以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されており、図面に描画された物体の寸法の比率等は、現実の物体の寸法の比率等とは異なる場合がある。具体的な物体の寸法の比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。図1に示すマイクロポンプ1は、板状の基材10を備える。基材10を構成する材料としては、樹脂、ガラス及びセラミックス等が挙げられる。基材10を構成する樹脂としては、有機シロキサン化合物、ポリメタクリレート樹脂及びポリオレフィン樹脂等が挙げられる。上記ポリオレフィン樹脂としては、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。上記有機シロキサン化合物の具体例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及びポリメチル水素シロキサン等が挙げられる。
基材10には、主面10aに開口しているマイクロ流路10bが形成されている。
「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体に所謂マイクロ効果が発現する形状寸法に形成されている流路をいう。具体的には、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体が、表面張力と毛細管現象との影響を強く受け、通常の寸法の流路を流れる液体とは異なる挙動を示す形状寸法に形成されている流路をいう。
主面10aの上には、フィルム状のガス発生材11aが貼り付けられている。マイクロ流路10bの開口は、ガス発生材11aにより覆われている。このため、ガス発生材11aに光又は熱等の外部刺激が加わることによりガス発生材11aから発生したガスは、マイクロ流路10bに導かれる。
ガス発生材11aの厚みは特に限定されない。ガス発生材11aの厚みは好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは500μm以下である。
ガス発生材11aは、ガスバリア層12により覆われている。ガスバリア層12により、ガス発生材11aにおいて発生したガスが、主面10aとは反対側に流出することが抑えられ、マイクロ流路10bに効率的に供給される。このため、ガスバリア層12は、ガス発生材11aにおいて発生したガスの透過性が低い層であることが好ましい。
ガスバリア層12を構成する材料としては、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びガラス等が挙げられる。
ガスバリア層12の厚みは、ガスバリア層12の材質等によって適宜変更でき、特に限定されない。ガスバリア層12の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上、好ましくは1mm以下、より好ましくは100μm以下である。光を透過させる場合に、ガスバリア層12は、紫外線領域の光の減衰が起きにくい層であることが好ましい。
ガス発生材11aは、フィルムであることが好ましい。なお、フィルムにはテープ及びシートが含まれる。
ガス発生材11aは、バインダー樹脂と、アゾ化合物又はアジド化合物であるガス発生剤と、アミノ基を有するシランカップリング剤とを含む。ガス発生材11aは、第三級アミンを含むことが好ましい。ガス発生材11aは、光増感剤を含むことが好ましい。
以下、上記ガス発生材に用いられる各成分の詳細を説明する。
(バインダー樹脂)
上記ガス発生材は上記バインダー樹脂を含む。上記ガス発生材がバインダー樹脂を含むことによって、上記ガス発生材を錠剤状、微粒子状及びフィルム状等の形態とすることが容易になる。上記ガス発生材が錠剤状、微粒子状及びフィルム状等の形態であると、上記ガス発生材を接着対象部材に接着させることができる。また、上記ガス発生剤を上記ガス発生材中に強固に保持することができる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記バインター樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、上記ガス発生剤及び上記アミノ基を有するシランカップリング剤を上記ガス発生材中に保持することが可能である適宜のバインダー樹脂が用いられる。上記バインター樹脂として、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリイミド等の高分子材料を用いることができる。これらの高分子材料を構成するモノマーの共重合体を用いてもよく、これらの高分子材料を併用してもよい。なかでも、ガスの発生効率がより一層高くなるため、上記バインダー樹脂は、上記ポリ(メタ)アクリレートであることが好ましい。すなわち、上記バインダー樹脂は、(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。なお、上記(メタ)アクリル重合体には、(メタ)アクリル共重合体が含まれる。
上記バインダー樹脂のSP値は好ましくは7以上、好ましくは10.5以下である。上記バインダー樹脂のSP値が上記下限以上及び上記上限以下であると、ガス発生剤との相溶性がより一層良好になる。
上記SP値(溶解度パラメータ)は、Fedors法(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,147(1974))を用いて算出可能である。
上記ポリ(メタ)アクリレートを構成する(メタ)アクリレートモノマーは、鎖状化合物及び環状化合物のいずれであってもよい。上記鎖状化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。上記環状化合物としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
上記ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリレートモノマーと、(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよい。上記ビニルモノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート類(カルボキシエチルアクリレートなど)のカルボキシル基含有ビニルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートなどの窒素含有ビニルモノマー等が挙げられる。上記ビニルモノマーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記(メタ)アクリレートモノマーと上記ビニルモノマーとの組合せとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリル酸とN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドとの組合せ等が挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーとビニルモノマーとの共重合比(質量比)は、98:2〜51:49の範囲内であることが好ましい。
ガスの発生効率をより一層高めるために、上記ポリ(メタ)アクリレートは、ポリメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ブチル・(メタ)アクリル酸共重合体、及び(メタ)アクリル酸ブチル・(メタ)アクリルアミド共重合体からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。また、ガスの発生効率を更に一層高めるために、上記ポリ(メタ)アクリレートは、アミノ基又はカルボニル基を有することが好ましい。
上記バインダー樹脂は、紫外光吸収帯を有することが好ましい。上記バインダー樹脂の紫外光吸収帯は、ガス発生剤及び光増感剤の紫外光吸収帯よりも短波長であることが好ましい。
上記バインダー樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは60万以上、好ましくは200万以下、より好ましく160万以下である。上記バインダー樹脂の重量平均分子量が上記下限以上であると、バインダー樹脂自体の凝集力の低下が抑えられ、上記ガス発生剤及び上記アミノ基を有するシランカップリング剤を上記ガス発生材中に、強固に保持することができる。上記バインダー樹脂の重量平均分子量が上記上限以下であると、上記ガス発生材を各種の形態に加工することが容易になる。
上記バインダー樹脂は、粘接着性を有することが好ましい。上記バインダー樹脂が粘接着性を有する場合には、上記ガス発生材に粘接着性を付与することができる。このため、上記マイクロポンプに上記ガス発生材を容易に配置することができる。例えば、粘接着性を有するフィルム状のガス発生材は、上記マイクロポンプの基板面又は基板内部の壁面に容易に貼り付けることができる。
上記ガス発生剤100質量部に対して、上記バインダー樹脂の含有量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。
(ガス発生剤)
上記ガス発生材は上記ガス発生剤を含む。上記ガス発生剤は、アゾ化合物又はアジド化合物である。上記ガス発生剤は、熱又は光等の外部刺激が加わった際にガスを発生させる。上記アゾ化合物又は上記アジド化合物は、特に限定されず、公知のアゾ化合物又はアジド化合物であってもよい。上記ガス発生剤は、上記アゾ化合物であることが好ましく、上記アジド化合物であることも好ましい。上記ガス発生剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ガス発生剤として用いられる上記アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、及び2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、特定の波長域の光又は熱等の外部刺激を受けることにより窒素ガスを発生させる。
上記アゾ化合物は、衝撃によっては気体を発生しないことから、取り扱いが極めて容易である。上記アゾ化合物は、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生させることもない。上記アゾ化合物を用いれば、光の照射を中断することで気体の発生を中断させることもできる。このため、上記アゾ化合物を上記ガス発生剤として用いることによりガス発生量の制御が容易である。
上記ガス発生剤として用いられる上記アジド化合物としては、例えば、スルフォニルアジド基又はアジドメチル基を有するアジド化合物が挙げられる。上記アジド化合物は、スルフォニルアジド基又はアジドメチル基を有することが好ましい。上記アジド化合物は、スルフォニルアジド基を有することが好ましく、アジドメチル基を有することも好ましい。
上記スルフォニルアジド基を有する化合物の好ましい例としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)において、R1〜R5はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基、炭化水素基、炭化水素基に置換基が結合した基又はアルコキシ基である。上記式(1)中のR1〜R5は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状であってもよい。上記炭化水素基は、飽和の炭化水素基であってもよく、不飽和の炭化水素基であってもよい。上記アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
上記式(1)において、R1〜R5の内の少なくとも1つの基は、炭化水素基又は炭化水素基に置換基が結合した基であることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましい。R1〜R5が炭化水素基又は炭化水素基に置換基が結合した基である場合に、該炭化水素基の炭素数は1以上、好ましく3以上、より好ましくは6以上、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。また、上記炭化水素基に置換基が結合した基における置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記式(1)のR1〜R5において、上記アルコキシ基の炭素数は1以上、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。また、上記アルコキシ基が置換基を有する場合に、該置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記式(1)において、R3は、アミド基、炭化水素基、炭化水素基に置換基が結合した基又はアルコキシ基であることが好ましい。また、上記式(1)において、R1,R2,R4及びR5はそれぞれ、水素原子であることが好ましい。
アジドメチル基を有するアジド化合物としては、例えば、グリシジルアジドポリマーが挙げられる。上記グリシジルアジドポリマーとしては、側鎖にアジドメチル基を有し、かつ末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルが好ましい。
側鎖にアジドメチル基を有し、かつ末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルの好ましい例としては、例えば、下記式(2−1)で表されるアジド化合物が挙げられる。
H(B)q(A)nOR1O(A)m(B)rH (2−1)
上記式(2−1)中、m+n=2〜20、m≧1、n≧1、q+r=10〜35、q≧5、r≧5であり、Aは、−OCH2CH2CH2CH2−、−OCH2CH2−、又はOCH2CH(CH3)−であり、Bは、−CH2CH(CH2N3)O−であり、R1は、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)−、−[(CH2CH2O)xCH2CH2]−、又は[(CH2CH2CH2CH2O)yCH2CH2CH2CH2]−である。上記R1におけるxは10〜25、yは5〜20である。
側鎖にアジドメチル基を有し、かつ末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルの好ましい他の例としては、例えば、下記式(2−2)で表されるアジド化合物が挙げられる。
上記式(2−2)において、mは、1〜20の整数、l+nは、7〜50の整数である。mは、好ましくは3以上、好ましくは15以下である。l+nは、好ましくは10以上、好ましくは30以下である。
側鎖にアジドメチル基を有し、かつ末端に水酸基を有する脂肪族ポリエーテルの好ましい他の例としては、例えば、下記式(2−3)で表されるアジド化合物が挙げられる。
上記式(2−3)において、m1、m2及びm3はぞれぞれ1〜20の整数であり、n1、n2及びn3はそれぞれ1〜20の整数である。
上記アジド化合物は、上記式(1)、(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表されるアジド化合物であることが好ましい。上記アジド化合物は、上記式(1)で表されるアジド化合物であることが好ましく、上記式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表されるアジド化合物であることも好ましい。
上述したアジド化合物は、特定の波長域の光、熱、超音波又は衝撃等の外部刺激を受けることにより分解して、窒素ガスを発生させる。
上記ガス発生材において、上記ガス発生剤の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
上記ガス発生材は、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む。上記アミノ基を有するシランカップリング剤の使用により、上記ガス発生材の接着対象部材に対する接着力が高くなるだけでなく、シランカップリング剤を用いたことに伴う上記ガス発生材から発生するガスの発生量の低下を抑えることもできる。すなわち、上記アミノ基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、アミノ基を有さないシランカップリング剤を用いた場合と比べて、上記ガス発生材の接着対象部材に対する接着力が効果的に高くなり、更に上記ガス発生材から発生するガスの発生量の低下が効果的に抑えられる。すなわち、上記アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることで、単位時間あたりのガス発生量にほとんど影響しなくなる。このことは、本発明者らにより初めて見出された。上記第三級アミンは、珪素原子を含まないことが好ましく、シランカップリング剤ではないことが好ましい。上記アミノ基を有するシランカップリング剤は、上記第三級アミンではないことが好ましい。
上記アミノ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これら以外のアミノ基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。上記アミノ基を有するシランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記アミノ基を有さないシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
上記ガス発生材において、上記ガス発生剤100質量部に対して、上記アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量は、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0003質量部以上、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。上記アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が上記下限以上であると、ガス発生材の接着対象部材に対する接着力がより一層高くなる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が上記上限以下であると、余剰の上記アミノ基を有するシランカップリング剤によるガス発生量の低下がより一層抑えられる。
上記ガス発生材では、上記第三級アミンと上記光増感剤とを含むことにより、上述の窒素ガスの発生がスムーズに行われ、ガス発生量を増加させることが可能となる。
(第三級アミン)
上記ガス発生材は、第三級アミンを含むことが好ましい。上記第三級アミンは特に限定されない。上記第三級アミンとしては、環状アミン、トリアルキルアミン及び芳香族アミン等が挙げられる。上記環状アミン及び上記芳香族アミンはそれぞれ、第三級アミンの構造を有する。
上記第三級アミンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ガス発生材は、環状アミン、トリアルキルアミン、及び芳香族アミンからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。上記第三級アミンは、環状アミンであることが好ましく、トリアルキルアミンであることが好ましく、芳香族アミンであることも好ましい。上記環状アミンは、芳香族骨格を除く環状骨格を有し、芳香族骨格を有さない。上記トリアルキルアミンは、環状骨格及び芳香族骨格を有さない。上記芳香族アミンは、芳香族骨格を有し、芳香族骨格を除く環状骨格を有さない。
上記環状アミンの炭素数は、好ましくは6以上、好ましくは20以下である。上記環状アミンの具体例としては、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及びジアザビシクロノネン(DBN)等が挙げられる。
上記トリアルキルアミンの3つのアルキル基は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記トリアルキルアミンの3つのアルキル基の炭素数はそれぞれ1以上、好ましくは2以上、好ましくは20以下、より好ましくは6以下である。上記トリアルキルアミンの具体例としては、トリメチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、トリプロピルアミン及びトリブチルアミン等が挙げられる。
上記芳香族アミンの具体例としては、N,N−ジメチルアミノトルイジン、N,N−ジエチルアミノトルイジン、N,N−ジメチルアミノベンゼン、N,N−ジエチルアミノベンゼン、及びN,N、N’N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
上記第三級アミンを用いる場合には、上記ガス発生剤100質量部に対して、上記第三級アミンの含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記第三級アミンの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記ガス発生材における単位時間あたりのガス発生量が効果的に多くなり、保存安定性が効果的に高くなる。
(光増感剤)
上記ガス発生材は、光増感剤を含むことが好ましい。上記光増感剤は、ガス発生剤への光による刺激を増幅する効果を有する。よって、上記ガス発生材が光増感剤を含むことにより、少ない光照射量によって、ガスを発生させ、放出させることができる。また、より広い波長領域の光によって、ガスを発生させ、放出させることができる。上記光増感剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光増感剤は特に限定されない。上記光増感剤として、公知の光増感剤を使用することができる。上記光増感剤としては、チオキサントン化合物、フェノチアジン化合物、アントラセン化合物及びアクリドン化合物等が挙げられる。
上記チオキサントン化合物の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、及び2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
上記フェノチアジン化合物の具体例としては、フェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、及び2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン等が挙げられる。
上記アントラセン化合物の具体例としては、アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9−カルボキシアントラセン、2−アントラセンカルボン酸、1−アントラセンカルボン酸、1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチル、(1R,2R)−2−(アントラセン−2,3−ジカルボキシイミド)シクロヘキサンカルボン酸、1−アミノアントラセン、2−アントラセンボロン酸、9−クロロメチルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸ナトリウム、ベンゾアントレン、ベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオン、ジベンゾ[a,c]アントラセン、1,2,3,4−ジベンゾアントラセン、9−ブロモアントラセン、9,10−ビス(クロロメチル)アントラセン、7−ブロモベンゾ[a]アントラセン、1,8−ビス(ヒドロキシメチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)アントラセン、1−ブロモアントラセン、2−ブロモアントラセン、9,10−ビス(ジエチルホスホノメチル)アントラセン、2−ブロモ−9,10−ジフェニルアントラセン、2−t−ブチルアントラセン、9−クロロメチルアントラセン、9−シアノアントラセン、1−クロロ−9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、2−クロロアントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジヒドロアントラセン、7,12−ジメチルベンゾ[a]アントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、2,3−ジメチルアントラセン、2,6−ジブロモアントラセン、1,5−ジブロモアントラセン、(11R,12R)−9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジアミン、9,10−ジヒドロ−9,10−ビス(2−カルボキシエチル)−N−(4−ニトロフェニル)−10,9−(エポキシイミノ)アントラセン−12−カルボキサミド、9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、1,8−ジヨードアントラセン、9−(ヒドロキシメチル)アントラセン、2−(ヒドロキシメチル)アントラセン、9−(2−ヒドロキシエチル)アントラセン、9−メチルアントラセン、7−メチルベンゾ[a]アントラセン、2,3−ベンゾアントラセン、ジベンゾ[de,kl]アントラセン、9−フェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、1−アニリノアントラセン、2−アニリノアントラセン、1,4,9,10−テトラヒドロキシアントラセン、1,8,9−トリヒドロキシアントラセン、(R)−(−)−α−(トリフルオロメチル)−9−アントラセンメタノール、(S)−(+)−α−(トリフルオロメチル)−9−アントラセンメタノール、及び9,10−ジヒドロ−9,10−[1,2]ベンゼノアントラセン等が挙げられる。
上記アクリドン化合物の具体例としては、10−メチル−9(10H)アクリドン、9(10H)−アクリドン、及び10−ブチル−2−クロロ−9(10H)−アクリドン等が挙げられる。
単位時間あたりのガス発生量を多くするために、上記光増感剤は、チオキサントン化合物、フェノチアジン化合物、アントラセン化合物、及びアクリドン化合物からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。上記光増感剤は、チオキサントン化合物であることが好ましく、フェノチアジン化合物であることが好ましく、アントラセン化合物であることが好ましく、アクリドン化合物であることも好ましい。
上記光増感剤としては、アルコキシ基を有する多環芳香族化合物も挙げられる。上記多環芳香族化合物は、アルコキシ基を2つ以上有していてもよい。なかでも、グリシジル基又は水酸基を含むアルコキシ基を有する多環芳香族化合物が好ましい。この多環芳香族化合物は、アルコキシ基の一部がグリシジル基又は水酸基で置換されているアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物であることが好ましい。このような光増感剤は、高い耐昇華性を有し、高温下で使用することができる。また、アルコキシ基の一部がグリシジル基又は水酸基で置換されることにより、上記ガス発生材中における溶解性が高まり、ブリードアウトが抑えられる。
上記光増感剤として用いられる上記多環芳香族化合物の好ましい例としては、アントラセン骨格を有する多環芳香族化合物等が挙げられる。上記アントラセン骨格を有する多環芳香族化合物は、アルコキシ基を有するアントラセン化合物であり、アントラセン誘導体等である。また、アルコキシ基を有する多環芳香族化合物のアルコキシ基の炭素数は1以上、好ましくは18以下、より好ましくは8以下である。
上記アルコキシ基を有する多環芳香族化合物の具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、及び2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等が挙げられる。
上記グリシジル基又は水酸基を含むアルコキシ基を有する多環芳香族化合物の具体例としては、9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、9−(グリシジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、9−(2−ビニルオキシエトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)アントラセン、9−(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、9−(p−エポキシフェニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2−t−ブチル−9,1−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、9−(p−ビニルフェニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、及び9,10−ジ(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
上記光増感剤は、光重合開始剤として一般に知られている材料であってもよい。このような光増感剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化される化合物が挙げられる。このような光増感剤の具体例としては、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール化合物;フォスフィンオキシド化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン等のチタノセン化合物;ベンゾフェノン;ミヒラーケトン;クロロチオキサントン;ドデシルチオキサントン;ジメチルチオキサントン;ジエチルチオキサントン;α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等が挙げられる。上記光増感剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光増感剤を用いる場合に、上記ガス発生剤100質量部に対して、上記光増感剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。また、上記光増感剤の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記光増感剤の含有量が上記下限以上であると、充分な光増感効果が得られる。上記光増感剤の含有量が上記上限以下であると、光増感剤に由来する残存物が少なくなり、充分にガスが発生されやすくなる。
上記第三級アミンと上記光増感剤とを併用する場合には、上記光増感剤に対して上記第三級アミンが当モルとなるように配合することが好ましい。また、ガス発生に際して、上記第三級アミンは消費されないと考えられるため、上記第三級アミンは、上記ガス発生剤のモル当量よりも少ない量で配合することができる。上記ガス発生剤において、上記第三級アミンのモル当量は、上記ガス発生剤のモル当量以下であることが好ましい。
なお、ここでいう当量とは、アミン中の窒素原子1個を1当量とし、光増感剤1分子を1当量とする。
(他の成分)
上記ガス発生材は、架橋剤、粘着剤及び無機充填材等を含んでもいてもよい。上記ガス発生材は、上記架橋剤を含むことがより好ましい。但し、上記ガス発生材は、上記架橋剤を含んでいなくてもよい。上記架橋剤の使用により、上記ガス発生材の接着力がより一層高くなる。
(他の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロポンプの略図的断面図である。
図2に示すマイクロポンプ2は、ガス発生材11bの形状及び基材10の形状において、上記の実施形態に係るマイクロポンプ1と異なる。
第2の実施形態では、マイクロ流路10bは、基材10内に形成されたポンプ室10cに接続されている。ガス発生材11bは、ブロック状に形成されており、ポンプ室10c内に配されている。
第2の実施形態に係るマイクロポンプ2においても、マイクロポンプ1と同様に、高出力かつ長駆動時間を実現することができる。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されず、要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(バインダー樹脂の合成例)
n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)97質量部と、アクリル酸(日本触媒社製)3質量部と、イルガキュア907(長瀬産業社製)0.05質量部と、酢酸エチル200質量部とを混合して、混合物を得た。次に、この混合物に、紫外線を4時間照射して、アクリル共重合体であるバインダー樹脂Aを作製した。バインダー樹脂Aの重量平均分子量は、約70万であった。得られたバインダー樹脂AのSP値は7以上、10.5以下の範囲内である。
(実施例1)
バインダー樹脂A100質量部と溶剤である酢酸エチル567重量部とを配合した。バインダー樹脂A100質量部(但し、溶剤である酢酸エチル567質量部をバインダー樹脂Aと共に配合してある)と、ガス発生剤であるGAP4006(グリシジルアジドポリマー、日油社製)110質量部と、アミノ基を有するシランカップリング剤であるN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製のKBM−602)0.001質量部と、第三級アミンであるトリプロピルアミン(トリn−プロピルアミン)2質量部と、光増感剤である2−イソプロピルチオキサントン(DKSHジャパン社製のIPX)3.5質量部と、架橋剤であるN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)(綜研化学社製のE−AX トルエン5%液)0.5質量部とを混合し、フィルム状に加工した。このフィルムを110℃で5分間加熱して、溶剤である酢酸エチルを除去した。これを離型PETフィルムで保護し、常温で一日(24時間)保管して、フィルム状のガス発生材を得た。
得られたフィルム状のガス発生材を用いて、上記第1の実施形態のマイクロポンプ1と実質的に同様の構成を有するマイクロポンプを作製した。
なお、マイクロ流路10bの断面形状は、0.5mm角の矩形状とした。マイクロ流路10bの長さは、800mmとした。マイクロ流路10bの先端は大気に開放した状態とした。ガス発生材は、直径0.6cmサイズで、厚み50μmのフィルム状とした。
(実施例2〜14及び比較例1〜6)
配合成分の種類及び配合量(単位は質量部)を下記の表1,2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ガス発生材を得て、マイクロポンプを作製した。なお、実施例2〜14では、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いた。比較例1,2,4,6では、アミノ基を有さないシランカップリング剤を用いた。比較例3,6では、シランカップリング剤を用いなかった。
また、用いたシランカップリング剤の種類は、以下の通りである。
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製のKBM−602)
N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(Gelest製)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製のKBM−903)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製のKBE−903)
(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(Gelest製のSIT8398.0、95%、H2NCH2CH2NHCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3)
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Gelest製のSIB1932.2、C4H9NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3)
ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン(Gelest製のSIB1824.5、95%、[(C2H5O)3SiCH2CH2CH2]2NH)
ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(Gelest製のSIB1833、95%、[(CH3O)3SiCH2CH2CH2]2NH)
ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(Gelest製のSIB1834.0、62%、溶剤:メタノール、(CH3O)3SiCH2CH2CH2NHCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3)
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン(Gelest製のSIA0591.0、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3)
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製のKBE−403)
3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製のKBE−502)
(評価)
(1)ガス発生量
ガス発生量の測定では、380nmの紫外線LED(ナイトレイドセミコンダクター社製のNS375L−5RFS)で120秒間照射したときのガスの発生量を測定した。ガス発生量の測定方法は、マイクロ流路10bとメスピペットとをシリコンチューブでつなぎ、この中を水で充填し、その後、ガス発生材に紫外線を照射し、発生したガスによるメスピペットの体積変化を読み取る方法とした。
(2)接着力
引張試験機(島津製作所製:AG−IS)を用いて、180度ピール剥離を行うことにより接着力を評価した。測定条件は、剥離速度300mm/分、剥離幅25mm及び測定温度23℃の条件である。
(3)アンカー
セロファンテープの糊面と得られたフィルム状のガス発生材の糊面とを互いに貼り合わせ、90度剥離を行い、剥離強度を測定した。測定方法は接着力の測定に準じる。
結果を下記の表1,2に示す。なお、実施例1〜4のガス発生材では、第三級アミンを用いていることから、24時間経過後及び10日経過後でも、ガスの発生量の低下は少なく、また24時間経過後のガス発生量(μL)を基準(100%)として、10日経過後の相対的なガス発生量(ガス発生量の増減)(%)は90%以上、105%以下の範囲内であり、保存安定性に優れていた。