まず、この発明に係る塗布装置について説明する。この発明に係る塗布装置は、管状基体の外周面に層形成材料を塗布厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように塗布可能な塗布装置である。このように層形成材料が塗布される管状基体は、管状を成す部材であれば、単層構造でも例えば図6に示されるように複層構造でもよく、その管壁の厚さは特に限定されないが、後述するローラに用いられる場合には通常薄肉に形成され、例えば20〜100μmに設定される。管状基体及びローラについては後述する。
この発明に係る塗布装置は、軸線が重力方向に沿うように管状基体を起立状態に固定する固定部材と、この管状基体の外径よりも大きな内径の貫通孔が穿孔された底部、及び、この底部から重力方向に沿って形成され管状基体の外周面を囲繞する環状空間を有し、重力方向に沿って相対的に前後進可能な環状塗布部材と、管状基体の外径よりも大きな内径を有し、貫通孔内に配置されるJIS A硬度が30〜80の可撓性環状部材と、可撓性管状部材の内径を拡縮させる拡縮部材とを備えている。
前記固定部材は、管状基体を起立状態に固定できる部材であればよく、好ましくは管状基体の軸線周りにその外周面が実質的に変位又は変動することのないように管状基体を固定できる部材である。この固定部材は、例えば、管状基材を外周面に保持する筒状保持部材と、共通の軸線上に相対向するように配置され、筒状保持部材の端部それぞれを支持固定する一対の支持固定部材とを有して成る。筒状保持部材は、管状基体が外挿され、管状基体を外周面に保持するようになっている。例えば、筒状保持部材は管状基体の内径と略同一の外径を有する筒状をなしており、その軸線に垂直な断面は管状基体の断面と略同一形状となっている。この筒状保持部材は中子と称することもできる。前記一対の支持固定部材は、共通の軸線すなわち一直線上に相対向するように、すなわち、互いに離れて直列に配置されている。前記一対の支持固定部材は、筒状保持部材の端部それぞれを支持固定するようになっており、この筒状保持部材及び管状基体を例えばこれらの軸線が支持固定部材の軸線と一致するように略垂直となる起立状態に支持固定する。
前記環状塗布部材は、管状基体の外径よりも大きな内径の貫通孔が穿孔された底部と、この底部から重力方向すなわち固定部材の軸線方向に沿って形成され、管状基体の外周面を囲繞する環状空間とを有している。この貫通孔を有する底部は筒状保持部材に保持された管状基体との間に可撓性環状部材を介して同心環状の空間を形成する。前記環状空間は層形成材料を収容して管状基体の周囲をその半径方向から囲繞する。この管状塗布部材は重力方向に沿って例えば一対の支持固定部材すなわちこれに保持される管状基体に対して相対的に前後進可能になっており、例えば、この発明においては、一対の支持固定部材すなわち管状基体が移動可能になっていても管状塗布部材が移動可能になっていても、また両者が移動可能になっていてもよい。この環状空間は、後述するように層形成材料の供給方法、すなわち、加圧吐出による供給、又は、自重での漏出による供給に応じて、閉塞又は開放されている。
前記可撓性環状部材は、前記貫通孔の内径と略同一の外径と管状基体の外径よりも大きな内径とを有する環状部材であり、筒状保持部材に保持された管状基体との間に同心環状の間隙を形成する。この可撓性環状部材は30〜80のJIS A硬度を有し、好ましくは50〜70のJIS A硬度を有している。可撓性環状部材が前記範囲の硬度を有していると、可撓性環状部材はその半径方向に容易かつ周方向に均等に拡大及び縮小して可撓性環状部材の内径が周方向に均等に拡径及び縮径する。この可撓性環状部材は前記範囲の硬度を実現できる材料で環状に形成されている。このような材料として、各種ゴム又は可撓性樹脂等が挙げられる。前記ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、シリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムが挙げられ、前記可撓性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なお、可撓性環状部材は層形成材料に接触するから可撓性環状部材を形成する材料は、層形成材料に対する耐性を有しているのがよく、具体的には、層形成材料に含有される溶剤に対する耐薬品性すなわち耐溶剤性を有しているのがよい。
前記拡縮部材は、可撓性管状部材の内径を拡縮させることができればよく、例えば、環状塗布部材の貫通孔及び可撓性管状部材の間に進入する進入部を有する進入部材と前記進入部材を重力方向に進退させる移動手段とを有して成る拡縮部材、前記底部の半径方向に沿って切欠された切欠部の端部それぞれに共通の軸線を有するように設けられたネジ孔と前記ネジ孔それぞれに螺合するネジとを有して成る拡縮部材等が挙げられる。これらの拡縮部材の詳細は後述する。
この発明に係る塗布装置は、所望により、環状塗布部材の重力方向の位置に応じて拡縮部材の進退量を決定する演算装置、及び/又は、前記移動手段を稼動させる駆動手段を備えていてもよい。
この発明に係る塗布装置は、層形成材料の供給に際して環状空間に収容された層形成材料を加圧して吐出させるものであってもよく、層形成材料の供給に際して管状部材の環状空間に収容された層形成材料を加圧することなく周辺環境の圧力下で洩出、漏出又は流出させるものであってもよい。層形成材料を加圧して供給する場合には、環状塗布部材は、例えば、環状空間として密閉された材料溜まりが画成され、この環状密閉空間に連続するように貫通孔が配置される。層形成材料を自重で供給する場合には、環状塗布部材は、例えば、環状空間として開放され、この環状開放空間に連続するように貫通孔が配置される。したがって、この場合には塗布装置は層形成材料を吐出するための加圧吐出手段、例えば送液ポンプ、加圧シリンダー等は備えていない。なお、この発明において、「周辺環境の圧力」は層形成材料を加圧して吐出することのない圧力、所謂大気圧又は常圧と呼ばれる範囲を指しており、より詳しくは、常圧よりもわずかに高い圧力であっても常圧よりもわずかに低い圧力であってもよく、通常、常圧以下すなわち大気圧以下の圧力であり、約常圧であるのがよい。具体的には、この発明における「周辺環境の圧力」は、例えば、670〜780mmHgの範囲とすることができる。
この発明に係る塗布装置の一例(以下、第一塗布装置と称することがある。)を、図面を参照して、具体的に説明する。第一塗布装置1Aは、図1及び図2に示されるように、軸線Cが重力方向に沿うように管状基体104(図1において図示しない。)を起立状態に固定する固定部材4及び5と、管状基体104の外径よりも大きな内径の貫通孔22が穿孔された底部21、及び、この底部21から重力方向すなわち固定部材に固定された管状基体104の軸線方向に沿って形成され管状基体104の外周面を囲繞する環状空間24を有する環状塗布部材6Aと、管状基体104の外径よりも大きな内径を有し、貫通孔22内に配置されるJIS A硬度が30〜80の可撓性環状部材50(図2参照)と、可撓性管状部材50の内径を拡縮させる拡縮部材60A(図2参照)と、環状塗布部材6Aの重力方向の位置に応じて拡縮部材60Aの進退量を決定する演算装置61(図1参照)と、拡縮部材60Aを重力方向に相対的に前後進させる移動手段62(図1参照)とを備えている。この第一塗布装置1Aは層形成材料を自重で供給する装置であるから、環状空間24は図1及び図2に示されるように環状開放空間24とされている。固定部材4及び5は、具体的には、管状基材104を外周面に保持する筒状保持部材4と、共通の軸線C上に相対向するように、すなわち、互いに離れて直列になるように配置され、筒状保持部材4の端部それぞれを支持固定する一対の支持固定部材5とを有している。第一塗布装置1Aにおいて、貫通孔22は起立状態に固定された管状基体104と同心となり、この貫通孔22内に配置された可撓性環状部材50はその内周面と管状基体104の外周面との間に層形成材料が流通する間隙を形成する。
より具体的には、第一塗布装置1Aは、図1及び図2に示されるように、基台8と、基台8の上面に立設形成された支柱9と、支柱9の先端から略水平に延在するアーム9aと、基台8及びアーム9aそれぞれに略垂直に固定された一対の支持固定部材5と、支持固定部材5それぞれの端部に着脱自在に支持固定される筒状保持部材4と、軸線C方向に沿って相対的に前後進可能な環状塗布部材6Aと、環状塗布部材6Aを軸線C方向に沿って移動させる移動手段7とを備えている。第一塗布装置1Aにおいて、起立状態にある筒状保持部材4の基台8側を下側、そのアーム9a側を上側と称することがある。
基台8、支柱9及びアーム9aは、筒状保持部材4、一対の支持固定部材5及び管状基体104を支持すると共に環状塗布部材6Aを移動可能に設けることができれば、その形状等は特に限定されない。
筒状保持部材4は、図1及び図2に示されるように、例えば、管状基体104の内径と略同一の外径及び管状基体104の軸線断面と略同一形状の軸線断面とを有する筒状をなしており、管状基体104に挿通され自身の外周面41に管状基体104を保持する。筒状保持部材4の軸線C方向両端部には、後述する一対の支持固定部材5に支持固定される支持部42を有している。支持部42それぞれは筒状保持部材4の軸線Cを共有すると共に深さ方向に徐々に外径が小さくなる錐形の底部を有する有底孔とされている。
一対の支持固定部材5は、図1に示されるように、共通の軸線Cに相対向するように、すなわち、互いに離れて直列に配置され、筒状保持部材4の端部それぞれに設けられた支持部42に内挿して筒状保持部材4を支持固定する。一対の支持固定部材5は、基台8に高さ調整台を介して装着された一方の支持固定部材5aと、基台8に略垂直に立設された支柱9から略水平に延在するアーム9aに装着された他方の支持固定部材5bとから成る。この一対の支持固定部材5a及び5bそれぞれは、略一定の外径と軸線断面形状を有する円筒状の基部12と、この基部12から相対向する支持固定部材5に向かう方向に連設され、先端に向かって徐々に外径が小さくなる円錐形の先端部11とを有する円筒状をなしている。基部12は支持部42の内径と略同一の外径及び支持部42の軸線断面と略同一形状の軸線断面とを有して支持部42と嵌合し、先端部11は支持部42の底部と当接するようになっている。すなわち、筒状保持部材4は端部それぞれに設けられた支持部42が一対の支持固定部材5に装着される。一対の支持固定部材5は共通の軸線C上に配置されるように基台8及びアーム9aに装着されているから、一対の支持固定部材5に支持固定された筒状保持部材4の軸線が一対の支持固定部材5の軸線Cと一致するように筒状保持部材4を略垂直な起立状態に支持固定する。したがって、筒状保持部材4に保持された管状基体104も同様に一対の支持固定部材5の軸線Cと一致するように略垂直な起立状態に保持される。
一対の支持固定部材5の少なくとも一方は軸線C方向に前後進移動可能に設けられており、この例においては、他方の支持固定部材5bがアーム9aと共に軸線C方向に前後進移動可能に支柱9に設けられている。このように少なくとも一方の支持固定部材5a又は5bが設けられていると筒状保持部材4の着脱が容易になる。
環状塗布部材6Aは、図1及び図2に示されるように、層形成材料が収容される環状開放空間24から軸線C方向の下側に連設された底部21に後述する可撓性環状部材50を装着する貫通孔22が形成されている。すなわち、環状塗布部材6Aは、後述する可撓性環状部材50を装着する貫通孔22が軸線C方向の下側に形成され、貫通孔22よりも上側に層形成材料が収容される環状開放空間24が連設されている。したがって、環状塗布部材6Aは、環状開放空間24に収容された層形成材料を加圧しなくても周辺環境の圧力下で、又は自重若しくは粘性で、貫通孔22に装着された可撓性環状部材50の内周面と管状基体104の外周面との間隙23から洩出、漏出又は流出させて管状基体104の外周面に層形成材料を塗布することができる。環状塗布部材6Aは、可撓性環状部材50を装着する貫通孔22が穿孔された底部21と、この底部21から軸線Cに沿って形成され管状基体104の周面をその半径方向から囲繞する環状開放空間24とを有している。より具体的には、環状塗布部材6Aは底部21とこの底部21の外側端縁から軸線Cに沿って一方向に立ち上がりその終端が開放された周壁25とを備え、底部21と周壁25とで層形成材料を収容する環状開放空間24を形成している。すなわち、この環状塗布部材6Aは、両端が開口した管状体からなる周壁25と、周壁25の一方の開口部に変位可能に設けられた底部21とを有する一端開放容器となっている。このように、環状塗布部材6Aは層形成材料を収容した環状開放空間24が管状基体104の周囲をその半径方向から囲繞すると共に、貫通孔22を有する底部21が可撓性環状部材50と共にダイとして機能する。そして、この環状塗布部材6Aは管状基体104における外周面の軸線C方向の一部を囲繞した状態で軸線C方向に移動して、環状開放空間24に収容した層形成材料を加圧することなく周辺環境の圧力下で貫通孔22に装着された可撓性環状部材50から洩出、漏出又は流出させて管状基体104の外周面に塗布する。
貫通孔22の内周面は、図2(b)によく示されるように、重力方向に向かって末広がりとなるように逆テーパ状に形成されている。この内周面がこのように逆テーパ状に形成されていると後述する拡縮部材60Aの進入部63の進入を案内する案内面として機能する。貫通孔22の内径すなわち周壁25が形成された表面に開口する開口径は、管状基体104の外径よりも大きく、かつ後述する可撓性環状部材50の外径と略同一となるように調整されている。また、貫通孔22の軸線長さすなわち底部21の厚さは特に限定されないが、短すぎると層形成材料の塗布厚が高度に均一にならないことがあるので、通常、3mm以上に設定される。
この環状塗布部材6Aは、図1及び図2に示されるように、管状基体104との境界となる環状内壁を備えていない。すなわち、環状塗布部材6Aの環状開放空間24は底部21と周壁25と管状基体104の外周面とで画成されている。このように管状基体104との境界となる環状内壁を備えていないと、層形成材料を周辺圧力下で間隙23から均一に洩出させることができ、かつ、特許文献1及び2に記載されているような加圧機構を利用した吐出方式を用いないことで圧力の変動要因がなくなるという理由から、層形成材料を均一に塗布できる。
環状塗布部材6Aは、一端が移動部材32に装着されたアーム33の他端に周壁25を介して装着されている。このアーム33は移動部材32内に収納された駆動手段33a例えばモータに接続され、移動部材32内に収納された後述する演算装置61によって後述する拡縮部材60Aと独立に重力方向に前後進する。
このように構成された環状塗布部材6Aは、一対の支持固定部材5で支持固定された管状基体104の半径方向からその外周面の一部を囲繞し、管状基体104の軸線方向に相対的に移動して、環状開放空間24に収容した層形成材料を一方の支持固定部材5aから他方の支持固定部材5bに向かって徐々に塗布厚さが大きくなるように層形成材料を管状基体104の外周に塗布できる。
可撓性環状部材50は、貫通孔22の内径と略同一で軸線方向に略均一な外径と管状基体104の外径よりも大きく軸線方向に略均一な内径とを有する環状部材である。この可撓性環状部材50は、貫通孔22内に装着され、筒状保持部材4に保持された管状基体104の外周面との間に層形成材料が洩出又は流出する同心環状の間隙23を形成する。この間隙23は、その最大間隙量が適宜の最大間隙距離となるように、設定される。例えば、前記最大間隙距離は、可撓性環状部材50の内周面と管状基体104の外周面との半径方向の最大離間距離であり、塗布する層形成材料の塗布厚、粘度等に応じて、例えば、0.1〜0.6mmの範囲から選択される。より詳細には、前記最大間隙距離は、ゴム組成物の粘度(25℃)が50〜100Pa・sの場合には塗布厚(層形成材料の硬化前)の1.5〜3.0倍に設定するのがよい。前記最大間隙距離が小さすぎると、層形成材料が洩出せず、所定の厚さに塗布できないことがある。この可撓性環状部材50は、シリコーンゴムで形成され、底部22と略同一の厚さと30〜80のJIS A硬度とを有している。
拡縮部材60Aは、図2(b)によく示されるように、環状塗布部材6Aの底部21と協働して可撓性管状部材50の内径を半径方向に拡径及び拡縮させる。この拡縮部材60Aは、貫通孔22に可撓性管状部材50が装着されて形成される空隙部51すなわち貫通孔22と可撓性管状部材50との間に進入する進入部63を有する進入部材64を備えている。この進入部材64は、具体的には、一端が移動部材32に装着されたアーム65の他端に装着された環状基板66と、この環状基板66の表面に立設された進入部63としての周壁を有している。環状基板66は、管状基体104の外径と略同一又はわずかに大きな内径の貫通孔67を有する板状部材であり、進入部63を支持する。進入部63は、可撓性管状部材50の外径と略同一又は大きな内径と重力方向に向かって徐々に拡大する外面とを有する円錐台形の管状体として、貫通孔22と可撓性管状部材50との空隙部51に臨むように環状基板66上に配置されている。拡縮部材60A特に進入部63は空隙部51に進入して可撓性管状部材50の内径を環状塗布部材6Aの底部21と協働して拡縮させる。
第一塗布装置1Aにおいて、貫通孔22に形成された逆テーパ状の内周面及び進入部63の外周面における拡径量は同一であっても異なっていてもよく、層形成材料の塗布量に応じて必要とされる可撓性環状部材50の拡縮量となるように調整される。また、進入部63の軸線方向の長さすなわち高さは可撓性環状部材50の縮径量となるように調整される。可撓性環状部材50の拡縮量は後述する厚さの差と同じ値になるように設定される。
拡縮部材60Aは、進入部材64に加えて拡縮部材60Aを重力方向に環状塗布部材6Aに対して相対的に進退させる移動手段62(図1参照)を備えている。この移動手段62は、図1に示されるように、移動部材32内に収納された駆動手段33a例えばモータと、一端が駆動手段33aに接続され、他端が環状塗布部材6Aの周壁25に接続されたアーム33とを備えて成り、アーム33が移動部材32と独立に重力方向に前後進するように構成されている。駆動手段33aとして例えばサーボモータを採用すると高精密に制御することができる。
演算装置61は、環状塗布部材6Aの重力方向の位置に応じて拡縮部材60A特に進入部63の重力方向の進退量を決定する。この演算装置61は図1に示されるように移動部材32内に収納されている。
筒状保持部材4及び一対の支持固定部材5に保持された管状基体104は、通常、環状塗布部材6Aの貫通孔22の軸線と一致するが、これらの軸線がわずかにずれる場合がある。そこで、環状塗布部材6Aは底部21を変位させて管状基体104の軸線と底部21に形成された貫通孔22の軸線とを一致させるセンター機構を有している。すなわち、環状塗布部材6Aにおいて底部21は軸線Cに対して水平方向に変位可能に周壁25に設けられている。このセンター機構26は、具体的には、例えば図1に示されるように、底部21の周方向の少なくとも3個所に半径方向に伸びるように穿孔されたスリット27とこのスリット27を貫通して周壁25に形成されたネジ孔に螺合するボルト28とを有している。前記ネジ孔に螺合しているボルト28を緩めて底部21の水平方向の位置を調整した後にボルト28を締結する。このようにして管状基体104の軸線と底部21に形成された貫通孔22の軸線とを一致させることができる。
移動手段7は環状塗布部材6Aを軸線C方向に好ましくは一定速度で移動させる。この移動手段7は、図1に示されるように、軸線Cと略並行となるように支柱9に設けられた軌条31と、環状塗布部材6Aを端部に装着して軌条31を走行する移動部材32と、移動部材32を前後進走行させる駆動部(図示しない。)とを備えている。移動部材32は軌条31上を前後進するから昇降機とも称することができる。前記駆動部は、例えば、モータ、ベルト、プーリ等で形成される。
第一塗布装置1Aにおいて、環状塗布部材6Aは、移動手段7によって、一対の支持固定部材5に対して、換言すると、一対の支持固定部材5及び筒状保持部材4に保持された管状基体104に対して、軸線C方向に沿って前後進可能になっている。
第一塗布装置1Aにおいては、間隙23から層形成材料を洩出させるので環状開放空間24に収容された層形成材料を間隙23から管状基体104に向けて押圧又は加圧する押圧手段又は加圧手段を備えていない。
第一塗布装置1Aは、前記のように簡単な構成を有しており、メインテナンス性が高いにもかかわらず、間隙23の間隙量を機械的に増減させて層形成材料の塗布量を調整できるから、管状基体の外周に層形成材料をその塗布厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように塗布できる。すなわち、第一塗布装置1Aは軸線C方向の厚さが均一な弾性薄層を備えて成る管体の弾性層を形成できる。また、第一塗布装置1Aは、この発明に係る方法に好適に使用されるが、それ以外にも例えば特開2004−97896号公報に記載された「リングコート方法」等にも使用できる。第一塗布装置1Aは可撓性環状部材50の内径を機械的に拡縮できるから、外径の異なる管状基体の外周面に層形成材料を塗布することもでき、その汎用性も高い。
また、この第一塗布装置1Aは、軸線C方向に沿って相対的に前後進する環状塗布部材6Aの底部21に装着された可撓性環状部材と管状基体104との間隙23から層形成材料を加圧することなく周辺環境の圧力下で直接的に洩出又は流出させることができる。その結果、層形成材料の洩出圧力がほぼ一定となり、更に層形成材料を環状塗布部材6Aへ供給する方法は加圧機構を利用した複数の限定された箇所からの供給方式をとらず、環状塗布部材6A上面の開口部から直接的に供給する方式であるから液溜りもほとんど発生することなく、管状基体104の周方向に層形成材料を実質的に均一な塗布厚で管状基体104の外周面に塗布することができる。
この発明に係る塗布装置の別の一例(以下、第二塗布装置と称することがある。)を、図面を参照して、具体的に説明する。第二塗布装置1Bは、環状塗布部材、拡縮部材及び拡縮部材の移動手段が異なること以外は第一塗布装置1Aと基本的に同様である。したがって、第二塗布装置1Bは、図1及び図3に示されるように、筒状保持部材4及び一対の支持固定部材5を有する固定部材と、管状基体104の外径よりも大きな内径の貫通孔22が穿孔され、この貫通孔22から半径方向に沿って外縁まで切欠部70が切欠された底部21、及び、この底部21から重力方向すなわち前記固定部材に固定された管状基体104の軸線方向に沿って形成され管状基体104の外周面を囲繞する環状開放空間24を有する環状塗布部材6Bと、可撓性環状部材50と、可撓性管状部材50の内径を拡縮させる拡縮部材60Bと、演算装置61とを備えている。
第二塗布装置1Bにおいて、環状塗布部材6Bの底部21は、図3(a)によく示されるように、貫通孔22から半径方向に沿って外縁まで切欠された切欠部70を有する略C字型に形成されている。この切欠部70の端部それぞれには半径方向に突出する一対の板状体71及び71が延設されている。この板状体71は周壁25に干渉しないように形成位置及び大きさが設定されている。貫通孔22の内周面は、図3(b)に示されるように、その内径が軸線方向に略一定になっており、可撓性環状部材50の外周面と密接するように形成されている。
第二塗布装置1Bにおいて、拡縮部材60Bは、一対の板状体71及び71それぞれに共通の軸線を有するように設けられたネジ孔72と、一端が駆動手段73例えばモータに接続され、ネジ孔72それぞれに螺合するネジ74とを有している。第二塗布装置1Bにおいて拡縮部材60Bの移動手段は一対の板状体71及び71の間隔を拡縮する駆動手段73に相当する。
第二塗布装置1Bにおいては、駆動手段73が演算装置61からの指令によって駆動すると、ネジ74を回転させてネジ孔72を介して一対の板状体71及び71の間隔すなわち切欠部70の幅を狭め又は広げることによって、底部21の貫通孔22の内径が周方向から略均一に拡径又は縮径する。この貫通孔22の拡径又は縮径によって貫通孔22の内部に装着された可撓性環状部材50の内径も同様に拡径又は縮径する。
したがって、第二塗布装置1Bにおいても、第一塗布装置1Aと同様に、簡単な構成を有しており、メインテナンス性が高いにもかかわらず、管状基体の外周に層形成材料をその塗布厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように塗布でき、汎用性も高い。また、この第二塗布装置1Bは、間隙23から層形成材料を周辺環境の圧力下で直接的に洩出又は流出させから管状基体の周方向に層形成材料を実質的に均一な塗布厚で管状基体の外周面に塗布することができる。
この発明に係る塗布装置は、第一塗布装置1A及び1Bに限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、塗布装置1A及び1Bにおいて、環状塗布部材6A及び6Bは底部21と周壁25とを備え、周壁25の終端が開放されているが、この発明において、環状塗布部材は、その外部と層形成材料が収容される内部とが連通していればよく、例えば、底部と周壁と周壁から連接された上面とを備え、周壁又は上面に通気孔が穿孔された環状開放空間を有していてもよい。
また、第一塗布装置1A及び1Bにおいて、環状塗布部材6A及び6Bは一対の支持固定部材5の軸線C方向に沿って前後進可能に移動するように構成されているが、この発明において、環状塗布部材は例えば支柱等に固定され、一対の支持固定部材すなわち筒状保持部材が軸線方向に沿って前後進可能に移動するように構成されていてもよい。
さらに、第一塗布装置1A及び1Bにおいて、筒状保持部材4、一対の支持固定部材5並びに環状塗布部材6A及び6Bはいずれもその軸線Cに垂直な断面が略円形となっているが、この発明において、筒状保持部材、一対の支持固定部材及び環状塗布部材は前記断面が楕円形であってもよく、多角形であってもよい。
第一塗布装置1A及び第二塗布装置1Bは、管状基体104に層形成材料を塗布する塗布装置であり、他の装置と適宜に組み合わせて構成することもできる。例えば、この発明に係る塗布装置は、管状基体の外周面に形成された弾性薄層を有する管体を製造するために、例えば、層形成材料を硬化例えば加熱硬化又は発泡硬化する加熱器と組み合わされ、さらには、軸体の外周面に弾性層を形成したローラ原体を管体に圧入する装置と組み合わされる。以下に、加熱器を備えたこの発明に係る管体製造装置、及び、ローラ原体を管体に圧入する装置を備えたこの発明に係るローラ製造装置を説明する。
この発明に係る管体製造装置は、管状基体の外周面に形成された弾性薄層を備えて成る管体を製造する管体製造装置であって、この発明に係る塗布装置と、この塗布装置で塗布された層形成材料を硬化例えば加熱硬化又は発泡硬化させる加熱器とを備えてなる。
この発明に係る管体製造装置の一例(以下、一管体製造装置と称することがある。)を、図面を参照して、具体的に説明する。一管体製造装置2は、図4に示されるように、第一塗布装置1Aと、この第一塗布装置1Aで塗布された層形成材料を硬化例えば加熱硬化又は発泡硬化する加熱器51とを備えている。第一塗布装置1Aは前記した通りである。加熱器51は、管状基体をその軸線が重力方向に沿うように起立状態に配置した状態で層形成材料が硬化する温度に層形成材料を加熱できればよく、例えば、各種ヒータを備えた加熱器、送風加熱器等が挙げられる。
この一管体製造装置2は、このように簡単な構造であっても、少なくとも周方向に均一な層厚の弾性薄層を、特に層形成材料の塗布厚さを適宜に変更することによって周方向にも軸線方向にも均一な層厚の弾性薄層を備えて成る管体103を製造できるうえ、メインテナンス性も高い。
この発明に係る管体製造装置は、一管体製造装置2に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る管体製造装置は、第一塗布装置1Aに代えて第二塗布装置1Bを備えていてもよく、また、この発明に係る塗布装置と加熱器とに加えて硬化又は発泡硬化させた層形成材料の外周面を研磨する研磨機等を備えていてもよい。
また、第一塗布装置1Aにおいて、貫通孔22の内周面が逆テーパ状に形成されているが、この発明において、貫通孔の内周面及び可撓性環状部材の外周面は共に軸線方向に略均一となるように形成されていてもよいが、底部と可撓性環状部材との間に空隙部が形成されるのが好ましく、例えば、貫通孔に加えて可撓性環状部材の外周面がテーパ状に形成されていてもよく、貫通孔は内径が一定で可撓性環状部材の外周面がテーパ状に形成されていてもよい。
また、第一塗布装置1Aにおいて、進入部63は管状体に形成されているが、この発明において、進入部は前記空隙部を拡縮できればよく、例えば、軸線方向に延在するスリットを有する管状体であってもよく、円周上に配置された棒状体等であってもよい。
さらに、第二塗布装置1Bにおいて、1つの拡縮部材60Bを備えているが、この発明において、拡縮部材は周方向に等間隔に設けられた2以上を備えていてもよい。
この発明に係るローラ製造装置は、軸体の外周面に形成された弾性層とこの弾性層の外周面に形成された管体とを備えて成るローラを製造する製造装置であって、この発明に係る管体製造装置と、軸体の外周面に弾性層を形成したローラ原体を管体に圧入する装置とを備えてなる。
この発明に係るローラ製造装置の一例(以下、一ローラ製造装置と称することがある。)を、図面を参照して、具体的に説明する。一ローラ製造装置3は、図5に示されるように、一管体製造装置2と、軸体の外周面に弾性層を形成したローラ原体を管体に圧入する装置(以下、圧入装置と称することがある。)80とを備えている。一管体製造装置2は前記した通りである。
圧入装置80は、後述するローラ原体108の弾性層102を縮径させると共に弾性層102を縮径させた状態でローラ原体108を管体103内に挿入することができる装置であればよく、例えば、特開2008−299185号公報の図4及び図5に記載された加熱装置10、同公報の図6及び図7に記載された減圧装置30等を挙げることができる。
一ローラ製造装置3における圧入装置80を簡単に説明すると、この圧入装置80は、ローラ原体108及び管体103をそれらの軸線方向に直列に収納する筒状の筐体81と、筐体81における一方の開口部近傍の内部に設置され、管体103を載置する載置部材84と、筐体81の両端開口部を閉塞する閉塞端部82A及び82Bと、筐体81内に収納されたローラ原体108を管体103に挿入する挿入装置87と、筐体81内を加圧する加圧機又は減圧する減圧機83とを備えている。
この載置部材84は管体103を所定の位置に支持することができればよく、筐体81の内周面から中心に向かって突出し、管体103を支持する平滑な載置面85を有するリング状突出部とされている。管体103は載置面85上の、ローラ原体108と同軸となる位置に載置される。閉塞端部82A及び82Bは、後述する挿入装置87を例えばその軸線方向に移動可能とする貫通孔を有し、筐体81の両端開口部を閉塞することができればよく、封止部材86を前記貫通孔内に備えた筒状体に形成されている。この封止部材86は、挿入装置87と閉塞端部82A及び82Bとを気密に封止する。加圧機83は閉塞端部82A及び82Bによって閉塞された筐体81内を、例えば0.48MPa程度まで加圧することができればよく、例えば、コンプレッサー等が採用される。減圧機83は筐体81内を、例えば、3hPa程度まで、減圧することができればよく、例えば、真空ポンプ等が採用される。
挿入装置87は、ローラ原体108を支持すると共に、筐体81、載置部材84、載置部材84に支持された管体103、並びに、閉塞端部82A及び82Bを、好ましくは同軸に貫通する、軸線方向に前後進可能な1組の支持軸88A及び88Bと、各支持軸88A及び88Bにおける対向する端部にローラ原体108における軸体101の端部を固定して、ローラ原体108を支持する挟持部材89A及び89Bとを有している。
この一ローラ製造装置3は、このように簡単な構造であっても、少なくとも周方向に均一な層厚の弾性薄層を、特に層形成材料の塗布厚さを適宜に変更することによって周方向にも軸線方向にも均一な層厚の弾性薄層を備えた管体103を、弾性層102の外周に備えたローラ100を製造できるうえ、メインテナンス性も高い。
この発明に係るローラ製造装置は、一ローラ製造装置3に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係るローラ製造装置は第一塗布装置1Aに代えて第二塗布装置1Bを備えていてもよい。
また、一ローラ製造装置3において圧入装置80は加圧又は減圧下で発泡弾性層を縮径して管体103に挿入するように構成された装置であるが、この発明においては、圧入装置は常圧下で弾性層を縮径して管体に挿入するように構成された装置であってもよい。
次に、この発明に係る塗布装置によって実施される管体製造方法(以下、この発明に係る管体製造方法と称することがある。)、及び、この発明に係るローラ製造装置によって実施されるローラ製造方法(以下、この発明に係るローラ製造方法と称することがある。)を併せて説明するが、先ず、これらの方法で製造される管体及びローラについて簡単に説明する。
この発明に係る塗布方法及びこの発明に係る管体製造方法によって製造される管体は、軸線方向の厚さが均一な弾性薄層を備えていればよく、他の層等を備えていてよい。このような管体として、例えば、管状基体と、この管状基体の外周面に配置された、軸線方向の厚さが均一な弾性薄層とを備えている。このような管体の一例として図6に示される管体103が挙げられる。この管体103は、管状基体104と、管状基体104の外周面に配置されたシリコーン弾性薄層105と、シリコーン弾性薄層105の外周面に配置されたフッ素樹脂層106とを備えている。
管状基体104は、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、銅等の高い熱伝導を有する金属材料で管状に形成され、一層構造とされても二層以上が積層された積層構造とされてもよい。又は、この管状基体104は、カーボンブラック、金属(アルミニウム、ニッケル、銅等)若しくはそれらの合金、金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛等)又は無機酸化物(チタン酸カリウム等)で導電性が付与された樹脂で管状に形成されていてもよい。このような樹脂として、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。この管状基体104は、一層構造であっても積層構造であってもよく、ローラに用いる場合には積層構造が好ましく採用される。管状基体104は、通常薄層に形成され、例えば、その全体の厚さは、20〜100μmであるのが好ましく、30〜50μmであるのが特に好ましい。管状基体104はメッキ等が施されてもよい。複層構造の管状基体として、例えば、ニッケル電鋳基材と銅層とニッケルメッキ層とがこの順で直接積層された3層構造の管状基体が挙げられる。なお、積層される各層の間にはプライマー層等が挿設されてもよい。この管状基体104は800〜2500MPa程度の引張強度を有しているのがローラとしたときに弾性層の内周面からの圧接により変形しにくくなる点で好ましい。この引張強度の測定方法はJIS Z 2241に準拠する。管状基体104はローラとしたときの製品長さよりも軸線長さを長くしておくのが両端部を切除して均一な管体を製造できる点で好ましい。
シリコーン弾性薄層105は、例えば後述するシリコーンゴム組成物を用いて、管状基体104の外周面に所望によりプライマー又は接着剤層を介して形成される。このシリコーン弾性薄層105は、この発明に係る塗布方法によって形成されていると、その層厚が均一になり、更にシリコーン弾性薄層105の外周面にウェルドラインが生じないために、その外層に形成されるフッ素樹脂層106の表面の均一性が向上し、プリンターや複写機等の所定のローラとして使用する場合において要求されるローラとしての機能の高度な安定性を得ることができる。このシリコーン弾性薄層105は、通常、1〜200μmの厚さに形成され、好ましくは30〜150μmの厚さに形成される。なお、この発明に係る管体の弾性薄層はシリコーン弾性薄層105に限定されず、各種のゴム、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムで形成された弾性薄層であってもよい。
この管体103のシリコーン弾性薄層105は均一な厚さを有している。例えば、シリコーン弾性薄層105の周方向における厚さの差、具体的には、周方向に一巡する円周を等間隔に分割する8点における最大厚さと最小厚さの差が5μm以下である。好ましくは、シリコーン弾性薄層105の軸線長さを等間隔に分割する5つの円周それぞれにおける前記8点の最大厚さと最小厚さとの差がいずれも4μm以下である。このシリコーン弾性薄層105は特に軸線方向の厚さが均一になっている。具体的には、シリコーン弾性薄層105の軸線方向における厚さの差、より具体的には、シリコーン弾性薄層105の軸線長さを等間隔に分割する5点における最大厚さと最小厚さの差が10μm以下である。好ましくは、シリコーン弾性薄層105の前記5つの円周を周方向に等間隔に分割する8点それぞれにおける軸線方向に沿う同一線上にある5点の最大厚さと最小厚さとの差がいずれも8μm以下である。なお、シリコーン弾性薄層105の厚さは、信越ポリマー株式会社で設計・製作した管体専用測定器を用いて測定される値である。この管体専用測定器は、管体を水平方向に挿入して保持する円筒状支柱が備えられており、当該円筒状支柱の端部付近の特定位置で管体の厚みが測定できるように、当該円筒状支柱の当該特定位置に測定子が設置されている。更に、当該測定子と同位置にダイヤルゲージの測定子が対応するようにダイヤルゲージが設置されている。ダイヤルゲージは0.001mm(1μm)の最小目盛ゲージを備えている。測定する時は管体を専用測定器の当該円筒状支柱に挿入し、測定したい部分をダイヤルゲージの位置に合わせて測定する。別位置を測定する場合は、前述と同様に測定部位をダイヤルゲージの位置に合わせて測定を繰り返せばよい。
フッ素樹脂層106は、フッ素樹脂組成物を用いてシリコーン弾性薄層105の外周面に所望によりプライマー又は接着剤層を介して形成される。また、このフッ素樹脂層106はフッ素樹脂組成物で形成されたチューブを所望によりプライマー又は接着剤層を介してシリコーン弾性薄層105の外周面に被覆して形成される。このフッ素樹脂層106は、通常、1〜200μmの厚さに形成され、好ましくは5〜50μmの厚さに形成される。フッ素樹脂組成物としてフッ素樹脂と所望により各種添加剤とを含有するフッ素樹脂組成物を挙げることができる。このようなフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。
管体103の最外層であるフッ素樹脂層106は平坦な表面を有しており、具体的には、その中心線平均粗さRaが5μm以下であるのがよい。この発明において、中心線平均粗さRaは4.5μm以下であるのが好ましい。中心線平均粗さRaの下限値は理想的には「0」であるが現実的には例えば1μmである。中心線平均粗さRaは、JIS B 0601−1982に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に管体103をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、少なくとも3点における中心線平均粗さRaを測定し、これらの平均値を管体103の中心線平均粗さRaとする。中心線平均粗さRaを前記範囲内に調整するには、例えば、シリコーン弾性層105の厚さ均一性等を調整すればよい。
フッ素樹脂層106は、また、その最大高さRmaxが10μm以下であるのがよい。この発明において、最大高さRmaxは9.5μm以下であるのが好ましい。最大高さRmaxの下限値は理想的には「0」であるが現実的には例えば1μmである。最大高さRmaxは、JIS B 0601−1994に準じ、前記中心線平均粗さRaと基本的に同様にして測定できる。最大高さRmaxを前記範囲内に調整するには、例えば、シリコーン弾性層105の厚さ均一性等を調整すればよい。
このフッ素樹脂層106は、フッ素樹脂層106表面に付着した現像剤の離型性が優れる点で、その表面の接触角が80°以上であるのがよい。この発明において、接触角は前記効果に優れる点で110°以上であるのが好ましい。接触角の上限値は例えば120°であるのが好ましい。接触角は、JIS R3257に準じ、イソプロピルアルコールで洗浄した後10分間風乾したフッ素樹脂層106の表面を、温度23℃、相対湿度30%の環境下でCA−D型接触角測定装置(協和界面科学株式会社製)を用いて測定される値である。
この発明に係るローラ製造方法によって製造されるローラは、軸体と、軸体の外周面に形成された弾性層と、弾性層の外周面に管体とを備えている。このようなローラの一例として図7に示されるローラ100が挙げられる。このローラ100は、軸体101の外周面に形成された発泡弾性層102と、好ましくは接着剤層(図7において図示しない。)を介して発泡弾性層102の外周面に配置された管体103とを備えてなる。管体103は前記した通りである。
軸体101は、良好な導電特性を有していればよく、所謂「芯金」とも称される。好ましく配置される接着剤層は適宜の接着剤を硬化してなり10〜300μmの厚さを有している。
発泡弾性層102は、後述するゴム組成物によって軸体101の外周面に形成されている。この発泡弾性層102はその内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされている(図7において発泡弾性層102の外周面に開口したセルは図示しない。)。発泡弾性層102に有するセルは、ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域をいう。発泡弾性層102に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。発泡弾性層102は、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、セルの大きさ、存在率等が決定される。この発泡弾性層102は20〜60のアスカーC硬度(荷重1.0kg)を有するのが好ましく、その厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜15mmに調整されるのが特に好ましい。
このローラ100は、管体103のシリコーン弾性薄層105が均一な厚さを有しているから、ローラ100の表面、すなわちフッ素樹脂層106は基本的に平坦で均一な表面を有している。具体的には、ローラ100の表面における中心線平均粗さRaは5μm以下、最大高さRmaxが10μm以下、接触角が80°以上になっている。中心線平均粗さRa、最大高さRmax及び接触角は前記測定方法と同様にして測定される。
この発明に係る管体製造方法について説明する。この発明における管体製造方法は、管状基体の外周面上に弾性薄層を備えて成る管体を製造する方法であって、軸線が重力方向に沿うように起立状態に配置された管状基体を周方向から囲繞する同心環状の間隙すなわちその間隙量を重力方向に向かって徐々に小さくなるように、換言すると、間隙すなわち間隙量が重力方向の逆方向に向かって徐々に大きくなるように、調整しつつ、この間隙から重力方向に沿って管状基体の外周面に層形成材料を供給する工程を有している。
この発明に係る管体製造方法における塗布する工程において、管状基体は、その軸線が重力方向に沿うように、すなわち、重力方向に略並行となるように、起立状態に配置される。そして、層形成材料は、このように配置された管状基体の周方向から輪環状となるように重力方向に沿って管状基体の外周面に供給される。このとき、層形成材料は、重力方向と同方向すなわち重力方向の上流側(上方ともいう。)から下流側(下方ともいう。)に向かって、又は、重力方向と逆方向すなわち重力に逆らう方向に供給される。また、層形成材料は、加圧されて外周面に供給すなわち吐出されてもよく、自重すなわち周辺環境の圧力下で供給すなわち流出又は洩出してよい。加圧して層形成材料を吐出するには、例えば、管状基体を周方向に囲繞する同心環状の間隙に層形成材料を加圧機、通常、加圧ポンプ、送液ポンプ等で圧送して、この間隙から層形成材料を管状基体に向けて吐出することによって実施でき、一方、層形成材料を自重で間隙に供給するには、例えば、間隙から重力方向に沿って層形成材料を周辺環境の圧力下で洩出させることによって、実施できる。なお、この発明において「周辺環境の圧力」は前記した通りである。
この工程においては、前記のように間隙量を調整することによって、管状基体の外周に層形成材料を、その塗布厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように、塗布する。すなわち、管状基体の外周に塗布された層形成材料は、重力方向に向かって、換言すると、重力方向の上流側から下流側に向かって、その厚さが徐々に薄くなるように、塗布される。すなわち、層形成材料の塗布開始点、例えば、上流側端部からの距離に応じて、その外形を上流側端部が大径の頂面で下流側端部が小径の底面となる略逆円錐台形状となるように層形成材料を塗布する。ここで、層形成材料の塗布量は層形成材料全体の厚さの平均厚さが弾性薄層に要求される厚さと略同一となるように調整される。さらに、層形成材料は層形成材料の温度変化等を考慮して重力方向の上流側端部に塗布された厚さすなわち最大厚さと重力方向の下流側端部に塗布された厚さすなわち最小厚さとの差(厚さの差と称する。)が適宜の範囲に決定される。このような厚さの差は、例えば、層形成材料における粘度の温度変化を測定して検量線を作成することによって塗布された層形成材料が加熱硬化後に均一の厚さになるように設定される。このような検量線は当業者において通常容易に作成される。厚さの差は、具体的には、粘度の温度変化が大きければ間隙の拡縮量を大きくする。厚さの差としての一例を挙げると、例えば、30〜200μmの範囲内であるのが好ましく、80〜150μmの範囲内であるのが特に好ましい。この厚さの差は均一な割合で変化するのが好ましい。
ここで、層形成材料の粘度は、例えば、層形成材料の各成分及びその含有量、希釈溶剤等の使用量及び沸点等によって適宜に調整することができる。具体的には、層形成材料に含有される硬化剤の含有量を多くすると、又は、管状基体の厚さを厚くしてその熱容量を大きくすると、速やかに層形成材料が硬化するから層形成材料の温度変化が比較的大きくても層形成材料の厚さをほぼ均一にすることができる。
重力方向に向かって厚さが徐々に薄くなるように層形成材料を塗布するには、間隙を拡縮させて間隙から供給される層形成材料の量を変化させ、より具体的には、層形成材料を重力方向に向かって塗布するときは間隙を徐々に縮小する方法が挙げられ、層形成材料を重力方向と逆方向に向かって塗布するときは間隙を徐々に拡大する方法が挙げられる。このときの間隙を縮小させる割合又は拡大する割合は前記厚さの差となるように調整される。このように、前記厚さの差となるように層形成材料の厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように塗布されると、管状基体が起立状態に配置された状態で層形成材料を加熱硬化して成る弾性薄層は軸線方向の厚さがほぼ均一となる。
この発明に係る管体製造方法に用いる層形成材料は、管体の弾性薄層を形成することのできる材料であればよく、例えばゴムと所望により各種添加剤とを含有するゴム組成物を挙げることができる。前記ゴムとしては、各種のゴム、例えば、シリコーンゴム、シリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。前記ゴムはこれらの中でもシリコーンゴム又はシリコーン変性ゴムであるのが高い耐熱性を発揮するので好ましい。シリコーンゴム又はシリコーン変性ゴムを含有するゴム組成物としては、例えば、KE−1380A及びKE−1380Bの混合物「KE−1380A、B」(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。前記ゴム組成物は、その粘度(25℃)が例えば10〜200Pa・sの範囲内にあればよい。前記粘度(25℃)は次の測定方法及び測定条件で測定した値である。HAAKE社製の粘度・粘弾性測定装置「レオストレスRS6000」を用いた定常粘度測定により測定した。即ち、測定材料を測定機にセットして、せん断速度(dγ/dt)が5(1/s)の時の粘度を測定したものである。このゴム組成物は樹脂成分等が水に分散された「水分散系塗料」ではなく実質的に水を含有しない非水系ゴム組成物である。ここで、「実質的に水を含有しない」とはゴム組成物に積極的に水を添加しないことを意味し、ゴム又は添加剤に吸着又は吸湿された水分までも含有しないこと、すなわち、水分0%を意味するものではない。また、「非水系ゴム組成物」とは積極的に水を添加していないゴム組成物を意味し、ゴム組成物に吸着又は吸湿された水分までも含有しないこと、すなわち、水分0%を意味するものではない。
この発明に係る管体製造方法は、このようにして層形成材料を管状基体の外周に塗布した後に、好ましくは、管状基体を前記のように起立状態に配置した状態で層形成材料を加熱硬化する。このとき、管状成形体を起立状態に配置しても塗布された層形成材料は自重で流れにくく塗布直後の状態を維持している。これに対して、層形成材料は加熱によりその粘度が変化して重力方向に流れ落ちる傾向があるが、この発明に係る管体製造方法によれば、予め、層形成材料の温度と粘度との関係を考慮して、管状基体に層形成材料を塗布してあるから、加熱硬化後の弾性薄層はその軸線方向に均一な厚さになる。
この発明に係る管体製造方法は、所望により、加熱硬化して成る弾性薄層の外周面に表面層等を形成する工程を実施できる。例えば、樹脂組成物を塗布硬化する工程を実施できる。
この発明に係る管体製造方法を実施するには、準備した層形成材料における流動性の温度変化を測定して検量線を作成することによって、塗布された層形成材料が加熱硬化時に均一の厚さになるように、厚さの差を設定する。
この発明に係る管体製造方法の一例として、図6に示される管体103を第一塗布装置1Aを用いて製造する例(以下、一管体製造方法と称することがある。)を、図面を参照して、具体的に説明する。一管体製造方法を実施するには、管状基体、層形成材料及び第一塗布装置1Aを準備する。準備する管状基体、層形成材料及び第一塗布装置1Aは前記した通りである。
この一塗布方法においては、所望により、準備した管状基体104の少なくとも一方の端部近傍にマスキングしておくのが取扱性に優れると共に層形成材料をより一層均一に塗布できる点で好ましい。マスキングは、管状基体104を起立状態に保持したときに他方の支持固定部材5bすなわち上側となる端部に施すのがよい。マスキングは、例えば、マスキングテープ等の貼着等が挙げられる。
一管体製造方法においては、準備した第一塗布装置1Aを図8示す初期状態に配置する。すなわち、管状基体104に内挿してその外周面に管状基体104を保持した筒状保持部材4を一対の支持固定部材5に支持固定して第一塗布装置1Aに装着する。筒状保持部材4の支持固定は、図8に示されるように、筒状保持部材4の支持部42に一対の支持固定部材5の先端部11を挿嵌することによって容易に所定状態に行うことができる。このようにすると、筒状保持部材4及び管状基体104は、図8に示されるように、環状塗布部材6Aの貫通孔22を貫通した略垂直な起立状態に支持固定され、環状塗布部材6A、筒状保持部材4及び管状基体104は軸線Cを共有する。そして、環状塗布部材6Aの貫通孔22に装着された可撓性環状部材50と管状基体104との間には、管状基体104の周方向に一巡すると共に半径方向に離間した同心環状の間隙23が形成される。なお、図8に示される初期状態において環状塗布部材6Aは最下点に配置されている。
この一管体製造方法において、準備した層形成材料を第一塗布装置1Aの環状開放空間24に収容する。このとき、収容された弾性層形成材料にウェルドラインが生じていないのがよく、例えば、収容方法として弾性層形成材料を円周方向から投入する方法が挙げられる。環状開放空間24に収容する層形成材料の収容量は、1本の管状基体104にシリコーン弾性薄層105を形成するのに必要とされる量であってもよいが、複数本の管状基体104にシリコーン弾性薄層105を形成するのに必要とされる量であるのが好ましい。このようにして層形成材料を環状開放空間24に収容すると、図8に示されるように環状塗布部材6Aの上側は開口しているから、収容された層形成材料は重力で環状塗布部材6Aの底部21に収蔵され、第一塗布装置1Aが配置された周辺環境の圧力が均一にかかっている。
一管体製造方法においては、次いで、環状塗布部材6Aによって管状基体104の周方向から重力方向に沿って層形成材料を管状基体104の外周面に供給する。すなわち、管状基体104を周方向から囲繞する同心環状の間隙23から重力方向に沿って層形成材料を周辺環境の圧力下で洩出させて管状基体104の外周面に供給する。一管体製造方法においては、具体的には、層形成材料に周辺環境の圧力がかかった状態で、図9及び図10に示されるように、一方の支持固定部材5aから他方の支持固定部材5bに向かって、すなわち、起立状態にある管状基体104の一端部すなわち下側端部から他端部すなわち上側端部に向かって、換言すると重力方向の逆方向に、環状塗布部材6Aを好ましくは一定速度で移動させる。なお、図9及び図10において理解を容易にするため拡縮部材60Aを図示しない。
このように、一管体製造方法においては、間隙23からの層形成材料の洩出と共に、起立状態にある管状基体104の一端部すなわち下側端部から他端部すなわち上側端部に向かって、換言すると重力方向の逆方向に、環状塗布部材6Aを好ましくは一定速度で移動させる。このとき、演算装置61によって環状塗布部材6Aの重力方向の位置に応じて決定された進退量に従って拡縮部材60Aが進退して、管状基体104の外周面と可撓性環状部材50の内周面とで形成される間隙23の間隙量が重力方向の逆方向に向かって徐々に大きく拡大される。拡縮部材60Aの進退量すなわち可撓性環状部材50の拡縮量は前記厚さの差を満たすように決定され、具体的には、層形成材料の25℃での粘度が50〜100Pa・s、70℃での粘度が20〜40Pa・sである場合には、最大内径と最小内径との内径差が30〜200μmの範囲内であるのが好ましく、80〜150μmの範囲内であるのが特に好ましい。なお、環状塗布部材6Aの移動速度は、層形成材料の粘度及び洩出量等に応じて適宜に調整され、例えば、0.1〜50mm/secの範囲内に設定される。
一管体製造方法において、このようにして層形成材料を塗布すると、図9及び図10に示されるように、環状塗布部材6Aの重力方向の位置等に応じて、管状基体104の外周に塗布厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように層形成材料を塗布できる。さらに、環状塗布部材6Aの移動と共に間隙23から層形成材料を加圧することなく周辺環境の圧力下で洩出、漏出又は流出させると、層形成材料は周辺環境の圧力が均一にかかった状態で環状開放空間24に収容されているから、その洩出圧力もほぼ一定となり、層形成材料が間隙23から洩出するときに可撓性環状部材50の内周面で層形成材料の洩出量が均一となるようにしごかれ、さらに、層形成材料の供給が加圧機構を利用した複数箇所からの供給方式ではなく環状塗布部材6A上部の開口部からの直接的供給法をとっているから間隙23から洩出するまでに環状開放空間24内で液溜りがほとんど発生することがない。さらには、層形成材料は環状開放空間24内で環状に収容された状態のまま分流することも合流することもなく間隙23から洩出するから、洩出する層形成材料にはウェルドラインが発生せず、又は、たとえ発生したとしてもほとんど無視できるほど微小となる。したがって、このようにして層形成材料を塗布すると、重力方向に向かって徐々に薄くなると共に、管状基体104の周方向に実質的に均一な塗布厚となるように、層形成材料を管状基体104の外周面に塗布することができる。
層形成材料は、管状基体104の両端部にマスキングが施されている場合には下側端部に施されたマスキングの外表面から上側端部に施されたマスキングの外表面まで塗布されるのが、層形成材料をより一層均一に塗布できる点で好ましい。なお、この発明においては、このように塗布しなくても、起立状態にある管状基体104の下側端部から上側端部まで、例えば、両側端部に施されたマスキングで挟まれた領域のみに層形成材料を塗布しても層形成材料は均一に塗布される。
層形成材料の洩出速度は、特に限定されないが、例えば0.03〜15g/secの範囲内から、環状塗布部材6Aの重力方向の位置、周辺環境の圧力及び厚さの差等を考慮して、管状基体104に塗布される層形成材料が途切れないように適宜に調節されるのが好ましい。このような洩出速度であると層形成材料をより一層均一に塗布することができる。
このようにして間隙23から層形成材料を周辺環境の圧力下で洩出させつつ環状塗布部材6Aを管状基体104の一端部から他端部に向かって移動させると、層形成材料を管状基体104の途中まで塗布した状態が図9及び図10に示されているように、管状基体104に塗布された層形成材料は重力方向に向かって徐々に薄くなると共に周方向に均一な厚さを有し、また、塗布された層形成材料にはウェルドラインが発生し残存することも実質的にない。
一管体製造方法においては、次いで、環状塗布部材6Aが最上点まで移動した状態で管状基体104を一製造装置1から取り外す。管状基体104が取り外された第一塗布装置1Aは、好ましくは環状塗布部材6Aが最上点にある状態のまま新たな管状基体104が取り付けられ、環状塗布部材6Aを最下点に移動させて、図8に示される初期状態に復帰される。このようにして第一塗布装置1Aが初期状態に復帰されると、環状塗布部材6Aからの層形成材料の洩出を防止できる。なお、環状塗布部材6Aを下側に移動させるときの移動速度は限定されず、また一定である必要もない。このようにして初期状態に復帰した第一塗布装置1Aにおいて前記説明と基本的に同様にして新たな管状基体104を周方向に囲繞する同心環状の間隙23から層形成材料を周辺環境の圧力下で洩出させつつ管状基体104の一端部から他端部に向かって層形成材料を塗布することができる。
一管体製造方法においては、このようにして管状基体104の外周に層形成材料をその塗布厚さが重力方向に向かって徐々に薄くなるように塗布できる。
一管体製造方法において、取り外した管状基体104は、所望によりマスキングが解除されて、所定の次工程例えば層形成材料の加熱硬化工程に移送される。この加熱硬化工程は、管状基体104面に塗布された層形成材料を硬化する工程であり、管状基体104を起立状態に配置した状態で層形成材料を加熱する。このとき、管状成形体を起立状態に配置しても層形成材料は自重で流れにくく塗布直後の状態を維持する。したがって、層形成材料を塗布した後から加熱硬化工程を実施するまでの工程間時間は、特に限定されないが、あまりに長いと塗布直後の状態を維持できなくなる場合があるので、例えば、2〜30分程度であるのがよい。この加熱硬化工程における昇温速度すなわち加熱開始から硬化までの加熱時間は、層形成材料の温度と粘度との前記関係、及び、前記厚さの差等を考慮して決定される。このようにして加熱硬化工程を実施すると、層形成材料における前記厚さの差は粘度変化によって解消され、周方向の厚さの均一性はもちろん軸線方向にも均一な厚さを有するシリコーン弾性薄層105が形成される。
一管体製造方法において、層形成材料の加熱条件は層形成材料が十分に硬化する温度及び時間に設定される。硬化した層形成材料は必要に応じて研磨装置(図4おいて図示しない。)で研磨されることができる。このようにして、管状基体104の外周面にシリコーン弾性薄層105を形成することができる。
一管体製造方法においては、形成されたシリコーン弾性薄層105の外周面に、所望により、定法に従って、他の層、例えば、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等を形成することができる。前記他の層は、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等で、好ましくは1〜200μmの厚さに、形成される。管体103は、図6に示されるように、他の層として、シリコーン弾性薄層105の外周面でフッ素樹脂を主成分として含有するフッ素樹脂を硬化してなるフッ素樹脂層106、又は、フッ素樹脂を主成分として含有するフッ素樹脂で形成され、シリコーン弾性薄層105を被覆するチューブをフッ素樹脂層106として有している。フッ素樹脂については前記の通りである。
一管体製造方法においては、次いで、所望により、金属基体104の両端部を、シリコーン弾性薄層105及びフッ素樹脂層106と共に、所定長さとなるように切除して、管体103を製造することができる。
そして、このようにして一管体製造方法によって製造された管体103は前記特性を有している。
次いで、この発明に係るローラ製造方法を説明する。この発明に係るローラ製造方法は、この発明に係る管体製造方法によって製造された管体に、軸体の外周面に形成された弾性層を備えたローラ原体を挿入する工程を有している。
この発明に係るローラ製造方法の一例として、図7に示されるローラ100を製造する例(以下、一ローラ製造方法と称することがある。)を、図面を参照して、具体的に説明する。一ローラ製造方法を実施するには、ローラ原体108、管体103及び所望によりローラ製造装置を準備する。準備する管体103は前記した通りである。
このローラ原体108は管体103を備えていないこと以外は基本的にはローラ100と同様である。この軸体101は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体101に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体101を形成することができる。前記材料の中でも容易に導電性を付与することができる点で金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。軸体101は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体101の外周面に塗布され、硬化される。このプライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
次いで、軸体101の外周面に配置された後述するゴム組成物を硬化して弾性層、例えば発泡弾性層102を形成する。例えば、発泡弾性層102は、公知の成形方法によって、成形と加熱硬化とを同時に又は連続して行い、軸体101の外周面に形成される。ゴム組成物の成形方法は、軸体101の外周面にゴム組成物を配置することができる方法であればよく、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。ゴム組成物は、ゴムと、所望により発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム組成物及び発泡ウレタンゴム組成物等が好ましく挙げられる。ゴム組成物の硬化条件は、軸体101の外周面に配置されたゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。このようにして形成された弾性層102は、必要に応じて、研磨、研削又は切削等が施される。このようにして形成された発泡弾性層102は、通常、管体103の内径よりも大きな外径を有しており、例えば、管体103の内径に対して100〜105%の外径を有しているのが好ましい。
このようにして、軸体101の外周面に弾性層102が形成されたローラ原体108を準備することができる。
一ローラ製造方法においては、前記のようにして製造した管体103及びローラ原体108を用いて、軸体101の外周面に形成された弾性層102を備えたローラ原体108を管体103内に、公知の方法、例えば、特開2008−292533号公報に記載の方法等で、挿入することによって、ローラ100を製造することができる。
すなわち、一ローラ製造方法においては、このローラ原体108を加圧環境下又は減圧環境下で常温下又は加熱下において管体103内に挿入する。換言すると、ローラ原体108の弾性層102を縮径させると共に弾性層102を縮径させた状態でローラ原体108を管体103内に挿入する。具体的には、図5に示されるように、準備した一ローラ製造装置3おける圧入装置80の載置面85上に管体103を載置する。また、ローラ原体108における軸体101の両端部を挟持部材89A及び89Bに固定して、1組の支持軸88A及び88Bでローラ原体108を挟持し、管体103の上流方向に直列になるようにローラ原体108を配置し、閉塞端部82Aで筐体81を閉塞する。このとき、所望により、ローラ原体108の弾性層102の外周面に接着剤を塗布することもできる。
一ローラ製造方法においては、次いで、常温下又は加熱下において、加圧機又は減圧機83を起動して圧入装置80内を加圧又は減圧して、弾性層102の外径が管体103の内径よりも小さくなるまで縮径させる。弾性層102を縮径させた状態で、挿入装置87を管体103側(図5において下流側)に前進させて、ローラ原体108を管体103内に挿入する。
一ローラ製造方法においては、ローラ原体108を管体103内に挿入した状態を保持したまま、筐体81内の加圧状態又は減圧状態を解除する。そうすると、弾性層102は徐々に拡張又は拡径して、その外周面が管体103の内周面に圧接する。所望により、弾性層102と管体103との間に配置された接着剤を硬化する。
このようにして軸体101と弾性層102と管体103とを備えたローラ100を製造できる。そして、一ローラ製造方法によって製造されたローラ100は前記特性を有している。
この発明に係る管体製造方法及びローラ製造方法は、いずれも、前記一方法に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、一管体製造方法において、環状塗布部材6Aを例えば一定速度で移動させているが、この発明において、管状塗布部材は、重力方向に沿ってその逆方向に移動するにつれて徐々に遅く又は速くなるように移動させてもよく、また、不規則に移動させてもよい。
また、この発明に係る管体製造方法は第二塗布装置1Bを用いて実施することもでき、第二塗布装置を用いる場合には、第一塗布装置1Aにおける拡縮部材60Aにおける進入部63の進入量を調整する代わりに、環状塗布部材6Bの重力方向の位置に応じて、拡縮部材60Bにおけるネジ74の回転量を調整して切欠部70の幅を狭め又は広げる。
(実施例1)
管状基体104として、軸線長さ360mm、内径40mm、層厚37μmのニッケル電鋳基材を準備した。この管状基体104の外径は40.08mmで、その引張強度(JIS Z 2241)は1880MPaであった。この管状基体104の軸線長さを製造予定の管体103の軸線長さよりも長く設定した。この管状基体104の両端部から5〜10mmの外周面領域を周方向に一巡するようにポリエステルフィルム粘着テープ「631S #12」(株式会社寺岡製作所製)でマスキングした。
シリコーンゴム組成物として、商品名「KE−1380A」及び「KE−1380B」等の混合物「KE−1380A、B」(信越化学工業株式会社製)を準備した。このシリコーンゴム組成物は高粘度組成物であり、その粘度は25℃で55Pa・s、70℃で30Pa・sであった。このシリコーンゴム組成物における粘度の温度変化を測定して検量線を作成したところ、軸線方向の長さが360mmである場合に、シリコーンゴム組成物の最大厚さを200μm、最小厚さを100μm、前記厚さの差(増大量は一定)を100μmにすると、シリコーンゴム組成物の塗布厚さ(平均)が150μmになることが分かった。
また、PFA樹脂を含有するフッ素樹脂組成物で形成されたフッ素樹脂層106用のチューブとして商品名「PFA薄肉収縮チューブ SME」(グンゼ株式会社製)を準備した。このチューブは軸線長さ450mm、外径38.5mm、厚さ30μmで、150℃で20分加熱時の収縮が軸線長さ方向及び周長方向ともに約3%であった。シリコーン弾性薄層105とチューブを接着させるための接着剤として商品名「KE−1880」(信越化学工業株式会社製)を準備した。
次いで、第一塗布装置1A及び一管体製造装置2を備えたローラ製造装置3を準備した。この第一塗布装置1Aにおいて、可撓性環状部材50のJIS A硬度は60°であり、その内径は40.3mm、外径は50mm、軸線長さは15mmであった。貫通孔22の内径は50.4mm、進入部63の内径は50.5mm、軸線長さは15mmであった。また、可撓性環状部材50と管状基体104との最小間隙距離は0.1mmであった。
この第一塗布装置1Aに管状基体104を一対の支持固定部材5で垂直な起立状態に固定し、環状開放空間24に準備したシリコーンゴム組成物18gを収容した。なお、シリコーンゴム組成物18gは複数の管状基体104に塗布するのに十分な量である。この第一塗布装置1Aが配置された周辺環境の圧力下で管状基体104の下側端部から上側端部に向かって2.4mm/secの一定速度で環状塗布部材6Aを移動させつつ、第一塗布装置1Aの初期状態すなわち環状塗布部材6Aが管状基体104の下方に存在するときの前記最小間隙距離0.1mmを、管状基体104の上方で0.4mm(予定塗布厚さの2.66倍)の最大間隙距離となるように、一定の割合で徐々に拡径させた。このようにして間隙からシリコーンゴム組成物を洩出させつつ管状基体104の外周面に塗布した。このとき、シリコーンゴム組成物の最大厚さが200μm、最小厚さが100μm、厚さの差が100μmであった。
その後、シリコーンゴム組成物が塗布された管状基体104を第一塗布装置1Aから取り外してマスキングを解除した。なお、シリコーンゴム組成物は下側のマスキングの外表面から上側のマスキングの外表面まで塗布した。
次いで、ローラ製造装置3の加熱器51内にこの管状基体104を垂直に起立させた状態で、150℃で1時間加熱して管状基体104の外周に塗布されたシリコーンゴム組成物を加熱硬化し、シリコーン弾性薄層105を形成した。
このシリコーン弾性薄層105の外周面に前記接着剤を塗布した後に前記チューブを被せて、しばらく放置した後、再度加熱器51内に静置して150℃で1時間加熱し接着剤を硬化させた。最後に、管状基体104の両端部それぞれから軸線方向に18.5mmの端部領域を切断して、管状基体104とシリコーン弾性薄層105とフッ素樹脂層106としての前記チューブとを有する、軸線長さ323mmの管体103を製造した。
このようにして製造した管体103におけるシリコーン弾性薄層105の厚さの均一性として、フッ素樹脂層106を形成する前に、シリコーン弾性薄層105の軸線長さを等間隔に分割する5つの円周においてそれぞれの円周を等間隔に分割する8点の合計40点(測定点)の厚さを信越ポリマーで設計・製作した前記管体専用測定器を用いて測定した。その結果、前記測定点40点のうち、前記5つの円周を周方向に等間隔に分割する8点それぞれにおける軸線方向に沿う同一線上にある測定点5点の「最大値−最小値」はいずれも6μmであり、軸線長さを等間隔に分割する5つの円周それぞれにおける周方向に沿う測定点8点の「最大値−最小値」はいずれも4μmであった。このように実施例1のシリコーン弾性薄層105はその厚さが周方向はもちろん軸線方向にもほぼ均一であった。
この管体103のフッ素樹脂層106における中心線平均粗さRa、最大高さRmax及び接触角を前記方法に準拠して測定したところそれぞれ5μm、10μm及び80°であった。
次いで、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体101(直径12mm×長さ350mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体101を、ギアオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
一方、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調整した。
この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物と軸体101とを押出成形機にて一体分出し、次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を200℃で30分間加熱して発泡架橋させ、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させた。その後、さらに、ギアオーブンを用いて、200℃で10時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間放置した。次いで、形成された弾性層102を円筒研削盤にて外径をφ40.2mmに調整した。このようにしてローラ原体108を作製した。
次いで、作製したローラ原体108の弾性層103の外周面全面に流動性接着剤(商品名「KE1880」、粘度(25℃)84Pa・s、信越化学工業株式会社製)を溶剤で希釈せずに、ロールコーターで塗布量0.025g/cm2(硬化後の接着剤層の厚さが10μm)となるように均一に塗布した。
次いで、図5に示されるように、圧入装置80を組み立てて載置部材84における載置面85上に製造した管体103を載置した。さらに、ローラ原体108における軸体101の両端部を挟持部材89A及び89Bに固定してローラ原体108が管体103の上流方向に直列になるように筐体81内に配置し、閉塞端部82Aで筐体81を閉塞して圧入装置80を気密状態に組み立てた。次いで、加圧機83を起動して、圧入装置80内を0.3MPaに加圧して、弾性層102の外径を管体103の内径よりも小さく圧縮した。この状態で1組の支持軸88A及び88Bを管体103側に前進させてローラ原体108を管体103内に挿入した。次いで、圧入装置80内の圧力を解除して、圧入装置80内から管体103内に挿入されたローラ原体108を取り出し、この管体103内に挿入されたローラ原体108を、乾燥機(商品名「HIGH TEMPRATURE CHAMBER」、楠本化成株式会社製)で150℃に0.5時間加熱して流動性接着剤を硬化させた。このようにして、ローラ100を製造した。製造したローラ100におけるフッ素樹脂層106の中心線平均粗さRa及び最大高さRmaxは前記値とほぼ同じであった。