以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
本発明に係る古紙再生装置が図1〜図11に示されており、この古紙再生装置1は、具体的には古紙が発生する場所に配置されて、発生する古紙UPを廃棄処分することなく、その場で再利用可能な紙に再生処理する装置であって、古紙UPとしては、官公庁・一般企業の機密文書や一般家庭の私的文書等で、使用済みや不要となった書類が該当する。
古紙再生装置1は、図11に示すような什器サイズ、つまり、事務所内に配置使用される書棚、ロッカー、事務机、複写機、パーソナルコンピュータなどの什器類と同等な小型形状寸法を備えるもので、図1に示すように、パルプ製造部2、パルプ濃度調整部3、抄紙部(抄紙装置)4および装置制御部(制御部)5を主要部として構成されるとともに、上記抄紙部4は、本発明に係る特徴構成であるパルプ供給部(パルプ供給装置)15を備えてなる。
これら装置構成部2〜5は装置ケース6内に装置収容されてなるコンパクト設計とされる。この装置ケース6は、上述したように什器サイズのもので、具体的な形状寸法は目的や用途に応じて適宜設計される。図示の実施形態の装置ケース6は、事務所等に配置使用される複写機程度の形状寸法を有するほぼ直方体形状の箱体とされ、装置ケース6の天板部には、古紙UPを投入するための投入口7が開閉可能に設けられるとともに、側部には、再生紙RP、RP、…を排出する排出口8が設けられている。また、この排出口8の下縁部位には、排出口8から排出される再生紙RP、RP、…を受け取るための再生紙受取トレー9が取外し可能に設けられている。
パルプ製造部2は、古紙UPを離解し叩解して古紙パルプを製造する工程部位で、古紙UPを攪拌破砕して離解する離解部20と、この離解部20で離解された古紙UPを叩解する叩解部21とからなる。
離解部20は、古紙UPを攪拌破砕して離解する工程部位で、離解槽25、攪拌装置26および給水装置27を主要部として構成されている。
離解槽25は、図2に示すように、その天井壁に、古紙UPを投入供給する上記投入口7が設けられるとともに、その底部壁に、離解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口28が設けられている。離解槽25の内容積は、一度に攪拌処理すべき古紙UPの枚数に応じて設定される。図示の実施形態においては、約98リットルの水を加えて、A4判のPPC(plain paper copier)古紙UPを500枚程度(約2000g)一度に攪拌処理(バッチ処理)できる容積を有する離解槽25とされている。この場合の離解される古紙パルプUPPの濃度は2%程度となる。なお、この濃度調整は、給水装置27からの給水により行われ、この給水装置27は、後述するパルプ濃度調整部3の一部をなす。
上記投入口7は、装置ケース6のケースカバー6aの外部に対して開閉可能な構造を有する。また、上記排出口28は、開閉弁29により開閉可能とされて、後述する古紙パルプ循環経路49に連通可能とされている。なお、上記排出口28の部位には、古紙UP、UP、…を綴じていたクリップ、ステープラー針等の綴じ具のなど、次工程の叩解工程にとって障害となる各種禁忌品を除去するための禁忌品フィルタ30が設けられている。
上記開閉弁29は、具体的には駆動モータ35によりクランク機構36がクランク動作することで開閉動作される。上記駆動モータ35としては、具体的には電動モータが使用され、この駆動モータ35が装置制御部5に電気的に接続されている。
攪拌装置26は上記離解槽25の内部に設けられており、攪拌インペラ40および駆動モータ41を備えてなる。
上記攪拌インペラ40は、その回転軸40aが離解槽25の底面中央位置に起立状に回転支持されて、水平回転可能に設けられるとともに、上記回転軸40aの下端が、伝動プーリ42a、伝動ベルト42bおよび伝動プーリ42cからなる伝動手段42を介して、駆動モータ41の回転軸41aに駆動連結されている。
給水装置27は上記離解槽25に水Wを供給するもので、後述するように、パルプ濃度調整部3の叩解濃度調整部3Aを構成する。
図示の実施形態の給水装置27は、図1に示すように、白水回収槽45、叩解濃度調整用の給水ポンプ46および抄紙濃度調整用の給水ポンプ47を備えてなる。白水回収槽45は、後述するように、抄紙部4において濾過脱水される白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)を回収するもので、この白水回収槽45に回収された白水Wが、上記給水ポンプ46により上記離解槽25に、また上記給水ポンプ47により後述する濃度調整槽85にそれぞれ供給される。
また、これに関連して、離解槽25の底部には、重量センサ48が設けられて、離解槽25内で一度にバッチ処理される古紙UP、UP、…と水の量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ48は装置制御部5に電気的に接続されている。
図示の実施形態の重量センサ48はロードセルからなり、離解槽25の重量と、この離解槽25内に投入供給された古紙UP、UP、…および水の重量との合計重量を感知計測する構成とされている。
離解部20における具体的な制御構成は、まず、作業者により投入口7が開放されて、離解槽25に古紙UP、UP、…が投入されると、その重量が上記重量センサ48により感知計測されて、所定重量(枚数)になった時点で作業者に音および/または表示により告知される。この表示に応じて作業者が投入口7を閉止すると、上記給水装置27が駆動して、給水ポンプ46により、白水回収槽45の水Wが上記投入された古紙UP、UP、…の重量(枚数)に対応した量だけ離解槽25に供給される。
また、作業者が、上記投入口7から離解槽25に任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した後に投入口7を閉止した場合も、その重量が上記重量センサ48により感知計測されるとともに、上記給水装置27が駆動して、給水ポンプ46により、上記計測結果に応じた量の水Wが白水回収槽45から離解槽25に供給される。
図示の実施形態においては、上述したように、最大500枚程度(約2000g)のA4判のPPC古紙UPが離解槽25内に投入されると、その時点で作業者に音および/または表示により告知され、上記投入口7の閉止動作により、約98リットルの水が給水装置27により加えられて、あるいは任意の量(上記所定重量(枚数)より少ない量)の古紙UP、UP、…を投入した場合にも、この古紙投入量に対応した量の水が給水装置27により加えられて、離解される古紙パルプUPPの濃度が2%程度となるように制御調整される。
しかして、攪拌装置26において、装置ケース6の投入開口つまり投入口7から離解槽25内に投入された古紙UP、UP、…は、駆動モータ41による攪拌インペラ40の正転・逆転動作により、給水装置27から供給された水の中で所定時間(図示の実施形態においては10分〜20分間)だけ攪拌混合されて、これにより、古紙UP、UP、…は離解・叩解されて古紙パルプUPPとなる。
なお、上記離解槽25の排出口28は、離解部20の運転時には上記開閉弁29により閉止されて、離解槽25からの古紙UPや古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路49への流入が阻止される一方、後述する叩解部21の運転時には、開閉弁29により排出口28が開口されて、離解槽25からの古紙パルプUPPの古紙パルプ循環経路49への流入および循環回流が許容される。
叩解部21は、上記離解部20で離解された古紙UPを叩解する工程部位で、具体的には、上記離解部20で離解された古紙UPを加圧叩解するとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類(各種印刷技術により古紙UP上に文字、図形等を形成した印刷インキ、あるいは、鉛筆、ボールペンまたは万年筆等の筆記具により古紙UP上に文字、図形等を形成したインキ等が含まれる)を磨砕微細化(マイクロファイバ化)するものである。
この叩解部21は、摩砕機50を主要部として備えてなる。この摩砕機50は、図3に示すように、相対的に回転駆動される一対の叩解円盤51、52を主要部として備えてなり、これら一対の叩解円盤51、52は、叩解作用面51a、52aを微小な叩解隙間Gをもって同心状に対向配置されている。
また、上記摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gは、後述するように、叩解工程の初期用の摩砕機50から終期用の摩砕機50に向けて徐々に狭くなるように設定されている。
本実施形態の叩解部21においては、図3に示すように、一台の摩砕機50が配されてなる古紙パルプ循環経路49が形成され、これにより、古紙パルプUPが摩砕機50を介して所定時間循環されながら叩解処理される循環式とされている。
この古紙パルプ循環経路49による叩解工程の実施により、什器サイズの装置ケース6内という小さく狭い工程スペースにもかかわらず、基本的に長さに制限のない無限長の古紙パルプ叩解工程経路が形成されることになり、大規模装置における叩解工程に匹敵する叩解工程空間を確保することが可能となり、目的に応じて最適な叩解効果が得られる。
また、一台の摩砕機50が叩解工程の全工程を通じて叩解処理を行うことに関連して、この一台の摩砕機50が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備する。具体的には、この摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gが、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
図示の実施形態の摩砕機50は、図2に示すように、装置ケース6を構成する装置機体54に、上記離解部20の離解槽25に隣接して設けられており、また図3に示すように、離解部20の離解槽25に連通可能な叩解槽55と、この叩解槽55内に相対的に回転可能に設けられた上記一対の叩解円盤51、52と、これら一対の叩解円盤51、52を相対的に回転動作させる回転駆動源56と、一対の叩解円盤51、52の叩解隙間Gを調整する隙間調整手段57を備える。
叩解槽55は、上記一対の叩解円盤51、52を収納可能な密閉型円筒形状とされ、上流側からの古紙パルプUPPを供給する供給口55aおよび叩解された古紙パルプUPPを下流側へ排出する排出口55bを有する。
具体的には、上記供給口55aは叩解槽55の底部中央部に上下方向へ向けて開設されるとともに、上記排出口55bは叩解槽55の円筒側部に水平方向へ向けて開設されている。これら供給口55aおよび排出口55bは、図3に示すように、それぞれ循環用配管49a、49bを介して、上記離解部20の離解槽25に連通可能に接続されるとともに、上記排出口55bは、さらに排出用配管59を介して古紙パルプ回収槽60に連通可能とされている。
61は方向切替弁を示しており、この方向切替弁61の切替動作により、排出口55bから排出される古紙パルプUPPは、選択的に、上記離解槽25へ還流され、または古紙パルプ回収槽60へ回収される。方向切替弁61は、具体的には電磁弁からなり、上記装置制御部5に電気的に接続されている。
一対の叩解円盤51、52は、その一方が回転方向へ固定的に設けられた固定側叩解円盤とされるとともに、他方が回転可能な回転側叩解円盤とされる。図示の実施形態においては、上側の叩解円盤51が回転側とされるとともに、下側の叩解円盤52が固定側とされてなり、この下側の固定側叩解円盤52に対して、上側の回転側叩解円盤51が微小な叩解隙間Gをもって同心状にかつ回転可能に対向配置されている。この回転側叩解円盤51は、装置機体54の固定側に回転可能にかつ軸線方向へ移動可能に軸支された回転主軸64を介して、駆動モータ56に駆動連結されている。
上記回転主軸64は、具体的には図示しないが、上記隙間調整手段57の昇降部材に回転可能に軸支されており、その先端部に、上記回転側叩解円盤51が同心状にかつ一体的に取り付けられるとともに、その基端部が、上記駆動モータ56の回転軸に回転方向へ一体的にかつ軸線方向へ相対的に移動可能に駆動連結されている。
回転駆動源である上記駆動モータ56は、上記一対の叩解円盤51、52を相対的に回転動作させるもので、具体的には電動モータが使用され、この駆動源である駆動モータ56が装置制御部5に電気的に接続されている。
上記微小な叩解隙間Gを形成する両叩解円盤51、52の対向面51a、52a同士は協働して叩解作用面を形成する。これら対向する叩解作用面51a、52aは、多数の砥粒が結合材により結合されてなる砥石面の形態とされている。また、上記両叩解作用面51a、52aは、図3に示すように、その径寸法が互いの対向方向へ連続的に大きくなるテーパ面形状とされて、最外周縁部が互いに平行する環状平坦面とされ、これら環状平坦面が上記叩解隙間Gを形成している。
換言すれば、上記一対の叩解円盤51、52において、固定側叩解円盤52の叩解作用面52aの中心部位に、上記叩解槽の供給口55aに同軸状に連通する入口70が形成されるとともに、上記一対の叩解円盤51、52の叩解作用面51a、52aの外周縁部に形成される二つの環状平坦面が、上記叩解槽55の排出口55bに連通しかつ上記叩解隙間Gを有する出口71を形成している。
また、回転側叩解円盤51の外周には複数のブレード72、72、…が周方向へ所定間隔をもって設けられており、これらブレード72、72、…は、回転側叩解円盤51の回転により、上記出口71から排出される古紙パルプUPPを、遠心力で上記叩解槽55の排出口55bへ向けて押出すポンプ作用をなす。
しかして、駆動源である駆動モータ56により、回転側叩解円盤51が固定側叩解円盤52に対して回転駆動された状態において、上記離解部20の離解槽25から叩解槽55の供給口55a、入口70を介して叩解空間Bに供給される古紙パルプUPPは、上記入口70から叩解空間Bに流入して、この叩解空間Bを通過しながら、相対的に回転する叩解作用面51a、52aによる加圧叩解作用を受けるとともに、古紙UP上の文字、図形等を形成するインキ類が磨砕微細化され、この後、上記出口71から叩解槽55の排出口55bを介して排出される。
この出口71から排出される際、古紙パルプUPPは、上記叩解隙間Gを有する出口71の部位でさらに加圧叩解作用を受けて、この叩解隙間Gにより規定される所定のミクロンサイズまで微細化(マイクロファイバ化)されることとなる。
この点に関して、本実施形態においては、前述したように、古紙パルプ循環経路49に一台の摩砕機50が配されてなる循環式叩解工程(図3参照)が採用されることに関連して、つまり、上記一台の摩砕機50が叩解工程の初期用の摩砕機から終期用の摩砕機までの複数台の摩砕機としての機能を兼備することに関連して、この摩砕機50の叩解隙間Gが、隙間調整手段57により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される構成とされている。
隙間調整手段57は、具体的には図示しないが、上記一対の叩解円盤51、52を回転軸線方向へ相対的に移動させて、これら叩解円盤51、52の叩解隙間Gを制御調整する構成とされ、回転側叩解円盤51を回転軸線方向つまり回転主軸64の軸線方向へ移動させる移動手段(図示省略)と、この移動手段を駆動させる駆動源66とを主要部として構成されている。この駆動源としては具体的には電動モータが用いられ、この駆動モータ66が上記装置制御部5に電気的に接続されている。
そして、この電動モータ66の回転により、上記移動手段を介して上記回転主軸64が昇降動作し、これにより、回転主軸64と一体の回転側叩解円盤51が固定側叩解円盤52に対して上下方向つまり回転軸線方向へ移動して、両叩解円盤51、52の叩解隙間Gが制御調整される。
この目的のため、上記回転側叩解円盤51の昇降位置を検出する位置検出センサ(図示省略)が設けられ、この位置検出センサの検出結果により上記駆動モータ66が駆動制御される。上記位置検出センサは装置制御部5に電気的に接続されている。
隙間調整手段57による叩解円盤51、52の叩解隙間Gの制御調整は、図3に示される古紙パルプ循環経路49における循環式叩解工程において、循環手段である循環ポンプ69と相互に連動して行われる。
すなわち、図3において、離解部20により離解処理された古紙パルプUPPは、上記循環ポンプ69により古紙パルプ循環経路49で循環されながら、上記摩砕機50による叩解工程が実行され、この際、摩砕機50の叩解作用面51a、52aの叩解隙間Gは、隙間調整手段57により、叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように構成されている。
このように、古紙パルプ循環経路49に一台の摩砕機50が配されるとともに、この摩砕機50の叩解隙間Gが叩解工程の初期から終期に向けて徐々に狭くなるように制御調整される循環式構成とされることにより、什器サイズという非常に狭い工程空間においても、古紙パルプUPPは、徐々に叩解隙間Gが狭くなる摩砕機50の叩解作用面51a、52aによる加圧叩解作用およびインキ磨砕微細化作用を順次適数回繰り返して受けて、叩解さらにはインキ摩砕微細化が古紙パルプ循環経路49を循環する古紙パルプUPP全体に均一に実施される。この結果、後述する抄紙部4で抄紙再生される再生紙RPにとっての最適な紙力強度が確保されるとともに、白色度の高い再生紙RPを得ることができる(脱墨と同等な効果が得られる)。
また、上記古紙パルプ循環経路49に、上記離解部20の離解槽25が含まれていることに関連して、上記叩解工程において、上記離解部20の攪拌装置26が駆動制御されて、離解部20が叩解部21と同時に駆動する構成とされている。すなわち、循環式叩解工程においては、離解槽25から古紙パルプ循環経路49に古紙パルプUPPが流出する一方、摩砕機50による叩解を経た古紙パルプUPPが離解槽25に流入することになり、離解槽25内では叩解度の異なる古紙パルプUPPが混在するため、攪拌装置26による攪拌作用によって、離解槽25内の古紙パルプUPPの叩解度が均一化されて、叩解処理の促進化が図られる。
上記古紙パルプ回収槽60は、叩解部21により所定のサイズまで叩解微細化された古紙パルプUPPを回収する部位で、ここに回収された古紙パルプUPPは、次工程の抄紙工程を行う抄紙部4に送られる前に、パルプ濃度調整部3によって、再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した抄紙濃度に混合調整されたパルプ懸濁液PSとされる。
上記パルプ濃度調整部3は、装置に投入される古紙UPと水Wとの混合割合を重量測定により調整して、上記抄紙部4に供給される古紙パルプUPPの濃度を調整する重量式のもので、具体的には、図4に示すように、叩解濃度調整部3A、抄紙濃度調整部3Bおよびパルプ濃度制御部3Cとを備えてなる。
叩解濃度調整部3Aは、パルプ製造部2における古紙パルプUPPの叩解濃度を叩解部21による叩解効率に対応して調整するもので、前述したように、給水装置27の叩解濃度調整用の給水ポンプ46と叩解濃度制御部75を主要部として構成されている。
この叩解濃度調整部3Aの給水ポンプ46による白水Wの供給量は、例えば、上記攪拌装置26により離解・叩解された古紙パルプUPPの叩解濃度が、次工程である叩解工程を実行する叩解部21の摩砕機50の叩解能力に許容される最大濃度になるように設定されるのが望ましく、図示の実施形態においては、上記のごとく2%程度の叩解濃度になるように設定される。
そして、叩解濃度制御部75は、前述したように、重量センサ48からの計測結果に応じて、離解槽25に必要量の水Wを供給するように上記給水ポンプ46を駆動制御する。この叩解濃度制御部75は、後述するように、装置制御部5の一部を構成している。
抄紙濃度調整部3Bは、抄紙部4における古紙パルプUPPの抄紙濃度を再生すべき再生紙RPの仕上紙質に対応した適正濃度に調整するもので、具体的には、上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を区分形式で調整する構成とされ、区分抽出部80、懸濁液調製部81および抄紙濃度制御部82を主要部として備える。
区分抽出部80は、前工程のパルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの全量から所定の少分量だけ区分抽出するもので、古紙パルプ回収槽60の古紙パルプUPPを抽出して濃度調整槽85に送る区分抽出用の古紙パルプ供給ポンプ86を備えてなる。
懸濁液調製部81は、上記区分抽出部80により区分抽出された所定の少分量の古紙パルプUPPに対して濃度調整用の水Wを所定量だけ加水することにより、所定濃度のパルプ懸濁液PSを調製するもので、前述の給水装置27の給水ポンプ47を主要部として備える。
また、具体的には図示しないが、濃度調整槽85の底部には、前述した離解槽25の場合と同様に、ロードセルからなる重量センサ87が設けられており、濃度調整槽85内に供給される古紙パルプUPPと濃度調整用の水Wの量を計測制御する構成とされ、上記重量センサ87は装置制御部5に電気的に接続されている。
抄紙濃度制御部82は、上記区分抽出部80および懸濁液調製部81を連動して制御するもので、装置制御部5の一部を構成しており、以下の抄紙濃度調整工程を実行するように、上記区分抽出部80および懸濁液調製部81のポンプ86、47を連動して制御する。
すなわち、まず、上記叩解部21から古紙パルプ回収槽60に回収される古紙パルプUPPの全量(図示の実施形態においては、約2000gの古紙UP+100lの水W)から、古紙パルプ供給ポンプ86により、所定分量(図示の実施形態においては1l)の古紙パルプUPPが区分されて、濃度調整槽85へ移送収容される。すると、その重量が上記重量センサ87により感知計測されて、その結果が装置制御部5へ送られる。
続いて、この区分された古紙パルプUPPの所定分量に対応して、給水ポンプ47により、白水回収槽45から濃度調整槽85に、希釈用の水Wが所定量(図示の実施形態においては9l(実際は上記重量センサ87の重量計測による))だけ給水される。
これにより、上記濃度調整槽85内において、叩解濃度(図示の実施形態においては2%)の古紙パルプUPPが水Wと混合希釈されて、所定濃度(図示の実施形態においては約0.2%濃度(目標濃度))のパルプ懸濁液PSが混合調製される。
なお、この調製されるべきパルプ懸濁液PSの目標濃度は、予め行なった実験データに基づいて、後述する抄紙部4における抄紙能力を考慮して設定され、図示の実施形態の場合は上記のごとく約0.2%濃度に設定されている。
しかして、このように濃度調整槽85で目標濃度の抄紙濃度(0.2%)に調製されたパルプ懸濁液PSは、第1懸濁液供給ポンプ88により濃度調整槽85からパルプ供給槽89へ移送供給されて、次工程の抄紙部4のために待機貯留される。以後、この抄紙濃度調整工程は、古紙パルプ回収槽60の古紙パルプUPPの全量について同様に繰り返し実行される。上記パルプ供給槽89には、パルプ懸濁液PSを抄紙部4の抄紙ベルトコンベア部95へ送るための第2懸濁液供給ポンプ90が設けられている。
また、パルプ供給槽89内には攪拌装置91が設けられており、この攪拌装置87の攪拌作用により、待機貯留されるパルプ懸濁液PS全体の抄紙濃度が一定値に均一化されて保持される。
上記のように、抄紙濃度調整部3による濃度調整が全量一括式ではなく、区分形式つまり小出し形式で行われることにより、使用水量が大幅に減少されるばかりか、濃度調整槽85の形状寸法の大幅な縮小化も可能となり、さらには古紙再生装置1全体のコンパクト化が図られ得る。
パルプ濃度制御部3Cは、上記叩解濃度調整部3Aおよび抄紙濃度調整部3Bを連動して駆動制御するもので、具体的には、叩解濃度調整部3Aの叩解濃度制御部75からのパルプ濃度制御情報(古紙UPの投入量、離解槽25への給水量、古紙パルプUPPの叩解濃度等)を受け取って、この制御情報に応じて、パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPの濃度を目標値(抄紙濃度)にするための抄紙濃度制御情報(古紙パルプUPPの目標抄紙濃度、古紙パルプ回収槽60からの古紙パルプUPPの区分抽出量、濃度調整槽85への給水量等)を抄紙濃度調整部3Bの抄紙濃度制御部82に送り、これにより、上述した抄紙濃度調整工程を実行させる構成とされている。
抄紙部4は、前工程である上記パルプ製造部2で製造された古紙パルプUPPを抄紙して再生紙RPを製造する工程部位で、図1および図5に示すように、抄紙ベルトコンベア部(抄紙工程部)95、脱水ロール部96および乾燥ベルトコンベア部97を主要部として構成されるとともに、上記抄紙ベルトコンベア部95に、前述した本発明に係る特徴構成であるパルプ供給部(パルプ供給装置)15が設けられている。
抄紙ベルトコンベア部95は、上記パルプ製造部2のパルプ供給槽89から送られてくる水Wと古紙パルプUPPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを抄いて湿紙とする抄紙工程部として機能する部位で、抄紙ネットコンベア(抄紙コンベア)100と上記パルプ供給部15を主要部として構成されている。
抄紙ネットコンベア100は、パルプ懸濁液PSを抄きながら搬送するもので、上記パルプ懸濁液PSを濾過脱水する無数の網目よりなる抄き網構造の網状ベルト105がその走行方向へ向けて直線状に走行する配置構成とされている。
具体的には、抄紙ネットコンベア100は、パルプ懸濁液PSを抄きながら搬送走行する無端ベルトの形態とされた上記網状ベルト(無端網状ベルト)105と、この網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106とを備えてなる。
上記網状ベルト105を構成する抄き網構造の板材は、パルプ懸濁液PSが上記抄き網構造の無数の網目により適正に濾過脱水できる材質とされ、好適には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)(一般に「ナイロン」(登録商標)と呼ばれる。)あるいはステンレス鋼(SUS)などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるPET製網状ベルト105とされている。
また、網状ベルト105を構成する抄き網構造は、網目の細かいものや織り目の細かく平滑なものが好ましく、具体的には対象となる紙の特性に対応して選択されるが、例えば以下の点が考慮される。
(1)網状ベルト105の網目の大きさ:
網状ベルト105の網目の大きさは、好適には25メッシュ〜80メッシュに設定され、図示の実施形態においては、50メッシュの網状ベルト105が採用されている。
(2)網状ベルト105の網目の線径:
網状ベルト105の網目は、メッシュ数(大きさ)だけでなく網の線径も大きく影響する。同じメッシュ数でも、線径が太いと網目の大きさが小さくなり、細いと大きくなり、これは網目の空間率、あるいは空気を通す度合いの通気度(cm3/cm2/sec)で表される。
例えば、網目が細かくて通気度が悪くなると、濾水率も悪くなり、その結果、後述するパルプ供給部15の形状寸法が網状ベルト105の走行方向へ長くなって、装置の大型化を招く。また、逆に、網目が粗くて通気度が良すぎると、上記パルプ供給部15は短くて装置も小型になるが、再生される再生紙RPは目の粗い紙質になり、表裏面の平滑度の差も大きくなって、平滑度の悪い紙となる。
以上を含めた諸条件を考慮して、網状ベルト105としては、抄紙時に古紙パルプUPPが網状ベルト105の網目から抜け落ちるのを防ぐため、網の線径が細くて、メッシュ数が多く、かつ通気度を落とさない網目構造のものが好ましく、図示の実施形態の網状ベルト105としては、平織りで、50メッシュのPET製網状ベルト105が使用されている。この網状ベルト105によれば、筆記に問題ない良好な紙質が得られることが実験的に判明している。
さらに、網状ベルト105の幅寸法は、パルプ懸濁液PSを抄いて製造すべき再生紙RPの幅寸法Lよりも若干大きな所定幅寸法に設定される。
網状ベルト105は、図1および図5に示すように、駆動ローラ107、脱水ロール部96、従動ローラ108および支持ローラ109を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ107を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
そして、上記網状ベルト105における抄紙工程長さは、上記什器サイズの装置ケース6内における網状ベルト105の上側走行方向長さ(図示の場合は図1におけるパルプ供給部15から脱水ロール部96までの左右方向長さ)の範囲内に設定されている。
また、上記網状ベルト105の走行速度は、抄紙工程における諸条件を考慮して設定されるもので、好適には0.1m/分〜1m/分に設定され、図示の実施形態においては0.2m/分に設定されている。ちなみに、従来の古紙再生工場等の大規模工場でのこの種の抄紙ベルトの走行速度は、少なくとも100m/分以上に設定され、早いものでは1000m/分をはるかに上回る速度に設定される。
網状ベルト105は、図1および図5に示すように、その走行方向へ向けて上向き傾斜状にかつ直線状に走行する配置構成とされて、限られた設置空間における抄紙工程長さの可及的延長が図られるとともに、網状ベルト105の抄き網構造との関係での濾過脱水率の向上が図られている。
上記網状ベルト105を走行駆動する駆動モータ106は、具体的には電動モータで、装置制御部5に電気的に接続されている。また、この駆動モータ106は、後述する脱水ロール部96および乾燥ベルトコンベア部97の走行駆動源としても共用される。
パルプ供給部(パルプ供給装置)15は、上記網状ベルト105上に上記パルプ製造部2からのパルプ懸濁液PSを供給する部位で、上記抄紙ネットコンベア100の抄紙工程開始端位置に設けられており、このパルプ供給部15により、パルプ懸濁液PSが上記網状ベルト105上面に均一に拡散して供給される構成とされている。
図示のパルプ供給部15の具体的構造が図6〜図10に示されている。すなわち、このパルプ供給部15において、上記網状ベルト105が上述のごとく走行方向へ向けて上向き傾斜状に配置されるとともに、この網状ベルト105の上下両側位置に、抄き枠体110および仕切り部材111がそれぞれ配置されてなる。
抄き枠体110は、網状ベルト105の上面に摺接可能に配設されるとともに、上記パルプ製造部2から送られてくるパルプ懸濁液PSの網状ベルト105上面への供給幅Lを規定するもので、本体枠112、滞留部113、オーバフロー部(オーバフロー手段)114および流通路115を主要部として備えてなる。
本体枠112は、先端部つまり網状ベルト105の走行方向側端部が開放された平面略コ字形状とされ、その下端面112aが傾斜走行する上記網状ベルト105の上面105aに摺接するように配されるとともに、本体枠112の枠内幅寸法、つまり上記抄き枠体110の枠内幅寸法Lが、製造すべき再生紙RPの幅寸法に対応して設定されて、上記パルプ懸濁液PSの上記網状ベルト105の上面105aへの供給幅Lを規定する(図6、図7および図10参照)。
滞留部113は、パルプ製造部2から送られてくる水Wと古紙パルプUPPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを滞留させる部位で、具体的には、上記本体枠112の底部に、平板部材300が上記網状ベルト105の網目を上側から閉塞状態に被覆する形で設けられ、この平板部材300と走行する網状ベルト105とにより、上記滞留部113の底面部が形成されている。
また、これに関連して、上記平板部材300の先端縁には、上記網状ベルト105上へのパルプ懸濁液PSの円滑な流れを確保するための薄い案内シート301が設けられている。
オーバフロー部(オーバフロー手段)114は、上記滞留部113に滞留される上記パルプ懸濁液PSの水位を一定にするためのもので、抄き枠体110の先端部位に設けられている。
このオーバフロー部114は、具体的には、オーバフロー堰302と回収路303を主要部として備えてなり、図示の実施形態においては、上記滞留部113の両側にそれぞれ設けられている。
オーバフロー堰302は、上記本体枠112の先端部位における滞留部113の両側壁を構成する内壁304に設けられ、滞留部113に滞留される上記パルプ懸濁液PSの水位Hが一定以上になるとパルプ懸濁液PSをオーバフローさせる。なお、上記内壁304は、上述の底面部を形成する平板部材300と走行する網状ベルト105とにより、上記滞留部113を形成している。
前記オーバフロー堰302の上縁302aは、抄き枠体110が網状ベルト105上に設置された状態において水平直線状となるように設定されている。また、このオーバフロー堰302の上縁302aの高さ位置は、網状ベルト105上に抄かれる湿紙RP0さらには再生紙RPの坪量を所望の値に安定して維持すべく、網状ベルト105の前述した諸条件に対応して設定される。
すなわち、上記網状ベルト105上に抄かれる湿紙RP0の坪量を安定して確保するためには、上記抄き枠体110の滞留部113におけるパルプ懸濁液PSの滞留作用が重要な要素であり、この滞留作用は、滞留部113におけるパルプ懸濁液PSの水量(滞留水量)に大きく影響される。このため、このパルプ懸濁液PSの水量つまり水位Hを一定させることがきわめて重要である。
本パルプ供給部15においては、上記オーバーフロー堰302、302が設けられることで、上記滞留部113におけるパルプ懸濁液PSの水位Hが所定値に安定して維持される構成とされている。
また、オーバフロー堰302が上記本体枠112の先端部位における滞留部113の両側壁304、304、つまり、パルプ懸濁液PSの濾水抄紙作用を行う網状ベルト105に近接して設けられることにより、パルプ懸濁液PSの水量つまり水位Hを高精度に安定して維持することができ、延いては網状ベルト105上に抄かれる湿紙RP0の坪量を常時安定して確保することができる。
回収路303は、オーバーフロー堰302からオーバーフローしたパルプ懸濁液PSを回収する通路で、オーバフロー堰302の外側から本体枠112の周囲を介して回収口303aへ通じている。
オーバーフロー堰302からオーバーフローしたパルプ懸濁液PSは、この回収路303に流下回収されるとともに、上記回収口303aから上記パルプ供給槽89へ回収されて、再利用される。
流通路115は、上記滞留部113に供給されるパルプ懸濁液PSの均等な分散を促すとともに、パルプ懸濁液PSの乱れを防止するためのもので、曲がりくねった流通路の形態とされ、上記滞留部113の上流側に設けられている。
上記流通路115は、具体的には、上記抄き枠体110のパルプ懸濁液PSの供給口115aと上記滞留部113との間において上下方向へ曲がりくねって設けられている。
図示の実施形態の流通路115は、本体枠112内に設けられた複数の仕切り板305、305、…から主として構成され、具体的には、本体枠112の供給部306内に設けられた仕切り板305a、本体枠112の底面を形成する上記平板部材300の後部(仕切り板)305bと、本体枠112内に起立状に設けられた仕切り板305cとから、上記流通路115が曲がりくねって形成されている。この流通路115の進行方向は、その入口つまり上記供給部306の底部に開設された上記供給口115aから仕切り板305aを迂回して上方向へ向け、さらに仕切り板305bを迂回して、仕切り板305cの下側に開設された出口115bへ向けて延びる構成とされている(図8における矢符参照)。上記供給口115aは、パルプ懸濁液PSを供給するパルプ供給槽89に連通可能とされている。
なお、本体枠112内に起立状に設けられた上記仕切り板305cの上端縁は、平板部材116上に流れて滞留するパルプ懸濁液PSの水位、つまり、オーバーフロー堰302により規定される水位Hよりも下位に位置するように設定されている。
また、流通路115を形成する上記仕切り板305a、305b、305cと本体枠112との組立構造は、別個独立して形成した仕切り板305a、305b、305cを本体枠112に一体的に接続組立てされるほか、射出成形可能なプラスチック製など、一体成形可能な材料から形成される場合には一体成形されても良い。
仕切り部材111は、複数本の骨組み部材111a、111a、…からなる水切り可能なスノコ構造を備え、上記網状ベルト105の下面全幅を摺接支持する形状寸法を有する。
これに関連して、上記抄き枠体110の平板部材116の先端縁には、上述したように、網状ベルト105上へのパルプ懸濁液PSの円滑な流れを確保するための薄い案内シート301が設けられており、この案内シート88の先端縁88aは、上記仕切り部材111のスノコ構造を形成する桟つまり上記骨組み部材111a、111a、…の一つに対応した位置に設定され、具体的には、この桟111aにより支持される網状ベルト105の上面部位に摺接配置されている。
上記パルプ供給部15におけるパルプ懸濁液PSの流通経路構造における作用効果は以下のとおりと推測される。
(i)流通路115の曲がりくねった経路:
仕切り板305(305a、305b、305c)により区画形成される曲流通路115は曲がりくねって長く、パルプ懸濁液PSがこのような流通路115を通過することで、均等に分散されるとともに、パルプ懸濁液PSの乱れが有効に防止される。
(ii)オーバーフロー堰302:
オーバーフロー堰302、30の存在により、抄き枠体110内に送られるパルプ懸濁液PSの供給量に変動が生じても、抄き枠体110内に滞留するパルプ懸濁液PSの水位Hは常時一定に維持されて、その結果、網状ベルト105上に抄かれる湿紙RP0の坪量(紙厚)を安定させることができる。
すなわち、抄紙工程において、坪量(紙厚)を一定にするために、パルプ懸濁液PSの網状ベルト105上への供給量を一定にする必要がある。上記第2懸濁液供給ポンプ90による供給量調整では、ポンプ回転=パルプ懸濁液PSの供給量ではないため、坪量の変動が大きい。
これに対して、抄き枠体110内に滞留するパルプ懸濁液PSの水位Hが一定であれば、パルプ懸濁液PSの供給水量も一定になることに着目し、抄き枠体110の先端部より、パルプ懸濁液PSをオーバーフローさせて、抄き枠体110内に滞留するパルプ懸濁液PSの水位Hを一定にする。これにより、第2懸濁液供給ポンプ90吐出量に変動があっても、水位は一定になるため、安定した坪量が得られる。また、精密なポンプ制御が不要となる。
(iii)平板部材300の先端縁の薄い案内シート301:
案内シート301の先端縁301aが、仕切り部材111のスノコ構造を形成する骨組み部材111aにより支持される網状ベルト105の上面部位に摺接配置されていることにより、網状ベルト105のネットによる均一な濾水が確保される。
仕切り部材111の骨組み部材111a、111a間にあると、パルプ懸濁液PSは網状ベルト105の抄き網構造から濾水される際に、従動ローラ108の方向にも自由に流れる傾向にあり、これがため、網目による均一な濾水が困難で、局所的に不均一な濾水箇所が現れてしまう。このように濾水が不均一な場合、再生紙RPの地合に縦縞模様を生じさせてしまう。
これに対して、図示の実施形態のように、案内シート301の先端縁301aが、仕切り部材111のスノコ構造を形成する骨組み部材111aの上面位置に設定されていることで、このような不具合が有効に回避される。
上記パルプ供給部15の上流側には、このパルプ供給部15にパルプ懸濁液PSを供給する上記パルプ供給槽89が設けられている。
しかして、上記パルプ供給槽89に貯留されるパルプ懸濁液PSが、第二懸濁液供給ポンプ90により、上記供給口115aから抄き枠体110内の流通路115に供給されると、この曲がりくねった流通路115を図8に矢符にて示されるようにゆっくりと通過した後に、出口115bから滞留部113に流れて、上記オーバーフロー堰302、302により規定される水位Hまで滞留するとともに、この滞留作用と上記網状ベルト105の走行動作との協働作用により、走行方向へ向けて上向き傾斜状に配置されて走行する網状ベルト105上面に均一に拡散して供給される。
一方、オーバーフロー堰302からオーバーフローして回収路303に流下回収されたパルプ懸濁液PSは、上記のごとく、パルプ供給槽89へ回収される。
この網状ベルト105上面に均一に拡散されたパルプ懸濁液PSは、網状ベルト105の矢符方向への走行作用により、網状ベルト105と共に搬送されながら、網状ベルト105の網目による自重濾過作用を受けて脱水されて、湿紙RP0(図示の実施形態においては、含水率90〜85%)となる。
網状ベルト105により濾過脱水された白水W(抄紙する際に抄き網により濾過された極低濃度のパルプ水)は、前述したように、上記給水装置27の白水回収槽45に回収される。
脱水ロール部96は、上述の抄紙ベルトコンベア部95と後述の乾燥ベルトコンベア部97の連係部において、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を圧搾脱水する部位を構成している。
具体的には、下流側の上記乾燥ベルトコンベア部97の後述する平滑面ベルト145と上流側の上記抄紙ベルトコンベア部95の網状ベルト105とが、図1および図5に示すように、上下に積層状に配設されるとともに、これら平滑面ベルト145と網状ベルト105の上下隣接部分が上記連係部とされて、この連係部において、上記脱水ロール部96が、これら網状ベルト105および平滑面ベルト145を上下両側から挟圧状に転動圧搾して脱水する構造とされている。
脱水ロール部96は、少なくとも、予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bを主要部として備えてなる。
図示の脱水ロール部96は、図5に具体的に示すように、予備脱水ロール部96A、本脱水ロール部96B、および補助手段としての角度規定ロール部96Cを主要部として構成されている。
予備脱水ロール部96Aは、上記網状ベルト105上の湿紙RP0を予備的に圧搾脱水するもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接する予備脱水ロール120と、この予備脱水ロール120に対して上記平滑面ベルト145を上側から転動加圧する予備プレスロール121とからなる予備圧搾ロール対122を備えてなる。
そして、これら予備脱水ロール120および予備プレスロール121からなる予備圧搾ロール対122により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145は上下両側から所定の予備圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が予備的に脱水除去される。
この場合の予備圧力、つまり網状ベルト105上の湿紙RP0を予備的に圧搾脱水する上記予備脱水ロール部96Aの予備圧搾力は、多量の水分を含む湿紙RP0が潰れてしまわない程度の大きさに設定され、図示の実施形態においては、予備脱水後の上記網状ベルト105上の湿紙の含水率が80〜75%の範囲になるように、上記予備圧搾力が設定されている。
本脱水ロール部96Bは、上記予備脱水ロール部96Aで予備脱水された網状ベルト105上の湿紙RP0を本圧搾脱水して所定の含水率の乾紙(再生紙)RPとするもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接する本脱水ロール125と、この本脱水ロール125に対して上記平滑面ベルト145を上側から転動加圧する本プレスロール126とからなる本圧搾ロール対127の組を少なくとも1組備えてなる。
そして、これら本脱水ロール125および本プレスロール126からなる本圧搾ロール対127により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の本圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が最終的に脱水除去されて、所定の含水率の乾紙つまり再生紙RPとされる。
この場合の本圧力つまり網状ベルト105上の湿紙RP0を本圧搾脱水する上記本脱水ロール部96Bの本圧搾力は、予備脱水された湿紙RP0について確実に所定の脱水効果が得られる程度の大きさに設定され、図示の実施形態においては、本脱水後の網状ベルト105上の乾紙(再生紙)RPの含水率が70〜65%の範囲になるように設定される。
これら脱水ロール部96におけるロール120、121、125、126は、具体的には図示しないが、歯車機構からなる駆動連結手段により単一の駆動モータ106に駆動連結されて、すべてのロール120、121、125、126が互いに連動して回転駆動される。
この場合、これらロール120、121、125、126は、その外周面間において挟圧状に転動圧搾される網状ベルト105、平滑面ベルト145の接触面(網状ベルト105の下面および平滑面ベルト145の上面)に対して、上下のロール120、125の外周面と121、126の外周面が、互いに僅かの回転速度差をもってそれぞれ転動接触するように回転制御される。
具体的には、上側の予備および本プレスロール121、126の回転速度が下側の予備および本脱水ロール120、125の回転速度よりも僅かに大きく設定されており、これにより、平滑面ベルト145の走行速度が、上記網状ベルト105の走行速度よりも僅かに大きく設定されることになる。このような構成とされることにより、後述するように、脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0が、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転される際に、湿紙RP0にテンションがかかって、湿紙RP0に皺が発生するのを有効に防止する。
角度規定ロール部(角度規定手段)96Cは、上記予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bによる圧搾脱水作用を補助して有効にするためのもので、上記予備脱水ロール部96Aの上流側に設けられて、予備脱水ロール部96Aへ挿通される上記網状ベルト105および平滑面ベルト145間の傾斜角度を規定する。
角度規定ロール部96Cは、具体的には、上記予備脱水ロール部96Aへ挿通される上記網状ベルト105および平滑面ベルト145間の傾斜角度を規定するもので、具体的には、上記網状ベルト105に下側から転接して、上記予備脱水ロール部96Aに対する網状ベルト105の挿入角度を規定する網状ベルト案内ロール130と、上記平滑面ベルト145に上側から転接して、上記予備脱水ロール部96Aに対する平滑面ベルト145の挿入角度を規定する平滑面ベルト案内ロール131とを備えてなる。
そして、上記網状ベルト案内ロール130によって予備脱水ロール部96Aに対する網状ベルト105の挿入角度が規定されるとともに、上記平滑面ベルト案内ロール131によって予備脱水ロール部96Aに対する平滑面ベルト145の挿入角度が規定されることにより、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度が間接的に所定の範囲内に設定されることになる。
網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度は、予備脱水ロール部96Aによる予備脱水作用により、湿紙RP0に含まれる水分が予備脱水ロール部96Aの上流側に多量に搾り出されるところ、この搾り出された多量の水分が湿紙RP0に再吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうのを有効に防止するように設定される。
すなわち、予備脱水ロール部96Aの予備脱水ロール120と予備プレスロール121により、上面に湿紙RP0を載置した網状ベルト105と平滑面ベルト145が上下両側から挟圧状に転動圧搾されると、湿紙RP0に含まれている水分は、両ロール120、121の上流側へ搾り出される。
この場合、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αが大きいとすると、両ロール120、121の上流側近傍位置においては、上側の平滑面ベルト145が下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に対して離隔した状態にあり、このため、搾り出された上記湿紙RP0に含まれている多量の水分の一部が湿紙RP0に再び吸収されて、湿紙RP0が再びスラリー化してしまうおそれがある。
これに対して、上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αが小さいとすると、両ロール120、121の上流側近傍位置において、上側の平滑面ベルト145が下側の網状ベルト105上の湿紙RP0に押さえ付けられた状態となり、このため、上記湿紙RP0から搾り出された水分のすべてが、上記網状ベルト105を介して下側へ落下して、湿紙RP0に再吸収されることがなく、湿紙RP0の再スラリー化を確実に防止することができる。
上記網状ベルト105と平滑面ベルト145とのなす傾斜角度αは、各種試験の結果、好ましくは1〜20°に設定され、より好ましくは3〜7°に設定され、図示の実施形態においては、5°に設定されている。
しかして、駆動モータ106の駆動により、脱水ロール部96における予備脱水ロール部96Aおよび本脱水ロール部96Bの各ロール120、121、125、126が回転して、まず、予備脱水ロール部96Aにおける予備圧搾ロール対122により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の予備圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が予備的に脱水除去される(図示の実施形態においては、湿紙RP0の含水率は90〜85%から80〜75%に減少する)。
続いて、本脱水ロール部96Bにおける本圧搾ロール対127により、上記網状ベルト105および平滑面ベルト145が上下両側から所定の本圧力をもって挟圧状に転動圧搾されて、上記網状ベルト105上の湿紙RP0に含まれている水分が最終的に脱水除去されて、所定の含水率の乾紙つまり再生紙RPとされる(図示の実施形態においては、含水率80〜75%の湿紙RP0が含水率70〜65%の乾紙RPとなる)。この一連の工程により湿紙RP0から圧搾脱水された白水Wは、給水装置27の白水回収槽45に回収される。
上記脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0は、脱水ロール部96の下流側部位において、下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転されて、平滑面ベルト145と共に搬送されて、乾燥ベルトコンベア部97による乾燥工程が実施される。
なお、上記移転作用は平滑面ベルト145の平滑面構造により起こるものと考えられる。つまり、下側の網状ベルト105の表面が、微細な連続気孔が多数開口されてなる微細凹凸面であるのに対して、上側の平滑面ベルト145の表面が孔のない平滑面であり、この結果、僅かに水分を含んでいる湿紙RP0が上記平滑面ベルト145の表面との間の表面張力で吸着されるものと考えられる。
乾燥ベルトコンベア部97は、上記抄紙ベルトコンベア部95で抄紙形成された後、脱水ロール部96で圧搾脱水された乾紙RPをさらに加熱乾燥させて再生紙RPとする部位で、乾燥コンベア170、加熱乾燥部171および上記再生紙平滑化処理部(再生紙平滑化装置、再生紙平滑化処理手段)10を主要部として構成されている。
乾燥コンベア170は、脱水ロール部96で圧搾脱水された湿紙RP0を平滑にしながら搬送するもので、上記平滑面ベルト145と、この平滑面ベルト145を走行駆動する上記駆動モータ106とを備えてなる。
平滑面ベルト145は、湿紙RP0を加熱乾燥させながら搬送するもので、具体的には、所定幅を有する平滑面構造の板材が所定長さの環状に接続形成されてなる無端ベルトである。平滑面構造の板材は、湿紙RP0の片側表面を適正な平滑面に仕上げることができ、かつ後述する加熱乾燥部171による加熱作用に耐え得る材質とされ、好適には、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の可撓性耐熱材料で形成されており、図示の実施形態においては、フッ素樹脂製ベルトが採用されている。
この平滑面ベルト145は、図1および図5に示すように、駆動ローラ176、従動ローラ177、脱水ロール部96および従動ローラ178を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ176を介して、上記駆動モータ106に駆動連結されている。
平滑面ベルト145を走行駆動する駆動モータ106は、前述したように、上記抄紙ネットコンベア100および脱水ロール部96の走行駆動源として共用される。
加熱乾燥部171は、上記抄紙ネットコンベア100の網状ベルト105から平滑面ベルト145上に転写移転されて搬送される湿紙RP0を加熱乾燥する部位で、具体的には、湿紙RP0の下側面を搬送支持する上記平滑面ベルト145が、その走行経路途中箇所に配された加熱ヒータ180により下側から加熱される構成とされている。
この加熱ヒータ180は、平滑面ベルト145における湿紙RP0の搬送支持面と反対側面に摺接するヒータプレートの形態とされるとともに、平滑面ベルト145の走行経路における水平方向走行部分に設けられており、平滑面ベルト145における上記湿紙RP0の保持面である上面と反対側面つまり下面に摺接して設けられている。これにより、上記平滑面ベルト145上の湿紙RP0は、上記ヒータプレート180により加熱された平滑面ベルト145により間接的に加熱乾燥されることとなる。
図示の実施形態の加熱ヒータ180の具体的構造は、図5に示すように、上記再生紙平滑化処理部10としての機能を兼備するように構成されている。
すなわち、本実施形態の再生紙平滑化処理部10は、上記平滑面ベルト145と、この平滑面ベルト145を下側から摺接支持して、平滑面ベルト145を走行方向に向けて上方へ湾曲させた状態で走行案内するベルト案内部(ベルト案内手段)200とを主要部として備えてなり、このベルト案内部200として上記加熱ヒータ180が機能する構成とされている。
具体的には、ベルト案内部200は、平滑面ベルト145の走行方向へ向けて上方へ湾曲形成されかつ幅方向に水平直線状の輪郭を有する板状体からなり、その構成材料は、平滑面ベルト145を下側から摺接支持する強度と耐摩耗性を有するとともに、ヒータプレート基材として伝熱性に優れるものが好適に使用される。
図示の実施形態のベルト案内部200はステンレス鋼(SUS)板から構成されるとともに、上記装置機体54に支持基板201、201により取り付け支持されて、その上面が上記湾曲案内面200aとされている。また、具体的には図示しないが、このベルト案内部200の下面200bには、薄板状のいわゆる面状ヒータが一体的に貼着配置されて、ヒータプレートの形態とされた上記加熱ヒータ180が構成されている。
このように構成されたベルト案内部200の湾曲案内面200aに対して、上記平滑面ベルト145が所定のテンションをもって摺接可能に配置されている。これにより、平滑面ベルト145は、上記ベルト案内部200の湾曲案内面200a上を摺動案内されて、上方へ湾曲した状態で走行することになる(図5参照)。
また、本実施形態の再生紙平滑化処理部10は、上記構成に加えて、平滑面ベルト145により搬送される湿紙RP0全体を上側から均一な圧力をもって押圧する押圧部250を備える。
この押圧部250は、具体的には、図5に示すような被覆ベルトコンベアの形態とされている。
この被覆ベルトコンベア250は、平滑面ベルト145と重り合った状態で同一水平方向へ走行する配置構成とされた被覆ベルト251と、この被覆ベルト251を走行駆動する上記駆動モータ106とを備えてなる。この駆動モータ106は、実施形態1において説明したように、上記抄紙ネットコンベア100および脱水ロール部96の駆動源としても共用されている。
上記被覆ベルト251は、平滑面ベルト145上の湿紙RP0全体を平滑面ベルト145との間に挟持状にかつ密着状に被覆して走行する無端ベルトの形態とされ、その下面、つまり湿紙RP0全体を平滑面ベルト145との間に被覆する側の面が、上記平滑面ベルト145の上面と協働して、上記湿紙RP0全体を平滑化処理する平坦な平滑化作用面を形成している。網状ベルト251の湿紙RP0(再生紙RP)に対する被覆範囲は、上記平滑面ベルト145の走行経路において、上記ベルト案内部200(つまりヒータプレート180)とほぼ対向する範囲に設定されている。
上記被覆ベルト251は、具体的には、網状ベルトから形成されており、湿紙RP0から加熱蒸発する水蒸気を通気解放し得る無数の網目よりなる通気網構造を備える。
上記網状ベルト251を構成する通気網構造の板材は、平滑面ベルト145上の湿紙RP0から加熱蒸発する水分を、無数の網目により上側へ円滑に通過解放し得る材質とされ、好適には、前述した抄紙部4の網状ベルト105と同様の、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)(一般に「ナイロン」(登録商標)と呼ばれる。)あるいはステンレス鋼(SUS)などの耐腐食性に優れる材料で形成されており、図示の実施形態においては、耐熱性に優れるPET製網状ベルト251とされている。
また、網状ベルト251を構成する通気網構造は、網目の細かいものや織り目の細かく平滑なものが好ましく、前述した抄紙部4の網状ベルト105と同様、具体的には対象となる紙の特性に対応して選択される。
網状ベルト251は、加熱乾燥時の高熱に対する耐熱性と、湿紙RP0から加熱蒸発する水蒸気を通気し得る通気度とを有する限り、抄紙部4の中核をなす網状ベルト105ほどの厳しい設計条件を要求されないが、図示の実施形態の網状ベルト251としては、平織りで、25メッシュのPET製網状ベルトが使用されている。
さらに、網状ベルト251の幅寸法は、平滑面ベルト145と重なり合って、その間に湿紙RP0をサンドイッチ状に挟持するべく、図5に示すように、平滑面ベルト145の幅寸法と同一に設定されている。
網状ベルト251は、駆動ローラ255および従動ローラ256を介して、回転走行可能に懸架支持されるとともに、上記駆動ローラ255が上記駆動モータ106に駆動連結されている。
また、網状ベルト251は、ベルト案内部200の湾曲案内面200aに対し、上記平滑面ベルト145を介して所定のテンションをもって摺接可能に配置されている。これにより、網状ベルト251は、平滑面ベルト145と重り合った状態で、上記ベルト案内部200の湾曲案内面200a上を同一方向へ摺動案内されて、上方へ湾曲した状態で走行することになる(図9および図10(a)参照)。
また、このような網状ベルト251の配置構成により、被覆ベルト251は平滑面ベルト145上の湿紙RP0を上記被覆範囲全長にわたり均一な圧力をもって押圧し、湿紙RP0(再生紙RP)に反りや皺を生じることなく、平滑面ベルト145の表面に接触する湿紙RP0(再生紙RP)の片側表面と反対側表面を適正な平滑面に仕上げる。
そして、脱水ロール部96により圧搾脱水された湿紙RP0が下側の網状ベルト105の上面から上側の平滑面ベルト145の下面に転写移転された後、平滑面ベルト145がローラ178、176を介して反転されて走行し、この平滑面ベルト145より搬送される平滑面ベルト145上の湿紙RP0は、平滑面ベルト145の走行動作と上記ベルト案内部200(180)による平滑面ベルト145の湾曲形状とにより、搬送走行方向に一様にテンションを与えられるとともに、上側から被覆ベルトコンベア250の網状ベルト251により被覆されることによる加圧力により、上下から均一な圧力をもってサンドイッチ状に挟持されながら加熱乾燥処理されることとなる。これにより、前工程の抄紙工程で湿紙RP0に生じた皺や反りが有効に消失除去されるとともに、ヒータプレート180による加熱乾燥作用による湿紙の皺や反りの発生も有効に防止され、また、上側の網状ベルト251の適度な通気度を得て、湿紙RP0一面が均一に乾燥され、この結果、湿紙RP0は、全体として平滑な再生紙(乾紙)RPに再生され得る。
換言すれば、湿紙RP0(再生紙RP)は、搬送走行方向に一様に与えられるテンションと、上記平滑面ベルト145および被覆ベルト251による所定圧力をもったサンドイッチ構造とによる協働作用により、平坦な状態を保持されながら加熱乾燥処理される結果、前工程の抄紙工程で湿紙RP0に生じた皺や反りがさらに有効に消失除去されるとともに、ヒータプレート180による加熱乾燥作用による湿紙RP0(再生紙RP)の皺や反りの発生もさらに有効に防止され、その結果、什器サイズという非常に狭い古紙処理空間において、皺のない平滑な再生紙RPを確実に再生することができる。
また、上記被覆ベルトコンベア250の被覆ベルト251が、上記平滑面ベルト145上の湿紙RP0から加熱蒸発する水分を上側へ通過解放し得る無数の網目よりなる網状ベルトから形成されることにより、被覆ベルト251の存在にもかかわらず、湿紙RP0の加熱による発生蒸気が効率的に上昇逸散して、乾燥処理が円滑に促進され得る。
上記平滑面ベルト145における上記加熱乾燥部171の下流側には、剥離部材210が設けられており、平滑面ベルト145上で乾燥処理されて搬送される乾紙つまり再生紙RP(含水率10〜7%)を、平滑面ベルト145の保持面から順次剥離する。
これに関連して、この剥離部材210の下流側の平滑面ベルト145の走行経路終端位置には、定寸カッタ部211が設けられており、平滑面ベルト145から剥離された再生紙RPは、ここで所定形状(図示の実施形態においては、A4版の形状寸法)に切断されて、装置ケース6の排出口8から排出される。
装置制御部5は、上述したパルプ製造部2、パルプ濃度調整部3および抄紙部4の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、CPU、ROM、RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
この装置制御部5には、パルプ製造部2のパルプ製造工程、濃度調整部3の濃度調整工程および抄紙部4の抄紙工程を相互に連動して実行させるためのプログラム等が組み込まれるとともに、上記各構成部2(20、21)、3(3A、3B)、4(95、96、97)の駆動に必要な種々の情報、例えば、離解部20における攪拌装置26の駆動時間および回転速度、給水装置27の給水タイミングおよび給水量、叩解部21における循環ポンプ69の駆動時間および循環量、摩砕機50の駆動時間および回転速度、ならびに隙間調整手段57の調整タイミングおよび叩解隙間G調整量、ならびに、抄紙部4におけるコンベア100、170の走行速度、加熱乾燥部171の駆動時間、および定寸カッタ部211の動作タイミングなどが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されている。
また、上記装置制御部5には、前述したように、重量センサ48、87、ならびに各駆動部35、41、56、61、66、106が電気的に接続されており、装置制御部5は、これらの各種実測値および制御データに従って、上記各駆動部35、41、56、61、66、106を制御する。
しかして、以上のように構成された古紙再生装置1は、電源投入により起動して、装置制御部5により各構成部2(20、21)、3(3A、3B)、4(95、96、97)が相互に関連して自動制御され、これにより、装置ケース6の投入口7に投入された古紙UP、UP、…は、パルプ製造部2の離解部20および叩解部21により離解・叩解処理されて、古紙パルプUPPが製造され、さらにパルプ濃度調整部3で抄紙濃度のパルプ懸濁液PSが調製された後、このパルプ懸濁液PSが抄紙部4の抄紙ベルトコンベア部95、脱水ロール部96および乾燥ベルトコンベア部97により抄紙されて、再生紙RPとして再生され、装置ケース6の排出口8から再生紙受取トレー9に排出される。
以上のように構成された古紙再生装置1において、抄紙部4のパルプ供給部(パルプ供給装置)15は、抄紙ベルトコンベア部(抄紙工程部)95の走行する網状ベルト105の上面105aに摺接可能に配設されて、パルプ製造部2から送られてくる水Wと古紙パルプUPが共存するスラリー状のパルプ懸濁液PSを滞留させる滞留部113と、パルプ懸濁液PSの上記網状ベルト105上面への供給幅Lを規定する抄き枠体110を備え、この抄き枠体110の先端部位に、上記滞留部113に滞留されるパルプ懸濁液PSの水位Hを一定にするオーバフロー部114が設けられ、上記抄き枠体110内に供給された上記パルプ懸濁液PSは、上記滞留部113に上記オーバフロー部114により規定される水位Hまで滞留するとともに、この滞留作用と上記網状ベルト105の走行動作との協働作用により上記網状ベルト105上面に均一に拡散して供給されるから、抄き枠体110内に送られるパルプ懸濁液PSの供給量に変動が生じても、抄き枠体110内に滞留するパルプ懸濁液PSの水位Hは常時一定に維持されて、その結果、上記網状ベルト105上に抄かれる湿紙RP0の坪量が安定し、ひいては均一な地合の再生紙RPを得ることができる。
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
例えば、本発明に係るパルプ供給部(パルプ供給装置)15の具体的構成は、図示の実施形態に限定されず、同様な機能を有する他の構成を採用することが可能である。
一例として、図示の実施形態の古紙再生装置は、パルプ製造部2の叩解部21を構成する摩砕機50が、古紙をその叩解作用面51a、52aにより加圧叩解するとともに、古紙上の文字、図形等を形成するインキ類を磨砕微細化するようにされて、一般の上水道設備から得られる飲料水などの水だけの使用で、製紙工場や古紙再生工場のような大規模な古紙再生設備において従来必須とされていた古紙脱墨剤等の製紙用薬剤の使用をまったく不要とすることが可能な構成とされているが、本発明は、このような特別な製紙用薬剤を使わずに、通常の水だけで古紙の再生処理を実現することができる古紙再生装置だけでなく、古紙脱墨剤等の製紙用薬剤の使用を必須とする古紙再生装置にも適用できることはもちろんである。