JP5653612B2 - カーテンバッグ - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の側面が他の自動車や障害物と衝突したとき、主として乗員の頭部を保護するために、自動車の側面窓部と乗員との間にバッグを膨張させて乗員の頭部の衝撃を緩和するカーテンバッグ(インフレータブルカーテンやカーテンエアバッグとも称される)、特に前記衝突時、乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であっても十分な保護性能を発揮するとともに、カーテンバッグが膨張展開時に乗員に傷害を与える可能性を低減したカーテンバッグに関する。
現在生産されている殆どの乗用自動車には、自動車の前面が他の自動車や障害物と衝突(正面衝突)した際に、乗員と自動車車内構造物との間に急速に袋体を膨張させて乗員の安全を図るために、所謂運転席用および助手席用エアバッグが搭載されている。
近年この正面衝突だけでなく、自動車の側面が他の自動車や障害物と衝突(側面衝突)した際の乗員の頭部などを保護するために、自動車の側面窓部上の天井部やピラー部に折り畳んで収納されているカーテンバッグが衝突時に側面窓部を覆うように膨張するカーテンバッグシステムが本格的に搭載され始めている。
従来、カーテンバッグの一例として、特許文献1に示されるものが知られている。この特許文献1のカーテンバッグは、図12に示すように、コーティングを施した2枚の布を、外周縁部に設けられてバッグの外周形状を規定する外周接合部と、外周接合部の内側に設けられた内側接合部とで接合したものとなっている。内側接合部は、膨張部(ガスの導入により膨張される部分)の膨張形状を規定するもので、外周接合部と連続した直線、曲線または両者を組み合わせたU字型に設けられている。また、特許文献1に示されるカーテンバッグは、カーテンバッグの後方上部に、ガス発生器(インフレータ)が接続されるガス流入孔を有している。
新たなカーテンバッグとして、特許文献2に示されるものが知られている。この特許文献2のカーテンバッグは外周縁部に設けられてバッグの外周形状を規定する外周接合部と、外周接合部の内側に設けられた相互に独立した複数のドット状内側接合部とで接合したものとなっている。ドット状内側接合部を設けることで、ガス発生器(インフレーター)からのガス流入がスムーズで迅速であり、展開が早いという特徴を有している。
上記外周接合部と内側接合部の形成には、ミシン縫製による方式や、ジャガード機を搭載した織機を利用し、所定の位置、形状に製織段階で織り糸を交錯させて接合部を形成する方式(以下OPW方式と称する)が実用化されている。また、バックの上部にガス流入孔を有するタイプもある。さらに、カーテンバッグシステムには、単に側面衝突した直後のみ乗員を保護する方式(ファーストインパクト対応型)と、側面衝突後に自動車が横転した場合も乗員の保護に配慮する方式(ロールオーバー対応型)の二種類の方式がある。
米国特許第6010149号明細書 国際公開第2009/008350号
ところで、側面衝突を想定した場合に、乗員と、乗員が打ちつけられる自動車車内構造物との距離は、乗員と側面窓部との間の距離となる。これは、正面衝突を想定した場合の運転席の乗員とステアリングホイールとの間の距離や、助手席の乗員とインパネ間の距離に比べて小さい。このため、カーテンバッグに対する重要な要求性能の一つに、短時間に必要な部分に適正にガスが流れ、乗員の頭部がバッグと接触する迄に所定の内圧に膨張することが求められている。
ところが、従来のカーテンバッグは、図12に示すように、外周接合部と連続した直線、曲線または両者を組合せたU字型の少数の内側接合部により、数個の比較的大きな膨張部を形成している。このため、バッグ内のガスの流速が遅く、ガス発生器からのガスを短時間に膨張部に分配することが困難である。特に、内側接合部をU字型とし、セルまたはキャビンと称される膨張部を形成したカーテンバッグにおいては、あるキャビンは膨張しているが他の膨張すべきキャビンは未だ膨張過程にあるという現象が起こる。
また、ガス発生器からのガスを素早く適正に分配することができないため、局部的な内圧の上昇が起こり、当該部分周りの外周接合部や内側接合部に過度な負荷が掛かることになる。さらに、従来のカーテンバッグは膨張部が数個であり、一つの膨張部分の容積が大きいため、外周接合部や内側接合部に掛かる負荷が大きくなる。
したがって、従来のカーテンバッグでは、局部的な内圧の上昇や膨張部の容積が大きいことにより、外周接合部や内側接合部に局所的に過度の負荷が加わりやすく、バッグが膨張する過程でバーストすることがある。また、バーストに至らないまでも、コーティング膜の部分的な破損や剥離によりガスが流出し、乗員の保護に必要な所定の内圧が得られない場合を生じる。特に、ロールオーバー対応型カーテンバッグでは、所定の時間所定の内圧を維持することが困難になることがある。
このため、カーテンバッグ内に一般にインナーチューブと称される、ガス分配部材をガス発生器の導管に取付け、上記現象を低減させる方法もある。しかし、バッグは重くなり、収納性も低下し、且つバッグのコストも上昇する。また、OPW方式のバッグでは、上記現象に対処するため、織物の強度のアップと、外周接合部や内側接合部の目開きによるガスリーク防止を図っているが、そのためには、高繊度の糸で高密度の織物とし、且つ多量のコーティング剤を塗布する必要がある。ミシン縫製型バッグでも、部分的な補強を行い、且つ外周接合部や内側接合部の2枚の布の間に厚いシール材を挟み縫い合わせている。いずれにしても、かかる対処の結果としてバッグは重くなり、且つ嵩高く収納性が悪くなり、またコストも上昇することになる。
従来のカーテンバッグでは、しばしば膨張部を、図13に示すように、U字型のキャビンとすることがある。この形状のバッグの場合、同図Xで示す領域のように、特定の経糸および/または特定の緯糸に、他の経糸および/または他の緯糸に比べて、外周接合部101や内側接合部102が形成される比率が高くなる場合がある。
OPW方式のカーテンバッグの外周接合部や内側接合部は、2枚の布の織り糸を交錯させて1枚に織ってあり、布が2枚に分離している膨張部に比して織密度が2倍となるため、織糸の屈曲率は外周接合部や内側接合部の方が膨張部よりも大きくなる。このため外周接合部や内側接合部を形成することの多い経糸(または緯糸)は、外周接合部や内側接合部を形成することの少ない経糸(または緯糸)に比べて、製織段階でより高い張力で織り込まれる結果、織物内に歪みが内在し、両者の間で引きつりや皺を発生させることがある。この引きつりや皺は、以降の工程での不都合の原因となる。例えばコーティング工程ではコーティング剤の塗布ムラの発生原因となり、裁断工程では所定の形状寸法への裁断不良の発生原因となる。
また、外周接合部や内側接合部が特定の経糸(または緯糸)に集中する比率が高い場合は、カーテンバッグが膨張する段階で外周接合部や内側接合部と膨張部との境界部に応力集中を起こし易く、当該部分がカーテンバッグ破断の起点となることがある。ミシン縫製タイプのカーテンバッグでは、通常の平織物を製織、コーティング加工、裁断後に2枚の布を縫合するため、OPW方式のように製織段階での歪みは内在しないが、外周接合部や内側接合部(縫合部)が特定の経糸(または緯糸)に集中する比率が高い場合は、上記と同様に、外周接合部や内側接合部と膨張部との荷重−伸び率特性が異なるので、当該部分に応力集中を起こしやすくなる。
さらに、従来のカーテンバッグは、内側接合部が数個であるため、自動車の形状、特にルーフ形状や乗員の着座位置に応じて、衝突試験においてダミー頭部の傷害値が基準値以下となるようカーテンバッグのデザインを決める必要がある。このため車種毎にカーテンバッグ形状決定のために多大の設計、試験工数や期間を要することになる。
また、現行法規では、ダミーの着座姿勢は規定の正規着座姿勢で傷害値基準を満たせば良いことになっているが、現実には乗員の着座姿勢は非常に様々であり、姿勢如何では十分な保護効果を期待できない可能性を秘めている。
さらに、自動車に対するより高い安全性を求める要求に対応するために、カーテンバッグに求められる性能は一層厳しいものとなっている。例えば、膨張展開中及び/または膨張展開後に乗員にカーテンバッグが与える傷害をより軽減させることが要求されている。殊に乗員が規定の正規着座姿勢でない場合、膨張展開中のカーテンバッグが乗員の頭部に接触し、頭部、顔面、頚部等に傷害を与える可能性を秘めている。特に乗員が窓枠によりかかっている場合、膨張展開中のカーテンバッグが頭部上部に落下し、その力によって頚部に過大な荷重が加わり、最悪の場合、死に至る可能性を秘めている。
本発明は、カーテンバッグにおいて、外周接合部や内側接合部に対して局所的に過度の負荷を加えることなく、短時間で必要な膨張状態が得られるようにすること、さらに衝突時、乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であっても十分な保護性能を発揮するとともに、カーテンバッグが膨張展開時に、乗員に対して傷害を与える可能性を低減させることを目的とする。
本発明は、少なくとも2枚の布が、少なくとも外周縁部に設けられた外周接合部と、該外周接合部の内側に設けられた内側接合部で相互に接合されたカーテンバッグにおいて、カーテンバッグの長手方向に平行な少なくとも2本以上の任意の直線上に、外周接合部及び相互に独立した少なくとも2個の内側接合部が設けられており、前記任意の直線状の少なくとも2個の内側接合部間の距離がカーテンバッグの上部に存在する直線上に対し、カーテンバッグの下部に存在する直線上で長くなることを特徴とするカーテンバッグを提供するものである。
本発明のカーテンバッグは、カーテンバッグの長手方向に平行な少なくとも2本以上の任意の直線上に、外周接合部及び相互に独立した少なくとも2個の内側接合部が設けられたことにより、衝突時、乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であっても十分な保護性能を発揮するとともに、カーテンバッグが膨張展開時に乗員に与える傷害を低減させる効果が高い。
さらには、ガス発生器からのガスを短時間に膨張部に分配することが可能であり、接合部に過大な応力集中を起こすことなく、カーテンバッグが安定して損傷なくより早く膨張し、有効に乗員の衝撃の吸収が可能となる。また、この応力集中の低減により、より原糸の低繊度化や、織物の低密度化、さらにはコーティング量の削減が可能となり、カーテンバッグの軽量化や収納性の向上が期待できる。さらに、乗員の頭部を保護する部分のエリアが大きくなり、カーテンバッグの設計や試験の工数、期間を大幅に低減できる。
本発明に係るカーテンバッグの第1の例を示す図である。 本発明に係るカーテンバッグの第2の例を示す図である。 内側接合部の形状例を示す図である。 内側接合部の膨張部との境界付近の織組織の一例を示す図である。 内側接合部の膨張部との境界付近より内側の織組織の一例を示す図である。 格子織またはリップストップと称する織組織の一例を示す図である。 実施例で使用した内側接合部の膨張部との境界付近の織組織を示す図である。 実施例で使用した内側接合部の膨張部との境界付近より内側の織組織を示す図である。 実施例で使用したバッグの折り畳み状態を示す図である。 インナー部材の一例を示す図である。 インナー部材の他のアレイを示す図である。 米国特許第6010149号明細書記載の従来のカーテンバッグの模式図である。 従来の他のカーテンバッグの模式図である。 実施例で使用したカーテンバッグの模式図である。 カーテンバッグを構成する布の経糸方向の説明図である。 比較例で使用したカーテンバッグの模式図である。
本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明のカーテンバッグは、少なくとも2枚の布が、少なくとも外周縁部に設けられた外周接合部と、該外周接合部の内側に設けられた内側接合部で相互に接合されており、カーテンバッグの長手方向に平行な少なくとも2本以上の任意の直線上に、外周接合部及び相互に独立した少なくとも2個の内側接合部が設けられており、前記任意の直線状の少なくとも2個の内側接合部間の距離がカーテンバッグの上部に存在する直線上に対し、カーテンバッグの下部に存在する直線上で長くなるものである。
本発明のカーテンバッグに使用する布は要求される特性を満たせば、特に限定されないが、好ましくは織物である。布に用いられる原糸は、特に限定するものではないが、ポリアミド系、ポリエステル系などの合繊長繊維が好ましい。固体のガス発生剤を使用するパイロタイプインフレータや高圧ガスと固体ガス発生剤を併用するハイブリッドインフレータを使用する場合は、ガス発生器からの高温のガスや燃焼残渣による溶融が懸念されるため、ナイロン66繊維がより好ましい。
原糸の繊度についても特に限定するものではないが、78〜940dTexが好ましく、235〜475dTexがより好ましい。78dTex以上であれば、ガス発生器から噴出するガスによる力学的負荷や、前記パイロタイプインフレータやハイブリッドタイプインフレータを使用する場合は、高温のガスや燃焼残渣などによる熱的負荷にも耐えられる。また、940dTex以下であれば、強度的にも満足でき、高密度に製織しても経糸緯糸の交錯点が多く、作動時内圧による外周接合部や内側接合部の目開きが起こりにくく、当該部分よりガスの流出の恐れがない。また、出来上がった織物は薄く、軽くなり、カーテンバッグの収納性が向上する。
製織時の経糸は、ミシン縫製方式でカーテンバッグを製造する場合は、通常の平織物とするので原糸のまま使用しても良く、場合によってはオイリングやワキシング、あるいはサイジングして使用することが好ましい。OPW方式でカーテンバッグを製造する場合は、2枚の布を同時に製織しながら、2枚の布の所定部分の経糸、緯糸を交錯させて外周接合部や内側接合部を形成するため、外周接合部や内側接合部の織密度は膨張部の2倍の密度となり、製織中の経糸への負荷が大きく、糸が毛羽立ち易く織欠点が多発することや、場合によっては原糸の切断が起こるため、サイジングを施すことが好ましい。
織密度は、使用する原糸の繊度により適切に選択すればよいが、例えば470dTexでは、経緯合わせて90〜110本/2.54cm、350dTexでは125本/2.54cm前後、235dTexでは145本/2.54cm前後が好ましい。この織密度範囲であれば製織が容易になり、製織性や織物品位が向上する。また、前記ガス発生器から噴出するガスによる力学的負荷や熱的負荷に耐え得る。
カーテンバッグの場合はカーテンバッグを出来るだけ早く膨張させる必要があり、さらにロールオーバー対応タイプのカーテンバッグでは、一定時間所定内圧を保持する必要があり、布自体や、外周接合部や内側接合部からのガス流出を防止するため、後述するコーティング加工が施されることが好ましい。上記織密度範囲では、コーティング剤が織物内部に浸透する量が適度であり、織物表面に連続したコーティング皮膜が形成し易くなり、気密性が向上する。
織密度は必ずしも経緯同数とする必要はなく、製織効率または噴出するガスによる力学的負荷の方向を勘案し、密度差をつけてもよい。
本発明に係るカーテンバッグは、カーテンバッグの長手方向に平行な少なくとも2本以上の任意の直線上に、外周接合部及び相互に独立した少なくとも2個の内側接合部が設けられたものである。長手方向の基準は最も距離の離れた2箇所の取付け用タブの穴位置を結んだ直線である。少なくとも2本以上の任意の直線は上記長手方向の基準である直線に平行であることが必要である。該任意の直線上に、外周接合部及び相互に独立した少なくとも2個の内側接合部が設けられていることが肝要である。好ましくは2〜5個である。少なくとも2個の内側接合部の全体が該任意の直線上にある必要はなく、内側接合部の一部が該直線上に存在すればよい。
本発明において、前記任意の直線上の少なくとも2個の内側接合部間の距離が、カーテンバッグの上部に存在する直線上に対し、カーテンバッグの下部に存在する直線上で長くなることが肝要である。任意の直線が3本以上設けられている場合は、上部から下部に従い、順次、内側接合部間の距離が長くなることが必要であり、所謂、片仮名の「ハ」の字状に設けられていることが必要である。この形状であれば、衝突時、乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であっても十分な保護性能を発揮するとともに、カーテンバッグが膨張展開時に乗員に傷害を与える可能性を低減させる形状の設計が容易に可能である。特に乗員が窓枠によりかかっている場合、膨張展開中のカーテンバッグが頭部上部に落下しても、「ハ」の字状の内側接合部が起点になり、カーテンバッグに容易に皺が生じ、衝撃を吸収するため、膨張展開時に乗員に傷害を与える可能性を低減させることが可能である。さらにガス発生器からのガス流入が「ハ」の字状の内側接合部に沿って流れるようになり、頭部にガスの圧力が加わりにくくなるため、膨張展開時に乗員に傷害を与える可能性を低減させることが可能である。カーテンバッグの上部とは、前記取付け用タブに近い部分を意味する。
本発明において、前記少なくとも2個の内側接合部が、少なくとも前席乗員が接触するカーテンエアバッグのフロント部に設けられていることが好ましい。具体的形状を図1に例示するが、本形状に限定されるものではない。図中5は任意の直線を示し、該直線上のカーテンエアバッグのフロント部6に内側接合部2が各々2個設けられている。
本発明において、前記任意の直線は少なくとも2本以上であることが肝要であり、図2に示すように〜10本であることが好ましい。図中5a、5b、5cは任意の直線を示し、該直線上でフロント部6に内側接合部2が各々2個設けられている。任意の直線が〜10本であれば、カーテンバッグに要求される保護性能を満たしながら、不必要に容量が大きくならないカーテンバッグの設計が容易に可能である。本発明は図2に限定されるものではない。
本発明において、前記任意の直線上の少なくとも2個の内側接合部間の距離が3〜100cmであることが好ましい。任意の直線上に3個以上の内側接合部が設けられている場合は、相互の距離が全て3〜100cmであることが好ましく、特に10〜100cmであることが好ましい。この範囲であれば、カーテンバッグに要求される保護性能を満たしながら、不必要に容量が大きくならないカーテンバッグの設計が容易に可能である。内側接合部間の距離とは、前記任意の直線に沿って測った最短距離を意味する。
本発明において、少なくとも前記任意の直線上の少なくとも2個の内側接合部が相互に独立したドット状内側接合部であることが好ましい。該内側接合部がドット状で且つお互いに独立していれば、ガス発生器からのガスを短時間に膨張部に分配することが可能であり、外周接合部及び/または内側接合部に過大な応力集中を起こすことなく、カーテンバッグが安定して損傷なくより早く膨張展開することが可能となる。そのために、衝突時、乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であったために、早くカーテンバッグに接触したり、正規のカーテンバッグの保護部分以外に接触しても、十分な保護性能が発揮できる。カーテンバッグが膨張展開時に乗員に接触しても、ガスの流れを阻害しないために、乗員を避ける形でガスが流れやすく、乗員に傷害を与える可能性を低減することが可能である。特に、窓によりかかった乗員の頭部にカーテンバッグが膨張展開しながら落下した場合でも乗員の頭部及び/または頚部への傷害を低減することが可能である。
殊に前記任意の直線が3本以上設けられており、上部から下部に従い、順次、ドット状内側接合部間の距離が長くなることが好ましい。具体的形状を図に例示するが、本形状に限定されるものではない。図中、5a〜5cは任意の直線を示し、該直線上に略円形のドット状内側接合部2aが各々2個設けられており、5a上のドット状内側接合部間の距離に対し、5b、5cと順次、該距離が長くなるように設けられている。この形状であれば、窓によりかかった乗員の頭部にカーテンバッグが膨張展開しながら落下した場合、ドット状内側接合部間をガスが流れることができるため、過大なガス内圧に起因する圧縮力が頭部に負荷することを抑制できる。このため、乗員の頭部及び/または頚部への傷害を低減する。さらに、該形状であれば、膨張展開時にドット状内側接合部を起点にして、カーテンバッグの長手方向に皺が発生しやすく、カーテンバッグの幅方向の剛性が低下し、乗員の頭部及び/または頚部への傷害を低減する。
本発明において、前記ドット状内側接合部は、2枚の布を構成する織り糸の交錯または縫製または接着により2枚の布を一体化して形成した非膨張部分で、非膨張部分全面で上下の布が一体化されている箇所と、非膨張部を囲んで上下の布が一体化され、内部は一体化されていない箇所の両者を含む。ドット状内側接合部は、直線または曲線の線分として形成する他、図に示されるような形状に形成することができる。例えば円形、楕円形、四角形、菱形、多角形またはこれらを部分的に変形した形状とすることができる。ドット状内側接合部に応力が集中しがたいことから、円形、楕円形が好ましい。殊に円形が好ましいが、アスペクト比(長径/短径)が5以下の楕円形も好ましい。本発明において、ドット状内側接合部は、これらの形状の全面を織り糸の交錯または縫製により一体化したものでも、これらの形状の外周縁だけを織り糸の交錯または縫製により一体化し、内部は一体化されていないがガスで膨張しない非膨張部としたものでもよい。
本発明において、カーテンバッグに流入するガスをフロント部とリア部へ分配する機能を有する図10や図11に例示されるインナー部材をガス流入孔に設置されていることが好ましい。フロント部とリア部に適正にガスを分配することで、両部分における乗員保護性能をともに向上させることが可能である。
さらに、カーテンバッグをより高速に膨張させることを意図したカーテンバッグや、乗員の座席が3列あるような大型の自動車に使用するカーテンバッグの場合は、より高出力のガス発生器を使用しなければならない場合がある。また、固体ガス発生剤を使用するガス発生器や、固体ガス発生剤と高圧ガスを併用する方式のハイブリッドタイプのガス発生器では、高圧ガス方式のガス発生器に比べてより高温のガスや高温の固体ガス発生剤の分解残渣がカーテンバッグ内に流入する。このような場合、力学的な負荷と熱的な負荷に対する補強を図ることができ、インナー部材を設置することが好ましい。
10に示されるインナー部材は、バッグ後方上部にガス流入孔が設けられているタイプのバッグに用いられるもので、通常「インナーチューブ」と称される。また、図11に示されるインナー部材は、上部のほぼ中央部にガス流入孔が設けられているタイプのバッグに用いられるもので、通常「インナーバッグ」又は「バッグインバッグ」と称される。図10及び図11における矢印は、ガスの流入、流出方向を示す。
本発明において、より一層フロント部とリア部のガス分配を適正に行うために、フロント部とリア部を連結する領域に複数の相互に独立したドット状内側接合部が設けられていることが好ましい。具体的形状を図14に例示するが、本形状に限定されるものではない。フロント部とリア部を連結する領域にドット状内側接合部2が設けられている。このようにフロント部とリア部を複数のドット状内側接合部を設けた領域で連結することで、両部分のガスの分配及び流通が適正に行われ、両部分における乗員保護性能をともに向上させることが可能である。
本発明において、前記ドット状内側接合部は、0.7cm/個〜13cm/個の面積を有することが好ましく、2cm/個〜12cm/個の面積を有することがより好ましい。各ドット状内側接合部の面積が0.7cm/個以上であれば、膨張部が適度になり、当該部分への負荷が小さく、破断しにくくなる。また、各ドット状内側接合部の面積が13cm/個以下であれば、同様に膨張部が適度となり、所定の内圧が得られ、カーテンバッグ膨張時の厚みも適度になる。
ドット状内側接合部の形状や面積は、カーテンバッグ内で総て同一であっても、異なる形状や面積のものが混在していてもよい。ドット状内側接合部の形状や面積は、カーテンバッグのサイズ、形状、使用するガス発生器の出力、位置などを勘案して定めることが好ましい。
従来のOPWカーテンバッグでは、図15(a)に示すように、カーテンバッグを構成する織布を、その経糸の方向がカーテンバッグの長手方向とほぼ平行になるように配置して製織している。図中Aは経糸、Bは緯糸である。
しかしながら、カーテンバッグが自動車のルーフから下に向かって膨張展開する過程ではカーテンバッグの幅方向、即ち織物の緯糸方向に比較的集中して大きな張力がかかり、幅方向の剛性が増加し、乗員の頭部及び/または頚部への傷害を増加させる場合も生じうる。
本発明を適用する場合、従来通りの配置で製織してもよいが、例えば図15(b)に示すように、カーテンバッグの長手方向の平行線Cと、カーテンバッグを構成する布の経糸Aの方向との間の角度θが20〜70度となるように配置して製織することが好ましい。例えばθを45度とし、カーテンバッグが下に向かって膨張する時に幅方向にかかる力を1とすると、経糸及び緯糸の張力は1/√2となり、幅方向の張力が分散されることになり、幅方向の剛性が低下し、乗員の頭部及び/または頚部への傷害を低下させる。さらに、カーテンバッグの破断に対する安全率も向上することになる点からも好ましい。
このカーテンバッグの長手方向と織物の経糸方向との角度θを45度とすると、張力は経糸、緯糸に等しく分散されるが、この角度θは織物の経、緯の切断強度や弾性率、あるいはカーテンバッグの配置によるロスを勘案して決めればよい。一般的に角度θは20〜70度が好ましく、この範囲内であれば前記効果が発現する。
また、ミシン縫製タイプのカーテンバッグではコーティングされた平織物を所定の形状に裁断するが、この際のバッグの長手方向と、織物の経糸方向との配置は前記と同様に決定すればよい。
OPWで接合部を形成する場合、膨張部との境界近辺の接合部の織組織は、特に限定するものではないが、例えば図に示すような各種の(イ)斜子織、(ロ)風通織、(ハ)平織などを組合せ、これらの適切な繰り返しを行なえばよい。また、接合部の膨張部との境界近辺以外の部分の織組織についても、特に限定するものではないが、例えば図に示すような部分節結織などが交錯点を減少する点で好ましい。
外周接合部、内側接合部、及びこれらの接合部と膨張部との境界近辺を除く膨張部の織組織は通常平織組織が使用されている。
自動車が他の自動車や障害物との側面衝突時に窓ガラスが破損し、この破損したガラス片により、場合によってはカーテンバッグに損傷を与え、大きく裂けることがまれにある。この損傷の度合いを出来るだけ軽減するために、前記外周接合部、内側接合部、及びこれらの接合部と膨張部のとの境界近辺を除く膨張部の織組織を単純な平織組織でなく、一例として図に示すように、経糸及び緯糸の一定本数ごとに数本の糸を引き揃えた状態で製職した、所謂格子織またはリップストップと称される織組織とすることが好ましい。
この引き揃える糸の数は、2〜3本程度が好ましく、これ以上では糸間の間隙が大きくなり、コーティング剤の表面被覆効果が減少する。また、引き揃え糸の間隔は5mmから30mm、より好ましくは10mmから20mmである。これ以下の間隔では糸間の間隙が大きくなり、コーティング剤の表面被覆効果が減少する。またこれ以上の引き揃え糸の間隔が大きくなると、ガラス片によるカーテンバッグの損傷を低減する効果が低下する。
ミシン縫製方式によって、接合部を形成する場合は、通常のミシン、或いは形状をミシンに入力して自動的に縫製される所謂パターンミシンを使用し、2枚の織物を縫合すればよい。この際、特に気密度が要求される場合は、2枚の織物の間にシール剤を挟んで縫合することにより、縫目からのガスの流出を防止できる。
接着方式によって接合部を形成する場合は、2枚の織物の間に接着剤を塗布し、加熱機構を有するプレス機や圧延機のように2つのロールの間に挟み込むことで、接着剤が塗布された部分に圧縮力をかけ、接合すればよい。この際の接着剤の種類は問わないが、ガスの流出を防止する場合は、シリコーン系の接着剤が用いられる。
OPWの場合、通常、経糸はサイジングした原糸を使用して製織し、次いでバッグの気密性を向上させるためにコーティング加工を施すことが好ましい。特に限定するものではないが、コーティング剤と織物との接着性を阻害しないよう、コーティングに先立って原糸に付着している油剤類、サイジング剤を除去することを目的として、ジッガ精練機あるいは複数の精練槽、水洗槽などを有する連続精練機により精練することが好ましい。精練後、織物をシリンダー乾燥機などにより乾燥する。乾燥後そのままで次のコーティング工程に供されることもあるが、寸法や織密度の制御のために、精練、乾燥後、引続きヒートセットすることが好ましい。
一方ミシン縫製カーテンバッグでは、本発明を実施するに際し特に限定されるものではないが、経糸をサイジングしないで製織する場合は必ずしも精練を必要としないが、サイジング糸などを使用する場合は精練する必要があり、この場合は前記OPW方式と同様乾燥、または乾燥後ヒートセットを行なうことが好ましい。
コーティング剤、コーティング方法についても、本発明を実施するに際し特に限定されるものではないが、コーティング剤としては一般にシリコーン系のものが使用され、通常ナイフコーターでコーティングする。コーティング剤塗布量は、使用するシリコーン樹脂の特性や、製法がOPW方式かミシン方式か、用途が側面衝突時のみを想定したバッグか側面衝突後自動車の転覆を想定しているバッグかによって異なる。
コーティング剤塗布量は、特に限定されるものではないが、ミシン縫製カーテンバッグやOPW方式のカーテンバッグで自動車の転覆を想定していないカーテンバッグでは20〜50g/mが好ましく、OPW方式のバッグで自動車の転覆時の乗員保護も想定しているタイプのカーテンバッグでは50〜150g/mが好ましい。
OPW方式では、コーティング後、レーザー裁断機により所定の寸法、形状に裁断され、カーテンバッグを固定するためのストラップなどの付属品を縫付け、車体への取付け部の補強などを行い、製品(カーテンバッグ)となる。
ミシン縫製方式では、コーティングされた織物を所定の形状、寸法に裁断後2枚の織物を重ねて所定の位置を縫製する。前記のとおり、特に気密性が要求される場合は2枚のコーティング織物の間にシリコーンシートなどのシール剤を縫目付近に挟んで縫製する。
次に、実施例および参考例によって本発明を具体的に説明する。
(1)展開試験
試験用試料に、Autoliv社製コールドガスタイプインフレータ(23.81タンク圧試験において最大圧力220kPa)およびカーテンバッグ内圧測定用センサーを取付け、カーテンバッグ展開試験を行い、カーテンバッグの展開状況の高速度撮影およびカーテンバッグ内圧の変化を測定した。表1に示す展開速度は、カーテンバッグ内圧が60kPaとなる時間とした。
(2)インパクター試験
試験用試料に、上記インフレーターおよびカーテンバッグ内圧測定用センサーを取付け、FMVSS201U法に定められた方法によりインパクター試験を実施し、頭部の減速度から頭部傷害値HICを求めた。
(3)展開傷害模擬試験
試験用試料に、上記インフレーターを取付け、カーテンバッグ展開試験を行った。その際、フロント部長手方向の中央部で幅方向の中央部に頭部を模擬した幅10cm、長さ30cmの発泡スチロールのダミーを設置し、カーテンバッグ展開に伴い、該ダミーに加わる力をロードセルにより収集し、最大値を展開傷害値とした。
[実施例1]
Polyamide High Performance社製、ナイロン66原糸の繊度470dTex、単糸数144本の糸を、経糸はポリアクリル酸を主成分とするサイジング剤でサイジングして使用し、ジャガード機(ストーブリー社製)を搭載したエアージェット織機(ドルニエ社製)により、仕上がり織密度が経57本/2.54cm、緯48本/2.54cmとなるよう、図1に示す形状の織物を製織した。フロント部に2本の直線上に各々2個の内側接合部を設け、膨張部は平織組織、膨張部との境界部近辺の各内側接合部の織組織は図に示す組織で、各内側接合部の膨張部との境界部近辺より内側の織組織は図に示す組織とした。
製織後の織物を連続精練機により精練し、乾燥後ピンテンターにより180℃で1分ヒートセットを行った。当該精練およびヒートセット後の織物に、ナイフコーティング法により、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、品番DC3730)を織物の片面当たり85g/m塗布し、加熱炉中で180℃3分加熱後、表面平滑剤としてシリコーン系平滑剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、品番DC3715)をグラビアコーターにより、片面当たり10g/mコーティングし、乾燥した。
当該コーティング品をレーザー裁断機(レクトラ社製)により、所定の形状に裁断し、自動車車体への取付け部の補強縫い、フロントストラップの縫付けを行いカーテンバッグ製品とした。さらに、当該製品を図に示す方式で折り畳み、テープで仮止めし試験用試料を作成した。この試料について、前記展開試験およびインパクター試験、展開傷害模擬試験を実施した。
試験結果を表1に示す。
[実施例
実施例1と同一の方法で、図14に示す形状で、面積3cmのドット状内側接合部を設けたカーテンバッグを製作し、前記展開試験、およびインパクター試験、展開傷害模擬試験を実施した。
試験結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同一の方法で、従来の製品である、内側接合部が5個で外周接合部に連なった図16に示す形状のバッグを製作し、前記展開試験、およびインパクター試験、展開傷害模擬試験を実施した。
試験結果を表1に示す。
Figure 0005653612
表1に示すとおり、本発明に基づくカーテンバッグは展開速度が従来のカーテンバッグに比べて大幅に向上する。また、内側接合部を特定の配置にすること、内側接合部を特定の形状にすることで、乗員の保護性能を向上させることに有効であることが明確である。特に、乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であっても十分な保護性能を発揮するとともに、カーテンバッグが膨張展開時に乗員に与える傷害を低減させることに有効であることが明確である。
本発明は、自動車が側面衝突した際、自動車の乗員を保護する装置に有効である。特に乗員が規定の正規着座姿勢以外の着座姿勢であっても、安全を確保する装置に有効である。
1 外周接合部
2 内側接合部
3 タブ
4 ストラップ
5 カーテンバッグの長手方向に平行な直線
6 カーテンバッグのフロント部
7 インナー部材
101 従来カーテンバッグの外周接合部
102 従来カーテンバッグの内側接合部

Claims (12)

  1. 少なくとも2枚の布が、少なくとも外周縁部に設けられた外周接合部と、該外周接合部の内側に設けられた内側接合部で相互に接合されたカーテンバッグにおいて、カーテンバッグの長手方向に平行な少なくとも2本以上の任意の直線上に、外周接合部及び相互に独立した少なくとも2個の内側接合部が設けられており、隣接する一対の前記任意の直線上において、上側の直線上にある内側接合部間の距離の方が短く、且つカーテンバッグの上部から下部に向かい順次内側接合部間の距離が長くなり、内側接合部が片仮名の「ハ」の字状になるように相対的に位置していることを特徴とするカーテンバッグ。
  2. 前記少なくとも2個の内側接合部が、少なくとも前席乗員が接触するカーテンバッグのフロント部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンバッグ。
  3. 前記任意の直線が2〜10本であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンバッグ。
  4. 前記任意の直線上の少なくとも2個の内側接合部間の距離が3〜100cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  5. 前記任意の直線上の少なくとも2個の内側接合部が、相互に独立したドット状内側接合部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  6. カーテンバッグに流入するガスをフロント部と後席乗員が接触するリア部へ分配する機能を有するインナー部材が、ガス流入孔近辺に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  7. 前記カーテンバッグのフロント部とリア部を連結する領域に複数の相互に独立したドット状内側接合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  8. 前記ドット状内側接合部の形状が線分、円形、楕円形、四角形、菱形、多角形またはそれらを部分的に変形した形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  9. 前記ドット状内側接合部の形状が円形、楕円形であることを特徴とする請求項8に記載のカーテンバッグ。
  10. 前記ドット状内側接合部が0.7cm/個以上13cm/個以下の面積であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  11. 前記少なくとも2枚の布が織布であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカーテンバッグ。
  12. 前記カーテンバッグの長手方向に平行な直線と、前記織布の経糸との交差角が20〜70度であることを特徴とする請求項11に記載のカーテンバッグ。
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