JP5633291B2 - 生分解性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
この生分解性樹脂組成物に配合されているポリエチレンオキサレート等の脂肪族ポリエステルは、易加水分解性であり、水と混合したときに容易に加水分解して酸を放出するため、エステル分解促進剤として機能する。即ち、放出された酸により、生分解樹脂の加水分解が促進されるため、酵素による生分解性樹脂の分解を著しく促進することができる。また、この生分解性樹脂組成物により形成されている容器等の成形体を酵素水溶液と混合したときには、該脂肪族ポリエステルの加水分解によって成形体中に亀裂が発生することとなり、この結果、酵素が成形体の内部に容易に浸透するため、成形体の内部からも生分解性樹脂の分解が進行することとなり、この結果、成形加工品の形態でも酵素による生分解性樹脂の分解が著しく促進されるという利点がある。
本発明によれば、また、上記生分解性樹脂組成物を用いて成形された成形体が提供される。
(1)前記無機粒子がアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基性化合物であること、
(2)前記塩基性化合物が炭酸カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムであること、
(3)前記易加水分解性ポリマーがポリエステルであり、該ポリエステルの酸成分の80モル%以上が鎖状脂肪族ジカルボン酸であること、
(4)前記易加水分解性ポリマーがポリオキサレートであること、
が好ましい。
本発明において、用いる生分解性樹脂は、難加水分解性のものであり、例えば、生分解性樹脂を凍結粉砕し粉体化した試料で、10mg/10ml濃度の水分散液を作製し、45℃で一週間インキュベート後、残液のTOC(総有機炭素量)が5ppm以下であるものをいう。さらに水溶性のポリエステルは含まない。このような難加水分解性の生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、酢酸セルロースなどを例示することができ、これらは共重合体やブレンド物の形で使用することもできる。
このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどを例示することができる。
多塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸を例示することができる。
ヒドロキシカルボン酸としては、グルコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸を挙げることができる。
ラクトンとしては、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトン、グリコリド、マンデライドなどを挙げることができる。
エステル分解促進剤(B)は、それ単独ではエステル分解能を示さないが、水分と混合したときにエステル分解の触媒として機能する酸を放出する易加水分解性のポリマーであり、生分解性樹脂(A)の全体にわたって均一に分散し、エステル分解促進剤(B)から放出される酸によっての生分解性樹脂(A)の加水分解を迅速に促進するために、例えば、その重量平均分子量が1000乃至200000程度のものが使用される。
エステル分解促進助剤(C)は、上記の易加水分解性ポリマーからなるエステル分解促進剤(B)の加水分解を促進させるために使用される無機粒子であり、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基性化合物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属のイオンを放出するゼオライトやイオン放出性フィラーが代表的である。即ち、このような無機粒子は、水の存在下でエステル分解促進剤(B)の加水分解を促進する。
尚、上述した無機粒子の内、炭酸ナトリウムは、ポリグリコール酸(B)や生分解性樹脂(A)に対する加水分解促進機能が最も大きいが、このために、炭酸ナトリウムを単独で使用した場合には、熱成形時に生分解性樹脂(A)の分子量を極度に低下させ、さらには、生分解性樹脂(A)の変色等によりその製品価値が低下してしまうことがある。そこで、炭酸ナトリウムを用いる場合には、その量を生分解性樹脂(A)に対して0.1〜35ppmの範囲とし、さらに、炭酸カルシウムと組み合わせて使用することが好ましく、これにより、成形時にポリグリコール酸の分解を促進しながらも、生分解性樹脂(A)の分子量低下を抑制でき、かつ、得られる生分解性樹脂組成物の酵素分解速度を上げることができる。このように、炭酸ナトリウムと炭酸カルシウムを併用した場合、そのトータルの配合量は、上述した範囲内、即ち、ポリグリコール酸(B)100重量部当り、28乃至200重量部、特に30乃至100重量部の範囲とするのがよい。
本発明の生分解性樹脂組成物は、上述した各成分以外に、各種の樹脂用添加剤を適宜配合することもでき、例えば、生分解性樹脂の成形性や生分解特性を損なわない量で、可塑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、充填材、離型剤、帯電防止剤、香料、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成材などを配合することができ、さらに必要に、他の熱可塑性樹脂をブレンドすることも可能である。
上述した各種成分を含む本発明の生分解性樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)の各成分を同時に混合し、各成分が分解しない程度の温度(例えば150℃乃至240℃程度)で押出機中で溶融混練することにより調製することができる。この場合、(B)成分のエステル分解促進剤や(C)成分のエステル分解促進助剤と生分解性樹脂(A)とを同時に混合してもよいし、(B)成分のエステル分解促進剤や(C)成分のエステル分解促進助剤各成分のマスターバッチを作製し、生分解性樹脂(A)と混合してもよい。
本発明の生分解性樹脂組成物を用いて成形された容器等の成形体は、廃棄に際しては、そのまま分解槽に供給してもよいが、これを適宜、裁断、圧潰等によって小片状にした後、分解槽に供給して分解処理される。
尚、前述した固体酸触媒を用いる場合には、固体酸触媒が含水しているため、適宜の有機溶媒中に固体酸触媒を分散しておき、この分散液に成形体廃棄物を投入するのがよい。
また、本発明の生分解性樹脂組成物は、優れた分解性を有するので環境を浄化する材料として利用することもでき、例えば、汚染された土壌の改質剤や、下水や排水などの廃水処理剤としても利用することができる。
HFIP溶媒を用いたGPC測定;
GPCには、東ソー株式会社製を用い、カラムとしてHFIP−605を用いた。カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を用い、流速を0.5ml/分とした。また、サンプル注入量は15μlとした。スタンダードはHFIPにポリメチルメタクリレートを溶解させ用いた。サンプル調整はHFIPを溶媒として濃度2mg/mlとし、フィルターろ過したものを用いた。
GPCには、東ソー株式会社製HLC−8120を用い、カラムとしてTSKgel SuperHM−H×2及びガードカラムとしてTSKguard column SuperH−Hを用いた。カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてクロロホルムを用い、流速を0.5ml/minとした。また、サンプル注入量は20μlとした。スタンダードはクロロホルムにポリスチレンを溶解させたものを用いた。サンプル調整はクロロホルムを溶媒として濃度3mg/mlとし、フィルターろ過したものを用いた。
ポリ乳酸(PLA):
natureworks社製4032D(d乳酸1.4±0.2%)を用いた。
ポリエチレンオキサレート:
下記で合成されたポリエチレンオキサレート(PEOx)或いはポリエチレンオキサレートーテレフタレート共重合体(PEOx20またはPEOx50)を用いた。
尚、PEOx20は、エチレンオキサレート含量80モル%、テレフタル酸含量20モル%の共重合体であり、PEOx50は、エチレンオキサレート含量50モル%、テレフタル酸含量50モル%の共重合体である。
炭酸カルシウム:
白石工業株式会社製brilliant1500(平均粒度;0.2μm)を用いた。
炭酸ナトリウム:
和光純薬工業製を用いた。
ゼオライト:
ユニオン昭和株式会社製ゼオライト3A(Ca型)を用いた。
キトサン(有機塩基):
和光純薬工業製を用いた。
マントルヒーター、攪拌装置、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLのセパラブルフラスコにシュウ酸ジメチル354g(3.0mol)、エチレングリコール223.5g(3.6mol)、テトラブチルチタネート0.30gを入れ窒素気流下フラスコ内温度を110℃からメタノールを留去しながら170℃まで加熱し、9時間反応させた。最終的に210mlのメタノールを留去した。その後内温150℃で0.1〜0.5mmHgの減圧下で1時間攪拌し、内温170℃〜190℃で7時間反応後、粘度が上がり取り出した。
HFIP溶媒を用いたGPC測定により、重量平均分子量 (Mw)は30000であった。
シュウ酸ジメチル354g(3.0mol)の代わりにシュウ酸ジメチル94.5g(0.8mol)及びテレフタル酸ジメチル38.8g(0.2mol)、を用いた以外は、上記PEOxの合成と同様の方法で合成した。
クロロホルム溶媒を用いたGPC測定により、重量平均分子量(Mw)は20000であった。
シュウ酸ジメチル354g(3.0mol)の代わりにシュウ酸ジメチル177g(1.5mol)及びテレフタル酸ジメチル291g(1.5mol)、を用いた以外は、上記PEOxの合成と同様の方法で合成した。
各種材料をドライブレンドし、超小型混練機(株式会社東洋精機製作所製)で成形温度200℃または240℃及びスクリュー回転速度50rpmにて混練し、ペレットを作製した。該ペレットを200℃または240℃で5分間融解後、50Kgf/cm2の圧力で加熱加圧(ホットプレス)し、フィルムを作製した。
CLE酵素液の作製と分解液の作製;
CLE酵素液はCryptococcus sp. s−2由来リパーゼ(独立行政法人酒類総合研究所:特開2004−73123)粉末20mgを、50w/w%グリセリンを含む0.05MTris−HCl緩衝液(pH8.0)1mlに溶解させた液とした。分解液はpH7の60mmol/Lリン酸緩衝液10mlに、CLE酵素液12μlを添加した液とした。
酵素分解性試験;
上記方法で作製されたフィルム(2cm×2cm、重量70〜80mg)と、上記分解液10mlを25mlのバイアル瓶内に入れ、45℃、100rpmで6日間振とうさせた。なお、pHの極度な低下を避けるため、4日間を2日、2日に分け、それぞれ分解液を交換して行った。4日後、フィルムを取り出し45℃オーブンで一晩乾燥させ、重量を測定した。フィルムの分解量は(初期のフィルム重量)―(4日後のフィルム重量)で求めた。
PLAと上記方法で作成しPLAフィルムに対してクロロホルム溶媒を用いたGPC測定を行った。PLAの分子量をMw(前)、作製したフィルムの分子量をMw(後)とし、分子量保持率をMw(後)/Mw(前)×100で求めた。分子量保持率が60%以上を○としている。
表1に示す各種材料を所定の配合比でブレンドし、上述の成形方法でフィルムを作成した。得られたフィルムの分子量保持率の測定、及び、酵素分解試験の結果を表1に示す。なお、成形温度を200℃とした。
エステル分解促進剤として、上述の方法で合成したポリエステルの構成成分中の酸成分の芳香環(テレフタル酸)を20モル%有するPEOx20、或いは、芳香環を50モル%有するPEOx50を、表2に示す配合比で炭酸カルシウムと共にPLAとブレンドし、フィルムを作成した(実施例2〜4)。また、炭酸カルシウムを配合しない以外は、実施例2〜4と同様にしてフィルムを作成した。
得られたフィルムの分子量保持率の測定、及び、酵素分解試験の結果を表2に示す。
Claims (6)
- 難加水分解性生分解性樹脂(A)、易加水分解性ポリマーからなるエステル分解促進剤(B)、及び該エステル分解促進剤の加水分解を促進する無機粒子からなるエステル分解促進助剤(C)を含み、生分解性樹脂(A)100重量部当り、エステル分解促進剤(B)を0.01乃至30重量部の量で含有し、且つエステル分解促進助剤(C)を、エステル分解促進剤(B)100重量部当り、28乃至200重量部の量で含有していることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
- 前記無機粒子がアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む塩基性化合物である請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
- 前記塩基性化合物が炭酸カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムである請求項2に記載の生分解性樹脂組成物。
- 前記易加水分解性ポリマーがポリエステルであり、該ポリエステルの酸成分の80モル%以上が鎖状脂肪族ジカルボン酸である請求項1乃至3の何れかに記載の生分解性樹脂組成物。
- 前記易加水分解性ポリマーがポリオキサレートである請求項4に記載の生分解性樹脂組成物。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の生分解性樹脂組成物を用いて成形された成形体。
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