以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
I:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係るクレーンの安全装置の機能ブロック図を示している。このクレーンの安全装置は、オペレータにより設定される作業状態(設定作業状態)の設定変更の可否判断を、実際の作業状態(実作業状態)に対応して行なうことで、作業状態の設定変更操作を安全に且つ的確に行うものである。
先ず、図9〜図11を参照して、クレーンZの構成及び該クレーンZを用いた作業形態、即ち、「ブーム作業」と「ジブ作業」と「ジブ付きブーム作業」のそれぞれについて説明する。
「ブーム作業」
図9は、「ブーム作業」における作業状態を示している。このクレーンZは、車両1上に旋回動可能に搭載された旋回台2に伸縮ブーム3の基端ブームを連結し、該伸縮ブーム3を上記旋回台2との間に配置した起伏シリンダ5の伸縮によって起伏動可能としている。また、上記旋回台2側に配置した主ウィンチ8Aから繰出される主ロープ8によって主フック6を上記伸縮ブーム3の先端部から吊下させるとともに、上記旋回台2側に配置した副ウィンチ9Aから繰出される副ロープ9を上記伸縮ブーム3の先端に設けたシングルトップシーブ25を介して吊下させ、この副ロープ9に副フック7を連結している。
そして、上記主フック6を使用して吊荷Wを吊持して行なう作業が狭義の「ブーム作業」であり、上記副フック7を使用して行なう作業は「シングルトップ作業」であるが、この実施形態では上記「シングルトップ作業」を上記「ブーム作業」に含めてこれを広義の「ブーム作業」とし、以下の説明における「ブーム作業」はこの広義の「ブーム作業」を示すものとする。
この「ブーム作業」では、上記伸縮ブーム3の自重はその基礎荷重として予め過負荷防止装置の荷重テーブル(図示省略)に盛り込まれており、これ以外に荷重要素として存在するものは、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記主フック6を使用した吊荷作業に供せられる上記主ロープ8の自重である。従って、「ブーム作業」において、吊荷Wを吊持しているのか否かは、上記主フック6に、該主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記主ロープ8の自重の合算荷重より大きい荷重が掛かっているかどうかを確認することで判断できることになる。
そこで、この実施形態では、「ブーム作業」における吊荷作業時か非吊荷作業時かの判断の基準となる荷重値を、上記合算荷重に、荷重検出の誤差を考慮した所定の付加荷重を加えて、これを第1荷重データ36(図1参照)として保有する。
一方、この「ブーム作業」においては、上記第1荷重データ36から付加荷重を差し引いた荷重値に、上記主フック6に吊持された吊荷Wを加えた荷重値が、「ブーム作業時における実荷重」として把握される。
「ジブ作業」
図10は、「ジブ作業」における作業状態を示している。この「ジブ作業」は、上記伸縮ブーム3の先端部にジブ4を前方張出状態に装着して行なわれる。この場合、上記主フック6はブームヘッド側に巻き上げられたまま保持される一方、上記副フック7は上記ジブ4の先端に配置したジブシーブ26から吊下支持される。そして、この副フック7に上記吊荷Wを吊持して吊荷作業を行なうのが「ジブ作業」である。
この「ジブ作業」では、上記伸縮ブーム3の自重及び上記ジブ4の自重はその基礎荷重として予め過負荷防止装置の荷重テーブル(図示省略)に盛り込まれており、これ以外に荷重要素として存在するものは、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記副フック7を使用した吊荷作業に供せられる上記副ロープ9の自重である。従って、「ジブ作業」において、吊荷Wを吊持しているのか否かは、上記副フック7に、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記副ロープ9の自重の合算荷重より大きい荷重が掛かっているかどうかを確認することで判断できることになる。
そこで、この実施形態では、「ジブ作業」における吊荷作業時か非吊荷作業時かの判断の基準となる荷重値を、上記合算荷重に、荷重検出の誤差を考慮した所定の付加荷重を加えて、これを第2荷重データ37(図1参照)として保有する。
一方、この「ジブ作業」においては、上記第2荷重データ37から付加荷重を差し引いた荷重値に、上記副フック7に吊持された吊荷Wを加えた荷重値が、「ジブ作業時における実荷重」として把握される。
「ジブ付きブーム作業」
図11は、「ジブ付きブーム作業」における作業状態を示している。この「ジブ付きブーム作業」は、上記伸縮ブーム3の先端部にジブ4を前方張出状態に装着したまま、上記ジブ4の先端から吊下される上記副フック7を使用することなく、上記伸縮ブーム3の先端部から吊下された上記主フック6を使用し、該主フック6に上記吊荷Wを吊持して行なわれる。
この「ジブ付きブーム作業」では、上記伸縮ブーム3の自重及び上記ジブ4の自重はその基礎荷重として予め過負荷防止装置の荷重テーブル(図示省略)に盛り込まれており、これ以外に荷重要素として存在するものは、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記主フック6を使用した吊荷作業に供せられる上記主ロープ8の自重である。従って、「ジブ付きブーム作業」において、吊荷Wを吊持しているのか否かは、上記主フック6に、該主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記主ロープ8の自重の合算荷重より大きい荷重が掛かっているかどうかを確認することで判断できることになる。
そこで、この実施形態では、「ジブ付きブーム作業」における吊荷作業時か非吊荷作業時かの判断の基準となる荷重値を、上記合算荷重に、荷重検出の誤差を考慮した所定の付加荷重を加えて、これを第3荷重データ38(図1参照)として保有する。
一方、この「ジブ付きブーム作業」においては、上記第3荷重データ37から付加荷重を差し引いた荷重値に、上記主フック6に吊持された吊荷Wを加えた荷重値が、「ジブ付きブーム作業時における実荷重」として把握される。
尚、この実施形態では、高い制御精度を確保する観点から、上述のように、「ブーム作業」に対応する上記第1荷重データ36の荷重要素として、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記主フック6を使用した吊荷作業に供せられる上記主ロープ8の自重を採用しているが、ある程度制御精度を抑えて制御の簡略化を重視する観点に立てば、上記第1荷重データ36の制御要素として、「ブーム作業」における荷重条件に最も影響の大きい「主フック6の自重」のみを採用することもできる。
同様に、「ジブ作業」に対応する上記第2荷重データ37の荷重要素として、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記副ロープ9の自重を採用しているのに代えて、例えば、上記副フック7の自重のみを採用することもできる。さらに、「ジブ付きブーム作業」に対応する上記第3荷重データ38の荷重要素として、上記主フック6の自重と上記副フック7の自重と上記主ロープ8の自重を採用しているのに代えて、例えば、上記主フック6の自重のみを採用することもできる。
一方、上記クレーンZには、図1に示すように、検出手段として、上記伸縮ブーム3の長さを検出するブーム長さ検出手段11と、上記伸縮ブーム3の起伏角度を検出するブーム角度検出手段12と、上記起伏シリンダ5に掛かる反力、即ち、該起伏シリンダ5における支持力を検出する起伏支持力検出手段13と、上記ジブ4が上記伸縮ブーム3の先端側に張出されたことを検出するジブ張出検出手段17と、例えば上記主ウィンチ8Aの油圧力に基づいて上記主フック6が使用状態にあることを検出する主フック使用検出手段18が備えられる。
なお、この実施形態では、上述のように上記ジブ4の上記伸縮ブーム3の先端部への装着の有無を判断するために、該ジブ4が上記伸縮ブーム3の先端側に張出されたことを検出する上記ジブ張出検出手段17を備えたが、係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記ジブ張出検出手段17に代えて、上記ジブ4が上記伸縮ブーム3の側方に格納されたことを検出するジブ格納検出手段を設け、該ジブ格納検出手段によってジブ格納状態が検出されていないときは「ジブ4が張出されている」と判断するように構成することもできる。
さらに上記クレーンZには、図1に示すように、オペレータにより手動操作されて過負荷防止装置における作業判断基準となるクレーンZの作業状態を設定する手段として、ブーム作業設定手段14とジブ作業設定手段15及びジブ付きブーム作業設定手段16が備えられている。
次に、この実施形態に係る安全装置の要部を構成する制御手段30について説明する。この制御手段30は、上記各検出手段及び各クレーン設定手段からの信号を受けて、作業状態の設定変更の可否を判断し、その設定変更操作の規制又は許容制御を行うものであって、図1に示すように、実荷重演算手段31と作業判定手段32とデータ選択手段33と比較手段34と制御信号出力手段35と第1作業状態出力手段21と第2作業状態出力手段22と第3作業状態出力手段23を備える。
上記第1作業状態出力手段21は上記ブーム作業設定手段14からの信号を受けて、上記第2作業状態出力手段22は上記ジブ作業設定手段15からの信号を受けて、上記第3作業状態出力手段23は上記ジブ付きブーム作業設定手段16からの信号を受けて、それぞれの設定作業に対応する設定作業信号を後述の作業判定手段32に出力するとともに、後述する制御信号出力手段35から作業状態の設定変更に関する規制信号又は許容信号を受けて、該規制信号を受けた場合には上記作業判定手段32への設定作業信号の出力を規制し(即ち、設定変更操作を規制し)、許容信号を受けた場合には上記作業判定手段32への設定作業信号の出力を許容する(即ち、設定変更操作を許容する)ように機能する。
上記実荷重演算手段31は、過負荷防止装置における演算手段を制御手段30の構成要素の一つとして流用したものであって、本来の過負荷防止機能(具体的な制御内容の説明は省略する)のほかに、作業状態設定変更の可否判断の基準となる実荷重を、「ブーム作業」と「ジブ作業」と「ジブ付きブーム作業」のそれぞれについて、上記ブーム長さ検出手段11とブーム角度検出手段12と起伏支持力検出手段13からの信号を受けて算出し、算出された実荷重に係る信号を後述の比較手段34へ出力する。
上記作業判定手段32は、上記第1作業状態出力手段21と第2作業状態出力手段22と第3作業状態出力手段23からの設定作業信号を受けて、現在設定されている作業状態に係る設定作業状態信号を上記実荷重演算手段31に出力する。この場合、上記各作業状態出力手段21〜23に後述の制御信号出力手段35から規制信号が入力された場合には、新たに上記各作業設定手段14〜16が操作されても、上記各作業状態出力手段21〜23は信号出力が規制されるので、上記作業判定手段32からは、新たな設定作業信号は出力されず、既に(即ち、制御信号出力手段35からの規制信号が入力される以前に)入力された設定作業信号がそのまま維持される(即ち、作業状態の設定変更はできない)。
また、上記作業判定手段32は、上記ジブ張出検出手段17からのジブ張出信号と上記主フック使用検出手段18からの使用信号を受けて現在の行なわれている実際の作業状態に係る実作業状態信号を、上記実荷重演算手段31と上記データ選択手段33の双方に出力する。即ち、この実施形態では、上記ジブ張出検出手段17と上記主フック使用検出手段18で、特許請求の範囲中の「実作業状態検出手段A」が構成される。
上記データ選択手段33は、上記作業判定手段32からの設定作業状態信号と実作業状態信号を受けて、上記第1荷重データ36と第2荷重データ37と第3荷重データ38の中から、実作業状態に対応した荷重データを選択する。即ち、実作業状態がブーム作業である場合には第1荷重データ36を選択し、実作業状態がジブ作業である場合には第2荷重データ37を選択し、実作業状態がジブ付きブーム作業である場合には第3荷重データ38を選択する。そして、ここで選択した荷重データを次述の比較手段34へ出力する。
上記比較手段34は、上記実荷重演算手段31からの実荷重信号と上記データ選択手段33からの荷重データを受けて、該実荷重と荷重データの荷重値とを対比する。即ち、実作業状態が「ブーム作業」である場合には、このブーム作業時における実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値を対比し、実作業状態が「ジブ作業」である場合には、このジブ作業時における実荷重と上記第2荷重データ37の荷重値を対比し、実作業状態が「ジブ付きブーム作業」である場合には、このジブ付きブーム作業時における実荷重と上記第3荷重データ38の荷重値を対比する。そして、この対比の結果、ブーム作業時において実荷重が上記第1荷重データ36の荷重値よりも大きい場合には吊荷作業時と判断し、実荷重が上記第1荷重データ36の荷重値よりも小さい場合には非吊荷作業時と判断する。ジブ作業時において実荷重が上記第2荷重データ37の荷重値よりも大きい場合には吊荷作業時と判断し、実荷重が上記第2荷重データ37の荷重値よりも小さい場合には非吊荷作業時と判断する。上記付きブーム作業時において実荷重が上記第3荷重データ38の荷重値よりも大きい場合には吊荷作業時と判断し、実荷重が上記第3荷重データ38の荷重値よりも小さい場合には非吊荷作業時と判断する。この判断結果に基づいて、次述の制御信号出力手段35に、吊荷信号又は非吊荷信号を出力する。
なお、この実施形態では、上記データ選択手段33と比較手段34及び上記各第1〜第3荷重データ36〜38によって、特許請求の範囲中の「吊荷・非吊荷判定手段B」が構成される。
上記制御信号出力手段35は、上記比較手段34からの吊荷信号又は非吊荷信号を受けて、上記各作業状態出力手段21〜23に対して、作業状態の設定変更の可否信号を出力する。即ち、実作業が「ブーム作業」と「ジブ作業」と「ジブ付きブーム作業」のいずれであっても、上記各作業状態出力手段21〜23に対して、吊荷作業時であると判定される場合には設定変更規制信号を出力し、非吊荷作業時であると判定される場合には設定変更許容信号を出力する。
従って、上記各作業状態出力手段21〜23に設定変更規制信号が入力されたときは、上記ブーム作業設定手段14とジブ作業設定手段15とジブ作業設定手段15の何れを操作しても、その操作は上記各作業状態出力手段21〜23から上記作業判定手段32側へ出力されることはなく、作業状態の設定変更はできないことになる。
これに対して、上記各作業状態出力手段21〜23に設定変更許容信号が入力されたときは、上記ブーム作業設定手段14とジブ作業設定手段15とジブ作業設定手段15の何れを操作しても、その操作に対応する作業状態信号が上記各作業状態出力手段21〜23を介して上記作業判定手段32側へ出力され、さらに該作業判定手段32から上記実荷重演算手段31に出力され、これによって作業状態の設定変更が実現される。
次に、上記制御手段30の構成を踏まえて、図2に示すフローチャートを参照して、該制御手段30における作業状態の変更設定制御の内容を具体的に説明する。
先ず、ステップS1において、実荷重の算出を行なう。この実荷重の算出は、上記実荷重演算手段31において行なわれるが、その際、上記ブーム長さ検出手段11からのブーム長さ信号と上記ブーム角度検出手段12からのブーム角度信号と上記起伏支持力検出手段13からの支持力信号を受けるとともに、上記作業判定手段32からの実作業信号を受けて、実際の作業状態における実荷重、即ち、実作業状態が「ブーム作業」である場合には現在のブーム作業時における実荷重を、実作業状態が「ジブ作業」である場合には現在のジブ作業時における実荷重を、実作業状態が「ジブ付きブーム作業」である場合には現在のジブ付きブーム作業時における実荷重を、それぞれ算出する。
次に、ステップS2において、現在の設定作業状態が「ブーム作業」であるか否かが判断される。ここで、ブーム作業であると判断された場合は、さらにステップS3においてジブ4の張り出しの有無が判断される。ここで、ジブ4は張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であって、設定作業状態と一致している。従って、ステップS10へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。即ち、上記各作業設定手段14〜16を操作することで作業状態を変更することができる。
これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。従って、この場合には、上記各作業設定手段14〜16を操作しても作業状態を変更することはできない。
ステップS3に戻って、該ステップS3においてジブ4が張出されているときは、実際の作業状態は「ジブ作業」か「ジブ付きブーム作業」の何れかであって、設定された作業状態と実作業状態が一致していない場合である。従って、この場合には、ステップS4へ移行し、ここで主フック6が使用されているか否かが判断される。ここで、主フック6が使用されていないときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されていないのであるから、現在の作業状態は「ジブ作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS11において、実荷重と第2荷重データ37の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
一方、ステップS4において、主フック6が使用されているときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されているのであるから、現在の作業状態は「ジブ付きブーム作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS12において、実荷重と第3荷重データ38の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
ステップS2に戻って、該ステップS2で「ブーム作業」は設定されていないと判断された場合には、ステップS5に移行し、「ジブ作業」が設定されているか否かが判断される。ここで、作業状態として「ジブ作業」が設定されていると判断された場合は、次にステップS6において上記ジブ4が張出されているか否かが判断され、ジブ4が張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であるため、この場合には、ステップS10へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
これに対して、ステップS6でジブ4が張出されていると判断される場合には、実際の作業状態は「ジブ作業」か「ジブ付きブーム作業」の何れかである。従って、この場合には、ステップS7へ移行し、ここで主フック6が使用されているか否かが判断される。ここで、主フック6が使用されていないときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されていないのであるから、現在の作業状態は「ジブ作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS11において、実荷重と第2荷重データ37の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
ステップS5に戻って、「ジブ作業」が設定されていないと判断される場合は、ステップS8へ移行し、ジブ4が張出されているか否かが判断される。ここで、ジブ4が張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であるため、この場合には、ステップS10へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
これに対して、ステップS8で、ジブ4が張出されていると判断された場合は、ステップS9へ移行し、主フック6が使用されているか否かが判断される。ここで、主フック6が使用されていないときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されていないのであるから、現在の作業状態は「ジブ作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS11において、実荷重と第2荷重データ37の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
一方、主フック6が使用されているときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されているのであるから、現在の作業状態は「ジブ付きブーム作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS12において、実荷重と第3荷重データ38の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS13)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS14)。
以上の制御が実行されることで、実作業状態が「ブーム作業」であっても「ジブ作業」であっても、更に「ジブ付きブーム作業」であっても、常に実作業状態に対応して設定された荷重データ36〜38に基づいて、現在は「吊荷作業時」であるのか「非吊荷作業時」であるのかが判断され、「吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が規制され、「非吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が許容されるため、例えば、従来のようにオペレータによって設定された設定作業状態が実作業状態に一致しているか相違しているかに拘らず、この設定作業状態に対応して記憶された荷重性能の下で作業状態の設定変更操作の可否を判断する場合に比して、作業状態の設定変更操作の可否を実作業状態に対応してより的確に判断することができ、その結果、作業状態の誤設定に起因する作業状態の設定変更操作の不当な規制、さらにはこれに基づくクレーンの不当な作動規制が回避され、延いてはクレーンの安全性が向上することになる。
なお、この実施形態においては、「吊荷作業時」と判断された場合には、「作業状態の設定変更操作を規制する」としているが、ここにいう「設定変更操作の規制」は、オペレータによる変更操作を機械的あるいは電気的手段を介して阻止すること、オペレータによる変更操作そのものを無効とすることのみならず、例えば、オペレータに「設定変更操作ができない状態である」ことを報知してオペレータによる変更操作を未然に回避させることも含む広い概念である。従って、「設定変更操作を規制する」ための具体的な態様として、変更操作を阻止する態様とか、変更操作を無効とする態様とか、警報によって変更操作を未然に防止する態様の何れか、又はこれらの態様のいくつかを選択的に組み合わせた態様等を適宜選択できるものである。この点は、以下の第2〜第4の実施形態においても同様である。
II:第2の実施形態
図3には本願発明の第2の実施形態に係るクレーンの安全装置の機能ブロック図を、また図4にはその制御フローチャートを示している。
この第2の実施形態に係るクレーンの安全装置は、上記第1の実施形態に係るクレーンの安全装置を基本構成とした上で、装置の構成の簡略化及び低コスト化を図ったものである。従って、ここでは、上記第1の実施形態に係るクレーンの安全装置と相違する点を重点的に説明し、これと同様部分についてはその説明を必要最小限に抑えて該第1の実施形態における該当説明を援用するものとする。
図3の機能ブロック図においては、第1の実施形態の図1に示す機能ブロック図においては必須の構成要素とはしていなかった二つの検出手段、即ち、ジブ長さ検出手段19とジブチルト角検出手段20を追加している。また、第1の実施形態の図1に示す機能ブロック図においては必須の構成要素としていた三つの荷重データ36,37,38のうち、「ジブ付きブーム作業」に対応する第3荷重データ38を削除し、「ブーム作業」に対応する第1荷重データ36と「ジブ作業」に対応する第2荷重データ37のみを備えている。
これらは以下のような理由に基づくものである。
即ち、「ジブ作業」と「ジブ付きブーム作業」を対比した場合、これら両者間では上記ジブ4の装着の有無が相違するのみで、上記主フック6を吊荷作業に使用する点等はすべて同様である。そうとすれば、上記第1の実施形態の場合のように「ジブ付きブーム作業」に対応する第3荷重データ38を備えなくても、ジブ4の自重によって発生するクレーンZの転倒モーメントを上記伸縮ブーム3の先端部、即ち、上記主フック6に吊持される荷重として置き換えることで、「ブーム作業」に対応して設定された上記第1荷重データ36を用いて、現在、吊荷作業時であるのか、非吊荷作業時であるのかという判断、延いては作業状態の設定変更操作の可否の判断を行なうことができるためである。
そのために上記ジブ長さ検出手段19とジブチルト角検出手段20を設け、これら各検出手段19,20と上記実荷重演算手段31によって、特許請求の範囲中の「ジブ側自重取得手段C」を構成している。
尚、上記第1荷重データ36と第2荷重データ37の内容及びその荷重値は上記第1の実施形態の第1荷重データ36と第2荷重データ37と同じである。
以上のとおりであるので、図3の機能ブロック図については、上記説明部分以外については、第1の実施形態に記載した構成及び機能の説明を援用する。
一方、図4のフローチャートにおいては、上述のように荷重データとして第1荷重データ36と第2荷重データ37のみを備え、「ジブ付きブーム作業」の判定制御においては上記第1荷重データ36を使用するようにした関係から、若干異なった流れとなっているので、ここでその制御内容を説明する。
尚、図4のステップS5に「ジブ側自重の減算」という処理が設けられているが、このステップS5の処理は、上述のように上記実荷重演算手段31において上記ジブ4の自重の影響を上記伸縮ブーム3の先端部に掛かる荷重に置き換える処理である。また、ステップS12において「減算荷重」という記載があるが、これは「ジブ付きブーム作業」時における実荷重から、上記ジブ4の自重を上記伸縮ブーム3の先端部に掛かる荷重に置換した置換荷重を差し引いた荷重値を示している。
図4の制御フローチャートの内容を簡単に説明する。
先ず、ステップS1において、実荷重の算出を行なう。この実荷重の算出は、上記実荷重演算手段31において行なわれ、現在のブーム作業時における実荷重と、現在のジブ作業時における実荷重と、現在のジブ付きブーム作業時における実荷重がそれぞれ算出される。
次に、ステップS2において、現在の設定作業状態が「ブーム作業」であるか否かが判断される。ここで、ブーム作業であると判断された場合は、さらにステップS3においてジブ4の張り出しの有無が判断される。ここで、ジブ4は張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であって、設定作業状態と一致している。従って、ステップS11へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
ステップS3に戻って、該ステップS3においてジブ4が張出されているときは、実際の作業状態は「ジブ作業」か「ジブ付きブーム作業」の何れかであって、設定された作業状態と実作業状態が一致していない場合である。従って、この場合には、ステップS4へ移行し、ここで主フック6が使用されているか否かが判断される。ここで、主フック6が使用されていないときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されていないのであるから、現在の作業状態は「ジブ作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS13において、実荷重と第2荷重データ37の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
一方、ステップS4において、主フック6が使用されているときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されているのであるから、現在の作業状態は「ジブ付きブーム作業」であると判断される。従って、この場合には、先ずステップS5においてジブ側自重の減算処理が行なわれ、しかる後、ステップS12において減算処理された後の減算荷重と第1荷重データ36の荷重値が比較される。そして、ステップS12において、第1荷重データ36の荷重値が減算荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が減算荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
ステップS2に戻って、該ステップS2で「ブーム作業」は設定されていないと判断された場合には、ステップS6に移行し、「ジブ作業」が設定されているか否かが判断される。ここで、作業状態として「ジブ作業」が設定されていると判断された場合は、次にステップS7において、上記ジブ4が張出されているか否かが判断され、ジブ4が張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であるため、この場合には、ステップS11へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
これに対して、ステップS7でジブ4が張出されていると判断される場合には、実際の作業状態は「ジブ作業」か「ジブ付きブーム作業」の何れかである。従って、この場合には、ステップS8へ移行し、ここで主フック6が使用されているか否かが判断される。ここで、主フック6が使用されていないときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されていないのであるから、現在の作業状態は「ジブ作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS13において、実荷重と第2荷重データ37の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
ステップS6に戻って、「ジブ作業」が設定されていないと判断される場合は、ステップS9へ移行し、ジブ4が張出されているか否かが判断される。ここで、ジブ4が張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であるため、この場合には、ステップS11へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
これに対して、ステップS9で、ジブ4が張出されていると判断された場合は、ステップS10へ移行し、主フック6が使用されているか否かが判断される。ここで、主フック6が使用されていないときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されていないのであるから、現在の作業状態は「ジブ作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS13において、実荷重と第2荷重データ37の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
一方、主フック6が使用されているときは、ジブ4が張出され且つ主フック6が使用されているのであるから、現在の作業状態は「ジブ付きブーム作業」であると判断される。従って、この場合には、ステップS5においてジブ側自重の減算処理が行なわれ、しかる後、ステップS12において減算処理された後の減算荷重と第1荷重データ36の荷重値が比較される。そして、ステップS12において、第1荷重データ36の荷重値が減算荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS14)。これに対して、荷重値が減算荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS15)。
以上の制御が実行されることで、実作業状態が「ブーム作業」であっても「ジブ作業」であっても、更に「ジブ付きブーム作業」であっても、「ブーム作業」に対応する第1荷重データ36と「ジブ作業」に対応する第2荷重データ37に基づいて、現在は「吊荷作業時」であるのか「非吊荷作業時」であるのかが判断され、「吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が規制され、「非吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が許容されるため、作業状態の設定変更操作の可否を実作業状態に対応してより的確に判断することができ、その結果、作業状態の誤設定に起因する作業状態の設定変更操作の不当な規制、さらにはこれに基づくクレーンの不当な作動規制が回避され、延いてはクレーンの安全性が向上することになる。
III:第3の実施形態
図5には本願発明の第3の実施形態に係るクレーンの安全装置の機能ブロック図を、また図6にはその制御フローチャートを示している。
この第3の実施形態に係るクレーンの安全装置は、上記第1の実施形態に係るクレーンの安全装置を基本構成とした上で、装置の構成の簡略化及び低コスト化を図ったものである。従って、ここでは、上記第1の実施形態に係るクレーンの安全装置と相違する点を重点的に説明し、これと同様部分についてはその説明を必要最小限に抑えて該第1の実施形態における該当説明を援用するものとする。
図5の機能ブロック図においては、第1の実施形態においては構成要素の一つとしていた上記ジブ付きブーム作業設定手段16と上記主フック使用検出手段18を備えない構成としている。従って、実作業状態検出手段Aは、上記ジブ張出検出手段17のみによって構成され、該ジブ張出検出手段17からはジブ4の張出の有無に係る信号が実作業状態信号として直接上記データ選択手段33に入力されるようになっている。また、上記作業判定手段32からは、設定作業状態のみが上記実荷重演算手段31に出力されるようになっている。
そして、この実施形態の安全装置の、上記第1の実施形態のものに対して最も特徴的な点は、上記ブーム作業設定手段14により「ブーム作業」が設定され、且つ上記ジブ張出検出手段17により「ジブ張出」が検出された場合、これら両者から現在の実作業は「ジブ付きブーム作業」であると判断するものであり、「ジブ付きブーム作業」であるとの判断を上記ジブ付きブーム作業設定手段16からの設定信号を用いて判断する上記第1の実施形態の場合に比して、構成要素の低減による低コスト化及び制御の簡略化が図れるものである。
続いて、図6を参照して、上記制御手段30における作業状態の変更設定制御の内容を具体的に説明する。
先ず、ステップS1において、実荷重の算出を行なう。この実荷重の算出は、上記実荷重演算手段31において行なわれ、現在のブーム作業時における実荷重と、現在のジブ作業時における実荷重と、現在のジブ付きブーム作業時における実荷重がそれぞれ算出される。
次に、ステップS2において、現在の設定作業状態が「ブーム作業」であるのか否かが判断される。ここで、ブーム作業であると判断された場合は、さらにステップS3においてジブ4の張り出しの有無が判断される。ここで、ジブ4は張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であるので、ステップS5へ移行する。ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS7)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS8)。
ステップS3に戻って、該ステップS3においてジブ4が張出されているとき、即ち、「ブーム作業」が設定され且つ上記ジブ4が張出されているときには、実際の作業状態は「ジブ付きブーム作業」であると判断する。従って、この場合には、ステップS6へ移行し、実荷重と第3荷重データ38の荷重値が比較され、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS7)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS8)。
ステップS2に戻って、該ステップS2で「ブーム作業」は設定されていない、即ち、「ジブ作業」が設定されていると判断された場合には、ステップS4へ移行し、ここで実荷重と上記第2荷重データ37の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS7)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS8)。
以上の制御が実行されることで、実作業状態が「ブーム作業」であっても「ジブ作業」であっても、更に「ジブ付きブーム作業」であっても、「ブーム作業」に対応する第1荷重データ36と「ジブ作業」に対応する第2荷重データ37と「ジブ付きブーム作業」に対応する第3荷重データ38に基づいて、現在は「吊荷作業時」であるのか「非吊荷作業時」であるのかが判断され、「吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が規制され、「非吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が許容されるため、作業状態の設定変更操作の可否を実作業状態に対応してより的確に判断することができ、その結果、作業状態の誤設定に起因する作業状態の設定変更操作の不当な規制、さらにはこれに基づくクレーンの不当な作動規制が回避され、延いてはクレーンの安全性が向上することになる。
IV:第4の実施形態
図7には本願発明の第4の実施形態に係るクレーンの安全装置の機能ブロック図を、また図8にはその制御フローチャートを示している。
この第4の実施形態に係るクレーンの安全装置は、上記第2の実施形態に係るクレーンの安全装置を基本構成とした上で、該第2の実施形態の安全装置よりもさらに装置の構成の簡略化及び低コスト化を図ったものである。従って、ここでは、上記第2の実施形態に係るクレーンの安全装置と相違する点を重点的に説明し、これと同様部分についてはその説明を必要最小限に抑え、上記第2の実施形態における該当説明を援用するものとする。
図7の機能ブロック図においては、第2の実施形態においては構成要素の一つとしていた上記ジブ付きブーム作業設定手段16と上記主フック使用検出手段18を備えない構成としている。従って、実作業状態検出手段Aは、上記ジブ張出検出手段17のみによって構成され、該ジブ張出検出手段17からはジブ4の張出の有無に係る信号が実作業状態信号として、上記実荷重演算手段31と上記データ選択手段33の双方に入力されるようになっている。また、上記作業判定手段32からは、設定作業状態のみが上記実荷重演算手段31に出力されるようになっている。
また、図7の機能ブロック図においては、第2の実施形態の図3に示す機能ブロック図においては必須の構成要素とはしていなかった二つの検出手段、即ち、ジブ長さ検出手段19とジブチルト角検出手段20を追加している。なお、荷重データとして、「ブーム作業」に対応する第1荷重データ36と「ジブ作業」に対応する第2荷重データ37のみを備えている。
このように、荷重データとして第1荷重データ36と第2荷重データ37のみを備えた理由、及び上記ジブ長さ検出手段19とジブチルト角検出手段20を設けた理由は、上記第2の実施形態において説明した通りである。
一方、次述する図8のフローチャートにおける「ジブ側自重の減算」という処理(ステップS4)の内容、及び「減算荷重」の内容も、上記第2の実施形態において説明した通りである。
続いて、図8を参照して、上記制御手段30における作業状態の変更設定制御の内容を具体的に説明する。
先ず、ステップS1において、実荷重の算出を行なう。この実荷重の算出は、上記実荷重演算手段31において行なわれ、現在のブーム作業時における実荷重と、現在のジブ作業時における実荷重と、現在のジブ付きブーム作業時における実荷重がそれぞれ算出される。
次に、ステップS2において、現在の設定作業状態が「ブーム作業」であるか否かが判断される。ここで、ブーム作業であると判断された場合は、さらにステップS3においてジブ4の張り出しの有無が判断される。そして、ジブ4は張出されていないと判断された場合は、実際の作業状態は「ブーム作業」であるため、ステップS6へ移行し、ここで実荷重と上記第1荷重データ36の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS8)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS9)。
ステップS3に戻って、該ステップS3においてジブ4が張出されているときは、「ジブ付きブーム作業」であると判断されるので、ステップS4においてジブ側自重の減算処理が行なわれ、しかる後、ステップS7において減算処理された後の減算荷重と第1荷重データ36の荷重値が比較される。そして、第1荷重データ36の荷重値が減算荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断され、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS8)。これに対して、荷重値が減算荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS9)。
ステップS2に戻って、該ステップS2で「ブーム作業」は設定されていない、即ち、「ジブ作業」が設定されていると判断された場合には、ステップS5へ移行し、ここで実荷重と上記第2荷重データ37の荷重値とを比較し、該荷重値が実荷重より大きい場合は「非吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が許容される(ステップS8)。これに対して、荷重値が実荷重より小さい場合は「吊荷作業時」と判断されるので、作業状態の設定変更操作が規制される(ステップS9)。
以上の制御が実行されることで、実作業状態が「ブーム作業」であっても「ジブ作業」であっても、更に「ジブ付きブーム作業」であっても、「ブーム作業」に対応する第1荷重データ36と「ジブ作業」に対応する第2荷重データ37に基づいて、現在は「吊荷作業時」であるのか「非吊荷作業時」であるのかが判断され、「吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が規制され、「非吊荷作業時」においては作業状態の設定変更が許容されるため、作業状態の設定変更操作の可否を実作業状態に対応してより的確に判断することができ、その結果、作業状態の誤設定に起因する作業状態の設定変更操作の不当な規制、さらにはこれに基づくクレーンの不当な作動規制が回避され、延いてはクレーンの安全性が向上することになる。