JP5636049B2 - 天然ゴムとポリイミン化合物から製造した組成物 - Google Patents

天然ゴムとポリイミン化合物から製造した組成物 Download PDF

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Description

本発明は、加硫状態において改良されたヒステリシス特性を有する、少なくとも1種のポリイミン化合物を含む天然ゴムをベースとする強化ゴム組成物に関する。これらのゴム組成物は、例えば、陸上車および飛行体のタイヤを意図するゴム半製品の製造を意図する。
燃料の節減および環境を保護する必要性が優先事項となって以来、できる限り低い転がり抵抗性を有するタイヤをその耐摩耗性に悪影響を与えないで製造することが必要であることが明らかとなっている。このことは、特に、ゴム組成物において、補強の点においては通常のタイヤ級カーボンブラックのような有機充填剤と拮抗すると共に、これらの組成物に、これらの組成物を含むタイヤにおける低転がり抵抗性と同義である低ヒステリシスを付与することのできる特定の無機充填剤の使用によって可能となってきている。
転がり抵抗性をさらに低下させることは、現在の経済的および環境保護的状況においては、“補強用”説明されている上記特定の無機充填剤およびカーボンブラックの双方それぞれによって達成されている低いレベルにもかかわらず、依然として永久的な懸念ごとのままである。そのような補強用充填剤によって補強されたゴム組成物のヒステリシスをさらに低下させるために、多くの方策が既に探究されている。例えば、官能化剤、カップリング剤または星型枝分れ剤による重合末端でのジエンポリマーの構造の変性(そのように変性したポリマーと補強用充填剤間の良好な相互作用を得る目的でもっての)を挙げることができる。また、表面に結合させたシリカを含むカーボンブラックを補強用充填剤として使用し且つ官能化または非官能化ジエンポリマーと比較的高量のシランカップリングまたは被覆剤とをベースとするゴム組成物を記載している特許出願WO 96/37547 A1号も挙げることができる。
特許出願JP 2006/063206 A1号は、ポリアミンとカルボニル官能基を有する化合物との反応によって得られたポリイミンを添加して、単独または主要補強用充填剤としての或いは少量で存在するカーボンブラックとのブレンドとしての無機充填剤およびシランカップリング剤を含有する天然または合成ゴムをベースとする組成物の耐摩耗性を、その組成物の伸びおよび粘弾性を有意に悪化させることなく改良することを開示している。
本発明者等は、研究中に、主要エラストマーとしての天然ゴムをベースとし、カーボンブラックのような有機充填剤またはシリカのような無機充填剤または有機充填剤と無機充填剤のブレンドのいずれかで補強したゴム組成物において、ある種のポリイミン化合物の添加が、これらの加硫組成物に改良されたゴム特性、特にヒステリシス特性を付与し、特に、組成物の初期ヒステリシスを有意に低下させること可能にすることを見出した。ポリイミン化合物を含む組成物に関して観察された割合でのこの有意のヒステリシスの低下は、控えめに言っても、予期に反して、ポリイミン化合物を含まない組成物が示す初期ヒステリシスに匹敵している。
天然ゴムとポリイミン化合物をベースとする本発明に従うそのような組成物の有意に改良されたヒステリシス特性は、これらの組成物を、特に陸上自動車用のタイヤを意図するゴム半製品、例えば、下地層、金属または繊維補強材のコーティーング用ゴム、側壁ゴムまたはトレッドの製造において特に適切なものとしている。
従って、本発明の1つの主題は、少なくとも、天然ゴムを含むエラストマーマトリックス、有機もしくは無機補強用充填剤またはこれら2つのブレンド、無機補強用充填剤を使用する場合のカップリング剤、および下記の式1または2に相応するポリイミン化合物をベースとする強化ゴム組成物である:
Figure 0005636049

式1
Figure 0005636049

式2

(式中、
R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンジイル、7〜25個の炭素原子を有するアラルカンジイルおよび同一または異なるものであって4〜25個の炭素原子を有する複素環からなる群から選ばれ;
R4、R5、R6およびR7は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜18個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれ;
R3およびR8は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル、1〜20個の炭素原子を有するアルカントリイル、1〜20個の炭素原子を有するアルカンテトライル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカントリイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンテトライル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーントリイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンテトライル、7〜25個の炭素原子を有するアラルカンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアラルカントリイル、6〜18個の炭素原子を有するアラルカンテトライル、および同一または異なるものであって4〜25個の炭素原子を有する複素環からなる群から選ばれ;
R3は、必要に応じて、O、N、SおよびSiから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含み;
mは、1、2または3に等しく、
nは、1、2または3に等しい)。
本発明のもう1つの主題は、上記で定義したような強化ゴム組成物の製造方法である。
本発明のさらなる主題は、上記で定義した強化ゴム組成物から完全にまたは部分的に構成されたタイヤゴム半製品である。
本発明のもう1つの主題は、上記で定義したような強化ゴム組成物から完全にまたは部分的に構成された少なくとも1種のゴム半製品を含むタイヤである。
以下で説明することをより一層明確にするために、“ベースとする”組成物なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物意味するものと理解されたい;幾つかのこれらのベース成分は、上記組成物の種々の製造段階において、特に、上記組成物の架橋または加硫中に少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応するように意図し得る。
本発明説明においては、他で明確に断らない限り、示す全ての百分率(%)は、質量%である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでの範囲にある値の領域を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aからbまでの範囲にある値の領域を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
さらにまた、本発明の各成分の量は、phrで、即ち、エラストマー100質量部当りの質量部で表す。
即ち、本発明の第1の主題は、少なくとも、(a) 少なくとも非ハロゲン化天然ゴム(NR)を主として含むエラストマーマトリックス、(b) 補強用充填剤、(c) 下記の式1または2に相応するポリイミン化合物をベースとする強化ゴム組成物である:
Figure 0005636049

式1

Figure 0005636049

式2

(式中、R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンジイル、7〜25個の炭素原子を有するアラルカンジイルおよび同一または異なるものであって4〜25個の炭素原子を有する複素環からなる群から選ばれ;
R4、R5、R6およびR7は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜18個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれ;
R3およびR8は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル、1〜20個の炭素原子を有するアルカントリイル、1〜20個の炭素原子を有するアルカンテトライル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカントリイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンテトライル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーントリイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンテトライル、7〜25個の炭素原子を有するアラルカンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアラルカントリイル、6〜18個の炭素原子を有するアラルカンテトライル、および同一または異なるものであって4〜25個の炭素原子を有する複素環からなる群から選ばれ;
R3は、必要に応じて、O、N、SおよびSiから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含み;
mは、1、2または3に等しく、
nは、1、2または3に等しい)。
ポリイミン化合物としては、好ましくは、ジイミン、トリイミンおよびテトライミン化合物を使用する。これらの化合物およびこれら化合物の製造方法は、従来技術において、特にタイヤの製造を意図するゴム組成物の耐摩耗性を改良するために(この点については、上述の特許出願JP 2006/063206 A1号に触れることができる)、或いは特許US 3 668 183号に記載されている方法に従う樹脂の製造について説明されている。
上記ポリイミン化合物は、例えば、アミンをケトンと縮合させることによって合成し得る。イミン類のこの製造方法は、“Advanced Organic Chemistry, Part B: Reactions and Synthesis” by F. A. Carey and R. J. Sundberg, 4th Edition, p. 31‐33において、さらにまた、“Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure” by J. March, 5th Edition, p. 1185‐1187において、また、これらの著作において引用されている文献において記載されている。
式1に相応する生成物の合成において使用するアミンは、例えば、下記であり得る:
1,2‐プロピレンジアミン、3,3'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'‐ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホア(isophore)ジアミン、ネオペンタンジアミン(2,2‐ジメチルプロパン‐1,3‐ジアミン)、1,8‐オクタメチレンジアミン、溶融4,4'‐メチレンジアニリン、エチレンジアミン、1,3‐ジアミノプロパン、1,6‐ヘキサメチレンジアミン、1,4‐フェニレンジアミン、1,3‐フェニレンジアミン、1,2‐フェニレンジアミン、1,2‐ジアミノシクロヘキサン、1,3‐ジアミノシクロヘキサン、1,4‐ジアミノシクロヘキサン、1,3‐ジアミノ‐4‐メチルベンゼン;好ましくは、1,8‐オクタメチレンジアミン、1,6‐ヘキサメチレンジアミン、1,2‐ジアミノシクロヘキサンおよび1,4‐ジアミノシクロヘキサン。
式2に相応する生成物の合成において使用するアミンは、例えば、下記であり得る:
4,7,10‐トリオキサトリデカン‐1,13‐ジアミン、4,9‐ジオキサドデカン‐1,12‐ジアミン、ジエチレントリアミン、N‐3‐アミン‐(3‐(2‐アミノエチルアミノ)プロピルアミン)、ジプロピレントリアミン、N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)メチルアミン、N‐4‐アミン‐(N,N'‐ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン)、2,4‐ジアミノ‐6‐メチル‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐6‐フェニル‐s‐トリアジン、メラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、2,2',2''‐ニトリロトリエチルアミン、3,6‐ジオキサオクタン‐1,8‐ジアミン、N,N,N‐トリス(2‐アミノエチル)アミン、ビス(3‐アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、2‐(2‐アミノエトキシ)エタンアミン、3‐{2‐[2‐(3‐アミノプロポキシ)エトキシ]エトキシ}プロパン‐1‐アミン、3‐[4‐(3‐アミノプロポキシ)フェノキシ]プロパン‐1‐アミン、3‐{2‐(3‐アミノプロポキシ)‐1‐[(3‐アミノプロポキシ)メチル]エトキシ}プロパン‐1‐アミン、2‐({2‐[(2‐アミノフェニル)チオ]エチル}チオ)アニリン、2‐[(3‐{[(2‐アミノフェニル)チオ]メチル}‐2,4,6‐トリメチルベンジル)チオ]アニリン、2‐({4‐[(2‐アミノフェニル)チオ]ブテ‐2‐エニル}チオ)アニリン;好ましくは、N,N‐ビス(2‐アミノエチル)エタン‐1,2‐ジアミン。
式1または2において特許請求する生成物の合成において使用するケトンは、例えば、下記であり得る:
ペンタン‐3‐オン、2,2,6,6‐テトラメチルシクロヘキサノン、2,2,4,4‐テトラメチル‐3‐ペンタノン、4‐メチルペンタン‐2‐オン、2,4‐ジメチルペンタン‐3‐オン、2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐オン、シクロヘキサノン、アセトン、2,6‐ジメチルシクロヘキサノン、2,2,4,4‐テトラメチルペンタン‐3‐オン、(1,1',3',1'')ター‐(シクロヘキサン)‐2'‐オン、ジシクロヘキシルメタノン、ジシクロペンチルメタノン、シクロペンタノン、ビシクロ[3.3.1]ノナン‐9‐オン、ジシクロプロピルメタノン、2,6‐ジ‐tert‐ブチルシクロヘキサノン、2,6‐ジメチルシクロヘキサノン、2,4‐ジメチル‐3‐ペンタノン;好ましくは、4‐メチルペンタン‐2‐オン、2,4‐ジメチルペンタン‐3‐オン、2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐オン、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノン。
本発明によれば、式1または2に相応するポリイミン化合物は、好ましくは、R4、R5、R6およびR7が、各々、1〜4個の炭素原子を有する非置換の線状または枝分れアルキル基から選ばれる炭化水素系基であり、有利には、R4およびR6が、各々、メチル基であり、R5およびR7が、各々、イソブチル基であり、或いは、それぞれの組合せ“R4、R5”または“R6、R7”が、5個または6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を示し;R1、R2およびR8が、各々、2〜8個の炭素原子を有する非置換の線状もしくは枝分れのアルカンジイル基または6個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル基であり;R3が、2〜8個の炭素原子を有する非置換のアルカンジイル基または2〜6個の炭素原子を有しヘテロ原子としてNを含むアルカンジイル基である化合物から選ばれる。
さらに好ましくは、これらのポリイミン化合物は、N,N'‐ビス(4‐メチルペンタン‐2‐イリデン)ヘキサン‐1,6‐ジアミン、N,N'‐ビス(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)ヘキサン‐1,6‐ジアミン、N,N'‐ビス(2,4‐ジメチルペンタン‐3‐イリデン)ヘキサン‐1,6‐ジアミン、N,N'‐ビス(4‐メチルペンタン‐2‐イリデン)オクタン‐1,8‐ジアミン、N,N'‐ビス(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)オクタン‐1,8‐ジアミン、N,N'‐ビス(2,4‐ジメチルペンタン‐3‐イリデン)オクタン‐1,8‐ジアミン、N,N'‐ジシクロペンチリデンヘキサン‐1,6‐ジアミン、N,N'‐ジシクロペンチリデンオクタン‐1,8‐ジアミン、N,N'‐ジシクロへキシリデンヘキサン‐1,6‐ジアミン、N,N'‐ジシクロへキシリデンオクタン‐1,8‐ジアミン、N,N'‐ビス(4‐メチルペンタン‐2‐イリデン)シクロヘキサン‐1,4‐ジアミン、N,N'‐ビス(4‐メチルペンタン‐2‐イリデン)シクロヘキサン‐1,2‐ジアミン、N,N'‐ビス(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)シクロヘキサン‐1,4‐ジアミン、N,N'‐ビス(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)シクロヘキサン‐1,2‐ジアミン、N,N'‐ジシクロへキシリデンシクロヘキサン‐1,4‐ジアミン、N,N'‐ジシクロへキシリデンシクロヘキサン‐1,2‐ジアミン、N‐(4‐メチルペンタン‐2‐イリデン)‐N',N'‐ビス((4‐メチルペンタン‐2‐イリデンアミノ)エチル)エタン‐1,2‐ジアミンおよびN‐(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)‐N',N'‐ビス(2‐(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデンアミノ)エチル)エタン‐1,2‐ジアミンから選ばれる。
本発明に従うタイヤ部品のゴム組成物は、上記ポリイミン化合物を、100gのエラストマー当り0ミリモルと6ミリモルの間の、好ましくは100gのエラストマー当り1〜5ミリモルの範囲の量で含む、即ち、小割合のポリイミン化合物を含む。本発明に従う“ポリイミン化合物”なる表現は、式1または2に相応する1種の化合物または数種の化合物の混合物を意味するものと理解すべきである。
本発明によれば、上記組成物のエラストマーマトリックスは、天然ゴムをベースとする。ある場合には、エラストマーマトリックスは、有利には、全体的に天然ゴムからなる(100%のエラストマーマトリックスが天然ゴムからなる)。この選択方式は、好ましくは、上記ゴム組成物を、重量車両または氷上もしくは雪上のようなある種の用途のような実用車または乗用車のタイヤ用の側壁またはトレッドを製造するのに或いは、例えば、クラウンまたはカーカスプライのような金属補強材/ゴム複合体を製造するのに使用する場合に使用する。
また、エラストマーマトリックスは、天然ゴム以外に、少なくとも1種の他のジエンエラストマーも含み得る。
このまたはこれらの他のジエンエラストマーは、この場合、マトリックス中に、0質量%と50質量%の間(この範囲の限界値は除外される)の、好ましくは5質量%〜40質量%の、さらにより好ましくは15質量%〜40質量%の割合で存在する。
少なくとも1種の他のジエンエラストマーとのブレンドの場合、エラストマーマトリックス中の天然ゴム質量画分は、主要量である。好ましくは、上記質量画分は、マトリックスの総質量の50質量%以上、さらにより好ましくはマトリックスの総質量の60質量%〜85質量%である。
本発明に従う主要質量画分とは、上記ブレンドの最高質量画分を称する。従って、三成分のNR/エラストマーA/エラストマーBブレンドにおいては、質量画分は割合45/30/25または40/40/20または40/30/30で分布し得、主要質量画分はそれぞれ45または40であり、二成分のNR/エラストマーブレンドにおいては、質量画分は割合50/50または70/30で分布し得、主要質量画分はそれぞれ50または70である。
用語“ジエンエラストマー”は、本発明によれば、任意の、必要に応じて官能化された天然ゴムまたは少なくとも部分的にジエンモノマーに由来する任意の合成エラストマーを意味するものとして理解すべきである。さらに詳細には、用語“ジエンエラストマー”とは、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマーまたは1種以上の共役ジエンと他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマーを意味するものと理解されたい。コポリマーの場合、後者は、20質量%〜99質量%のジエン単位と1質量%〜80質量%のビニル芳香族単位を含む。必要に応じて官能化された天然ゴムは、好ましくは、エポキシ化ゴムである。
本発明に従うエラストマーマトリックスの一部を構成する上記ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、ポリイソプレン(PI)、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに詳細には、ブタジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマー、特に、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR);イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR);イソプレンとビニル芳香族モノマーのコポリマー、特に、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR);および、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選ばれる。これらのコポリマーのうちでは、特に好ましいのは、ブタジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマー、特に、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)である。
本発明に従うエラストマーマトリックスの一部を構成する上記ジエンエラストマーは、当業者にとって既知の官能化剤、カップリング剤または星型枝分れ化剤によって、それ自体既知の方法で、星型枝分れ化、カップリングまたは官能化してもよく或いはしなくてもよい。例えば、幾つかあるより一般的なもののなかで、本出願法人名義の特許出願WO 08/141702号、FR 2 291 064号、FR 2 291 065号およびFR 07/60442号に記載されている方法に従ってカップリングさせたエラストマーを挙げることができる。
本発明に従うゴム組成物は、35〜200phrの範囲の割合の補強用充填剤を含む少なくとも3種の化合物を含む。好ましくは、総補強用充填剤の含有量は、40phrと140phrの間、より好ましくは50phrと130phrの間の量であり、最適量は、タイヤにおいて目的とする用途に応じて異なる;例えば、自転車タイヤに関して期待される補強レベルは、勿論、高速で持続して走行し得るタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用のタイヤまたは重量車両のような実用車用のタイヤに関して必要とする補強レベルよりも低い。
補強用充填剤は、組成物総質量の0〜100質量%の範囲の割合のカーボンブラックのような補強用有機充填剤または補強用シリカのような補強用無機充填剤、或いは目的とする用途に応じての有機充填剤/無機充填剤ブレンドからなる。有機充填剤または無機充填剤の割合は、それぞれ、組成物総質量の50質量%以上、特に目的とする用途に応じての55%よりも多くである。主要補強用充填剤とのブレンド(混合物)中に含ませる第2補強用充填剤は、この場合、好ましくは、組成物総質量に対し50%よりも少ない質量画分で存在する。
用語“無機補強用充填剤”は、本特許出願においては、定義により、カーボンブラックのような通常の有機充填剤と対比したときに“白色充填剤”、“透明充填剤”として、実際には“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/gよりも低いBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降または焼成シリカであり得るが、高分散性沈降シリカが好ましい。また、補強用無機充填剤としては、アルミニウムタイプの鉱質充填剤、特に、アルミナ(Al2O3)または(酸化)水酸化アルミニウム、或いは補強用酸化チタンも挙げられる。
補強用無機充填剤を使用する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒またはビーズ形のいずれであれ重要ではない。勿論、“補強用無機充填剤”なる用語は、種々の補強用無機充填剤、特に、上述したような高分散性シリカの混合物を意味することも理解されたい。
全てのカーボンブラック類、特に、タイヤゴム組成物において一般的に使用するHAF、ISAF、SAF、FF、FEF、GPFおよびSRFタイプのブラック類(タイヤ級ブラック類)が、補強用有機充填剤として適している。後者のうちでは、さらに詳細には、例えば、ブラック類N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック(ASTM級)、さらにまた、例えば、N550またはN683ブラック類のようなより粗めのブラック類が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で天然ゴム中に既に混入していてもよい。
ブラック/シリカブレンドまたはシリカで部分的にもしくは完全に被覆したブラック類は、補強用充填剤を構成するのに適している。また、限定するものではないが、Cabot社から品名“CRX 2000”として販売されている、また、国際特許文献WO‐A‐96/37547号に記載されている充填剤のような、シリカで修飾したカーボンブラックも適している。
カーボンブラック以外の補強用有機充填剤の例としては、特許出願 WO‐A‐2006/069792号およびWO‐A‐2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤、或いは特許出願 WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化非芳香族ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
補強用充填剤が主要補強用無機充填剤とカーボンブラックのみを含む場合、この補強用充填剤中のカーボンブラックの質量画分は、より好ましくは、補強用充填剤総質量に対して30%以下であるように選定する。
補強用充填剤が補強用無機充填剤を含む場合、本発明に従うゴム組成物は、エラストマーマトリックスを構成する天然ゴムおよび任意構成成分としてのジエンエラストマーに補強用無機充填剤をカップリングさせるためのカップリング剤を含む少なくとも4種の化合物を含む。
用語“カップリング剤”とは、さらに詳細には、当該無機充填剤と上記エラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を確立すると共に、この充填剤のエラストマーマトリックス中での分散を容易にすることのできる薬剤を意味するものと理解されたい。そのような少なくとも二官能性の結合剤は、例えば、簡略化した一般式“Y‐T‐X’”を有し、式中:
Yは、上記無機充填剤に物理的および/または化学的に結合させることのできる官能基(“Y”官能基)を示し、そのような結合は、例えば、上記カップリング剤のケイ素原子と上記無機充填剤の表面ヒドロキシル(‐OH)基(例えば、シリカである場合の表面シラノール)間で確立され得;
X'は、上記ジエンエラストマーに、例えばイオウ原子によって物理的および/または化学的に結合させことのできる官能基(“X’”官能基)を示し;
Tは、YをX'と連結させるのを可能にする二価の基を示す。
また、無機充填剤粒子を被覆するための被覆剤と称する薬剤も使用し得る。これらの被覆剤は、無機充填剤の表面官能部位に結合し且つそのようにして無機充填剤を少なくとも部分的に被覆することによって、この無機充填剤のエラストマーマトリックス中での分散をさらに改良し、ひいては未硬化状態におけるエラストマーマトリックスの粘度を低下させ、未硬化状態のエラストマーマトリックスの加工性を全体的に改良し得る。
そのような被覆剤は、本質的には、ポリオール(例えば、ジオール、グリセリンまたはその誘導体のようなトリオール);ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);第一級、第二級または第三級アミン(例えば、トリアルカノールアミン);ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン、例えば、α,ω‐ジヒドロキシポリオルガノシラン(特に、α,ω‐ジヒドロキシポリジメチルシロキサン);ヒドロキシシラン;アルキルアルコキシシラン、特に、例えばDegussa‐Evonik社から品名Dynasylan Octeoとして販売されている1‐オクチルトリエトキシシランのようなアルキルトリエトキシシランの群に属する。これらの被覆剤は、無機充填剤で補強するタイヤゴム組成物において周知である;これらの被覆剤は、例えば、特許出願WO 00/05300号、WO 01/55252号、WO 01/96442号、WO 02/031041号、WO 02/053634号、WO 02/083782号、WO 03/002648号、WO 03/002653号、WO 03/016387号、WO 2006/002993号、WO 2006/125533号、WO 2007/017060号およびWO 2007/003408号に記載されている。
上記結合剤は、上記無機充填剤に対しては活性なY官能基を知られているとおりに含み得るが、上記エラストマーに対しては活性なX'官能基を欠いている当該充填剤を被覆するための単純な薬剤と混同すべきではない。タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物において、シリカのような補強用無機充填剤とジエンエラストマー間に結合(またはカップリング)を有効に付与することは知られているまたは付与し得る、例えば、オルガノシラン類、特に、上述のX'およびY官能基を担持するアルコキシシランポリスルフィドまたはメルカプトシラン、またはポリオルガノシロキサンのような任意の結合剤を使用し得る。シリカ/エラストマー結合剤は、特に、多くの文献に記載されており、最もよく知られているのは、アルコキシシランポリスルフィドのような二官能性アルコキシシランである。特に、例えば、特許出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”として知られているシランポリスルフィドを使用する。
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、TESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(またはUS 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
他のシランスルフィドの例としては、例えば、特許または特許出願US 6 849 754号、WO 99/09036号、WO 2006/023815号およびWO 2007/098080号に記載されているような、少なくとも1個のチオール(‐SH)官能基(メルカプトシランと称する)および/または少なくとも1個のブロックトチオール官能基を担持する他のシラン類が挙げられる。
勿論、特に上述の特許出願WO 2006/125534号に記載されているような上述のカップリング剤の混合物も使用し得る。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、有利には20phr未満である。カップリング剤含有量は、好ましくは0.5phrと12phrの間の量、好ましくは3〜10phr、特に4〜7phrである。この含有量は、当業者であれば、上記組成物において使用する無機充填剤の含有量に応じて容易に調整し得ることである。
当業者であれば、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって被覆されているか(例えば、限定するものではないが、Cabot社から品名“CRX 2000”として販売されている、さらに、国際特許文献WO‐A‐96/37547号に記載されている充填剤)、或いはその表面に、官能部位、特にヒドロキシル部位を含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を確立するためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、この項で説明する補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。
また、本発明に従うゴム組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、上述したような無機充填剤の被覆用の薬剤、或いはゴムマトリックス中での充填剤の分散性の改善および組成物の粘度の低下のために、知られている通り、未硬化状態における組成物の加工能力を改善することのできるより一般的な加工助剤も含み得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン類;ポリオール類;ポリエーテル類;第一級、第二級または第三級アミン類;または、ヒドロキシル化もしくは加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用または可塑化用樹脂;例えば、特許出願WO 02/10269号に記載されているような、メチレン受容体(例えば、フェノール・ノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤;加硫活性化剤;コバルト系化合物のような接着促進剤;可塑剤、好ましくは、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイルまたはTDAEオイルからなる群から選ばれる非芳香族系または極めて僅かに芳香族系の可塑剤、エーテル可塑剤、エステル可塑剤(例えば、グリセリントリオレアート)、および、例えば、特許出願WO 2005/087859号、WO 2006/061064号およびWO 2007/017060号に記載されているような、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す炭化水素樹脂;およびそのような化合物の混合物のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または数種も含み得る。
また、本発明は、上述したようなゴム組成物の製造方法にも関する。
本発明によれば、ポリイミン化合物は、ミル(開放ミキサー)タイプの開放装置または密閉ミキサータイプの密閉装置において、以下で説明するゴム組成物の製造過程の任意の時点(天然ゴム生産現場での天然ゴムの製造中のような)にて混入し得ることに注目すべきである。
上記組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、(i) 130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”と称する段階)、並びに、その後の、(ii) 典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度に下げた、仕上げ段階とも称する機械的加工の第2段階(“生産”と称する段階)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋系を混入する。“架橋系”なる表現は、無機充填剤と一緒に通常に使用する架橋剤またはイオウのような通常に使用する加硫剤または加硫促進剤のいずれかを意味するものと理解されたい。
例えば、上記第1(非生産)段階は、1回の熱機械工程において実施し、その間に、60℃と110℃の間の、例えば、80℃辺りの温度の第1工程において、ジエンエラストマー(1種以上)を密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、例えば約30秒の混練時間後の第2工程において、補強用充填剤、上述の低含有量のポリイミン化合物、必要に応じてのさらなる加工助剤および架橋または加硫系を除いた他の添加剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、およそ165℃の最高落下温度でもって2分と6分の間の時間である。
そのようにして得られた混合物を冷却した後、加硫系を、この場合、20℃と50℃の間、例えば、40℃辺りの温度で、一般には開放ミルのような開放ミキサー内で混入する;その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と6分の間で混合する(生産段階)。
本発明に従うゴム組成物を製造する本発明に従う方法は、少なくとも下記の段階を含む:
・130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度において、好ましくは2分と6分の間の時間にて、架橋系を除いた、上述の低含有量のポリイミン化合物(1種以上)を含むゴム組成物の必須ベース構成成分の熱機械的加工の第1工程(“非生産段階”とも称する)を、天然ゴムをベースとするエラストマーマトリックス中に上記組成物の構成成分を1回以上の工程において混練により緊密に混入することによって実施する段階;その後の、
・上記第1工程の最高温度よりも低い、好ましくは110℃よりも低い温度において、好ましくは2分と6分の間の時間で、有利には開放ミルにおいて機械的加工の第2工程(“生産段階”とも称する)を実施し、その間に、上記架橋系を混入する段階。
本発明に従う方法によれば、上記組成物中に混入しなければならないポリイミン化合物は、低含有量で、即ち、100gのエラストマー当り0ミリモルと6ミリモルの間の含有量で混入しなければならないことに留意すべきである。
上記の式1または2に相応するポリイミン化合物は、そのようにして、下記のいずれかのように混入し得る:
・天然ゴム生産現場における天然ゴムの製造中の添加剤として;
・下記のようにして本発明に従うゴム組成物の成分として:
‐開放ミル(開放ミキサー)タイプの開放装置または密閉ミキサータイプの密閉装置におけるゴム/ポリイミンマスターバッチの予備調製中;
‐マスターバッチの予備調製なしで、ゴム組成物の他の化合物と一緒に開放または密閉ミキサー内に直接。
このことが、本発明に従う方法の1つの選択方式によれば、この選択方式が、上記の段階(i)を実施する前に、式1または2に相応するポリイミン化合物の添加を含む天然ゴムの通常の製造段階を含む理由である。
本発明に従う方法のもう1つの選択方式は、上記の段階(i)を実施する前に、天然ゴムと式1または2に相応するポリイミン化合物とをベースとするマスターバッチの製造段階を含む。
本発明に従う方法のもう1つの選択方式によれば、ポリイミン化合物を含むが加硫系を除いた本発明の組成物の全てのベース構成成分を、第1段階、即ち、“非生産”段階において混入する。
その後、そのようにして得られた最終組成物は、例えばシートまたはスラブ形状にカレンダー加工し得、或いは押出加工して、例えば、タイヤを意図するゴム半製品として使用することのできるゴム形状要素を形成させ得る。
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1つのその構成部品中に、本発明に従う強化ゴム組成物を取込ませているタイヤである。
本発明の1つの主題は、特に、これらのタイヤを意図する本発明に従う強化ゴム組成物を含むゴム半製品である。
ポリイミン化合物を含まない組成物のヒステリシスと比較して、本発明に従う強化ゴム組成物を特徴付ける低下したヒステリシス故に、本発明に従う組成物を含むトレッドを有するタイヤは、改良されたヒステリシス特性を有し、特に、有利に低下した転がり抵抗性と同義である上記組成物の初期ヒステリシスを有意に低下させることを可能にしていることに注目すべきである。
ポリイミン化合物を含まない組成物と比較して、本発明に従う強化ゴム組成物を特徴付ける低下したヒステリシス故に、本発明の組成物を含むタイヤ、その側壁または内部組成物の全部もしくは数種は、有意に低下した自己発熱性ひいては改良された耐久性を示すことにも注目されたい。用語“内部組成物”とは、クラウン補強プライ、カーカス補強プライ、ビード、プロテクター、下地層、ゴムブロック、およびタイヤのこれら領域間の結合または界面を与えることを意図する他の内部ライナー、特に、デカップリングゴムの製造を意図する組成物を意味するものと理解されたい。
本発明に従うタイヤは、特に、乗用車用;バン類、重量車両(即ち、地下鉄列車、バス、重量道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)または道路外車両、農業用車両または土木機械)、航空機、および他の輸送または操作用車両から選ばれる産業用車両用に意図する。
本発明の上記の特徴および他の特徴は、例として示し且つ限定するつもりはない本発明の幾つかの典型的な実施態様についての以下の説明を読めば、より一層良好に理解し得るであろう。
I. 使用する測定および試験法
上記ゴム組成物は、下記に示すように、硬化の前後において特性決定する:
(a) 100℃でのムーニー粘度(ML 1+4):表中に“ムーニー”と題したASTM: D‐1646規格に従って測定。
動的特性ΔG*およびtan(δ)maxは、ASTM D 5992‐96規格に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互剪断における正弦応力に、10Hzの周波数で、ASTM D 1349‐99規格に従う標準温度条件(23℃)下に供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび79mm2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。最高最低歪み振幅掃引を、0.1%から50%まで(外方向サイクル)、次いで、50%から0.1%まで(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数(tanδ)である。観察されたtanδの最高値(tan(δ)max)および0.1%歪みと50%歪み値間の複素モジュラスの差(ΔG*) (パイネ効果)を戻りサイクルから示す。
II. マスターバッチの製造
下記の図表に示す4種のポリイミン分子を天然ゴム用の添加剤として使用して、本発明方法の変法に従うマスターバッチを製造した。
・N,N'‐ビス(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)ヘキサン‐1,6‐ジアミン(HMDI DIBK);
・N,N'‐ジシクロペンチリデンヘキサン‐1,6‐ジアミン(HMDIシクロペンタノン);
・N,N'‐ジシクロへキシリデンシクロヘキサン‐1,4‐ジアミン(1,4DACHシクロヘキサノン);
・N‐(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデン)‐N',N'‐ビス(2‐(2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐イリデンアミノ)エチル)エタン‐1,2‐ジアミン(TAEA DIBK))。
Figure 0005636049
ポリイミンの合成
1,4DACHシクロヘキサノン
機械的撹拌装置、ディーン・スタークトラップおよび滴下漏斗を装着した500mlの三口丸底フラスコに、50gの1,4‐ジアミノシクロヘキサン(0.43モル)、170gのシクロヘキサノン(1.7モル)および150mlのメチルシクロヘキサンを導入する。反応媒体に窒素を室温で5分間散布し、次いで、温度が160℃である恒温油浴を使用して還流下に加熱する。7時間還流させた後、反応媒体を冷却し、その後、過剰の反応物を、20ミリバールの圧力下の80℃での蒸発によって除去する。64gの白色固形物を得る。
HMDI DIBK
ディーン・スターク還流コンデンサーおよび撹拌装置を装着した丸底フラスコに、29g (0.25モル)のヘキサメチレンジアミンと360g (2.5モル)の2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐オンを導入する。反応媒体を、0.5モルの水(9mL)を蒸留により回収するまで還流させる。次に、反応媒体を室温に冷却し、過剰のケトンを40ミリバールで80℃にて蒸留する。
HMDIシクロペンタノン
ディーン・スターク還流コンデンサーおよび撹拌装置を装着した丸底フラスコに、29g (0.25モル)のヘキサメチレンジアミンと210g (2.5モル)のシクロペンタノンを導入する。反応媒体を、0.5モルの水(9mL)を蒸留により回収するまで還流させる。次に、反応媒体を室温に冷却し、過剰のケトンを40ミリバールで80℃にて蒸留する。
TAEA DIBK
ディーン・スターク還流コンデンサーおよび撹拌装置を装着した丸底フラスコに、37g (0.25モル)のN,N‐ビス(2‐アミノエチル)エタン‐1,2‐ジアミンと360g (2.5モル)の2,6‐ジメチルヘプタン‐4‐オンを導入する。反応媒体を、0.75モルの水(12mL)を蒸留により回収するまで還流させる。次に、反応媒体を室温に冷却し、過剰のケトンを40ミリバールで80℃にて蒸留する。
マスターバッチの製造
マスターバッチを(M….、例えば、MB、MCまたはMD)を調製するのに使用する天然ゴムは、TSR20と称するNRである。
分子を混入する方法は、下記のとおりである:
天然ゴムを、ロールが150mmに等しい直径、2mmに等しい間隙および20rpmのロール回転速度を有する開放ミル上で、下記の工程に供する:
工程1:天然ゴムの初期の周囲温度での3回通し;
工程2:所定量の粉末形のポリイミンの添加;
工程3:粉末を分散させサンプルを均質化するための12回通しの実施。
概要は、下記の表1に示している。
天然ゴムを供した工程は、表中に、X印で示している。
表1
Figure 0005636049
添加した各イミンの量は、イミン官能物のモル数の単位において同一である。
III. 本発明の典型的な実施例
この典型的な実施例の目的は、ポリイミン化合物を低含有量で含み且つ本発明に従う方法に従って製造する本発明に従う組成物の性質を、ポリイミン化合物を含まないこと以外は同一であるもう1つの組成物と比較することである。組成物を製造する手順は、試験する全ての組成物において同じである。
本実施例は、補強用充填剤が100%のカーボンブラックのような有機充填剤である場合の本発明に従う組成物の改良された性質(ヒステリシス)を示す。
試験した各組成物は、下記の配合を有する(phr、即ち、エラストマー100部当りの部で表す)。
Figure 0005636049
(1) = 天然ゴム
(2) = カーボンブラックN234
(3) = N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”)
(4) = Umicore社からの工業級
(5) = Uniquema社からの“Pristerene 4931”
(6) = Flexsys社からのCBS
下記の組成物の各々を、第1工程においては熱機械的加工によって、その後、第2仕上げ工程においては機械的加工によって製造する。
エラストマー、30秒後に、カーボンブラック、ステアリン酸、酸化亜鉛、酸化防止剤およびパラフィンを、容量が85cm3であり、70%満たし、およそ80℃の出発温度を有する“バンバリー”タイプの実験室密閉ミキサー内に連続して導入する。
熱機械的加工の段階を、約165℃の最高落下温度までの3〜5分間で実施する。
熱機械的加工の上記第1工程はそのようにして実施し、この第1工程におけるブレードの平均速度が70rpmであるように特定する。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、開放ミキサー(ホモフィッシャー)内で、イオウとスルフェンアミドを40℃で添加し、混ぜ合せた混合物を3〜4分間さらに混合する(機械的加工の上記第2工程)。
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのスラブ(2〜3mm範囲の厚さを有する)または微細シートの形にカレンダー加工する。
得られた結果:
表2
Figure 0005636049
本発明に従う組成物B、C、DおよびEは、単に上記装置上で加工したのみのNRをベースとする組成物Aの値よりも高い“ムーニー混合物”値を示すことに注目すべきである。
動的特性に関しては、組成物B、C、DおよびEのデルタG*およびtan(δ)maxの値は、上記装置を単に通過させたNRをベースとする組成物Aの値よりも低いことに注目すべきである。本発明に従うポリイミンを含むマスターバッチMB、MC、MDまたはMEは、ポリイミン化合物の導入なしで上記装置を通過させた天然ゴムAと対比して、初期ヒステリシス特性を改良することを可能にしている。
換言すれば、ポリイミンを含むNRをベースとする本発明に従う組成物B、C、DおよびEは、変性していないNRをベースとする組成物Aのゴム特性と対比して改良されている架橋状態のゴム特性を、実質的に低下したヒステリシスの結果として示している。

Claims (8)

  1. 少なくとも、(a) 非ハロゲン化天然ゴム(NR)を含むエラストマーマトリックス、(b) 補強用充填剤、(c) 下記の式1または2に相応するポリイミン化合物
    Figure 0005636049

    式1
    Figure 0005636049

    式2

    (式中、
    R4、R5、R6およびR7は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜18個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれ;
    R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンジイル、7〜25個の炭素原子を有するアラルカンジイルおよび同一または異なるものであって4〜25個の炭素原子を有する複素環からなる群から選ばれ;
    R3およびR8は、同一または異なるものであって、1〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル、1〜20個の炭素原子を有するアルカントリイル、1〜20個の炭素原子を有するアルカンテトライル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカントリイル、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルカンテトライル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーントリイル、6〜18個の炭素原子を有するアレーンテトライル、7〜25個の炭素原子を有するアラルカンジイル、6〜18個の炭素原子を有するアラルカントリイル、6〜18個の炭素原子を有するアラルカンテトライル、および同一または異なるものであって4〜25個の炭素原子を有する複素環からなる群から選ばれ;
    R3は、必要に応じて、O、N、SおよびSiから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含み;
    mは、1、2または3に等しく、
    nは、1、2または3に等しい)
    をベースとする強化ゴム組成物であって、
    前記エラストマーマトリックス中の前記天然ゴムの質量画分が、マトリックス総質量の50質量%以上である、前記強化ゴム組成物
  2. 前記補強用充填剤が、有機充填剤、例えば、カーボンブラックを、補強用充填剤の総質量の100質量%の割合で含む、請求項1記載のゴム組成物。
  3. 前記補強用充填剤が、補強用無機充填剤を、補強用充填剤の総質量の55質量%〜100質量%の範囲の割合で含む、請求項1または2記載のゴム組成物。
  4. 下記の段階:
    (i) 130℃と200℃の間の最高温度において、架橋系を除いた前記ゴム組成物の必須ベース構成成分の熱機械的加工の第1工程を、天然ゴムをベースとするエラストマーマトリックス中に前記組成物の成分を混練により緊密に混入することによって実施する段階;その後の、
    (ii) 前記第1工程の最高温度よりも低い、好ましくは110℃よりも低い温度において、前記架橋系を混入する機械的加工の第2工程を実施する段階;
    を含み、前記段階(i)を実施する前に、式1または2に相応するポリイミン化合物の添加の段階を含む天然ゴムの製造段階を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の強化ゴム組成物の製造方法。
  5. 下記の段階:
    (i) 130℃と200℃の間の最高温度において、架橋系を除いた前記ゴム組成物の必須ベース構成成分の熱機械的加工の第1工程を、天然ゴムをベースとするエラストマーマトリックス中に前記組成物の成分を混練により緊密に混入することによって実施する段階;その後の、
    (ii) 前記第1工程の最高温度よりも低い、好ましくは110℃よりも低い温度において、前記架橋系を混入する機械的加工の第2工程を実施する段階;
    を含み、前記段階(i)を実施する前に、天然ゴムと前記ポリイミン化合物をベースとするマスターバッチの製造段階を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の強化ゴム組成物の製造方法。
  6. (i) 130℃と200℃の間の最高温度において、架橋系を除いた前記ゴム組成物の必須ベース構成成分の熱機械的加工の第1工程を、天然ゴムをベースとするエラストマーマトリックス中に前記組成物の成分を混練により緊密に混入することによって実施する段階;その後の、
    (ii) 前記第1工程の最高温度よりも低い、好ましくは110℃よりも低い温度において、前記架橋系を混入する機械的加工の第2工程を実施する段階;
    を含み、前記ポリイミン化合物を、段階(i)中に、前記組成物の他の化合物と一緒に直接添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の強化ゴム組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項記載の架橋可能なまたは架橋したゴム組成物を含むタイヤゴム半製品。
  8. 請求項7記載の半製品を含むタイヤ。
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