JP5646875B2 - 絞り加工用プレコートアルミニウム板および容器形状成形品 - Google Patents
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Description
一方、LED照明は、白熱電球と類似した形状となるようにダイキャストによって製造した容器が製造されている。かかる容器は、外周部に複数のフィンや凹凸などを設けて表面積を大きくすることにより放熱性を高め、ヒートシンクとして機能するように設計されている場合もある。LED照明を白熱電球や蛍光灯並に普及させるためには、生産性を高める必要がある。生産性を高めるためにはダイキャストでは無く、板のプレス品にすることが望ましい。ヒートシンクとして機能するように設計された前記した容器は、形状が円筒に近くなることから、図5(b)に示すように、金属板を絞り加工して製造する方が望ましい。なお、図5(b)に示すような絞り加工で製造したカバーは密閉性が高いので、電磁波シールド性が高く、家庭等の室内で利用される民生用電子機器にも好適に用いることができる。
特許文献1には、所定の算術平均粗さRaを有するアルミニウム板の少なくとも一面に、所定の耐食性皮膜と所定の樹脂皮膜とを形成し、その表面抵抗値を規定することで導電性を向上させつつ、その他の要求性能も満足したプレコートアルミニウム板が開示されている。
特許文献1のプレコートアルミニウム板によれば、洗浄の不要な速乾性プレス油での連続成形を可能とし、プレス油を洗浄する工程を省略して製造コストを下げるための潤滑性、外観品質を向上させるための耐疵付き性および耐指紋性、帯電防止やアースを確保するための導電性等の機能が樹脂皮膜によって付与されるため、例えば、ノートパソコンに搭載されるスリム型の光ディスクドライブ装置のカバー等に好適に用いることができる旨、記載されている。
特許文献2のプレコートアルミニウム板によれば、当該プレコートアルミニウム板と接触する相手物を疵付け難いため、例えば、スロットインタイプの光ディスクドライブ装置に使用されるカバーとして好適に用いることができる旨、記載されている。つまり、当該カバーの内面に樹脂皮膜が配置されるようにすることにより、光ディスクが接触した場合であっても、摩擦によって光ディスクが疵付いてしまうのを防止することができる旨が記載されている。
特許文献3のプレコートアルミニウム板によれば、深絞り加工やしごき加工を行っても、皮膜の剥離、亀裂、白化が生じることが無く、成形性に優れているので、例えば、スリム型光ディスクドライブ装置などの産業用電子機器や、民生用電子機器、車載用電子機器等のカバーとして好適に用いることができる旨、記載されている。
特許文献4のプレコートアルミニウム板によれば、熱可塑性樹脂フィルムが脱脂剤に接触することはなく、耐薬品性に優れた熱硬化性樹脂塗膜層により保護されるため、絞り加工あるいはしごき加工の際の成形加工性が良好な状態で、熱可塑性樹脂フィルムの脱脂処理における変色が防止でき、かつ、印刷性能についても向上させることができる旨、記載されている。そのため、例えば、電解コンデンサーのケースに好適に用いることができる旨、記載されている。
そして、第一皮膜、第二皮膜ともに樹脂皮膜のゲル分率が50%以上であることにより、樹脂皮膜の架橋密度が高くなり、樹脂皮膜中に添加した添加剤Aや添加剤Bが洗浄工程で脱落するのを防止することができる。また、耐薬品性、耐熱性、耐加水分解性等が向上し、また、洗浄工程での皮膜の耐久性が向上する。
図1に示すように、成形用プレコートアルミニウム板1は、アルミニウム板2と、アルミニウム板2の一方側面に形成された第一皮膜3と、アルミニウム板2の他方側面に形成された第二皮膜6とを備えており、絞り加工等の用途に用いることができる。以下、各構成について説明する。
本発明でいうアルミニウム板2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるものであり、本発明で用いられるアルミニウム板(アルミニウム板またはアルミニウム合金板)2としては、特に制限されるものではなく、製品形状や成形方法、使用時に求められる強度等に基づいて選択することができる。一般的には、非熱処理型のアルミニウム板、すなわち、1000系の工業用純アルミニウム板、3000系のAl−Mn系合金板、5000系のAl−Mg系合金板が好適に使用することができる。特に、しごき加工を伴う深い容器形状の筐体を製作する場合には、JIS H4000に規定されるA1050、A1100、A3003、A3004等のアルミニウム板が推奨される。また、比較的浅い容器形状の筐体を作成する場合には、JIS H4000に規定されるA5052やA5182等のアルミニウム板が推奨される。調質、板厚についても、目的に応じて種々のものを選定して使用することができる。また、後記するように、アルミニウム板2に、反応型下地処理、塗布型下地処理、陽極酸化処理、電解エッチング処理、脱脂処理等を施してもよい。
第一皮膜3は、ガラス転位温度が25乃至100℃のポリエステル樹脂を、メラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤にて架橋反応させた架橋ポリエステル樹脂4と、この架橋ポリエステル樹脂4中に分散された添加剤A5とを含む樹脂皮膜で構成されており、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上5μm以下であり、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上、ゲル分率が50%以上を満たす。
架橋ポリエステル樹脂4は、第一皮膜3の主成分(ベース樹脂)となるものであり、ガラス転位温度が25乃至100℃のポリエステル樹脂を、メラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤を使用し、分子間架橋反応させる。
なお、アルミニウム板塗装用の樹脂としてはポリエステル樹脂のほかに、エポキシ樹脂やフッ化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、シリコンポリエステル系樹脂などが広く知られているが、成形性、耐光性、コストなどを総合的に考えると本発明には適当でない。
添加剤A5は、第一皮膜3について規定されている表面の算術平均粗さ(Ra)を0.1μm以上5μm以下とし、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上を確保するためのものであり、第一皮膜3の架橋ポリエステル樹脂4中に含有させるものである。
上記の条件、すなわち、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上、が適う限りにおいて、添加剤A5の種類、大きさ、形態、添加量等は特に制限されるものではない。
第一皮膜3の厚さをできるだけ薄くできる方が経済的である。この観点から、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率向上効果の高いカーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、シリカ、アルミナ、樹脂ビーズが望ましい。また、アルミニウム板2からの反射を抑制するという観点から、添加剤Aとしてアルミニウムペーストも有効である。これにより、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率も高い値で安定する。
添加剤A5の含有率についても、特に制限は無いが、第一皮膜3に占める比率が3質量%未満では、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上を満たすための膜厚が厚くなり経済的でなくなる。一方、70質量%を超えると、第一皮膜3がもろくなり成形性が低下する。よって、配合比率は、3乃至70質量%が望ましい。なお、5乃至60質量%であることがより望ましい。
本発明では、第一皮膜3のゲル分率を50%以上とする。ゲル分率は、熱硬化性樹脂皮膜の架橋反応度の目安となるパラメーターであるため、本来ならば架橋ポリエステル樹脂4単独のゲル分率を議論するべきであるが、第一皮膜3は、架橋ポリエステル樹脂4のほかに添加剤A5を必須成分として含むため、架橋ポリエステル樹脂4のベース樹脂のみのゲル分率を厳密に測定することは難しい。したがって、本発明では、第一皮膜3のゲル分率にて代用し、このゲル分率で規定することとする。
本発明では、第一皮膜3の表面の算術平均粗さ(Ra)を0.1μm以上5μm以下とする。本発明の成形用プレコートアルミニウム板1は、絞り加工等により成形品を作製することを前提としている。このとき、成形用プレコートアルミニウム板1を加工する工具と成形用プレコートアルミニウム板1との間で摺動が起こり、成形用プレコートアルミニウム板1の表面に疵が発生することがある。ここで成形品の外面となる第一皮膜3の表面に目立つ疵が存在すると、成形品の商品価値を著しく低下させてしまう。第一皮膜3の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm未満であると、第一皮膜3の表面の外観が鏡面に近づき、微小な疵でも極めて目立ってしまい、耐疵付性が低下する。このため、第一皮膜3の算術平均粗さ(Ra)は0.1μm以上であることが必要である。
本発明において、第一皮膜3は、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上とする。放射率は、物体表面からの赤外線放射能を黒体表面からの赤外線放射能で割った比例係数であり、特定の温度における特定波長の光に対して定義される。取り得る数値は0(白体)から1(黒体)の範囲であり、数字が大きいほど赤外線放射能が大きい。これをある範囲の波長領域で積分したのが積分放射率である。プランクの放射式によれば、本発明の実施温度領域である室温付近、より具体的には0乃至100℃の実用温度領域で発生し得る赤外線の波長は、波長領域が3乃至30μmの範囲に集中している。言い換えると、この波長領域の範囲から外れる波長領域の赤外線は無視してよい。この様な理由により、本発明においては、25℃における3乃至30μmの波長領域の赤外線に限定している。
本発明において、第一皮膜3の膜厚は15μm以下であることが望ましい。後述するとおり本発明では第一皮膜3や第二皮膜6の形成方法を特に限定するものではないが、塗布量が均一となるとともに、作業が簡便なロールコータを使用するのが望ましい。一般的なロールコータで、1コートで塗装できる皮膜厚さは、おおよそ1〜20μm程度とされるが、本発明のようにすぐれた外観が求められる用途において、複数のロットにわたって安定した外観を確保するためには皮膜厚さは15μm以下にとどめておくことが望ましい。これにより外観に優れた皮膜を、1コートで経済的に形成することが可能となる。
第一皮膜3には、本発明の所望する効果を奏する範囲で、少量の着色剤や、様々な機能を付与する添加剤を含有させることができる。
例えば、成形性を更に向上させるため、例えば、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ラノリン、テフロン(登録商標)ワックス、シリコーン系ワックス、グラファイト系潤滑剤、モリブデン系潤滑剤等の潤滑剤を、1種または2種以上含有させることができる。また、電子機器等で要求されるアース確保を目的とした導電性を付与するための導電性微粒子として、例えば、ニッケル微粒子をはじめとする金属微粒子、金属酸化物微粒子、導電性カーボン、グラファイト等を、1種または2種以上含有させることができる。さらには、防汚性が要求される場合には、フッ素系化合物やシリコーン系化合物を含有させてもよい。それ以外に抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆顔料、体質顔料などを、本発明の所望する効果を奏する限り、含有させることができる。
第二皮膜6は、ガラス転位温度が0乃至80℃のポリエステル樹脂を、メラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤にて架橋反応させた架橋ポリエステル樹脂7と、この架橋ポリエステル樹脂7中に分散された添加剤B8とを含むものである。この第二皮膜6は、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上、ゲル分率が50%以上を満たす。
架橋ポリエステル樹脂7は、第二皮膜6の主成分となるものであり、ガラス転位温度が0乃至80℃のポリエステル樹脂を、メラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤を使用し、分子間架橋反応させる。
添加剤B8は、第二皮膜6に対して波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上を確保するためのものであり、第二皮膜6の架橋ポリエステル樹脂7中に含有させるものである。
この目的に好適な添加剤B8の具体例としては、第一皮膜3の添加剤A5と同じであるため説明を省略する。
また、添加剤B8の含有率についても、その限定理由や望ましい範囲は第一皮膜3の添加剤A5と同じであるため説明を省略する。
本発明では、第二皮膜6のゲル分率を50%以上とする。この様に数値を限定する理由は、第一皮膜3のゲル分率の限定理由と同様であるので省略する。ゲル分率の対象を架橋ポリエステル樹脂7ではなく第二皮膜6とすることや、測定方法についても同様であるので省略する。
本発明において、第二皮膜6は、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上とする。第二皮膜6の波長が3乃至30μmにおける赤外線の積分放射率が0.6未満であると、第二皮膜6の表面で赤外線として熱を吸収する能力が低下し、製品を冷却する能力が不足する。なお、かかる赤外線の積分放射率は0.7以上であることが望ましく、0.8以上であることがさらに望ましい。
本発明において、第二皮膜6の膜厚は15μm以下であることが望ましい。第一皮膜3と比較すると第二皮膜6は外観に対する要求は厳しくないが、本発明のようにすぐれた放熱性が求められる用途において、複数のロットにわたって安定した赤外線の積分放射率を確保するためには皮膜厚さは15μm以下にとどめておくことが望ましい。これにより放熱性に優れた皮膜を、1コートで経済的に形成することが可能となる。
第二皮膜6には、本発明の所望する効果を奏する範囲で、着色剤や、様々な機能を付与する添加剤を含有させることができる。
例えば、成形性を更に向上させるため、第一皮膜3で説明した様な潤滑剤を含有させることができる。また、電子機器等で要求されるアース確保を目的とした導電性を付与するため、第一皮膜3で説明した導電性微粒子を含有させることができる。それ以外に、酸化防止剤、防錆顔料、体質顔料などを、本発明の所望する効果を奏する限り、含有させることができる。
例えば、アルミニウム板2の表面に、下地処理により、下地処理皮膜(図示省略)を設けてもよい。
アルミニウム板2の表面は、第一皮膜3との密着性や第二皮膜6との密着性、および耐食性を高めるため、下地処理を施すことが望ましい。望ましい下地処理としては、Cr、ZrまたはTiを含有する従来公知の反応型下地処理皮膜および塗布型下地処理皮膜を利用することができる。即ち、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型クロメート皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜等を適宜使用することができる。これらの皮膜に有機成分を組み合わせた有機無機ハイブリッド型の下地処理皮膜でもよい。なお、近年、環境対応の流れから六価クロムを嫌う傾向があり、六価クロムを含まないリン酸クロメート皮膜や、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜等を使用するのが望ましい。
図2に示すように、本発明に係る容器形状成形品10は、本発明の成形用プレコートアルミニウム板1を使用し、第一皮膜3が容器形状成形品10の外面、第二皮膜6が容器形状成形品10の内面となるように成形されることを特徴とする。この様な構成にすれば、内面、外面とも絞り加工に追従する、優れた絞り加工性(成形性)を有するとともに、熱源に近い内面側では効率よく熱を吸収し、外面側では効率よく熱を放出できるため、容器としては優れた放熱性を有することになる。また、前記した第一皮膜3が使用された容器形状成形品10の外面は、疵が目立ちにくく優れた外観を確保することが出来る。このため、LED電球のヒートシンクに最適な容器形状成形品10が得られる。
次に、成形用プレコートアルミニウム板1の製造方法の一例について、適宜、図1を参照して説明する。
成形用プレコートアルミニウム板1の製造方法としては、アルミニウム板2の一方側面に第一皮膜3を形成し、アルミニウム板2の他方側面に第二皮膜6を形成できればよく、特に制限されるものではない。
第一実施例では、成形用プレコートアルミニウム板について検討した。
成形用プレコートアルミニウム板の検討にあたり、素材として使用したアルミニウム板は、合金番号A1100−H24の板厚0.3mm材を使用した。これを弱アルカリ脱脂剤にてアルカリ脱脂した後、下地処理としてリン酸クロメート処理を施した。リン酸クロメート処理の条件はクロム付着量で20mg/m2とした。また、使用したアルミニウム板の機械的性質は、引張強さ130MPa、耐力120MPa、伸び8%であった。
なお、No.49は、特許文献4に記載の芳香族ナイロンをベース樹脂としたフィルムをラミネートした供試材であるため、皮膜形成方法は他の例の様に塗料をバーコーター塗装する方法ではなく、フィルムを貼り付ける方法とした。また、焼付温度の代わりにフィルムをアモルファス化させるための再加熱急冷処理の温度を表1に記載した。
なお、25℃における波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率、ゲル分率および算術平均粗さRaの測定は次のようにして行った。
波長が3乃至30μmにおける赤外線の積分放射率の放射率は、市販されている簡易放射率計(D and S社製D&S Model AE)を使用して25℃の温度条件下で測定した。なお、この簡易放射率計の測定波長領域は3乃至30μmとなっているため、表示される数値が本発明で定義している積分放射率となる。
第一皮膜および第二皮膜ともに、波長が3乃至30μmにおける赤外線の積分放射率の放射率(表2中において単に「赤外線放射率」と記載)が25℃の温度において0.6以上であるものを良好、0.6未満であるものを不良と評価した。
ゲル分率は、第一皮膜と第二皮膜とを別々に測定する必要があるため、耐水研磨紙を使用して測定しようとする面の裏面に形成された皮膜を除去した。すなわち、第一皮膜を有する試験材は、耐水研磨紙で供試材の第二皮膜を研磨除去し、これを10cm×10cmに切り出して作製した。同様に、第二皮膜を有する試験材は、供試材の第一皮膜を研磨除去し、これを10cm×10cmに切り出して作製した。
作製した各試験材は、80℃にて60分間乾燥させた後、初期質量(a)を測定し、次に、沸騰させた2−ブタノン中に試験材を60分間浸漬して未架橋成分を溶出させた後、150℃にて60分間乾燥させて皮膜中の残存2−ブタノンを乾燥し、抽出後質量(b)を測定した。最後に、発煙硝酸中にて皮膜を完全に溶解し、アルミニウム板だけの質量(c)を測定した。ここで、(a)−(c)がもともとのプレコート皮膜のみの質量であり、(b)−(c)が架橋している皮膜質量とみなせるため、次式で表せるゲル分率が、皮膜の架橋度を表すこととなる。
ゲル分率(%)=((b)−(c)/(a)−(c))×100
第一皮膜および第二皮膜ともに、ゲル分率が50%以上であるものを良好、50%未満のものを不良と評価した。
第一皮膜の算術平均粗さ(Ra)の測定は、表面粗さ測定器(小坂研究所社製サーフコーダSE−30D)を使用し、探針を供試材の第一皮膜に対し、圧延方向に直交する方向に走査して、JIS B0601に記載の算術平均粗さ(Ra)を測定することにより行なった。
図3に示す工程により、供試材の成形性を調べた。
まず、円筒ブランク打ち抜きの後、絞り加工を行った。次に、再絞り加工にて、12mmφ×15mmLの円筒絞り成形品(中間成形品)を得た。さらに、中間成形品に、円筒側壁部の板厚減少率が20%となるようにしごきを加え、トリミングをして最終10mmφ×20mmLの円筒容器形状に加工し、最終成形品を得た。ここまでの工程で、第一皮膜が円筒容器形状の外面、第二皮膜が内面となる様に表裏面を設定した。この時点で得られた最終成形品での皮膜状態を評価した結果を、表2中の成形性とした。なお、プレス油には脂肪酸エステルと界面活性剤を主成分とする水系エマルジョンワックスを使用した。また、加工は室温(35℃)のみにて行った。
皮膜状態の評価は、成形性については、皮膜剥離などの異状が無い場合を良好(○)、剥離が生じた場合を不良(×)と判断した。この様な判定を最終成形品外面にあたる第一皮膜と、最終成形品内面にあたる第二皮膜それぞれについて実施した。
塩素系洗浄剤としてトリクレンを使用し、これを1リットル沸騰させた。各供試材について20個の前記最終成形品を作製し、沸騰トリクレン中に10分間浸漬した後、取り出して外観を確認した。各供試材について作製した20個の最終成形品について、皮膜の溶解、皮膜の剥離、皮膜の変色、皮膜のキズ、皮膜同士のくっつき等の表面異常が0個である場合を洗浄耐久性が良好(○)、表面異常が1個でもある場合を洗浄耐久性が不良(×)と評価した。
また、表2に、第一皮膜特性(ゲル分率(%)、算術平均荒さRa(μm)、赤外線放射率)、第二皮膜特性(ゲル分率(%)、赤外線放射率)、第一皮膜の性能(成形性、洗浄耐久性)、第二皮膜の性能(成形性、洗浄耐久性)を示す。
なお、表1および表2中における下線部は、本発明の要件または効果を有さないことを示す。
第二実施例では、容器形状成形品について検討した。
容器形状成形品の検討にあたって図4に示す温度実測用の模擬LED電球20を作製した。模擬LED電球20は次のようにして作製した。
円筒容器の天面部14には、直径10mmφの穴部15をあけて電源コード16を通したのち、シール剤にて埋めて穴部15を密閉した。また、LED基板12を直径53mmφのアルミニウム製の固定板17に貼り付けて、これをLED11の回路13が円筒容器10内に収まるようにして(つまり、LED11が外側を向くようにして)円筒容器10の開口部18にはめ込んで開口部18を固定した。
比較材として第一皮膜、第二皮膜をともに有していないアルミニウム素板を使用した円筒容器(No.50)を用い、これを用いた場合の比較材温度測定値T0とした。そして、ΔT(ΔT=T1−T0)を冷却効果と定義した。冷却効果ΔTの値が小さいほど(すなわち、ΔTが負の値の場合は絶対値が大きいほど)、供試材の放熱性が優れていると評価することができる。第二実施例においては、ΔTが−5℃以下の場合を良好、ΔTが−5℃よりも高い場合を不良と評価した。
実験に用いた第一皮膜および第二皮膜の構成と赤外線放射率、LEDの到達温度T1(℃)および冷却効果ΔT(℃)を表3に示す。
なお、表3中における下線部は、本発明の要件または効果を有さないことを示す。
一方、No.51は、第一皮膜が無い比較例であり、No.52とNo.53とNo.54は、第一皮膜の赤外線放射率が本発明の要件を満たさない比較例であり、No.62は、第二皮膜が無い比較例であり、No.63は、第二皮膜の赤外線放射率が本発明の要件を満たさない比較例である。これら、第一皮膜もしくは第二皮膜のどちらか一方の赤外線放射率が本発明の要件を満たさない場合(第一皮膜および第二皮膜のうちの少なくとも一方が形成されていないことを理由とする場合を含む)は、冷却効果ΔTが−5℃よりも高い温度となり、効果が不十分であった。
2 アルミニウム板
3 第一皮膜
4 架橋ポリエステル樹脂
5 添加剤A
6 第二皮膜
7 架橋ポリエステル樹脂
8 添加剤B
10 容器形状成形品
Claims (4)
- アルミニウム板と、前記アルミニウム板の一方側面に形成された第一皮膜と、前記アルミニウム板の他方側面に形成された第二皮膜とを備える絞り加工用プレコートアルミニウム板であって、
前記第一皮膜は、ガラス転移温度が25乃至100℃のポリエステル樹脂をメラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤にて架橋反応させた架橋ポリエステル樹脂と、酸化チタン、アルミナ、アルミペーストから選ばれた少なくとも1種の添加剤Aとを含み、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上5μm以下であり、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上であり、前記添加剤Aを含んだ状態でのゲル分率が50%以上を満たし、
前記第二皮膜は、ガラス転移温度が0乃至80℃のポリエステル樹脂をメラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤にて架橋反応させた架橋ポリエステル樹脂と、酸化チタン、アルミナ、アルミペーストから選ばれた少なくとも1種の添加剤Bとを含み、波長が3乃至30μmの赤外線の積分放射率が25℃の温度において0.6以上、前記添加剤Bを含んだ状態でのゲル分率が50%以上を満たすことを特徴とする絞り加工用プレコートアルミニウム板。 - 前記第一皮膜に含まれている前記添加剤Aおよび前記第二皮膜に含まれている前記添加剤Bの含有率がそれぞれ3乃至70質量%であり、前記第一皮膜の膜厚および前記第二皮膜の膜厚がともに15μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の絞り加工用プレコートアルミニウム板。
- 前記算術平均粗さ(Ra)が、0.25μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の絞り加工用プレコートアルミニウム板。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の絞り加工用プレコートアルミニウム板が用いられ、前記第一皮膜が外面、前記第二皮膜が内面となる様に成形された容器形状成形品。
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