JP5634298B2 - 分包型の歯科用重合性支台築造材料 - Google Patents
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Description
両ペーストがいずれも、(メタ)アクリレート単量体(a)を含有し、前記ペーストの少なくとも一方が、下記式(I)で表されるシランカップリング剤(m1)で表面処理された平均粒子径0.5〜10μmの無機粒子(b)、下記式(II)で表されるシランカップリング剤(m2)で表面処理された平均粒子径0.01〜0.1μmの無機粒子(c)、及び表面処理されていない平均粒子径0.005〜0.1μmの無機粒子(d)を含有し、いずれか一方のペーストが酸化剤(e)を、他方のペーストが還元剤(f)をそれぞれ含有する分包型の歯科用重合性支台築造材料である。
本発明の支台築造材料には、重合硬化を可能にする成分として(メタ)アクリレート単量体(a)が用いられる。(メタ)アクリレート単量体(a)は、第1のペースト(A)と第2のペースト(B)の両方に含有される。本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。
本発明では、支台築造材料の強度を高めるために無機粒子(b)が必須である。本発明における無機粒子(b)は、上記式(I)で表されるシランカップリング剤(m1)で表面処理された平均粒子径0.5〜10μmの無機粒子である。無機粒子(b)は、第1のペースト(A)と第2のペースト(B)のいずれか一方又は両方に含有される。
本発明では、支台築造材料の流動性の変化を抑制するために無機粒子(c)が必須である。本発明における無機粒子(c)は、上記式(II)で表されるシランカップリング剤(m2)で表面処理された平均粒子径0.01〜0.1μmの無機粒子である。無機粒子(c)は、第1のペースト(A)と第2のペースト(B)のいずれか一方又は両方に含有される。
従来は、シランカップリング剤で処理された粒子径の異なる2種の無機粒子を併用することにより、吐出性、賦形性と硬化物の強度をバランスよく向上させることが行われていた。しかし、本発明の支台築造材料はさらに、表面処理されていない平均粒子径0.005〜0.1μmの無機粒子(d)を必須成分として含む。この無機粒子(d)により、支台築造材料の賦形性をさらに改善することができる。無機粒子(d)は、第1のペースト(A)と第2のペースト(B)のいずれか一方又は両方に含有される。
本発明では、支台築造材料の操作性とその硬化物の強度を一層向上させるために、無機粒子(g)を配合することが有利である。本発明における無機粒子(g)は、上記式(III)で表されるシランカップリング剤(m3)で表面処理された、粒子径が0.1〜40μmの範囲にある平均粒子径0.5〜10μmの無機粒子である。無機粒子(g)は、第1のペースト(A)と第2のペースト(B)のいずれか一方又は両方に含有される。
酸化剤(e)としては、有機過酸化物、アゾ化合物、無機過酸化物等が例示される。有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシカーボネート類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類が例示される。ジアシルパーオキサイド類の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。パーオキシエステル類の具体例としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。パーオキシカーボネート類の具体例としては、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイド類の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。パーオキシケタール類の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。ケトンパーオキサイド類の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド等が挙げられる。ハイドロパーオキサイド類の具体例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルバレロニトリル等が挙げられる。無機過酸化物としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アルミニウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
還元剤(f)としては、芳香環に電子吸引基を有しない芳香族アミン、チオ尿素類、アスコルビン酸等が例示される。なお、前記酸化剤(e)と還元剤(f)を合わせて、本発明における化学重合開始剤ともいう。
本発明の支台築造材料の好適な一実施態様は、デュアルキュア型の支台築造材料である。このとき、支台築造材料に光硬化性を付与するために光重合開始剤(h)が配合される。光重合開始剤(h)は、第1のペースト(A)と第2のペースト(B)のいずれか一方又は両方に含有される。光重合開始剤(h)としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。これらの具体例としては、国際公開第2008/087977号パンフレットに記載のものが挙げられる。
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン
D−2.6E:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
NPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート
#801:1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
無機粒子(b−1)〜(b−3)は、以下の製造方法に従って得られる。なお、以下の製造方法において、室温とは25℃を示す。
バリウムガラス(エステック社製「Raysorb E−3000」)を振動ボールミルで粉砕し、不定形のバリウムガラス微粉末を得た。得られたバリウムガラス粉100g、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン2.0g(核フィラー100重量部に対して2.0重量部)及びトルエン200mLを500mLの一口ナスフラスコに入れ、室温で2時間攪拌した。続いて、減圧下トルエンを留去した後、40℃で16時間真空乾燥し、さらに90℃で3時間真空乾燥し、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン処理バリウムガラス粉〔無機粒子(b−1)〕を得た。無機粒子(b−1)の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、2.5μmであった。
11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシランを、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランに変えたこと、振動ボールミルによる粉砕を短縮したこと以外、無機粒子(b−1)と同様に処理し、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン処理バリウムガラス粉〔無機粒子(b−2)〕を得た。無機粒子(b−2)の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、4.2μmであった。
11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシランを、13−メタクリロイルオキシトリデシルトリメトキシシランに変えたこと、振動ボールミルによる粉砕を延長したこと以外、無機粒子(b−1)と同様に処理し、13−メタクリロイルオキシトリデシルトリメトキシシラン処理バリウムガラス粉〔無機粒子(b−3)〕を得た。無機粒子(b−3)の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、1.6μmであった。
無機粒子(c−1)〜(c−2)は、以下の製造方法に従って得られる。
バリウムガラス(エステック社製「Raysorb E−3000」)をコロイドシリカ(日本アエロジル社製「アエロジル130」)に変えたこと、振動ボールミルによる粉砕を実施しなかったこと以外、無機粒子(b−1)と同様に処理し、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン処理コロイドシリカ粉〔無機粒子(c−1)〕を得た。無機粒子(c−1)の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、0.04μmであった。
バリウムガラス(エステック社製「Raysorb E−3000」)をコロイドシリカ(日本アエロジル社製「アエロジル130」)、及び11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシランを3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランに変えたこと、振動ボールミルによる粉砕を実施しなかったこと以外、無機粒子(b−1)と同様に処理し、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン処理コロイドシリカ粉〔無機粒子(c−2)〕を得た。無機粒子(c−2)の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、0.02μmであった。
無機粒子(d−1):アルミナ粉(日本アエロジル社製「アルミニウムオキサイドC」、平均粒子径0.02μm)
無機粒子(d−2):コロイドシリカ(日本アエロジル社製「アエロジル130」、平均粒子径0.02μm)
無機粒子(g)は、以下の製造方法に従って得られる。
バリウムガラス(エステック社製「Raysorb E−3000」)を、30℃に保持した恒温水槽内の水中に分散させ、6時間静置した後、上澄み液中の未沈降分散粒子を取り除いて、沈降無機粒子を得た。続いて、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシランを3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランに変えたこと、振動ボールミルによる粉砕を実施しなかったこと以外、無機粒子(b−1)と同様に処理し、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン処理バリウムガラス粉〔無機粒子(g−1)〕を得た。無機粒子(g−1)の平均粒子径を無機粒子(b−1)と同様に測定したところ、粒子径が0.7〜27μmの範囲にあり、平均粒子径が4.5μmであった。
11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシランを3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランに変えた以外、無機粒子(b−1)と同様に処理し、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン処理バリウムガラス粉〔無機粒子(g−2)〕を得た。無機粒子(g−2)の平均粒子径を無機粒子(b−1)と同様に測定したところ、粒子径が0.1〜27μmの範囲にあり、平均粒子径が2.5μmであった。
無機粒子(i):シリカ粉(日本触媒社製「KE−P250」、粒子径範囲0.15〜26μm、平均粒子径2.5μm)
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
DEPT:N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
CQ:dl−カンファーキノン
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
PDE:4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
MEHQ:p−ヒドロキノンモノメチルエーテル
表1〜3に示す原料を常温下(25℃)で混合してAペースト及びBペーストを調製し、以下の試験例1〜5の方法に従って特性を調べた。結果を表1〜3に示す。
吐出力の測定には、1対の同型の円筒が並列に配置されたポリオレフィン系樹脂製の収納容器(総内容積10ml、ミックスパック社製、商品コード「SDL 010−01−50」)と、これらの収納容器の先端側に装着された混合器と、各収納容器の後端側から各収納容器に嵌め込まれた1対の円筒状の押出部材を連結固定してなる押出装置(ミックスパック社製、商品コード「PLH 010−01−46」)とからなる練和装置を用いた。押出し部材を押すことによって、円筒容器内部のペーストは等量採取される。混合器は、8つの撹拌翼(エレメント)を有するミキシング部(ミックスパック社製、商品コード「ML 2.5−08−D」)と、ミキシング部の先端に装着された60度の角度に屈曲したプラスチック製の吐出部(ミックスパック社製、商品コード「IOR 209−20」)とを備えており、その容器は環境光非透過性の部材で構成されている。
30mm×30mmの正方形のガラス板上に予め直径4mmの円を描いておき、上記の吐出力評価で使用した練和装置を使用して、その円内に練和物0.03gを吐出し、ガラス板を35℃の恒温器内で垂直に立て、その状態で3分間静置して練和物の円内からの移動距離を測定し、垂れ距離(mm)とした。この垂れ距離が小さいほど、垂れにくく賦形性に優れるため、支台築造材料に適する。
30mm×30mmの正方形のガラス板上に予め直径4mmの円を描いておき、上記の吐出力評価で使用した練和装置を使用して、その円内に練和物0.03gを吐出し、ガラス板を35℃の恒温器内で水平におき、その状態で30秒間静置して練和物の形状を目視で観察し、以下の評価基準に従って、吐出物の形状を評価した。なお、2〜4を合格とした。
1:半球状を形成せず、吐出した形状を維持する。
2:半球状を形成しつつも、吐出した形状が若干残る。
3:半球状を形成し、そのままの形状を維持する。
4:半球状を形成するが、高さが低くなる。
5:半球状を形成しない。
上記の吐出力評価で使用した練和装置を使用して、ステンレス製の金型(寸法2mm×2mm×25mm)に充填後、上下をスライドガラスで圧接し、歯科用可視光照射器(株式会社モリタ製、ジェットライト3000)で、1点20秒で、片面を5点ずつ、両面に光を照射して硬化させた。得られた硬化物を金型から外し、バリ取りした後37℃の水中に24時間保管した後、万能試験機(島津製作所社製、商品コード「AGI−100」)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で曲げ強さを測定した。曲げ強さが130MPa以上を合格とした。
光を照射することなく、37℃水中に1時間浸漬して硬化させたこと以外、試験例4と同様に試験した。曲げ強さが120MPa以上を合格とした。
Claims (5)
- 第1のペースト(A)と第2のペースト(B)とを含み、
両ペーストがいずれも、(メタ)アクリレート単量体(a)を含有し、前記ペーストの少なくとも一方が、下記式(I)で表されるシランカップリング剤(m1)で表面処理された平均粒子径1.6〜10μmの無機粒子(b)、下記式(II)で表されるシランカップリング剤(m2)で表面処理された平均粒子径0.01〜0.1μmの無機粒子(c)、及び表面処理されていない平均粒子径0.01〜0.1μmの無機粒子(d)を含有し、いずれか一方のペーストが酸化剤(e)を、他方のペーストが還元剤(f)をそれぞれ含有する分包型の歯科用重合性支台築造材料。
- 前記(メタ)アクリレート単量体(a)が、水酸基を有する芳香族(メタ)アクリレート単量体(a−1)、水酸基を有さない芳香族(メタ)アクリレート単量体(a−2)、及び脂肪族(メタ)アクリレート単量体(a−3)を含み、当該(メタ)アクリレート単量体(a−1)、(メタ)アクリレート単量体(a−2)、及び(メタ)アクリレート単量体(a−3)が、前記第1のペースト(A)及び第2のペースト(B)のいずれか一方又は両方にそれぞれ含有されてなる請求項1に記載の分包型の歯科用重合性支台築造材料。
- 光重合開始剤(h)をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の分包型の歯科用重合性支台築造材料。
- 第1のペースト(A)と第2のペースト(B)に含まれる(メタ)アクリレート単量体(a)100重量部中において、水酸基を有する芳香族(メタ)アクリレート単量体(a−1)1〜25重量部、水酸基を有さない芳香族(メタ)アクリレート単量体(a−2)20〜75重量部、及び脂肪族(メタ)アクリレート単量体(a−3)20〜75重量部を含有し、かつ前記(メタ)アクリレート単量体(a)100重量部に対して、無機粒子(b)50〜750重量部、無機粒子(c)5〜50重量部、無機粒子(d)1〜25重量部、酸化剤(e)0.1〜20重量部、還元剤(f)0.1〜20重量部、下記式(III)で表されるシランカップリング剤(m3)で表面処理された、粒子径が0.1〜40μmの範囲にある平均粒子径0.5〜10μmの無機粒子(g)0〜250重量部、及び光重合開始剤(h)0.05〜10重量部を含有してなる請求項1に記載の分包型の歯科用重合性支台築造材料。
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