本発明の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。
<実施の形態1>
まず、本発明の実施の形態1による負荷推定装置を備える配電系統制御システムの構成について説明する。
図1は、本実施の形態1による負荷推定装置120を備える配電系統制御システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態1による配電系統制御システム100は、フィーダ遮断器103、フィーダ遮断器用通信装置104、センサ内蔵開閉器105、センサ内蔵開閉器用通信装置106、監視制御装置107、電力量計113、電力量計用通信装置114、自動検針装置115、日射計116、および負荷推定装置120を備えている。
配電線102は、配電変電所101から延設されている。配電変電所101における配電線102の引出口にはフィーダ遮断器103が設置されている。また、配電線102上には、当該配電線102を複数の区間に区分するセンサ内蔵開閉器105が設置されている。
配電線102には、配電用変圧器108を介して低圧需要家109の構内に設置された負荷設備111およびPV112(PV設備)が接続されている。低圧需要家109における配電線102の引込箇所には、電力量計113が接続されている。
また、配電線102には、高圧需要家110の構内に設置された負荷設備111およびPV112が接続されている。高圧需要家111における配電線102の引込箇所には、電力量計113が接続されている。
また、PV112を保有していない(設置していない)低圧需要家109および高圧需要家110は、負荷設備111のみが配電線102に接続されている。
フィーダ遮断器103は、電圧センサPTおよび電流センサCTを内蔵しており、フィーダ遮断器103を通過する電力を予め定められた周期で計測する。フィーダ遮断器103は、フィーダ遮断器用通信装置104に接続されており、フィーダ遮断器用通信装置104は通信回線を介して監視制御装置107に接続されている。フィーダ遮断器用通信装置104は、フィーダ遮断器103で計測された計測値(以下、フィーダ遮断器計測値とも称する)を取得し、取得したフィーダ遮断器計測値を監視制御装置107に送信する。
センサ内蔵開閉器105は、電圧センサPTおよび電流センサCTを内蔵しており、センサ内蔵開閉器105を通過する電力を予め定められた周期で計測する。センサ内蔵開閉器105は、センサ内蔵開閉器用通信装置106に接続されており、センサ内蔵開閉器用通信装置106は、通信回線を介して監視制御装置107に接続されている。センサ内蔵開閉器用通信装置106は、センサ内蔵開閉器105で計測された計測値(以下、開閉器計測値とも称する)を取得し、取得した開閉器計測値を監視制御装置107に送信する。すなわち、センサ内蔵開閉器105は、配電線102上の計測点に設けられ、当該計測点を通過する電力を計測する。
監視制御装置107は、フィーダ遮断器用通信装置104から送信されたフィーダ遮断器計測値を受信し、フィーダ遮断器計測値データとして記録する。当該フィーダ遮断器計測値データは、負荷推定装置120による負荷推定処理において必要なときに参照される。フィーダ遮断器計測値データのデータ形式については後述する。
また、監視制御装置107は、センサ内蔵開閉器用通信装置106から開閉器計測値を受信し、開閉器計測値データとして記録する。当該開閉器計測値データは、負荷推定装置120による負荷推定処理において必要な時に参照される。開閉器計測値データのデータ形式については後述する。
電力量計113は、配電線102から設置先需要家に供給された電力量の累積値、および配電線102が設置先需要家から受電した電力量の累積値を、予め定められた周期で計測する。電力量計113は、電力量計用通信装置114と接続されており、電力量計用通信装置114は、通信回線を介して自動検針装置115と接続されている。電力量計用通信装置114は、電力量計113で計測された計測値(以下、電力量計計測値とも称する)を取得し、取得した電力量計計測値を自動検針装置115に送信する。すなわち、電力量計113は、配電線102における負荷の接続点である負荷接続点を介して接続された需要家に対して配電線102から供給する供給電力量と、配電線102が需要家から受電する受電電力量とを含む電力量を計測する。
自動検針装置115は、電力量計用通信装置114から送信された電力量計計測値を受信し、計量データとして記録する。当該計量データは、負荷推定装置120による負荷推定処理において必要な時に参照される。計量データのデータ形式については後述する。
日射計116は、推定対象となる負荷の近傍に設置され、設置地点の日射量を予め定められた周期で計測し、日射量データとして記録する。日射計116は、例えば、配電変電所101ごとに設置される。当該日射量データは、負荷推定装置120による負荷推定処理において必要な時に参照される。日射量データのデータ形式については後述する。すなわち、日射計116は、推薦対象となる需要家の負荷の近傍に配置され、設置地点の日射量を計測する。
次に、負荷推定装置120の構成について説明する。
図2は、本実施の形態1による負荷推定装置120の構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施の形態1による負荷推定装置120は、配電線102に接続された負荷の大きさを推定するものであり、事前統計処理部121、事前統計処理用通信部122、データ格納部123、推定処理部124、推定処理用通信部125、入力部126、および出力部127を備えている。事前統計処理部121、事前統計処理用通信部122、およびデータ格納部123は、データバスを介して相互にデータの送受信が可能である。また、データ格納部123、推定処理部124、推定処理用通信部125、入力部126、および出力部127は、データバスを介して相互にデータの送受信が可能である。
事前統計処理部121は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびDRAM(Dynamic Random Access Memory)で実現される。また、事前統計処理部121は、PVシステムに関する年間の統計情報に基づいてPVの時間別平均設備利用率(以下、時刻別PV平均設備利用率とも称する)を算出する。さらに、事前統計処理部121は、需要家設備データ、時刻別PV平均設備利用率、および計量データに基づき、配電線102における配電用変圧器108の接続点および高圧需要家の引込点(以下、まとめて負荷接続点とも称する)ごとに、配電系統からの電力供給とPV発電量によって賄われている負荷とを合わせた実負荷の平均値を時間帯別に求め、平均実負荷データとしてデータ格納部123に格納する。平均実負荷データのデータ形式については後述する。また、事前統計処理部121は、後述のPV発電量推定モデルを算出する。
すなわち、事前統計処理部121は、電力量計で計測された電力量と、需要家に設置されたPV112(PV設備)のPV容量から算出されたPV発電量とから、負荷接続点ごとにおける時間別の平均的な実負荷である平均実負荷を算出するとともに、日射計116で計測された日射量に基づいて、PV112の単位PV容量当たりのPV発電量を推定するPV発電量推定モデルを算出する。
なお、時間帯とは、1日24時間を複数の時間区間に分割したものであり、ここでは、1時間帯を毎時00分から1時間とした合計24時間帯とするが、例えば毎時00分からの30分までと、毎時30分から次の00分までとをそれぞれの時間帯とする合計48時間帯としてもよく、00:00から3時間ごとの時間帯とする合計8時間帯としてもよい。
事前統計処理用通信部122は、例えばネットワークインタフェース装置で実現される。事前統計処理用通信部122は、自動検針装置115と通信を行い、自動検針装置115から計量データを取得する。
データ格納部123は、例えば磁気ディスク装置で実現される。データ格納部123には、配電系統の構成情報として、配電線データ、センサ内蔵開閉器データ、配電用変圧器データが格納されている。また、データ格納部123には、供給設備情報として、低圧需要家供給設備データ、高圧需要家供給設備データ、およびPV設備データが格納される。また、データ格納部123には、事前統計処理の結果として、平均実負荷データおよびPV発電量推定モデルデータが格納される。データ格納部123に格納される各データのデータ形式については後述する。
推定処理部124は、例えばCPUおよびDRAMで実現される。推定処理部124は、開閉器計測値データ、日射量データ、およびPV発電量推定モデルデータに基づいて配電線区間ごとの実負荷を求め、当該配電線区間ごとの実負荷と平均実負荷データとから負荷接続点ごとの実負荷の分布を推定し、さらにPV発電量推定モデルデータとPV設備データとに基づいて負荷接続点ごとの配電系統から見た負荷の分布を推定する。
すなわち、推定処理部124は、日射計116で計測された日射量とPV発電量推定モデルとに基づいて算出された推定時点における推定対象区間内のPV発電量と、センサ内蔵開閉器105で計測された電力とから推定時点における実負荷を算出し、当該実負荷を事前統計処理部121で算出された平均実負荷に基づいて按分して推定対象区間内における負荷接続点ごとの実負荷を推定するとともに、当該実負荷から負荷接続点ごとのPV発電量を差し引いた、負荷接続点ごとの負荷を推定する。
推定処理用通信部125は、例えばネットワークインタフェース装置で実現される。推定処理用通信部125は、監視制御装置107および日射計116と通信を行い、開閉器計測値データおよび日射量データを取得する。
入力部126は、例えばモニタ、キーボード、およびマウスを備えて構成される。入力部126は、いずれの配電線102について負荷推定を行うかを指定する。運用者は、入力部126を操作して、負荷推定を行いたい配電線102を入力する。
なお、入力部126は、例えばネットワークインタフェース装置で実現し、電力の融通計算や電圧推定を行う他システムとの間で通信を行い、負荷推定対象の配電線102を入力として受信する構成としてもよい。
出力部127は、例えばディスプレイ装置、印刷装置、または磁気ディスク装置によって実現される。出力部127は、推定処理部124で算出された負荷接続点ごとの実負荷の分布、および系統から見た負荷の分布を出力する。
なお、出力部127は、例えばネットワークインタフェース装置で実現し、電力の融通計算や電圧推定を行う他システムとの間で通信を行い、推定処理部124で求めた負荷接続点ごとの実負荷の分布、および系統から見た負荷の分布を出力として送信する構成としてもよい。
次に、本実施の形態1による各種データのデータ形式について説明する。
表1は、配電線データの一例を示す表である。配電線データは、各配電線102がどの配電変電所101から引き出されているのかを示すデータである。表1に示すように、配電線番号は、配電線102を一意に識別する番号である。また、配電変電所番号は、配電変電所101を一意に識別する番号であり、当該配電線102の引出元の配電変電所101を示している。
表2は、配電線区間データの一例を示す表である。配電線区間データは、各配電線区分がどの配電線に含まれるのかを示すデータである。表2に示すように、配電線区間番号は、センサ内蔵開閉器105によって区分される配電線区間を一意に識別する番号である。また、配電線番号は、配電線102を一意に識別する番号である。
表3は、センサ内蔵開閉器データの一例を示す表である。センサ内蔵開閉器データは、各センサ内蔵開閉器105がいずれの配電線区間の間に設置されているのかを示すデータである。表3に示すように、区分開閉器番号は、センサ内蔵開閉器105を一意に識別する番号である。また、電源側区間番号は、センサ内蔵開閉器105から見て電源側に接続している配電線区間の配電線区間番号である。また、負荷側区間番号は、センサ内蔵開閉器105から見て負荷側に接続している配電線区間の配電線区間番号である。なお、あるセンサ内蔵開閉器105から送り出し元のフィーダ遮断器103までの間に、別のセンサ内蔵開閉器105が設置されていない場合において、当該センサ内蔵開閉器105に対応するセンサ内蔵開閉器データの電源側区間番号は、「(SS)」という値で示される。
表4は、配電用変圧器データの一例を示す表である。配電用変圧器データは、各配電用変圧器108が、どの配電線区間に含まれるのか、接続の相線式は何であるのか、および単相負荷をどの相間に接続しているのかを示すデータである。表4に示すように、配電用変圧器番号は、配電用変圧器108を一意に識別する番号である。また、配電線区間番号は、配電用変圧器108が接続する配電線区間の配電線区間番号である。また、相線式は、配電用変圧器108の接続相線式であり、単相2線式、単相3線式、三相3線式、あるいは電灯動力併用三相4線式といった値を示す。また、単相負荷接続相は、配電用変圧器108が単相変圧器または電灯動力併用三相4線式の変圧器である場合において、その単相負荷がどの相間に接続されているかを示しており、R−S、S−T、あるいはT−Rといった値を示す。なお、配電用変圧器108が三相3線式である場合は、単相負荷接続相は値なしとする(表4では、空白で示される)。
表5は、低圧需要家供給設備データの一例を示す表である。低圧需要家供給設備データは、各低圧需要家109に電力を供給する設備についての情報を示すデータである。表5に示すように、需要家番号は、需要家を一意に識別する番号である。また、電力量計番号は、電力量計113を一意に識別する番号であり、各低圧需要家109に設置された電力量計113の電力量計番号を示している。また、供給方式は、各低圧需要家109に電力を供給する方式であり、単相、三相といった値を示す。また、配電用変圧器番号は、各低圧需要家109が接続する配電用変圧器108の配電用変圧器番号である。
表6は、高圧需要家供給設備データの一例を示す表である。高圧需要家供給設備データは、各高圧需要家110に電力を供給する設備についての情報を示すデータである。表6に示すように、需要家番号は、各高圧需要家110を一意に識別する番号である。また、電力量計番号は、電力量計113を一意に識別する番号であり、各高圧需要家110に設置された電力量計113の電力量計番号を示している。また、配電線区間番号は、各高圧需要家110の引込線が接続している配電線区間の配電線区間番号である。
表7は、PV設備データの一例を示す表である。表7に示すように、PV設備データは、各需要家109,110が設置しているPV112(PV設備)についての情報を示すデータである。また、需要家番号は各需要家109,110を一意に識別する番号である。また、PV容量は、各需要家109,110が設置しているPVの容量(kW)を示す値である。
表8は、フィーダ遮断器計測値データの一例を示す表である。フィーダ遮断器計測値データは、フィーダ遮断器103によって計測した計測値を示すデータである。なお、遮断器計測値データは、1件のデータが1つのフィーダ遮断器103によって計測した1回分の結果に対応している。表8に示すように、配電線番号は、フィーダ遮断器103から引き出される配電線102を一意に識別する番号である。また、計測時刻は、計測結果に対応する計測値を計測した時刻を表している。また、PR,PS,PTは、それぞれR相、S相、T相を通過する有効電力を示している。
表9は、開閉器計測値データの一例を示す表である。開閉器計測値データは、センサ内蔵開閉器105によって計測した計測値を示すデータである。なお、開閉器計測値データは、1件のデータが1つのセンサ内蔵開閉器105によって計測した1回分の結果に対応している。表9に示すように、開閉器番号は、センサ内蔵開閉器105を一意に識別する番号である。また、計測時刻は、計測結果に対応する計測値を計測した時刻を表している。また、PR,PS,PTは、それぞれR相、S相、T相を通過する有効電力を示している。
表10は、計量データの一例を示す表である。計量データは、電力量計113によって計測した値を示すデータである。なお、計量データは、1件のデータが1つの電力量計113によって計測した1回分の結果に対応している。表10に示すように、電力量計番号は、電力量計113を一意に識別する番号である。電力量計113は、配電線102から需要家109へ供給した有効電力量の累積値を保持しており、表10に示す累積供給電力量は、この累積値の計測時刻での値を示している。また、電力量計113は、配電線102が需要家109から受電した有効電力量の累積値を保持しており、表10に示す累積受電電力量は、この累積値の計測時刻での値を示している。
表11は、日射量データの一例を示す表である。日射量データは、日射計116で計測した計測値を示すデータである。日射量データは、1件のデータが1つの日射計116によって計測した1回分の結果に対応している。表11に示すように、配電変電所番号は、日射計116を設置した近傍の配電変電所101を一意に識別する番号である。また、日射量は、計測時刻に示される時刻に計測した日射計116の計測値を示している。
表12は、平均実負荷データの一例を示す表である。平均実負荷データは、事前統計処理部121で求めた負荷接続点ごとの時間帯別の平均実負荷を示している。平均実負荷データは、1件のデータが1つの負荷接続点の1時間帯分の平均実負荷の値を示している。表12に示すように、負荷接続点番号は、配電線102に負荷が接続する単位である、配電用変圧器108または高圧需要家110を一意に識別する番号である。また、平均実負荷は、時間帯で表される時間についての平均実負荷、すなわち配電系統から負荷接続点に供給する負荷および、負荷接続点以下に接続するPV112の発電量によって賄われる負荷を合わせた平均的な値を示している。
なお、時間帯とは、1日24時間を複数の時間区間に分割したものであり、ここでは、1時間帯を毎時00分から1時間とした合計24時間帯とするが、例えば毎時00分からの30分までと、毎時30分から次の00分までとをそれぞれの時間帯とする合計48時間帯としてもよく、00:00から3時間ごとの時間帯とする合計8時間帯としてもよい。
PV発電量推定モデルデータは、日射量からPV容量1kWあたりの発電量を求めるための、線形回帰式の切片および傾きから構成される。
次に、事前統計処理部121によるPV発電量推定モデル導出の具体的な動作について説明する。
事前統計処理部121では、例えば、電力系統を運用する電気事業者が属する地域や国のPVシステムに関する統計情報を利用して、計測された日射量と、同地域・同時刻のPV発電量とを組み合わせて、「(日射量計測値,計測値から求めた単位容量あたり発電量)」というデータの組を作成する。これに最小二乗法を適用して、日射量xと単位容量あたり発電量yとの関係をy=α+βxという一次式に回帰する。この結果から、回帰直線の切片αと傾きβとを、PV発電量推定モデルデータとしてデータ格納部123に格納する。
なお、PV発電量推定モデルデータは、季節性を反映して推定精度を向上させるために、月ごとなどにそれぞれに求め、後述の負荷推定処理において、処理する時点に対応したPV発電量モデルデータを用いるようにしてもよい。PV発電量推定モデルの導出処理は、実績データの蓄積に合わせ、例えば毎月、季節の変化時期、あるいは年度替わりのタイミングなどで定期的に実行する。
次に、事前統計処理部121による平均実負荷算出の具体的な動作について説明する。
図3は、本実施の形態1による事前統計処理部121における平均実負荷の算出処理を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、例えば毎年度替わりのタイミングなどに定期的に実行する。また、平均実負荷算定において使用する計測データの対象期間は、例えば過去一年分などとする。
ステップS101において、推定対象系統付近におけるPV112の理論最大発電量を求める。太陽の高度および方位角については、例えば配電変電所の位置情報(緯度、経度)に基づいて時刻ごとに計算することができる。また、計算した太陽の高度および方位角から、日射量を計算することができる。これに対して、容量1kW、設置角度30度、設置方位真南向きのPVを仮定し、時刻ごとに発電量を計算して時刻ごとの理論最大発電量とする。このとき、計算精度を高めるためにエアマスや直接・間接光比率などを考慮してもよい。
次に、ステップS102において、ステップS101で求めた時刻ごとの理論最大発電量と、PVシステムの平均設備利用率とから、単位容量あたりの時刻別PV平均発電量(kW)を求めることによって、時刻別PV平均設備利用率を算出する。
具体的には、当該系統を運用する電気事業者の属する地域や国の、一般的に入手可能なPVシステムに関する年間の統計情報を利用して、様々な設置条件、天候条件を包含した平均設備利用率を得ることができる。当該平均設備利用率は、容量1kWのPVが一日に発電する平均電力量We[kWh]と言い換えることができる。一方、ステップS101で求めた時刻ごとの理論最大発電量を積分すると、容量1kWのPVが一日に発電する最大電力量Wt[kWh]を求めることができる。これらにより、各時刻の理論最大発電量にWe/Wtを乗ずることで、時刻ごとのPV発電量を求めることによって時刻別PV平均設備利用率を算出することができる。図4では、理論最大発電量と平均設備利用率(PV発電量)との関係を示している。
次に、ステップS103において、電力量計113ごとに日別・時間帯別の負荷を算出する。具体的には、事前統計処理部121はデータ格納部123から計量データ(表10参照)を取得し、電力量計113ごとに、各日付の各時間帯の終了時刻の累積供給電力量から当該時間帯の開始時刻の累積供給電力量を差し引いて、これを時間帯の幅で除する。同様に、電力量計113ごとに、各日付の各時間帯の終了時刻の累積受電電力量から当該時間帯の開始時刻の累積受電電力量を差し引く。さらに、同一電力量計、同一日付、同一時間帯の累積供給電力量の差引値から累積受電電力量の差引値を引いて、時間帯の幅で除した値を電力量計ごとの日別・時間帯別負荷データとして記憶する。なお、ここで算定した負荷は、電力系統から見た負荷となっており、需要家構内での発電により余剰して系統側で受電した電力量が、需要家構内に供給した電力量を上回った時間帯については、負の値として負荷が求められる。図5では、電力量計113ごとの日別・時間帯別の負荷算出のイメージを示している。
次に、ステップS104において、S103で求めた電力量計113ごとの負荷に基づき、配電用変圧器108ごとの時間帯別平均負荷を算出する。具体的には、事前統計処理部121は、データ格納部123から低圧需要家供給設備データ(表5参照)を取得し、低圧需要家109の電力量計113の接続先配電用変圧器108を導き、ステップS103で求めた電力量計113ごとの日別・時間帯別負荷データを同一接続先変圧器・同一時間帯ごとにグループにまとめて負荷の値を合算し、平均実負荷算定において使用する計測データの対象期間に含まれる日数(例えば、対象期間が1年間であれば365など)で除する。この結果を配電用変圧器108ごとの時間帯別平均負荷として記憶する。
次に、ステップS105において、時刻別PV平均設備利用率から、配電用変圧器108ごとの時間帯別PV平均発電量を算出する。具体的には、事前統計処理部121は、データ格納部123からPV設備データ(表7参照)と低圧需要家供給設備データ(表5参照)とを取得し、各低圧需要家109の接続先配電用変圧器番号から、配電用変圧器108ごとに低圧需要家109のPV容量を合算し、配電用変圧器108ごとのPV容量とする。また、ステップS102で求めた時刻別PV平均設備利用率の各値に配電用変圧器108ごとのPV容量を乗じて、対象時間帯ごとに合算し、この結果を配電用変圧器108ごとの時間帯別PV平均発電量として記憶する。
次に、ステップS106において、配電用変圧器108ごとの時間帯別平均負荷と時間帯別PV平均発電量とから時間帯別実負荷を算出し、平均実負荷データとしてデータ格納部123に格納する。具体的には、事前統計処理部121は、ステップS104で求めた配電用変圧器108ごとの時間帯別平均負荷と、ステップS105で求めた配電用変圧器108ごとの時間帯別PV平均発電量とを時間帯ごとに合算して、配電用変圧器108ごとの時間帯別平均実負荷を算出する。この結果を、データ格納部123に平均実負荷データとして格納する。また、負荷接続点番号には、それぞれの配電用変圧器番号を設定する。図6では、配電用変圧器108ごとの時間帯別平均実負荷の算出のイメージを示している。
次に、ステップS107において、高圧需要家110ごとに時間帯別平均負荷を算出する。具体的には、事前統計処理部121は、データ格納部123から高圧需要家供給設備データ(表6参照)を取得して高圧需要家110の電力量計番号を導き、ステップS103で求めた電力量計113ごとの日別・時間帯別負荷データから高圧需要家110の電力量計113に関するデータのみを抽出する。抽出したデータを同一電力量計番号・同一時間帯ごとにグループにまとめて負荷の値を合算し、グループ内のデータ件数で除する。この結果を高圧需要家110ごとの時間帯別平均負荷として記憶する。
次に、ステップS108において、ステップS102にて算出された時間帯別PV平均設備利用率から、高圧需要家110ごとの時間帯別PV平均発電量を算出する。具体的には、事前統計処理部121は、データ格納部123からPV設備データ(表7参照)と、高圧需要家供給設備データ(表6参照)とを取得して高圧需要家110のPV容量を導き、ステップS102で求めた時刻別PV平均設備利用率の各値に高圧需要家110ごとのPV容量を乗じて、この結果を高圧需要家110ごとの時間帯別PV平均発電量として記憶する。
次に、ステップS109において、高圧需要家110ごとの時間帯別平均負荷と時間帯別PV平均発電量とから時間帯別実負荷を算出し、平均実負荷データとして格納する。具体的には、事前統計処理部121は、ステップS107で求めた高圧需要家110ごとの時間帯別平均負荷と、ステップS108で求めた高圧需要家110ごとの時間帯別PV平均発電量とを時間帯ごとに合算して、高圧需要家110ごとの時間帯別平均実負荷を算出する。この結果を、データ格納部123に平均実負荷データとして格納する。また、負荷接続点番号には、各高圧需要家110の需要家番号を設定する。
次に、推定処理部124による負荷推定の具体的な動作について説明する。
図7は、本実施の形態1による推定処理部124における負荷推定の処理を示すフローチャートである。入力部126から推定対象区間を与える(入力する)ことで、与えられた各区間について図7に示すフローチャートを実行する。
ステップS201では、推定対象区間内の現在の負荷を求める。具体的には、推定処理部124は、データ格納部123からセンサ内蔵開閉器データ(表3参照)を取得し、推定対象区間の境界に設置されているセンサ内蔵開閉器105を特定し、推定処理用通信部125を駆動して各センサ内蔵開閉器105から最新の開閉器計測値データ(表9参照)を取得する。取得した開閉器計測値データでは、それぞれPR,PS,PTを合算して合計の通過電力を得る。そして、電源側のセンサ内蔵開閉器105の通過電力から、負荷側のセンサ内蔵開閉器105の通過電力を差し引いて、推定対象区間の区間内現在負荷として記憶する。
なお、推定対象区間において、負荷側のセンサ内蔵開閉器105が複数ある場合、負荷側のそれぞれの通過電力を合算して電源側の通過電力から差し引いて区間内現在負荷を求める。
また、区間内のPV112の発電量合計が需要家の実際の消費電力合計を上回っている場合において、区間内現在負荷は負の値として求められる。
次に、ステップS202において、推定対象区間内の全PV容量を求める。具体的には、推定処理部124は、データ格納部123から配電用変圧器データ(表4参照)と低圧需要家設備データ(表5参照)とを取得し、推定対象区間内の配電用変圧器108の下に接続されている低圧需要家109の需要家番号を得る。また、データ格納部123から高圧需要家設備データ(表6参照)を取得し、推定対象区間に接続されている高圧需要家110の需要家番号を得る。そして、データ格納部123からPV設備データ(表7参照)を取得し、取得した需要家番号と合わせて推定対象区間内の低圧・高圧需要家109,110に設置されたPV112の容量を取得して、これらを合算して、推定対象区間内のPV容量として記憶する。
次に、ステップS203では、推定対象区間内の現在PV発電量を求める。具体的には、推定処理部124は、推定処理用通信部125を駆動して、推定対象区間にある配電線102の送り出し元となる配電変電所101に設置された日射計116から最新の日射量データ(表11参照)を取得する。そして、データ格納部123からPV発電量推定モデルデータを取得し、傾きβを前述取得した日射量データの日射量に乗じ、これに切片αを加えた値を配電変電所101の単位容量あたりのPV現在発電量として記憶する。また、これにステップS202で求めた推定対象区間内のPV容量を乗じて、区間内PV現在発電量として記憶する。
次に、ステップS204において、推定対象区間内の実負荷(系統から供給している電力とPVによって賄っている電力とを合わせた負荷)を求める。具体的には、推定処理部124は、上記の記憶した推定対象区間の区間内現在負荷に区間内PV現在発電量を加え、区間内現在実負荷として記憶する。
次に、ステップS205において、区間内の実負荷を按分して負荷接続点ごとの実負荷推定値を求める。具体的には、推定処理部124は、データ格納部123から配電用変圧器データ(表4参照)と高圧需要家供給設備データ(表6参照)とを取得し、推定対象区間内に接続している配電用変圧器108および高圧需要家110を特定する。また、データ格納部123から平均実負荷データ(表12参照)を取得し、負荷接続点番号が上記の特定した推定対象区間内に接続している配電用変圧器108の配電用変圧器番号、または推定対象区間に接続している高圧需要家110の需要家番号となっており、かつ、時間帯が現在時刻を含む時間帯となっているデータを抽出する。そして、ステップS204で求めた区間内実負荷の値を、抽出したデータの平均実負荷の値で按分し、負荷接続点ごとの実負荷推定値として記憶する。図8では、負荷接続点ごとの実負荷を推定する一例を示している。
次に、ステップS206において、推定対象区間の負荷接続点ごとのPV容量を求める。具体的には、推定処理部124は、データ格納部123から配電用変圧器データ(表4参照)と低圧需要家供給設備データ(表5参照)とを取得し、推定対象区間内の配電用変圧器108の下に接続されている低圧需要家109の需要家番号を得る。そして、データ格納部123からPV設備データ(表7参照)を取得し、取得した低圧需要家109の需要家番号と合わせて、推定対象区間内の低圧需要家109に設置されたPV112のPV容量を取得し、配電用変圧器108ごとに合算する。また、データ格納部123から高圧需要家供給設備データ(表6参照)とPV設備データ(表7参照)とを取得し、推定対象区間内の各高圧需要家110のPV112ごとのPV容量を取得する。上記の取得した配電用変圧器108ごとのPV容量とともに、負荷接続点ごとのPV容量として記憶する。
次に、ステップS207において、負荷接続点別に現在のPV発電量推定値を算出する。具体的には、推定処理部124は、ステップS203で得られた単位容量あたりの現在PV発電量に、ステップS206で求めた負荷接続点ごとのPV容量をそれぞれ乗じて、負荷接続点ごとの現在PV発電量推定値として記憶する。
次に、ステップS208において、推定対象区間内の負荷接続点別に負荷推定値を算出する。具体的には、推定処理部124は、ステップS205で求めた負荷接続点別の実負荷推定値から、ステップS207で求めた負荷接続点別の現在PV発電量推定値を差し引き、推定対象区間内の負荷接続点別の負荷推定値として記憶する。
次に、ステップS209では、推定処理の結果を出力する。具体的には、推定処理部124は、出力部127を駆動し、ステップS205で求めた推定対象区間内の負荷接続点別の実負荷推定値と、ステップS207で求めた推定対象区間内の負荷接続点別の負荷推定値を出力する。
以上のことから、本実施の形態1によれば、事前統計処理部121において、自動検針装置115から得た需要家ごとの消費電力量実績から時間帯ごとの平均実負荷を求めておき、また、日射計116から得られた日射量とPV発電量とに基づいて、日射量とPV出力との関係式(PV発電量推定モデル)を求めておき、推定処理部124において、監視制御装置107からセンサ内蔵開閉器105の通過電力を取込み、また、配電変電所108近傍に設置した日射計116から現在の日射量を取込むことで、需要家の電力使用状況の時間的な変化と、現在の天候状況を反映し、精度よく負荷を推定することができる。また、電圧制御のための電圧分布推定に、負荷接続点ごとの需要家の負荷傾向および天候状況を反映した負荷推定値を用いることができるため、より適切な電圧制御の実現が可能となる。また、電力系統から供給する負荷と、PV発電量を加味した実際に需要家内で消費される実負荷とをそれぞれ推定結果として得られるため、実負荷推定値を用いて、事故時PVが停止した状態での必要融通量の算定を精度よく行うことができる。すなわち、本実施の形態1によれば、PVを設置した需要家が多数存在する配電系統において、天候状況に大きく影響されるPV発電量を考慮した負荷分布の推定が可能となる。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2では、日射計116の近傍にサンプルPV117を設置し、日射計116の計測値とサンプルPV117の発電量(サンプルPV発電量)とから、PV発電量を推定するモデル式(PV発電量推定モデル)を求めることを特徴としている。
図9は、本発明の実施の形態2による負荷推定装置120を備える配電系統制御システム100の構成を示すブロック図である。図9に示すように、本実施の形態2による配電系統制御システム(図示せず)はサンプルPV117を備えており、負荷推定装置120はサンプルPV117に接続されている。その他の構成および動作は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
サンプルPV117は、統計処理用のデータを収集するための太陽光発電装置であり、例えば負荷推定装置120の近傍の屋外に設置され、予め定められた周期でその発電量(PV発電量)を計測し、サンプルPV発電量データとして記録する。当該サンプルPV発電量データは、負荷推定装置120による負荷推定処理において必要な時に参照される。なお、サンプルPV発電量データのデータ形式については後述する。
次に、サンプルPV発電量データのデータ形式について説明する。
表13は、サンプルPV発電量データの一例を示す表である。表13に示すように、サンプルPV発電量データは、サンプルPV117によって発電した電力の計測値を示すデータである。発電量(kW)は、計測時刻で表される時刻に計測したサンプルPV117の発電量を示している。
次に、本実施の形態2による事前統計処理部121におけるPV発電量推定モデル導出の具体的な動作について説明する。
図10は、本発明の実施の形態2におけるPV発電量推定モデルの導出処理を示すフローチャートである。図10に示される処理は、例えば毎年度替わりのタイミングなど、定期的に実行する。
ステップS301において、対象期間内のサンプルPV発電量データの発電量を、PV容量1kWあたりの発電量に換算する。具体的には、事前統計処理部121は、データ格納部123から、計測時刻が対象期間内に含まれるサンプルPV発電量データを取得して、発電量の値をサンプルPVの設備容量SPV[kW]で除した結果を単位容量あたり発電量として記憶する。
次に、ステップS302において、PV発電量を日射量から推定するためのモデル式(PV発電量推定モデル)を求める。具体的には、事前統計処理部121は、データ格納部123から、計測時刻が対象期間に含まれる日射量データを取得して、ステップS301で求めた単位容量あたり発電量と計測時刻が同じデータ同士を組み合わせて、(日射量計測値,計測値から求めた単位容量あたり発電量)というデータの組を作成する。これに最小二乗法を適用して、日射量xと単位容量あたり発電量yとの関係をy=α+βxという一次式に回帰する。この結果から、回帰直線の切片αと傾きβとをPV発電量推定モデルデータとしてデータ格納部123に格納する。すなわち、事前統計処理部121は、日射計116で計測された日射量と、サンプルPV117(サンプルPV設備)で計測されたPV発電量とに基づいて、PV発電量推定モデルを算出する。
以上のことから、本実施の形態2によれば、全国的な観測・計測データ等の値が当てはまりにくい地域のPV発電量推定モデル式を精度よく構成することができ、結果としてこのような地域に対しても精度よく負荷を推定することができる。
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3では、一日の中の時間帯による電力使用状況の違いだけでなく、季節や曜日による違いを反映することで、推定精度の向上を図ることを特徴としている。本実施の形態3による配電系統制御システム100および負荷推定装置120の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
次に、事前統計処理部121による平均実負荷導出の具体的な動作について説明する。
図11は、本発明の実施の形態3による事前統計処理部121における平均実負荷の算出処理を示すフローチャートである。なお、図11において、ステップS401,403は、実施の形態1における図3のステップS101,103と同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。
ステップS402において、PV112の平均設備利用率を月ごとにそれぞれに求め、これに基づいて月ごとに時刻別平均PV設備利用率を求める。
次に、ステップS404において、ステップS403で求めた電力量計113ごとの日別・時間帯別負荷データを、同一接続先の配電用変圧器108、同一月、同一平休日区分、同一時間帯ごとにグループにまとめて負荷の値を合算し、各グループの対象月内の対象区分(平日または休日)に属する日数で除する。この結果を配電用変圧器108ごとの月・平休日別、時間帯別平均負荷として記憶する。
次に、ステップS405において、ステップS402で求めた月別・時刻別PV平均設備利用率の各値に配電用変圧器108ごとのPV容量を乗じて時間帯ごとに合算し、この結果を配電用変圧器108ごとの月別・時間帯別PV平均発電量として記憶する。
次に、ステップS406では、ステップS404で求めた、配電用変圧器108ごとの月別・平休日別・時間帯別の負荷に、ステップS405で求めた配電用変圧器108ごとの月別・時間帯別PV平均発電量を時間帯ごとに合算して、配電用変圧器ごとの平均実負荷を算出する。この結果を、データ格納部123に平均実負荷データとして格納する。
表14は、本実施の形態3による平均実負荷データである。表14に示すように、本実施の形態3による平均実負荷データは、月、平休日区分の項目が追加されている。月は、12ヶ月のうちいずれの月に計測されたのかを示しており、平休日区分は、平日あるいは休日のいずれであるのかを示している。その他のデータ形式は実施の形態1における表12に示す平均実負荷データと同様である。
次に、ステップS407において、ステップS403で求めた電力量計ごとの日別・時間帯別負荷データを、同一高圧需要家110、同一月、同一平休日区分、同一時間帯ごとにグループにまとめて負荷の値を合算し、グループ内のデータ件数で除する。この結果を高圧需要家110ごとの時間帯別平均負荷として記憶する。
次に、ステップS408において、ステップS402で求めた月別・時刻別PV平均設備利用率の各値に高圧需要家110ごとのPV容量を乗じて時間帯ごとに合算し、この結果を高圧需要家110ごとの月別・時間帯別PV平均発電量として記憶する。
次に、ステップS409では、ステップS407で求めた、高圧需要家110ごとの月別・平休日別・時間帯別の平均負荷に、ステップS408で求めた高圧需要家110ごとの月別・時間帯別PV平均発電量を時間帯ごとに合算して、高圧需要家10ごとの平均実負荷を算出する。この結果を、データ格納部123に平均実負荷データとして格納する。
本実施の形態3によるPV発電量推定モデルの導出は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
次に、推定処理部124による負荷推定の具体的な動作について説明する。
図12は、本実施の形態3による推定処理部124における負荷推定の処理を示すフローチャートである。なお、図12において、ステップS501〜504,506〜509は、実施の形態1における図7のステップS201〜204,206〜209のそれぞれに対応して同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。すなわち、ここではステップS505についてのみ説明する。
ステップS505では、負荷接続点番号が推定対象区間内に接続している配電用変圧器108の配電用変圧器番号、または推定対象区間に接続している高圧需要家110の需要家番号となっており、かつ、月、平休日、時間帯が推定時点の月、平休日、時間帯と一致しているデータを抽出する。そして、ステップS504で求めた区間内実負荷の値を、抽出したデータの平均実負荷の値で按分し、負荷接続点ごとの実負荷推定値として記憶する。
以上のことから、本実施の形態3によれば、季節や平日・休日の別が需要家の電力使用状況に大きく影響するような場合に、負荷推定の精度の向上が見込まれる。
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4では、単相負荷の接続相に基づいて、相ごとに負荷推定値を求めることを特徴としている。本実施の形態4による配電系統制御システム100および負荷推定装置120の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
次に、事前統計処理部121による平均実負荷の算出の具体的な動作について説明する。図13は、本実施の形態3による事前統計処理部121における平均実負荷の算出処理を示すフローチャートである。なお、図13において、ステップS601〜603,607〜609は、実施の形態1における図3のステップS101〜103,107〜109のそれぞれに対応して同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。
ステップS604において、相線式が単相2線、単相3線、三相3線の変圧器については、実施の形態1と同様に、ステップS603で求めた電力量計113ごとの日別・時間帯別負荷データを同一接続先変圧器・同一時間帯ごとにグループにまとめて負荷の値を合算し、平均実負荷算定において使用する計測データの対象期間に含まれる日数(例えば、対象期間が1年間であれば365など)で除して平均実負荷を得る。相線式が電灯動力併用三相4線の配電用変圧器108については、同一変圧器のグループ内で、供給方式が単相の需要家と三相の需要家とにさらにグループを分け、それぞれについて、ステップS603で求めた電力量計113ごとの日別・時間帯別負荷データを同一時間帯ごとにグループにまとめて負荷の値を合算し、平均実負荷算定において使用する計測データの対象期間に含まれる日数(例えば、対象期間が1年間であれば365など)で除して平均実負荷を得る。
次に、ステップS605において、相線式が単相2線、単相3線、三相3線の変圧器については、実施の形態1と同様に、配電用変圧器108ごとに需要家のPV容量を合算し、配電用変圧器108ごとのPV容量とする。相線式が電灯動力併用三相4線の変圧器については、供給方式が単相の需要家と三相の需要家とにさらにグループを分け、それぞれについて、PV容量を合算し、配電用変圧器108ごと、相ごとのPV容量とする。そして、ステップS602で求めた時間帯別PV平均設備利用率の各値に求めたPV容量をそれぞれ乗じて、この結果を配電用変圧器108ごと、相ごとの時間帯別PV平均発電量として記憶する。
次に、ステップS606において、ステップS604で配電用変圧器108ごと、相ごとのの時間帯別平均負荷と、ステップS605で求めた配電用変圧器108ごと、相ごとの時間帯別PV平均発電量とを時間帯ごとに合算して、データ格納部123に平均実負荷データとして格納する。このとき、負荷接続点番号に加え、接続相を合わせて格納する。すなわち、事前統計処理部121は、配電線102上に設けられた配電用変圧器108の相の接続情報に基づいて、負荷接続点ごと、および相ごとの平均実負荷を算出する。
表15は、本実施の形態4による平均実負荷データである。表15に示すように、本実施の形態4による平均実負荷データは、接続相の項目が追加されている。その他のデータ形式は実施の形態1における表12に示す平均実負荷データと同様である。
単相の配電用変圧器108の平均実負荷には、配電用変圧器データ(表4参照)より、単相負荷接続相の値を平均実負荷データの接続相に設定する。三相3線式の配電用変圧器108および高圧需要家110は接続相の値を三相と設定する。電灯動力併用三相4線式の配電用変圧器108については、三相供給需要家分の平均実負荷と単相供給需要家分の平均実負荷を、同一時間帯についてそれぞれ格納する。三相供給需要家分のデータの接続相の値は三相とし、単相供給需要家分のデータの接続相の値は、配電用変圧器データより、単相負荷接続相の値を設定する。
本実施の形態4によるPV発電量推定モデルの導出は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
次に、推定処理部124による負荷推定の具体的な動作について説明する。
図14は、本実施の形態4による負荷推定の処理を示すフローチャートである。なお、図14において、ステップS709は、実施の形態1における図7のステップS309のそれぞれに対応して同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。
ステップS701において、最新の開閉器計測値データ(表9参照)に基づき、推定対象区間の電源側の相ごとの通過電力から、負荷側の対応する相の通過電力を差し引いて、推定対象区間の相別区間内現在負荷として記憶する。
なお、推定対象区間の負荷側のセンサ内蔵開閉器105が複数ある場合、負荷側のそれぞれの通過電力を相ごとに合算して電源側の通過電力から差し引いて区間内現在負荷を求める。
次に、ステップS702において、配電用変圧器データ(表4参照)、低圧需要家供給設備データ(表5参照)、高圧需要家供給設備データ(表6参照)、PV設備データ(表7参照)に基づき、推定対象区間内の需要家に設置されたPV容量を相ごとに合算する。高圧需要家110および三相供給の低圧需要家109については、設置されたPV容量の3分の1ずつをR相、S相、T相それぞれのPV容量として加算する。単相供給の低圧需要家109については、設置されたPV容量の半分ずつをそれぞれ接続相のPV容量として加算する。例として、R−S接続の配電用変圧器108の下に接続する低圧需要家109のPV容量が4kWであった場合、R相に2kW、S相に2kWをそれぞれ加算する。求めた相ごとの合計値を相別PV容量として記憶する。
次に、ステップS703において、実施の形態1と同様に、PV発電量推定モデルデータを取得し、傾きβを上記の取得した日射量データの日射量に乗じ、これに切片αを加えた値を配電変電所101の単位容量あたり現在PV発電量として記憶する。そして、この単位容量あたり現在PV発電量を、ステップS702で求めた相別PV容量にそれぞれ乗じて、区間内相別現在PV発電量として記憶する。
次に、ステップS704において、ステップS701で求めた推定対象区間の相別区間内現在負荷に、S3303で求めた区間内相別現在PV発電量を、対応する相ごとにそれぞれ加え、相別区間内現在実負荷として記憶する。
次に、ステップS705において、ステップS704で求めた推定対象区間の相別区間内現在実負荷を、平均実負荷データの実負荷の値で相ごとに按分する。按分するにあたり、各負荷接続点のへ該当時間帯の平均実負荷を、以下のように各相に割り振る。高圧需要家110および三相3線式接続の配電用変圧器108については、該当時間帯の平均実負荷の3分の1ずつをR相、S相、T相にそれぞれ割り振る。単相接続の配電用変圧器108については、該当時間帯の平均実負荷の半分ずつをそれぞれの接続相に割り振る。例として、R‐S接続の配電用変圧器108の当該時間帯の平均実負荷が30kWであった場合、R相に15kW、S相に15kWずつ割り振る。また、電灯動力併用三相4線式の配電用変圧器108については、三相接続分の平均実負荷を3分の1ずつをR相、S相、T相にそれぞれ割り振り、単相接続分の平均実負荷を半分ずつをそれぞれの接続相に割り振る。
図15は、本実施の形態4による負荷接続点ごとの実負荷を、さらに相別に割り振るイメージを示す図である。こうして求めた相ごとの平均実負荷の値を用いて、ステップS704で求めた区間内相別実負荷の値を按分し、接続点ごとの相別実負荷推定値として記憶する。
次に、ステップS706では、配電用変圧器データ(表4参照)、低圧需要家供給設備データ(表5参照)、高圧需要家供給設備データ(表6参照)、PV設備データ(表7参照)に基づき、推定対象区間内の需要家に設置されたPV容量を負荷接続点ごと、相ごとに合算する。高圧需要家110については、設置したPV容量の3分の1ずつを当該負荷接続点におけるR相、S相、T相それぞれのPV容量とする。また、三相3線式の配電用変圧器108については、当該変圧器108下の需要家のPV容量を合算し、その3分の1ずつを当該負荷接続点における各相のPV容量とする。単相の配電用変圧器108については、当該変圧器108下の需要家のPV容量を合算し、その半分ずつを当該負荷接続点における接続相それぞれの(R−S接続の変圧器であれば、R相、S相それぞれの)PV容量とする。また、電灯動力併用三相4線式の配電用変圧器108については、当該変圧器108下の三相需要家に設置されたPV112の容量についてはその3分の1ずつを各相に、単相需要家に設置されたPV112の容量については、その半分ずつを各接続相に加えた値を各相のPV容量とする。
次に、ステップS707において、ステップS703で得た単位容量あたりの現在PV発電量に、ステップS706で求めた、負荷接続点別、相別のPV容量をそれぞれ乗じて、負荷接続点別、相別の現在PV発電量推定値として記憶する。
次に、ステップS708において、ステップS705で求めた負荷接続点別、相別の実負荷推定値から、ステップS707で求めた負荷接続点別、相別のPV発電量推定値をそれぞれ差し引き、推定対象区間内の負荷接続点別、相別の負荷推定値として記憶する。
以上のことから、本実施の形態4によれば、相ごとに負荷推定値を求めることで、PV112の接続先が特定相に偏っている場合や、不平衡率の高い配電線において、相ごとに適切な電圧制御を実現するために活用できる。
<実施の形態5>
本発明の実施の形態5では、一部または全部の需要家について、PV発電量を電気事業者が全量買い取る構成としていることを特徴としている。
図16は、本実施の形態5による負荷推定装置120を備える配電系統制御システム100の構成を示すブロック図である。
図16に示すように、高圧需要家401は、電気事業者によるPV発電量全量買い取り対象の需要家(別計量対象の需要家)であり、電力系統からの引込線と負荷設備111との間に、供給電力量を計測する供給用電力量計402を備え、また、電力系統からの引込線とPV112との間にPV発電量を計測するPV用電力量計403を備えている。
供給用電力量計402およびPV用電力量計403は、電力量計用通信装置114と接続されており、電力量計用通信装置114は、通信回線を介して自動検針装置115と接続されている。自動検針用通信装置115は、電力量計402,403で計測された計測値(以下、電力量計計測値とも称する)を取得し、取得した電力量計計測値を自動検針装置115に送信する。
自動検針装置115は、電力量計用通信装置114から送信された電力量計計測値を受信し、計量データとして記録する。
次に、事前統計処理部121による平均実負荷算出の具体的な動作について説明する。
図17は、本実施の形態5による事前統計処理部121における平均実負荷の算出処理を示すフローチャートである。なお、図17において、ステップS801〜803,805,808は、実施の形態1における図3のステップS101〜103,105,108のそれぞれに対応して同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。
ステップS804において、PV発電量全量買い取り対象の需要家を除いて、実施の形態1のステップS104と同様に、配電用変圧器108ごとの時間帯別平均負荷を算出する。
次に、ステップS806において、実施の形態1のステップS106と同様に、配電用変圧器108ごとの時間帯別平均実負荷を求める。また、PV全量買い取り対象需要家の接続している配電用変圧器108については、供給用電力量計402の日別・時間帯別負荷データから、当該需要家のデータを抽出し、時間帯別の負荷平均値をもとめる。PV全量買い取り対象需要家の供給用電力量計計測値は、そのまま実負荷の値となっているため、これと前述求めた実負荷とを、それぞれの需要家件数で加重平均することで、当該配電用変圧器108の時間帯別平均実負荷を求める。
次に、ステップS807において、PV発電量全量買い取り対象の需要家を除いて、実施の形態1のステップS107と同様に、高圧需要家110ごとの時間帯別平均負荷を算出する。
次に、ステップS809において、ステップS807で時間帯別平均負荷を求めた高圧需要家110について、実施の形態1のステップS109と同様に、高圧需要家110ごとの時間帯別平均実負荷を求める。また、PV全量買い取り対象の高圧需要家110について、ステップS803で求めた電力量計402,403ごとの日別・時間帯別負荷データから同一時間帯ごとに負荷の値を合算し、グループ内のデータ件数で除する。PV全量買い取り対象需要家の供給用電力量計計測値は、そのまま実負荷の値となっているため、この結果を当該高圧需要家110の時間帯別平均実負荷とする。
以上のことから、本実施の形態5によれば、需要家が設置したPV112の発電量を、電気事業者が全量買い取るような場合であっても、負荷接続点ごとの需要家の負荷傾向および天候状況を反映した負荷推定値を求めることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。