以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
図1(a)および(b)は、本発明の実施形態に係る記録装置の一部を示す斜視図および側面図である。図1に示すように、記録装置は、吐出ヘッド1と、吐出ヘッド1を搭載可能なキャリッジ2とを有する記録ユニット3を備えている。吐出ヘッド1は、例えばインクといった液体を画像情報に基づいて吐出するインクジェット吐出ヘッドである。
図2(a)および(b)は、記録ユニット3の斜視図および正面図である。記録装置は、記録媒体Mを支持するためのプラテン(不図示)を備えており、図2は、該プラテンに支持されている記録媒体Mが示されている。
図2に示すように、吐出ヘッド1は、プラテンに支持された記録媒体Mの記録面と交差する方向に配置されている。吐出ヘッド1の吐出面1a(吐出口が配列された面)が記録媒体Mの記録面と対向している。
本実施形態に係る記録装置は、いわゆるシリアルタイプのものである。シリアルタイプの記録装置は、記録媒体Mを搬送方向X(記録媒体Mの記録面に沿った一の方向)に搬送させながら、記録ユニット3を主走査方向Y(記録媒体Mの記録面に沿った方向であって搬送方向Xと交わる方向)に走査させる。さらに、記録装置は記録ユニット3を走査させながら吐出ヘッド1から液体を吐出し、記録媒体Mの記録面の全域に画像を形成する。
本実施形態に係る記録装置では、記録媒体Mの記録面が水平方向と略平行になるように記録媒体Mは配置されており、記録ユニット3は記録媒体Mの鉛直方向Zの上方に配置されている。なお、本書の説明においては、主走査方向Yを第1の方向と称する場合もある。
まず、記録ユニット3を主走査方向Yへ移動させる機構について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、記録ユニット3は、主走査方向Yに沿って延びるシャーシユニット4(ガイド部材とも呼ばれる)に、切替部材5および摺動部材6を介して移動可能に保持されている。摺動部材6がシャーシユニット4上を摺動移動することにより、キャリッジ2の主走査方向Yへの移動が案内される。
シャーシユニット4の、主走査方向Yの一方の端部には、記録ユニット3を移動させるモータ7が取り付けられており、シャーシユニット4の、主走査方向Yの他方の端部にはアイドルプーリ8が設けられている。
モータ7の駆動軸とアイドルプーリ8との間には、一定の張力を付与されたタイミングベルト9が張架されており、モータ7が駆動することによってタイミングベルト9が回転する。タイミングベルト9はキャリッジ2に連結されており、タイミングベルト9の回転に伴ってキャリッジ2を含む記録ユニット3が主走査方向Yに移動する。
また、記録装置は、主走査方向Yにおける記録ユニット3の位置を検出するためのコードストリップ10を備えている。コードストリップ10は、タイミングベルト9と平行に張設されている。
コードストリップ10には、例えば1インチ当たり150〜300本のピッチでマーキングが形成されている。キャリッジ2にはコードストリップ10のマーキングを読み取るためのエンコーダセンサ(不図示)が設けられており、エンコーダセンサが該マーキングを読み取ることによって記録ユニット3の位置が検出される。
次に、記録ユニット3を保持する切替部材5および摺動部材6について、図1ないし図4を用いて説明する。図3(a)ないし(c)は、切替部材5および摺動部材6を上方から見たときの斜視図、搬送方向Xの上流側から見たときの背面図、並びに搬送方向Xの下流側から見たときの正面図である。図4(a)並びに(b)は、キャリッジ2、切替部材5および摺動部材6の斜視図、並びに搬送方向Xの上流側から見たときの背面図である。
摺動部材6は、記録ユニット3を、プラテンに支持された記録媒体Mの記録面と交差する第2の方向へ移動可能に保持している。すなわち、摺動部材6は、キャリッジ2に対する第1の位置と、該第1の位置よりも第2の方向に前記キャリッジから突出する第2の位置と、に移動可能に設けられている。なお、本実施形態では、第2の方向は鉛直方向Zと同じ方向を向いている。
図3(a)に示すように、摺動部材6には、鉛直方向Zに沿って掘られた穴11を有している。穴11に記録ユニット3の一部が挿通されることによって、記録ユニット3は第2の方向へ移動可能に保持される。
図1(b)に示すように、シャーシユニット4は、シャーシユニット4の下部に位置する下端ガイド部4aと、シャーシユニット4の上部に位置する上端ガイド部4bと、下端ガイド部4aおよび上端ガイド部4bを繋ぐ背面板4cと、を有している。
下端ガイド部4aの、主走査方向Yと交わる断面は、背面板4cの下端から搬送方向Xの下流側に向かって延びる水平部分と、該水平部分の先端から上方へ向かって延びる鉛直部分と、からなる略L字形状を有している。また、上端ガイド部4bの、主走査方向Yと交わる断面は、背面板4cの上端から搬送方向Xの下流側へ向かって延びる水平部分と、該水平部分の先端から下方へ向かって延びる鉛直部分と、からなる略L字形状を有している。
摺動部材6は下端ガイド部4aの水平部分上に配置されている。したがって、摺動部材6は、下端ガイド部4aより下方へ移動しない。摺動部材6の下部には第一摺動部材6aが設けられており、摺動部材6は下端ガイド部4aの水平部分上を滑らかに移動できるようになっている。
摺動部材6に保持された記録ユニット3の一部は、下端ガイド部4aの鉛直部分の、搬送方向Xの下流側に位置する面と当接している。
また、摺動部材6は、記録ユニット3に設けられた不図示のバネにより搬送方向Xの下流側に向かって付勢されている。したがって、摺動部材6の、搬送方向Xの下流側に位置する側面が下端ガイド部4aの鉛直部分と当接している。記録ユニット3と摺動部材6とが下端ガイド部4aの鉛直部分を挟み込むことによって、記録ユニット3の、主走査方向Yを回転軸とする回転方向の姿勢が保たれている。
なお、摺動部材6の、下端ガイド部4aの鉛直部分と当接する領域には第二摺動部材6bが設けられている。したがって、摺動部材6と、下端ガイド部4aの鉛直部分との間の摩擦抵抗は小さく、記録ユニット3と摺動部材6とが下端ガイド部4aの鉛直部分を挟み込んでいても記録ユニット3および摺動部材6はシャーシユニット4に沿って滑らかに移動することができる。
本実施形態では、摺動部材6に保持された記録ユニット3の一部が、上端ガイド部4bの鉛直部分の、搬送方向Xの上流側に位置する面と当接している。したがって、記録ユニット3の重心がシャーシユニット4よりも搬送方向Xの下流側に位置していても、記録ユニット3は主走査方向Yを中心に回転しない。すなわち、主走査方向Yを回転軸とする回転方向の姿勢がより確実に保たれる。
図3に示すように、切替部材5は、主走査方向Y(第1の方向)へ移動可能に摺動部材6上に配置されている。また、切替部材5は主走査方向Yに沿って細長い形状を有しており、切替部材5の、摺動部材6側に位置する下側面の一部が、摺動部材6の上側面の一部(以下、切替部材接触部6c)と接触している。切替部材5が摺動部材6に対して主走査方向Yへ移動することによって、切替部材5の下側面の、切替部材接触部6cと接触する場所が変わる。
切替部材5の下側面のうち、摺動部材6の切替部材接触部6cが接触する領域(以下、摺動部材接触領域5a)は、鉛直方向Zと交わりかつ少なくとも一部が主走査方向Yに対して傾斜している面を有している。したがって、切替部材5が摺動部材6に対して主走査方向Yへ移動することによって、摺動部材接触領域5aの傾斜している面に沿って切替部材5は摺動部材6に対して鉛直方向Zへ移動する。
図3(c)および図4に示すように、切替部材5は、キャリッジ2の、搬送方向Xの上流側に位置する背面に鉛直方向Zに沿って配設された支持部材2a,2bに挟まれている。
支持部材2a,2bのうちの、切替部材5の上側面と接触する支持部材2aは、主走査方向Yに複数並んで配置されている。また、切替部材5の上側面は主走査方向Yと平行に形成されている。
支持部材2a,2bのうちの支持部材2bは、切替部材5の下側面のうちの、摺動部材接触領域5aとは異なる領域において切替部材5と接触している。もちろん、切替部材5が主走査方向Yに移動しても、支持部材2bが摺動部材接触領域5aと接触することはない。また、切替部材5の下側面のうちの支持部材2bと接触する領域は、主走査方向Yと平行に形成されている。
したがって、切替部材5が主走査方向Yに移動しても、支持部材2aは切替部材5の上側面に接触し、支持部材2bは切替部材5の下側面に接触している。そのため、切替部材5およびキャリッジ2は摺動部材6に対して鉛直方向Zへ一緒に移動する。
切替部材5を摺動部材6に対して主走査方向Yへ移動させることによって、切替部材5およびキャリッジ2を摺動部材6に対して鉛直方向Zへ移動させることができる。キャリッジ2を鉛直方向Zへ移動させることにより、紙間距離を変更することが可能となる。
液体を吐出して記録を行う記録装置では、図2に示すように、吐出ヘッド1の吐出面1aと記録媒体Mの記録面との間に、液滴を飛翔させるための所定の距離(例えば0.5mm〜5.0mm程度)を設けることが好ましい。
本実施形態に係る記録装置では、図3および4に示すように、切替部材5を摺動部材に対して主走査方向Yへ移動させることにより、キャリッジ2を鉛直方向Zへ移動させることができる。すなわち、記録媒体M(図2)の厚さに応じて吐出ヘッド1を鉛直方向Zへ移動させることにより所望の紙間距離に設定することができ、記録媒体Mに記録される記録画像の品質を高めることができる。
本実施形態に係る記録装置では、例えば紙や布、プラスチックシート、OHPシートCD/DVDなどのディスクメディア、封筒といった、それぞれ厚さが異なる記録媒体を用いる場合であっても、比較的高い品質で画像を形成することができる。
また、本実施形態に係る記録装置の切替部材5は、主走査方向Yおよび鉛直方向Zを含む仮想面と交わる方向(以下、第3の方向)に向かって突出している突起部5bを有している。本実施形態では、突起部5bは搬送方向Xの上流側へ向かって突出している。
摺動部材6には、第3の方向(搬送方向Xの上流側)へ向かって掘られ、突起部5bが差し込まれた溝6dが形成されている。溝6dは、主走査方向Yへ沿って延びるように形成されている。したがって、切替部材5が摺動部材6に対して主走査方向Yのどの位置にあっても、突起部5bの鉛直方向Zへの移動は溝6dにより制限される。
溝6dは、突起部5bの鉛直方向Zの上側が常に溝6dの内側面と接触するように、切替部材5の摺動部材6に対する主走査方向Yへの移動に伴って突起部5bが移動する経路に沿って形成されていることが望ましい。突起部5bの鉛直方向Zの上側が常に溝6dの内側面と接触することによって、切替部材5の摺動部材接触領域5aが摺動部材の切替部材接触部6cから離れなくなる。すなわち、キャリッジ2の鉛直方向Zへの移動をより確実に制限することができる。
記録装置の記録ユニット3には、吐出面1a(図2)のメンテナンスを行う場合以外にも記録ユニット3に鉛直方向Zの上方への力が加えられる場合がある。例えば、記録装置に外部から衝撃が加えられたような場合である。溝6dを、突起部5bの移動経路に沿って形成することによって、このような力が記録ユニット3に加えられても記録ユニット3が鉛直方向Zの上方へ移動しないため、記録画像の品質の低下を抑制することができる。
また、図1(b)および図4に示すように、シャーシユニット4の背面板4cには、搬送方向Xの下流側へ向かって突出した板部材4dが固設されている。摺動部材6の、搬送方向Xの上流側に位置する背面には、搬送方向Xの上流側へ突出した突出部6eが形成されている。突出部6eは、シャーシユニット4の下端ガイド部4aの水平部分と板部材4dとの間に位置しており、摺動部材6の鉛直方向Zの上方への移動を制限している。
したがって、キャリッジ2や摺動部材6に鉛直方向Zの上方へ向かう力が加えられても、キャリッジ2や摺動部材6はシャーシユニット4に対して鉛直方向Zの上方へ移動しない。シャーシユニット4は記録装置に固定されているため、摺動部材6は記録装置に対して鉛直方向Zの上方に移動しない。
次に、切替部材5および摺動部材6による吐出ヘッド1と記録媒体Mの紙間距離の変更動作を、図1、3ないし7を用いて説明する。
図1に示すように、記録装置は、切替部材5を摺動部材6に対して主走査方向Yへ移動させて紙間距離を切り替える切り替え部材12を備えている。切り替え部材12は、不図示の駆動源により、切替部材5の移動経路の内外へ前進後退可能に設けられている。
本実施形態では、図1、3および4に示すように、搬送方向Xの上流側に向かって突出し、切り替え部材12と当接する切り替え部材当接部5cが切替部材5に形成されている。
図5ないし7は、紙間距離の変更動作を説明するための記録ユニット3の周辺の斜視図、背面図および側面図である。なお、図5ないし7の(a)が、紙間距離の変更動作における一の同じ状態を示しており、図5ないし7の(b)ないし(d)についても、それぞれ紙間距離の変更動作における同じ状態を示している。
図5ないし7の(a)に示される状態では、摺動部材6は、記録ユニット3に対する第1の位置にある。紙間距離を変更する際には、記録装置はまず、図5ないし7の(a)に示すように、切り替え部材12を、切り替え部材当接部5cの移動経路内へ前進させる。なお、この時点では、切り替え部材12は、切り替え部材当接部5cに当接していない。
その後、記録装置は、切り替え部材当接部5cが切り替え部材12へ近づく方向(図5ないし7に示す白抜き矢印13の方向)へ、モータ7(図1)を用いて記録ユニット3、切替部材5および摺動部材6を一緒に走査させる。記録ユニット3を走査させることによって、図5ないし7の(b)に示すように、切替部材5の切り替え部材当接部5cが切り替え部材12に当たる。
さらに記録ユニット3を白抜き矢印13の方向に走査させると、図5ないし7の(b)に示すように、記録ユニット3と一緒に摺動部材6のみが白抜き矢印13の方向へ移動を続け、切替部材5は切り替え部材12に当接した状態で留まる。すなわち、切替部材5は、摺動部材6に対して白抜き矢印13の方向とは反対の方向に相対移動する。
切替部材5が摺動部材6に対して主走査方向Yへ移動することによって、切替部材5は、例えば鉛直方向Zの上方(図5ないし7に示す白抜き矢印14の方向)へ移動する。切替部材5の白抜き矢印14の方向への移動に伴って、摺動部材6が記録ユニット3に対して第2の位置に移動する。すなわち、記録ユニット3がプラテンに対して白抜き矢印14の方向へ移動し、紙間距離が変わる。
図5ないし7の(c)に示す状態からさらに記録ユニット3を白抜き矢印13の方向へ走査させることによって、図5ないし7(d)に示すように、さらに記録ユニット3を白抜き矢印14の方向へ移動させることができる。
記録ユニット3を鉛直方向Zにおける所望の位置まで移動させたところで、切り替え部材12を切り替え部材当接部5cの移動経路外へ後退させる。切り替え部材当接部5cと切り替え部材12とが接触していないため、切替部材5は記録ユニット3や摺動部材6と一緒に白抜き矢印13の方向へ移動する。すなわち、切替部材5は摺動部材6に対して移動しないため、記録ユニット3は白抜き矢印14の方向へ移動しなくなる。
記録ユニット3を鉛直方向Zにおける元の位置に戻すには、記録装置はまず、切り替え部材当接部5cの移動経路内のうちの、切り替え部材当接部5cよりも白抜き矢印13の方向とは反対の方向に位置する領域に切り替え部材12を前進させる。次に、記録ユニット3を白抜き矢印13と反対の方向に走査させればよい。
吐出ヘッド1と記録媒体M(図2)の紙間距離は、摺動部材接触領域5aを、主走査方向Yに沿って複数の階段状に滑らかに変化させることによって、複数の値で設定可能となり、さまざまな記録媒体の厚みに対応可能である。
また、紙間距離の変更動作中であっても、突起部5bは溝6dにより常に鉛直方向Zの上方への移動が制限されている。つまり紙間距離の変更動作中であっても、吐出ヘッド1の鉛直方向Zの上方への移動を制限することが可能となる。
次に、本実施形態に係る記録装置に設けられた、吐出ヘッド1の吐出面1a(図2)のメンテナンスを行うメンテナンスユニット15の構成および動作について、図8ないし図11を用いて説明する。
図8(a)はメンテナンスユニット15の斜視図であり、図8(b)は記録ユニット3とメンテナンスユニット15とを組み合わせた状態の斜視図である。図8に示すように、メンテナンスユニット15は、吐出面1a(図2)を覆うキャップ部材16や、吐出面1aを摺擦するワイパー17を備えている。
キャップ部材16は、吐出ヘッド1の吐出面1aに密着して吐出口を覆うことで、吐出口からのインクの乾燥を抑制する。ワイパー17は、吐出ヘッド1の吐出面1aを摺擦することによって吐出面1aのインクを除去する。
吐出口からインクを吸引する吸引ポンプがメンテナンスユニット15に設けられていても良い。吸引ポンプは、キャップ部材16が吐出面1a(図2)を覆った状態で作動することで、吐出口からインクを吸引して吐出口内のインクをリフレッシュすることができる。
吸引ポンプとしては、ピストン・シリンダ式のポンプの他に、チューブポンプなどが使用される。チューブポンプは、キャップ部材16に接続されたチューブをしごくことにより、該チューブ内に発生する負圧を吐出口に作用させることで、吐出口からインクを吸引する。
メンテナンスユニット15により、吐出ヘッド1の吐出口の目詰まりの防止や、吐出ヘッド1の吐出性能の維持回復が可能となる。
キャップ部材16やワイパー17が取り付けられたベース部材18は、メンテナンスユニット15のホルダ19に対して主走査方向Yへスライド移動可能に設けられている。ベース部材18には、記録ユニット3の、主走査方向Yに位置する側面に設けられた当接部3aと当接する当接部材20が設けられている。したがって、記録ユニット3の主走査方向Yへの移動に伴って、ベース部材18を主走査方向Yへ移動させることができる。
また、ベース部材18は、主走査方向Yへ移動するとともに、鉛直方向Zへ移動可能に設けられている。したがって、ベース部材18を鉛直方向Zの上方へ移動させるようにベース部材18を主走査方向Yへ移動させることによって、キャップ部材16が吐出面1a(図2)を覆う。
図9および10は、メンテナンスユニット15の動作を説明するための正面図および背面図である。なお、図9および10の(a)が、メンテナンスユニット15の動作における一の同じ状態を示しており、図9および10の(b)および(c)についても、それぞれメンテナンスユニット15の動作における同じ状態を示している。
図9および図10の(a)に示すように、記録ユニット3が主走査方向Yへ移動することによって、メンテナンスユニット15の当接部材20が記録ユニット3の当接部3aに当接する。当接部材20と当接部3bとが当接した状態からさらに記録ユニット3が主走査方向Yへ移動すると、ベース部材18は主走査方向Yへ移動しながら鉛直方向Zへ移動する。
ベース部材18が鉛直方向Zの上方へ移動することによって、図9および10の(b)に示すように、吐出面1aをキャップ部材16が覆う。
また、キャップ部材16には、キャップ部材16を鉛直方向Zの上方へ付勢するバネ(不図示)が設けられている。したがって、キャップ部材16が吐出面1aを覆う場合には、キャップ部材16が吐出面1aを押圧し、記録ユニット3に鉛直方向Zの上方への力が加えられている。その結果、吐出面1aがより強い密閉力でキャップ部材16により覆われる。
図10(a)〜(c)に示すように、メンテナンスユニット15の当接部材20と記録ユニット3の当接部3aが当接する際には、摺動部材6の突出部材6eがシャーシユニット4の板部材4bの下側に移動している。したがって、メンテナンスユニット15によって記録ユニット3に鉛直方向Zの上方への力が加えられても、摺動部材6の鉛直方向Zの上方への移動は板部材4bによって制限される。
摺動部材6の鉛直方向Zの上方への移動が制限されることで、切替部材5および記録ユニット3の鉛直方向Zの上方への移動が制限される。
以上により、キャップ部材16が吐出面1aを押圧している最中であっても、記録ユニット3の鉛直方向Zへの上方への移動を制限することができる。この制限は、切替部材5の突起部5bと摺動部材6の溝6dによって、紙間距離がどの状態であっても可能な構成となっている。
図9および図10の(b)に示す状態から図9および図10の(c)に示す状態まで記録ユニット3が移動すると、メンテナンスユニットは、不図示の構成により、一定期間、ワイパー17が吐出面1aに接触する状態を維持する。当該一定期間内に記録ユニット3を主走査方向Yへ移動させることで、ワイパー17が吐出面1aを摺擦し、吐出面1aに付着した液体を取り除くことができる。
ワイパー17が吐出面1aを摺擦する際には、ワイパー17の反力により、記録ユニット3に鉛直方向Zの上方の力が加えられる。シャーシユニット4の板部材4bや摺動部材6の溝6dによって記録ユニット3の鉛直方向Zの上方への移動が制限されているため、より強い力で吐出面1aを摺擦することが可能となる。
図11(a)は本実施形態のメンテナンスユニット15によるメンテナンスのシーケンスを示す図であり、図11(b)は、例えば特許文献1に開示されている記録装置のメンテナンスユニットによるメンテナンスのシーケンスを示す図である。
特許文献1に開示されている記録装置では、記録ユニットの鉛直方向上方への移動を制限するためには、切替部材が摺動部材に対して所定の位置にある必要がある。すなわち、紙間距離が特定の値に設定されている場合にしか吐出ヘッドの吐出面のメンテナンスを行うことができない。そのため、図11(b)に示すように、紙間距離が特定の値に設定されているか否かを確認するステップ(S22)と、紙間距離を特定の値に変更するステップ(S23)を行わなければならない。
本発明の記録装置によれば、紙間距離の値にかかわらず、吐出面1aのメンテナンスが可能である。すなわち、特許文献1に開示されている記録装置に比べ、メンテナンスの動作の時間を短縮することができる。
紙間距離が広すぎてベース部材18を鉛直方向Zの上方へ移動させてもキャップ部材16やワイパー17が吐出面1aに到達しないような場合には、記録ユニット3を必要な量だけ鉛直方向Zの下方へ移動させる動作を実施しても良い。
本実施形態によれば、紙間距離の値にかかわらず、メンテナンスユニット15が吐出面1aを押圧することが可能になる。すなわち、紙間距離を特定の値に変更する動作を介さずにメンテナンスを行うことができるため、メンテナンスの動作を含む、記録装置の記録動作にかかる時間を短縮することができる。
また、記録ユニット3の摺動部材6に対する主走査方向Yの位置に関わらず、記録ユニット3が摺動部材6から離間することがない。したがって、紙間距離を適切に維持することができ、より高い品質の画像を記録媒体Mに記録することができる。
記録ユニット3が常に摺動部材6と接触しているため、記録ユニット3を主走査方向Yへ移動させてもキャリッジ2ががたつくことがない。その結果、吐出ヘッド1から吐出された液滴の記録媒体Mへの着弾位置がばらつかなくなり、より高い品質の画像を記録媒体Mに記録することができる。
さらに、シャーシユニット4の板部材4dと摺動部材6の突出部材6eにより、摺動部材6の、記録媒体Mの記録面と直交する方向への移動が制限されている。したがって、摺動部材6の溝6dに挿通されている切替部材5の突起部5bにより、記録ユニット3の当該方向への移動を制限することができる。
メンテナンスユニット15が吐出面1aを押圧する方向への、記録ユニット3の移動が制限されているため、メンテナンスユニット15は、より強い力で吐出面1aを覆うことができ、また強い力で吐出面1を摺擦することができる。したがって、メンテナンスユニット15による吐出面1aのメンテナンスの効果をより高められる。
なお、本実施形態では、吐出ヘッド1から液体を吐出して記録するインクジェット記録装置を例に挙げて説明した。本発明は、これに限定されるものではなく、吐出ヘッド1と記録媒体Mの間に間隔を設ける記録装置であれば、その他の記録方式の記録装置に対しても同様に適用可能なものである。
また、本発明は、吐出ヘッド1の数や配置構成に関わらず同様に適用可能であり、インクジェット記録装置の場合、さらに使用するインクの種類や性状等に関わらず本発明を同様に適用可能である。また本発明は、吐出ヘッド1とインクタンクが一体型の記録装置や、吐出ヘッド1とインクタンクがそれぞれ独立した構成の記録装置に適用可能である。
さらに、本発明は、プリンタや複写機、ファクシミリ、撮像画像形成装置などの単体装置に限定されるものではない。つまり、本発明は、これらを組み合わせた複合装置、あるいはコンピュータシステムなどの複合装置における記録装置としても広く適用可能である。記録媒体Mについても、本発明は、紙、布、CD/DVDなどの記録メディア、プラスチックシート、OHP用シート、封筒など、画像を記録できるものであれば、材質や形態に関わらず使用することができる。
上記の実施例1では、メンテナンスユニット15が記録ユニット3の当接部3aに当接することで吐出面1aのメンテナンスの動作を行う構成としているが、本発明はこれに限られない。例えば、別の駆動源によりメンテナンスユニット15を鉛直方向Zへ移動させることによって吐出面1aのメンテナンス動作を行う構成を適用しても良い。