JP5643757B2 - テトラシアノエチレンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、テトラシアノエチレンの製造方法に関する。より詳細には、工業的に有利なテトラシアノエチレンの製造方法に関する。
テトラシアノエチレン(TCNE)は、分子内に多数のπ電子を含み、強い電子求引性を有する化合物である。この特徴を利用して、電荷移動錯体や有機超電導体の研究に用いられる他、特許文献1、特許文献2に記載されるような金属光沢を有する色素化合物の原料として用いられている。さらに、有機磁性材料の原料など、電子部品用途でも用いられており、将来的に、有機EL材料などの半導体材料の原料としての用途も期待されている。
テトラシアノエチレンを合成する方法としては、例えば特許文献3には、ブロモマロノニトリル(HBrC(CN))を原料として、ジメトキシエタン中、触媒であるジフェニルスルフィドの存在下で80〜85℃で二量化する方法が開示されている。また、特許文献4には、ジクロロジシアノエチレン(ClCNC=CCNCl)とシアン化ナトリウム(NaCN)とをジメチルホルムアミド中で反応させてテトラシアノエチレンを得る方法が開示されている。さらに、特許文献5には、ジブロモマロノニトリル(BrC(CN))を原料として、これを管型反応器内で250〜500℃に加熱して反応させる方法が開示されている。得られたテトラシアノエチレンを冷却して固化させることで副生する臭素ガスと分離する。この方法によって90%以上の高い収率が得られることが報告されている。一方、このジブロモマロノニトリルからテトラシアノエチレンに導く反応をより低い温度で行う方法として、ジブロモマロノニトリル−KBr錯体をベンゼン中銅粉を存在させて加熱還流する方法が非特許文献1に報告されており、この収率は55〜62%である。
特開2004−315545号公報 米国特許第6172240号明細書 米国特許第3330853号明細書 米国特許第3026348号明細書 米国特許第3076836号明細書
Org.Synth.Coll.Vol.IV,877頁
しかしながら、テトラシアノエチレンを大量に生産する方法は確立されていない。従来、テトラシアノエチレンは試薬レベルで少量合成されるのみであったが、テトラシアノエチレンの有用性に鑑み、より大きなスケールで合成する必要が生じると考えられる。しかしながら、特許文献3の方法では、反応収率が十分ではなく、大量生産に適用することは困難である。また、特許文献4の方法では、原料として用いられるジクロロジシアノエチレンは催涙性が強いこと、収率が不十分であること、および工程が長くなってしまうことなどの問題点がある。また、特許文献5に記載の方法では、高い収率が得られるものの、250℃以上の高温の条件が必要であり、工業的にこの条件を達成するためには高額な耐高温反応設備や加熱設備が必要となり、一般の化学メーカーが備える設備では実行できない。一方、ジブロモマロノニトリル−KBr錯体をベンゼン中銅粉と加熱還流する非特許文献1の方法は、収率が十分ではない上に多量の銅粉(例えば、原料0.25molに対して1.57原子当量)を使用する必要があり、貴重な銅資源を浪費することになるとともに廃棄物ならびに経済性に問題がある。そのため、工業的に有利なテトラシアノエチレンの製造方法が求められている。
本発明者らは上記課題を解決すべく、ジハロゲノマロノニトリルを反応させてテトラシアノエチレンを得る反応の反応条件を鋭意検討した。その過程で、前記反応を、反応に不活性な溶媒中で行うことによって、反応が効率的に進行しうることを見出した。
すなわち本発明は、ジハロゲノマロノニトリルを加熱することにより二量化させてテトラシアノエチレンを得る段階を含むテトラシアノエチレンの製造方法であって、前記二量化の反応がラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒中で行われることを特徴とする、テトラシアノエチレンの製造方法である。
本発明によれば、工業的に有利な方法でテトラシアノエチレンを製造できる。
実施例1で製造したテトラシアノエチレン(昇華精製後)の赤外吸収スペクトルである。 テトラシアノエチレンの標準試料の赤外吸収スペクトルである。
本発明は、下記反応式に示すように、XC(CN)(Xは独立してハロゲン原子である)で表されるジハロゲノマロノニトリルを加熱することにより二量化させてテトラシアノエチレンを得る段階を含むテトラシアノエチレンの製造方法であって、前記二量化の反応がラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒中で行われることを特徴とする、テトラシアノエチレンの製造方法である。
以下、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法では、原料としてジハロゲノマロノニトリル(XC(CN))を準備する。ジハロゲノマロノニトリルにおいて、Xはハロゲン原子である。Xは同一であっても異なっていてもよいが、入手の容易性などを考慮すると、好ましくは、Xは同一である。ジハロゲノマロノニトリルとしては、例えば、ジクロロマロノニトリル、ジブロモマロノニトリル、ジヨードマロノニトリルなどを挙げることができる。中でも、反応性と製造コストの観点から、ジブロモマロノニトリルが好ましい。これらのジハロゲノマロノニトリルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、前記ジハロゲノマロノニトリルは、例えば、KBr[(XC(CN))]のような錯体の形態であってもよい。
ジハロゲノマロノニトリルは、加熱条件下で二量化し、テトラシアノエチレンを生成する。本発明では、この二量化反応をラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒中で行う。本明細書中、ラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒とは、溶媒の分子が前記二量化反応に直接関与しない溶媒を意味する。ラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒中で反応を行うことにより、無溶媒の場合に比べて原料の分子の拡散が効果的に進行し、反応速度が向上しうる。また、反応温度の制御が容易になる。そのため、緩やかな温度条件で反応を行うことができ、収率も向上する。
本発明において、前記溶媒は、ラジカル種またはハロゲンと容易に反応しない溶媒である。前記溶媒は、好ましくは、水酸基やアミノ基の水素原子やカルボニル基のアルファ位炭素に結合する水素原子のような活性プロトンを含まない溶媒である。さらに、前記溶媒は、好ましくは、芳香族炭化水素の置換基としてのアルキル基の水素原子のような、ラジカル種によって容易に置換または脱離しうる水素原子を有さない溶媒である。ジハロゲノマロノニトリルが二量化する反応経路は明らかではないが、ジハロゲノマロノニトリルのC−X結合が開裂してジシアノカルベンを生成し、生じたジシアノカルベンが結合してテトラシアノエチレンが生成する機構が一つの可能性として考えられる。ここで、溶媒分子中にラジカル種またはハロゲンと容易に反応する水素原子が存在する場合、ジハロゲノマロノニトリルのC−X結合が開裂する際に生じる、あるいは副生するハロゲンの開裂で生じるハロゲンラジカルや前記反応機構で述べたカルベンが溶媒分子中の当該水素原子と反応して置換または脱離させるような副反応が起こってしまう可能性がある。そのため、ラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒を用いると、ジハロゲノマロノニトリルが二量化する反応が効率的に進行しうる。
上記のような溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素などが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、好ましくは炭素数5〜20、より好ましくは炭素数5〜12の脂肪族炭化水素が用いられ、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−オクタデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカンなどが挙げられる。ハロゲン化脂肪族炭化水素としては、好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12のハロゲン化脂肪族炭化水素が用いられ、例えば、四塩化炭素などが挙げられる。芳香族炭化水素としては、炭素数6〜12の芳香族炭化水素が好ましく、例えば、ベンゼン、ナフタレンなどが挙げられる。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、炭素数6〜12のハロゲン化芳香族炭化水素が好ましく、例えば、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジフルオロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジヨードベンゼン、トリフルオロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリブロモベンゼン、トリヨードベンゼン、などが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、ジハロゲノマロノニトリルの溶解能が高いこと、ハロゲンラジカルやハロゲンとの反応性が低いこと、水に対する溶解度が低いこと、工業的な入手性などの理由から、脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素が好ましい。より好ましくは、ハロゲン化芳香族炭化水素である。脂肪族炭化水素としては、反応温度より高い沸点を持つことなどの理由から、特に、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカンが好ましい。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、特に、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモクロロベンゼンなどのハロゲン化ベンゼンが好ましい。クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素は、ハロゲン原子によって芳香環の反応性が低下しうる。そのため、置換基を有さない芳香族炭化水素に比べて、ハロゲンラジカルとの反応性が低下し、その結果副反応が抑えられてテトラシアノエチレンの収率が向上しうると考えられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
溶媒の使用量についても、特に限定されない。原料や生成物の溶解度や溶媒の取り扱い易さなどに応じて、溶媒の使用量を選択するとよい。溶媒の使用量は、好ましくは、ジハロゲノマロノニトリルに対して、0.5質量倍以上、より好ましくは1質量倍以上であり、さらに好ましくは2質量倍以上である。使用量の上限は経済性と反応装置の容量で決まるが、例えば10質量倍以下であり、好ましくは6質量倍以下であり、更に好ましくは4質量倍以下である。
好ましくは、上記の二量化反応は、触媒の存在下で行われる。触媒を用いることによって反応速度が大きくなり、反応時間を短縮することができる。さらに、副生物の生成を抑制することができる。触媒としては、特に制限されないが、電子供与性化合物を用いることが好ましい。電子供与性化合物を用いることで触媒がジハロゲノマロノニトリルに対して求核試薬として作用し、ハロゲン原子を脱離させることでカルベンを効率的に生成しうるものと考えられる。このような電子供与性化合物としては、例えば、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化亜鉛、臭化銅、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化銅などの金属ハロゲン化物;テトラエチルホスホニウムブロミド((CPBr)、テトラブチルホスホニウムブロミド((CPBr)、テトラブチルホスホニウムクロリド((CPCl)、ブロモメチルホスホニウムブロミド(PH(CHBr)Br)などのリン化合物塩;塩化テトラブチルアンモニウム((CNCl)、臭化テトラブチルアンモニウム((CNBr)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム((CNI)などのハロゲン化第四級アンモニウム;ジフェニルスルフィド、ジ(2−ナフチル)スルフィドなどのスルフィド化合物;などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。金属ハロゲン化物、ハロゲン化第四級アンモニウム、リン化合物塩およびスルフィド化合物を用いると反応がより効率的に進行しうる。スルフィド化合物としては、脂肪族スルフィド化合物および芳香族スルフィド化合物のいずれも用いられうるが、芳香族スルフィド化合物を用いることがより好ましい。金属ハロゲン化物としては、アルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いると、重金属の使用に伴う廃棄物や廃液の処理の問題を回避することができるために好ましい。特に、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウムなどのハロゲン化物イオンのイオン化合物、特にヨウ化物イオンのイオン化合物を用いることがハロゲン化物イオンの電子供与性の観点から好ましい。なお、前記触媒は、アルミナ、チタニア、シリカ、ゼオライトなどの担体に担持させた形態で用いてもよく、前記触媒を含有するポリマーの形態で用いてもよい。
触媒の使用量は、特に制限されないが、下限値としては、ジハロゲノマロノニトリルの使用量に対して、好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは1モル%以上である。また、上限値としては、ジハロゲノマロノニトリルの使用量に対して、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下である。触媒の使用量が0.01モル%以上であれば、反応速度の向上、副生物の抑制の効果が顕著であり、反応が効率的に進行しうる。また、触媒の使用量が30モル%以下であれば、触媒の使用量に起因する原料コスト、目的物と触媒との分離コスト、触媒の回収コスト、および廃棄物の処理コストの上昇を抑えることができ、工業的、または環境的な観点から好ましい。上記範囲の触媒の使用量であれば反応が効率的に進行しうる。
ジハロゲノマロノニトリル、溶媒、および触媒を仕込む方法については特に制限されない。仕込む順序も特に制限されず、これらの物質を複数同時に仕込んでもよい。また、合成装置の大きさや種類は、環境や規模に応じて決定されればよい。例えば、大量のテトラシアノエチレンを合成するのであれば、工業的規模の合成装置が用いられうる。
ジハロゲノマロノニトリルの反応条件は、加熱条件下で反応させるものであれば、特に限定されない。ジハロゲノマロノニトリルの二量化反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができ、加圧下で行ってもよい。特に、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上であり、特に好ましくは100℃以上である。また、反応温度は、好ましくは240℃以下であり、より好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下であり、特に好ましくは150℃以下である。反応温度が70℃以上であれば、十分な反応速度が得られうる。一方、反応温度が240℃以下であれば、高温の熱源や製造装置の耐熱性を必要としないため、工業的に有利である。特に、反応温度が150℃以下であれば熱源に600kPa程度の高圧蒸気を用いる一般的な反応設備でも到達できる温度範囲であることから、特に好ましい。上記反応温度の範囲であれば、反応の制御が容易であり、用益費の削減効果があり、一般的に使用される通常の反応装置が長期に使用可能となる。反応温度は、温度計などの温度センサーを用いて測定されうる。
反応装置の材質としては、例えば、グラスライニング、フッ素系樹脂ライニング、チタン、ニッケル、ハステロイ合金などの耐酸性の材質が挙げられる。反応装置に対する腐食性を考えた場合、反応温度が240℃以下であれば、グラスライニングを施した反応装置に対して腐食性が弱まり、180℃以下であればフッ素系樹脂性のパッキンやライニングに対する腐食性が弱まり、140℃以下であればガラスライニングを施した反応装置で長期の使用が可能な温度範囲となる。
反応時間は、触媒の使用の有無や反応温度などにより大きく変動するものであり、これらの要素を勘案して選択することができ、特に限定されない。極端に短時間で本反応を実施する場合は副生する臭素ガスの捕集が実施の障害となるため、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上、特に好ましくは2.0時間以上であり、極端に長時間で実施する場合は生産性が低下して経済的に好ましくないことから、好ましくは150時間以下、より好ましくは24時間以下、特に好ましくは6時間以下である。
本発明のテトラシアノエチレンの製造方法によれば、これまでに述べた様々な工業的な優位性により、試薬レベルを超える工業的規模で大量にテトラシアノエチレンを製造することができる。ジハロゲノマロノニトリルからテトラシアノエチレンを合成する反応において、1回の反応で得ようとするテトラシアノエチレンの量が約10kg以上である場合には、約170モル以上のジハロゲノマロノニトリルを用いる反応スケールとなる。このような規模以上の反応スケールとなった場合、例えば容量が200Lを超えるような反応器が必要になると考えられるが、実験室の設備では実行が困難となってくるため、工業的な製造設備を使用することになる。工業的な製造設備における製造では、設備的、環境的、経済的、および/または安全面での種々の課題が顕著に持ち上がる。例えば、必要な付帯設備、計測設備、保安設備などが増し、それら全てに耐高温性、耐腐食性などが要求されることから、更に課題が生じることが考えられる。言うまでもなく、これらの課題は実行する反応スケールが大きくなるほど更に顕著になる。本発明のテトラシアノエチレンの製造方法によれば、特殊な反応装置、付帯設備、および計測設備は不要であり、大量のテトラシアノエチレンを好適に製造することができる。
なお、本発明では、テトラシアノエチレンの生成にしたがってスラリーが形成されるため、撹拌しながら反応を進行させることが好ましい。
反応後のテトラシアノエチレンは、溶媒を含むスラリーの形態で得られうる。反応後のスラリーを、例えば、濾過、蒸留による留去、または吸着などの方法を用いて溶媒を除去してテトラシアノエチレンを得る。溶媒の留去は、反応後のスラリーを通常の温度、圧力の条件で蒸留を行なえばよいが、減圧下で行ってもよい。
合成されたテトラシアノエチレンは、必要に応じて精製されうる。テトラシアノエチレンの精製方法としては、特に制限されないが、例えば、適当な溶媒を用いた再結晶による方法や、昇華精製が用いられる。昇華精製を行う際の装置の大きさや種類は、環境や規模に応じて決定されればよい。昇華精製の際の温度は特に制限されない。
以下、実施例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには制限されない。
<実施例1>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで75時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。該スラリー溶液をフラスコに移し、エバポレータを用いて減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(3.16g)として得た。得られたテトラシアノエチレンを1,2,3,4−テトラヒドロキノリンと反応させて6−トリシアノエチレニル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンに誘導し、H−NMRスペクトルを測定することによって収率を求めた。その結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として86.0%であった。
なお、ここで黒褐色の固体として得られているテトラシアノエチレンを昇華精製(130℃、1〜5mmHg)することにより、ほぼ純粋なテトラシアノエチレン(純度98%以上)を得ることができる。
このように昇華精製したテトラシアノエチレンの融点をBUCHI社製 535を用いて測定したところ、196〜199℃であった。これは、市販のテトラシアノエチレン(東京化成株式会社製、純度98%)を昇華精製して得た標準試料を、同条件で測定して得られた標準試料の融点197〜200℃と一致した。さらに、図1Aに実施例1で得られたテトラシアノエチレンを昇華精製したものの赤外吸収スペクトルを、図1Bに市販のテトラシアノエチレンを昇華精製して得た標準試料の赤外吸収スペクトルをそれぞれ示す。図1Aおよび図1Bの結果から、両者のスペクトルが一致していることがわかる。なお、赤外吸収スペクトルは、株式会社島津製作所製 FTIR−8700を用い、KBr錠剤法を用いて測定した。積算回数は45回であった。このように、融点および赤外吸収スペクトルの結果から、本願発明の方法によってテトラシアノエチレンが合成されていることが確認された。
<実施例2>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と溶媒であるn−オクタン(30.0g)を仕込み、混合した。混合物を20分かけて120℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで140時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のn−オクタンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でn−オクタンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(5.16g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として42.0%であった。
<実施例3>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化カリウム(0.42g、ジブロモマロノニトリルに対して5モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(4.12g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として85.0%であった。
<実施例4>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化銅(0.10g、ジブロモマロノニトリルに対して1.0モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで2時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(5.23g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として68.0%であった。
<実施例5>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としての臭化テトラブチルアンモニウム(0.40g、ジブロモマロノニトリルに対して2.5モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで3時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(3.90g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として78.0%であった。
<実施例6>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化ナトリウム(0.37g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで14時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(4.40g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として73.0%であった。
<実施例7>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化銅(0.48g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて80℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで52時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(4.39g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として34.0%であった。
<実施例8>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化亜鉛(0.40g、ジブロモマロノニトリルに対して2.5モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(6.03g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として77.0%であった。
<実施例9>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化バリウム(0.50g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで5時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(5.81g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として54.0%であった。
<実施例10>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのジフェニルスルフィド(0.46g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(4.72g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として62.0%であった。
<実施例11>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのPH(CHBr)Br(0.54g、ジブロモマロノニトリルに対して2.5モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで4時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でクロロベンゼンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(3.85g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として65.0%であった。
<実施例12>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としての臭化テトラブチルアンモニウム(0.4g、ジブロモマロノニトリルに対して2.5モル%)と、溶媒であるn−オクタン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて120℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで6時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のn−オクタンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液から減圧下でn−オクタンを留出させて、テトラシアノエチレンを黒褐色の固体(4.07g)として得た。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として38.0%であった。
<実施例13>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化リチウム(0.33g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるクロロベンゼン(32.1g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌し、テトラシアノエチレンを黒色のクロロベンゼンのスラリー溶液として得た。得られたスラリー溶液を実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンの収率は、ジブロモマロノニトリルを基準として92.0%であった。
<比較例1>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と溶媒であるp−キシレン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌した。得られたスラリー溶液を実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンは生成していなかった。
<比較例2>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化カリウム(0.40g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるジメチルホルムアミド(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌した。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンは生成していなかった。
<比較例3>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化カリウム(0.40g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるトルエン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌した。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンは生成していなかった。
<比較例4>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化カリウム(0.40g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるキシレン(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌した。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンは生成していなかった。
<比較例5>
温度計、窒素ガス導入管、冷却管、および磁気撹拌子を備えた容量100mlの反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、200〜300ml/分で窒素ガスを導入しながら、該反応器に、ジハロゲノマロノニトリルであるジブロモマロノニトリル(11.20g、0.05モル)と、触媒としてのヨウ化カリウム(0.40g、ジブロモマロノニトリルに対して5.0モル%)と、溶媒であるn−ジブチルエーテル(30.0g)とを仕込み、混合した。混合物を20分かけて130℃まで昇温し、さらに、同温度を保ったままで15時間撹拌した。実施例1と同様の方法で分析した結果、テトラシアノエチレンは生成していなかった。
<比較例6>
溶媒を導入しなかったことを除いては、実施例1と同様の手順で反応させたが、反応物が固化して攪拌できず、反応を継続させることができなかった。
実施例および比較例で得られた結果を下記表にまとめる。
各実施例および比較例の結果から、実施例1〜13のように、クロロベンゼンやn−オクタンのようなラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒中で反応を行った場合、高い収率でテトラシアノエチレンが生成することが明らかになった。さらに、このような溶媒を用いると、130℃程度までの比較的低い温度で反応が十分に進行しうることが明らかになった。特に溶媒としてクロロベンゼンを用いた場合に高い収率が得られた。一方、p−キシレン、ジメチルホルムアミド、トルエン、n−ジブチルエーテルなどの溶媒を用いた場合は反応はほとんど進行しなかった。これは、p−キシレン、ジメチルホルムアミド、トルエン、n−ジブチルエーテルなどの溶媒では、溶媒分子に含まれるカルボニル基に結合する水素原子やメチル基の水素原子が脱離し、副反応に関与するためと考えられる。
さらに、実施例1、2と実施例3〜13の結果との比較から、触媒を加えて反応させることによって反応時間が短縮できることが明らかになった。
本出願は、2009年6月19日に出願された日本国特許出願第2009−146920号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

Claims (7)

  1. ジハロゲノマロノニトリルを加熱することにより二量化させてテトラシアノエチレンを得る段階を含むテトラシアノエチレンの製造方法であって、
    前記二量化の反応がラジカル種または副生するハロゲンと容易に反応しない溶媒中、銅粉の非存在下で行われ、
    反応温度が、70〜240℃であることを特徴とする、テトラシアノエチレンの製造方法。
  2. 前記溶媒が、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、またはハロゲン化芳香族炭化水素である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記溶媒の使用量が、前記ジハロゲノマロノニトリルに対して、0.5〜10質量倍である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 触媒の存在下で反応が行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記触媒が、電子供与性化合物である、請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記触媒が、金属ハロゲン化物、ハロゲン化第四級アンモニウム、リン化合物塩およびスルフィド化合物からなる群から選択される1以上である、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記触媒の使用量が、前記ジハロゲノマロノニトリルの使用量に対して、0.01〜30モル%である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
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