上が三価クロムである三価クロメート層が設けられることを特徴とする。
上記構成3によれば、ニッケル層及び焼付き防止剤間に三価クロメート層が設けられているため、耐食性をより一層向上させることができる。
構成4.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記ニッケル層、及び、前記焼付き防止剤間には、炭素(C)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、及び、硫黄(S)のうちの少なくとも一種を含有する防錆油層が設けられることを特徴とする。
上記構成4によれば、ニッケル層及び焼付き防止剤間に、CやBa等のうち少なくとも一種を含有する油からなる防錆油層が設けられている。従って、耐食性をさらに向上させることができる。
構成5.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記ニッケル層は前記平面部において、ピンホールの数が単位表面積当たり25点/cm2以下とされることを特徴とする。
上記構成5によれば、主体金具の表面に対し、酸や酸素との接触を一層効果的に抑制することができ、耐酸食性をより一層向上させることができる。
構成6.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記ニッケル層は前記平面部において、ピンホールの数が単位表面積当たり10点/cm2以下とされることを特徴とする。
上記構成6によれば、主体金具の表面に対し、酸や酸素との接触を極めて効果的に抑制することができ、耐酸食性の飛躍的な向上を図ることができる。
構成.本構成の点火プラグは、上記構成1乃至のいずれかにおいて、アルコールを含有する燃料を用いた内燃機関に用いられることを特徴とする。
上記構成のように、アルコールを含有する燃料を用いた内燃機関に利用される点火プラグは、酸による腐食が特に懸念されるが、上記構成1等を採用することで、点火プラグの酸による腐食をより確実に防止することができる。換言すれば、優れた耐酸食性を有する上記構成1等の点火プラグは、アルコールを含有する燃料が用いられ、酸による腐食が特に懸念される内燃機関に対して特に好適に用いられる。
(a)は、点火プラグの構成を示す一部破断正面図であり、(b)は、点火プラグの構成を示す正面図である。 主体金具の表面に設けられたニッケル層等を示す部分拡大断面図である。 ニッケル層や焼付き防止剤等を示す部分拡大断面図である。 三価クロメート層や防錆油層を示す部分拡大断面図である。
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1(a)は、点火プラグ1の一部破断正面図であり、図1(b)は、点火プラグ1の正面図である。尚、図1(a),(b)では、点火プラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を点火プラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
点火プラグ1は、筒状をなす絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。また、本実施形態において、点火プラグ1は、アルコール(例えば、エタノール)が含有された燃料を用いる内燃機関に主として利用される。
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。加えて、絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。そして、中胴部12と脚長部13との連接部にはテーパ状の段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されており、当該軸孔4の先端側には中心電極5が挿入、固定されている。中心電極5は、熱伝導性に優れる銅や銅合金等からなる内層5A、及び、ニッケル(Ni)を主成分とするNi合金からなる外層5Bにより構成されている。さらに、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端面が平坦に形成されるとともに、絶縁碍子2の先端から突出している。
また、軸孔4の後端側には、絶縁碍子2の後端から突出した状態で端子電極6が挿入、固定されている。
さらに、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状の抵抗体7が配設されている。当該抵抗体7の両端部は、導電性のガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
加えて、前記主体金具3は、低炭素鋼等の金属により形成されており、軸線CL1方向に延びる筒状をなしている。また、主体金具3の先端側外周には点火プラグ1を燃焼装置(例えば、内燃機関や燃料電池改質器等)の取付孔に取付けるための雄ねじ部15が形成されている。さらに、雄ねじ部15の後端側の外周面には径方向外側に突出する座部16が形成され、雄ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。
加えて、座部16の軸線CL1方向後端側には、軸線CL1と直交する断面において、断面多角形状(本実施形態では、断面六角形状)をなす工具係合部19が設けられている。工具係合部19は、主体金具3を前記燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具が係合される部位であり、工具と係合するための複数(本実施形態では、6つ)の平面部19Aが設けられている。また、工具係合部19の後端側には、絶縁碍子2を保持するための加締め部20が径方向内側に向けて屈曲形成されている。
さらに、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。尚、絶縁碍子2及び主体金具3双方の段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
また、主体金具3の先端部26には、自身の中間部が曲げ返されて、先端部側面が中心電極5の先端部と対向する接地電極27が接合されている。接地電極27は、Ni合金〔例えば、インコネル600やインコネル601(いずれも登録商標)〕によって形成された外層27Aと、前記Ni合金よりも良熱導電性金属である銅合金や純銅等によって形成された内層27Bとから構成されている。
加えて、中心電極5の先端部と接地電極27の先端部との間には、火花放電間隙28が形成されており、当該火花放電間隙28にて軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるようになっている。
また、図2に示すように、主体金具3の表面には、バレルメッキ法によるメッキ処理が施されることで、Niを主成分とする金属からなるニッケル層31が設けられている(尚、図2では、図示の便宜上、ニッケル層31を通常よりも厚く示している)。ニッケル層31は、所定の厚さ(例えば、5μm〜15μm)を有しており、主体金具3の外表面全域に形成されている。
さらに、本実施形態において、ニッケル層31は、ピンホールの数が単位表面積当たり75点/cm2以下(好ましくは、25点/cm2以下。より好ましくは、10点/cm2以下)とされている。ここで、「ニッケル31層の単位表面積当たりのピンホールの数」は、JIS H8617に規定されるフェロキシル試験に基づいて計測される1cm2当たりのはん点数をいう。尚、ニッケル31層の単位表面積当たりのピンホール数は、工具係合部19の平面部19Aに設けられたニッケル層31を計測対象とすることで、容易に計測することができる。また、メッキ処理時における通電時間を長くする(例えば、8分以上とする)一方で、直流電流の電流密度を低め(例えば、0.04A/dm2以下)に設定することで、単位表面積当たりのピンホールの数を低減することができる。加えて、ニッケル層31のピンホール数を測定するにあたっては、主体金具3の先端面に設けられたニッケル層31を対象としてもよく、本実施形態においては、ニッケル層31の全域において、ピンホール数が単位表面積当たり75点/cm2以下とされている。
さらに、図3に示すように、主体金具3の先端から座部16までの軸線CL1に沿った距離をLとしたとき、主体金具3の先端から軸線CL1に沿ってL/3後端側までの間に位置する主体金具3の外周表面領域の80%以上(本実施形態では、主体金具3の先端から雄ねじ部15の後端までの全域)に、焼付き防止剤32が塗布されている(尚、図3では、図示の便宜上、ニッケル層31や焼付き防止剤32を通常よりも厚く示している)。
焼付き防止剤32は、炭化水素系の有機成分を媒体とするものであり、グラファイト(C)が含有されている。また、焼付き防止剤32中におけるグラファイトの含有量をA(質量%)とし、焼付き防止剤32中におけるNi、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、及び、銅(Cu)の総含有量をX(質量%)としたとき、X/A≦2.0を満たすように構成されている。本実施形態では、X≧25を満たすように構成されているが、X<25を満たすように構成してもよく、焼付き防止剤32中にNi、Al、Zn、及び、Cuのいずれも含有されないように構成してもよい(すなわち、X=0としてもよい)。
尚、焼付き防止剤32中における有機成分(媒体)やグラファイト、Ni等の含有量は、例えば、次のようにして計測することができる。すなわち、所定の溶剤(例えば、n−ヘキサン)により抽出された有機成分を重量測定することで、焼付き防止剤32中における有機成分(媒体)の含有量を計測することができる。また、前記所定の溶剤により抽出されなかった成分(無機成分)を、所定の装置(例えば、堀場製作所製炭素硫黄分析装置)を用いて、酸素中でガス化させることでCO2を発生させるとともに、発生したCO2を赤外線で吸収することにより、焼付き防止剤32中におけるグラファイトの含有量を計測することができる。さらに、所定の溶剤により抽出されなかった無機成分を、酸に溶解させて水溶液とした上で、プラズマ状態にしたアルゴン雰囲気中に前記水溶液を噴射し、所定の装置(例えば、サーモフィッシャー社製ICP発光分析装置)を用いて、各金属の有する特定波長を分析することにより、焼付き防止剤32中におけるNi等の含有量を計測することができる。
さらに、本実施形態では、焼付き防止剤32の単位面積当たりの塗布量が、0.1mg/cm2以上45mg/cm2以下とされている。尚、焼付き防止剤32の単位面積当たりの塗布量は、主体金具3のうち焼付き防止剤32の塗布された部分の表面積と、焼付き防止剤32の重量とを測定した上で、前記塗布された部分の表面積により前記焼付き防止剤32の重量を除算することで求めることができる。
加えて、図4に示すように、ニッケル層31と焼付き防止剤32との間には、含有されるクロム成分のうち95質量%以上が三価クロムである三価クロメート層33が設けられている(尚、図4でも、図示の便宜上、ニッケル層31や焼付き防止剤32等を通常よりも厚く示している)。また、ニッケル層31(三価クロメート層33)と焼付き防止剤32との間には、炭素(C)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、及び、硫黄(S)のうち少なくとも一種を含有してなる防錆油が塗布されることで、防錆油層34が設けられている。尚、三価クロメート層33及び防錆油層34のうち一方のみを設けることとしてもよいし、三価クロメート層33及び防錆油層34を設けず、ニッケル層31上に焼付き防止剤32を設けてもよい。
次に、上記のように構成されてなる点火プラグ1の製造方法について説明する。まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状の金属素材(例えば、S17CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)に冷間鍛造加工等を施すことにより貫通孔を形成し、概形を製造する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
続いて、主体金具中間体の先端面に、Ni合金等からなる直棒状の接地電極27が抵抗溶接される。当該溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位に雄ねじ部15が転造によって形成される。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。
さらに、接地電極27の溶接された主体金具3に対して、バレルメッキ法によるメッキ処理が施され、主体金具3の外表面にニッケル層31が形成される。メッキ処理に際しては、硫酸ニッケル(NiSO4)や塩化ニッケル(NiCl2)、ホウ酸(H3BO3)を含む酸性(pHが4.0±0.2程度)のメッキ用水溶液が貯留されたメッキ槽と、壁面が網や穴開き板などにより形成され、前記メッキ用水溶液の液中に浸漬される保持容器とを備えたバレルメッキ装置(図示せず)が用いられる。具体的には、前記保持容器に主体金具3を収容し、主体金具3をメッキ用水溶液中に浸漬する。そして、所定のモータにより前記保持容器を回転させながら、主体金具3に対して所定時間に亘って直流電流を流すことにより、主体金具3の表面全域にニッケル層31を形成する。
尚、本実施形態では、メッキ処理に際して、通電時間を長くする一方で、直流電流の電流密度を低めに設定することで、ニッケル層31が上述した所定厚さを有するとともに、ニッケル層31の単位表面積当たりのピンホール数が十分に少なくなるようにされている。
さらに、メッキ槽に重クロム酸ナトリウムを含むメッキ用水溶液が貯留されたバレルメッキ装置を用いて、所定の電流密度にて所定時間に亘ってメッキ処理を施すことで、ニッケル層31上に三価クロメート層33を形成する。
また、前記主体金具3とは別に、絶縁碍子2を成形加工しておく。例えば、アルミナを主体としバインダ等を含む原料粉末を用い、成形用素地造粒物を調製し、これを用いてラバープレス成形を行うことで、筒状の成形体が得られる。得られた成形体に対し、研削加工を施すことにより整形するとともに、整形されたものを焼成炉にて焼成することで、絶縁碍子2が得られる。
また、前記主体金具3、絶縁碍子2とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、中央部に放熱性向上を図るための銅合金等を配置したNi合金を鍛造加工して中心電極5を作製する。
そして、上記のようにして得られた絶縁碍子2に対して、中心電極5、端子電極6、及び、抵抗体7が、ガラスシール層8,9によって封着固定される。ガラスシール層8,9としては、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調製されており、当該調製されたものが抵抗体7を挟むようにして絶縁碍子2の軸孔4内に注入された後、後方から端子電極6で押圧しつつ、焼成炉内にて加熱されることで、中心電極5等が封着固定される。尚、このとき、絶縁碍子2の後端側胴部10表面に釉薬層を同時に焼成することとしてもよいし、事前に釉薬層を形成することとしてもよい。
その後、主体金具3に対して、その後端側から絶縁碍子2を挿入した上で、主体金具3の後端部を押圧し、当該後端部を径方向内側に向けて屈曲させること(すなわち、加締め部20を形成すること)により、絶縁碍子2と主体金具3とが固定される。
次いで、接地電極27を中心電極5側に屈曲させるとともに、中心電極5と接地電極27との間に形成された火花放電間隙28の大きさを調整する。そして、主体金具3(少なくとも雄ねじ部15)を、CやBa等を含む防錆油に所定時間(例えば、10分間)浸漬するとともに、浸漬後、所定時間(例えば、15分間)放置し、次いで、遠心乾燥させることで防錆油層34を設ける。最後に、炭化水素系の有機成分を媒体とし、グラファイト等を含有する焼付き防止剤32を主体金具3の少なくとも先端部に塗布することで、上述した点火プラグ1が得られる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、ニッケル層31における単位表面積当たりのピンホール数が75点/cm2以下とされている。従って、主体金具3の表面に対し、酸や酸による腐食の要因となる酸素との接触をより確実に抑制することができる。
さらに、主体金具3の先端から軸線CL1に沿ってL/3後端側までの間に位置する主体金具3の外周表面領域(すなわち、燃料が付着しやすく、腐食が特に懸念される部位)の80%以上に焼付き防止剤32が塗布されており、当該焼付き防止剤32には、グラファイトが含有されている。ここで、主体金具3を構成する金属よりもグラファイトの方が酸化しやすいため、グラファイトが率先して酸化し、酸素ゲッターとして機能することで、主体金具3の表面に対する酸素の接触を一層抑制することができる。その結果、ニッケル層31のピンホール数が75点/cm2以下とされていることと相俟って、優れた耐酸食性を実現することができる。
加えて、X/A≦2.0を満たすように構成されており、焼付き防止剤32中におけるNiやAl等の総含有量に対して、グラファイトが十分に多く含有されている。そのため、焼付き防止剤32中においてNiやAl等の金属成分が安定的に存在することとなる。従って、焼付き防止剤32の塗布性を向上させることができ、上述の優れた耐酸食性をより確実に発揮させることができる。
また、焼付き防止剤32にNiやAl等が含有されているため、焼付き防止剤32の耐熱性を向上させることができ、内燃機関の動作時等における焼付き防止剤32の揮発をより確実に防止することができる。また、焼付き防止剤32中に含有されたNiやAl等が不動態皮膜を形成することで、耐酸食性をより高めることができる。特に本実施形態では、NiやAl等の総含有量が25質量%以上とされているため、上記作用がより確実に、かつ、より効果的に奏されることとなる。
加えて、ニッケル層31及び焼付き防止剤32間に三価クロメート層33及び防錆油層34の双方が設けられているため、耐食性をより効果的に向上させることができる。
併せて、焼付き防止剤32の単位面積当たりの塗布量が0.1mg/cm2以上とされているため、上述した耐酸食性の向上効果がより一層確実に発揮されることとなる。さらに、焼付き防止剤32の単位面積当たりの塗布量が45mg/cm2以下とされているため、座部16に対する焼付き防止剤32のはみ出しをより確実に防止することができる。その結果、点火プラグ1を内燃機関等に対してより確実に適正な位置に取付けることができる。
次いで、上記実施形態で奏される作用効果を確認すべく、ニッケル層を設けた一方で、焼付き防止剤を塗布しなかった主体金具のサンプルA(比較例に相当する)と、ニッケル層及び焼付き防止剤を設けた主体金具のサンプルB(実施例に相当する)と、ニッケル層及び焼付き防止剤を設けるとともに、両者の間に三価クロメート層を設けた主体金具のサンプルC(実施例に相当する)と、ニッケル層及び焼付き防止剤を設けるとともに、両者の間に防錆油層を設けた主体金具のサンプルD(実施例に相当する)と、ニッケル層及び焼付き防止剤を設けるとともに、両者の間に三価クロメート層及び防錆油層を設けた主体金具のサンプルE(実施例に相当する)とを作製し、各サンプルについてJIS H8502に規定される試験方法に基づく耐酸食性評価試験を行った。
尚、耐酸食性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、各サンプルを所定の腐食液〔塩化ナトリウム濃度を50±5(g/L)とし、酢酸によりPHを3.0に調整したもの〕を噴霧した雰囲気に6時間、12時間、又は、18時間に亘って放置し、主体金具の表面に赤錆が発生するか否かを確認した。ここで、赤錆の発生が確認されなかったサンプルは、耐酸食性に極めて優れるとして「☆」の評価を下し、赤錆が発生していたものの、赤錆が発生した部位の面積(赤錆発生面積)が主体金具の表面積の5%以下と十分に小さかったものは、耐酸食性に優れるとして「◎」の評価を下すこととし、赤錆発生面積が主体金具の表面積の5%超10%以下となったものは、十分な耐酸食性を有するとして「○」の評価を下すこととした。一方で、赤錆発生面積が主体金具の表面積の10%超となったものは、耐酸食性に劣るとして「×」の評価を下すこととした。
尚、各サンプルともに、メッキ処理時の通電時間や電流密度を変更することで、ニッケル層における単位表面積当たりのピンホール数を種々変更した。また、焼付き防止剤は、グラファイトの含有量(A質量%)を25質量%とする一方で、Niの含有量(X質量%)を変更することで、X/Aの値を種々変更した。さらに、焼付き防止剤を塗布したサンプルにおいては、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を5mg/cm2とし、防錆油層を設けたサンプルにおいては、防錆油の単位面積当たりの塗布量を0.5mg/cm2とした。
さらに、グラファイトの含有量を25質量%とする一方で、Niの含有量を変更することで、X/Aの値を種々変更した焼付き防止剤が塗布された主体金具のサンプルを作製し、各サンプルについて塗布性評価試験を行った。塗布性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、主体金具の先端から雄ねじ部の後端にかけての部位に焼付き防止剤を塗布した上で、内燃機関(アルミブッシュ)に対してサンプルを取付けた。その後、内燃機関からサンプルを取外した上で、焼付き防止剤を塗布した領域を観察した。ここで、前記領域の全域において焼付き防止剤が付着していた場合には、焼付き防止剤は優れた塗布性を有するとして「○」の評価を下すこととした。一方で、前記領域において焼付き防止剤が付着していない部分が存在していた場合には、焼付き防止剤の塗布性が不十分であり、耐酸食性の低下を招くおそれがあるとして「×」の評価を下すこととした。
表1に、腐食液を噴霧した雰囲気へのサンプルの放置時間を6時間とした際の耐酸食性評価試験の試験結果を示し、表2に、放置時間を12時間とした際の耐酸食性評価試験の試験結果を示し、表3に、放置時間を18時間とした際の耐酸食性評価試験の試験結果を示す。さらに、表4に、塗布性評価試験の試験結果を示す。
Figure 0005654957
Figure 0005654957
Figure 0005654957
Figure 0005654957
表4に示すように、X/Aの値を2.0超としたサンプルは、焼付き防止剤の塗布性に劣ることが分かった。これは、媒体中に含有されたNiは、グラファイト(C)の存在により安定して存在可能となるところ、グラファイトの含有量よりもNi含有量が多すぎたため、Niが不安定化してしまったことによると考えられる。また、表1〜表3に示すように、X/Aの値を2.0超としたサンプルは、塗布性が不十分であったことに伴い、耐酸食性も劣ることが確認された。
さらに、表1に示すように、ニッケル層における単位表面積当たりのピンホール数を75点/cm2超としたサンプルは、耐酸食性に劣ることが分かった。これは、ニッケル層に多くのピンホール(穴)が形成されていたため、主体金具が、自身の表面の比較的広範囲において腐食液や酸素と接触してしまったためであると考えられる。
これに対して、ピンホール数を75点/cm2以下とするとともに、X/Aを2.0以下としたサンプルは、焼付き防止剤の塗布性に優れ、また、十分な耐酸食性を有することが分かった。優れた塗布性を有していたのは、Ni含有量に対してグラファイト含有量が十分に大きくされていたため、媒体中においてNiが安定的に存在できたためであると考えられる。また、十分な耐酸食性を実現できたのは、ピンホール数の低減により主体金具の表面のうち腐食液や酸素と接触する部分が減少したこと、及び、主体金具よりも酸化しやすいグラファイトが率先して酸化することで、主体金具の表面に対する酸素の接触をより抑制できたことによると考えられる。
また、表2に示すように、ニッケル層のピンホール数を25点/cm2以下としたサンプルは、腐食液を噴霧した雰囲気へのサンプルの放置時間を12時間とした場合(すなわち、より腐食が生じやすい条件)であっても、腐食が発生しにくく、より優れた耐酸食性を有することが分かった。また、表3に示すように、ニッケル層のピンホール数を10点/cm2以下としたサンプルは、放置時間を18時間として極めて腐食が生じやすい条件とした場合であっても、腐食が生じにくく、非常に優れた耐酸食性を有することが分かった。
さらに、三価クロメート層を設けたサンプルCや防錆油層を設けたサンプルDは、耐酸食性に一層優れ、特に、三価クロメート層及び防錆油層の双方を設けたサンプルEは、耐酸食性に非常に優れることが確認された。
加えて、Niの含有量を25質量%以上とすることで、耐酸食性をさらに向上できることが明らかとなった。これは、Niが酸に対して不動態皮膜を形成し、主体金具と酸との接触をより一層抑制できたことによると考えられる。
次いで、グラファイトを25質量%含有するとともに、Niに代えて、Al、Zn、Cu、Al及びZn、Al及びCu、Zn及びCu、又は、Al、Cu及びZnを含有する7種類の焼付き防止剤を作製した。そして、各焼付き防止剤を用いて、ニッケル層及び焼付き防止剤を設けた主体金具のサンプルBと、ニッケル層、焼付き防止剤、及び、三価クロメート層を設けた主体金具のサンプルCと、ニッケル層、焼付き防止剤、及び、防錆油層を設けた主体金具のサンプルDと、ニッケル層、焼付き防止剤、三価クロメート層、及び、防錆油層を設けた主体金具のサンプルEとを作製し、各サンプルについて、上述の耐酸食性評価試験及び塗布性評価試験を行った。表5に、腐食液を噴霧した雰囲気へのサンプルの放置時間を6時間とした際の耐酸食性評価試験の試験結果を示し、表6に、放置時間を12時間とした際の耐酸食性評価試験の試験結果を示し、表7に、放置時間を18時間とした際の耐酸食性評価試験の試験結果を示す。また、表8に、塗布性評価試験の試験結果を示す。
尚、各サンプルともに、ニッケル層におけるピンホール数を0点/cm2とした。また、焼付き防止剤に含有されるAl等の総含有量を50質量%とし、X/Aの値を2.0とした。
Figure 0005654957
Figure 0005654957
Figure 0005654957
Figure 0005654957
表5〜表7に示すように、各サンプルともに、ニッケル層のピンホール数を0点/cm2とするとともに、焼付き防止剤にNiを50質量%含有させたサンプル(表1〜表3参照)と同様に、優れた耐酸食性を備えることが確認された。また、表8に示すように、各サンプルともに優れた塗布性を有することが分かった。
上記試験の結果より、優れた塗布性を実現するとともに、耐酸食性の向上を図るためには、ニッケル層におけるピンホール数を単位表面積当たり75点/cm2以下とするとともに、焼付き防止剤にグラファイトを含有し、焼付き防止剤中におけるグラファイトの含有量をA質量%とし、焼付き防止剤中におけるNi、Al、Zn、及び、Cuの総含有量をX質量%としたとき、X/A≦2.0を満たすように構成することが好ましいといえる。
また、耐酸食性の更なる向上を図るという観点から、ニッケル層におけるピンホール数を単位表面積当たり25点/cm2以下とすることがより好ましく、ニッケル層におけるピンホール数を単位表面積当たり10点/cm2以下とすることがより一層好ましいといえる。
さらに、耐酸食性の一層の向上を図るべく、ニッケル層及び焼付き防止剤間に三価クロメート層や防錆油層を設けることがより好ましく、ニッケル層及び焼付き防止剤間に三価クロメート層及び防錆油層の双方を設けることがより一層好ましいといえる。
加えて、Ni、Al、Zn、及び、Cuの総含有量を25質量%以上とすることが、一層優れた耐酸食性を実現するという面で好ましいといえる。
次いで、上記サンプルB〜Eについて、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を種々変更したものを作製し、各サンプルについて上述の耐酸食性評価試験を行った。さらに、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を種々変更した点火プラグのサンプルを内燃機関に取付けた際の、座部に対する焼付き防止剤のはみ出しの有無を確認した。ここで、座部に対して焼付き防止剤がはみ出してしまったサンプルは、座部の摩擦力が低下し、所定の取付トルクにて点火プラグを内燃機関等に取付けた際に、点火プラグを適正な位置に取付けることができないおそれがあるとして「×」の評価を下すこととした。一方で、座部に対する焼付き防止剤のはみ出しが確認されなかったサンプルは、座部の摩擦力が低下することなく、点火プラグを適正な位置へとより確実に取付けることができるとして「○」の評価を下すこととした。表9に、耐酸食性評価試験の試験結果を示し、表10に、焼付き防止剤のはみ出しの有無を示す。尚、耐酸食性評価試験は、腐食液を噴霧した雰囲気へのサンプルの放置時間を24時間とし、主体金具の腐食が極度に生じやすい条件とした。また、各サンプルともに、焼付き防止剤におけるグラファイト含有量を25質量%とし、Niの含有量を50質量%とし、ニッケル層のピンホール数を0点/cm2とした。
Figure 0005654957
Figure 0005654957
表9に示すように、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を0.1mg/cm2以上としたサンプルは、主体金具の腐食が極度に生じやすい環境においても、主体金具の腐食が生じにくいことが分かった。これは、単位面積当たりに十分なグラファイトが存在することとなり、主体金具に対する酸素の接触が効果的に防止されたことによると考えられる。
また特に、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を5mg/cm2以上とすることで、耐酸食性を一層向上させることができ、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を20mg/cm2以上とすることで、耐酸食性を飛躍的に向上できることが確認された。
加えて、表10に示すように、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を45mg/cm2以下とすることで、焼付き防止剤のはみ出しを抑制でき、内燃機関等に対して点火プラグをより確実に適正位置に取付可能となることが明らかとなった。
上記試験の結果より、耐酸食性をより一層向上させるべく、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を0.1mg/cm2以上とすることが好ましく、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を5mg/cm2以上とすることがより好ましく、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を20mg/cm2以上とすることがより一層好ましいといえる。
また、焼付き防止剤のはみ出しを防止するためには、焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量を45mg/cm2以下とすることが好ましいといえる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)主体金具3に雄ねじ部15を形成する際の転造加工などにより、ニッケル層31を設ける前段階において、主体金具3の表面には油などの不純物が付着し得る。この点を考慮して、上述したニッケル層31を設けるメッキ処理の前段階に、主体金具3に対してニッケルストライク処理を施し、主体金具3の表面に薄膜のニッケルストライク層を設けることとしてもよい。ニッケルストライク処理は、例えば、NiSO4やNiCl2、H3BO3、HClを含む強酸性(pHが1以下)のメッキ用水溶液を用いてバレルメッキ処理を施すものであり、ニッケルストライク処理を施すことで、主体金具3の表面に付着した不純物を除去することができる。その結果、主体金具3に対するニッケル層31の密着性をより向上させることができ、耐食性を一層向上させることができる。
(b)上記実施形態では、主体金具3の先端部に接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
(c)上記実施形態では、工具係合部19は断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状は、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。
1…点火プラグ
3…主体金具
15…雄ねじ部
16…座部
19…工具係合部
19A…平面部
31…ニッケル層
32…焼付き防止剤
33…三価クロメート層
34…防錆油層
CL1…軸線

Claims (7)

  1. 軸線方向に延びる筒状をなす主体金具を備え、
    前記主体金具は、
    自身の先端側外周に形成された雄ねじ部と、
    前記雄ねじ部よりも前記軸線方向後端側に形成され、径方向外側に突出する座部と、
    前記座部よりも前記軸線方向後端側に形成され、軸直交断面形状が多角形状をなし、工具と係合するための複数の平面部を有する工具係合部と、
    自身の外表面に設けられ、ニッケルを主成分とする金属からなるニッケル層とを備える点火プラグであって、
    前記ニッケル層は前記平面部において、ピンホールの数が単位表面積当たり75点/cm以下とされるとともに、
    前記主体金具の先端から前記座部までの前記軸線に沿った距離をLとしたとき、前記主体金具の先端から前記軸線に沿ってL/3後端側までの間に位置する前記主体金具の外周表面領域の80%以上に、炭化水素系の有機成分を媒体とする焼付き防止剤が塗布され、
    前記焼付き防止剤は、前記雄ねじ部の後端よりも前記軸線方向先端側に設けられ、
    前記焼付き防止剤には、グラファイトが含有されるとともに、
    前記焼付き防止剤中における前記グラファイトの含有量をA質量%とし、前記焼付き防止剤中におけるニッケル、アルミニウム、亜鉛、及び、銅の総含有量をX質量%としたとき、X/A≦2.0を満たし、
    前記焼付き防止剤の単位面積当たりの塗布量が、0.1mg/cm以上45mg/cm以下とされることを特徴とする点火プラグ。
  2. X≧25を満たすことを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
  3. 前記ニッケル層、及び、前記焼付き防止剤間には、含有されるクロム成分のうち95質量%以上が三価クロムである三価クロメート層が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の点火プラグ。
  4. 前記ニッケル層、及び、前記焼付き防止剤間には、炭素、バリウム、カルシウム、ナトリウム、及び、硫黄のうちの少なくとも一種を含有する防錆油層が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の点火プラグ。
  5. 前記ニッケル層は前記平面部において、ピンホールの数が単位表面積当たり25点/cm2以下とされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火プラグ。
  6. 前記ニッケル層は前記平面部において、ピンホールの数が単位表面積当たり10点/cm2以下とされることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の点火プラグ。
  7. アルコールを含有する燃料を用いた内燃機関に用いられることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の点火プラグ。
JP2011166556A 2011-07-29 2011-07-29 点火プラグ Active JP5654957B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011166556A JP5654957B2 (ja) 2011-07-29 2011-07-29 点火プラグ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011166556A JP5654957B2 (ja) 2011-07-29 2011-07-29 点火プラグ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013030402A JP2013030402A (ja) 2013-02-07
JP5654957B2 true JP5654957B2 (ja) 2015-01-14

Family

ID=47787241

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011166556A Active JP5654957B2 (ja) 2011-07-29 2011-07-29 点火プラグ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5654957B2 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0192092U (ja) * 1987-12-10 1989-06-16
JP4418586B2 (ja) * 2000-12-14 2010-02-17 日本特殊陶業株式会社 スパークプラグ及びその製造方法
JP2005285490A (ja) * 2004-03-29 2005-10-13 Ngk Spark Plug Co Ltd スパークプラグおよびその製造方法
JP4685817B2 (ja) * 2006-03-13 2011-05-18 日本特殊陶業株式会社 スパークプラグおよびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013030402A (ja) 2013-02-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5331114B2 (ja) 内燃機関用スパークプラグ
JP4728437B1 (ja) スパークプラグ、スパークプラグ用の主体金具、及び、スパークプラグの製造方法
JP4805400B1 (ja) スパークプラグ及びスパークプラグ用の主体金具
JP5156094B2 (ja) スパークプラグ
WO2012035701A1 (ja) スパークプラグ及びスパークプラグ用主体金具
JP4625531B1 (ja) スパークプラグ
JP2008053018A (ja) 内燃機関用スパークプラグ
JP2008053017A (ja) 内燃機関用スパークプラグ
JP5001963B2 (ja) 内燃機関用スパークプラグ。
JP4866265B2 (ja) 内燃機関用スパークプラグ
JP5469691B2 (ja) 点火プラグ
JP5654957B2 (ja) 点火プラグ
JP5167334B2 (ja) スパークプラグ
JP2013016296A (ja) 点火プラグ及びガスケット
JP4906957B1 (ja) スパークプラグ
JP6242278B2 (ja) スパークプラグ
JP5134044B2 (ja) 内燃機関用スパークプラグ
WO2012026049A1 (ja) スパークプラグ
JP5662983B2 (ja) 点火プラグ
US20240186769A1 (en) Metallic shell and spark plug
JP5523390B2 (ja) スパークプラグ
CN116632659A (zh) 火花塞用主体配件和火花塞
JP5597227B2 (ja) 点火プラグ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130826

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140225

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140408

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140812

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20141007

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141028

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141121

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5654957

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250