JP5639344B2 - イオン液体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規イオン液体とその製造方法に関し、特には、不燃性で低粘度の新規イオン液体と、該イオン液体を高い収率で製造する方法に関するものである。
1992年のWilkesらの報告以来、常温で液体であり、イオン伝導性に優れた物質として、イオン液体が注目を集めている。該イオン液体は、陽イオンと陰イオンが静電気的引力で結合しており、イオンキャリア数が非常に多く、更には粘度も比較的低いため、イオンの移動度が常温でも高く、従って、イオン伝導性が非常に高いという特性を有する。また、イオン液体は、陽イオンと陰イオンのみで構成されているため、沸点が高く(300℃超)、液体状態を保持できる温度範囲が非常に広い。更に、該イオン液体は、蒸気圧が殆どないため、引火性が低く、熱的安定性も非常に優れている。
これら様々な利点を有するため、イオン液体は、昨今、非水電解液2次電池や電気二重層キャパシタの電解液への適用が検討されており(特許文献1及び2参照)、特に、電気二重層キャパシタの電解液にイオン液体を用いた場合には、イオン液体が電気二重層を形成するためのイオン源としても機能するため、別途支持電解質を添加する必要がないという利点もある。しかしながら、上記イオン液体は、常温で液体であるために通常有機基を含んでおり、燃焼の危険性がある。
これに対して、特開2007−153868号(特許文献3)には、燃焼の危険性が非常に低いイオン液体として、環状ホスファゼン化合物にアミンを結合させた構造の新規物質が報告されている。しかしながら、環状ホスファゼン化合物とアミンを単に混合して得られる反応混合物は、空気中で不安定であり、電気的にも不安定であった。
特開2004−111294号公報 特開2004−146346号公報 特開2007−153868号公報
上述のように、イオン液体は、引火性が低く、非水電解液2次電池や電気二重層キャパシタの電解液への適用が検討されているが、イオン液体自体は、難燃性であるものの、不燃性を示すまでには至っていない。また、イオン液体を電解液に適用する場合、イオン伝導度の観点から、低粘度であることが望まれる。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、不燃性で、低粘度の新規イオン液体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、環状ホスファゼン化合物に3級アミンを結合させ、更にヘキサフルオロホスフェートイオンでイオン交換した構造の新規物質が、イオン性を有すると共に、不燃性で且つ粘度が低く、また、イオン交換の後、更に、濾過し、遠心分離した後、活性炭で精製することで、発光性の高いイオン液体を高い収率で製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のイオン液体は、下記一般式(I):
Figure 0005639344
[式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表され、25℃における粘度が50〜60 mPa・sであることを特徴とする。
また、本発明の25℃における粘度が50〜60 mPa・sであるイオン液体の製造方法は、
有機溶媒中で、下記一般式(II):
Figure 0005639344
[式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表されるイオン性化合物と下記一般式(III):
+PF6 - ・・・ (III)
[式中、A+は一価の陽イオンを表す]で表される塩とを反応させて、下記一般式(I):
Figure 0005639344
[式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表されるイオン液体を生成させる工程(A)と、
前記工程(A)で得られる反応混合物を濾過して、A+Cl-(式中、A+は上記と同義である)を除去する工程(B)と、
前記工程(B)で得られる濾液を遠心分離して上澄み液を採取する工程(C)と、
前記工程(C)で得られる上澄み液に活性炭を加えて反応副生物を除去する工程(D)と
を含むことを特徴とする。この方法によれば、発光性の高いイオン液体を高い収率で製造できる。
本発明のイオン液体の製造方法において、前記有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素が好ましく、クロロホルムが特に好ましい。
本発明のイオン液体の製造方法の好適例においては、前記一般式(II)で表されるイオン性化合物の有機溶媒中での濃度が1〜5 mol/Lの範囲であり、前記一般式(III)で表される塩の有機溶媒中での濃度が1.5〜7.5mol/Lの範囲である。
本発明によれば、不燃性で、低粘度の新規イオン液体を提供することができる。また、本発明によれば、不燃性で、低粘度である上、発光性の高いイオン液体を高い収率で製造できる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のイオン液体は、上記一般式(I)で表されることを特徴とする。式(I)のイオン液体は、リン−窒素間二重結合を複数有する環状ホスファゼン化合物の一種であると共に、イオン性置換基を有するため、イオン性を有する。そして、ホスファゼン骨格を有するため、燃焼時に分解して、窒素ガスやリン酸エステル等を発生し、該窒素ガスやリン酸エステル等が燃焼の進行を抑制するため、燃焼の危険性が低い。また、上記イオン液体は、万が一の燃焼時にはフッ素が活性ラジカルの捕捉剤として機能し、燃焼の危険性を更に低減する。更に、上記イオン液体は、アルキル基を含み、燃焼時に炭化物(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もある。また更に、上記イオン液体中のPF6 -が、燃焼の危険性をより一層低減する。そして、これらの作用が組み合わさった結果として、式(I)のイオン液体は、不燃性を示す。また、式(I)のイオン液体は、粘度が低く、25℃における粘度50〜60 mPa・sである。また、驚くべきことに、本発明のイオン液体は、発光性を示す。
上記一般式(I)中のRは、それぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である。アルキル基の炭素数が8を超えると、粘度が高くなる。ここで、Rにおけるアルキル基としてはn-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等が挙げられる。なお、式(I)において、各Rは、同一でも異なってもよい。
式(I)のイオン液体のイオン性置換基は、−N+3とPF6 -とが主として静電気的引力によって結合してなる。そのため、式(I)の化合物は、イオン性を有する。
式(I)のイオン液体は、例えば、有機溶媒中で、上記一般式(II)で表されるイオン性化合物と上記一般式(III)で表される塩とを反応させる工程(A)を経て生成させることができる。この方法によれば、式(I)のイオン液体を高い収率で得ることができる。
上記一般式(II)のイオン性化合物と上記一般式(III)で表される塩との反応に用いる有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素が好ましく、ハロゲン化炭化水素の中でもクロロホルムが好ましい。なお、使用する有機溶媒は、一種のみでもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
上記一般式(II)において、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基であり、式(II)のRにおけるアルキル基としては、式(I)のRにおけるアルキル基の項で例示したものを同様に挙げることができる。
上記一般式(III)において、A+は一価の陽イオンであり、式(III)のA+における一価の陽イオンとしては、K+、Ag+、Li+等が挙げられる。なお、式(III)の塩として、具体的には、KPF6、AgPF6、LiPF6等が挙げられる。
式(II)のイオン性化合物と式(III)の塩との反応にあたって、式(III)の塩の使用量は、式(II)のイオン性化合物1 molあたり1〜1.5 molの範囲が好ましい。また、有機溶媒中での式(II)のイオン性化合物の濃度は1〜5mol/Lの範囲が好ましく、有機溶媒中での式(III)の塩の濃度は1.5〜7.5 mol/Lの範囲が好ましい。有機溶媒中での式(II)のイオン性化合物の濃度が1〜5 mol/Lの範囲であれば、有機溶媒に不溶な固体物質が溶媒中の容積を占領し、反応を阻害することが少ない。一方、有機溶媒中での式(III)の塩の濃度を式(II)のイオン性化合物の濃度に対して1.5倍程度過剰に、即ち、1.5〜7.5mol/Lの範囲にしておけば、塩素イオンとの配位子置換反応が円滑に行なわれる。
式(II)のイオン性化合物と式(III)の塩との反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、室温〜50℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記工程(A)の後には、上記工程(A)で得られる反応混合物を濾過して、A+Cl-(式中、A+は上記と同義である)で表わされる塩を除去する工程(B)を行うことが好ましい。ここで、工程(B)において、濾過方法は、特に限定されず、公知の濾材を用いて、常圧下で濾過してもよいし、減圧下で濾過してもよい。なお、工程(B)で除去される塩は、使用する式(III)の塩に依存し、カリウム塩を使用した場合はKClが除去され、銀塩を使用した場合はAgClが除去され、リチウム塩を使用した場合はLiClが除去される。
ここで、本発明者が検討したところ、上記工程(B)で得られる濾液から有機溶媒を留去して得られる反応生成物は、副生物を含み、発光量子収率が低いことが分かった。そのため、以下に詳述する工程(C)及び工程(D)を経て、反応生成物の精製を行うことが好ましい。
即ち、上記工程(B)の後には、上記工程(B)で得られる濾液を遠心分離して上澄み液を採取する工程(C)を行うことが好ましい。工程(C)において、遠心分離方法は特に限定されず、公知の遠心分離機を用いて通常の方法で実施できる。なお、遠心分離における回転速度は、特に限定されるものではないが、9000〜12000 rpmの範囲が好ましい。
また、上記工程(C)の後には、上記工程(C)で得られる上澄み液に活性炭を加えて反応副生物を除去する工程(D)を行うことが好ましい。工程(D)において使用する活性炭は、特に限定されず、公知の活性炭を使用できる。活性炭の使用量は、特に限定されるものではないが、式(I)のイオン液体1 g当り1 g〜5 gの範囲が好ましい。
上記(D)工程の後は、例えば、活性炭を濾過で取り除き、使用した有機溶媒を留去することで式(I)のイオン液体を単離することができる。なお、上記工程(B)で得られる濾液から有機溶媒を留去して得られる反応生成物は、副生物を含むため、発光性が低いが、工程(C)及び工程(D)を経て精製された式(I)のイオン液体は、発光性が高いという特徴を有する。
なお、出発原料として用いる上記一般式(II)で表されるイオン性化合物の製造方法は、特に限定されず、例えば、有機溶媒中で、下記化学式(IV):
Figure 0005639344
で表される環状ホスファゼン化合物と、下記一般式(V):
NR3 ・・・ (V)
[式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表される3級のアミンとを反応させることで、上記一般式(II)で表されるイオン性化合物を製造することができる。
式(IV)の環状ホスファゼン化合物と式(V)の3級のアミンとの反応に使用する有機溶媒としては、芳香族炭化水素、エステル化合物及びエーテル化合物が好ましい。ここで、芳香族炭化水素の中でもトルエンが好ましく、エステル化合物の中でも酢酸エチルが好ましく、エーテル化合物の中でも、ジエチルエーテルが好ましい。これら有機溶媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記一般式(IV)で表される環状ホスファゼン化合物は、例えば、(NPCl2)3で表される市販の環状ホスファゼン化合物を出発物質として、総ての塩素をフッ素化剤によりフッ素化した後、目的とする塩素置換部位にアルコキシ基やアミン基等を導入した後、HClやホスゲン等の塩素化剤により再び塩素化を行う方法や、使用する(NPCl2)3で表される市販のホスファゼン化合物に対して導入するフッ素の当量を計算した上で、必要量のフッ素化剤を添加する方法等で合成することができる。
上記一般式(V)において、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基であり、式(V)のRにおけるアルキル基としては、式(I)のRにおけるアルキル基の項で例示したものを同様に挙げることができる。
上記一般式(V)で表される3級アミンとして、具体的にはトリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ブチルジメチルアミン、ヘキシルジメチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。
式(IV)の環状ホスファゼン化合物と式(V)の3級のアミンとの反応において、式(V)のアミンの使用量は、式(IV)の環状ホスファゼン化合物1molあたり1〜1.5 molの範囲が好ましい。また、有機溶媒中での式(IV)の環状ホスファゼン化合物の濃度は1〜5 mol/Lの範囲が好ましく、有機溶媒中での式(V)のアミンの濃度は1〜5 mol/Lの範囲が好ましい。有機溶媒中での式(IV)の環状ホスファゼン化合物の濃度が1〜5 mol/Lの範囲であれば、有機溶媒に易溶であり、有機溶媒中での式(V)のアミンの濃度が1〜5 mol/Lの範囲であれば、生成したイオン性化合物(固体)が速やかに溶媒中で沈殿し、反応を阻害することがない。
また、式(IV)の環状ホスファゼン化合物と式(V)のアミンとの反応における反応温度は、特に制限されるものではなく、室温でも十分に反応が進行するが、15℃〜50℃の範囲で制御することができる。なお、反応が速い場合には、適時温度を下げることが有効であり、反応が遅い場合には、昇温して反応速度を上げることができる。但し、50℃を超えると、原材料であるホスファゼン化合物が揮発し易くなるため、50℃以下で反応を行うことが好ましい。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。なお、式(IV)の環状ホスファゼン化合物と式(V)のアミンとの反応は、外部から反応系に水分が混入しないように、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で反応を行うことで、アミン塩酸塩の副生を抑制することができる。
上述した本発明のイオン液体は、少なくとも融点が50℃以下であり、好ましくは融点が25℃以下であり、不燃性で、低粘度である。そのため、本発明のイオン液体は、電気二重層キャパシタ用電解液、リチウムイオン電池用電解液、色素増感型太陽電池用電解液等として利用することができる。また、本発明のイオン液体は、驚くべきことに、高い発光性を有し、高温下でも発光するため、例えば、高温条件下での発光材料や、高温プロセスを必要とする高分子や樹脂材料への発光性付与剤等としても有用である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(製造例1)
還流冷却器を備えた三口フラスコ中で、上記化学式(IV)で表される環状ホスファゼン化合物 1.5 mL(0.01 mol)と、トリ-n-プロピルアミン[即ち、上記一般式(V)で表され、3つのRの総てがn-プロピル基であるアミン]1.1 mL(0.01 mol)とを、脱水ジエチルエーテル 30 mLに溶解させ、20℃で1時間撹拌した後、エバポレーターにてジエチルエーテルを留去し、上記一般式(II)で表され、3つのRの総てがn-プロピル基であるイオン性化合物を得た。該イオン性化合物 1.0 g(0.0024 mol)をクロロホルム 30 mLに溶解させた後、KPF6 0.3g(0.0016 mol)を添加し、室温にて2時間撹拌したところ、KClが沈殿した。沈殿したKClを濾過で分離し、更に、遠心分離機を用い、12000rpmで30分間濾液を遠心分離して、上澄み液を採取した。次に、得られた上澄み液をクロロホルム 30 mLに溶解させ、更に活性炭 1.0 gを加え、1時間撹拌して、着色成分を除去した。次に、活性炭を濾過で取り除き、エバポレーターにてクロロホルムを除去し、更に、真空ポンプにて減圧下、150℃で24時間乾燥を行って、液体0.85 g(収率 60%)を得た。得られた液体を重クロロホルムに溶解させて、1H-NMR及び13C-NMRで分析したところ、該液体は、下記化学式(a):
Figure 0005639344
で表わされる化合物[即ち、上記一般式(I)で表され、3つのRの総てがn-プロピル基である化合物]であることを確認した。
[スペクトルデーダ(400 MHz, CDCl3, δ/ppm)]
1H-NMR: δ=1.0065 ・・・ HA
δ=1.8032 ・・・ HB
δ=2.9441 ・・・ HC
13C-NMR: δ=11.0417 ・・・ CD
δ=16.8205 ・・・ CE
δ=54.0364 ・・・ CF
(製造例2)
製造例1と同様にしてKClを濾過で除いて得た濾液を、遠心分離及び活性炭処理を経ることなく、真空ポンプにて減圧下、150℃で24時間乾燥して、液体 0.92 g(収率 72%)を得た。得られた液体を1H-NMR及び13C-NMRで分析したところ、該液体は、上記化学式(a)で表わされる化合物であることを確認した。
(製造例3)
還流冷却器を備えた三口フラスコ中で、上記化学式(IV)で表される環状ホスファゼン化合物 1.5 mL(0.01 mol)と、トリ-n-ブチルアミン[即ち、上記一般式(V)で表され、3つのRの総てがn-ブチル基であるアミン]1.72 mL(0.01 mol)とを、脱水ジメチルエーテル 30 mLに溶解させ、20℃で3時間撹拌した後、エバポレーターにてジメチルエーテルを留去し、上記一般式(II)で表され、3つのRの総てがn-ブチル基であるイオン性化合物を得た。該イオン性化合物 1.0 g(0.0021 mol)をクロロホルム 30 mLに溶解させた後、KPF6 0.3g(0.0016 mol)を添加し、室温にて2時間撹拌したところ、KClが沈殿した。沈殿したKClを濾過で分離し、更に、遠心分離機を用い、12000rpmで30分間濾液を遠心分離して、上澄み液を採取した。次に、得られた上澄み液をクロロホルム 30 mLに溶解させ、更に活性炭 1.0 gを加え、1時間撹拌して、着色成分を除去した。次に、活性炭を濾過で取り除き、エバポレーターにてクロロホルムを除去し、更に、真空ポンプにて減圧下、150℃で24時間乾燥を行って、液体0.85 g(収率 70%)を得た。得られた液体を重クロロホルムに溶解させて、1H-NMR及び13C-NMRで分析したところ、該液体は、下記化学式(b):
Figure 0005639344
で表わされる化合物[即ち、上記一般式(I)で表され、3つのRの総てがn-ブチル基である化合物]であることを確認した。
[スペクトルデーダ(400 MHz, CDCl3, δ/ppm)]
1H-NMR: δ=0.9716 ・・・ HA
δ=1.3773 ・・・ HB
δ=1.7063 ・・・ HC
δ=2.9103 ・・・ HD
13C-NMR: δ=13.4639 ・・・ CE
δ=20.0661 ・・・ CF
δ=25.5267 ・・・ CG
δ=52.3325 ・・・ CH
(製造例4)
製造例3と同様にしてKClを濾過で除いて得た濾液を、遠心分離及び活性炭処理を経ることなく、真空ポンプにて減圧下、150℃で24時間乾燥して、液体 0.97 g(収率 80%)を得た。得られた液体を1H-NMR及び13C-NMRで分析したところ、該液体は、上記化学式(b)で表わされる化合物であることを確認した。
(製造例5)
還流冷却器を備えた三口フラスコ中で、上記化学式(IV)で表される環状ホスファゼン化合物1.5 mL(0.01 mol)と、トリ-n-オクチルアミン[即ち、上記一般式(V)で表され、3つのRの総てがn-オクチル基であるアミン]4.38 mL(0.01 mol)とを、脱水ジメチルエーテル 30 mLに溶解させ、20℃で3時間撹拌した後、エバポレーターにてジメチルエーテルを留去し、上記一般式(II)で表され、3つのRの総てがn-オクチル基であるイオン性化合物を得た。該イオン性化合物 1.0 g(0.0016 mol)をクロロホルム 30 mLに溶解させた後、KPF6 0.3g(0.0016 mol)を添加し、室温にて2時間撹拌したところ、KClが沈殿した。沈殿したKClを濾過で分離し、更に、遠心分離機を用い、12000rpmで30分間濾液を遠心分離して、上澄み液を採取した。次に、得られた上澄み液をクロロホルム 30 mLに溶解させ、更に活性炭 1.0 gを加え、1時間撹拌して、着色成分を除去した。次に、活性炭を濾過で取り除き、エバポレーターにてクロロホルムを除去し、更に、真空ポンプにて減圧下、150℃で24時間乾燥を行って、液体0.65 g(収率 55%)を得た。得られた液体を重クロロホルムに溶解させて、1H-NMR及び13C-NMRで分析したところ、該液体は、下記化学式(c):
Figure 0005639344
で表わされる化合物[即ち、上記一般式(I)で表され、3つのRの総てがn-オクチル基である化合物]であることを確認した。
[スペクトルデーダ(400 MHz, CDCl3, δ/ppm)]
1H-NMR: δ=0.8810 ・・・ HA
δ=1.2888 ・・・ HB
δ=1.6464 ・・・ HC
δ=2.7867 ・・・ HD
13C-NMR: δ=14.0130 ・・・ CF
δ=22.5538 ・・・ CG
δ=24.2536 ・・・ CH
δ=27.0082 ・・・ CI
δ=29.0753 ・・・ CJ
δ=31.6761 ・・・ CK
δ=52.8870 ・・・ CL
(製造例6)
製造例5と同様にしてKClを濾過で除いて得た濾液を、遠心分離及び活性炭処理を経ることなく、真空ポンプにて減圧下、150℃で24時間乾燥して、液体 0.77 g(収率 65%)を得た。得られた液体を1H-NMR及び13C-NMRで分析したところ、該液体は、上記化学式(c)で表わされる化合物であることを確認した。
<イオン液体の評価>
上記製造例1〜6で得られたイオン液体の安全性を下記の方法で評価し、更に、粘度及び発光量子収率を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。また、比較として、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([bmim]PF6、A. Paul, P. K.Mandel and A. Samanta, Chem. Phys. Lett., 402, 375-379 (2005) 参照)についても評価・測定を行った。結果を表1に示す。
<安全性の評価>
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法で、大気環境下において着火した炎の燃焼挙動からイオン液体の安全性を評価した。その際、着火性、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象についても観察した。具体的には、UL試験基準に基づき、不燃性石英ファイバーにイオン液体1.0 mLを染み込ませて、127 mm×12.7 mmの試験片を作製して行った。ここで、試験炎が試験片に着火しない場合(燃焼長:0 mm)を「不燃性」、着火した炎が25 mmラインまで到達せず且つ落下物にも着火が認められない場合を「難燃性」、着火した炎が25〜100 mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を「自己消火性」、着火した炎が100 mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
<粘度の測定>
粘度測定計[R型粘度計Model RE500−SL、東機産業(株)製]を用い、室温(25℃)で、1 rpm、2 rpm、3 rpm、5 rpm、7 rpm、10 rpm、20 rpm及び50 rpmの各回転速度で120秒間づつ測定し、指示値が50〜60%となった時の回転速度を分析条件とし、その際の粘度を測定することによって、上記イオン液体の粘度を求めた。
<発光量子収率の測定>
上記イオン液体の発光量子収率を、4-アミノフタルイミドの蛍光量子収率の相対値として測定した。なお、励起波長は360 nmとし、メタノールに各イオン液体を0.1 mol/Lの濃度で溶解させて、室温(25℃)で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005639344
表1から、本発明のイオン液体は、不燃性で、粘度が低かったのに対し、比較例1のイオン液体は、自己消火性を示すにとどまり、また、粘度も高いことが分かる。
また、製造例1、3及び5で合成したイオン液体は、製造例2、4及び6で合成したイオン液体に比べて、発光量子収率が向上していることが分かる。これは、活性炭処理しなければ、不純物による光の散乱等により量子収率が見かけ低下することによるものと考えられる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I):
    Figure 0005639344
    [式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表され、25℃における粘度が50〜60 mPa・sであるイオン液体。
  2. 有機溶媒中で、下記一般式(II):
    Figure 0005639344
    [式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表されるイオン性化合物と下記一般式(III):
    +PF6 - ・・・ (III)
    [式中、A+は一価の陽イオンを表す]で表される塩とを反応させて、下記一般式(I):
    Figure 0005639344
    [式中、Rはそれぞれ独立して炭素数が4〜8のアルキル基である]で表されるイオン液体を生成させる工程(A)と、
    前記工程(A)で得られる反応混合物を濾過して、A+Cl-(式中、A+は上記と同義である)を除去する工程(B)と、
    前記工程(B)で得られる濾液を遠心分離して上澄み液を採取する工程(C)と、
    前記工程(C)で得られる上澄み液に活性炭を加えて反応副生物を除去する工程(D)と
    を含むことを特徴とする、上記一般式(I)で表され、25℃における粘度が50〜60 mPa・sであるイオン液体の製造方法。
  3. 前記有機溶媒が、ハロゲン化炭化水素であることを特徴とする請求項2に記載のイオン液体の製造方法。
  4. 前記有機溶媒が、クロロホルムであることを特徴とする請求項3に記載のイオン液体の製造方法。
  5. 前記一般式(II)で表されるイオン性化合物の有機溶媒中での濃度が1〜5 mol/Lの範囲であることを特徴とする請求項2に記載のイオン液体の製造方法。
  6. 前記一般式(III)で表される塩の有機溶媒中での濃度が1.5〜7.5 mol/Lの範囲であることを特徴とする請求項2に記載のイオン液体の製造方法。
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