JP5634802B2 - 新規酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物及びこれを含有する酸化剤 - Google Patents

新規酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物及びこれを含有する酸化剤 Download PDF

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Description

本発明は、高い反応性を有する新規な酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物、これを含有する酸化剤及び該酸化剤を用いた酸化反応に関する。
超原子価ヨウ素化合物は、3価或いは5価の超原子価状態を有するヨウ素原子を含有するものである。これらの化合物は、より安定なオクテット状態に戻ろうとする性質を有しているため、例えば鉛(IV)、タリウム(III)、水銀(II)等の重金属酸化剤と比較的類似した反応性を示し、また、それらに比べて低毒性である。そのため、これら重金属酸化剤に代わる毒性の低い酸化剤として、安全性と反応性の高さから注目されている化合物である。
3価の超原子価ヨウ素化合物としては、例えばフェニルアイオダイン ジアセテート〔PhI(OAc)2:PIDA〕、フェニルアイオダイン ビス(トリフルオロアセテート)〔PhI(OCOCF3)2:PIFA〕、[ヒドロキシ(トシロキシ)ヨード]ベンゼン〔PhI(OH)(OTs)〕等のモノマー試薬が挙げられる(例えば非特許文献1、非特許文献2等参照)。しかしながら、これらモノマー試薬は高い反応性を有する酸化剤ではあるが、同時に副反応も進行してしまうため目的物を高収率で得ることが困難であった。
また、他の超原子価ヨウ素試薬として、例えばジアセトキシヨード基(-I(OAc)2基)等の超原子価ヨウ素部位がポリスチレンに導入されたポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬〔ポリ(ジアセトキシヨード)スチレン:PDAIS〕が挙げられる(例えば非特許文献1、非特許文献2等参照)。しかしながら、これらポリマー試薬は、例えば(1)溶解性が低く、モノマー試薬に比べて反応性が低い、(2)ポリマーへの超原子価ヨウ素部位の導入効率が試薬調製時によって異なるため、品質を確保するのが難しい、(3)ポリスチレン鎖にはベンジル位プロトンが存在するため、数回使用するとポリマーの劣化が進行し、完全な回収再利用は難しい、(4)超原子価ヨウ素部位がポリスチレン鎖に埋もれてしまうため反応完結までに時間を要し、且つ過剰の試薬が必要となる等の問題点を有していた。
更に、発明者等は、新たなリサイクル反応試薬として、4価のアダマンタン核及びメタン核に4つの超原子価ヨウ素部位が導入された低分子リサイクル型超原子価ヨウ素試薬を開発している(例えば特許文献1等参照)。当該化合物は酸化に弱いベンジル位プロトンを有さないため劣化に強く、各種酸化反応に用いることができ、リサイクル特性に優れるという特徴を有していたが、その反応性はPIDA及びPIFAとほぼ同じであった。
更にまた、酸素架橋型超原子価ヨウ素試薬として、例えば2つの超原子価ヨウ素部位が、架橋されていない2つのベンゼン環に夫々導入されている化合物〔PhI(X)-O-I(X)Ph(式中、X=OCOCF3)〕が知られている(例えば非特許文献3等参照)。しかしながら、当該化合物は、例えばXがアニオン性の弱い官能基(例えばフッ素原子、アセチルオキシ基等)を有するものについては合成ができない、溶液中での安定性が低いため反応性が低い等の問題点を有していた。また、当該化合物は酸化試薬として知られているが、その反応性については何ら検討されていなかった。
また、他の酸素架橋型超原子価ヨウ素試薬として、例えば(a)架橋された2つのナフチル環に酸素架橋型超原子価ヨウ素部位が導入されたもの(例えば非特許文献4等参照)、(b)発明者等が開発した2つのベンゼン環がスピロ環と縮合している構造に酸素架橋型超原子価ヨウ素部位が導入されたもの(例えば非特許文献5等参照)も開発されている。しかしながら、これら化合物はキラル化剤として知られており、その反応は不斉酸化反応に限定されるものである、また溶液中で不安定であるため反応性が低い等の問題点を有していた。また(a)についてはその反応性についても具体的に検討されていなかった。
このような状況下、各種酸化反応の酸化剤として汎用可能であり、且つ従来の酸化試薬より高い反応性を有する新規な酸化架橋型超原子価ヨウ素化合物の開発が望まれている現状にある。
特開2005-220122号公報
Chemical Reviews, 2002, Vol.102, No.7, p.2523-2584 Synlett, 2002, No.12, p.1966-1975 J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1985, No.4, p.757-763 J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, p.5677-5678 Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, p.3787-3790
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、高い反応性を有する新規な酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物、これを含有する酸化剤及び該酸化剤を用いた酸化反応を提供する。
本発明は、(1)一般式[1]
Figure 0005634802
{式中、n個のR及びm個のRは夫々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホ基、ホスフェート基、一般式[2]
Figure 0005634802
(式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表す。)で示される基、一般式[3]
Figure 0005634802
(式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲネート、無機強酸由来のアニオン又はスルホン酸由来のアニオンを表す。)で示されるアンモニオ基を表し、2個のXは夫々独立してハロゲン原子、一般式[4]
Figure 0005634802
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を表す。)で示される基、一般式[5]
Figure 0005634802
(式中、R10はアルキル基、ハロアルキル基、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で示されるスルホニルオキシ基、一般式[6]
Figure 0005634802
(式中、R11及びR12は夫々独立してアルキル基を表す。)で示される基、ジトリフルオロアミノ基(−NTf)、水酸基、シアノ基、アジ基(−N)、チオシアナート基(−NCS)、ニトラート基(−NO)、クロラト基(−OClO)、フタルイミド基、テトラフルオロボラート基(−FBF)又はヘキサフルオロホスホラート基(−FPF)を表し、n及びmは夫々独立して0〜4の整数を表す。また、n及び/又はmが2〜4であり、且つ、2つのR及び/又は2つのRが2つの隣り合う炭素原子と夫々結合する場合、隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とで、及び/又は隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とでシクロヘキサン環を形成していてもよい。更に、n及び/又はmが1〜4であり、且つ1つのR及び/又は1つのRが、ヨウ素原子が結合する炭素原子と隣り合う炭素原子に結合する場合、当該Rとヨウ素原子に結合するXとで、及び/又は当該Rとヨウ素原子に結合するXとで、下記式[7]又は[8]
Figure 0005634802
で示される基を形成していてもよい。}で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物、(2)当該化合物を含有する酸化剤、(3)当該化合物を酸化剤として用いて行う酸化方法、(4)一般式[9]
Figure 0005634802
(式中、R、R、n及びmは前記に同じ。)で示されるビス(ヨードアレーン)化合物に酸化剤を反応させることを特徴とする、一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物の製造方法、(5)酸化剤の共存下、一般式[9]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物を用いて行う酸化方法、の発明である。
本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物は、安定な構造を有しているため、合成が容易なだけでなく、各種酸化反応の酸化剤として汎用可能であり、その反応性も高い。また、公知化合物が有していた問題点、例えば毒性の高い重金属酸化剤の使用による安全面での問題点、副反応の進行により目的物を高収率で得られない、溶液中で不安定なため反応性が低い、回収再利用が困難である等の問題を有していないので、本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を酸化剤として用いれば、無毒性の酸化剤を用いて、各種酸化反応において目的物を高い反応収率で得ることができるため、グリーンケミカル分野での利用が期待される。
一般式[1]及び[9]に於いて、R〜R及びXで示されるハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でもフッ素原子が好ましい。
一般式[1]〜[6]及び[9]に於いて、R〜R12で示されるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、中でも直鎖状のものが好ましく、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、sec-トリデシル基、tert-トリデシル基、ネオトリデシル基、n-テトラデシル基、イソテトラデシル基、sec-テトラデシル基、tert-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec-ペンタデシル基、tert-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、sec-ヘキサデシル基、tert-ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、sec-ヘプタデシル基、tert-ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、n-オクタデシル基、イソオクタデシル基、sec-オクタデシル基、tert-オクタデシル基、ネオオクタデシル基、n-ノナデシル基、イソノナデシル基、sec-ノナデシル基、tert-ノナデシル基、ネオノナデシル基、n-イコシル基、イソイコシル基、sec-イコシル基、tert-イコシル基、ネオイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
一般式[1]、[4]及び[5]に於いて、R〜R、R〜R10及びXで示されるハロアルキル基としては、アルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化等。)されたものであり、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基、トリフルオロエチル基、トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、ペンタヨードエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、1-トリフルオロメチルトリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタブロモプロピル基、ヘプタヨードプロピル基、トリフルオロブチル基、トリクロロブチル基、ノナフルオロブチル基、ノナクロロブチル基、ノナブロモブチル基、ノナヨードブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、ウンデカクロロペンチル基、ウンデカブロモペンチル基、ウンデカヨードペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、トリデカクロロヘキシル基、トリデカブロモヘキシル基、トリデカヨードヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロシクロペンチル基、1,2,3,4,5,6-ヘキサフルオロシクロヘキシル基、1,4-ジクロロシクロヘキシル基、1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式[1]、[4]及び[9]に於いて、R〜R、R及びXで示されるアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシ基、ネオデシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec-ウンデシルオキシ基、tert-ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec-ドデシルオキシ基、tert-ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基、シクロウンデシルオキシ基、シクロドデシルオキシ基等が挙げられ、中でもメトキシ基が好ましい。
一般式[1]、[5]及び[9]に於いてR〜R及びXで示されるアリール基、R10で示されるアルキル基で置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
アルキル基で置換されていてもよいアリール基の置換基として挙げられるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、中でも直鎖状のものが好ましく、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
アルキル基で置換されたアリール基の好ましい具体例としては、例えばトシル基が挙げられ、中でもp-トシル基が好ましい。
一般式[1]、[4]及び[9]に於いて、R〜R及びRで示されるアリールオキシ基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられ、中でもフェニルオキシ基が好ましい。
一般式[1]及び[9]に於いて、R〜Rで示されるアルコキシカルボニル基としては、カルボキシル基中の水酸基がアルコキシ基で置換されたものが挙げられ、該アルコキシ基の具体例としては、R〜Rで示されるアルコキシ基の例示と同様のものが挙げられる。
一般式[1]、[4]及び[9]に於いて、R〜R、R及びXで示されるアシルアミノ基としては、アミノ基の1つの水素原子がアシル基で置換されたものが挙げられ、通常炭素数2〜18、好ましくは2〜11のカルボン酸由来のものが挙げられ、具体的には、例えばアセチルアミド基、プロピオニルアミド基、ブチリルアミド基、イソブチリルアミド基、バレリルアミド基、イソバレリルアミド基、ピバロイルアミド基、ラウロイルアミド基、ペンタノイルアミド基、ヘキサノイルアミド基、シクロヘキシルカルボニルアミド基、オクタノイルアミド基、ノナノイルアミド基、デカノイルアミド基、ウンデカノイルアミド基、ラウロイルアミド基、トリデカノイルアミド基、ミリストイルアミド基、ペンタデカノイルアミド基、パルミトイルアミド基、ヘプタデカノイルアミド基、ステアロイルアミド基等の脂肪族カルボン酸由来のもの、例えばベンゾイルアミド基、ナフトイルアミド基、フルオレンカルボニルアミド基、フェナントレンカルボニルアミド基、アントラセンカルボニルアミド基、ピレンカルボニルアミド基等の芳香族カルボン酸由来のもの等が挙げられる。
〜Rで示されるアルキルスルホニル基としては、スルホ基の水酸基がアルキル基で置換されたものであり、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜16、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基、n-ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、sec-ペンチルスルホニル基、tert-ペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、n-ヘキシルスルホニル基、イソヘキシルスルホニル基、sec-ヘキシルスルホニル基、tert-ヘキシルスルホニル基、ネオヘキシルスルホニル基、n-ヘプチルスルホニル基、イソヘプチルスルホニル基、sec-ヘプチルスルホニル基、tert-ヘプチルスルホニル基、ネオヘプチルスルホニル基、n-オクチルスルホニル基、イソオクチルスルホニル基、sec-オクチルスルホニル基、tert-オクチルスルホニル基、ネオオクチルスルホニル基、n-ノニルスルホニル基、イソノニルスルホニル基、sec-ノニルスルホニル基、tert-ノニルスルホニル基、ネオノニルスルホニル基、n-デシルスルホニル基、イソデシルスルホニル基、sec-デシルスルホニル基、tert-デシルスルホニル基、ネオデシルスルホニル基、n-ウンデシルスルホニル基、イソウンデシルスルホニル基、sec-ウンデシルスルホニル基、tert-ウンデシルスルホニル基、ネオウンデシルスルホニル基、n-ドデシルスルホニル基、イソドデシルスルホニル基、sec-ドデシルスルホニル基、tert-ドデシルスルホニル基、ネオドデシルスルホニル基、n-トリデシルスルホニル基、イソトリデシルスルホニル基、sec-トリデシルスルホニル基、tert-トリデシルスルホニル基、ネオトリデシルスルホニル基、n-テトラデシルスルホニル基、イソテトラデシルスルホニル基、sec-テトラデシルスルホニル基、tert-テトラデシルスルホニル基、ネオテトラデシルスルホニル基、n-ペンタデシルスルホニル基、イソペンタデシルスルホニル基、sec-ペンタデシルスルホニル基、tert-ペンタデシルスルホニル基、ネオペンタデシルスルホニル基、n-ヘキサデシルスルホニル基、イソヘキサデシルスルホニル基、sec-ヘキサデシルスルホニル基、tert-ヘキサデシルスルホニル基、ネオヘキサデシルスルホニル基、シクロプロピルスルホニル基、シクロブチルスルホニル基、シクロペンチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、シクロヘプチルスルホニル基、シクロオクチルスルホニル基、シクロノニルスルホニル基、シクロデシルスルホニル基等が挙げられる。
一般式[3]に於いて、Xで示されるハロゲネートとしては、例えばフルオレート、クロレート、ブロメート、アイオデート等が挙げられる。
で示される無機強酸由来のアニオンとしては、例えば硝酸、リン酸、過ハロゲン酸(例えば過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸が挙げられ、中でも過塩素酸が好ましい)、硫酸、ハロ硫酸(例えばフルオロ硫酸、クロロ硫酸、ブロモ硫酸、ヨード硫酸等)等に由来するもの、例えばヘキサフルオロボレート(テトラフルオロボレート(BF )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )等が挙げられる。
で示されるスルホン酸由来のアニオンとしては、例えば一般式[10]
Figure 0005634802
(式中、R13はアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。)で示されるものが挙げられる。
一般式[10]に於いて、R13で示されるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、sec-トリデシル基、tert-トリデシル基、ネオトリデシル基、n-テトラデシル基、イソテトラデシル基、sec-テトラデシル基、tert-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec-ペンタデシル基、tert-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、sec-ヘキサデシル基、tert-ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、sec-ヘプタデシル基、tert-ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、n-オクタデシル基、イソオクタデシル基、sec-オクタデシル基、tert-オクタデシル基、ネオオクタデシル基、n-ノナデシル基、イソノナデシル基、sec-ノナデシル基、tert-ノナデシル基、ネオノナデシル基、n-イコシル基、イソイコシル基、sec-イコシル基、tert-イコシル基、ネオイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
13で示されるアルキル基で置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
置換されていてもよいアリール基の置換基として挙げられるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、中でも直鎖状のものが好ましく、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
一般式[10]で示されるスルホン酸由来のアニオンの好ましい具体例としては、例えばメタンスルホネート、p-トルエンスルホネート等が挙げられる。
一般式[1]及び[9]に於いて、Xで示されるアルケニル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数2〜6、好ましくは2〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、4-ペンテニル基、3-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ペンテニル基、1,3-ペンタジエニル基、2,4-ペンタジエニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1-メチル-1-ブテニル基、5-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-ヘキセニル基、1-シクロプロペニル基、2-シクロペンテニル基、2,4-シクロペンタンジエニル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
で示されるアルキニル基としては、通常炭素数2〜6、好ましくは2〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばエチニル基、2-プロピニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、4-ペンチニル基、2-メチル-4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。
で示されるヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が好ましく、具体的には、例えばフリル基、ピロリル基、インドリル基、プリニル基、キノリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、ピラニル基等が挙げられる。
一般式[1]に於いて、n及びmは、通常0〜4の整数、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2の整数である。
一般式[1]に於ける2個のXの好ましい具体例は、一般式[4]で示されるアシルオキシ基、一般式[5]で示されるスルホニルオキシ基であり、中でも、例えばアシルオキシ基、トリフルオロメチルカルボニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基等がより好ましい。
一般式[1]で示される化合物の好ましい具体例としては、例えば下記化合物が挙げられる。
Figure 0005634802
Figure 0005634802
Figure 0005634802
Figure 0005634802
Figure 0005634802
Figure 0005634802
Figure 0005634802
Figure 0005634802
※Ac=アセチル基、Ts=p-トルエンスルホニル基
一般式[9]で示される化合物の好ましい具体例としては、例えば2,2’-ジヨード-4,4’6,6’-テトラメチルビフェニル、2,2’-ジヨード-3,3’,4,4’,5,5’,6,6’-オクタメチルビフェニル、2,2’-ジヨード-4,4’6,6’-テトラメトキシビフェニル、2,2’-ジヨード-3,3’,4,4’,5,5’,6,6’-オクタフルオロビフェニル、2,2’-ジヨード-6,6’-ジフェニルビフェニル、2,2’-ジヨード-6,6’-ジ(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’-ジヨード-6,6’-ジブロモビフェニル等が挙げられる。
一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物は、例えば下記に示すように製造し得る。
Figure 0005634802
(式中、R〜R、X、m及びnは前記に同じ。)
即ち、一般式[9]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物(以下、「前駆体」と略記する場合がある。)1モルを適当な溶媒(酸化されにくい溶媒が好ましく、例えば塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えばヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のフッ素含有アルコール類、例えばヘキサン等の炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、例えばエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、無水酢酸、水、これらの混合溶媒等。特にハロゲン化炭化水素類とフッ素含有アルコール類の混合溶媒が好ましい。)中に溶解した後、該前駆体に対して2〜5モルの酸化剤を加え、−40〜80℃で1〜12時間撹拌反応させた後、常法に従って処理することにより、本発明に係る一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物が得られる。
前駆体を酸化させる際に用いられる酸化剤としては、通常この分野で用いられる酸化試薬が全て挙げられるが、例えば過酢酸(PAA)、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、SelectFluor〔登録商標:F-TEDA(1-chloromethyl-4-fluoro-1,4-diazoniabicyclo[2.2.2]octane bis-(tetrafluoroborate))、アルドリッチ社製〕、過ホウ素酸ナトリウム(NaBO3)、過硫酸カリウム(K2S2O8)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、オキソン(登録商標:2KHSO5・KHSO4・K2SO4、デュポン社製)等が挙げられ、中でも、PAAが好ましい。
また、前駆体である一般式[9]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物の合成法を、一般式[9]で示される化合物のうち、一般式[9’]で示される化合物(即ち、一般式[9]に於けるR及びRが等価である場合(ここではRとする)に相当)を合成する場合を例にとって以下に説明する。
Figure 0005634802
(式中、R〜R、m及びnは前記に同じ。)
即ち、窒素雰囲気下、−78〜30℃で、一般式[11]で示されるヨードアレーン1モルを適当な溶媒(例えば塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えばヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のフッ素含有アルコール類、例えばヘキサン等の炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、例えばエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、無水酢酸、これらの混合溶媒等。特にハロゲン化炭化水素類が好ましい。)中に溶解した後、該ヨードアレーンに対して2〜4倍モルのルイス酸〔例えば、BF・EtO(トリフッ化ジエチルエーテル錯体)、TMSOTf(トリメチルシリル トリフルオロメタンスルホネート)、TMSBr(トリメチルシリルブロマイド)等〕を加え、−78〜30℃で1〜10分間撹拌反応させた後、該ヨードアレーンに対して0.5〜1倍モルの酸化剤[例えばPhI(OCOCF{PIFA:フェニルアイオダイン ビス(トリフルオロアセテート)}、PhI(OCOCH{PIDA:フェニルアイオダイン ジアセテート}、PhI(OH)OTs{HTIB:ヒドロキシ(トシロキシ)ヨードベンゼン}、PhIO{ヨードソベンゼン}等]を加え、−78〜30℃で15分〜6時間反応させる。反応終了後、常法に従って処理することにより、一般式[9’]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物(前駆体)が得られる。
一般式[11]で示されるヨードアレーンは、市販のものを用いてもよいし、常法により適宜合成したものを用いてもよい。
本発明の一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(以下、「本発明の酸化剤」と略記する場合がある)は、各種酸化反応を行う際の酸化剤として有用である。
本発明の酸化剤が使用可能な各種酸化反応としては、例えばアルコール類、アルデヒド類の酸化、ケトン類のα位の酸化、フェノール類の酸化、アニリン類の酸化、インドール類の酸化、酸化的ビアリールカップリング、アミン類の酸化、ベンジル位の酸化、芳香環の酸化、アルケン類の酸化、アルキン類の酸化、スルフィドの酸化、エーテル類の酸化、酸化的ホフマン転位、ケイ素化合物の酸化等が挙げられる。
本発明の酸化反応は、酸化剤として本発明の一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を用いること以外は、常法に従って基質の酸化反応を行えばよい。
また、一般式[1]で示される酸化剤の代わりに、一般式[9]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物(以下、「前駆体」と略記する場合がある。)と通常の酸化剤(例えばPAA、mCPBA等)を併用して基質の酸化反応を行ってもよい。この場合、同じ反応系内に、一般式[9]で示される前駆体、通常の酸化剤及び基質を共存させて反応を行うことにより、該前駆体の酸化と基質の酸化を同時に行うことができる。
本発明の酸化反応を行う場合は、(1)本発明の酸化剤を用いる方法、又は(2)本発明の前駆体と通常の酸化剤を用いる方法の何れかが挙げられるが、基質を酸化させ、目的の酸化物を高い反応性で得るという点で何れの方法を用いてもよいが、方法(2)を用いる場合は、基質の酸化に用いる酸化剤をいったん単離精製する処理をせずに目的とする酸化物が得られるため、操作が簡便であるという点で好ましい。
本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を用いた酸化反応を、例を挙げて以下に説明する。
(1)アルキン側鎖含有アニソール類からのスピロ環化ヨードニウム塩の合成
Figure 0005634802
※TFE=2,2,2,-トリフルオロエタノール
(式中、R21及びR22は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又はニトロ基を表し、R23はハロゲン原子、置換基を有していてもよいアリール基又はアルキル基を表し、Xは酸素原子又は−NH−基を表し、Xはカルボニル基を表す。また、R21及びR22はその隣り合う炭素原子と共にベンゼン環を形成していてもよい。ArIIIIは本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を表し、IIIArは本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物由来の基を表し、Nuは求核種を表し、―Nu基は求核種由来の基を表す。)
一般式[21]〜[22]に於いて、R21〜R23で示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
21及びR22で示されるアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
21及びR22としては、電子求引性を有さないものの方が好ましく、中でも、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基等がより好ましい。
23で示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、通常炭素数6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
23で示される置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、例えばアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。
置換基として挙げられるアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばR12及びR13で示されるアルコキシ基の例示と同様のものが挙げられる。
置換基として挙げられるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
置換基として挙げられるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基として挙げられるハロアルキル基としては、アルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化等。)されたものであり、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基、トリフルオロエチル基、トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、ペンタヨードエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、1-トリフルオロメチルトリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタブロモプロピル基、ヘプタヨードプロピル基、トリフルオロブチル基、トリクロロブチル基、ノナフルオロブチル基、ノナクロロブチル基、ノナブロモブチル基、ノナヨードブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、ウンデカクロロペンチル基、ウンデカブロモペンチル基、ウンデカヨードペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、トリデカクロロヘキシル基、トリデカブロモヘキシル基、トリデカヨードヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロシクロペンチル基、1,2,3,4,5,6-ヘキサフルオロシクロヘキシル基、1,4-ジクロロシクロヘキシル基、1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基として挙げられるアリール基としては、、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
置換基として挙げられるヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が好ましく、具体的には、例えばフリル基、ピロリル基、インドリル基、プリニル基、キノリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、ピラニル基等が挙げられる。
23で示されるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
ArIIIIとしては、本発明の一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物の例示が全て挙げられ、中でも化合物3がより好ましい。
Nuは求核種を表し、通常の求核反応に用いられる求核剤が全て挙げられ、例えばハロゲン求核剤、ニトロ求核剤、酸素求核剤、炭素求核剤等が挙げられる。
ハロゲン求核試薬の代表的な具体例としては、例えばBuNI、BuNBr、BuNF、TMSBr等が挙げられる。
窒素求核試薬の代表的な具体例としては、例えばNaNO、NaN等が挙げられる。
酸素求核剤の代表的な具体例としては、例えばNaOAc(Ac=アセチル基)等が挙げられる。
炭素求核剤の代表的な具体例としては、例えばNaCN等が挙げられる。
即ち、一般式[21]で示されるアルキン側鎖含有アニソール化合物(基質)1モルと基質に対して0.5〜1.0モルの本発明の一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を、適当な溶媒(例えば塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えば2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等のフッ素含有アルコール類、例えばヘキサン等の炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、例えばエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、無水酢酸、水、これらの混合溶媒等。)中、酸性触媒(例えばトシル酸(TsOH)、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、過塩素酸(HClO4)、リン酸((HO)3P=O)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)等)の共存下、室温下で2時間撹拌反応させた後、常法に従って処理することにより、一般式[22]で示されるスピロ環化ヨードニウム塩が得られる。次いで、得られた該化合物に対して、各種求核剤を反応させることにより、所望の求核基で置換された一般式[23]で示される化合物が得られる。
(2)カルボキシル基含有1−又は2−ナフトールからのオルト−スピロラクトンの合成
本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(酸化剤)を用いる場合を例にとって以下に説明する。
Figure 0005634802
(式中、R26及びR27は、何れか一方が水酸基であり、他方が2-カルボキシエチル基であり、R28は水素原子又はハロゲン原子を表し、R29は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R30はアラルキルオキシ基を表し、また、R24が水酸基である場合は、R27である2-カルボキシエチル基の1位の炭素原子とR28とこれらが結合する炭素原子とで下記式[26]
Figure 0005634802
で示される構造を形成していてもよい。X及びXは何れか一方がオキソ基(=C=O)であり、他方が下記式
Figure 0005634802
で示される基であり、R31はR28と同じである。但し、R24が水酸基である場合は、Xがオキソ基であり、更にR24が水酸基であり且つR27である2-カルボキシルエチル基とR28と隣り合う炭素原子とで上記式[26]で示される構造を形成する場合は、XとR31とこれらが結合する炭素原子とで下記式
Figure 0005634802
で示される基を形成する。)
一般式[24]〜[25]に於いて、R28〜R29で示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも臭素原子が好ましい。
29で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜3、好ましくは1のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が挙げられる。
29で示されるアリール基としては、炭素数6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
29で示されるアラルキル基としては、炭素数7〜9のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基等が挙げられる。
29で示されるアラルキルオキシ基としては、炭素数7〜9のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、3-フェニルプロピルオキシ基等が挙げられる。
一般式[25]で示されるortho-スピロラクトン化合物は、例えば以下の如く製造し得る。
即ち、一般式[24]で示されるカルボキシル基含有1−/2−ナフトール化合物(基質)1モルと基質に対して0.5〜1モルの本発明の一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を、適当な溶媒(例えば塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えば2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等のフッ素含有アルコール類、例えばヘキサン等の炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、例えばエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、無水酢酸、水、これらの混合溶媒等。)中、室温下で1〜12時間撹拌反応させた後、常法に従って処理することにより、一般式[25]で示されるortho-スピロラクトン化合物が得られる。
上記の合成反応では、本発明の酸化剤の代わりに、本発明に係る前駆体を用いてもよく、この場合は、本発明に係る前駆体と更に通常の酸化剤(例えば、過酢酸、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、Selectfluor(登録商標)、過ホウ素酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、オキソン(登録商標)等)を反応系に共存させて酸化反応を行えばよい。
(3)4〜6員環からなるスピロラクタムの合成
本発明に係る前駆体(一般式[9]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物)と通常の酸化剤を用いた場合を例にとって以下に説明する。
Figure 0005634802
(式中、R32は炭素数1〜3のアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、R33は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアシル基を表し、R34〜R35は夫々独立して水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜3のアルコキシ基又はフタルイミド基を表し、nは0〜2の整数を表す。但し、n=1の場合、R34〜R35及びこれらが結合する炭素原子とでベンゼン環を形成していてもよい。)
32及びXで示される炭素数1〜3のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜3、好ましくは1のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基等が挙げられる。
32で示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でもフッ素原子が好ましい。
33〜R35で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜3、好ましくは1のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が挙げられる。
33で示される炭素数1〜3のアシル基としては、具体的には、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
nは、通常0〜2の整数である。
また、n=1の場合は、R34〜R35及びこれらが結合する炭素原子とでベンゼン環を形成していてもよい。
一般式[28]で示される4〜6員からなるスピロラクタム化合物は、例えば以下の如く製造し得る。
即ち、一般式[27]で示されるアミド化合物(基質)1モル、基質に対して0.05〜0.3モルの本発明に係るビス(ヨードアレーン)化合物[6](前駆体)及び基質に対して1.5〜5モルの酸化剤〔例えば過酢酸(PAA)、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、Selectfluor(登録商標:アルドリッチ社製)、過ホウ素酸ナトリウム(NaBO3)、過硫酸カリウム(K2S2O8)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、オキソン(登録商標:デュポン社製)等〕を、適当な溶媒(例えば塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えば2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等のフッ素含有アルコール類、例えばヘキサン等の炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、例えばエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、無水酢酸、水、これらの混合溶媒等。)中、室温下で1〜10時間撹拌反応させた後、常法に従って処理することにより、一般式[14]で示されるスピロラクタム化合物が得られる。
上記の合成反応では、本発明に係る前駆体及び通常の酸化剤の組合せの代わりに、本発明の酸化剤(一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物)を用いて酸化反応を行ってもよい。
基質の酸化反応を行う場合は、本発明の一般式[1]で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(本発明の酸化剤)を用いる方法、及び該前駆体と酸化剤を用いる方法の何れを選択してもよいが、該前駆体と酸化剤を用いる方法は、予め前駆体を酸化させて酸化剤を得る工程を省くことができるため、操作が簡便であり(例えば、副生物、廃液の除去等の操作が不要)、グリーンケミストリーの観点からすればこの方法が好ましい。
また、一般式[1]で示される本発明の酸化剤は、酸化反応に用いた後も、再利用(再酸化)処理を行うことにより回収・再利用が可能となる。この再酸化処理工程を下記に示す。
Figure 0005634802
※I(III)=本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物[1](本発明の酸化剤)
Cat.I(I)=本発明に係るビス(ヨードアレーン)化合物[9](前駆体)
Green oxidants=PAA、mCPBA、H2O2
即ち、本発明の酸化剤を用いて基質(substrate)を酸化することにより、酸化生成物(oxidation products)を得る(green oxidations)。一方、該酸化剤はビス(ヨードアレーン)化合物[9](前駆体)として容易に分離回収することができる。次いで、該前駆体を酸化剤(green oxidants)を用いて再酸化することにより酸化剤を再生成することができる。
本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物は、安定な構造を有しているため、合成が容易なだけでなく、各種酸化反応の酸化剤として汎用可能であり、その反応性も高い。また、本発明の超原子価ヨウ素化合物は、従来の重金属酸化剤が有していた毒性についての問題点、従来のヨウ素試薬が有していた反応性に乏しいという問題点を有していないので、例えば環境に優しい酸化剤である、これを用いれば環境に優しい酸化反応が行える、従来の酸化剤より反応収率がよい等の効果を有する。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
参考例1.2,2’-ジヨード-4,4’,6,6’-テトラメチルビフェニル (2a)の合成〔一般式[9]で示されるビス(ヨードアレーン)化合物(前駆体)〕
Figure 0005634802
窒素雰囲気下、−78℃で、3, 5-ジメチルヨードベンゼン (1.0 ml, 7 mmol)をCH2Cl2 (8.75 ml)に溶解させた溶液に、BF3・Et2O 〔トリフルオロボレート・ジエチルエーテラート錯体〕(1.84 ml, 7 mmol)を加え、30分撹拌させた後PIFA〔PhI(OCOCF3)2:フェニルアイオダイン ビス(トリフルオロアセテート)〕 (1.54 g, 3.5 mmol)を更に加え、5時間反応させた。反応終了後、飽和NaHCO3水溶液を加えて反応を止め、得られた反応液をCH2Cl2で抽出し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた後、ろ過によりNa2SO4を除去した。次いで、減圧下で溶媒を除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって生成物 (1.02 g, 63 %)を得た。その結果を表1に示す。
1H NMR (400 MHz): δ= 1.95 (s, 6H), 2.31 (s, 6H), 7.06 (s, 2H), 7.62 (s, 2H) ppm
参考例2〜4.各種ビス(ヨードアレーン)化合物の合成
Figure 0005634802
参考例1の3, 5-ジメチルヨードベンゼンの代わりに下記表1に示される各種基質を用いる以外は、参考例1と同様の操作を行うことにより、各種ビス(ヨードアレーン)化合物を得た。その結果を表1に併せて示す。
Figure 0005634802
実施例1.酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(ジアセタート体)の合成
Figure 0005634802
Selectfluor(登録商標)〔アルドリッチ社製〕 (2.69 g, 7.6 mmol)をアセトニトリル (47.5 ml)に溶解させた溶液に、酢酸 (17.1 ml)を加えた。次いで、得られた溶液に参考例1で得られた2, 2’-ジヨード-4, 4’, 6, 6’-テトラメチルビフェニル (0.88 g, 1.9 mmol)を添加し、室温下終夜撹拌反応させた(5時間)。反応終了後、得られた溶液中の溶媒を減圧除去した後、CH2Cl2で抽出し飽和食塩水で分液し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた。得られた溶液をろ過によりNa2SO4を除去し、溶液を減圧除去後、少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することにより生成物 (1.09 g, 96%)を得た。その結果を表2に示す。
1H NMR (400 MHz): δ= 1.85 (s, 6H), 2.16 (s, 6H), 2.46 (s, 6H), 7.38 (s, 2H), 7.86 (s, 2H) ppm
IR (KBr): 3348 s, 1565 s, 1407 s cm-1
m.p.: 148.2 - 149.5℃
実施例2.酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(トリフルオロアセタート体)の合成
Figure 0005634802
SelectfluorをCH3CN (9ml)に溶解させた溶液に、CF3CO2H (15ml)を加えた。その後、得られた溶液に参考例1で得られた2,2’-ジヨード-4,4’,6,6’-テトラメチルビフェニル(0.462 g, 1.0 mmol)を添加し、室温下終夜反応させた(12時間)。反応終了後、得られた溶液中の溶媒を減圧除去した後、CH2Cl2で抽出し飽和食塩水で分液し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた。得られた溶液をろ過によりNa2SO4を除去し、溶液を減圧除去後、少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することにより生成物を得た(0.665 g, 90 %)。
1H NMR (400 MHz): δ= 2.20 (s, 6H), 2.53 (s, 6H), 7.52 (s, 2H), 7.98 (s, 2H) ppm
実施例3.酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(トシレート体)の合成
Figure 0005634802
実施例1で得られた酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(ジアセタート体)(0.64 g, 0.1 mmol)をCH3CN (10 ml)に溶解させ、更にp-トルエンスルホン酸・一水和物(TsOH・HO)(0.40g, 0.2 mmol)を添加し、室温下で終夜撹拌反応させた(12時間)。反応終了後、得られた反応液中の溶媒を減圧除去した後、これを少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することにより生成物(0.41 g, 50 %)を得た。
1H NMR (400 MHz): δ= 2.09 (s, 6H), 2.40 (s, 6H), 2.46 (s, 6H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.44 (s, 2H), 7.59 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.89 (s, 2H) ppm
実施例1及び4〜6.各種酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(ジアセタート体)の合成
実施例1の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(ジアセタート体)の代わりに下記表2に示される各種基質を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、各種酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物(ジアセタート体)を得た。その結果を表2に併せて示す。
Figure 0005634802
実験例1.安定性試験
酢酸 (5ml)中に、実施例1で得られた本発明の化合物 (30mg, 0.5 mmol)を添加し、25℃で1時間撹拌した。架橋型(本発明の酸化剤)と非架橋型(本発明の酸化剤の分解物)の収率をH-NMRにより測定した。その結果を表3に示す。
比較例1〜3.
基質として下記表3に示す所定のヨウ素試薬(架橋型)を用いた以外は実験例1と同様の操作を行うことにより、得られた架橋型及び非架橋型の収率を測定した。その結果を表3に併せて示す。
Figure 0005634802
表3の結果から、従来の超原子価ヨウ素化合物は、非架橋型の方が安定性がよいことが分かる(比較例1〜3)。一方、本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物は、架橋型の方が安定性がよいことが分かる(実験例1)。
実験例2.
Figure 0005634802
参考例1で得られた2,2’-ジヨード-4,4’,6,6’-テトラメチルビフェニルに、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)もしくは2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)中、該基質に対して5モル当量の過酢酸(9%酢酸溶液)を添加し、35℃で6時間撹拌反応させた。反応終了後、得られた溶液中の溶媒を減圧除去した後、CH2Cl2で抽出し飽和食塩水で分液し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた。得られた溶液をろ過によりNa2SO4を除去し、溶液を減圧除去後、少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することにより生成物を得た。生成物の比はH-NMRにより決定した。
比較例4.
Figure 0005634802
市販のヨードベンゼンに、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)もしくは2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)中、該基質に対して5モル当量の過酢酸(9%酢酸溶液)を添加し、35℃で6時間撹拌反応させた。反応終了後、得られた溶液中の溶媒を減圧除去した後、CH2Cl2で抽出し飽和食塩水で分液し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた。得られた溶液をろ過によりNa2SO4を除去し、溶液を減圧除去後、少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することによPIDA[PhI(OAc)2]を得た。
比較例5.
Figure 0005634802
上記のヨード化合物に、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)もしくは2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)中、該基質に対して5モル当量の過酢酸(9%酢酸溶液)を添加し、35℃で6時間撹拌反応させた。反応終了後、得られた溶液中の溶媒を減圧除去した後、CH2Cl2で抽出し飽和食塩水で分液し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた。得られた溶液をろ過によりNa2SO4を除去し、溶液を減圧除去後、少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することにより生成物を得た。生成物の比はH-NMRにより決定した。
比較例6.
Figure 0005634802
上記のヨード化合物に、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)もしくは2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)中、該基質に対して5モル当量の過酢酸(9%酢酸溶液)を添加し、35℃で6時間撹拌反応させた。反応終了後、得られた溶液中の溶媒を減圧除去した後、CH2Cl2で抽出し飽和食塩水で分液し、得られた有機層にNa2SO4を加えて乾燥させた。得られた溶液をろ過によりNa2SO4を除去し、溶液を減圧除去後、少量のCH2Cl2に溶かし、その溶液をヘキサン中へ滴下しろ過することにより生成物を得た。生成物の比はH-NMRにより決定した。
実験例2及び比較例4〜6の結果から、比較例4〜6のヨウ素化合物の場合は、酸化反応により得られるものとしては、酸素架橋型の超原子価ヨウ素化合物よりも酸素非架橋型の超原子価ヨウ素化合物の合成収率が高いのに対して、本願の化合物(実施例1)の場合は、酸素非架橋型よりも酸素架橋型の超原子価ヨウ素化合物の方が高い収率で合成されることが分かった。即ち、本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物は、酸素架橋型の超原子価ヨウ素化合物の中でもより安定性があることが分かる(実験例2)。
実験例3.本発明のヨウ素化剤を用いたスピロラクタムの合成
Figure 0005634802
ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP) (1.2ml)とCH2Cl2 (1.2ml)の混合溶媒中に、参考例1で得られた2,2’-ジヨード-4,4’6,6’-テトラメチルビフェニル (1.4 mg, 0.003 mmol)とアミド (31.4 mg, 0.15 mmol)を添加し、その撹拌溶液中に過酢酸(PAA) (0.23 ml, 0.3mmol)を35℃で添加した。1時間後、HFIPを減圧除去し、残留物をCH2Cl2で溶かし、H2Oと飽和NaHCO3水溶液により分液した。得られた有機層を分離し、これにNa2SO4を加えて乾燥させた後、Na2SO4を除去し、溶液を減圧除去することにより、スピロラクタム(生成物) (27 mg, 93 %)が得られた。
実験例4〜5及び比較例7〜10.反応性試験
Figure 0005634802
ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP) (1.2ml)とCH2Cl2 (1.2ml)の混合溶媒中に、各種ヨウ素酸化試薬 (0.003 mmol)とアミド (0.15 mmol)を添加し、室温で3時間撹拌反応させた。反応終了後、HFIPを減圧除去し、残留物をCH2Cl2で溶かし、H2Oと飽和NaHCO3水溶液により分液した。得られた有機層を分離し、これにNa2SO4を加えて乾燥させた後、Na2SO4を除去し、溶液を減圧除去することにより、各種スピロラクタム(生成物)が得られた。その結果を表4に示す。
Figure 0005634802
表4の結果から、本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を酸化剤として用いた方が、従来の酸化剤よりも目的物を高い収率で得られることが分かる。また、超原子価ヨウ素化合物の中でも酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物を酸化剤として用いた方が反応収率がよいが(比較例9〜10と実験例4〜5)、その中でも本発明の酸化合物を酸化剤として用いた方がより反応収率が高いことがわかる(実験例4〜5)。
また、実験例3と4の結果から明らかなように、本発明に係る前駆体と酸化剤を用いて酸化反応(実験例3)を行った場合でも、本発明の酸化剤を用いた場合(実験例4)と同様に効率よく目的物であるスピロラクタムを製造できることが分かる。
実験例6及び比較例11.触媒活性試験
Figure 0005634802
表5に示す前駆体と酸化剤の組合せを用いて酸化反応を行うこと以外は、実験例3と同様の操作を行うことにより、目的物であるスピロラクタムを得た。その結果を表5に併せて示す。
Figure 0005634802
表5の結果から、比較例11の酸化剤に比べて、本願の酸化剤(実験例6)を用いた方が、生成物の収率が高いことが分かった。
実験例7〜16.各種スピロラクタムの合成
基質に下記表6で示される各種化合物を用いて、下記表6に示す所定時間反応させること以外は実験例3と同様の操作を行うことにより、各種スピロラクタムを得た。その結果を表6に併せて示す。
Figure 0005634802
表6の結果から、本発明の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物は各種スピロラクタム合成の酸化剤として有用であることが分かった。
実験例17.アルキン側鎖含有アニソール化合物からスピロ環化ヨードニウム塩の合成
Figure 0005634802
CF3CH2OH(TFE) (3.5 ml)中に、3-フェニル-2-プロピノイック酸-4-メトキシフェニルエステル(25 mg, 0.1 mmol)、実施例1で得られた酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物 (33 mg, 0.055mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物 (21 mg, 0.11 mmol)が加えられ、室温で2時間撹拌反応させた。反応終了後、溶媒留去の後、残渣をCHClに溶解させた。この溶液をEt2Oに滴下した。沈殿物をろ過し乾燥させた。スピロ環化ヨードニウム塩(生成物) (63 mg, 99 %)がほぼ定量的に得られた。構造は、X線結晶構造解析により同定した。
実験例18.スピロ環化ヨードニウム塩のハロゲン化反応
Figure 0005634802
CH3CN (4ml)中に、実験例1で得られたスピロ環化ヨードニウム塩 (4a) (75.8 mg, 0.055 mmol)及びnBu4NX (3a = I, 3b = Br) (39 mg, 0.11 mmol)を添加し、室温で2時間撹拌反応させた。反応終了後、溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。ハロゲン置換スピロ環化合物(生成物) (3a = I : 32.4 mg, 89 % ; 3b = Br : 29.1 mg, 92 %)が得られた。
実験例19.ヨウ素置換反応
Figure 0005634802
(1)TFE (3.5 ml)中に、3-ブロモ-2-プロピノイック酸-4-メトキシフェニルエステル (30 mg, 0.1 mmol)、実施例1で得られた酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物 (1b1モルに対して0.55 e.q., 33 mg, 0.055 mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物 (1b1モルに対して1.1 e.q., 21 mg,0.11mmol)が加えられ、室温で2時間撹拌反応させた。反応終了後、溶媒を留去した。
(2)CH3CN (4ml)中に、(1)で得られた残渣及びnBu4NI (原料1モルに対して1.1 e.q., 39 mg, 0.11 mmol)が加えられ、60℃で12時間撹拌反応させた。反応終了後、溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。ヨード置換スピロ環化合物(生成物) (354 mg, 85 %) が得られた。その結果を表7に示す。
比較例12〜14.
実験例19の酸化剤 (4a) (原料1モルに対して0.55 e.q.)の代わりに、従来の酸化試薬(比較例12:Koser’s Reagent、比較例13:PIDA、比較例14:PIFA)を原料1モルに対して1.1 e.q.用い、p-TsOH・H2Oを用いない以外は実験例19と同様の操作を行った。その結果を下記表7に併せて示す。
Figure 0005634802
表7の結果から明らかなように、本発明の酸化剤を用いてアルキン側鎖含有アニソール化合物からスピロ環化ヨードニウム塩を形成した後、目的とするヨウ素置換体が高い反応収率で得られることが分かった(実験例19)。一方、本発明のヨウ素化剤の代わりにコーサー試薬及びPIFAを用いた場合は目的物の収率が夫々39%、45%と低く(比較例12)、PIFAを用いた場合は反応が進行しないことが分かった。
また、PIDAは反応進行せず、コーサー試薬及びPIFAは共に反応性(目的物の収率)が低かった。
即ち、本発明の化合物を酸化剤として用いた場合は、従来の酸化剤を用いた場合に比べて高い反応性を示すことが分かった。
実験例20〜28.本発明の酸化剤を用いた基質の適用範囲
Figure 0005634802
出発原料として下記表8で示される化号物を用いること以外は、実験例19と同様の操作を行うことにより、対応するスピロ環化合物が得られた。その結果を表8に併せて示す。
Figure 0005634802
表8の実験例20と実験例21〜22の結果から明らかなように、アルキン末端がエステル基(実験例21)、メチル基(実験例22)のような電子求引性基であるものを原料として用いた場合は反応が進行しないことが分かった。
また、実験例23〜25の結果から明らかなように、芳香環上に修飾される置換基としては、強い電子求引性を示すニトロ基が含有された基質を用いた場合は、反応収率が低いことが分かった(実験例24)。一方、ハロゲン原子及びメトキシ基等の置換基が含有された基質を用いた場合は、ほぼ定量的に反応が進行することが分かった(実験例23及び25)。
また、実験例26〜28の結果から明らかなように、エステル型のスピロ化合物だけでなく(実験例26)、アミド型のもの(実験例27)もよい収率で目的物を得られることが分かった。更に、アルキン側鎖を1炭素伸長したもの(原料)から合成された6員環のスピロ化合物もほぼ定量的に得られることが分かった(実験例28)
実験例29〜31.
Figure 0005634802
出発原料として下記表9で示される化合物を用いること以外は、実験例19と同様の操作を行うことにより、対応するスピロ環化合物が得られた。その結果を表9に併せて示す。
Figure 0005634802
表9の結果から明らかなように、アニソール化合物の代わりにナフタレン骨格を有する化合物を基質として用いる場合でも、基質のアルキン側鎖の末端がハロゲン原子、フェニル基、メチル基等各種異なる置換基を有していても目的物は収率よく得られることが分かった。
実験例32.スピロ環ヨードニウム塩を用いた各種置換反応
Figure 0005634802
実験例19で用いた化合物(原料)及びBuNIの代わりに、BuNBr(35 mg, 0.11mmol)を用いること以外は実験例19と同様の操作を行うことにより、ブロム置換化合物 (89%)を得た。
実験例33.
Figure 0005634802
CHCl3 (2 ml)及び水 (1ml)中に、実験例32で得られたスピロ環化ヨードニウム塩 (69 mg, 0.05mmol)を加え、更にNaNO2 (70 mg, 1.1 mmol)を添加し、室温で5時間撹拌反応させた。反応終了後、CH2Cl2抽出後有機層を分離した。Na2SO4を入れ乾燥させ、溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。ニトロ置換スピロ環化合物(生成物) (71 %) が得られた。
実験例34.
Figure 0005634802
CHCl3 (2 ml)及び水 (1 ml)中に、実験例32で得られたスピロ環化ヨードニウム塩 (69 mg, 0.05 mmol)を加え、更にNaN3 (70 mg, 1.1 mmol)を添加し、室温で5時間撹拌反応させた。反応終了後、CH2Cl2抽出後有機層を分離した。Na2SO4を入れ乾燥させ、溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。アジド置換スピロ環化合物(生成物) (77 %) が得られた。
実験例35.
Figure 0005634802
CH3CN (3 ml)中に、実験例32で得られたスピロ環化ヨードニウム塩(2c) (70 mg, 0.05 mmol)及びKSCN (100 mg, 1.1 mmol)を添加し、60℃で5時間撹拌反応させた。反応終了後、CH2Cl2抽出後有機層を分離した。Na2SO4を入れ乾燥させ、溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。チオシアン置換スピロ環化合物(生成物) (3n) (86 %) が得られた。
実験例36.
Figure 0005634802
CHCl3 (2 ml)及び水 (1 ml)中に、実験例32で得られたスピロ環化ヨードニウム塩(2c) (70 mg, 0.05 mmol)及びKOAc (100 mg, 1.1 mmol)を添加し、室温で5時間撹拌反応させた。反応終了後、CH2Cl2抽出後有機層を分離した。Na2SO4を入れ乾燥させ、溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。アセトキシ置換スピロ環化合物(生成物) (3o) (64 %) が得られた。
実験例34〜36の結果から明らかなように、本発明の酸化剤を用いて得られたスピロ環ヨードニウム塩(中間体)に各種求核種を反応させれば、種々の官能基化スピロ化合物の合成できることが分かった。

Claims (7)

  1. 一般式[1]
    Figure 0005634802
    {式中、n個のR及びm個のRは夫々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホ基、ホスフェート基、一般式[2]
    Figure 0005634802
    (式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表す。)で示される基、一般式[3]
    Figure 0005634802
    (式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲネート、無機強酸由来のアニオン又はスルホン酸由来のアニオンを表す。)で示されるアンモニオ基を表し、2個のXは夫々独立してハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、一般式[4]
    Figure 0005634802
    (式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアシルアミノ基を表す。)で示される基、一般式[5]
    Figure 0005634802
    (式中、R10はアルキル基、ハロアルキル基、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で示されるスルホニルオキシ基、一般式[6]
    Figure 0005634802
    (式中、R11及びR12は夫々独立してアルキル基を表す。)で示される基、ジトリフルオロアミノ基(−NTf)、水酸基、シアノ基、アジ基(−N)、チオシアナート基(−NCS)、ニトラート基(−NO)、クロラト基(−OClO)、フタルイミド基、テトラフルオロボラート基(−FBF)又はヘキサフルオロホスホラート基(−FPF)を表し、n及びmは夫々独立して0〜4の整数を表す。また、n及び/又はmが2〜4であり、且つ、2つのR及び/又は2つのRが2つの隣り合う炭素原子と夫々結合する場合、隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とで、及び/又は隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とでシクロヘキサン環を形成していてもよい。更に、n及び/又はmが1〜4であり、且つ1つのR及び/又は1つのRが、ヨウ素原子が結合する炭素原子と隣り合う炭素原子に結合する場合、当該Rとヨウ素原子に結合するXとで、及び/又は当該Rとヨウ素原子に結合するXとで、下記式[7]又は[8]
    Figure 0005634802
    で示される基を形成していてもよい。}で示される酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物。
  2. 請求項1に記載の化合物を含有する酸化剤。
  3. 一般式[1]で示される化合物を酸化剤として用いて行う酸化方法。
  4. 一般式[9]
    Figure 0005634802
    {式中、n個のR及びm個のRは夫々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホ基、ホスフェート基、一般式[2]
    Figure 0005634802
    (式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表す。)で示される基、一般式[3]
    Figure 0005634802
    (式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲネート、無機強酸由来のアニオン又はスルホン酸由来のアニオンを表す。)で示されるアンモニオ基を表し、n及びmは夫々独立して0〜4の整数を表す。また、n及び/又はmが2〜4であり、且つ、2つのR及び/又は2つのRが2つの隣り合う炭素原子と夫々結合する場合、隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とで、及び/又は隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とでシクロヘキサン環を形成していてもよい。}で示されるビス(ヨードアレーン)化合物に酸化剤を反応させることを特徴とする、請求項1に記載の酸素架橋型超原子価ヨウ素化合物の製造方法。
  5. 酸化剤一般式[9]
    Figure 0005634802
    {式中、n個のR及びm個のRは夫々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホ基、ホスフェート基、一般式[2]
    Figure 0005634802
    (式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表す。)で示される基、一般式[3]
    Figure 0005634802
    (式中、R〜Rは夫々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲネート、無機強酸由来のアニオン又はスルホン酸由来のアニオンを表す。)で示されるアンモニオ基を表し、n及びmは夫々独立して0〜4の整数を表す。また、n及び/又はmが2〜4であり、且つ、2つのR及び/又は2つのRが2つの隣り合う炭素原子と夫々結合する場合、隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とで、及び/又は隣り合う2つのRとこれらRが結合する2つの炭素原子とでシクロヘキサン環を形成していてもよい。}で示されるビス(ヨードアレーン)化合物の存在下に基質を酸化する方法。
  6. 化剤が、過酢酸(PAA)、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、過ホウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)又は2KHSO ・KHSO ・K SO である、請求項4に記載の製造方法。
  7. 化剤が、過酢酸(PAA)、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、過ホウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)又は2KHSO ・KHSO ・K SO である、請求項5に記載の酸化方法。
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